特許異議申立
2022-700317
乳酸菌粉末を含有するpH4.6を超える飲料、当該飲料の製造方法、および当該飲料の風味改善方法
- 審判番号
- 2022-700317
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-236560
- 登録番号
- 6951960
- 請求日
- 2022年04月15日
- 審決日
- 2023年01月16日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アサヒ飲料株式会社
- 【権利者代理人】今野 智介
- 【異議申立人】杉本 里佳
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6951960号発明「乳酸菌粉末を含有するpH4.6を超える飲料、当該飲料の製造方法、および当該飲料の風味改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6951960号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし13〕及び14について訂正することを認める。
特許第6951960号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6951960号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、平成29年12月11日の出願であって、令和3年9月29日にその特許権の設定登録(請求項の数15)がされ、同年10月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年4月15日に特許異議申立人 杉本 里佳(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし15)がされ、同年7月29日付けで取消理由が通知され、同年9月30日に特許権者 アサヒ飲料株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年10月13日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対し、特許異議申立人からは何ら応答がなかったものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和4年9月30日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
請求項1において、「乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトン、50000ppb未満のリナロール、および50000ppb未満のバレンセンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含有する」を「(i)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンとを含有する、(ii)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンとを含有する、(iii)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンおよび50000ppb未満のバレンセンとを含有する、(iv)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する、(v)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する、または(vi)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトン、50000ppb未満のバレンセンおよび50000ppb末満のリナロールとを含有する」に訂正する。併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項2において、「10~l0000ppbの前記ヌートカトンを含有する」を「前記(i)、(iii)、(iv)および(vi)において、10~10000ppbのヌートカトンを含有する」に訂正する。併せて、請求項2を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項3において、「1~l0000ppbの前記リナロールを含有する」を「前記(iv)、(v)および(vi)において、1~l0000ppbのリナロールを含有する」に訂正する。併せて、請求項3を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項4において、「1~l0000ppbの前記バレンセンを含有する」を「前記(ii)、(iii)、(v)および(vi)において、1~l0000ppbのバレンセンを含有する」に訂正する。併せて、請求項4を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
請求項5において、「前記ヌートカトン、前記リナロールおよび前記バレンセンからなる群より選ばれる2種以上を含有する」を「前記(iii)、(iv)、(v)または(vi)の条件を満たす」に訂正する。併せて、請求項5を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項6において、「前記ヌートカトンおよび前記リナロールを含有する」を「前記(iv)または(vi)の条件を満たす」に訂正する。併せて、請求項6を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。
(7)訂正事項7
請求項14において、「ヌートカトン、リナロールおよびバレンセンからなる群より選ばれる少なくとも1種を、当該飲料中の濃度がそれぞれ20000ppb未満、50000ppb未満または50000ppb未満となるよう、」を「(i)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満となるよう、(ii)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、(iii)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびバレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、(iv)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、(v)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、または(vi)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、」に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1から、「乳酸菌粉末」と「50000ppb未満のリナロール」とを含有するものであって、「20000ppb未満のヌートカトン」及び/又は「50000ppb未満のバレンセン」を含有することを発明特定事項としないものを除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、請求項1を訂正したことに伴い、請求項2の記載を訂正後の請求項1の記載に合わせるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項3についての訂正について
訂正事項1による請求項3についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項3についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3による請求項3についての訂正は、請求項1及び2を訂正したことに伴い、請求項3の記載を訂正後の請求項1及び2の記載に合わせるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項4についての訂正について
訂正事項1による請求項4についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項4についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3による請求項4についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4による請求項4についての訂正は、請求項1ないし3を訂正したことに伴い、請求項4の記載を訂正後の請求項1ないし3の記載に合わせるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし4による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項5についての訂正について
訂正事項1による請求項5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項5についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3による請求項5についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4による請求項5についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5による請求項5についての訂正は、請求項1ないし4を訂正したことに伴い、請求項4の記載を訂正後の請求項1ないし4の記載に合わせるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし5による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項6についての訂正について
訂正事項1による請求項6についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項6についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3による請求項6についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4による請求項6についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5による請求項6についての訂正は、請求項5についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項6による請求項6についての訂正は、請求項1ないし5を訂正したことに伴い、請求項6の記載を訂正後の請求項1ないし5の記載に合わせるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし6による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)請求項7ないし13についての訂正について
訂正事項1による請求項7ないし13についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2ないし6による請求項7ないし13についての訂正は、請求項2ないし6についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし6による請求項7ないし13についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)請求項14についての訂正について
訂正事項7による請求項14についての訂正は、訂正前の請求項14から、「リナロール」の飲料中の濃度が「50000ppb未満」となるようにするもののうち、「ヌートカトン」の飲料中の濃度が「20000ppb未満」となるようにすること及び/又は「バレンセン」の飲料中の濃度が「50000ppb未満」となるようにすることを発明特定事項としないものを除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7による請求項14についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし7による請求項1ないし14についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし7による請求項1ないし14についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし13は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1ないし6による請求項1ないし13についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし15に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし13〕及び14について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(i)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンとを含有する、
(ii)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iii)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンおよび50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iv)乳酸菌粉末と、20000ppb末満のヌートカトンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する、
(v)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンおよび50000bpb未満のリナロールとを含有する、または
(vi)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトン、50000ppb未満のバレンセンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する、
pHが4.6を超える飲料。
【請求項2】
前記(i)、(iii)、(iv)および(vi)において、10~l0000ppbのヌートカトンを含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記(iv)、(v)および(vi)において、1~l0000ppbのリナロールを含有する、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
前記(ii)、(iii)、(v)および(vi)において、1~l0000ppbのバレンセンを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
前記(iii)、(iv)、(v)または(vi)の条件を満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
前記(iv)または(vi)の条件を満たす、請求項5に記載の飲料。
【請求項7】
1000~l0000ppbのヌートカトンおよび1~l0000ppbのリナロールを含有し、かつそれらの質量比が、ヌートカトン/リナロール=1~1000である、請求項6に記載の飲料。
【請求項8】
前記乳酸菌が、乳を含まない培地で培養されたものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項9】
前記乳酸菌粉末を、0.005質量%以上0.5質量%以下含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項10】
前記乳酸菌が、細胞構造が破壊されているものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項11】
糖度が0.1~7.0Bxである、請求項1~10のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項12】
エネルギーが20kcal/100ml以下である、請求項1 ~ 1 1のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項13】
前記飲料が、ミネラルウォーター、ニアウォーター、または茶飲料である、請求項1~12のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項14】
乳酸菌粉末を含有する、pHが4.6を超える飲料の製造方法において、
(i)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満となるよう、
(ii)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iii)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびバレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iv)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(v)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、または
(vi)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
乳酸菌粉末と混合する工程を含む、乳酸菌粉末を含有する飲料の製造方法。
【請求項15】
乳酸菌粉末を含有する、pHが4.6を超える飲料において、20000ppb未満のヌートカトン、50000ppb未満のリナロール、および50000ppb未満のバレンセンからなる群より選ばれる少なくとも1種を共存させる、乳酸菌粉末を含有する飲料の風味改善方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年4月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、9、13及び14は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるし、本件特許発明1、3及び8ないし15は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び8ないし15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第14号証に基づく進歩性)
本件特許発明1、3及び8ないし15は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第14号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び8ないし15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第16号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、8、11、13及び14は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第16号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるし、本件特許発明1、3及び8ないし15は、甲第16号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び8ないし15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第18号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、8、13及び14は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第18号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるし、本件特許発明1、3及び8ないし15は、甲第18号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び8ないし15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第22号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、8及び14は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第22号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるし、本件特許発明1、3、8、11、12、14及び15は、甲第22号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、8、11、12、14及び15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許の請求項1ないし4、7、14及び15に記載される香気成分(リナロール等)の濃度は、本件特許の発明の詳細な説明の実験例3に示されるように、香料等として飲料に添加された香気成分の量のみから計算されるものであるのか、あるいは、本件特許の発明の詳細な説明に記載されるように、天然物に由来する香気成分の量も算入して計算されるものであるのか、一義的に解釈することができないから、本件特許の請求項1ないし4、7、14及び15の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
本件特許の請求項5、6及び8ないし13の記載も同様である。
7 申立理由7(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明1、14及び15には、リナロールをその閾値を大幅に超える濃度で飲料に配合する場合が含まれる。そのような閾値を大幅に超える濃度でリナロールを飲料に配合する場合、どのように配合すれば特有の香気を感じさせずに配合できるかについて、本件特許の発明の詳細な説明には全く説明されておらず、当業者であっても理解することができない。
以上のとおり、飲料におけるリナロールの濃度をその閾値を大幅に超える濃度とする場合が含まれる本件特許発明1、14及び15について、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たしていない。
本件特許発明2ないし13も同様である。
8 申立理由8(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、下記の(1)及び(2)の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明には、高甘味度甘味料以外の甘味料を用いる場合が含まれ、その場合、所定量のリナロール、ヌートカトン又はバレンセンを用いなくても培地臭を低減できることが、本件特許の発明の詳細な説明に記載されている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、高甘味度甘味料以外の甘味料が用いられた飲料について、所定量のリナロール、ヌートカトンまたはバレンセンにより培地臭を抑制できるとは認識できず、また、実際、高甘味度甘味料以外の甘味料を用いられた飲料は、所定量のリナロール、ヌートカトンまたはバレンセンにより培地臭を抑制できないものであるから、高甘味度甘味料以外の甘味料を用いる場合を含む本件特許発明1ないし15が、本件特許の発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えていることは明らかである。
(2)本件特許の発明の詳細な説明において、リナロールを用いて本件特許発明の課題を実際に解決し得たことが実験的に示されているのは、飲料におけるリナロールの濃度を1~10000ppbとした場合のみであり、飲料におけるリナロールの濃度が100000ppbを超え、500000ppb未満である場合に本件特許発明の課題を解決し得えたことは記載されておらず、また、本件特許発明1、14及び15の範囲まで、本件特許の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるともいえない。
本件特許発明8ないし13も同様である。
9 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2006/028164号
甲第2号証:茶業技術研究、1976年、50号、第68~73頁
甲第3号証:Fenaroli's Handbook of Flavor Ingredients Sixth Edition、2009年、CRC Press、p. 1092、1093
甲第4号証:家政学雑誌、1974年、第25巻、第6号、第436~442頁
甲第5号証:生物工学会誌、2011年、第89巻、第12号、第724~727頁
甲第6号証:Applied and Environmental Microbiology、2007年、Vol.73、No.5、p.1544-1552
甲第7号証:日本醸造協会誌、2013年、第108巻、第2号、第88~97頁
甲第8号証:特開2013-94154号公報
甲第9号証:特開2010-95465号公報
甲第10号証:「匂い成分と呈味性ペプチドの相互作用による食品風味への影響に関する多面的解析」2015年度実施状況報告書 課題番号26750025(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/report/KAKENHI-PROJECT-26750025/267500252015hokoku/)
甲第11号証:特開2016-15924号公報
甲第12号証:特開2007-31605号公報
甲第13号証:Meat Science、2014年、Volume97、Issue1、p.27-31
甲第14号証:特開2017-112995号公報
甲第15号証:Journal of Agricultural and Food Chemistry、1994年、Vol.42、No.4、p.984-988
甲第16号証:国際公開第2006/090729号
甲第17号証:DifcoTM &BBLTM Manual Manual of Microbiological Culture Media、2003年、p.291-293
甲第18号証:特開2005-137357号公報
甲第19号証:家政学雑誌、1970年、第21巻、第3号、第160~165頁
甲第20号証:茶業研究報告、2012年、114号、第65~72頁
甲第21号証:特開平11-56231号公報
甲第22号証:特開2015-23829号公報
甲第23号証:「イチゴ23品種における果実の香り解析とその再現並びに香りの成り立ちに関する研究」2008年度研究成果報告書課題番号19580040(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/report/KAKENHI-PROJECT-19580040/19580040seika/)
甲第24号証:特許第6259538号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和4年7月29日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、9、13及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるし、本件特許の請求項1、3及び8ないし14に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び8ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は、申立理由1のうち請求項15に対する進歩性以外の理由を包含するものである。
2 取消理由2(甲16に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、8、11、13及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲16に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるし、本件特許の請求項1、3及び8ないし14に係る発明は、甲16に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び8ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は、申立理由3のうち請求項15に対する進歩性以外の理由を包含するものである。
3 取消理由3(甲18に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、8、13及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲18に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるし、本件特許の請求項1、3及び8ないし14に係る発明は、甲18に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び8ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由3は、申立理由4のうち請求項15に対する進歩性以外の理由を包含するものである。
4 取消理由4(甲22に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、8及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲22に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるし、本件特許の請求項1、3、8ないし12及び14に係る発明は、甲22に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、8ないし12及び14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由4は、申立理由5のうち請求項15に対する進歩性以外の理由を包含するものである。
第6 取消理由についての当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「乳酸菌抗アレルギー活性の高温処理に対する安定化方法、安定化組成物、及び飲食品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は予め付されたものに加え、当審で付したものがある。他の証拠についても同様。
・「実施例1
[0041] アスコルビン酸3gを溶解させた80℃の温水3.5kgで緑茶葉(かぶせ茶・玉露を主とする)100gを約 6分間抽出した。抽出液をメッシュに通して茶葉を取り除き、遠心分離した。その上清に重曹を5g、アスコルビン酸を3g加え、水を加えて12kgにした。本緑茶液を基本緑茶(1)とし、(1)にポリフエノン70A(三井農林株式会社)を8g添加したものを基本緑茶+ポリフエノン70A(2)、遠心分離後の抽出液上清を(1)の2倍量使用したものを茶葉抽出液2倍緑茶(3)、(1)における遠心分離前の抽出液にPVPPを18g添加撹拌し、遠心分離した上清を使用したものをPVPP処理緑茶(4)とした。
[0042] (1)~(4)のpHは6.0~7.0であり、また、(1)~(4)の総ポリフェノール量を、標準液に没食子酸エチルを用いた酒石酸鉄法にて定量した。(参考文献:茶業研究報告第71号(1990)茶の分析法タンニン値の比色定量法)。定量した結果を表1に示す。
[0043][表1]
[図:0001396271000001.jpg]
[0044] 上記緑茶(1)~(4)に乳酸菌Lactobacillus paracasei KW3110株乾燥菌体(加熱死菌:キリンビール(株)機能食品カンパニーより入手)を、0. 02%添加し、UHT殺菌を行った。殺菌条件は、135℃、30秒と、137℃、30秒の条件で行い、500ml容ペットボトルにホットパック充填した。殺菌後の緑茶25mlより8000回転、10分間の遠心分離で乳酸菌の沈殿物を取得した。沈殿物をPBS(-)で洗浄後、再度遠心分離し、沈殿物を5mlのPBS(-)に懸濁した。」
・「実施例4
[0050] アスコルビン酸3gを溶解させた80℃の温水3.5kgで緑茶葉(かぶせ茶・茎茶を主とする)100gを約6分間抽出した。抽出液をメッシュに通して茶葉を取り除き、遠心分離した。その上清に重曹アスコルビン酸・緑茶エキスをそれぞれ3g、乳酸菌Lactoba cillus paracasei KW3110株乾燥菌体を2g加え、水で12kgにメスアップした。これを緑茶(1):pH=6.0とした。上記緑茶(1)の重曹添加量を変更し、pHをそれぞれ、5.5、6.5、7.0に調整したものを緑茶(2)、(3)、(4)とした。該緑茶(1)~(4)をUHT殺菌後、350ml容ペットボトルにホットパック充填した。殺菌後の緑茶より遠心分離で乳酸菌沈殿物を取得し、緑茶中乳酸菌の抗アレルギー能を評価した。実験は実施例(1)と同様の手順で行った。図7に各緑茶に混合した際の、 UHT殺菌による抗アレルギー能の変化を示す。pH5.5、6.0、6.5はUHT殺菌による残存活性は同程度であったのに対し、pH7.0では50%程度低い結果となった。残存抗アレルギー能の高さとpHに相関があることが確認された。」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に実施例1及び4に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1発明」及び「甲1方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「乳酸菌株乾燥菌体を含有する、pHが5.5~7.0の緑茶。」
<甲1方法発明>
「乳酸菌株乾燥菌体を含有する、pHが5.5~7.0の緑茶の製造方法。」
(2)甲16に記載された事項等
ア 甲16に記載された事項
甲16には、「茶-発酵飲料および茶飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「実施例2
[0099] 茶-発酵飲料の製造方法2
(1)凍結乾燥菌体の製造
前前培養
121℃で15分間オートクレーブ滅菌したMRS液体培地(Difco製)10mLに、-80℃で凍結保存したラクトバチルスONRIC b0240(FERM BP-10065)を解凍して10μL加え、このものを33℃で16時間静置培養することにより、本菌株の前前培養液(菌数:約109cfu/mL)を調製した。
[0100] 前培養
121℃で15分間オートクレーブ滅菌したMRS液体培地(Difco製)10mLに、前記で調製した前前培養液100μLを接種し、33℃にて16時間静置培養することにより、本菌株の前培養液(菌数:約109cfu/mL)を調製した。
[0101] 本培養
121°Cで 15分間オートクレーブ滅菌したMRS液体培地(Difco製)1Lに、前記で調製した前培養液10mLを接種し、33°Cにて16時間静置培養することにより、本菌株の本培養液(菌数:約109cfu/mL)を調製した。
[0102] 集菌・洗浄
本培養液1Lを11000回転/分にて10分間遠心分離して菌体を回収し、121℃で15分間オートクレーブ滅菌したリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。さらに遠心分離にて菌体を回収し、再度滅菌済みリン酸緩衝生理食塩水で洗浄後、遠心分離にて菌体を回収した。緑茶エキスパウダー(三栄源社)20gを脱イオン水1000gで溶解後、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した液に上記で回収した菌体を懸濁させ、懸濁液を凍結乾燥した。かくして得られた凍結乾燥菌体粉末中の菌数は、3.7×109cfu/gであった。
[0103] (2)茶-発酵飲料の製造
緑茶エキスパウダー(三栄源社)4gを脱イオン水2000g中に添加後、60℃に加温し、同温度で10分間攪拌してエキスを溶解させた。得られた溶液を室温まで冷却し、滅菌済み試薬瓶に2000mL移した。この液の茶由来のブリックス度は0.36であった。
[0104] 凍結乾燥したラクトバチルスONRIC b0240(FERM BP-10065)3.7×109cfu/gの25mgを前記試薬瓶中に接種し、試薬瓶内容物を33℃で16時間保温して、菌を静置培養した。(想定初期菌数5×104cfu/mL)。
[0105] かくして得られた培養液1000mLに、ビタミンC500mgを添加した後、得られた混合液を加熱殺菌し、適当な容器に充填して、本発明の茶発酵飲料を調製した。
[0106] (3)茶-発酵飲料の品質評価
得られた茶-発酵飲料は、以下の物性を有するものであった。
<凍結乾燥菌を用いて得られた本発明の発酵茶>
pH:4.75
菌数:4.1×106cfu/mL(乳等省令(食品衛生法)乳酸菌数の測定法による)
濁度:0.038(分光光度計U-3000、日立)
乳酸含量:14.8mg/l00mL(高速液体クロマトグラフィ、日本分光)
酢酸含量:0.6mg/100mL(高速液体クロマトグラフィ、日本分光)
クエン酸含量:1.2mg/100mL (高速液体クロマトグラフィ、日本分光)
茶由来のブリックス度:0.24(デジタル示差濃度計DD-5(株式会社アタゴ製))
官能評価:茶の風味があり、酸味が感じられる(供試茶を4℃で試飲させて評価)
上記で得られた本発明茶-発酵飲料は、後述する試験例に示すような試験において、優れたIgA産生促進活性及び粘膜免疫賦活活性を有すると認められた。」
・「実施例5
[0115] 茶-発酵飲料の製造方法3
実施例2において、ラクトバチルスONRIC b0240(FERM P-10065)に代えてラタトバチルス ONRIC b0239(FERM P-10064)を用いて、同様にして、本発明茶-発酵飲料を調製した。
[0116] 得られた本発明茶-発酵飲料は、茶の風味があり、酸味があった。そのpHは5.0であり、菌数は4.0×106cfu/mLであった。
[0117] 上記で得られた本発明茶-発酵飲料は、後述する試験例に示すような試験において、優れた IgA産生促進活性及び粘膜免疫賦活活性を有すると認められた。」
イ 甲16に記載された発明
甲16に記載された事項を、特に実施例2及び5に関して整理すると、甲16には次の発明(以下、順に「甲16発明」及び「甲16方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲16発明>
「乳酸菌凍結乾燥菌体粉末を含有する、pHが4.75又は5.0の緑茶-発酵飲料。」
<甲16方法発明>
「乳酸菌凍結乾燥菌体粉末を含有する、pHが4.75又は5.0の緑茶-発酵飲料の製造方法。」
(3)甲18に記載された事項等
ア 甲18に記載された事項
甲18には、「抗アレルギー用組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【実施例11】
【0107】
(飲料添加原料となる乳酸菌菌体の調製方法)
調製例1.乳酸菌KW3110株菌体の調製
乳酸菌の培養には、培養用培地(グルコース 1%、酵母エキスS(武田キリン社)1%、MgSO4・7H2O 50ppm、MnSO4・5H2O 50ppm)を使用した。前培養は乳酸菌KW3110株を培養用培地10mlに接種し、37℃で20~24hr静置し、行った。本培養は、前培養液0.6mlを120mlの培養用培地に接種し、200ml容ファーメンター(モデルBMJ-25、エイブル社)を用いて、28℃にて培養した。通気量は0.12L/min、攪拌速度は500rpmとした。pHは25% NaOH溶液を用いてpH 4.5以下にならないように制御した。培養は48時間行った。
【0108】
培養終了後、8500Xg、10分間の遠心分離により、菌体を集菌した。30mlの滅菌蒸留水に懸濁し、8500Xg、10分間の遠心分離により、菌体を集菌した。この浄操作を3回繰り返し、培地由来成分を除去した。洗浄菌体を、10mlの滅菌水に懸濁し、オートクレーブにて100℃、30分間処理した後、凍結乾燥した。最終的に乳酸菌乾燥菌体50~70mgが得られた。得られた乳酸菌菌体の抗アレルギー活性を確認した。
【実施例12】
【0109】
(茶系飲料の製造)
85℃の熱水で抽出した烏龍茶、紅茶、緑茶、ほうじ茶、ジャスミン茶の抽出液に対して、茶葉使用率が0.8重量%になるように脱イオン水を追加した。その際、アスコルビン酸を0.025重量%になるように添加し、ついで重曹を用いて飲みやすいpHに調整した。さらに当該調合液100gに対して、乳酸菌KW3110株を菌数が1.5×1010個、3×1010個になるように添加した後、常法通りUHT殺菌をおこない、350ml容PETボトルに充填した。
【0110】
これらの10個の実施例(5種の茶×2段階乳酸菌濃度)をパネラーによる官能評価に供した。その結果いずれの飲料の香味も満足できるものであり、充分毎日継続して飲みつづけられるとの高い評価が得られた。ただし、3×1010個添加したサンプルは外観上、乳酸菌がオリとして目立ちやすく、1.5×1010個の方がより好ましいと評価された。」
イ 甲18に記載された発明
甲18に記載された事項を、特に実施例12に関して整理すると、甲18には次の発明(以下、順に「甲18発明」及び「甲18方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲18発明>
「乳酸菌乾燥菌体を含有する飲みやすいpHに調整された紅茶、緑茶又はほうじ茶である飲料。」
<甲18方法発明>
「乳酸菌乾燥菌体を含有する飲みやすいpHに調整された紅茶、緑茶又はほうじ茶である飲料の製造方法。」
(4)甲22に記載された事項等
ア 甲22に記載された事項
甲22には、「飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0025】
[製造例1]
生卵白34%、スクロース6%、生卵黄0.5%、酵母エキス0.05%、50%乳酸0.15%、および残りが水からなる卵白を含有した混合液3kgを攪拌、調製した。得られた混合液を75℃で10分間加熱した後、乳酸菌スターター0.01%(Lactobacillus bulgaricus、Streptococcus thermophilus)を添加し、42℃で24時間発酵を行なった後、70~90℃で加熱殺菌した。次いで、この発酵物を、高圧ホモジナイザーを用いて30MPaの圧力で加圧破砕し、固形分15%の乳酸発酵卵白液を得た。
【0026】
[製造例2]
製造例1で得られた乳酸発酵卵白液を、スプレードライによって乾燥し、粉末状の乳酸発酵卵白を得た。」
・「【0038】
[実施例7]
製造例1で得られた乳酸発酵卵白液及び製造例2で得られた粉末状の乳酸発酵卵白を用いて、飲料(イチゴ・オレ)を調製した。
具体的には、常法に従って配合表6に示す原料を混合し、均質化した後、90℃達温の加熱殺菌を施し、容器に充填、冷却することにより、本発明の飲料を製した。
【0039】
[配合表6]
乳酸発酵卵白液 10部
脱脂粉乳 10部
オリゴ糖 5部
トレハロース 1部
スクラロース 0.01部
イチゴピューレ 10部
カルボキシメチルセルロース 0.1部
ビタミンE 0.05部
イチゴ香料 0.1部
清水
残余
---------------------------------------------------------
合計 100部」
イ 甲22に記載された発明
甲22に記載された事項を、特に実施例7に関して整理すると、甲22には次の発明(以下、順に「甲22発明」及び「甲22方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲22発明>
「粉末状の乳酸発酵卵白、脱脂粉乳、イチゴピューレ及びイチゴ香料を含有するイチゴ・オレ。」
<甲22方法発明>
「粉末状の乳酸発酵卵白、脱脂粉乳、イチゴピューレ及びイチゴ香料を含有するイチゴ・オレの製造方法。」
2 取消理由1(甲1を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「乳酸菌株乾燥菌体」は本件特許発明1における「乳酸菌粉末」に相当する。
甲1発明における「pHが5.5~7.0の緑茶」は本件特許発明1における「pHが4.6を超える飲料」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末と、
を含有する、pHが4.6を超える飲料。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1においては、「(i)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンとを含有する、
(ii)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iii)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンおよび50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iv)乳酸菌粉末と、20000ppb末満のヌートカトンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する、
(v)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンおよび50000bpb未満のリナロールとを含有する、または
(vi)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトン、50000ppb未満のバレンセンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、検討する。
甲1には、甲1発明が「バレンセン」又は「ヌートカトン」を所定量含有することは記載されていないから、相違点1-1は実質的な相違点である。
また、甲1及び他のいずれの証拠にも、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0024】)という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3、9及び13について
本件特許発明3、9及び13は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明8及び10ないし12について
本件特許発明8及び10ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明14について
ア 対比
本件特許発明14と甲1方法発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲1発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末を含有する、pHが4.6を超える飲料の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-2>
本件特許発明14においては、「(i)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満となるよう、
(ii)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iii)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびバレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iv)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(v)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、または
(vi)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
乳酸菌粉末と混合する工程を含む」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、検討する。
相違点1-2は、上記相違点1-1と実質的に同じである。
よって、上記(1)イと同様に、相違点1-2は実質的な相違点である。
また、甲1及び他のいずれの証拠にも、甲1方法発明において、相違点1-2に係る本件特許発明14の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1方法発明において、相違点1-2に係る本件特許発明14の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明14の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」という効果は、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明14の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明14は、甲1方法発明であるとはいえないし、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、9、13及び14は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1、3及び8ないし14は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3及び8ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
3 取消理由2(甲16を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲16発明を対比する。
甲16発明における「乳酸菌凍結乾燥菌体粉末」は本件特許発明1における「乳酸菌粉末」に相当する。
甲16発明における「pHが4.75又は5.0の緑茶-発酵飲料」は本件特許発明1における「pHが4.6を超える飲料」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末と、
を含有する、pHが4.6を超える飲料。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点16-1>
本件特許発明1においては、「(i)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンとを含有する、
(ii)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iii)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンおよび50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iv)乳酸菌粉末と、20000ppb末満のヌートカトンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する、
(v)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンおよび50000bpb未満のリナロールとを含有する、または
(vi)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトン、50000ppb未満のバレンセンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する」と特定されているのに対し、甲16発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、検討する。
甲16には、甲16発明が「バレンセン」又は「ヌートカトン」を所定量含有することは記載されていないから、相違点16-1は実質的な相違点である。
また、甲16及び他のいずれの証拠にも、甲16発明において、相違点16-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲16発明において、相違点16-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」という効果は、甲16発明並びに甲16及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲16発明であるとはいえないし、甲16発明並びに甲16及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3、8、11及び13について
本件特許発明3、8、11及び13は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲16発明であるとはいえないし、甲16発明並びに甲16及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明9、10及び12について
本件特許発明9、10及び12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲16発明並びに甲16及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明14について
ア 対比
本件特許発明14と甲16方法発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲16発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末を含有する、pHが4.6を超える飲料の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点16-2>
本件特許発明14においては、「(i)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満となるよう、
(ii)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iii)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびバレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iv)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(v)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、または
(vi)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
乳酸菌粉末と混合する工程を含む」と特定されているのに対し、甲16方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、検討する。
相違点16-2は、上記相違点16-1と実質的に同じである。
よって、上記(1)イと同様に、相違点16-2は実質的な相違点である。
また、甲16及び他のいずれの証拠にも、甲16方法発明において、相違点16-2に係る本件特許発明14の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲16方法発明において、相違点16-2に係る本件特許発明14の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明14の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」という効果は、甲16方法発明並びに甲16及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明14の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明14は、甲16方法発明であるとはいえないし、甲16方法発明並びに甲16及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、8、11、13及び14は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1、3及び8ないし14は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3及び8ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。
4 取消理由3(甲18を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲18発明を対比する。
甲18発明における「乳酸菌乾燥菌体」は本件特許発明1における「乳酸菌粉末」に相当する。
甲18発明における「紅茶、緑茶又はほうじ茶である飲料」は本件特許発明1における「飲料」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末と、
を含有する、飲料。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点18-1a>
本件特許発明1においては、「(i)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満となるよう、
(ii)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iii)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびバレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iv)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(v)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、または
(vi)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
乳酸菌粉末と混合する工程を含む」と特定されているのに対し、甲18発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点18-1b>
本件特許発明1においては、「pHが4.6を超える」と特定されているのに対し、甲18発明においては、「飲みやすいpHに調整された」と特定されている点。
イ 判断
相違点18-1aについて検討する。
甲18には、甲18発明が「バレンセン」又は「ヌートカトン」を所定量含有することは記載されていないから、相違点18-1aは実質的な相違点である。
また、甲18及び他のいずれの証拠にも、甲18発明において、相違点18-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲18発明において、相違点18-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」という効果は、甲18発明並びに甲18及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲18発明であるとはいえないし、甲18発明並びに甲18及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3、8及び13について
本件特許発明3、8及び13は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲18発明であるとはいえないし、甲18発明並びに甲18及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明9ないし12について
本件特許発明9ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲18発明並びに甲18及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明14について
ア 対比
本件特許発明14と甲18方法発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲18発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末を含有する、飲料の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点18-2a>
本件特許発明14においては、「(i)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満となるよう、
(ii)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iii)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびバレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iv)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(v)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、または
(vi)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
乳酸菌粉末と混合する工程を含む」と特定されているのに対し、甲18方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点18-2b>
本件特許発明14においては、「pHが4.6を超える」ことが特定されているのに対し、甲18方法発明においては、「飲みやすいpHに調整された」と特定されている点。
イ 判断
相違点18-2aについて検討する。
相違点18-2aは、上記相違点18-1aと実質的に同じである。
よって、上記(1)イと同様に、相違点18-2aは実質的な相違点である。
また、甲18及び他のいずれの証拠にも、甲18方法発明において、相違点18-2aに係る本件特許発明14の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲18方法発明において、相違点18-2aに係る本件特許発明14の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明14の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」という効果は、甲18方法発明並びに甲18及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明14の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明14は、甲18方法発明であるとはいえないし、甲18方法発明並びに甲18及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)取消理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、8、13及び14は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1、3及び8ないし14は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3及び8ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由3によっては取り消すことはできない。
5 取消理由4(甲22を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲22発明を対比する。
甲22発明における「粉末状の乳酸発酵卵白」は本件特許発明1における「乳酸菌粉末」に相当する。
甲22発明における「イチゴ・オレ」は本件特許発明1における「飲料」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末と、
を含有する、飲料。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点22-1a>
本件特許発明1においては、「(i)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンとを含有する、
(ii)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iii)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンおよび50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iv)乳酸菌粉末と、20000ppb末満のヌートカトンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する、
(v)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンおよび50000bpb未満のリナロールとを含有する、または
(vi)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトン、50000ppb未満のバレンセンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点22-1b>
本件特許発明1においては、「pHが4.6を超える」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点22―1aについて検討する。
甲22には、甲22発明が「バレンセン」又は「ヌートカトン」を所定量含有することは記載されていないから、相違点22-1aは実質的な相違点である。
また、甲22及び他のいずれの証拠にも、甲22発明において、相違点22-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲22発明において、相違点22-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」という効果は、甲22発明並びに甲22及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲22発明であるとはいえないし、甲22発明並びに甲22及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3及び8について
本件特許発明3及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲22発明であるとはいえないし、甲22発明並びに甲22及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明9ないし12について
本件特許発明9ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲22発明並びに甲22及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明14について
ア 対比
本件特許発明14と甲22方法発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲22発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末を含有する、飲料の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点22-2a>
本件特許発明14においては、「(i)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満となるよう、
(ii)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iii)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびバレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iv)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(v)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、または
(vi)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
乳酸菌粉末と混合する工程を含む」と特定されているのに対し、甲22方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点22-2b>
本件特許発明14においては、「pHが4.6を超える」と特定されているのに対し、甲22方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点22―2aについて検討する。
相違点22-2aは、上記相違点22-1aと実質的に同じである。
よって、上記(1)イと同様に、相違点22-2aは実質的な相違点である。
また、甲22及び他のいずれの証拠にも、甲22方法発明において、相違点22-2aに係る本件特許発明14の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲22方法発明において、相違点22-2aに係る本件特許発明14の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明14の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」という効果は、甲22方法発明並びに甲22及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明14の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明14は、甲22方法発明であるとはいえないし、甲22方法発明並びに甲22及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)取消理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、8及び14は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1、3、8ないし12及び14は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、8ないし12及び14に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由4によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立て理由について
取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立て理由は、申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうち請求項15に対する進歩性、申立理由2(甲14に基づく進歩性)、申立理由3(甲16に基づく新規性・進歩性)のうち請求項15に対する進歩性、申立理由4(甲18に基づく新規性・進歩性)のうち請求項15に対する進歩性、申立理由5(甲22に基づく新規性・進歩性)のうち請求項15に対する進歩性、申立理由6(明確性要件)、申立理由7(実施可能要件)及び申立理由8(サポート要件)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうち請求項15に対する進歩性について
甲1からは、乳酸菌粉末を含有する飲料の風味改善方法に係る発明は認定できない。
したがって、本件特許発明15は甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許発明15は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項15に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1のうち請求項15に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲14に基づく進歩性)について
(1)甲14に記載された事項等
ア 甲14に記載された事項
甲14には、「微生物菌体含有飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0049】
本発明の飲料のpHは酸性であれば特に限定がされないが、6.5未満が好ましく、6未満がより好ましく、4.5未満がさらに好ましく、4.2未満がさらにより好ましく、4.0未満が特に好ましい。乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを単独で使用する場合は、4.0未満が好ましく、3.7未満がより好ましく、3.5未満がさらに好ましい。」
・「【0064】
(参考例1)乳酸菌菌体粉末(非破壊)の調製
Lactobacillus amylovorus CP1563株(受託番号FERM BP-11255)、またはLactobacilus acidophilus CL-92株(受託番号FERM BP-4981)を自家処方による食品グレードの乳酸菌培地を用いて、37℃、18時間培養し、フィルター濃縮により集菌した。濃縮液を90℃達温殺菌し、凍結乾燥により乳酸菌菌体粉末を得た。
【0065】
(参考例2)破壊処理乳酸菌菌体粉末の調製
Lactobacillus amylovorus CP1563株を自家処方による食品グレードの乳酸菌培地を用いて、37℃、18時間培養し、フィルター濃縮により集菌した。濃縮液を90℃達温殺菌し、凍結乾燥により乳酸菌凍結乾燥粉末を得た。得られた乳酸菌凍結乾燥粉末を、乾式ジェットミル(FS-4、株式会社セイシン企業)を使用して破砕し、菌体の平均長径が処理前の70%以下に縮小した(例:2.77μm→1.30μm)破壊処理乳酸菌菌体粉末を得た。
【0066】
(実施例1~8、比較例1~3)乳化剤添加の効果試験
(1)飲料サンプルの調製
表1に示す配合量で以下の手順により乳性炭酸飲料のサンプルを調製した。20質量%還元脱脂乳250gと3質量%大豆多糖類溶液(商品名:SM-1200、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)400gを混合し、10質量%クエン酸水溶液240gを添加し十分に攪拌した。
【0067】
【表1】
[図:0001396271000002.jpg]
【0068】
別途、60~80℃に加温した10質量%クエン酸三ナトリウム水溶液100gに、食品用乳化剤として市販されている下記の乳化剤を表2に示す配合量で添加して、均一に混合したクエン酸三ナトリウム-乳化剤混合溶液を調製した。この混合溶液に、1質量%の非破壊または破壊処理乳酸菌菌体粉末(参考例1、2で調製)希釈液400gを添加して均一になるように撹拌した。
【0069】
<乳化剤>
[ポリグリセリン脂肪酸エステル]
a.モノミリスチン酸ペンタグリセリン(商品名:「サンソフトA-141EP」、太陽化学 (株)製)
b.モノミリスチン酸デカグリセリン(商品名:「サンソフトQ-14YP」、太陽化学 (株)製)
c.モノラウリン酸ペンタグリセリン(商品名:「サンソフトA-121E」、太陽化学 (株)製)
[有機酸モノグリセリド]
d.コハク酸モノステアリン酸グリセリン(商品名:「サンソフトNo.681SPV」(太陽化学(株)社製)
e.ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリン(商品名:「サンソフトNo.641D」、太陽化学 (株)製)
[その他の乳化剤]
f.ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:「ショ糖脂肪酸エステルA」、太陽化学(株)製)
g.モノステアリン酸ソルビタン(商品名:「サンソフトNo.61S」、太陽化学(株)製)
【0070】
前記のクエン酸水溶液を添加した還元脱脂乳と大豆多糖類溶液との混合溶液と、非破壊または破壊処理乳酸菌菌体粉末を添加したクエン酸三ナトリウム-乳化剤混合溶液とを混合した後、均質化処理を行い、飲料原液を得た。均質化処理は、試験室用ホモゲナイザー(型式15MR、APVゴーリン社製)を用いて、処理温度20℃、処理圧15MPaで行なった。
【0071】
得られた飲料原液に対して、炭酸ガスボリュームが2.4となるようにイオン交換水と無添加炭酸水とによって規定量(10000g)にメスアップした後、耐熱圧ペットボトルに充填した。その後、コールドスポットで65℃、10分間が確保できる殺菌を行い、容器詰め乳性炭酸飲料(以下、「飲料サンプル」という)を得た。なお、飲料のBxは1.2、pHは3.7、SNFは0.5であった。」
イ 甲14に記載された発明
甲14に記載された事項を、実施例1ないし8及び比較例1ないし3に関して整理すると、甲14には次の発明(以下、順に「甲14発明」及び「甲14方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲14発明>
「乳酸菌菌体粉末を含有する、pHが3.7の乳性炭酸飲料。」
<甲14方法発明>
「乳酸菌菌体粉末を含有する、pHが3.7の乳性炭酸飲料の製造方法。」
(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲14発明を対比する。
甲14発明における「乳酸菌菌体粉末」は本件特許発明1における「乳酸菌粉末」に相当する。
甲14発明における「乳性炭酸飲料」は本件特許発明1における「飲料」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末と、
を含有する、飲料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点14-1a>
本件特許発明1においては、「(i)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンとを含有する、
(ii)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iii)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトンおよび50000ppb未満のバレンセンとを含有する、
(iv)乳酸菌粉末と、20000ppb末満のヌートカトンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する、
(v)乳酸菌粉末と、50000ppb未満のバレンセンおよび50000bpb未満のリナロールとを含有する、または
(vi)乳酸菌粉末と、20000ppb未満のヌートカトン、50000ppb未満のバレンセンおよび50000ppb未満のリナロールとを含有する」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点14-1b>
本件特許発明1においては、「pHが4.6を超える」と特定されているのに対し、甲14発明においては、「pHが3.7」と特定されている点。
イ 判断
相違点14-1aについて検討する。
甲14及び他のいずれの証拠にも、甲14発明において、相違点14-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲14発明において、相違点14-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」効果は、甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明3及び8ないし13について
本件特許発明3及び8ないし13は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明14について
ア 対比
本件特許発明14と甲14方法発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲14発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「乳酸菌粉末を含有する、飲料の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点14-2a>
本件特許発明14においては、「(i)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満となるよう、
(ii)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iii)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびバレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(iv)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
(v)バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、または
(vi)ヌートカトンの当該飲料中の濃度が20000ppb未満、バレンセンの当該飲料中の濃度が50000ppb未満、およびリナロールの当該飲料中の濃度が50000ppb未満となるよう、
乳酸菌粉末と混合する工程を含む」と特定されているのに対し、甲14方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点14-2b>
本件特許発明1においては、「pHが4.6を超える」と特定されているのに対し、甲14方法発明においては、「pHが3.7」と特定されている点。
イ 判断
相違点14-2aについて検討する。
相違点14-2aは、上記相違点14-1aと実質的に同じである。
よって、上記(1)イと同様に、甲14及び他のいずれの証拠にも、甲14方法発明において、相違点14-2aに係る本件特許発明14の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲14方法発明において、相違点14-2aに係る本件特許発明14の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明14の奏する「乳酸菌に由来する飲料の培地臭がなく」、「それを飲料のスッキリ感や後味の良さと両立させた、pHが4.6を超える乳酸菌粉末含有飲料を製造することが可能となる」という効果は、甲14方法発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明14の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明14は、甲14方法発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明15について
甲14からは、乳酸菌粉末を含有する飲料の風味改善方法に係る発明は認定できない。
したがって、本件特許発明15は甲14に記載された発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3及び8ないし15は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、3及び8ないし15に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3(甲16に基づく新規性・進歩性)のうち請求項15に対する進歩性について
甲16からは、乳酸菌粉末を含有する飲料の風味改善方法に係る発明は認定できない。
したがって、本件特許発明15は甲16に記載された発明並びに甲16及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許発明15は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項15に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由3のうち請求項15に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
4 申立理由4(甲18に基づく新規性・進歩性)のうち請求項15に対する進歩性について
甲18からは、乳酸菌粉末を含有する飲料の風味改善方法に係る発明は認定できない。
したがって、本件特許発明15は甲18に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許発明15は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項15に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由4のうち請求項15に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
5 申立理由5(甲22に基づく新規性・進歩性)のうち請求項15に対する進歩性について
甲22からは、乳酸菌粉末を含有する飲料の風味改善方法に係る発明は認定できない。
したがって、本件特許発明15は甲22に記載された発明並びに甲22及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許発明15は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項15に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由5のうち請求項15に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
6 申立理由6(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし15の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、本件特許の明細書の記載及び図面とも整合する。
したがって、本件特許発明1ないし15に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 6の主張について検討する。
本件特許の発明の詳細な説明の【0079】の「本発明の飲料の製造方法は、上述したような各種の性状を備える、乳酸菌粉末を含有する、pHが4.6を超える飲料を製造するための方法であって、ヌートカトン、リナロールおよびバレンセンからなる群より選ばれる少なくとも1種を、当該飲料(完成品)中の濃度がそれぞれ20000ppb未満、50000ppb未満または50000ppb未満となるよう、乳酸菌粉末と混合する工程(本明細書において「混合工程」と呼ぶ。)を含む。」という記載及び【0082】の「結果的にヌートカトン、リナロールまたはバレンセンが本発明で規定する所定の濃度で飲料中に存在するようになる実施形態も、本発明の飲料の製造方法に包含される。」という記載を考慮すれば、本件特許発明1ないし4、7、14及び15における「ヌートカトン」、「バレンセン」及び「リナロール」等の香気成分の濃度が、完成品としての飲料中の濃度であることは、当業者に明らかである。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明において、実施例3における「リナロール」の濃度は、天然物に由来するリナロールを算入して計算されていないとしても、本件特許発明1ないし4、7、14及び15は明確である。
また、本件特許発明5、6及び8ないし13も同様に明確である。
したがって、上記第4 6の主張は採用できない。
(4)申立理由6についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由6によっては取り消すことはできない。
7 申立理由7(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし13は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明14は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明15は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の記載には、本件特許発明1ないし15の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし13を生産し、使用することができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明14を使用し、本件特許発明14により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明15を使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし15に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 7の主張について検討する。
実施可能要件を充足するかどうかの判断は、上記(1)の判断基準により行うものであり、特有の香気を感じさせずに配合できるかどうかは、実施可能要件を充足するかどうかの判断と関係がない。
そして、本件特許発明1、14及び15は、「ヌートカトン」、「バレンセン」及び「リナロール」等の香気成分の濃度を所定範囲に調整しているだけであるから、当業者であれば実施可能であることは明らかである。
また、本件特許発明2ないし13も同様に当業者であれば実施可能であることは明らかである。
したがって、上記第4 7の主張は採用できない。
(4)申立理由7についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、申立理由7によっては取り消すことはできない。
8 申立理由8(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0013】の「本発明は、乳酸菌粉末を含有する、pHが4.6を超える(中性付近または弱アルカリ性までの)飲料について、乳酸菌に由来する飲料の培地臭を抑制(低減)する手段を提供すること、好ましくは飲料のスッキリ感や後味の良さを維持しつつ、乳酸菌に由来する飲料の培地臭を抑制(低減)する手段を提供することを課題とする。」という記載によると、本件特許発明1ないし13の解決しようとする課題は「乳酸菌に由来する飲料の培地臭を抑制(低減)」された「乳酸菌粉末を含有する、pHが4.6を超える(中性付近または弱アルカリ性までの)飲料」を提供することであり、本件特許発明14の解決しようとする課題は「乳酸菌に由来する飲料の培地臭を抑制(低減)」された「乳酸菌粉末を含有する、pHが4.6を超える(中性付近または弱アルカリ性までの)飲料」の製造方法を提供することであり、本件特許発明15の解決しようとする課題は「「乳酸菌粉末を含有する、pHが4.6を超える(中性付近または弱アルカリ性までの)飲料」の「乳酸菌に由来する飲料の培地臭を抑制(低減)」する「風味改善方法」を提供すること(以下、総称して「発明の課題」という。)である。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0017】ないし【0023】には、本件特許発明1ないし15に対応する記載がある。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0016】に「柑橘類に比較的豊富に含まれる香気成分のうち、ヌートカトン(ノートカトンと呼ばれることもある。)、リナロールおよびバレンセンを、それぞれの特有の香気を感じさせない弁別閾値(Taste threshold)前後の特定の量で、乳酸菌粉末を含有するpHが4.6を超える飲料に配合することによって、上記の課題を解決できることを見出した。」と記載されている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0087】ないし【0101】において、「乳酸菌粉末」と「ヌートカトン、リナロール、およびバレンセンからなる群より選ばれる少なくとも1種」を含有し、「pHが4.6を超える」という条件を満たす「飲料」の実施例が培地臭を抑制できることを確認している。
そうすると、当業者は、「乳酸菌粉末」と「ヌートカトン、リナロール、およびバレンセンからなる群より選ばれる少なくとも1種」を「それぞれの特有の香気を感じさせない弁別閾値(Taste threshold)前後の特定の量」含有する「pHが4.6を超える飲料」、その製造方法及び「乳酸菌粉末」を含有する「pHが4.6を超える飲料」に「ヌートカトン、リナロール、およびバレンセンからなる群より選ばれる少なくとも1種」を「それぞれの特有の香気を感じさせない弁別閾値(Taste threshold)前後の特定の量」含有させる方法は、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし13は、上記発明の課題を解決できると認識できる「乳酸菌粉末」と「ヌートカトン、リナロール、およびバレンセンからなる群より選ばれる少なくとも1種」を「それぞれの特有の香気を感じさせない弁別閾値(Taste threshold)前後の特定の量」含有する「pHが4.6を超える飲料」をさらに限定したものであり、本件特許発明14は、上記発明の課題を解決できると認識できる製造方法をさらに限定したものであり、本件特許発明15は上記発明の課題を解決できると認識できる方法をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし15は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし15に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 8(1)及び(2)の主張について検討する。
ア 上記第4 8(1)の主張について
高甘味度甘味料以外の甘味料を用いた場合に、所定量のヌートカトン、リナロール又はバレンセンを用いなくても培地臭を低減できるとしても、それは、本件特許発明1ないし15以外にも、発明の課題を解決できると認識できるものがあるということに過ぎない。
そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1ないし15は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、上記第4 8(1)の主張は採用できない。
イ 上記第4 8(2)の主張について
飲料におけるリナロールの濃度を1~10000ppbとした場合に発明の課題を解決できたのであるから、飲料におけるリナロールの濃度が10000ppbを超え、50000ppb未満の場合にも程度に差があったとしても、発明の課題を解決し得ると当業者は理解する。
また、飲料におけるリナロールの濃度が10000ppbを超え、50000ppb未満の場合には、発明の課題を解決できないとする証拠が示されている訳でもない。
したがって、上記第4 8(2)の主張も採用できない。
(4)申立理由8についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、申立理由8によっては取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、取消理由並びに特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700317