特許異議申立
2022-700307
半導体パッケージに用いる熱伝導性組成物
- 審判番号
- 2022-700307
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-507240
- 登録番号
- 6950848
- 請求日
- 2022年04月13日
- 審決日
- 2022年12月14日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友ベークライト株式会社
- 【権利者代理人】速水 進治
- 【異議申立人】南 理沙
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 鈴木 聡一郎
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L) / P1651.841-YAA(H01L) / P1651.851-YAA(H01L) / P1651.854-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6950848号発明「半導体パッケージに用いる熱伝導性組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6950848号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第6950848号の請求項1、3ないし9に係る特許を維持する。
特許第6950848号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6950848号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)3月11日(優先権主張 平成31年3月20日(以下「本願の優先日」という。))を国際出願日とする日本語特許出願であり、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 9月28日 :特許権の設定登録
令和3年10月13日 :特許掲載公報の発行
令和4年 4月13日 :特許異議申立人 南 理沙(以下「申立人
」という。)による特許異議の申立て
令和4年 7月 1日付け:取消理由通知
令和4年 9月 5日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提
出
令和4年10月14日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年9月5日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aで測定される熱伝導率λが、10W/mK以上である、
熱伝導性組成物。
(手順A)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。」
とあるのを、
「当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aで測定される熱伝導率λが、10W/mK以上であり、
当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eが、1GPa以上10.0GPa以下である、
熱伝導性組成物。
(手順A)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。
(手順B)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する。」
と訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~9も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」と記載されているのを、「請求項1に記載の熱伝導性組成物であって、」に訂正する。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~9も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」と記載されているのを、「請求項1または3に記載の熱伝導性組成物であって、」に訂正する。
請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5~9も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」と記載されているのを、「請求項1、3および4のいずれか一項に記載の熱伝導性粗成物であって、」に訂正する。
請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~9も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」と記載されているのを、「請求項1、3~5のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」に訂正する。
請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~9も同様に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」と記載されているのを、「請求項1、3~6のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」に訂正する。
請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」と記載されているのを、「請求項1、3~7のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」に訂正する。
請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」と記載されているのを、「請求項1、3~8のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、」に訂正する。
(10)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~9は、いずれも直接的又は間接的に請求項1を引用するものであるから、本件訂正前の請求項1~9は一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、熱伝導性組成物の貯蔵弾性率の数値範囲及び測定方法を限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1により追加された事項は、本件特許に係る出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項2の記載に基づくものである。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3~9について
訂正事項3~9は、訂正事項2により請求項2が削除されたことに伴い、引用請求項から請求項2を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~9に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた半導体素子と、前記半導体素子の周囲を囲むヒートスプレッダーとを備え、前記半導体素子と前記ヒートスプレッダーとを熱伝導性材料で接合した半導体パッケージにおいて、前記熱伝導性材料を形成するために用いる、熱伝導性組成物であって、
金属粒子と、
バインダー樹脂と、
モノマーと、
を含み、
熱処理により前記金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するものであり、
当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aで測定される熱伝導率λが、10W/mK以上であり、
当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eが、1GPa以上10.0GPa以下である、
熱伝導性組成物。
(手順A)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。
(手順B)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の熱伝導性組成物であって、
前記金属粒子は、銀、金、および銅からなる群から選択される一種以上の金属材料からなる粒子を含む、熱伝導性組成物。
【請求項4】
請求項1または3に記載の熱伝導性組成物であって、
前記バインダー樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、およびアリル樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、熱伝導性組成物。
【請求項5】
請求項1、3および4のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
硬化剤を含む、熱伝導性組成物。
【請求項6】
請求項1、3~5のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
前記モノマーは、グリコールモノマー、アクリルモノマー、エポキシモノマー、およびマレイミドモノマーからなる群から選択される一種以上を含む、熱伝導性組成物。
【請求項7】
請求項1、3~6のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
ラジカル重合開始剤を含む、熱伝導性組成物。
【請求項8】
請求項1、3~7のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
シランカップリング剤を含む、熱伝導性組成物。
【請求項9】
請求項1、3~8のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物であって、
可塑剤を含む、熱伝導性組成物。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
訂正前の請求項1、3~9に係る特許に対して、当審において令和4年7月1日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1 取消理由1(サポート要件)
請求項1、3~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである
2 取消理由2(進歩性)
請求項1、3~9に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証:国際公開第2015/151136号
また、上記取消理由通知における上記取消理由2において、周知技術が記載されたものとして引用された文献は次のとおりである。
特開2010-278281号公報(以下「周知文献1」という。)
特開2013-247274号公報(以下「周知文献2」という。)
特開2012-129335号公報(以下「周知文献3」という。)
なお、申立人は、以下の甲第2号証も提出しているので、次項の第5においては、この証拠方法についても併せて検討した。
甲第2号証:特許第6005313号公報
第5 当審の判断
1 取消理由1(サポート要件)について
(1)特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについては、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
(2)本件特許に係る出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0010】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題(以下、「本件課題」という。)は、「放熱特性に優れた半導体パッケージ、半導体パッケージの製造方法、およびそれに用いる熱伝導性組成物」を「提供」することである。
(3)発明の詳細な説明の記載について
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0014】
本実施形態の半導体パッケージの概要を説明する。
図1は、本実施形態の半導体パッケージの一例を模式的に示す断面図である。
【0015】
本実施形態の半導体パッケージ100は、基板10、半導体素子20、ヒートスプレッダー30および熱伝導性材料50を備える。半導体素子20は、基板10上に設けられており、ヒートスプレッダー30は、半導体素子20の周囲を囲み、熱伝導性材料50は、半導体素子20とヒートスプレッダー30とを接合している。
・・・
【0030】
熱伝導性材料50は、熱処理により金属粒子がシンタリングを起こして形成される粒子連結構造を有するものである。
・・・
【0042】
以下、本実施形態の熱伝導性組成物の各成分について詳述する。
【0043】
上記熱伝導性組成物は、基板と、基板10上に設けられた半導体素子20と、半導体素子20の周囲を囲むヒートスプレッダー30とを備え、半導体素子20とヒートスプレッダー30とを熱伝導性材料50で接合した半導体パッケージにおいて、熱伝導性材料50を形成するために用いるものである。
上記熱伝導性組成物は、熱処理により金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するもので、これによって、熱伝導性材料50を形成できる。
【0044】
本実施形態の熱伝導性組成物は、上記金属粒子とともに、バインダー樹脂およびモノマーと、を含むものである。
・・・
【0046】
また、当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aで測定される熱伝導率λの下限は、例えば、10W/mK以上、好ましくは15W/mK以上、より好ましくは20W/mK以上である。これにより、半導体パッケージ100の放熱特性を向上できる。一方、熱伝導率λの熱伝導率の上限は、例えば、200W/mK以下でもよく、150W/mK以下でもよい。
(手順A)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。
【0047】
当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eの上限は、例えば、10GPa以下、好ましくは9GPa以下、より好ましくは8GPa以下である。これにより、熱伝導性材料50を低弾性化できるため、応力ひずみによるクラックの発生や密着性の低下を抑制できる。25℃における貯蔵弾性率Eの上限は、例えば、1GPa以上、好ましくは2GPa以上、より好ましくは3GPa以上でもよい。これにより、耐久性に優れた熱伝導性材料50を実現できる。貯蔵弾性率は、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)で測定することで得られる。
・・・
【0110】
・・・(手順B)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(MPa)を測定する。・・・」
「【実施例】
【0111】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0112】
<熱伝導性組成物>
下記の表1に示す配合量に従って、各原料成分を混合し、ワニスを得た。
得られたワニス、溶剤、金属粒子を、下記の表1に示す配合量に従って配合し、常温で、3本ロールミルで混練して、ペースト状の熱伝導性組成物を作製した。
【0113】
以下、表1の原料成分の情報を示す。
(バインダー樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(日本化薬社製、RE-303S)
【0114】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビスフェノールF骨格を有するフェノール樹脂(室温25℃で固体、DIC製、DIC-BPF)
・硬化剤2:m,p-クレジルグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、mp-CGE)(アクリルモノマー)
・アクリルモノマー1:(メタ)アクリルモノマー(エチレングリコールジメタクリレート、共栄化学社製、ライトエステルEG)
・アクリルモノマー2:ポリアルキレングリコールジメタクリレート(日油製、PDE-600)
【0115】
(可塑剤)
・可塑剤1:アリル樹脂(関東化学社製、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2-プロペニル)とプロパン-1,2-ジオールとの重合体)
【0116】
(シランカップリング剤)
・シランカップリング剤1:メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(信越化学工業社製、KBM-503P)
・シランカップリング剤2:3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-403E)
【0117】
(硬化促進剤)
・イミダゾール硬化剤1:2-フェニル-1H-イミダゾール-4,5-ジメタノール(四国化成工業社製、2PHZ-PW)
【0118】
(重合開始剤)
・ラジカル重合開始剤1:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ社製、パーカドックスBC)
【0119】
(溶剤)
・溶剤1:ブチルプロピレントリグリコール(BFTG)
【0120】
(金属粒子)
・銀粒子1:銀粉(DOWAハイテック社製、AG-DSB-114、球状、D50:1μm)
・銀粒子2:銀粉(福田金属箔粉工業社製、HKD-16、フレーク状、D50:2μm)
・銀コート樹脂粒子1:銀メッキアクリル樹脂粒子(山王社製、SANSILVER-8D、球形状、D50:8μm、単分散粒子、比重:2.4、銀の重量比率50wt%、樹脂の重量比率50wt%)
・銀粒子3:銀粉(TC-88、徳力本店社製、フレーク状、D50:3μm)
【0121】
【表1】
[図:0001395215000001.jpg]
【0122】
得られた熱伝導性組成物を用いて、下記の物性を測定し、評価項目を評価した。
【0123】
(熱伝導率)
得られた熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得た。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて、熱処理体の厚み方向の熱拡散係数αを測定した。なお、測定温度は25℃とした。
さらに、示差走査熱量(Differential scanning calorimetry:DSC)測定により比熱Cpを測定し、また、JIS-K-6911に準拠して測定した密度ρを測定した。これらの値を用いて、以下の式に基づいて、熱伝導率λを算出した。
評価結果を下記表1に示す。なお、単位はW/(m・K)である。
熱伝導率λ[W/(m・K)]=α[m2/sec]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm3]
実施例1、参考例1の熱伝導率のいずれも、20W/(m・K)以上であり、実用上において問題なく使用できるものであった。
【0124】
(貯蔵弾性率)
得られた熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体を得た。得られた熱処理体について、測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、DMS6100)を用いて、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)で、25℃における貯蔵弾性率E(MPa)を測定した。
【0125】
(粒子連結構造の観察)
銅リードフレームと、シリコンチップ(長さ2mm×幅2mm、厚み0.35mm)とを準備した。次いで、シリコンチップに、得られた熱伝導性組成物を塗布厚み25±10μmとなるように塗布し、その上に銅リードフレームを配置した。シリコンチップ、熱伝導性組成物、銅リードフレームがこの順で積層してなる積層体を作製した。
次いで、得られた積層体を、大気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理を行い、積層体中の熱伝導性組成物を硬化させ、熱伝導性材料を得た。
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、積層体中の熱伝導性組成物の熱処理体の断面を観察し、その状態を評価した。
【0126】
実施例1において、図2に示すとおり、銀粒子連結構造が形成されていたことを確認した。また、断面画像(図2)において、銀粒子連結構造に略円形の樹脂粒子が複数個含まれており、その樹脂粒子の表面における金属層(銀層)と銀粒子連結構造とが連結していることも確認された。さらに、バインダー樹脂の硬化物は、銀粒子連結構造内部において、銀以外の部分に銀を覆うようにして存在していることが確認された。
【0127】
(ダイシェア強度)
得られた熱伝導性組成物を、表面ニッケルメッキの銅基板上に塗布し、その上に表面ニッケルメッキのシリコンチップ(2mm×2mm)をマウントした。その後、オーブンにて30℃~200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分加熱することで硬化させた。
このサンプルを260℃に熱した熱板上に置き、DAGE-4000(Nordson社製)を用いてダイシェア強度(N/2mm×2mm)を測定した。
【0128】
実施例1~3では、熱伝導性材料の内部において凝集破壊が起こり、参考例1では、熱伝導性材料とリードフレームとの界面において、界面剥離が生じた。
【0129】
実施例1~3の熱伝導性組成物を用いて、次のようにして半導体パッケージを得た。
基板の一面上に、他面が対向するように半導体素子を設置した。半導体素子の一面側の表面に、金属粒子を含む熱伝導性組成物を塗布した。熱伝導性組成物に接するとともに、半導体素子の一面を覆うようにヒートスプレッダーを配置した。基板、半導体素子、熱伝導性組成物およびヒートスプレッダーを含む構造体を加熱処理した。加熱処理によって、熱伝導性組成物中の金属粒子がシンタリングを起こして形成される粒子連結構造を含む熱伝導性材料を介して、半導体素子とヒートスプレッダーとを接合し、半導体パッケージを得た。
【0130】
比較例1として、実施例1の熱伝導性組成物に代えて、アクリル系接着剤を使用して、半導体パッケージを得た。
【0131】
実施例1~3、比較例1の半導体パッケージを評価用サンプルとして用い、半導体素子の表面について、レーザーフラッシュ法によって熱拡散係数を測定した。実施例1~3が、比較例1よりも高い熱拡散係数を示すことから、実施例1~3の半導体パッケージは、放熱特性に優れた構造を有することができることが分かった。
また、実施例1~3の半導体パッケージにおいて、比較例1と比べて、熱伝導性材料と半導体素子との接着界面、および、熱伝導性材料とヒートスプレッダーとの接着界面のいずれにおいても、接着強度が高い値を示した。
【0132】
実施例1~3の熱伝導性材料は、参考例1に比べてダイシェア強度に優れることが分かった。このような実施例1~3の熱伝導性材料をTIM1材として使用することで、放熱特性に優れた半導体パッケージを実現することができる。」
(当審注:上記【0121】の【表1】における「貯蔵弾性率@25℃」の「単位」である「GPa」は、上記【0047】、【0124】の記載を参酌すると、「MPa」の誤記であると解される。また、上記【0110】の「貯蔵弾性率E(MPa)」の記載は、「貯蔵弾性率E(GPa)」の誤記と解される。)
イ 発明の詳細な説明の記載事項、及び、発明の詳細な説明に記載された発明について
(ア)上記アの【0014】には、「本実施形態の半導体パッケージの概要を説明する」と記載されているから、発明の詳細な説明には、「半導体パッケージ」が記載されているといえる。
(イ)同【0015】には、「本実施形態の半導体パッケージ100は、基板10、半導体素子20、ヒートスプレッダー30および熱伝導性材料50を備える。半導体素子20は、基板10上に設けられており、ヒートスプレッダー30は、半導体素子20の周囲を囲み、熱伝導性材料50は、半導体素子20とヒートスプレッダー30とを接合している。」と記載されているから、「半導体パッケージ」は、「基板」と、「基板」上に設けられた「半導体素子」と、「半導体素子」の周囲を囲む「ヒートスプレッダー」を備え、「半導体素子」と「ヒートスプレッダー」とを「熱伝導性材料」で接合したものといえる。
(ウ)同【0042】には、「以下、本実施形態の熱伝導性組成物の各成分について詳述する」と記載され、同【0043】には、「上記熱伝導性組成物は、・・・熱伝導性材料50を形成するために用いるものである」と記載されているから、「熱伝導性組成物」は、「熱伝導性材料」を形成するために用いるといえる。
(エ)同【0043】には、「上記熱伝導性組成物は、熱処理により金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するもので、これによって、熱伝導性材料50を形成できる」と記載されているから、「熱伝導性組成物」は、熱処理により「金属粒子」がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するといえる。
(オ)同【0044】には、「本実施形態の熱伝導性組成物は、上記金属粒子とともに、バインダー樹脂およびモノマーと、を含むものである。」と記載されているから、「熱伝導性組成物」は、「金属粒子」、「バインダー樹脂」及び「モノマー」を含むといえる。
(カ)同【0046】には、「当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aで測定される熱伝導率λの下限は、例えば、10W/mK以上・・・である」と記載され、更に、「手順A」について、同【0046】には、「(手順A) 当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。」と記載されているから、「熱伝導性組成物」は、当該「熱伝導性組成物」を用いて、上記手順Aで測定される熱伝導率λの下限が、10W/mK以上であるといえる。
(キ)同【0047】には、「当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eの上限は、例えば、10GPa以下・・・である」、「25℃における貯蔵弾性率Eの上限は、例えば、1GPa以上・・・でもよい。」(当審注:「上限」は、「下限」の誤記と解される。)と記載されており、更に、「手順B」について、同【0110】には、「(手順B) 当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する。」と記載されているから、「熱伝導性組成物」は、当該「熱伝導性組成物」を用いて、上記手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eが、1GPa以上10GPa以下であるといえる。
(ク)上記(ア)~(キ)によれば、発明の詳細な説明には以下の発明が記載されているといえる。
「基板と、前記基板上に設けられた半導体素子と、前記半導体素子の周囲を囲むヒートスプレッダーとを備え、前記半導体素子と前記ヒートスプレッダーとを熱伝導性材料で接合した半導体パッケージにおいて、前記熱伝導性材料を形成するために用いる、熱伝導性組成物であって、
金属粒子と、
バインダー樹脂と、
モノマーと、
を含み、
熱処理により前記金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するものであり、
当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aで測定される熱伝導率λが、10W/mK以上であり、
当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eが、1GPa以上10.0GPa以下である、
熱伝導性組成物。
(手順A)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。
(手順B)
当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する。」
ウ 発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲について
(ア)上記アの【0046】に「また、当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Aで測定される熱伝導率λの下限は、例えば、10W/mK以上、好ましくは15W/mK以上、より好ましくは20W/mK以上である。これにより、半導体パッケージ100の放熱特性を向上できる。」と記載されているから、「熱伝導性組成物」を用いて手順Aで測定される熱伝導率λが10W/mK以上であることにより、半導体パッケージの放熱特性を向上でき、もって、本件課題を解決することができると当業者が認識できるといえる。
(イ)一方、同【0111】~【0132】には、「熱伝導性組成物」について、実施例1~3、参考例1、及び、比較例が記載されているところ、同【0128】に「参考例1では、熱伝導性材料とリードフレームとの界面において、界面剥離が生じた。」と記載されており、熱伝導性材料とリードフレームとの界面において界面剥離が生じれば、放熱特性に優れた半導体パッケージを提供することができないことからすれば、発明の詳細な説明に記載された参考例1は、本件課題を解決することができると当業者が認識できるものとはいえない。
(3)本件発明1について
ア 上記(2)イ(ク)によれば、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
イ また、本件発明1は、「手順Aで測定される熱伝導率λが、10W/mK以上であ」るところ、上記(2)ウ(ア)によれば、本件発明1は、本件課題を解決することができると当業者が認識できる範囲にあるものといえる。
ウ なお、本件発明1は、「手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eが1GPa以上10.0GPa以下である」のに対し、上記(2)アの【表1】によれば、発明の詳細な説明に記載された参考例1の貯蔵弾性率は10.4GPaであるから、当該参考例1は本件発明1に包含されない。
そうすると、上記(2)ウ(イ)のとおり、参考例1が本件課題を解決することができると当業者が認識できるものではないとしても、当該参考例1が、本件発明1が本件課題を解決することができると当業者が認識できる範囲にあるか否かを左右するものとはいえない。
エ 以上によれば、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであり、請求項1の記載はサポート要件を満たす。
(4)本件発明3~9について
本件発明3~9もまた、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであり、請求項3~9の記載はサポート要件を満たすといえる。
(5)取消理由通知について
令和4年7月1日付け取消理由通知に記載した取消理由1においては、本件訂正前の請求項1、3~9に係る発明が、発明の詳細な説明に記載された参考例1を包含し、かつ、当該参考例1は本件課題が解決されると当業者が認識できるものではないから、本件訂正前の請求項1、3~9に係る発明は本件課題が解決されると当業者が認識できる範囲を超えるものであるとする。
これに対し、本件訂正により、本件発明1、3~9が、「手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eが1GPa以上10.0GPa以下である」ものに訂正された結果、上記参考例1は包含されなくなり、取消理由1は解消した。
(6)申立人の主張について
ア 特許異議申立書における主張
申立人は、本件発明が、「金属粒子と、バインダー樹脂と、モノマーと、を含み」との発明特定事項を備えるのに対し、本件明細書の実施例では、銀粒子と、1種のエポキシ樹脂と、2種のアクリルモノマーとを用いた具体例が示されているのみであり、本件明細書には、本件発明の粒子連結構造に関し、詳細なメカニズムが定かでないから、実施例における特定の金属粒子と、特定のバインダー樹脂と、特定のモノマーとを含む熱伝導性組成物から、本件明細書に記載される金属粒子、バインダー樹脂及びモノマーのいずれのものを用いた場合にも、実施例と同じように課題が解決されるか否かを到底把握できるものではない旨、主張する。(特許異議申立書の第27頁第4行~第28頁第10行。)
しかしながら、発明の詳細な説明の記載に記載された実施例の具体例でなくとも、熱伝導性組成物を用いて上記手順Aで測定される熱伝導率λが10W/mK以上であることにより、半導体パッケージの放熱特性を向上でき、もって、本件課題を解決することができると当業者が認識できることは、上記(2)ウ(ア)のとおりである。
そして、本件発明1、3~9が、いずれも、熱伝導性組成物を用いて上記手順Aで測定される熱伝導率λが10W/mK以上であることからすれば、本件課題は、本件発明1、3~9により解決できると当業者に認識できるといえる。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
イ 意見書における主張
申立人は、本件発明は、「モノマーの揮発によって金属粒子の連結構造(粒子連結構造)を形成するという作用によって、熱伝導率入が10W/mK以上との放熱特性に関する課題1」、及び、「金属粒子が凝集した粒子連結構造によって高弾性化し、応力ひずみが生じ易くなるという課題2」を有し、「優れた放熱特性を発揮させるための粒子連結構造であってモノマーによって形成する粒子連結構造に起因する高弾性化を如何にして抑制するか」という課題を解決するものであるところ、本件特許に係る出願の出願時の技術常識に照らしても、あらゆる金属粒子を用いた場合にも、実施例1と同様に上記課題1を解決した上で上記課題2を解決できるかを把握できるものではないから、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たさない旨を主張する。(令和4年10月14日に提出された申立人による意見書の第4頁第17行~第7頁第10行。)
しかしながら、本件課題は上記(2)のとおりであり、本件発明1、3~9が必ずしも、申立人が主張する上記課題1及び2を解決する必要はないといえる。
また、本件課題が、本件発明1、3~9により解決できると当業者に認識できることは、上記アのとおりである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(7)小括
以上のとおりであるから、本件発明1、3~9は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
したがって、請求項1、3~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、取消理由1には理由がない。
2 取消理由2(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 本件発明1
本件発明1は、上記「第3 本件発明」に記載したとおりのものであると認める。
イ 甲第1、2号証及び周知文献1~3の記載事項並びに甲1発明
(ア)甲第1号証について
a 本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証:国際公開第2015/151136号(2015年10月8日国際公開)には、次の記載がある(当審注:下線は当審による。以下、同様である。)。
「技術分野
[0001] 本発明は、熱硬化性樹脂組成物並びに該熱硬化性樹脂組成物を使用して製造した半導体装置及び電気・電子部品に関するものである。」
「背景技術
・・・
[0007] ここで、通常、高熱伝導性を有する接着剤を得るには、銀粉、銅粉などの金属フィラーや窒化アルミニウム、窒化ボロンなどのセラミック系フィラーなどを充填剤として有機系のバインダーに高い含有率で分散させる必要がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、その結果、硬化物の弾性率が高くなってしまい、良好な熱伝導性と良好なリフロー性(上記リフロー処理後に剥離が生じにくいこと)を併せ持つことは困難であった。」
「発明が解決しようとする課題
・・・
[0014] そこで、本発明は、熱伝導性に優れ、低応力性に優れ、接着特性が良好でリフロー剥離耐性を有する樹脂組成物並びに該樹脂組成物を接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置及び電気・電子部品を提供することを目的とする。」
「発明を実施するための形態
・・・
[0031] この(A1)プレート型銀微粒子は100~250℃で自己焼結可能である。このように100~250℃で自己焼結する銀微粒子を含有することで、熱硬化時に銀微粒子の流動性が向上し、その結果、銀微粒子同士の接点がより多くなる上に、接点の面積が大きくなり、導電性が格段に向上する。したがって、プレート型銀微粒子の焼結温度は、より好ましくは100~200℃である。なお、ここで自己焼結可能であるとは加圧もしくは添加剤等を加えなくても、融点よりも低い温度での加熱で焼結することをいう。
・・・
[0062] 本発明で使用する(D)熱硬化性樹脂は、一般に接着剤用途として使用される熱硬化性樹脂であれば特に限定されずに使用できる。中でも、液状樹脂であることが好ましく、室温(25℃)で液状である樹脂がより好ましい。この(D)熱硬化性樹脂としては、例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。
・・・
[0087] ここで、(D)成分がアクリル樹脂である場合は、その重合にあたって、一般に重合開始剤が使用されるが、重合開始剤としては熱ラジカル重合開始剤が好ましく、公知の熱ラジカル重合開始剤であれば特に限定されずに使用できる。・・・このような特性を満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、・・・ジクミルパーオキサイド、・・・などが挙げられる。
・・・
[0111] 本発明の熱硬化性樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、硬化促進剤、ゴムやシリコーン等の低応力化剤、カップリング剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤(顔料、染料)、各種重合禁止剤、酸化防止剤、溶剤、その他の各種添加剤を、必要に応じて配合することができる。これらの各添加剤はいずれも1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
[0112] このような添加剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、クレイドシラン、ビニルシラン、スルフィドシランなどのシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤などのカップリング剤、カーボンブラックなどの着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの固形低応力化成分、ハイドロタルサイトなどの無機イオン交換体、などが挙げられる。
・・・
[0114] このようにして得られる本発明の熱硬化性樹脂組成物は、高熱伝導性、熱放散性に優れる。そのため、素子や放熱部材の基板等への接合材料として使用すると、装置内部の熱の外部への放散性が改善され、製品特性を安定させることができる。
[0115] 次に、本発明の半導体装置及び電気・電子部品について説明する。
本発明の半導体装置は、上記した熱硬化性樹脂組成物を用いて、半導体素子を素子支持部材となる基板上に接着してなるものである。すなわち、ここで熱硬化性樹脂組成物はダイアタッチペーストとして使用される。
・・・
[0118] また、本発明の電気・電子部品は、上記した熱硬化性樹脂組成物を用いて、発熱部材に放熱部材を接着してなるものである。すなわち、ここで熱硬化性樹脂組成物は放熱部材接着用材料として使用される。
[0119] ここで、発熱部材としては、上記した半導体素子又は該半導体素子を有する部材でもよいし、それ以外の発熱部材でもよい。半導体素子以外の発熱部材としては、光ピックアップ、パワートランジスタ等が挙げられる。また、放熱部材としては、ヒートシンク、ヒートスプレッダー等が挙げられる。」
「実施例
[0121] 次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[0122] (実施例1~10、比較例1~4)
表1及び表2の配合に従って各成分を混合し、ロールで混練し、樹脂ペーストを得た。得られた樹脂ペーストを以下の方法で評価した。その結果を表1及び表2に併せて示す。なお、実施例及び比較例で用いた材料は、下記の通りの市販品を使用した。
・・・
[0128] [熱伝導率]
JIS R 1611-1997に従い、レーザーフラッシュ法により硬化物の熱伝導率を測定した。
・・・
[0134] [表1]
[図:0001395215000002.jpg]
」
b 甲第1号証の記載事項
(a)上記aの[0001]には、「本発明は、熱硬化性樹脂組成物並びに該熱硬化性樹脂組成物を使用して製造した半導体装置及び電気・電子部品に関するものである。」と記載されており、同[0014]には、「そこで、本発明は、熱伝導性に優れ、低応力性に優れ、接着特性が良好でリフロー剥離耐性を有する樹脂組成物並びに該樹脂組成物を接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置及び電気・電子部品を提供することを目的とする。」と記載されているから、甲第1号証は、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」に関するものであるといえる。
(b)同[0118]には、「また、本発明の電気・電子部品は、上記した熱硬化性樹脂組成物を用いて、発熱部材に放熱部材を接着してなるものである。」と記載されており、同[0119]には、「ここで、発熱部材としては、上記した半導体素子又は該半導体素子を有する部材でもよいし、それ以外の発熱部材でもよい。半導体素子以外の発熱部材としては、光ピックアップ、パワートランジスタ等が挙げられる。また、放熱部材としては、ヒートシンク、ヒートスプレッダー等が挙げられる。」と記載されており、同[0114]には、「このようにして得られる本発明の熱硬化性樹脂組成物は、高熱伝導性、熱放散性に優れる。そのため、素子や放熱部材の基板等への接合材料として使用すると、装置内部の熱の外部への放散性が改善され、製品特性を安定させることができる。」と記載されているから、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」は、「電気・電子部品」において、「半導体素子」と、「ヒートスプレッダー」とを接合する接合材料として使用されるものである。
また、同[0115]には「本発明の半導体装置は、上記した熱硬化性樹脂組成物を用いて、半導体素子を素子支持部材となる基板上に接着してなるものである。」と記載されているから、同[0119]における「上記した半導体素子」は、「基板」上に形成されているものであるといえる。
以上のことから、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」は、「基板」と、当該「基板」上に形成された「半導体素子」と、「ヒートスプレッダー」とを備え、前記「半導体素子」と前記「ヒートスプレッダー」とを接合材料で接合した「電気・電子部品」において、前記接合材料として使用されるものである
(c)同[0122]には、「(実施例1~10、比較例1~4)表1及び表2の配合に従って各成分を混合し、ロールで混練し、樹脂ペーストを得た。」と記載されており、同[0134]の[表1]には、「実施例4」として、「(A1)プレート型銀微粒子」と、「(D1)ヒドロキシルエチルアクリルアミド」と、「ジエチレングリコール」と、重合開始剤である「ジクミルパーオキサイド」とを含むものが記載されている。
ここで、技術常識からすれば、「樹脂ペースト」は、「樹脂組成物」であり、かつ、上記「実施例1~10」は、甲第1号証に記載された「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」の実施例である。
以上によれば、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」は、「(A1)プレート型銀微粒子」と、「(D1)ヒドロキシルエチルアクリルアミド」と、「ジエチレングリコール」と、重合開始剤である「ジクミルパーオキサイド」とを含むといえる。
(d)同[0111]には、「本発明の熱硬化性樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、・・・硬化促進剤・・・を、必要に応じて配合することができる。」と記載されているから、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」は、「硬化促進剤」を含むといえる。
(e)同[0111]には、「本発明の熱硬化性樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、・・・その他の各種添加剤を、必要に応じて配合することができる。」と記載されており、同[0112]には、「このような添加剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、クレイドシラン、ビニルシラン、スルフィドシランなどのシランカップリング剤や、・・・、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの固形低応力化成分、・・・、などが挙げられる。」と記載されているから、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」は、「シランカップリング剤」と、「シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの固形低応力化成分」とを含むといえる。
(f)同[0031]には、「この(A1)プレート型銀微粒子は100~250℃で自己焼結可能である。このように100~250℃で自己焼結する銀微粒子を含有することで、熱硬化時に銀微粒子の流動性が向上し、その結果、銀微粒子同士の接点がより多くなる上に、接点の面積が大きくなり、導電性が格段に向上する。」と記載されているから、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」の「(A1)プレート型銀微粒子」は、100~250℃で自己焼結し、当該銀粒子同士に接点が形成されるものといえる。
(g)同[0128]には、「JIS R 1611-1997に従い、レーザーフラッシュ法により硬化物の熱伝導率を測定した。」と記載されており、同[0134]の[表1]には、「実施例4」の熱伝導率が「150W/m・K」であることが記載されているから、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」は、JIS R 1611-1997に従いレーザーフラッシュ法により測定した硬化物の熱伝導率が「150W/m・K」である、といえる。
c 甲第1号証に記載された発明
上記bの記載事項から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板と、当該基板上に形成された半導体素子と、ヒートスプレッダーとを備え、前記半導体素子と前記ヒートスプレッダーとを接合材料で接合した電気・電子部品において、前記接合材料として使用される熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物において、
(A1)プレート型銀微粒子と、
(D1)ヒドロキシルエチルアクリルアミドと、
ジエチレングリコールと、
重合開始剤であるジクミルパーオキサイドと、
硬化促進剤と、
シランカップリング剤と、
シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの固形低応力化成分と、
を含み、
前記(A1)プレート型銀微粒子は、100~250℃で自己焼結し、当該銀粒子同士に接点が形成されるものであり、
JIS R 1611-1997に従い、レーザーフラッシュ法により測定した硬化物の熱伝導率が150W/m・Kである、
熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物。」
(イ)甲第2号証について
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証:特許第6005313号公報(平成28年10月12日発行)には、次の記載がある。
「【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特に、金属粒子(P)と、樹脂(M)と、所定の有機ホスフィン類(A)および所定のスルフィド系化合物(B)の少なくもとも一方とを組み合わせ、かつ、貯蔵弾性率および加熱重量減少率をそれぞれ所定の範囲とすることによって、例えば半導体チップ(特にパワーデバイス)と、リードフレームの素子担持部上または絶縁基板の回路電極部との間に、鉛フリーで、接合・焼結後の耐熱性と実装信頼性の双方に優れた接合層を形成することが可能な、導電接合材として用いるのに好適な導電性接着フィルムが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 金属粒子(P)と、樹脂(M)と、下記一般式(1)で示される有機ホスフィン類(A)および下記一般式(2)で示されるスルフィド系化合物(B)の少なくとも一方とを含み、
前記樹脂(M)は、熱硬化性樹脂(M1)を含み、 前記熱硬化性樹脂(M1)は、イミド基を1分子中に2単位以上有するマレイン酸イミド化合物を含み、
前記金属粒子(P)が、前記第1の金属粒子(P1)と、該第1の金属粒子(P1)とは異なる金属成分系をもち、かつ、第1の金属粒子(P1)とともに、互いに、金属間化合物を形成し得る金属成分を含む第2の金属粒子(P2)と、を含む混合物であり、
前記第1の金属粒子(P1)は、銅、ニッケル、アルミニウムおよびスズの群から選択される1種の金属またはこれらの群から選択される2種以上を含有する合金からなり、
前記第2の金属粒子(P2)は、銅、ニッケル、アルミニウム、スズ、亜鉛、チタン、銀、金、インジウム、ビスマス、ガリウムおよびパラジウムの群から選択される1種の金属またはこれらの群から選択される2種以上を含有する合金からなり、
焼結後の状態で測定した1Hzにおける貯蔵弾性率が、20GPa以下であり、
窒素雰囲気下、250℃で2時間加熱したときの加熱重量減少率が、1%未満である、
導電性接着フィルム。」
「【0060】
また、本実施形態に係る導電性接着フィルムは、焼結後の状態で測定した1Hzにおける貯蔵弾性率が、20GPa以下である。貯蔵弾性率を上記範囲とすることにより、強固な接着力を発揮しつつ、適度な柔軟性を有し、冷熱衝撃試験(TCT)にて評価される耐熱疲労性において、優れた性能を発揮することができる。また、貯蔵弾性率は、好ましくは1000~20000MPa、さらに好ましくは5000~20000MPaである。なお、貯蔵弾性率の測定方法は、後述する実施例の項で説明する。」
「【0096】
[貯蔵弾性率(柔軟性)]
上記本実施例および比較例に係る導電性接着フィルムをテフロン(登録商標)シート上で、窒素雰囲気下、250℃で、2時間加熱して焼結させた後、5mm×30mmの短冊状に切断して測定用サンプルを得た。次に、この測定用サンプルについて、動的粘弾性測定装置DMA(株式会社ユービーエム製E4000)を用いて、周波数1Hz、ひずみ量0.3%のせん断条件で、室温における貯蔵弾性率を測定した。」
「【0099】
[せん断接着力(接着性・耐熱性)]
上記本実施例および比較例に係るダイシング・ダイボンディングフィルムを、裏面がAuメッキされたSiウェハの表面に100℃で貼合した後、5mm角にダイシングして、個片化したチップ(Auメッキ/Siウエハ/導電性接着フィルム)を得た。このチップを、Agメッキされた金属リードフレーム上に、140℃でダイボンディングした後、230℃で3時間焼結して、測定用サンプルを得た。
得られた測定用サンプルについて、冷熱衝撃試験(以下、「TCT」という。)の前後における、導電性接着フィルムのせん断接着力を測定した。
(TCT前の接着力)
得られた測定サンプルについて、ダイシェアー測定機(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー株式会社製 万能型ボンドテスタ シリーズ4000)を用い、ボンドテスタの引っ掻きツールを上記測定サンプルの半導体チップの側面に100μm/sで衝突させて、チップ/リードフレーム接合が破壊した際の応力を、260℃におけるせん断接着力として測定した。本実施例では、TCT前のせん断接着力は、3MPa以上を合格レベルとした。
(TCT後の接着力)
次に、冷熱衝撃試験(TCT)として、得られた測定用サンプルを、-40~+150℃の温度範囲で200サイクル処理し、この処理後のサンプルについて、上記TCT前の接着力と同様の方法でせん断接着力を測定した。本実施例では、TCT後のせん断接着力は、1MPa以上を合格レベルとした。」
「【0102】
【表1】
[図:0001395215000003.jpg]
」
(ウ)周知文献1について
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知文献1:特開2010-278281号公報(平成22年12月9日出願公開)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品装置の製造方法に関し、より詳細には、基板上に実装された半導体素子等の電子部品とこの電子部品が発する熱を大気に放出するための放熱部品とが熱インタフェース材を介して結合された電子部品装置の製造方法に関する。」
「【発明を実施するための形態】
・・・
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係る熱インタフェース材を用いた半導体装置(電子部品装置)の構成を示したものであり、(a)はその断面構造、(b)は(a)におけるAの部分を拡大断面構造を示している。
【0023】
本実施形態の半導体装置30において、10は放熱対象とされる電子部品としての半導体素子(チップ)を示し、この半導体素子(チップ)10は、そのフェイス面(回路が形成されている側の面)を下にして配線基板(パッケージ)12上に実装されている。
・・・
【0025】
20は金属製のヒートスプレッダを示し、半導体素子(チップ)10が動作時に発する熱を大気に放出するためのものである。このヒートスプレッダ20には、その材料として銅(Cu)が用いられ、さらにその表面にニッケル(Ni)めっきが施されている。ヒートスプレッダ20は、その主要部分が板状に成形されており(板状部20a)、この板状部20aの周囲に側壁部20bが一体的に形成された構造を有している。この側壁部20bは、図2に示すように方形のリング状に成形されている。ヒートスプレッダ20は、この側壁部20bを介して、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等に代表される熱硬化性樹脂26により、パッケージ12上に固定化されている。
・・・
【0028】
この熱可塑性樹脂24は、カーボンナノチューブ14と協働してチップ10とヒートスプレッダ20との熱インタフェース材(TIM)として機能する。そして、加熱時に凹部22から流出してヒートスプレッダ20とチップ10の隙間に流入し、その隙間を充填することで、カーボンナノチューブ14の先端とチップ10及びヒートスプレッダ20(金属表面)との接触状態を固定化している。」
「【図1】
[図:0001395215000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001395215000005.jpg]
」
(エ)周知文献2について
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知文献2:特開2013-247274号公報(平成25年12月9日出願公開)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ及び配線基板ユニットに関する。」
「【発明を実施するための形態】
・・・
【0014】
半導体パッケージ3は、例えば、樹脂基板を用いたパッケージ基板31と、パッケージ基板31上に実装された半導体チップ32と、ヒートスプレッダ33とを備える。
・・・
【0017】
図3は、実施形態に係るヒートスプレッダ33を下方から眺めた外観斜視図である。ヒートスプレッダ33は、半導体チップ32の上部に配置される本体部33Aと、本体部33Aからパッケージ基板31まで延伸(垂下)する脚部33Bと、半導体チップ32を収容する収容凹部33Cとを有する。
・・・
【0019】
ヒートスプレッダ33の本体部33Aは、主として、半導体チップ32の熱を、ヒートシンク4に伝導させるために機能する。本体部33Aは、半導体チップ32の上面よりも大きな輪郭を有しており、半導体チップ32から伝えられた熱を、本体部33Aの平面方向に分散させつつヒートシンク4に伝熱する。本実施形態の半導体パッケージ3では、半導体チップ32の上面と、ヒートスプレッダ33の本体部33Aの下面(裏面)とを、熱抵抗の少ない金属接合材36を介して熱的に接合している。これにより、半導体チップ32からヒートスプレッダ33への伝熱性の向上を図ることができる。本実施形態においては、金属接合材36の一例として半田を使用しているが、これには限定されない。また、金属接合材36に用いる半田としては、例えばインジウム系の半田(例えば、In、In-3Ag、In-10Ag)を好適に使用できるが、これらに限定されるものではない。」
「【図1】
[図:0001395215000006.jpg]
」
「【図3】
[図:0001395215000007.jpg]
」
(オ)周知文献3について
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知文献3:特開2012-129335号公報(平成24年7月5日出願公開)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートスプレッダを備える半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。」
「【発明を実施するための形態】
・・・
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置100を示す断面図である。図2は、図1に示す半導体装置100を示す平面図である。半導体装置100は、実装基板40と、半導体チップ30と、ヒートスプレッダ10と、放熱樹脂20と、を備えている。半導体装置100は、例えば半導体パッケージである。
【0014】
半導体チップ30は、実装基板40上に実装されている。ヒートスプレッダ10は、一面に凹部14を有する。そして、凹部14内に半導体チップ30が配置されるように、一面を実装基板40に対向させて、実装基板40上に設けられている。放熱樹脂20は、ヒートスプレッダ10と半導体チップ30の上面との間、およびヒートスプレッダ10と半導体チップ30の側面との間に充填されている。
・・・
【0018】
放熱樹脂20は、例えば熱硬化性樹脂によって構成される。また、放熱樹脂20に、熱伝導性の良好なフィラーを配合してもよい。熱伝導性の良好なフィラーとしては、例えばAg、Al等が挙げられる。」
「【図1】
[図:0001395215000008.jpg]
」
「【図2】
[図:0001395215000009.jpg]
」
ウ 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「熱伝導性組成物」に相当する。
(イ)甲1発明の「基板」、「基板上に形成された半導体素子」、及び、「ヒートスプレッダー」は、本件発明1の「基板」、「基板上に形成された半導体素子」、及び、「ヒートスプレッダー」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の「接合材料」は、「半導体素子」と「ヒートスプレッダー」とを接合するものであり、かつ、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」を使用したものであるから、本件発明1の「熱伝導性材料」に相当する。
さらに、甲1発明の「電気・電子部品」は、「基板」と、「基板上に形成された半導体素子」と、「ヒートスプレッダー」とを備えるものである。また、甲1発明の「電気・電子部品」における「半導体素子」は、「基板上に形成され」、かつ、「ヒートスプレッダー」と「接合」されているから、「電気・電子部品」は、「半導体素子」をパッケージするものといえる。よって、甲1発明の「電気・電子部品」は、本件発明1の「半導体パッケージ」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「基板と、前記基板上に設けられた半導体素子と、ヒートスプレッダーとを備え、前記半導体素子と前記ヒートスプレッダーとを熱伝導性材料で接合した半導体パッケージ」におけるものであるという点で共通する。
また、上記(ア)のとおり、甲1発明の「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「熱伝導性組成物」に相当する。
さらに、甲1発明の「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」は、前記「接合材料」として使用されるものであり、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」によって当該「接合材料」が形成されているといえ、上述のとおり、甲1発明の「接合材料」は、本件発明1の「熱伝導性材料」に相当するから、本件発明1と甲1発明とは、「熱伝導性組成物」が、「熱伝導性材料を形成するために用いる」ものである点で、共通する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、「基板と、前記基板上に設けられた半導体素子と、ヒートスプレッダーとを備え、前記半導体素子と前記ヒートスプレッダーとを熱伝導性材料で接合した半導体パッケージにおいて、前記熱伝導性材料を形成するために用いる、熱伝導性組成物」である点で共通する。
(ウ)甲1発明の「(A1)プレート型銀微粒子」は、金属の粒子であるから、本件発明1の「金属粒子」に相当する。
(エ)本件発明1の「バインダー樹脂」は、本件明細書の【0068】に「(バインダー樹脂) 上記熱伝導性組成物は、バインダー樹脂を含む。上記バインダー樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、およびアリル樹脂からなる群より選択される1種以上を含むことができる。」と記載されているから、「アクリル樹脂」を含む。
これに対し、甲1発明の「(D1)ヒドロキシルエチルアクリルアミド」は、その名称からしてアクリル基を含むものであり、甲第1号証の[0134][表1](上記イ(ア)a)において、「(D)成分」とされており、さらに、同[0062]に「この(D)熱硬化性樹脂としては、例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。」と記載されているから、アクリル樹脂であるといえる。
そうすると、甲1発明の「(D1)ヒドロキシルエチルアクリルアミド」は、本件発明1の「バインダー樹脂」に相当する。
(オ)本件発明1の「モノマー」は、本件明細書の【0076】に「(モノマー) 上記熱伝導性組成物は、モノマーを含む。上記モノマーは、グリコールモノマー、・・・からなる群から選ばれる一または二以上を含むことができる。」と記載されており、【0078】に「上記グリコールモノマーとしては、具体的には、・・・ジエチレングリコール、・・・などが挙げられる。」と記載されているから、「ジエチレングリコール」を含む。
よって、甲1発明の「ジエチレングリコール」は、本件発明1の「モノマー」に相当する。
(カ)甲1発明の「(A1)プレート型銀微粒子」は、「100~250℃で自己焼結し、当該銀粒子同士に接点が形成されるものであ」る。
ここで、「100~250℃」にすることは、技術常識からすれば、「熱処理」であるといえる。
また、「銀粒子同士に接点が形成される」ことは、粒子同士が連結することといえるから、「粒子連結構造を形成する」ことであるといえる。
さらに、本件発明1の「シンタリング」は、本件明細書の【0015】において「シンタリング(焼結)」と記載されているから、「焼結」と同じ意味である。
また、上記(ウ)によれば、甲1発明の「前記(A1)プレート型銀微粒子」は、本件発明1の「金属粒子」に相当する。
以上のことからすれば、甲1発明の「前記(A1)プレート型銀微粒子は、100~250℃で自己焼成し、当該銀粒子同士に接点が形成されるものであり、」は、本件発明1の「熱処理により前記金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するものであり、」に相当する。
(キ)甲1発明の「熱伝導率」は、「熱伝導性に優れた熱硬化性樹脂組成物」の「硬化物」について測定したものである。
ここで、技術常識からすれば、「熱硬化性樹脂組成物」の「硬化物」は、熱処理により得られるものであるから、甲1発明の「硬化物」は、「熱処理体」であるといえる。
また、甲1発明の「硬化物」の「熱伝導率」は、「レーザーフラッシュ法により測定した」ものであり、また、「150W/m・K」であるから、10W/mK以上であるといえる。
以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、「当該熱伝導性組成物を用いて得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて測定される熱伝導率λが、10W/mK以上である」点で共通する。
(ク)以上の(ア)~(キ)によれば、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基板と、前記基板上に設けられた半導体素子と、ヒートスプレッダーとを備え、前記半導体素子と前記ヒートスプレッダーとを熱伝導性材料で接合した半導体パッケージにおいて、前記熱伝導性材料を形成するために用いる、熱伝導性組成物であって、
金属粒子と、
バインダー樹脂と、
モノマーと、
を含み、
熱処理により前記金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するものであり、
当該熱伝導性組成物を用いて、レーザーフラッシュ法で測定される熱伝導率λが、10W/mK以上である、
熱伝導性組成物。」
<相違点1>
「ヒートスプレッダー」について、本件発明1の「熱伝導性組成物」が用いられる「半導体パッケージ」においては、「前記半導体素子の周囲を囲」っているのに対し、甲1発明の「熱伝導性に優れた熱硬化性組成物」が使用される「電気・電子部品」においては、「半導体素子」の周囲を囲っているか否かが不明である点。
<相違点2>
本件発明1における熱伝導率が、「(手順A) 当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し、厚さ1mmの熱処理体を得る。得られた熱処理体について、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃における熱伝導率λ(W/mK)を測定する。」という方法で測定されたものであるのに対し、甲1発明における熱伝導率が、そのような方法で測定されたか否かが不明であるため、甲1発明の熱伝導率が、本件発明1の「(手順A)」の方法で測定した際に、10W/mK以上となるか否かが不明である点。
<相違点3>
本件発明1においては、「当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eが、1GPa以上10.0GPa以下である・・・(手順B)当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する」であるのに対し、甲1発明の貯蔵弾性率が不明である点。
エ 判断
(ア)相違点3について
事案に鑑み、相違点3から検討する。
甲第1号証には、「(手順B) 当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する」により測定される25℃の貯蔵弾性率について記載も示唆もされていない。
また、甲第2号証、及び、周知文献1~3のいずれにも、「(手順B) 当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する」により測定される25℃の貯蔵弾性率は記載されていない。
したがって、甲1発明に、甲第1号証、甲第2号証、及び、周知文献1~3に記載された事項を適用しても、上記相違点3に係る本件発明1の構成は得られない。
また、金属粒子と、バインダー樹脂と、モノマーと、を含み、熱処理により前記金属粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するものである熱伝導性組成物において、「当該熱伝導性組成物を用いて、下記の手順Bで測定される25℃の貯蔵弾性率Eが、1GPa以上10.0GPa以下である・・・(手順B)当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する」という貯蔵弾性率にすることが周知技術であるともいえない。
よって、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(イ)以上のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、並びに、甲第1号証、甲第2号証、及び、周知文献1~3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人の主張について
a 特許異議申立書における主張
申立人は、上記相違点3について、甲第2号証には、「樹脂組成物たる導電性接着フィルムは、熱処理された後、周波数1Hzでの動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて、室温で測定したときの貯蔵弾性率が、1GPa以上20GPa以下であることによって、金属粒子の焼結によって基板と半導体素子とを接合するに際し、強固な接着力を発揮しつつ、適度な柔軟性を有し、冷熱衝撃試験(TCT)にて評価される耐熱疲労性において、優れた性能を発揮すること」が記載され、また、甲第2号証の【0060】の記載から、甲第2号証の導電性接着フィルムは、「強固な接着力を発揮しつつ、冷熱衝撃試験(TCT)にて評価される耐熱疲労性において、優れた性能を発揮することを課題とし」、「この課題を解決するために、甲第2号証の導電性接着フィルムは、焼結後の状態の貯蔵弾性率が1GPa以上20GPa以下となるように設計されて」いることからすれば、甲第2号証の導電性接着フィルムは「低応力性及び良好な接着特性の発揮」を課題としているから、甲1発明と甲第2号証の導電性接着フィルムの課題は共通し、「甲1発明の熱硬化性樹脂組成物の低応力性及び接着特性を向上させるために、甲第2号証の貯蔵弾性率に関する技術的事項に基づいて、甲1発明の焼結後の状態の貯蔵弾性率を1GPa以上10.0GPa以下とすることは、容易に成し得ることである」旨を主張する。(異議申立書の第20頁第4行~第22頁第17行。)
しかしながら、本件発明1の貯蔵弾性率は、「(手順B) 当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する」により得られる貯蔵弾性率であるところ、上記(ア)のとおり、そのような手順Bは、甲第2号証には記載されていないから、甲第2号証に記載された貯蔵弾性率を甲1発明に適用したとしても、相違点3に係る本件発明1の構成が得られるとはいえない。
よって、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。
b 意見書における主張
申立人は、甲1発明と、「半導体素子と、ヒートスプレッダーとを接着する熱伝導性材料は、低応力性及びリフロー剥離耐性の観点から、その硬化物たる熱処理体の25℃での貯蔵弾性率が1GPa以上5GPa以下に設定されること」という周知技術に基づいて、甲1発明において貯蔵弾性率を1GPa以上5GPa以下に設定してみることは容易に着想できることである旨を主張する。(令和4年10月17日に提出された申立人による意見書の第4頁第10~16行、第7頁第11行~第8頁第6行。)
しかしながら、申立人が主張するとおり、「半導体素子と、ヒートスプレッダーとを接着する熱伝導性材料は、低応力性及びリフロー剥離耐性の観点から、その硬化物たる熱処理体の25℃での貯蔵弾性率が1GPa以上5GPa以下に設定されること」が周知技術であるとしても、「(手順B)当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する」という手順により測定される25℃の貯蔵弾性率を1GPa以上10.0GPa以下にすることが周知技術であるとはいえない。
よって、甲1発明において、周知技術に基づいて、「(手順B) 当該熱伝導性組成物を、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、次いで200℃で120分間熱処理し熱処理体得る。得られた熱処理体について、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を用いて、25℃における貯蔵弾性率E(GPa)を測定する」という手順により測定される25℃の貯蔵弾性率を1GPa以上10.0GPa以下にすることは、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)本件発明3~9について
本件発明3~9は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも、相違点3に係る本件発明1の構成を有しているから、上記(1)で検討したのと同様の理由により、甲1発明、並びに、甲第1号証、甲第2号証、及び、周知文献1~3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1、3~9は、甲1発明、並びに、甲第1号証、甲第2号証、及び、周知文献1~3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項1、3~9に係る特許は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、取消理由2には理由がない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 本件訂正前の請求項2に対する申立理由(特許法第29条第2項、同法第36条第1項及び第2項)について
本件訂正によって請求項2が削除されたことにより、当該申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなった。
2 特許法第29条第1項第3号の規定違反(新規性欠如)について
(1)本件発明1と甲1発明は、少なくとも上記相違点3(第5の2(1)ウ(ク))で相違し、かつ、当該相違点3は実質的な相違点でないともいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明ではない。
(2)請求項3~9が請求項1を引用することからすれば、本件発明3~9もまた、甲1発明と少なくとも上記相違点3で相違するといえる。
よって、本件発明3~9は、甲1発明ではない。
(3)よって、請求項1、3~9に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
3 特許法第36条第6項第2号の規定違反(明確性要件違反)について
(1)特許法第36条第6項第2号の趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合に、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となることにより生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきものと解される。
(2)本件特許の特許請求の範囲について検討すると、請求項1、3~9の記載は、記載自体明確であるといえる。
(3)申立人の主張について
申立人は、請求項1に記載されたモノマーについて、本件明細書にはモノマーとしてエチレングリコールなどのグリコール類が記載されている(【0078】)一方、本件明細書には、溶剤としてエチレングリコールなどのグリコール類が記載されている(【0102】)ことから、本件明細書においては、モノマーと溶剤とが区別されておらず、その結果、本件発明が不明確である旨を主張する。(特許異議申立書の第28頁第12~22行。)
しかしながら、請求項1、3~9には、「溶剤」の記載はないから、熱伝導性組成物中にエチレングリコールなどのグリコール類が存在した場合に、「溶剤」に該当するかを検討する必要はなく、請求項1、3~9における「モノマー」に該当するか否かが明らかであればよいといえる。
そして、本件明細書の【0078】の記載からすれば、「モノマー」にエチレングリコールなどのグリコール類が含まれることは明らかである。
したがって、請求項1、3~9における「モノマー」が不明確であるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、請求項1、3~9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、3~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項2は、本件訂正により削除されたため、請求項2に対する特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700307