特許異議申立
2017-700128
波長変換用無機成形体及び発光装置
- 審判番号
- 2017-700128
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-083747
- 登録番号
- 特許第5966529号(P5966529)
- 請求日
- 2017年02月10日
- 審決日
- 2017年09月27日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日亜化学工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】森山 泰行
- 審判長/審判官
- 審判長 森 竜介
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 近藤 幸浩
- 分類
- P1651.841-YAA(H01L) / P1651.851-YAA(H01L) / P1651.853-YAA(H01L) / P1651.854-YAA(H01L) / P1651.855-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5966529号発明「波長変換用無機成形体及び発光装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5966529号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
特許第5966529号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5966529号の請求項1ないし13に係る特許についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成24年4月2日の出願であって、平成28年7月15日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1ないし13に対し、特許異議申立人 森山 泰行により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年5月18日付けで取消理由が通知され、同年7月24日付けで意見書とともに訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)が提出されたものである。
なお、同年7月28日付けで当審から特許異議申立人に特許法第120条の5第5項の規定に基づく書面等を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人から応答はなかった。
第2 訂正の適否について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
平成29年7月24日付けの本件訂正請求書による訂正は、「特許第5966529号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することことを求める。」というものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。以下、同じ。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「炭酸塩であり、 前記基体と前記無機粒子層との界面で」と記載されているのを、「炭酸塩であり、前記無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%であり、前記基体と前記無機粒子層との界面で」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5~13も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「反射率よりも高く、前記基体と前記無機粒子層との界面で」と記載されているのを、「反射率よりも高く、前記無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%であり、前記基体と前記無機粒子層との界面で」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4~13も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「空隙率が1~50%」と記載されているのを、「空隙率が5~30%」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7~13も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0014】に、「また、前記波長変換部材の粒子は、当該粒子同士及び前記基体と無機結着材により結着しており、前記無機結着材は、アルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩で構成した。」と記載されているのを、「また、前記波長変換部材の粒子は、当該粒子同士及び前記基体と無機結着材により結着しており、前記無機結着材は、アルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩で構成した。さらに、無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%とした。」に訂正する。
(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0016】に、「第3の発明に係る波長変換用無機成形体は、基体と、前記基体上に設けられた、第1の波長の光を吸収し、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を発光する無機材料からなる波長変換部材の粒子を含有する無機粒子層と、を有し、前記無機粒子層は、前記粒子が、当該粒子同士又は前記基体と接触することで連続的に繋がった凝集体と、前記基体の表面及び前記粒子の表面を連続的に被覆する無機材料からなる被覆層と、前記被覆層で被覆された前記粒子、又は、前記被覆層で被覆された前記粒子及び前記被覆層で被覆された前記基体によって取り囲まれた空隙と、を有し、前記基体と前記無機粒子層との間に、前記基体側から順に反射層と誘電体層とを有し、前記反射層は、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光に対する反射率が、前記基体の反射率よりも高く、前記基体と前記無機粒子層との界面で、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を反射するように構成した。」と記載されているのを、「第3の発明に係る波長変換用無機成形体は、基体と、前記基体上に設けられた、第1の波長の光を吸収し、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を発光する無機材料からなる波長変換部材の粒子を含有する無機粒子層と、を有し、前記無機粒子層は、前記粒子が、当該粒子同士又は前記基体と接触することで連続的に繋がった凝集体と、前記基体の表面及び前記粒子の表面を連続的に被覆する無機材料からなる被覆層と、前記被覆層で被覆された前記粒子、又は、前記被覆層で被覆された前記粒子及び前記被覆層で被覆された前記基体によって取り囲まれた空隙と、を有し、前記基体と前記無機粒子層との間に、前記基体側から順に反射層と誘電体層とを有し、前記反射層は、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光に対する反射率が、前記基体の反射率よりも高く、前記無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%であり、前記基体と前記無機粒子層との界面で、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を反射するように構成した。」に訂正する。
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0017】に、「第6の発明に係る波長変換用無機成形体は、前記無機粒子層における前記空隙は、空隙率が1~50%であることが好ましい。」と記載されているのを、「第6の発明に係る波長変換用無機成形体は、前記無機粒子層における前記空隙は、空隙率が5~30%であることが好ましい。」に訂正する。
2 各訂正事項についての訂正要件の適合性の判断
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項1は、請求項1において、「空隙」について、「前記無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%であり、」との構成を付加して限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
同様に、請求項2、5~13において、訂正後請求項1に記載された「前記無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%であり」との記載を引用することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無について
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0105】には、「空隙率は、1~50%程度とすることが好ましく、より好ましくは5~30%である。」と記載されている。
したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、本件特許の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を「本件特許明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、請求項1において、発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
また、請求項2、5~13において、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項2は、請求項3において、「空隙」について、「前記無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%であり、」との構成を付加して限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
同様に、請求項4~13において、訂正後請求項3に記載された「前記無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%であり」との記載を引用することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無について
本件特許明細書の段落【0105】には、「空隙率は、1~50%程度とすることが好ましく、より好ましくは5~30%である。」と記載されている。
したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、請求項3において、発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
また、請求項4~13において、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項3は、請求項6において、「空隙率」の数値範囲について、訂正前は「1~50%」であったのを「5~30%」として減縮するものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
同様に、請求項7~13において、訂正後請求項6の記載を引用することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無について
本件特許明細書の段落【0105】には、「空隙率は、1~50%程度とすることが好ましく、より好ましくは5~30%である。」と記載されている。
したがって、訂正事項3は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、請求項6において、発明特定事項の数値範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
また、請求項7~13において、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項4~6について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4~6は、訂正事項1~3による訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正である。
よって、訂正事項4~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無について
訂正事項4~6は、訂正事項1~3による訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正であるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4~6は、訂正事項1~3による訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(3)一群の請求項、明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項1~6に係る訂正前の請求項1~13について、請求項2、5~13は請求項1を引用しているものであり、請求項4~13は請求項3を引用しているものである。そして、これらの請求項は、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項1及び請求項3に連動して訂正され、訂正事項3によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、訂正事項1~6に係る訂正の請求は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
訂正事項4~6は、明細書を訂正するものであり、明細書の段落【0014】、【0016】、【0017】には、それぞれ、請求項1、請求項3、請求項6に対応する実施形態が記載されている。
訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であるから、訂正事項4~6による明細書の訂正と関係を有する全ての訂正の請求単位は、いずれも請求項1~13である。
訂正事項4~6に係る訂正の請求は、当該明細書の訂正と関係する全ての訂正単位である、訂正前の請求項1~13について行われたものである。
よって、訂正事項4~6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項の規定、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1-13〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正の訂正事項1~6による訂正を認めるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明13」という。)は、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、その本件特許発明1ないし13は以下に記載したとおりのものである。
「【請求項1】
基体と、
前記基体上に設けられた、第1の波長の光を吸収し、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を発光する無機材料からなる波長変換部材の粒子を含有する無機粒子層と、を有し、
前記無機粒子層は、
前記粒子が、当該粒子同士又は前記基体と接触することで連続的に繋がった凝集体と、
前記基体の表面及び前記粒子の表面を連続的に被覆する無機材料からなる被覆層と、
前記被覆層で被覆された前記粒子、又は、前記被覆層で被覆された前記粒子及び前記被覆層で被覆された前記基体によって取り囲まれた空隙と、を有し、
前記波長変換部材の粒子は、当該粒子同士及び前記基体と無機結着材により結着しており、前記無機結着材は、アルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩であり、
前記無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%であり、
前記基体と前記無機粒子層との界面で、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を反射することを特徴とする波長変換用無機成形体。
【請求項2】
前記基体と前記無機粒子層との間に反射層を有し、前記反射層は、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光に対する反射率が、前記基体の反射率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項3】
基体と、
前記基体上に設けられた、第1の波長の光を吸収し、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を発光する無機材料からなる波長変換部材の粒子を含有する無機粒子層と、を有し、
前記無機粒子層は、
前記粒子が、当該粒子同士又は前記基体と接触することで連続的に繋がった凝集体と、
前記基体の表面及び前記粒子の表面を連続的に被覆する無機材料からなる被覆層と、
前記被覆層で被覆された前記粒子、又は、前記被覆層で被覆された前記粒子及び前記被覆層で被覆された前記基体によって取り囲まれた空隙と、を有し、
前記基体と前記無機粒子層との間に、前記基体側から順に反射層と誘電体層とを有し、前記反射層は、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光に対する反射率が、前記基体の反射率よりも高く、
前記無機粒子層における空隙は、空隙率が、5~50%であり、
前記基体と前記無機粒子層との界面で、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を反射することを特徴とする波長変換用無機成形体。
【請求項4】
前記波長変換部材の粒子は、当該粒子同士及び前記基体と無機結着材により結着していることを特徴とする請求項3に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項5】
前記波長変換部材は、フッ化物蛍光体を、少なくとも含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項6】
前記無機粒子層における前記空隙は、空隙率が5~30%であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項7】
前記波長変換部材の粒子の平均粒径は、0.1~100μmであり、
前記被覆層の平均厚さが10nm~50μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項8】
前記無機粒子層の表面は、前記波長変換部材の粒子の粒径に起因する凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項9】
前記被覆層は、Al2O3、SiO2、ZrO2、HfO2、TiO2、ZnO、Ta2O5、Nb2O5、In2O3、SnO2、TiN、及びAlNから構成される群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項10】
前記波長変換部材は、硫化物系蛍光体、ハロゲンケイ酸塩系蛍光体、窒化物蛍光体、及び酸窒化物蛍光体から構成される群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項11】
前記基体は、金属、セラミックス又は金属とセラミックスとの複合体からなることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項12】
前記基体の熱伝導度が5W/m・K以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載の波長変換用無機成形体。
【請求項13】
光源と、
前記光源が発光する第1の波長の光を吸収して、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を発光する請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の波長変換用無機成形体とを備え、
前記第2の波長の光を含む光を出力することを特徴とする発光装置。」
2 取消理由の概要
(1)訂正前の請求項1ないし13に係る特許に対して平成29年5月18日付けで特許権者に通知した取消理由通知の取消理由の概要は、次のとおりである。
「1.本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
記
甲第1号証:特開2011-168627号公報
甲第2号証:特開2008-117976号公報
甲第3号証:特開2004-88013号公報
甲第4号証:国際公開第2011/097393号
(訳文:特表2013-519233号公報)
甲第5号証:特開2010-256457号公報
甲第6号証:特開2009-290238号公報
甲第7号証:特開2004-3955号公報」
3 甲号証の記載
(1)甲第1号証の記載及び甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証の記載
甲第1号証には,以下の事項が記載されている。
a 「【0001】
本発明は、蛍光体粒子を用いた波長変換部材、その製造方法およびそれを用いた発光器具に関する。」
b 「【0006】
非特許文献1によれば、分散剤および結合剤を含むエタノール中に蛍光体粒子を分散させ、次いで、電気泳動堆積法によりITOガラス上に蛍光体粒子を堆積させ、堆積膜を得る。ここで、エタノール中に分散された蛍光体粒子は、結合剤によってそれぞれ被覆されるので、堆積された蛍光体粒子同士ならびに蛍光体粒子とITOガラスとを、結合剤により密着させることができる。また、電気泳動堆積法を採用するので、蛍光体粒子が高密度に堆積される。」
c 「【0008】
また、非特許文献1によれば、結合剤の熱的安定性が劣るため、励起源および/または蛍光体粒子からの光ならびに熱によって劣化し、密着性が低下する恐れがある。また、蛍光体粒子間に生じた空隙により、励起源および/または蛍光体粒子からの光が拡散反射をし、発光特性が低下する可能性がある。したがって、熱的安定性に優れ、光の拡散反射を抑制した蛍光体粒子の堆積膜の製造方法があれば望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上より、本発明の課題は、発光特性に優れた波長変換部材、その製造方法およびそれを用いた発光器具を提供することを提供することである。」
d 「【発明の効果】
【0011】
本発明による波長変換部材は透光性物質を含むので、波長変換部材における光の拡散反射が抑制される。その結果、蛍光体粒子の発光特性が拡散反射により損なわれないので、発光特性に優れた波長変換部材が提供され得る。また、本発明による波長変換部材は、蛍光体粒子を30体積%以上70体積%以下の範囲で含有するので、既存の波長変換部材に比べて蛍光体粒子の含有量が高い。そのため、小容量に十分な蛍光体粒子が存在するので、既存の波長変換部材に比べて小型化を達成し得る。
【0012】
本発明による方法は、蛍光体粒子の集合体の空隙に液状物質を充填するので、最終的に得られる波長変換部材における気孔率が低下する。液状物質は透光性物質である固体化合物に変換されるので、光の拡散反射が抑制される。この結果、発光特性に優れた波長変換部材が提供され得る。好ましくは、本発明による方法によれば、蛍光体粒子の集合体を電気泳動堆積法により調製するので、最終的に得られる波長変換部材中の蛍光体粒子の含有量を向上させることができる。その結果、小型化に適した発光特性に優れた波長変換部材が提供され得る。」
e 「【図面の簡単な説明】
【0013】
…(略)…
【図3】本発明によるさらに別の波長変換部材の模式図」
f 「【0019】
また、本発明による波長変換部材100は、気孔を含有してもよいが、その気孔率は3%以下が好ましい。気孔率が3%を超えると、散乱防止の効果がなくなるとともに、透過率が低減する場合がある。気孔率は、簡易的に、波長変換部材100の表面または断面の画像から、面積比として見積もることができる。
【0020】
蛍光体粒子110は、一次粒子の凝集体である二次粒子の形態を有する。このような二次粒子の平均粒径は、1μm以上20μm以下の範囲である。このような二次粒子の形態を有する蛍光体粒子110を採用することにより、上述の蛍光体粒子110の含有量を容易に達成し得る。」
…(略)…
【0022】
本発明による波長変換部材100は、蛍光体粒子110が互いに接触した連結構造130を有する。透光性物質120は、連結構造130以外の空間を充填している。このような構造により、上述の高い蛍光体粒子110の含有量を達成するとともに、光の拡散反射を抑制できる。
【0023】
蛍光体粒子110は、特に限定されないが、例えば、Si、Al、OおよびNの元素を含む無機化合物である。これらの元素を含む無機化合物は、発光特性に優れた蛍光体となることが知られている。
【0024】
蛍光体粒子110は、より好ましくは、Euを付活したα-サイアロン、Ceを付活したα-サイアロン、Euを付活したβ-サイアロン、Ceを付活したβ-サイアロン、Euを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Ceを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)2Si5N8、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)Si2O2N2及びCeを付活したJEM相からなる群から少なくとも1つ選択される。
【0025】
これらの蛍光体粒子110は、製造方法が確立されており、入手が容易であるとともに、発光特性、とりわけ、高エネルギーの励起源による照射時における発光特性にも優れる。例えば、Euを付活したα-サイアロンおよびCeを付活した(Ca、Sr)AlSiN3は、黄色発光する蛍光体として、Ceを付活したα-サイアロン、Ceを付活したβ-サイアロンおよびCeを付活したJEM相は、青色発光する蛍光体として、Euを付活した(Ca、Sr)AlSiN3およびEuを付活した(Ca、Sr、Ba)2Si5N8は、赤色発光する蛍光体として、Euを付活したβ-サイアロンは緑色発光する蛍光体として、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)Si2O2N2は、青緑色から黄色発光する蛍光体として知られている。
【0026】
また、これらの蛍光体は、100nm以上500nm以下の波長を有する光(真空紫外線、紫外線または可視光)、電子線、X線、中性子線、あるいは、電場を励起源として、上記の各色の発光をすることが分かっている。
…(略)…
【0029】
また、透光性物質120は、好ましくは、SiO2である。SiO2は、上述のケイ酸塩を主成分とする石英ガラスであってもよいし、SiO2の結晶構造を有する水晶であってもよい。SiO2は、高い透光性ならびにゾルゲル法による容易な作製プロセスによりガラス化可能なため好ましい。
…(略)…
【0032】
本発明による波長変換部材100における蛍光体粒子110と透光性物質120とは、上述の材料から適宜選択され得るが、波長変換部材100のより効果的な発光特性を実現するためには、蛍光体粒子110および透光性物質120の材料は、それらの屈折率差が0.6以下となるように選択され得る。屈折率差が0.6以下であれば、励起源(図示せず)および/または蛍光体粒子110からの光の波長変換部材100における散乱は、実装時の性能にはほとんど影響しないものとみなせる。このような蛍光体粒子110と透光性物質120との組み合わせは、例えば、Ca-α-サイアロン:Eu(屈折率:1.9)とシリカ(屈折率:1.45)、YAG(屈折率:1.8)とZnO(屈折率:1.95)、BaTiO3:Eu(屈折率:2.4)とZrO2(屈折率:2.4)等であるが、これらに限定されない。
…(略)…
【0035】
励起源(図示せず)からの励起光(ここでは青色の光)が波長変換部材100に入射されると、蛍光体粒子110が励起光を黄緑から橙赤色の光に変換する。ついで、波長変換部材100は、励起源からの青色の光と、変換された黄緑から橙赤色の光とを出射する。この結果、波長変換部材100は、励起源からの励起光を、励起源からの青色の光と、変換された黄緑から橙赤色の光とを組み合わせて白色に変換する。」
g 「【0049】
図3は、本発明によるさらに別の波長変換部材の模式図である。
【0050】
さらに別の波長変換部材300は、蛍光体粒子110と透光性物質120とを含む波長変換部材100に加えて、基板310をさらに含んでもよい。波長変換部材100、蛍光体粒子110および透光性物質120は、図1を参照して説明したとおりである。
【0051】
基板310は、ガラス、シリカガラス、ITO等の透明基板またはミラー等の反射板である。本発明によるさらに別の波長変換部材300は、使用する材料を適宜選択することにより、透光性物質120と基板310との密着性および熱的安定性を向上させることができるため、波長変換部材100が基板310から剥離し、脱落することはない。また、本発明によるさらに別の波長変換部材300のように基板310を有することにより、搬送時の取り扱いが簡便になり、上述の用途への実装が容易となる。」
h 「【0054】
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明による波長変換部材を製造する方法を説明する。
【0055】
図4は、本発明による波長変換部材を製造する工程を示すフローチャートである。
【0056】
工程ごとに詳述する。
…(略)…
【0079】
一方、最終的に得られる波長変換部材として、図3に示されるような基板310と一体型の波長変換部材300を目的とする場合、上述のステップS420(図4)後にも、基板310と波長変換部材100との密着性が高くある必要がある。このような基板310もまた、基板310と上述の液状物質との濡れ性の程度によって選択される。液状物質に対して濡れ性が高い基板310を選択すれば、波長変換部材と基板310との密着性が向上するので、波長変換部材100と基板310とが強固に密着した波長変換部材300を得ることができる。ここでもやはり、濡れ性の程度は、簡易的には基板310上の液状物質の様子から判断してもよいし、接触角(例えば、角度70°未満で濡れ性が高い)から判断してもよい。波長変換部材300を得るに好ましい基板310は、例えば、シリカガラス、ステンレスである。特に、シリカガラスは、テトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランを含む有機物に対して濡れ性が高いことが分かっており、基板310に良好に密着した波長変換部材300を得ることができる。
…(略)…
【0083】
本発明によれば、蛍光体粒子の集合体を得るために、電気泳動堆積法を採用するので、蛍光体粒子を均一かつ高密度に集合させることができる。また、蛍光体粒子は有機結合剤により被覆されているので、集合した蛍光体粒子の密着性は高い。このようにして得られた蛍光体粒子の集合体の蛍光体粒子の含有量は、45体積%以上70体積%以下である。
【0084】
S530:蛍光体粒子の集合体を乾燥させる。
【0085】
ステップS520により、導電性ポリマーが付与された基板または導電性基板上に、有機結合剤で被覆された蛍光体粒子の集合体が得られる。この蛍光体粒子の集合体は、溶液中で形成されているので、空隙に上述の溶液を含有し得る。乾燥により、この溶液を除去してもよい。この場合の乾燥は、ヒータ、熱処理炉等の任意の加熱装置を用いてもよいし、自然乾燥でもよい。
…(略)…
【0088】
以上、ステップS510~S530により、蛍光体粒子の集合体が得られる。このようにして得られた蛍光体粒子の集合体の蛍光体粒子の含有量は、電気泳動堆積法により、高密度、45体積%以上70体積%以下である。このような蛍光体粒子の集合体を用いれば、小型化に好適な波長変換部材の製造に有利である。また、ステップS520において、液体媒質に対して濡れ性の高い透明基板または反射板を用いれば、基板上に強固に密着した蛍光体粒子の集合体を形成することができるので、密着性に優れた図3の波長変換部材300を容易に製造できる。」
i 「【0094】
(実施の形態3)
実施の形態3では、本発明による、実施の形態1で説明した波長変換部材を用いた用途(発光器具)の構成を説明する。
【0095】
図6は、本発明による波長変換部材を用いた発光器具の模式図である。
…(略)…
【0098】
励起光源610は、波長変換部材100の蛍光体粒子110を励起し、発光させる任意の励起光源を採用できるが、蛍光体粒子110が、例えば、Euを付活したα-サイアロン、Ceを付活したα-サイアロン、Euを付活したβ-サイアロン、Ceを付活したβ-サイアロン、Euを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Ceを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)2Si5N8、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)Si2O2N2およびCeを付活したJEM相等である場合、100nm以上500nm以下の波長を有する光(真空紫外線、紫外線または可視光)を発する任意の励起光源を採用できる。」
j 「【実施例2】
【0143】
実施例2では、シリカガラス上にCa-α-サイアロン:Euである蛍光体粒子からなる波長変換部材300(図3)を、図9のプロシージャにしたがって製造した。Ca-α-サイアロン:Euは、実施例1と同様である。
【0144】
図9は、実施例2による波長変換部材を製造するプロシージャを示す図である。
【0145】
実施例2は、基板310にシリカガラスを用い、堆積条件を印加電圧100V、堆積時間を60sおよび120sとした以外、実施例1と同様の手順のため、説明を省略する。
…(略)…
【0152】
次に、実施例1~3の結果を詳述する。
【0153】
最初に、実施例に用いた蛍光体粒子、ならびに、PVBで被覆された蛍光体粒子の集合体について評価した結果を示す。
【0154】
図10は、実施例1~3によるCa-α-サイアロン:EuのSEM像を示す図である。
【0155】
図10によれば、蛍光体粒子の集合体の形成に用いたCa-α-サイアロン:Euである蛍光体粒子は、一次粒子が集合した形態、すなわち二次粒子であり、その二次粒子の粒径は、1μm以上20μm以下の範囲であった。
【0156】
図11は、実施例1~3によるスラリー中のCa-α-サイアロン:Euの粒径分布を示す図である。
【0157】
図11より、スラリー中には、図10に示す合成されたCa-α-サイアロン:Euにおける二次粒子が解消され、主として一次粒子のCa-α-サイアロン:Euが存在し、分散性に優れていることを確認した。なお、この二次粒子が解消されたCa-α-サイアロン:Euそれぞれは、PVBによって被覆されている。
…(略)…
【0159】
図12によれば、Ca-α-サイアロン:Euが密集している様子が分かる。この様子は、Ca-α-サイアロン:Euが互いに接触した連結構造である。なお、他の堆積条件によって得られたPVB集合体840も同様であった。
…(略)…
【0176】
次に、最終的に得られた波長変換部材について評価した結果を示す。
…(略)…
【0190】
図21は、実施例2による波長変換部材(100,60,TEOS)/シリカの表面のSEM像を示す図である。
【0191】
図20および図21から、Ca-α-サイアロン:Euである蛍光体粒子は明瞭に確認されなかった。このことは、透光性物質であるSiO2が完全にCa-α-サイアロン:Euを被覆するとともに、気孔もSiO2が充填しているためである。すなわち、Ca-α-サイアロン:Euが構成する連結構造以外の空間をSiO2が充填していることを示す。図21の表面のSEM像からSiO2により充填されなかった気孔を面積比として算出したところ、約2%であり、実質的に気孔がないことが分かった。
…(略)…
【0194】
図22によれば、集合体(100,60)/ITOおよび波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOの発光強度は、PVB集合体(100,60)/ITOのそれに比べて、顕著に増大した。このことは、PVBが粒子表面を覆い粒界層として存在することが、拡散・反射を引き起こす原因の一つであることを示す。また、波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOの発光強度は、集合体(100,60)/ITOのそれよりもさらに増大した。このことは、蛍光体粒子であるCa-α-サイアロン:Eu間の空隙を透光性物質であるSiO2が充填することにより、光の拡散反射がさらに抑制され、発光特性が向上したことを示す。」
k 図11は、実施例1~3によるスラリー中のCa-α-サイアロン:Euの粒径分布を示す図であり、図11から、粒径は0.2~9μmの範囲で分布していることが見てとれる。
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの摘記事項gの段落【0051】、摘記事項hの段落【0088】の記載によれば、甲第1号証には、基板310がミラー等の反射板であることが記載されているから、基板310が、励起源からの励起光と、蛍光体粒子110により変換された光とを反射することは明らかである。
以上から、甲第1号証の図1、3、11、12、20及び21を参酌してまとめると、甲第1号証には、図3に示された「さらに別の波長変換部材」に関し、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「蛍光体粒子110と透光性物質120とを含む波長変換部材100に加えて、基板310をさらに含む波長変換部材300であって、
蛍光体粒子110は、特に限定されないが、例えばSi、Al、O及びNの元素を含む無機化合物であり、Euを付活したα-サイアロン、Ceを付活したα-サイアロン、Euを付活したβ-サイアロン、Ceを付活したβ-サイアロン、Euを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Ceを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)2Si5N8、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)Si2O2N2及びCeを付活したJEM相からなる群から少なくとも1つ選択され、
これらの蛍光体は、100nm以上500nm以下の波長を有する励起光(真空紫外線、紫外線又は可視光)を励起源として、黄色発光、青色発光、赤色発光、青緑色から黄色発光するものであり、
波長変換部材100、気孔を含有し、気孔率は3%以下であり、
蛍光体粒子110は、一次粒子の凝集体である二次粒子の形態を有し、二次粒子の平均粒径は1μm以上20μm以下の範囲であり、スラリー中において、二次粒子が解消され、主として存在する一次粒子の粒径は0.2~9μmの範囲で分布し、
波長変換部材100は、蛍光体粒子110が互いに接触した連結構造130を有し、
透光性物質120は、波長変換部材100の連結構造130以外の空間を充填し、例えばシリカ、ZnO、ZrO2、好ましくはSiO2からなり、
堆積された蛍光体粒子同士、並びに蛍光体粒子と基板とは、有機結合剤により密着されており、
基板310は、ミラー等の反射板であり、例えば、ステンレスであり、波長変換部材100と基板310とが強固に密着しており、
基板310が、励起源からの励起光と、蛍光体粒子110により変換された光とを反射することを特徴とする波長変換部材300。」
(2)甲第2号証に記載された技術
甲第2号証の段落【0001】、【0003】、【0032】、【0062】の記載から、甲第2号証には以下の技術が記載されていると認められる。
蛍光体粒子を用いた発光装置において、発光素子の表面に、発光色を変換する蛍光体層を設けた色変換発光装置において、窒化アルミニウムや硫酸マグネシウム(Mg(NO3)2)等の無機部材を蛍光体粒子の結合材として用いることが従来から行われていたことであり、また、Mg(OH)2やMgCO3というアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩も、蛍光体粒子の結合材の役目を果たすこと。
(3)甲第3号証に記載された技術
甲第3号証の段落【0001】、【0007】、【0042】、【0043】、【0051】、【0147】の記載から、甲第3号証には以下の技術が記載されていると認められる。
LEDチップを利用した発光装置において、少なくともSi、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、あるいはアルカリ土類金属の元素群から選択される1種以上の元素を含む酸化物と、前記元素群から選択される1種以上の元素を含む水酸化物からなる透光性無機部材により、蛍光体同士を結着し、さらに蛍光体を層状にLEDチップや支持体上に堆積し結着すること。
(4)甲第4号証に記載された技術
甲第4号証の段落【0002】、【0043】、【0044】、【0057】、【0067】、【0072】、【0076】の記載から、甲第4号証には以下の技術が記載されていると認められる。
蛍光体を利用したLEDデバイスアレイにおいて、基板201と蛍光体粒子との間の基板201上に、反射層102として、基板201側から順に金属材料層と誘電層が設けられ、反射層102の反射率は、基板101の反射率よりも高いこと。
(5)甲第5号証に記載された技術
甲第5号証の段落【0001】、【0029】、【0063】、【0064】、【0075】、【0085】の記載から、甲第5号証には以下の技術が記載されていると認められる。
蛍光体層133を用いた光源装置において、円形基板131上に、可視光反射膜136と、誘電体である保護膜137と、蛍光体層133とが順に積層され、可視光反射膜136の反射率は、円形基板131の反射率よりも高いこと。
(6)甲第6号証に記載された技術
甲第6号証の段落【0001】、【0068】、【0069】、【0074】の記載から、甲第6号証には以下の技術が記載されていると認められる。
蛍光体を用いた半導体発光モジュールにおいて、アルミ基板上に、純アルミニウムや純銀の層と、酸化チタンや酸化シリコンからなる誘電体と、蛍光体を含有する樹脂とが順に形成され、純アルミニウムや純銀の層の反射率は、アルミ基板の反射率よりも高いこと。
(7)甲第7号証に記載された技術
甲第7号証の段落【0001】、【0026】、【0071】の記載から、甲第7号証には以下の技術が記載されていると認められる。
輝尽性蛍光体を利用した放射線像変換パネルにおいて、ガラス基板からなる支持体11の表面上に、Al層からなる反射層12と、誘電体であるMgF2層からなる増反射層と、CeO2層からなる蛍光体層13を順に積層し、Al層からなる反射層12の反射率は、ガラス基板からなる支持体11の反射率よりも高いこと。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「基板310」、「蛍光体粒子110」、「波長変換部材100」、「連結構造130」、「透光性物質120」、「気孔」は、それぞれ本件特許発明1の「基体」、「波長変換部材の粒子」、「無機粒子層」、「凝集体」、「被覆層」、「空隙」に相当する。
甲1発明の「有機結合剤」は、本件特許発明1の「無機結着材」に対応し、両者は「結着材」である点で共通する。
甲1発明においては、「基板310が、励起源からの励起光と、蛍光体粒子110により変換された光とを反射する」ところ、「励起源からの励起光」、「蛍光体粒子110により変換された光」が、それぞれ本件特許発明1の「第1の波長の光」、「第2の波長の光」に相当するから、本件特許発明1と甲1発明とは、「前記基体と前記無機粒子層との界面で、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を反射する」点で一致する。
甲1発明の「波長変換部材300」は、本件特許発明1の「波長変換用無機成形体」に相当する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりである。
<一致点A>
「基体と、
前記基体上に設けられた、第1の波長の光を吸収し、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を発光する無機材料からなる波長変換部材の粒子を含有する無機粒子層と、を有し、
前記無機粒子層は、
前記粒子が、当該粒子同士又は前記基体と接触することで連続的に繋がった凝集体と、
前記基体の表面及び前記粒子の表面を連続的に被覆する無機材料からなる被覆層と、
前記被覆層で被覆された前記粒子、又は、前記被覆層で被覆された前記粒子及び前記被覆層で被覆された前記基体によって取り囲まれた空隙と、を有し、
前記波長変換部材の粒子は、当該粒子同士及び前記基体と結着材により結着しており、
前記基体と前記無機粒子層との界面で、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を反射することを特徴とする波長変換用無機成形体。」
<相違点1>
「結着材」について、本件特許発明1では、「無機結着材」であり、「前記無機結着材は、アルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩」であるのに対し、甲1発明では、「有機結合剤」である点。
<相違点2>
「無機粒子層における空隙」について、本件特許発明1では、「空隙率が、5~50%」であるのに対し、甲1発明では、波長変換部材100(無機粒子層)が含有する気孔(空隙)について、「気孔率は3%以下」であり、数値範囲が相違する点。
イ 本件特許発明1についての判断
(ア)相違点2について
先ず、相違点2について検討する。
a 上記「3(1)ア 甲第1号証の記載」の摘記事項fの段落【0019】には、「本発明による波長変換部材100は、気孔を含有してもよいが、その気孔率は3%以下が好ましい。気孔率が3%を超えると、散乱防止の効果がなくなるとともに、透過率が低減する場合がある。」と記載されている。
また、同摘記事項jの段落【0191】には、基板310にシリカガラスを用いた実施例2について、「…透光性物質であるSiO2が完全にCa-α-サイアロン:Euを被覆するとともに、気孔もSiO2が充填しているためである。すなわち、Ca-α-サイアロン:Euが構成する連結構造以外の空間をSiO2が充填していることを示す。図21の表面のSEM像からSiO2により充填されなかった気孔を面積比として算出したところ、約2%であり、実質的に気孔がないことが分かった。」と記載されている。
これらの甲第1号証の記載から、甲第1号証には、気孔についての記載が存在するものの、気孔があることは邪魔な存在であり、甲1発明は、気孔を含有するものの、気孔率が高いことは好ましくないことが明らかである。
したがって、甲1発明において、気孔率を3%より大とすることは、当業者が容易になし得たということはできず、相違点2に係る本件特許発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たものではない。
b 念のため、甲1発明と、甲第2号証及び/又は甲第3号証との組み合わせについて検討する。
甲第2号証に記載された技術、甲第3号証に記載された技術は上記3(2)、(3)に記載のとおりである。
一方、甲第2号証には、波長変換部材の粒子間の空隙についてや、空隙率については記載されていない。
したがって、仮に、甲1発明において、甲第2号証に記載された技術に基づき、有機結合剤に換えて、無機部材の結合剤を採用することができたとしても、相違点2に係る本件特許発明1の構成を導き出すことはできない。
甲第3号証には、空隙についての記載はあるものの、以下のように記載されている。
・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、液体状態にある樹脂材料中に気泡を含有させることなく硬化させ、コーティング層あるいは蛍光体を含むコーティング層(蛍光体層)を形成することは非常に困難であり、材料が硬化した後の層中に空隙が生じる場合がある。このとき、これらの層を形成する材料の屈折率は、空隙中に存在する空気の屈折率より大きい。従って、このような空隙が層中に生じると、空隙と形成材料の界面において、発光観測面方向に進行しようとする光の透過率が低下し、層中で反射・散乱を繰り返す傾向が強くなる。その結果、発光装置の光取り出し効率の向上が図れない。」
・「【0038】
さらに、図2に示されるように、リード電極102から絶縁された凹部a内にて、発光素子の上に蛍光体がバインドされてなるコーティング部108が形成されている。エチルシリケートの加水分解溶液にて多孔質の下地部115を形成したのち、同じエチルシリケートの加水分解溶液を上記多孔質の層に含浸させることにより含浸部116を形成する。従って、コーティング部中は、空隙が殆ど存在しない状態となっている。即ち、コーティング部は、蛍光体の粒子を固着させる下地部115と、該下地部を設ける際に生じた間隙を埋める含浸部116を含む。また、下地部115と含浸部116の屈折率は、同じ材料を使用して形成されているため、ほぼ等しい。このように空隙が殆ど存在せず、屈折率が層中で殆ど変化しないコーティング部を形成することにより、蛍光体で波長変換された光は、コーティング部中を反射、散乱されることなく透過するため、発光装置の光取り出し効率を向上させることができる。」
上記のように、甲第3号証には、含浸部116を形成し、空隙がほとんど存在しない状態とすることで、光取り出し効率を向上させることができることが開示されている。
したがって、仮に、甲1発明において、甲第3号証に記載された技術を組み合わせることができたとしても、相違点2に係る本件特許発明1の構成を導き出すことはできない。
(イ)本件特許発明1についての判断のまとめ
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、または甲1発明並びに甲第2号証及び/又は甲第3号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明3について
ア 本件特許発明3と甲1発明との対比
本件特許発明3と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「基板310」、「蛍光体粒子110」、「波長変換部材100」、「連結構造130」、「透光性物質120」、「気孔」は、それぞれ本件特許発明3の「基体」、「波長変換部材の粒子」、「無機粒子層」、「凝集体」、「被覆層」、「空隙」に相当する。
甲1発明においては、「基板310が、励起源からの励起光と、蛍光体粒子110により変換された光とを反射する」ところ、「励起源からの励起光」、「蛍光体粒子110により変換された光」が、それぞれ本件特許発明3の「第1の波長の光」、「第2の波長の光」に相当するから、本件特許発明3と甲1発明とは、「前記基体と前記無機粒子層との界面で、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を反射する」点で一致する。
甲1発明の「波長変換部材300」は、本件特許発明3の「波長変換用無機成形体」に相当する。
したがって、本件特許発明3と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりである。
<一致点B>
「基体と、
前記基体上に設けられた、第1の波長の光を吸収し、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を発光する無機材料からなる波長変換部材の粒子を含有する無機粒子層と、を有し、
前記無機粒子層は、
前記粒子が、当該粒子同士又は前記基体と接触することで連続的に繋がった凝集体と、
前記基体の表面及び前記粒子の表面を連続的に被覆する無機材料からなる被覆層と、
前記被覆層で被覆された前記粒子、又は、前記被覆層で被覆された前記粒子及び前記被覆層で被覆された前記基体によって取り囲まれた空隙と、を有し、
前記基体と前記無機粒子層との界面で、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を反射することを特徴とする波長変換用無機成形体。」
<相違点3>
本件特許発明3では、「前記基体と前記無機粒子層との間に、前記基体側から順に反射層と誘電体層とを有し、前記反射層は、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光に対する反射率が、前記基体の反射率よりも高く」と特定されているのに対し、甲1発明では、基板310と波長変換部材100との間について、本件特許発明3のこのような構成について特定されていない点。
<相違点4>
「無機粒子層における空隙」について、本件特許発明3では、「空隙率が、5~50%」であるのに対し、甲1発明では、波長変換部材100(無機粒子層)が含有する気孔(空隙)について、「気孔率は3%以下」であり、数値範囲が相違する点。
イ 本件特許発明3についての判断
(ア)相違点4について
先ず、相違点4について検討する。
a 相違点4は、上記(1)において、本件特許発明1と甲1発明との相違点2と同じである。
したがって、相違点4については、上記(1)において、相違点2について検討したのと同じ理由で、甲1発明において、気孔率を3%より大とすることは、当業者が容易になし得たということはできず、相違点4に係る本件特許発明3の構成を採用することは当業者が容易になし得たものではない。
b 念のため、甲1発明と、甲第4号証ないし甲第7号証との組み合わせについて検討する。
甲第4号証に記載された技術ないし甲第7号証に記載された技術は、上記3(4)~(7)に記載のとおりである。
一方、甲第4号証ないし甲第7号証には、反射等について記載されているものの、波長変換部材の粒子間の空隙についてや、空隙率については記載されていない。
したがって、仮に、甲1発明において、甲第4号証ないし甲第7号証に記載された技術を組み合わせることができたとしても、相違点4に係る本件特許発明3の構成を導き出すことはできない。
(イ)本件特許発明3についての判断のまとめ
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1発明、または甲1発明及び甲第4号証ないし甲第7号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2、4~13について
本件特許発明2、4~13は、本件特許発明1または3を減縮したものであるから、本件特許発明1または3と同様の理由で、本件特許発明2、4~13は、甲1発明、または甲1発明並びに甲第2号証及び/又は甲第3号証に記載された技術、若しくは甲1発明及び甲第4号証ないし甲第7号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)対比・判断についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~13は、甲1発明、または甲1発明並びに甲第2号証及び/又は甲第3号証に記載された技術、若しくは甲1発明及び甲第4号証ないし甲第7号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件特許発明1ないし13に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700128