特許異議申立
2018-700256
洗浄液組成物
- 審判番号
- 2018-700256
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-088637
- 登録番号
- 特許第6203525号(P6203525)
- 請求日
- 2018年03月27日
- 審決日
- 2018年12月05日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】関東化學株式会社
- 【権利者代理人】大栗 由美
- 【権利者代理人】葛和 清司
- 【異議申立人】戸塚 清貴
- 審判長/審判官
- 審判長 深沢 正志
- 審判官 加藤 浩一
- 審判官 河合 俊英
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.161-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6203525号発明「洗浄液組成物」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6203525号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-12〕,〔13-14〕について訂正することを認める。
特許第6203525号の請求項1ないし3,6ないし14に係る特許を維持する。
特許第6203525号の請求項4,5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6203525号の請求項1ないし14に係る特許についての出願は,平成25年4月19日に出願され,平成29年9月8日にその特許権の設定登録がされ,平成29年9月27日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許について,平成30年3月27日に特許異議申立人 戸塚 清貴 により特許異議の申立てがされ,当審は,平成30年6月7日付けで取消理由を通知した。特許権者は,その指定期間内である平成30年8月10日に意見書の提出及び訂正の請求を行い,その訂正の請求に対して,特許異議申立人 戸塚 清貴 は,平成30年10月10日に意見書を提出した。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,以下のアないしオのとおりである。
ア 請求項1に係る「塩基性化合物」を「第四級アンモニウム化合物」に訂正する。請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2,3,6~12も同様に訂正する。
イ 請求項4及び5を削除する。
ウ 請求項6及び請求項8~10の引用する請求項番号を訂正する。請求項6及び請求項8~10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~12も同様に訂正する。
エ 発明の詳細な説明の【0036】の「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物のうち,五員環化合物としては,これらに限定されるものではないが,ピロール,ピラゾリン,ピラゾール,イミダゾール,トリアゾール,イミダゾリン,オキサゾリン,オキサゾール,イソオキサゾールおよびその誘導体であり,具体的には,1H-ピロール,1-ピロリン,2-ピロリン,3-ピロリン,ピロリジン,ピロリドン,γ-ブチロラクタム,γ-バレロラクタム,プロリン,プロリル,ヒグリン酸,ヒグロイル,ミナリン,1H-ピラゾール,1-ピラゾリン,2-ピラゾリン,ピラゾリジン,ピラリゾリドン,3-ピラゾロン,4-ピラゾロン,5-ピラゾロン,1H-ピラゾール-4-カルボン酸,1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボン酸,5-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸,3,5-ピラゾールジカルボン酸,3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール,1H-イミダゾール,2-イミダゾリン,3-イミダゾリン,4-イミダゾリン,イミダゾリジン,イミダゾリドン,エチレン尿素,ヒダントイン,アラントイン,ヒスチジン,ヒスチジル,ヒスタミン,1,2,3-トリアゾール,1,2,4-トリアゾール,1-ヒドロキシベンゾトリアゾール,3-アミノ-1,2,4-トリアゾール,4-アミノ-1,2,4-トリアゾール,3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールが挙げられる。中でも,工業的に入手が容易であり,水溶性が高いという観点から,好ましくは,ピラゾール,3,5-ピラゾールジカルボン酸,3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール,イミダゾール,トリアゾール,3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール,ヒスチジン,ヒスタミンであり,特に好ましくは,ヒスチジン,ヒスタミン,3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールである。」という記載を,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物のうち,五員環化合物としては,これらに限定されるものではないが,ピロール,ピラゾール,イミダゾール,トリアゾール,オキサゾール,およびその誘導体であり,具体的には,1H-ピロール,ミナリン,1H-ピラゾール,1H-ピラゾール-4-カルボン酸,1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボン酸,5-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸,3,5-ピラゾールジカルボン酸,3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール,1H-イミダゾール,ヒスチジン,ヒスタミン,1,2,3-トリアゾール,1,2,4-トリアゾール,1-ヒドロキシベンゾトリアゾール,3-アミノ-1,2,4-トリアゾール,4-アミノ-1,2,4-トリアゾール,3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールが挙げられる。中でも,工業的に入手が容易であり,水溶性が高いという観点から,好ましくは,ピラゾール,3,5-ピラゾールジカルボン酸,3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール,イミダゾール,トリアゾール,3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール,ヒスチジン,ヒスタミンであり,特に好ましくは,ヒスチジン,ヒスタミン,3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールである。」に訂正する。
オ 請求項13に係る「塩基性化合物」を「第四級アンモニウム化合物」に訂正する。請求項13の記載を引用する請求項14も同様に訂正する。
本件訂正請求は,一群の請求項〔1~12〕,〔13,14〕に対して請求されたものである。また,明細書に係る訂正は,一群の請求項〔1~12〕及び〔13,14〕について請求されたものである。
(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 請求項1及び13に係る訂正について
請求項1及び13に係る「塩基性化合物」は,「第四級アンモニウム化合物」を選択肢として含む上位概念であるから,「塩基性化合物」を「第四級アンモニウム化合物」に変更する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
次に,明細書の発明の詳細な説明の【0024】には,「塩基性化合物」の具体例として「第四級アンモニウム化合物」が他の選択肢とともに列挙されている。よって,「塩基性化合物」として「第四級アンモニウム化合物」を用いてなる発明は,明細書に記載されており,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
イ 請求項4及び5の訂正について
請求項4及び5の訂正は,訂正前の請求項4及び5を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
ウ 請求項6及び請求項8~10の訂正について
請求項6及び請求項8~10の訂正は,訂正前の請求項4及び5を削除する訂正に伴い,訂正前の請求項6及び請求項8~10が引用する請求項番号を訂正するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
エ 【0036】の訂正について
【0036】の訂正は,訂正前の【0036】において,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物のうち,五員環化合物としては,これらに限定されるものではないが」として列挙されている「ピロール,ピラゾリン,・・・エチレン尿素・・・」から,その一部である,「ピラゾリン」,「エチレン尿素」等を削除する訂正である。そうすると,上記訂正によって,当該「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物」を発明特定事項として含む特許請求の範囲に記載された発明が特許請求する範囲は減縮することとなる。したがって,【0036】の訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。そして,【0036】の訂正は,「ピロール」,「ピラゾリン」,「エチレン尿素」等の選択肢から,その一部を削除する訂正であるから,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(3)小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって,明細書,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1~12〕,〔13,14〕について訂正することを認める。
3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし14に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明14」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって,水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上と,窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含み,イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない,水素イオン濃度(pH)が8~11である,前記洗浄液組成物。
【請求項2】
Cu配線を有する基板が,化学的機械研磨(CMP)後に得られる基板である,請求項1に記載の洗浄液組成物。
【請求項3】
窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物が,五員環化合物である,請求項1または2に記載の洗浄液組成物。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
さらに,ホスホン酸系キレート剤を1種または2種以上含む,請求項1~3のいずれか一項に記載の洗浄液組成物。
【請求項7】
ホスホン酸系キレート剤が,N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO),グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)(グリホシン),ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)またはそれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である,請求項6に記載の洗浄液組成物。
【請求項8】
さらに,アニオン型またはノニオン型界面活性剤を1種または2種以上含む,請求項1~3,6および7のいずれか一項に記載の洗浄液組成物。
【請求項9】
請求項1~3および6~8のいずれか一項に記載の洗浄液組成物用の原液組成物であって,10倍~1000倍に希釈することにより前記洗浄液組成物を得るために用いられる,前記原液組成物。
【請求項10】
請求項1~3および6~8のいずれか一項に記載の洗浄液組成物を,Cu配線を有する基板に接触させる工程を含む,半導体基板の製造方法。
【請求項11】
Cu配線を有する基板に接触させる工程の前に,Cu配線を有する基板を,化学的機械研磨(CMP)する工程を含む,請求項10に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項12】
Cu配線を有する基板に接触させる工程が,Cu配線を有する基板を洗浄する工程である,請求項10または11に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項13】
水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上と,窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含み,イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない,水素イオン濃度(pH)が8~11である洗浄液組成物を,Cuを含む有機残渣に接触させる工程を含む,Cuを含む有機残渣を溶解する方法。
【請求項14】
Cuを含む有機残渣が,Cu-ベンゾトリアゾール(BTA)複合体を含む,請求項13に記載の方法。」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して,当審が平成30年6月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。
請求項1ないし14に係る発明は,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるか,又は,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と甲第3,4,6~9号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到することができたものである。よって,請求項1ないし14に係る特許は,特許法第29条第1項第3号に該当するか,または,第29条第2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。
甲第1号証:国際公開第01/71789号
甲第2号証:特開2011-74189号公報
甲第3号証:特表2008-543060号公報
甲第4号証:特表2008-528762号公報
甲第6号証:国際公開第2005/040324号
甲第7号証:Journal of Occupational Health 2008; 50: 99-102
甲第8号証:Clinical toxicology 2010; 48: 213-217
甲第9号証:特開2007-2227号公報
(2)甲号証の記載
ア 甲第1号証(国際公開第01/71789号)には,以下の記載がある。
「技術分野
本発明は,表面に銅配線が施された半導体表面の洗浄剤及び洗浄方法に関する。」(明細書第1ページ第5-6行)
「実施例11
トリエタノールアミンの代わりに本発明に係る化合物であるエチレンジアミンを0.5%溶解し,更に金属腐蝕防止剤であるメルカプトイミダゾ一ルを0.001%溶解し,pH調整剤としてクエン酸を用いてpH10となるように調整した洗浄剤を用いた以外は,実施例1と同様の方法でCuO汚染ウエーハ及び金属Cu堆積ウエーハを処理した後,CuO汚染ウエーハ表面の残存CuO濃度とパーティクル数,並びに,金属Cu堆積ウエーハ表面の金属Cuの膜厚を測定した。結果を表4に示す。」(明細書第33ページ第12-18行)
イ 上記アから,甲第1号証は,以下の発明(以下「引用発明1」という。)を開示していると認められる。
「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって,
エチレンジアミンと,
メルカプトイミダゾールと,
クエン酸とを含み,
水素イオン濃度(pH)が10である,
前記洗浄液組成物。」
ウ 甲第2号証(特開2011-74189号公報)には,以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C),および水を必須成分とし,pHが5.0以上であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤(E)。
【請求項2】
該ウレア基またはチオウレア基含有化合物(C)が,下記一般式(1)で表されるエチレン尿素化合物(C1),下記一般式(2)で表されるエチレンチオ尿素化合物(C2),尿素,またはチオ尿素である請求項1記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【化1】
<省略>
[式(1)中,R1とR2はそれぞれ独立に水素原子,または水酸基で置換されていてもよいアルキル基である。]
【化2】
<省略>
[式(2)中,R3とR4はそれぞれ独立に水素原子,または水酸基で置換されていてもよいアルキル基である。]
【請求項3】
該有機アミン(A)が脂肪族アミン(A1)または環式アミン(A2)である請求項1または2記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項4】
該4級アンモニウム化合物(B)が,下記一般式(3)で表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(B1)または下記一般式(4)で表されるN-ヒドロキシアルキル-N-トリアルキルアンモニウムヒドロキシド(B2)である請求項1~3いずれか記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【化3】
<省略>
[式(1)中,R5~R8は炭素数1~3のアルキル基である。]
【化4】
<省略>
[式(2)中,R9~R11はそれぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基;R12は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基である。]
【請求項5】
該ウレア基またはチオウレア基含有化合物(C)の含有率が,(A),(B),(C)および水の合計重量に基づいて,0.01~10重量%である請求項1~4いずれか記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項6】
請求項1~5いずれかに記載の半導体洗浄用洗浄剤用いて半導体基板または半導体素子を洗浄する工程を含む,半導体基板または半導体素子の製造方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は,銅配線半導体用の洗浄剤に関する。さらに詳しくは,CMP(化学的機械的研磨)工程後に,銅配線半導体を清浄化するための洗浄剤として好適な半導体用洗浄剤に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,従来の半導体用洗浄剤は,金属配線材料(銅,タングステン等)を溶解するという問題があるばかりでなく,銅配線に付着する研磨剤由来の有機残渣を除去する効果が不十分であるという問題がある。
そこで,本発明は,研磨工程由来の有機残渣除去性能,銅配線の腐食抑制効果(銅腐食抑制効果)に優れ,かつ腐食防止剤が残留しない銅配線半導体用洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは,上記の目的を達成するべく検討を行った結果,本発明に到達した。
すなわち,本発明は,有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C),および水を必須成分とし,pHが5.0以上であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤(E);並びにこの銅配線半導体用洗浄剤を,半導体基板に断続的に供給して,銅配線を有する半導体基板または半導体素子を洗浄する工程を含む,半導体基板または半導体素子の製造法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は,銅配線の腐食抑制効果(銅腐食抑制効果)に優れ,かつ,優れた洗浄性の効果を奏する。また,本発明の半導体基板または半導体素子製造方法によると,銅配線の腐食がなく,接触抵抗に優れた半導体基板または半導体素子が容易に製造することができる。」
「【0018】
脂肪族アミン(A1)としては,炭素数の数(以下,Cと略記する。)1~6のアルキルアミン,C2~6のアルカノールアミン,C2~5のアルキレンジアミン,および窒素原子の数が2~8でC2~12のポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。
【0019】
C1~6のアルキルアミンとしては,C1~6のモノアルキルアミン(メチルアミン,エチルアミン,プロピルアミン,イソプロピルアミン,ブチルアミンおよびヘキシルアミン等);C2~6のジアルキルアミン(ジメチルアミン,エチルメチルアミン,プロピルメチルアミン,ブチルメチルアミン,ジエチルアミン,プロピルエチルアミンおよびジイソプロピルアミン等);C2~6のトリアルキルアミン(トリメチルアミン,エチルジメチルアミン,ジエチルメチルアミン,トリエチルアミン,トリn-プロピルアミン,トリn-ブチルアミン等)が挙げられる。
【0020】
C2~6のアルカノールアミンとしては,モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,ジメチルアミノエタノール,ジエチルアミノエタノール,2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール,N-(アミノエチル)エタノールアミン,N,N-ジメチル-2-アミノエタノール,2-(2-アミノエトキシ)エタノール等が挙げられる。
【0021】
C2~5のアルキレンジアミンとしては,エチレンジアミン,プロピレンジアミン,トリメチレンジアミン,テトラメチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0022】
窒素原子の数が2~8であってC2~12のポリアルキレンポリアミンとしては,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミン,テトラエチレンペンタミン,ヘキサメチレンヘプタミン,イミノビスプロピルアミン,ビス(ヘキサメチレン)トリアミン,ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
【0023】
環式アミン(A2)は芳香族アミンと脂環式アミンが挙げられる。具体的にはC6~20の芳香族アミン[アニリン,フェニレンジアミン,トリレンジアミン,キシリレンジアミン,メチレンジアニリン,ジフェニルエーテルジアミン,ナフタレンジアミン,アントラセンジアミン等];C4~15の脂環式アミン[イソホロンジアミン,シクロヘキシレンジアミン等];C4~15の複素環式アミン[ピペラジン,N-アミノエチルピペラジン,1,4-ジアミノエチルピペラジン等]等が挙げられる。
【0024】
これらの有機アミン(A)のうち,水溶性の観点から好ましくは脂肪族アミン(A1)であり,銅腐食抑制効果の観点からより好ましくはアルカノールアミンであり,さらに,錯化作用の観点等から,モノエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが好ましい。」
「【0026】
本発明の4級アンモニウム化合物(B)は,下記一般式(3)で表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(B1)または下記一般式(4)で表されるN-ヒドロキシアルキル-N-トリアルキルアンモニウムヒドロキシド(B2)が挙げられる。
【0027】
【化3】
<省略>
【0028】
[式(1)中,R5~R8は炭素数1~3のアルキル基である。]
【0029】
【化4】
<省略>
【0030】
[式(2)中,R9~R11は炭素数1~3のアルキル基;R12は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基である。]
【0031】
テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(B1)としてはC5~17のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0032】
N-ヒドロキシアルキル-N-トリアルキルアンモニウムヒドロキシド(B2)としては,C5~17のヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムヒドロキシド,C5~17のジヒドロキシアルキルジアルキルアンモニウムヒドロキシド,およびC5~17のトリヒドロキシアルキルアルキルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0033】
これらのうち,洗浄性および銅腐食抑制の観点から好ましくは,テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド,特に好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよびテトラエチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0034】
4級アンモニウム化合物(B)の含有率は,銅腐食抑制および洗浄性観点から,(A),(B),(C)および水の合計重量に基づいて,0.01~10.0重量%が好ましく,さらに好ましくは0.1~5.0重量%,次にさらに好ましくは0.1~1.0重量%,特に好ましくは0.1~0.2重量%である。」
「【0037】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤のpHは5.0以上であり,シリコンウエハ(絶縁膜)腐食の観点からpHが5.0~14.0である。pH14を超えるとシリコンウエハ(絶縁膜)を腐食し易くなる。さらに,洗浄性および銅配線腐食抑制効果の観点から,6.0~13.0が好ましく,銅配線腐食抑制効果の観点から,さらに好ましくは7.0~11.0,特に好ましくは8.0~10.0である。pHが5.0未満では,銅を腐食し易くなる。」
「【0048】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は,有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)および水以外に,洗浄性の観点から,さらに必要により界面活性剤を含有していてもよい。
【0049】
界面活性剤としては,公知の界面活性剤(「界面活性剤 物性・性能要覧,株式会社技術情報協会,2003年5月29日発行」または「新・界面活性剤入門,三洋化成工業株式会社,1996年10月発行」等に記載のもの等)が使用でき,例えば,非イオン性界面活性剤,アニオン性界面活性剤,カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。
【0050】
界面活性剤のうち,半導体の電気特性に悪影響を及ぼさないという観点等から,非イオン界面活性剤が好ましく,さらに好ましくはポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤である。」
「【0052】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は,有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)および水以外に,洗浄性の観点から,さらに必要により水溶性還元剤および錯化剤が含まれていてもよい。
ここで水溶性とは,25℃の水への溶解度が,水溶液100gあたり0.01g以上である性質をいう。
水溶性還元剤が水溶性であると,洗浄後に水溶性還元剤が銅配線に残留しにくい。
【0053】
水溶性還元剤の25℃の水への溶解度は,水溶液100gあたり0.01g以上,好ましくは1g以上である。この範囲であると洗浄後に水溶性還元剤がさらに残留しにくい。
【0054】
水溶性還元剤としては,有機還元剤,無機還元剤が挙げられ,有機還元剤としては,脂肪族有機還元剤,芳香族有機還元剤が挙げられる。
【0055】
脂肪族有機還元剤としては,シュウ酸(塩),シュウ酸水素(塩),C6~9のアルデヒドが挙げられる。
【0056】
芳香族有機還元剤としては,C6~30のフェノール化合物やベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0057】
無機還元剤としては,亜硫酸(塩),チオ硫酸(塩)等が挙げられる。
【0058】
これらの水溶性還元剤のうち,水溶性および銅腐食抑制効果等の観点から,有機還元剤が好ましく,さらに好ましくは脂肪族有機還元剤,特に好ましくはシュウ酸(塩)である。さらに,錯化作用の観点等から,シュウ酸塩が好ましく,さらに好ましくはシュウ酸アンモニウムである。
【0059】
水溶性還元剤を含有する場合,水溶性還元剤の含有量は,銅腐食抑制効果および銅配線上の残留防止の観点から合計重量に基づいて0.001~1.0重量%が好ましく,さらに好ましくは0.005~0.3重量%,特に好ましくは0.01~0.1重量%である。
【0060】
錯化剤としては,C1~6の芳香族または脂肪族のヒドロキシカルボン酸(塩);C9~23のヒドロキシ基,カルボキシル基の少なくともどちらか一方を有する複素環式化合物;C6~14のポリアミノポリカルボン酸(塩);C2~4のポリカルボン酸(塩);C6~9のホスホン酸(塩)等が挙げられる。
C1~6の芳香族または脂肪族ヒドロキシカルボン酸(塩)としては,グルコン酸(塩)等が挙げられる。
【0061】
これらの錯化剤のうち,銅腐食抑制効果および導電性物質の除去性等の観点から,芳香族または脂肪族のヒドロキシカルボン酸(塩),ヒドロキシ基またはカルボキシル基の少なくともどちらか一方を有する複素環式化合物またはポリカルボン酸(塩)が好ましく,さらに好ましくは脂肪族ヒドロキシカルボン酸(塩)またはポリカルボン酸(塩),特に好ましくは脂肪族ヒドロキシカルボン酸(塩)である。
【0062】
錯化剤を含有する場合,錯化剤の含有量は,有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)および水の合計重量に基づいて0.001~1.0重量%が好ましく,さらに好ましくは0.005~0.1重量%,特に好ましくは0.01~0.05重量%ある。この範囲であると,銅腐食抑制効果および洗浄性{不純物(金属イオンおよび金属酸化物等)を洗浄する特性}がさらに優れる。」
「【0066】
<実施例1>
ポリエチレン製容器にエチレン尿素(商品名:エチレン尿素,純度30%,東ソー製)0.5部,水59.5部を加えた後,モノエタノールアミン(純度99%,和光純薬製)0.15部および25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(品名:TMAH(25%,多摩化学製)0.167部を加え,25℃でマグネチックスターラーにより5分間撹拌した。
その後,仕込んだエチレン尿素,テトラメチルアンモニウムヒドロキシド,モノエタノールアミンおよび水の合計量が100部となるように水を加え,本発明の銅配線半導体用洗浄剤(E-1)を得た。得られた(E-1)のpHは12.0であった。
なお,水溶液として使用するTMAH,クエン酸水溶液,シュウ酸水溶液,塩酸中の水は,合計量を算出する際に,仕込んだ水の一部として計算に含めた。
【0067】
<実施例2>
実施例1において,さらに10%クエン酸水溶液を加えてpHを9.0に調整した以外は同様にして,本発明の銅配線半導体用洗浄剤(E-2)を得た。
【0068】
<比較例1~4>
表1に記載した有機アミン成分,化合物(C),pH調整剤の含有量となるように,実施例と同様にして,比較の銅配線半導体用洗浄剤(E’-1)~(E’-4)を得た。
【0069】
【表1】
」
エ 上記ウから,甲第2号証は,以下の発明(以下「引用発明2A」という。)を開示していると認められる。
「CMP(化学的機械的研磨)工程後に,銅配線半導体を清浄化するための,有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C),および水を必須成分とし,pHが5.0以上であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤(E)であって,
前記有機アミン(A)が,脂肪族アミン(A1)であり,
前記4級アンモニウム化合物(B)が,テトラエチルアンモニウムヒドロキシドであり,
前記ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)が,エチレン尿素化合物(C1)であり,
前記pHが,銅配線腐食抑制効果の観点から,特に好ましい,8.0~10.0とされた,
研磨工程由来の有機残渣除去性能,銅配線の腐食抑制効果(銅腐食抑制効果)に優れ,かつ腐食防止剤が残留しない銅配線半導体用洗浄剤。」
オ 上記ウから,甲第2号証は,以下の発明(以下「引用発明2B」という。)を開示していると認められる。
「CMP(化学的機械的研磨)工程後に,銅配線半導体を清浄化するための,有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C),および水を必須成分とし,pHが5.0以上であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤(E)であって,
前記ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)として,エチレン尿素を,
前記有機アミン(A)として,モノエタノールアミンを,
前記4級アンモニウム化合物(B)として,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含み,
水と,クエン酸を加えて,pHを9.0に調整した,
銅配線半導体用洗浄剤。」
(3)当審の判断
ア 引用発明1に基づく検討
本件発明1と引用発明1とを対比すると,両発明は,以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点1>
「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって,水酸化テトラメチルアンモニウムを除く塩基性化合物を1種または2種以上と,窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含み,イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない,水素イオン濃度(pH)が8~11である,前記洗浄液組成物。」
<相違点1>
本件発明1が,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く塩基性化合物を1種または2種以上」として,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有するのに対して,引用発明1は,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く塩基性化合物を1種または2種以上」が,「エチレンジアミン」を含むものであって,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有していない点。
したがって,本件発明1は引用発明1と上記相違点1において相違するから,本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
また,甲第2~4,6~9号証の記載及び出願時の技術常識を参酌しても,引用発明1において,「エチレンジアミン」に替えて,あるいは,「エチレンジアミン」とともに「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むものとする動機を見いだすことはできないから,引用発明1を,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むものとすることは,当業者といえども容易に想到し得たことではない。そして,本件発明1は,相違点1に係る構成を備えることにより,「low-k材料に対してダメージが生じ」難い(本件特許明細書段落0033)という格別に有利な効果を奏する。したがって,本件発明1は,引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに,請求項2,3,6~12に係る発明は,請求項1に係る発明に対して,さらに技術的事項を追加したものである。また,請求項13,14に係る発明は,上記相違点1に係る「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有するものである。よって,上記と同様の理由により,請求項2,3,6~12に係る発明及び請求項13,14に係る発明は,甲第1号証に記載された発明ではなく,また,引用発明1及び甲第2~4,6~9号証の記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 引用発明2Aに基づく検討
本件発明1と引用発明2Aとを対比すると,両発明は,以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点2A>
「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって,水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上と,窒素原子を含む化合物を1種または2種以上とを含み,イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない,水素イオン濃度(pH)が8~11である,前記洗浄液組成物。」
<相違点2A>
本件発明1が,「窒素原子を含む化合物を1種または2種以上」として,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有するのに対して,引用発明2Aは,「窒素原子を含む化合物を1種または2種以上」が,「エチレン尿素化合物」を含むものであって,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有していない点。
したがって,本件発明1は引用発明2Aと上記相違点2Aにおいて相違するから,本件発明1は甲第2号証に記載された発明ではない。
また,甲第1,3,4,6~9号証の記載及び出願時の技術常識を参酌しても,引用発明2Aにおいて,「エチレン尿素化合物」に替えて,あるいは,「エチレン尿素化合物」とともに「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むものとする動機を見いだすことはできないから,引用発明2Aを,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むものとすることは,当業者といえども容易に想到し得たことではない。そして,本件発明1は,相違点2Aに係る構成を備えることにより,「錯体安定度定数がCuとBTAよりも高く,かつ比較的分子内の疎水部位が小さく水溶性が高い錯化剤を添加し,新たにCuと錯化剤との有機金属錯体を形成することでpH8~11の領域でCu-BTA複合体のような有機残渣を除去することができる。」(本件特許明細書段落0040)という格別に有利な効果を奏する。したがって,本件発明1は,引用発明2Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに,請求項2,3,6~12に係る発明は,請求項1に係る発明に対して,さらに技術的事項を追加したものである。また,請求項13,14に係る発明は,上記相違点2Aに係る「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有するものである。よって,上記と同様の理由により,請求項2,3,6~12に係る発明及び請求項13,14に係る発明は,甲第2号証に記載された発明ではなく,また,引用発明2A及び甲第1,3,4,6~9号証の記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 引用発明2Bに基づく検討
本件発明1と引用発明2Bとを対比すると,両発明は,以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点2B>
「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって,第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上と,窒素原子を含む化合物を1種または2種以上とを含み,イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない,水素イオン濃度(pH)が8~11である,前記洗浄液組成物。」
<相違点2A>
本件発明1が,「窒素原子を含む化合物を1種または2種以上」として,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有するのに対して,引用発明2Bは,「窒素原子を含む化合物を1種または2種以上」が,「エチレン尿素化合物」を含むものであって,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有していない点。
<相違点2B>
本件発明1が,「第四級アンモニウムを1種または2種以上」として,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有するのに対して,引用発明2Bは,「第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」が,「テトラメチルアンモニウムヒドロキシド」を含むものであって,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有していない点。
したがって,本件発明1は引用発明2Bと上記相違点2A及び上記相違点2Bにおいて相違するから,本件発明1は甲第2号証に記載された発明ではない。
また,甲第1,3,4,6~9号証の記載及び出願時の技術常識を参酌しても,引用発明2Bにおいて,「エチレン尿素化合物」に替えて,あるいは,「エチレン尿素化合物」とともに「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むものとする動機を見いだすことはできないから,引用発明2Bを,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むものとすることは,当業者といえども容易に想到し得たことではない。そして,本件発明1は,相違点2Aに係る構成を備えることにより,「錯体安定度定数がCuとBTAよりも高く,かつ比較的分子内の疎水部位が小さく水溶性が高い錯化剤を添加し,新たにCuと錯化剤との有機金属錯体を形成することでpH8~11の領域でCu-BTA複合体のような有機残渣を除去することができる。」(本件特許明細書段落0040)という格別に有利な効果を奏する。したがって,他の相違点については検討するまでもなく,本件発明1は,引用発明2Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに,請求項2,3,6~12に係る発明は,請求項1に係る発明に対して,さらに技術的事項を追加したものである。また,請求項13,14に係る発明は,上記相違点2Aに係る「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有するものである。よって,上記と同様の理由により,請求項2,3,6~12に係る発明及び請求項13,14に係る発明は,甲第2号証に記載された発明ではなく,また,引用発明2B及び甲第1,3,4,6~9号証の記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人 戸塚 清貴 は,以下の参考文献1~4を示して,ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物と窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物は,本件発明1が属する,Cu配線を有する基板の洗浄に使用する洗浄液組成物の分野では同一の作用・効果を有する物質として周知であることから,引用発明2Aにおいて「ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物」を,窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物に置換することは当業者にとって容易であると主張するので,以下において検討する。
(ア)参考文献1(特開2007-119783号公報)には,以下の記載がある。
「【請求項4】
水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムを0.01~10重量%,水溶性有機溶剤を5~80重量%,芳香族複素環式化合物,ノニオン性界面活性剤,チオ尿素類から選ばれた少なくとも一種の腐食防止剤を0.0001~10重量%と水とからなる洗浄液。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は,被処理物の材質,特に低誘電率膜,9族金属あるいはその合金と11族金属を腐食することなく,フォトレジストやその残渣物およびオルガノシロキサン系反射防止膜または形状保護膜等の被処理物表面の付着物を除去することができる洗浄液とその洗浄方法を提供することを目的とするものである。」
「【0007】
本発明で用いられる腐食防止剤は,芳香族複素環式化合物,ノニオン性界面活性剤,チオ尿素類から選ばれた少なくとも一種の腐食防止剤である。芳香族複素環式化合物はヘテロ原子として窒素原子単独または窒素原子と硫黄原子を合計で2~4個を有する芳香族複素環式化合物であり,窒素原子のみを2個有するものの例としてはイミダゾール,1-メチルイミダゾール,2-メチルイミダゾール,4-メチルイミダゾール及び3-メチル-5-ピラゾロンが挙げられる。窒素原子のみを3個有するものの例としては1,2,4-トリアゾール,3-アミノ-1,2,4-トリアゾール,4-アミノ-1,2,4-トリアゾール,3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール,1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸メチル,1-ヒドロキシベンゾトリアゾール,1,2,3-ベンゾトリアゾール,5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール,1H-4/5メチルベンゾトリアゾール,2-(3,5-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール及び1H-ベンゾトリアゾール-1-メタノールが挙げられる。窒素原子のみを4個有するものの例としては5-フェニルテトラゾール,5-アミノ-1H-テトラゾール,1H-テトラゾール-1-酢酸及び5-(3-アミノフェノール)テトラゾールが挙げられる。窒素原子と硫黄原子とをそれぞれ1個ずつ有する芳香族複素環式化合物の例としては,2-メルカプトベンゾチアゾールが挙げられ,窒素原子を2個,硫黄原子を1個有する芳香族複素環式化合物の例としては,2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。」
以上の記載から,参考文献1には,水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムを0.01~10重量%,水溶性有機溶剤を5~80重量%,腐食防止剤を0.0001~10重量%と水とからなる洗浄液において,腐食防止剤として,芳香族複素環式化合物,ノニオン性界面活性剤,チオ尿素類から選ばれた少なくとも一種を用いることが記載されていることが認められる。
(イ)参考文献2(国際公開第2005/040324号)には,以下の記載がある。
「[0040]本発明の洗浄剤中には,上記した如き本発明に係る有機酸,錯化剤及び有機溶媒の他に,本発明の効果を阻害しない範囲で各種補助成分が含まれていてもよい。
このような補助成分としては,通常この分野で用いられるものを使用することができ,例えば配線のCuを保護し,Cuの腐食を防止する目的で用いられる,例えば還元剤,金属腐食防止剤等,半導体表面に対する洗浄剤の濡れ性を改善し,洗浄効果を向上させる目的で用いられる,界面活性剤等である。
[0041]還元剤としては,例えばヒドラジン又はその誘導体,アスコルビン酸,ホルマリン等が挙げられ,これら還元剤は,単独で使用しても,2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
[0042]また,金属腐食防止剤としては,上記した如き,ベンゾトリアゾール又はその誘導体(特開昭51-29338号公報,特開平1-195292号公報,特開平10-265979号公報等),ベンゾイミダゾール類(特開平7-79061号公報等)等の芳香族化合物,メルカプトイミダゾール,メルカプトチアゾール等の環状化合物(特開2000-87268号公報,特開2000-282096号公報等),メルカプトエタノール,メルカプトグリセロール等の分子中にメルカプト基を有し且つ当該メルカプト基が結合している炭素と水酸基が結合している炭素とが隣接して結合している脂肪族アルコール系化合物(特開2000-273663号公報等),システイン,N-アセチルシステイン等の分子中にチオール基を有するアミノ酸類(特開2003-13266号公報等),チオ尿素類等が挙げられ,これら界面活性剤は,単独で使用しても,2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。」
「発明の効果
[0052]本発明の洗浄剤を使用することにより,基板表面に施された金属配線,特に銅配線の腐食や酸化を起こすことなく,基板表面に存在する微細粒子(パーティクル)や各種金属由来の不純物(金属不純物)を有効に除去し得,更には,金属腐食防止剤-Cu皮膜,特にCu-BTA皮膜を除去することなく,基板表面に存在するカーボン・ディフェクトをも同時に除去し得る。」
以上の記載から,参考文献2には,Cu-BTA皮膜を除去することなく,基板表面に存在するカーボン・ディフェクトをも同時に除去し得る洗浄剤に用いることができる金属腐食防止剤として,ベンゾトリアゾール又はその誘導体,ベンゾイミダゾール類等の芳香族化合物,メルカプトイミダゾール,メルカプトチアゾール等の環状化合物,メルカプトエタノール,メルカプトグリセロール等の分子中にメルカプト基を有し且つ当該メルカプト基が結合している炭素と水酸基が結合している炭素とが隣接して結合している脂肪族アルコール系化合物,システイン,N-アセチルシステイン等の分子中にチオール基を有するアミノ酸類,チオ尿素類等を用いてもよいことが記載されていると認められる。
(ウ)参考文献3(特開2003-228180号公報)には,以下の記載がある。
「【0001】
【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体集積回路,液晶パネル,有機ELパネル,プリント基板等の製造に用いられる洗浄液,特に銅を含有する基板での使用方法に関する。」
「【0006】本発明において本発明の過酸化水素含有洗浄液で処理後に使用する有機溶剤含有レジスト剥離液は特に制限がない。好ましくはアミン含有レジスト剥離液である。アミン含有組成物はレジスト剥離性が高く使用に適している。さらに,四級アンモニウムヒドロキサイドを含有する組成物は変質レジストに効果的であり,非常に好ましい。具体的にアミンの例としてエタノールアミン,1-アミノ-2-プロパノ-ル,1-アミノ-3-プロパノ-ル,1-アミノ-4-ブタノ-ル,アミノエトキシエタノール,1-メチルアミノエタノール,1,1-ジメチルアミノエタノール,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,ジイソプロパノールアミン,トリイソプロパノールアミン,エチレンジアミン,ジエチレントリアミン,トリエチレンヘキサミン,ヘキサエチレンペンタミン,ジメチルエチレンジアミン,ヘキサメチルエチレンジアミン,ペンタメチルジエチレントリアミン,メチルアミノエトキシエタノール,ジメチルアミノエトキシエタノールがあげられる。本発明でアミンの種類は限定されず,沸点が好ましくは90℃以上のものである。四級アンモニウムヒドロキサイドの具体的な例としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド,テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド,コリンヒドロキサイド等が上げられる。さらに本発明の過酸化水素含有洗浄液で処理後に使用する有機溶剤含有レジスト剥離液は溶存酸素量を10ppm以下での使用が非常に好ましい。溶存酸素が多いとレジスト剥離液に溶解した酸素が銅を酸化し,酸化された銅が銅アミン錯体となって溶解することで腐蝕が進行する。低溶存酸素環境は窒素,アルゴン,水素等を使用することで可能であり,どれを使用してもかまわない。この中で好ましくは窒素,アルゴンである。低溶存酸素の環境を作るには気液の接触を上げる方法で容易になる。非酸素のガスを溶液にバブルする方法や液を不活性ガス中にスプレーすることで作ることが容易になる。通常,レジスト剥離液の多くはアルカリのほかに有機溶剤,防食剤,界面活性剤等を含むことが多い。本発明ではこれらの物を含むことは何ら問題がない。通常のレジスト剥離液の場合,防食剤がよく使用される。とくに,銅に対する防食剤としてベンゾトリアゾールに代表されるアゾール類,アセチレンアルコールに代表されるアルキン化合物,チオ尿素,メルカプトチアゾールに代表される低原子価硫黄化合物等が使用される。本発明ではこれらの防食剤を使用することに何ら制限がない。」
以上の記載から,参考文献3には,銅を含有する基板で使用する洗浄液において,銅に対する防食剤としてベンゾトリアゾールに代表されるアゾール類,アセチレンアルコールに代表されるアルキン化合物,チオ尿素,メルカプトチアゾールに代表される低原子価硫黄化合物等を使用することに何ら制限がないことが記載されていると認められる。
(エ)参考文献4(特開2004-212818号公報)には,以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,半導体集積回路,液晶パネル,有機ELパネル,プリント基板等の製造に用いられるレジスト剥離液に関する。」
「【0011】
更に,本発明のレジスト剥離液組成物に,界面活性剤,防食剤を加えることに何ら問題ない。界面活性剤としてはカチオン,アニオン,ノニオンがあげられる。これらは表面張力,防食,洗浄性を考慮して添加できる。防食剤としてベンゾトリアゾールに代表されるアゾール類,アセチレンアルコールに代表されるアルキン化合物,チオ尿素,メルカプトチアゾールに代表される低原子価硫黄化合物,カテコール,t―ブチルカテコールに代表される芳香族ヒドロキシ化合物類,ソルビトール,キシリトールに代表される糖類等が使用できる。」
以上の記載から,参考文献4には,半導体集積回路,液晶パネル,有機ELパネル,プリント基板等の製造に用いられるレジスト剥離液において,防食剤としてベンゾトリアゾールに代表されるアゾール類,アセチレンアルコールに代表されるアルキン化合物,チオ尿素,メルカプトチアゾールに代表される低原子価硫黄化合物,カテコール,t―ブチルカテコールに代表される芳香族ヒドロキシ化合物類,ソルビトール,キシリトールに代表される糖類等を使用することに何ら問題ないことが記載されていると認められる。
一方,上記4(2)ウのとおり,甲第2号証には,以下の記載がある。
「【請求項1】
有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C),および水を必須成分とし,pHが5.0以上であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤(E)。 」
「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは,上記の目的を達成するべく検討を行った結果,本発明に到達した。
すなわち,本発明は,有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C),および水を必須成分とし,pHが5.0以上であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤(E);並びにこの銅配線半導体用洗浄剤を,半導体基板に断続的に供給して,銅配線を有する半導体基板または半導体素子を洗浄する工程を含む,半導体基板または半導体素子の製造法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は,銅配線の腐食抑制効果(銅腐食抑制効果)に優れ,かつ,優れた洗浄性の効果を奏する。また,本発明の半導体基板または半導体素子製造方法によると,銅配線の腐食がなく,接触抵抗に優れた半導体基板または半導体素子が容易に製造することができる。」
すなわち,甲第2号証の上記記載から,引用発明2Aは,有機アミン(A),4級アンモニウム化合物(B),ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C),および水を必須成分とするものであって,当該成分を含有しpHが5.0以上であることによって,銅配線の腐食抑制効果(銅腐食抑制効果)に優れ,かつ,優れた洗浄性という効果を奏することができる発明であると認められる。
したがって,引用発明2Aにおいて,当該必須成分の一つである,ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)を,他の化合物に置き換えることは,引用発明2Aによって得ようとする前記それぞれの効果を損なうこととなるから,引用発明2Aにおいて,ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)を,他の化合物に置き換える動機は存在しない。
さらに,洗浄液組成物の腐食防止剤として列挙された,参考文献1~4の「芳香族複素環式化合物,ノニオン性界面活性剤,チオ尿素類」,「ベンゾトリアゾール又はその誘導体,ベンゾイミダゾール類等の芳香族化合物,メルカプトイミダゾール,メルカプトチアゾール等の環状化合物,メルカプトエタノール,メルカプトグリセロール等の分子中にメルカプト基を有し且つ当該メルカプト基が結合している炭素と水酸基が結合している炭素とが隣接して結合している脂肪族アルコール系化合物,システイン,N-アセチルシステイン等の分子中にチオール基を有するアミノ酸類,チオ尿素類」,「ベンゾトリアゾールに代表されるアゾール類,アセチレンアルコールに代表されるアルキン化合物,チオ尿素,メルカプトチアゾールに代表される低原子価硫黄化合物等」及び「ベンゾトリアゾールに代表されるアゾール類,アセチレンアルコールに代表されるアルキン化合物,チオ尿素,メルカプトチアゾールに代表される低原子価硫黄化合物,カテコール,t―ブチルカテコールに代表される芳香族ヒドロキシ化合物類,ソルビトール,キシリトールに代表される糖類等」は,その組成・構造において大きく異なるものを含有するから,これらの化合物が,いずれも腐食防止剤としての機能を有するとしても,引用発明2Aにおいて,ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)に置き換えた場合に,これら組成・構造において大きく異なるものを含有する化合物の全てにおいて,甲第2号証に記載された前記それぞれの効果について,ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)を用いた場合と同程度の効果を得ることができるとは,参考文献1~4の記載及び技術常識からは認めることができない。
してみれば,ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)を必須成分の一つとして使用することで所定の効果を奏することができる引用発明2Aにおいて,ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)を,参考文献1~4に列挙された腐食防止剤の一つと置き換えることには,動機が存在せず,さらに,置き換えた場合に,ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)を用いた場合と同程度の効果を常に得ることができるとは認めることができないことから,当該置き換えが適宜なし得たことであるともいえない。
したがって,引用発明2Aにおいて,ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)を,参考文献1~4に列挙された腐食防止剤に含まれる「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物」に置き換えることは,当業者が容易に想到し得たことではない。
しかも,甲第2号証の【表1】において,「エチレン尿素化合物(C)」が「なし」である比較例1が,ベンゾトリアゾール系有機残渣の除去速度である「有機残渣除去速度(ng/min)有機残滓1」及び「ベンゾトリアゾール残存性」において「○」の評価を示していることから,引用発明2Aにおいて,エチレン尿素化合物の有無は,ベンゾトリアゾール系有機残渣の除去速度,及び,ベンゾトリアゾール残存性に影響を及ぼさないことが読み取れるところ,本件発明1の窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物は,本件特許明細書の【表1】から,Cu-BTA複合体を除去する特性を備えているものと認められる。
してみれば,「エチレン尿素化合物(C)」と「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物」とは,Cu-BTA複合体の除去において,「同一の作用・効果を有する物質」であるとは認められない。
したがって,この観点からも,引用発明2Aにおいて,参考文献1~4に記載された技術的事項に基づいて,「エチレン尿素化合物(C)」を,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物」に置き換えることが,当業者にとって容易であったとは認められない。
したがって,特許異議申立人 戸塚 清貴 のかかる主張は,採用することができない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)甲第3号証について
ア 甲第3号証(特表2008-543060号公報)には,以下の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも1種のアミンと,少なくとも1種の不活性化剤と,任意に少なくとも1種の第4級塩基と,任意に少なくとも1種の還元剤と,水と,を含むアルカリ性水性洗浄組成物であって,化学機械研磨(CMP)後残渣及び汚染物を,前記残渣及び汚染物をその上に有するマイクロエレクトロニクス素子から洗浄するのに好適であるアルカリ性水性洗浄組成物。」
「【0024】
本明細書では,「CMP後残渣」は,研磨スラリーからの粒子,炭素リッチ粒子,研磨パッド粒子,ブラシ脱落粒子,構造粒子の器具材料,銅,銅酸化物,及びCMPプロセスの副生成物であるその他の物質に対応する。」
「【0070】
CMP後洗浄組成物
他の態様において,本発明は,CMP後残渣及び汚染物を,前記残渣及び汚染物をその上に有するマイクロエレクトロニクス素子から洗浄するための水性CMP後洗浄組成物に関し,前記組成物は,組成物の総質量を基準として以下の範囲で存在する,少なくとも1種のアミンと,少なくとも1種の不活性化剤と,残部の水とを含む。」
「【0081】
本発明の広範な実施において,水性CMP後洗浄組成物のpH範囲は,約9を超え,最も好ましくは約10~約12の範囲内である。
【0082】
アミン化合物は第1級又は第2級アミンであってもよく,モノエタノールアミン(MEA),N-メチルエタノールアミン(NMEA),アミノエチルエタノールアミン,N-メチルアミノエタノール,アミノエトキシエタノール,ジエタノールアミン,1-アミノ-2-プロパノール,モノイソプロパノールアミン,イソブタノールアミン,C2~C8アルカノールアミン,トリエチレンジアミン,及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましくは,アミン化合物としては,モノエタノールアミン又はモノイソプロパノールアミンが挙げられる。いくらかの量の第1級及び/又は第2級アミンが存在する限りにおいて,第3級アミンが,摩擦軽減剤として,約0.01質量%~約20質量%の量で,水性CMP後洗浄組成物に添加され得ることもここで考えられる。考えられる第3級アミンとしては,限定されないが,トリエタノールアミン,メチルジエタノールアミン,トリエチルアミン,N,N-ジメチルグリコールアミン,N,N-ジメチルジグリコールアミン,及びペンタメチルジエチレントリアミンが挙げられる。
【0083】
不活性化剤という用語は,本明細書では,新しい銅表面及び/又は酸化された銅薄膜と反応して,銅含有層を不活性化又は防護するいずれかの物質を意味することを意図する。好ましくは,本発明の水性CMP後洗浄組成物中の不活性化剤は,本明細書において上記に列挙された1つ又は複数の成分を含む。より好ましくは,不活性化剤は,1,2,4-トリアゾールである。
【0084】
水性CMP後洗浄組成物は,任意に,アスコルビン酸,L(+)-アスコルビン酸,イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体,没食子酸,グリオキサール,及びこれらの組み合わせからなる群より選択される還元剤を含んでもよい。
【0085】
水性CMP後洗浄組成物は,任意に,限定されないが,(NR1R2R3R4)OHを含む第4級塩基を含んでもよく,式中,R1,R2,R3及びR4は,互いに同一であっても異なっていてもよく,各々は,独立に,水素,直鎖又は分岐C1~C10アルキル基,及び置換又は非置換のアリール基からなる群より選択される。好ましくは,水性CMP後洗浄組成物は,少なくとも1種の第4級塩基を含み,前記第4級塩基は,好ましくは水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含む。」
「【0090】
好ましい実施形態において,本発明の水性CMP後洗浄組成物は,モノエタノールアミンと,アスコルビン酸と,TAZとを含む。
【0091】
特に好ましい実施形態において,本発明の水性CMP後洗浄組成物は,モノエタノールアミンと,アスコルビン酸と,没食子酸と,TMAHと,TAZとを含む。
【0092】
他の特定の好ましい実施形態において,本発明の水性CMP後洗浄組成物は,モノエタノールアミンと,没食子酸と,TMAHと,TAZとを含む。」
「【0165】
実施例18
以下に記載のそれぞれの組成物を有する配合物EA~EPのサンプルを調製した。
配合物EA 9質量%モノエタノールアミン,5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム,3.5質量%アスコルビン酸,82.5質量%H2O
配合物EB 1質量%1,2,4-トリアゾール,99質量%H2O
配合物EC 1.75質量%アスコルビン酸,1質量%1,2,4-トリアゾール,97.25質量%H2O
配合物ED 2.5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム,1.75質量%アスコルビン酸,1質量%1,2,4-トリアゾール,94.75質量%H2O
配合物EE 4.5質量%モノエタノールアミン,1質量%1,2,4-トリアゾール,94.5質量%H2O
配合物EF 4.5質量%モノエタノールアミン,1.75質量%アスコルビン酸,1質量%1,2,4-トリアゾール,92.75質量%H2O
配合物EG 2.5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム,1質量%1,2,4-トリアゾール,96.5質量%H2O
配合物EH 9質量%モノエタノールアミン,5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム,3.5質量%没食子酸,2質量%アスコルビン酸,2質量%1,2,4-トリアゾール,78.5質量%H2O
配合物EI 9質量%モノエタノールアミン,5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム,3.5質量%没食子酸,2質量%アスコルビン酸,1質量%ベンゾトリアゾール,79.5質量%H2O
配合物EJ 9質量%モノエタノールアミン,5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム,3.5質量%没食子酸,10.9質量%アスコルビン酸,71.6質量%H2O
配合物EK 9質量%モノエタノールアミン,5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム,3.5質量%没食子酸,10.9質量%アスコルビン酸,2質量%1,2,4-トリアゾール,69.6質量%H2O
配合物EL 5.5質量%モノイソプロパノールアミン,1.75質量%アスコルビン酸,1質量%1,2,4-トリアゾール,91.75質量%H2O
配合物EM 7.75質量%アミノエトキシエタノール,1.75質量%アスコルビン酸,1質量%1,2,4-トリアゾール,89.5質量%H2O
配合物EN 5.5質量%モノイソプロパノールアミン,1.75質量%アスコルビン酸,92.75質量%H2O
配合物EO 4.5質量%モノエタノールアミン,1.75質量%アスコルビン酸,93.75質量%H2O
配合物EP 9.0質量%モノエタノールアミン,3.5質量%アスコルビン酸,2質量%1,2,4-トリアゾール,85.5質量%H2O」
「【0169】
配合物EC(TAZ及びアスコルビン酸)及び配合物EE(TAZ及びモノエタノールアミン)は,CMP後残渣及び汚染物をウェハ表面から除去しなかったことが分かる。しかしながら,予想外で驚くべきことに,配合物EC及びEEの成分を組み合わせて配合物EF(TAZ,アスコルビン酸,モノエタノールアミン)を形成した場合,洗浄効果はほぼ100%であった。」
イ これらの記載を総合的に勘案すると,甲第3号証には,以下の発明(引用発明3A)が記載されていると認められる。
「銅,及び銅酸化物等を含むCMP後残渣を,マイクロエレクトロニクス素子から洗浄するためのCMP後洗浄組成物であって,
モノエタノールアミン等のアミンと,
好ましくは水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含む(NR1R2R3R4)OH等の第4級塩基と,
1,2,4-トリアゾール等の,新しい銅表面及び/又は酸化された銅薄膜と反応して,銅含有層を不活性化又は防護するいずれかの物質を意味することを意図する不活性化剤を含み,
pH範囲は,最も好ましくは約10~約12の範囲内である
CMP後洗浄組成物。」
また,甲第3号証の【0165】の実施例18には,配合物EEとして,以下の発明(引用発明3B)が記載されていると認められる。
「4.5質量%モノエタノールアミンと,
1質量%1,2,4-トリアゾールと,
94.5質量%H2Oとを含み,
イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない
組成物。」
ウ 本件発明1と,引用発明3Aを対比すると,「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって,第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上と,窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含む,前記洗浄液組成物。」の点で一致し,本件発明1が「水素イオン濃度(pH)が8~11である」,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含む,及び,「イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない」という事項を有するのに対して,引用発明3Aが「水素イオン濃度(pH)が8~11である」,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含む,及び,「イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない」という事項を有しない点で相違する。
したがって,本件発明1は引用発明3Aと相違するから,本件発明1は甲第3号証に記載された発明ではない。
そして,引用発明3Aにおいて,「pH範囲は,最も好ましくは10~12の範囲内である」とする事項を,「水素イオン濃度(pH)が8~11である」とする動機は存在しない。
一方,本件発明1は,「水素イオン濃度(pH)が8~11である」とすることで,本件特許明細書に記載された「本発明によれば,洗浄液組成物のpHを8~11にすることにより,微粒子および金属不純物の両方を除去し,Cuおよびlow-k材料の両方にダメージを与えずに洗浄することができる。」(【0044】),「pH8~11においては,薄いCu2O層を形成することができるため,この層がCu表面の保護膜として機能し,CMP後のCu表面の急激な酸化を抑制し,平坦性に優れた洗浄が可能になる。」(【0045】)という効果を奏するものである。
すなわち,引用発明3Aにおいて,「pH範囲は,最も好ましくは10~12の範囲内である」とする事項を,「水素イオン濃度(pH)が8~11である」とすることは,当業者が適宜なし得たこととはいえない。
したがって,他の相違点については検討するまでもなく,本件発明1は,引用発明3Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに,請求項2,3,6~12に係る発明は,請求項1に係る発明に対して,さらに技術的事項を追加したものである。また,請求項13,14に係る発明は,上記相違点に係る「水素イオン濃度(pH)が8~11である」という技術的事項を有するものである。よって,上記と同様の理由により,請求項2,3,6~12に係る発明及び請求項13,14に係る発明は,甲第3号証に記載された発明ではなく,また,引用発明3A及び甲第1,2,4,6~9号証の記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 甲第3号証の【0169】から,配合物EE(TAZ及びモノエタノールアミン)は,CMP後残渣及び汚染物をウェハ表面から除去しなかったことが分かるから,引用発明3Bは,「銅,及び銅酸化物等を含むCMP後残渣を,マイクロエレクトロニクス素子から洗浄するためのCMP後洗浄組成物」とはいえない。
したがって,本件発明1と,引用発明3Bを対比すると,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含み,イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない,組成物。」の点で一致し,本件発明1が「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物」であって,「水素イオン濃度(pH)が8~11である」及び「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという事項を有するのに対して,引用発明3Bが「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物」であって,「水素イオン濃度(pH)が8~11である」及び「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという事項を有しない点で相違する。
したがって,本件発明1は引用発明3Bと相違するから,本件発明1は甲第3号証に記載された発明ではない。
そして,引用発明3Bを「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物」として用いる動機,引用発明3Bにおいて「水素イオン濃度(pH)が8~11である」とする動機,及び,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むものとする動機は存在しないから,本件発明1は,引用発明3Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに,請求項2,3,6~12に係る発明は,請求項1に係る発明に対して,さらに技術的事項を追加したものである。また,請求項13,14に係る発明は,上記相違点に係る「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物」であって,「水素イオン濃度(pH)が8~11である」及び「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有するものである。よって,上記と同様の理由により,請求項2,3,6~12に係る発明及び請求項13,14に係る発明は,甲第3号証に記載された発明ではなく,また,引用発明3B及び甲第1,2,4,6~9号証の記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲第4号証について
ア 甲第4号証(特表2008-528762号公報)には,以下の記載がある。
「【請求項1】
(i)アルカノールアミンと(ii)水酸化4級アンモニウムと(iii)錯化剤とを含む組成物であって,
前記錯化剤がクエン酸を含まないことを条件として,前記錯化剤が酢酸,アセトンオキシム,アラニン,5-アミノテトラゾール,アンモニウムベンゾエート,アルギニン,アスパラギン,アスパラギン酸,安息香酸,ベンゾトリアゾール(BTA),ベタイン,ジメチルグリオキシム,フマル酸,グルタミン酸,グルタミン,グルタル酸,グリセロール,グリシン,グリコール酸,グリオキシル酸,ヒスチジン,イミダゾール,イミノ二酢酸,イソフタル酸,イタコン酸,乳酸,ロイシン,リシン,マレイン酸,リンゴ酸,マロン酸,2-メルカプトベンズイミダゾール,シュウ酸,2,4-ペンタンジオン,フェニル酢酸,フェニルアラニン,フタル酸,プロリン,ピロメリット酸,キナ酸,セリン,ソルビトール,コハク酸,テレフタル酸,1,2,4-トリアゾール,トリメリット酸,トリメシン酸,チロシン,バリン,キシリトール及び前述したアミノ酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1つの成分を含む,
組成物。」
「【請求項10】
前記アルカノールアミンがアミノエチルエタノールアミン,N-メチルアミノエタノール,アミノエトキシエタノール,ジメチルアミノエトキシエタノール,ジエタノールアミン,N-メチルジエタノールアミン,モノエタノールアミン,トリエタノールアミン及びC1~C8アルカノールアミンからなる群から選択された少なくとも1種の化学種を含む,請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記水酸化4級アンモニウムがコリン,水酸化テトラブチルアンモニウム,水酸化テトラエチルアンモニウム,水酸化テトラメチルアンモニウム,水酸化テトラプロピルアンモニウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される,請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
9~14の範囲内であるpHを有する,請求項1に記載の組成物。」
「【請求項16】
前記組成物が没食子酸又はアスコルビン酸を含まない,請求項1に記載の組成物。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明及びその好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は,例えば,超小型電子装置のウェハの表面調製,プレ被覆洗浄,ポストエッチング洗浄,ポスト灰洗浄及びポスト化学的物理的研磨洗浄等の操作において銅メタライゼーションを有するために更に処理されなければならないウェハ物品又は更に処理されるべく意図されているウェハ物品の処理のために,超小型電子装置製造において様々に有用である組成物に関する。」
「【実施例】
【0075】
実施例のための組成物
後に続く実施例において用いられる組成物を以下で明示する(すべての百分率は,水を含む組成物の全重量を基準にした重量による)。
組成物A:9%モノエタノールアミン,5%水酸化テトラメチルアンモニウム,1.2%酢酸,残部としての水。
<途中省略>
組成物W:9%モノエタノールアミン,5%水酸化テトラメチルアンモニウム,3.2%ヒスチジン,残部としての水。」
「【0076】
実施例1
PCMP洗浄
PCMP854ウェハ(セマテック(Sematech)854ウェハパターンで製作されたウェハ)のポストCMP洗浄のために組成物を用いた。ウェハは乾燥スラリー及び他のPCMP残渣をウェハ表面上に有していた。30:1(希釈剤として組成物1部及び脱イオン水30部)で希釈された溶液により回転/噴霧工具上で各実例のウェハを22℃,100rpmで1分にわたり洗浄し,30秒にわたりDI水でリンスし,回転乾燥させた。ナノスコープ(Nanoscope)IIIa原子力顕微鏡を用いてプレ洗浄分析及びポスト洗浄分析を行った。」
イ これらの記載を総合的に勘案すると,甲第4号証には,以下の発明(「引用発明4A」及び「引用発明4B」)が記載されていると認められる。
・引用発明4A
「トリエタノールアミン等のアルカノールアミン,コリン等の水酸化4級アンモニウム,
ヒスチジン,イミダゾール,1,2,4-トリアゾール等の錯化剤とを含み,
没食子酸又はアスコルビン酸を含まず,
pH9~14である
銅を含有するウェハのための洗浄剤。」
・引用発明4B
「モノエタノールアミン,及び水酸化テトラメチルアンモニウム,並びに
ヒスチジンを含み,
イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない
ポストCMP洗浄のための組成物。」
ウ 本件発明1と,引用発明4A,4Bを対比すると,いずれの発明も,本件発明1の「水素イオン濃度(pH)が8~11である」という事項を有しない点で相違する。
したがって,本件発明1は引用発明4A,4Bと相違するから,本件発明1は甲第4号証に記載された発明ではない。
そして,引用発明4A,4Bにおいて,「水素イオン濃度(pH)が8~11である」とする動機は存在しない。
一方,本件発明1は,「水素イオン濃度(pH)が8~11である」とすることで,本件特許明細書に記載された「本発明によれば,洗浄液組成物のpHを8~11にすることにより,微粒子および金属不純物の両方を除去し,Cuおよびlow-k材料の両方にダメージを与えずに洗浄することができる。」(【0044】),「pH8~11においては,薄いCu2O層を形成することができるため,この層がCu表面の保護膜として機能し,CMP後のCu表面の急激な酸化を抑制し,平坦性に優れた洗浄が可能になる。」(【0045】)という効果を奏するものである。
すなわち,引用発明4A,4Bにおいて,「水素イオン濃度(pH)が8~11である」とすることは,当業者が適宜なし得たこととはいえない。
したがって,他の相違点については検討するまでもなく,本件発明1は,引用発明4A,4Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに,請求項2,3,6~12に係る発明は,請求項1に係る発明に対して,さらに技術的事項を追加したものである。また,請求項13,14に係る発明は,上記相違点に係る「水素イオン濃度(pH)が8~11である」という技術的事項を有するものである。よって,上記と同様の理由により,請求項2,3,6~12に係る発明及び請求項13,14に係る発明は,甲第4号証に記載された発明ではなく,また,引用発明4A,4B及び甲第1,2,4,6~9号証の記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲第5号証について
ア 甲第5号証(特開2013-157516号公報)には,以下の記載がある。
「【請求項1】
銅または銅合金の配線を有する半導体の製造において,化学的機械的研磨の後の工程で使用する洗浄剤であって,アミノ酸(A),脂肪族アミン(B)および水を必須成分とすることを特徴とする洗浄剤。
【請求項2】
該アミノ酸(A)が,分子内にピロイル基,フェニル基,アミド基,イミダゾイル基,チオール基,チオエーテル基および水酸基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する請求項1記載の洗浄剤。
【請求項3】
該アミノ酸(A)が,ヒスチジンまたはシステインである請求項1または2記載の洗浄剤。
【請求項4】
該脂肪族アミン(B)が,アルカノールアミン(B2)である請求項1~3のいずれか記載の洗浄剤。」
「【0019】
アルカノールアミン(B2)としては,モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,ジメチルアミノエタノール,ジエチルアミノエタノール,2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール,N-(アミノエチル)エタノールアミン等が挙げられる。」
「【0025】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤の使用時のpHは,8.0~14.0であり,好ましくは9.0~13.0,さらに好ましくは10.0~12.0である。pHがこの範囲であると銅配線に対する耐腐食性に優れる。」
【0037】の【表1】の実施例2には,以下の洗浄剤が記載されていることを見て取ることができる。
「配合部数(重量部)
アミノ酸(A):L-ヒスチジン(A-1)0.050
脂肪族アミン(B)モノエタノールアミン(B-1)0.18
超純水:99.8
性能評価
有機残渣除去性:○
銅耐腐食性:○」
イ これらの記載を総合的に勘案すると,甲第5号証には,以下の発明(「先願発明5A」及び「先願発明5B」)が記載されていると認められる。
・引用発明5A
「トリエタノールアミン等の脂肪族アミン,
ヒスチジン等のアミノ酸を含み,
使用時のpHが好ましくは10.0~12.0である
銅または銅合金の配線を有する半導体の製造において,化学的機械的研磨の後の工程で使用する洗浄剤。」
・引用発明5B
「モノエタノールアミン,及び
L-ヒスチジンを含み,
イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない
銅配線半導体用洗浄剤。」
ウ 甲第5号証は,本件特許に係る出願日前の特許出願の願書に最初に添付した明細書等を示すものである。
そして,先願発明5A及び先願発明5Bは,いずれも,本件発明1に係る「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有していない。
したがって,本件発明1は,甲第5号証に記載された発明と同一ではない。
さらに,請求項2,3,6~12に係る発明は,請求項1に係る発明に対して,さらに技術的事項を追加したものである。また,請求項13,14に係る発明は,上記相違点1に係る「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」を含むという技術的事項を有するものである。よって,上記と同様の理由により,請求項2,3,6~12に係る発明及び請求項13,14に係る発明は,甲第5号証に記載された発明と同一でない。
(4)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件),及び同条第6項第1号(サポート要件)について
特許異議申立人 戸塚 清貴 は,特許異議申立書において,発明の詳細な説明の記載は,「塩基性化合物」として,コリン,又はコリン及びトリエタノールアミン(TEA)が使用され,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物」として,ヒスタミン,ヒスチジン,又は3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール(AHP)を用いた場合を除く,水酸化テトラメチルアンモニウムを除く塩基性化合物を1種または2種以上と窒素原子を含み,複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含む場合においても,当業者が本件特許発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず,また,水酸化テトラメチルアンモニウムを除く塩基性化合物を1種または2種以上と窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含む範囲にまで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化するための根拠も見いだせない。本件特許発明2~14についても同様である旨を主張している。
しかしながら,発明の詳細な説明には,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物」として,コリン,又はコリン及びトリエタノールアミン(TEA)を用い,「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物」として,ヒスタミン,ヒスチジン,又は3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール(AHP)を用いた実施例が記載されており,これらの記載と技術常識に基づけば,当業者であれば,本件発明1ないし3,6~14に係る発明を実施することができると認められるから,発明の詳細な説明の記載は,当業者が請求項1ないし3,6~14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
また,発明の詳細な説明の「本発明に用いられる塩基性化合物は,所定のpHに調整できるものであれば特に限定されない。」(【0022】),「塩基性化合物としては,第四級アンモニウム化合物,アミンなどが挙げられるが,これらに限定されない。・・・なお,本発明の洗浄液組成物は,一態様において,第四級アンモニウム化合物である,水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含まない。水酸化テトラメチルアンモニウムは,第四級アンモニウム化合物の中では毒性が高く,近年製造工程における作業員の健康への影響を懸念するメーカーより敬遠される傾向があるため,出来る限り含有しないほうが好ましい。」(【0024】,【0025】),「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物の含有量は,窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物の種類や他の成分の種類,含量によって変動するため,特に限定されない・・・。複素環式単環芳香族化合物の含有量がかかる範囲より低い場合には,有機残渣の除去性が低く,複素環式単環芳香族化合物の含有量がかかる範囲より高い場合には,Cuへのダメージが増大する恐れがある。」(【0035】),「このCuを含む有機残渣を洗浄液中に溶解させるためには,洗浄液のpHの変更によりCuと有機系防食剤との配位結合を切断し,低分子化させる方法がある。・・・Cu-BTA複合体とは,Cuおよびベンゾトリアゾール(BTA)が架橋などにより複合体化したものをいい,これに限定されないが,Cu-BTA錯体,Cu-BTA錯体にSiO2等のスラリー由来の無機物が混合された化合物などが挙げられる。該Cu-BTA錯体は,pH2以下または11以上にすることで錯体を安定に保てなくなり,低分子化されるため,洗浄液に溶解することができる(図3参照)。しかし,前述のとおり,pH2以下ではCuの腐食や処理後に金属Cuが露出され,大気中で著しく酸化が進行してしまい,pH11を超えると,low-k材料へのダメージが懸念されるため,pHの変更による有機残渣の除去は適用できない。そのため,錯体安定度定数がCuとBTAよりも高く,かつ比較的分子内の疎水部位が小さく水溶性が高い錯化剤を添加し,新たにCuと錯化剤との有機金属錯体を形成することでpH8~11の領域でCu-BTA複合体のような有機残渣を除去することができる。この新たなCuと錯化剤との有機金属錯体は,Cu-BTA複合体と比較して疎水部位の割合が小さいため,洗浄液中に溶解する。この錯化剤として,窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を用いる。窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物としては,これらに限定されるものではないが,五員環化合物および六員環化合物などが挙げられる。四員環以下の化合物では,工業的に安価に製造しているものが少ない点で,原料価格の上昇,品質の安定性確保が懸念されるため適用しにくく,七員環以上の化合物は,水への溶解性が低く,溶解しても水溶液中で不安定なものが多く,また四員環以下の化合物と同じく工業的に安価に製造しているものが少ない点で,原料価格の上昇,品質の安定性確保が懸念されるため適用しにくい。本発明において,洗浄液組成物のpHは,好ましくは,8~11であり,より好ましくは,9~11である。・・・本発明の洗浄液組成物の大きな特徴の一つは,界面活性剤を使用しなくても微粒子を除去できることにある。これは,塩基性領域ではSiO2などの酸化物の表面の帯電が変化するため,このことを利用して,基板と微粒子の帯電をともにマイナスに制御し,静電反発力的な作用で基板と微粒子を引き離すことが出来るためである。しかしながら,従来の塩基性洗浄液は,基板表面の金属不純物を十分に除去することが出来ない。これは,塩基性領域では金属不純物が水酸化物イオン(OH-)と反応して,水酸化物もしくはヒドロキシ錯体として基板表面に吸着し,液中に溶解しないためと考えられる。洗浄液のpHを低下させると金属不純物の除去性は向上するが,微粒子の除去性が低下するとともに,基板表面に施されたCuへのダメージは増大する傾向にある。また,逆に洗浄液のpHを上昇させると,微粒子の除去性は向上するが,金属不純物の除去性が低下するとともに,塩基性領域で脆弱なSiOC系low-k材料へのダメージが増大する傾向にある。本発明によれば,洗浄液組成物のpHを8~11にすることにより,微粒子および金属不純物の両方を除去し,Cuおよびlow-k材料の両方にダメージを与えずに洗浄することができる。また,このpH領域であれば,Cu-CMP後の洗浄において,洗浄後のCu表面に薄いCu2O層を形成することができ,大気放置した際の急激な表面の酸化を抑制することができる。Cuは,水系において,酸性領域のpHではCu2+またはCuOの状態であるため,活性が高い状態にあり,急激に酸化しやすいが,アルカリ性領域においては,CuOやCu2Oの状態にある(図3参照)。したがって,酸性領域のpHにおいて,CMP後のCu表面では,不均一な酸化反応が進行し,均一でない酸化膜が表面を覆うとともに,表面のラフネスが増大する。これに対し,pH8~11においては,薄いCu2O層を形成することができるため,この層がCu表面の保護膜として機能し,CMP後のCu表面の急激な酸化を抑制し,平坦性に優れた洗浄が可能になる。」(【0039】~【0045】)の記載に照らして,「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物を1種または2種以上」及び「窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上」とを含み,「イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸」のいずれも含まず,さらに「水素イオン濃度(pH)が8~11である」という構成の全てを備えることによって,「Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物」に係る本件発明1は,本件特許明細書に記載された解決すべき課題のいずれかを解決することができるものと認められる。
すなわち,請求項1に記載された発明が特許請求しようとする範囲にまで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができないとは認めることはできないから,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第1号の要件を満たす。請求項2ないし3,6ないし14についても同様である。
したがって,特許異議申立人 戸塚 清貴 の前記主張は,採用することができない。
(5)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
特許異議申立人 戸塚 清貴 は,特許異議申立書において,本件特許の請求項1の記載「水酸化テトラメチルアンモニウムを除く塩基性化合物を1種または2種以上・・・(中略)・・・含み」は,請求項1に係る洗浄液組成物が水酸化テトラアンモニウムを一切含まない趣旨なのか,水酸化テトラメチルアンモニウムではない塩基性化合物が1種または2種以上含まれていればよく,当該塩基性化合物の1種または2種以上のほかに水酸化テトラメチルアンモニウムが含まれてもよい趣旨なのか不明確である。そのため,本件特許発明1の洗浄液組成物から除かれるものが不明確であり,よって本件特許発明1は不明確であると主張するが,本件特許明細書の「なお,本発明の洗浄液組成物は,一態様において,第四級アンモニウム化合物である,水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含まない。水酸化テトラメチルアンモニウムは,第四級アンモニウム化合物の中では毒性が高く,近年製造工程における作業員の健康への影響を懸念するメーカーより敬遠される傾向があるため,出来る限り含有しないほうが好ましい。」(【0025】)との記載に照らして,請求項1に係る洗浄液組成物が,水酸化テトラアンモニウムを含まない趣旨であることが明らかである。また,このような理解は,平成29年3月24日に提出された意見書における「請求項1において,明細書段落[0025]に依拠して『水酸化テトラメチルアンモニウムを除く』なる記載を加え限定しました。」及び「上記補正により,本願請求項1および14に係る発明はTMAHを含まないものとなりました。」という説明にも整合するものである。したがって,特許異議申立人 戸塚 清貴 の係る主張は採用しない。請求項2ないし3,6ないし14についても同様である。
また,特許異議申立人 戸塚 清貴 は,特許異議申立書において,本件特許の請求項1の記載「イソアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体および没食子酸のいずれも含まない」における「アスコルビン酸誘導体」は,どのようなものを指すのかが一見したところ不明確であり,また,本件特許明細書の記載を参酌しても明らかにはならず,不明確である。そのため,本件特許発明1の洗浄液組成物に含まれないものが不明確であり,よって本件特許発明1は不明確であると主張するが,アスコルビン酸誘導体は,普通に使用されている技術用語であるから,「アスコルビン酸誘導体」を「含まない」ことを発明特定事項として含む本件発明1ないし3,6ないし14は,当業者の出願当時における技術的常識を基礎とすると,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。
したがって,特許異議申立人 戸塚 清貴 のかかる主張は,採用することができない。
6 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1ないし3,6ないし14に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1ないし3,6ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに,請求項4及び5に係る特許は,上記のとおり,訂正により削除された。これにより,特許異議申立人 戸塚 清貴 による特許異議の申立てについて,請求項4及び5に係る申立ては,申立ての対象が存在しないものとなったため,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
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2018-700256