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特許異議申立

2022-700090

偏光子、偏光フィルム、積層偏光フィルム、画像表示パネル、および画像表示装置

審判番号
2022-700090
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-509959
登録番号
6917521
請求日
2022年02月02日
審決日
2023年03月08日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日東電工株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
  • 【異議申立人】浜 俊彦
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 石附 直弥
  • 審判官 関根 洋之
分類
P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第113条第4号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6917521号発明「偏光子、偏光フィルム、積層偏光フィルム、画像表示パネル、および画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6917521号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第6917521号の請求項2~8に係る特許を維持する。 特許第6917521号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6917521号の請求項1~請求項8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2020-509959号)は、2019年(平成31年)3月22日(優先権主張 平成30年3月28日)を国際出願日とする出願であって、令和3年7月21日に特許権の設定の登録がされ、令和3年8月11日に特許掲載公報が発行された。 本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和4年2月2日に、特許異議申立人 浜 俊彦(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。 その後になされた手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和4年 3月30日付け:取消理由通知書 令和4年 5月27日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 令和4年 7月12日 :意見書の提出(特許異議申立人) 令和4年 8月29日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和4年10月24日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 令和4年12月 7日 :意見書の提出(特許異議申立人) なお、令和4年5月27日にした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 請求の趣旨 令和4年10月24日付け訂正請求書の請求の趣旨は、「特許第6917521号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の内容 令和4年10月24日付け訂正請求書でなされた訂正を、以下「本件訂正」といい、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所として特許権者が付したものである。)。 なお、本件訂正は、一群の請求項である、請求項1~請求項8についてなされたものである。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項2に「前記カリウムの含有量が0.28重量%以上であることを特徴とする請求項1記載の偏光子。」と記載されているのを、「ポリビニルアルコール系フィルムから形成されるヨウ素系偏光子であって、前記偏光子は、ホウ素およびカリウムを含み、前記偏光子中、前記ホウ素の含有量が4重量%以上6重量%以下であり、前記カリウムの含有量が0.32重量%以上であり、かつ前記ホウ素の含有量(重量%)に前記カリウムの含有量(重量%)を乗じた値が1.2以上3.0以下であることを特徴とする偏光子(但し、延伸処理及び染色処理がされたポリビニルアルコールフィルム中に、ホウ酸を24.0重量%、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するヨウ素系偏光子を除く。)。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3に「前記ホウ素の含有量が5.2重量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の偏光子。」と記載されているのを、「前記ホウ素の含有量が5.2重量%以下であることを特徴とする請求項2記載の偏光子。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~8も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項4に「請求項1~3のいずれかに記載の偏光子の少なくとも一方の面に透明保護フィルムが貼り合わされていることを特徴とする偏光フィルム。」と記載されているのを、「請求項2または3記載の偏光子の少なくとも一方の面に透明保護フィルムが貼り合わされていることを特徴とする偏光フィルム。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~8も同様に訂正する)。 3 訂正の許否の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1による訂正は、請求項1を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、この訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、訂正後の請求項2に係る発明は、訂正前の請求項2に係る発明の「ポリビニルアルコール系フィルムから形成される偏光子」を、「ポリビニルアルコール系フィルムから形成されるヨウ素系偏光子」「(但し、延伸処理及び染色処理がされたポリビニルアルコールフィルム中に、ホウ酸を24.0重量%、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するヨウ素系偏光子を除く。)」に限定するものでもある。 さらに、訂正前の請求項2に係る発明は、偏光子中のカリウムの含有量が「0.28重量%以上」であることを特定しているところ、訂正後の請求項2は、偏光子中のカリウムの含有量が「0.32重量%以上」であることに特定し、カリウム含有量の範囲を更に限定するものである。 したがって、訂正事項2は、上記目的に加え、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 訂正後の請求項2の記載を直接的又は間接的に引用して記載された訂正後の請求項3~8についても同様である。 イ 新規事項の有無 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0020】及び【実施例】には、偏光子はヨウ素が吸着配向された、所謂、ヨウ素系偏光子であることが記載され、同【0025】には、偏光子中のカリウムの含有量は0.32重量%以上であることが好ましいことが記載されている。 また、「(但し、延伸処理及び染色処理がされたポリビニルアルコールフィルム中に、ホウ酸を24.0重量%、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するヨウ素系偏光子を除く。)」という事項は、令和4年8月29日付け取消理由通知書(決定の予告)における引用文献A(米国特許出願公開第2013/0141787号明細書)に記載された発明との同一の部分を除くものである。 よって、訂正事項2は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張又は変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3~4について 訂正事項3~4は、訂正前の請求項1の削除に伴い、当該削除された請求項1を、引用する請求項から削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、この訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。また、同訂正は、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第6項の規定に適合する。 よって、結論に記載のとおり、特許第6917521号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正は上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項2~8に係る発明(以下、「本件訂正発明2」~「本件訂正発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2~8に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 [本件訂正発明2] 「 ポリビニルアルコール系フィルムから形成されるヨウ素系偏光子であって、 前記偏光子は、ホウ素およびカリウムを含み、 前記偏光子中、前記ホウ素の含有量が4重量%以上6重量%以下であり、前記カリウムの含有量が0.32重量%以上であり、かつ前記ホウ素の含有量(重量%)に前記カリウムの含有量(重量%)を乗じた値が1.2以上3.0以下であることを特徴とする偏光子(但し、延伸処理及び染色処理がされたポリビニルアルコールフィルム中に、ホウ酸を24.0重量%、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するヨウ素系偏光子を除く。)。」 [本件訂正発明3] 「 前記ホウ素の含有量が5.2重量%以下であることを特徴とする請求項2記載の偏光子。」 [本件訂正発明4] 「 請求項2または3記載の偏光子の少なくとも一方の面に透明保護フィルムが貼り合わされていることを特徴とする偏光フィルム。」 [本件訂正発明5] 「前記透明保護フィルムは、透湿度が200g/(m2・24h)以下であることを特徴とする請求項4記載の偏光フィルム。」 [本件訂正発明6] 「 請求項4または5記載の偏光フィルムが光学層に貼り合わされていることを特徴とする積層偏光フィルム。」 [本件訂正発明7] 「 画像表示セルに、請求項4もしくは5記載の偏光フィルム、または請求項6記載の積層偏光フィルムが貼り合わされていることを特徴とする画像表示パネル。」 [本件訂正発明8] 「 請求項7記載の画像表示パネルの偏光フィルムまたは積層偏光フィルム側に、透明板を備えることを特徴とする画像表示装置。」 第4 取消しの理由及び証拠 1 令和4年3月30日付け取消理由通知書における取消しの理由 特許権者に対して、令和4年3月30日付け取消理由通知書により通知した取消しの理由の概要は、下記のとおりである。 記 理由1:(新規性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の優先権主張の基礎とされた先の出願前(以下「先の出願前」という。)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本件の請求項1~8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件の請求項1~8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲1:特開2001-166143号公報 甲2:「ZEONOR」のカタログ、日本ゼオン株式会社、2012年6月発行 甲3:「東洋紡エステルフィルム(PETフィルム)E5100」及び「東洋紡エステルフィルム(PETフィルム)T4100」のカタログ、東洋紡績株式会社 甲4:特開2012-234163号公報 甲5:特開2013-11853号公報 甲6:特開2014-102353号公報 甲7:特開2016-99532号公報 (当合議体注:甲1は主引用文献であり、甲2~4は参考文献、甲5~7は周知技術を示す文献である。) 理由3:(サポート要件)本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本件の請求項1~8に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 追加の証拠について 特許権者は、令和4年5月27日提出の意見書に添付して、以下の証拠を提出している。 乙1:特開2014-102353号公報 乙2:特開2019-152863号公報 乙3:特開2007-114581号公報 3 令和4年8月29日付け取消理由通知書(決定の予告)における取消しの理由 特許権者に対して、令和4年8月29日付け取消理由通知書により通知した取消しの理由の概要は、下記のとおりである。 記 (新規性)令和4年5月27日提出の訂正請求によって訂正された請求項2~4、7~8に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本件の請求項2~4、7~8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (進歩性)令和4年5月27日提出の訂正請求によって訂正された請求項2~8に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件の請求項2~8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 引用文献A:米国特許出願公開第2013/0141787号明細書 (当合議体注:引用文献Aは、当合議体が職権で新たに発見したものであって、主引用文献である。) 第5 令和4年8月29日付け取消理由通知書(決定の予告)における取消しの理由に対する当合議体の判断 1 引用文献Aの記載及び引用発明 (1)引用文献Aの記載 取消しの理由で引用された引用文献Aには、以下の事項が記載されている。 なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 「What is claim is: 1. A polarizer, comprising: boric acid and potassium iodide, a ratio of weight percent of the boric acid to weight percent of the potassium iodide being from about 5 to about 10 in the polarizer. ・・・中略・・・ 7. The polarizer as claimed in claim 1, wherein the boric acid and the potassium iodide are dispersed in an elongated polyvinyl alcohol film.」 (参考訳:請求の範囲 請求項1.偏光子であって、前記偏光子において、前記ヨウ化カリウムの重量%に対する前記ホウ酸の重量%の比が約5~約10である偏光子。 ・・・中略・・・ 請求項7.ホウ酸およびヨウ化カリウムが、延伸ポリビニルアルコールフィルム中に分散されている、請求項1に記載の偏光子。) イ 「SUMMARY [0003] Embodiments may be realized by providing a polarizer that includes boric acid and potassium iodide, and a ratio of weight percent of the boric acid to weight percent of the potassium iodide is from about 5 to about 10 in the polarizer.」 (参考訳:概要 【0003】 実施形態は、ホウ酸とヨウ化カリウムを含む偏光子を提供することによって実現することができ、偏光子中のヨウ化カリウムの重量%に対するホウ酸の重量%の比は約5~約10である。) ウ 「DETAILED DESCRIPTION ・・・中略・・・ [0018] According to an exemplary embodiment, a polarizer includes boric acid and potassium iodide. A ratio (WBA/WKI) of weight percent of boric acid (WBA)to weight percent of potassium iodide (WKI) ranges from about 5 to about 10. However, the t ratio range is not limited thereto, e.g., the ratio may range from about 6.5 to about 8.5, from about 5 to about 6, from about 7 to about 9, from about 5.5 to about 8.5, from about 6 to about 8, from about 7.5 to about 8.5, etc. [0019] If the ratio of weight percent of boric acid to weight percent of potassium iodide (WBA/WKI) is greater than or equal to about 5, the polarizer may decrease and/or minimize a variation in orthogonal chromaticity and/or may increase, improve, and/or provide optical durability. If the ratio of weight percent of boric acid to weight percent of potassium iodide (WBA/WKI) is equal to or less than about 10, the polarizer may decrease and/or minimize a variation in orthogonal chromaticity and/or may increase, improve, and/or provide optical durability, external appearance, and/or transmittance. ・・・中略・・・ [0034] In a further aspect, FIG. 1 illustrates a sectional view of a polarizing plate including a polarizer according to an exemplary embodiment. In this embodiment, the polarizing plate 100 includes a protective film 20 formed on at least one side of the polarizer 10. The protective film may act as a phase retardation film, a brightness enhancing film, a reflective film, a translucent reflection film, a diffusive film, an optical compensation film, and the like. According to another exemplary embodiment, at least one of as a phase retardation film, a brightness enhancing film, a reflective film, a translucent reflection film, a diffusive film, an optical compensation film, and the like, may be further stacked on the protective film 20.」 (参考訳:詳細な説明 ・・・中略・・・ 【0018】 例示的な実施形態によれば、偏光子はホウ酸およびヨウ化カリウムを含む。ヨウ化カリウムの重量%(WKI)に対するホウ酸の重量%(WBA)の比(WBA/WKI)は約5~約10の範囲である。しかし、比の範囲はこれに限定されず、例えば、比は、約6.5~約8.5、約5~約6、約7~約9、約5.5~約8.5、約6~約8、約7.5~約8.5などの範囲であってもよい。 【0019】 ヨウ化カリウムの重量%に対するホウ酸の重量%の比(WBA/WKI)が約5以上である場合、偏光子は、直交色度の変化を減少及び/又は最小化することができ、及び/又は光学的耐久性を増加、向上及び/又は提供することができる。ヨウ化カリウムの重量%に対するホウ酸の重量%の比(WBA/WKI)が約10以下である場合、偏光子は、直交色度の変化を減少及び/又は最小化することができ、及び/又は光学的耐久性、外観及び/又は透過率を増加、改善及び/又は提供することができる。 ・・・中略・・・ 【0034】 図1は、本発明の一実施形態に係る偏光子を含む偏光板の断面図である。本実施形態において、偏光板100は、偏光子10の少なくとも一面に形成された保護フィルム20を含む。保護フィルムは、位相差フィルム、輝度向上フィルム、反射フィルム、半透過反射フィルム、拡散フィルム、光学補償フィルムなどとして作用することができる。他の実施形態によれば、保護フィルム20上に位相差フィルム、輝度向上フィルム、反射フィルム、半透過反射フィルム、拡散フィルム、光学補償フィルムなどのうちの少なくとも1つをさらに積層することができる。) エ 「Comparative Example 3 [0044] A PVA film having a thickness of 75 μm (VF-PS #7500, polymerization degree: 2,400, width: 3,000 mm, saponification degree: 99.9 mol % or more, Kuraray Co., Ltd.) was swollen to a cumulative stretching ratio of 2.3 in a swelling bath filled with deionized water at 30°C., in which the film was maintained in a tensioned state. Then, the resultant film was dyed and stretched to a cumulative stretching ratio of 2.8 in a dyeing bath filled with an aqueous dyeing solution containing iodine and potassium iodide in a weight ratio of 1:23 at 30°C. Then, the dyed film was stretched to a stretching ratio of 2.0 in an aqueous stretching solution containing 3.0 wt % of boric acid and 3.0 wt% of potassium iodide at 54°C., followed by uniaxial stretching to a total stretching ratio of 6.0 in a color correction bath containing 1.0 wt % of boric acid and 3.0 wt % of potassium iodide at 40°C. Then, the stretched film was dried at 50°C. for 4 minutes, thereby preparing an iodine-based polarizer having a thickness of 28 μm. With adhesives applied to both sides of the prepared polarizer, 80 μm thick triacetylcellulose films each subjected to surface saponification (Fujitack T80UNL, Fuji Film Corporation) were attached to both sides of the polarizer and dried at 60°C. for 5 minutes, thereby preparing a polarizing plate.」 (参考訳:比較例3 【0044】 厚さ75μmのPVAフィルム(VF-PS #7500、重合度2400、幅3000mm、ケン化度99.9mol%以上、Kuraray Co., Ltd.)を30℃の脱イオン水で満たした膨潤浴で、累積延伸倍率2.3倍まで膨潤し、フィルムを緊張状態に維持した。そして、得られたフィルムは、30℃で1:23の重量比でヨウ素およびヨウ化カリウムを含む染色水溶液で満たした染色浴中で染色し、累積延伸倍率2.8倍まで延伸した。次に、この染色フィルムを、54℃でホウ酸3.0wt%およびヨウ化カリウム3.0wt%を含む水系延伸液で延伸倍率2.0倍に延伸し、その後、40℃でホウ酸1.0wt%およびヨウ化カリウム3.0wt%を含む色補正浴で全延伸倍率6倍まで一軸延伸を行った。その後、50℃で4分間乾燥し、厚さ28μmのヨウ素系偏光子を作製した。作製した偏光子の両面に接着剤を塗布し、表面鹸化処理を施した厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(Fujitack T80UNL, Fuji Film Corporation)を貼り付けて60℃で5分間乾燥させ、偏光板を作製した。) オ 「[0046] Evaluation of Properties [0047] (1) Content of boric acid and potassium iodide (KI): 1 g of the polarizer and 50 g of deionized water were placed in a beaker and heated for complete dissolution. Then, 10 g of a mannitol solution (mannitol: distilled water=1:7 in terms of weight) was added to the resultant, followed by titration with 0.1N aqueous NaOH solution to measure weight percent of boric acid (WBA). In addition, 1 g of the polarizer and 50 g of deionized water were placed in a beaker and heated for complete dissolution, followed by titration with 0.1N aqueous AgNO3 solution to measure weight percent of potassium iodide (KI) (WKI). Then, the ratio (WBA/WKI) of weight percent of boric acid (WBA) to weight percent of potassium iodide (KI) (WKI) was obtained. Results are shown in Table 2. [図:0001398235000001.jpg] ・・・中略・・・ [図:0001398235000002.jpg] [0054] In Table 2 and Table 3, it can be seen that the polarizing plates prepared in Examples 1 to 4, which have a ratio (WBA/WKI) of weight percent of boric acid (WBA) to weight percent of potassium iodide (WKI) in the range of 5 to 10, exhibited good optical durability and low chromaticity variation under high temperature conditions. On the contrary, the polarizing plates prepared in Comparative Examples 1 to 3, which have a ratio (WBA/WKI) of less than 5 or greater than 10, exhibited high chromaticity variation. [0055] By way of summation and review, a polarizing plate may be arranged on an outside the LCD panel as part of an LCD display device. The polarizing plate may control polarization of light by selectively transmitting a light component in a specific direction therethrough among light emitted from a backlight unit and light having passed through a liquid crystal layer of the LCD panel.」 (参考訳:【0046】 特性の評価 【0047】 (1)ホウ酸およびヨウ化カリウム(KI)の含有量:偏光子1gおよび脱イオン水50gをビーカーに入れ、完全に溶解させるために加熱した。次いで、マンニトール溶液(重量比でマンニトール:蒸留水=1:7)10gを加え、0.1NのNaOH水溶液で滴定し、ホウ酸(WBA)の重量%を測定した。さらに、偏光子1gおよび脱イオン水50gをビーカーに入れ、完全に溶解させるために加熱し、続いて、0.1NのAgNO3溶液で滴定して、ヨウ化カリウム(KI)の重量%(WKI)を測定した。次いで、ヨウ化カリウム(KI)の重量%(WKI)に対するホウ酸の重量%(WBA)の比(WBA/WKI)を得た。結果を表2に示す。 (表2の訳は省略) ・・・中略・・・ (表3の訳は省略) 【0054】 表2及び表3から、ホウ酸の重量%(WBA)とヨウ化カリウムの重量パーセント(WKI)の比(WBA/WKI)が5~10の範囲である実施例1~4で製造された偏光板は、高温条件下で良好な光学的耐久性及び低い色度変化を示すことが分かる。これに対し、比較例1~3で製造された偏光板は、比(WBA/WKI)が5未満または10を超える場合、高い色度変化を示した。 【0055】 また、液晶表示装置の一部として、液晶表示パネルの外側に偏光板を配置してもよい。偏光板は、バックライトユニットから出射された光及び液晶表示パネルの液晶層を通過した光のうち特定方向の光成分を選択的に透過させて光の偏光を制御することができる。) (2)引用文献Aに記載された発明 引用文献Aの[0044]及び[0047]の表2等の記載から、引用文献Aには、比較例3に係る偏光子に係る発明として、次の発明が記載されていると認められる。 「延伸処理及び染色処理がされたポリビニルアルコールフィルム中に、ホウ酸を24.0重量%、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するヨウ素系偏光子。」(以下「引用文献A偏光子発明」という。) 2 本件訂正発明2について (1)対比 ア 引用文献A偏光子発明は、延伸処理及び染色処理がされたポリビニルアルコールフィルム中に、ホウ酸を24.0重量%、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するヨウ素系偏光子であるから、ポリビニルアルコール系フィルムから形成されるヨウ素系偏光子であるといえる。 したがって、本件訂正発明2と引用文献A偏光子発明は、「ポリビニルアルコール系フィルムから形成されるヨウ素系偏光子」である点で一致する。 イ 引用文献A偏光子発明のヨウ素系偏光子は、ホウ酸を24.0重量%、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するから、ホウ素及びカリウムを含んでいる。 したがって、本件訂正発明2と引用文献A偏光子発明は、「ホウ素およびカリウムを含」む点で一致する。 ウ 引用文献A偏光子発明のヨウ素系偏光子は、ホウ酸を24.0重量%含有するところ、ホウ酸の分子量が約61.8、ホウ素の原子量が約10.8であるから、引用文献A偏光子発明のヨウ素系偏光子におけるホウ素の含有量は、約4.19重量%(≒24.0×10.8/61.8)と算出される。 したがって、本件訂正発明2と引用文献A偏光子発明は、「前記偏光子中、前記ホウ素の含有量が4重量%以上6重量%以下であ」る点で一致する。 エ 引用文献A偏光子発明のヨウ素系偏光子は、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するところ、ヨウ化カリウムの分子量が約166、カリウムの原子量が約39.1であるから、引用文献A偏光子発明のヨウ素系偏光子におけるカリウムの含有量は、約0.42重量%(≒1.8×39.1/166)と算出される。 したがって、本件訂正発明2と引用文献A偏光子発明は、「前記カリウムの含有量が0.32重量%以上であ」る点で一致する。 オ 前記ウ、エで述べたとおり、引用文献A偏光子発明のヨウ素系偏光子におけるホウ素の含有量は、約4.19重量%、カリウムの含有量は、約0.42重量%であるから、ホウ素の含有量(重量%)にカリウムの含有量(重量%)を乗じた値は、約1.76(≒4.19×0.42)である。 したがって、本件訂正発明2と引用文献A偏光子発明は、「前記ホウ素の含有量(重量%)に前記カリウムの含有量(重量%)を乗じた値が1.2以上3.0以下である」点で一致する。 (2)一致点及び相違点 本件訂正発明2と引用文献A偏光子発明を対比すると、下記アの点で一致し、下記イの点で相違する。 ア 一致点 「 ポリビニルアルコール系フィルムから形成されるヨウ素系偏光子であって、 前記偏光子は、ホウ素およびカリウムを含み、 前記偏光子中、前記ホウ素の含有量が4重量%以上6重量%以下であり、前記カリウムの含有量が0.32重量%以上であり、かつ前記ホウ素の含有量(重量%)に前記カリウムの含有量(重量%)を乗じた値が1.2以上3.0以下であることを特徴とする偏光子。」 イ 相違点 (相違点1) 本件訂正発明2は、「延伸処理及び染色処理がされたポリビニルアルコールフィルム中に、ホウ酸を24.0重量%、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するヨウ素系偏光子を除く」ものであるのに対し、引用文献A偏光子発明は、除かれた「ヨウ素系偏光子」である点。 (3)判断 上記相違点1を検討する。 引用文献Aは、ヨウ化カリウムの重量%(WKI)に対するホウ酸の重量%(WBA)の比(WBA/WKI)が5~10である場合に、高温条件下で良好な光学的耐久性及び低い色度変化を示す点に技術的特徴を有する文献である(請求項1、[0003]、[0018]、[0019]、[0054])。 他方、引用文献A偏光子発明は、比較例3であって、高い色度変化を示すものである([0054])。 そうすると、上記下線部の技術的特徴を有する引用文献Aに接した当業者が、敢えて、高い色度変化という好ましくない特性を有する比較例3である引用文献A偏光子発明を改良しようとする動機付けは見出し難い。 したがって、引用文献A偏光子発明において、「延伸処理及び染色処理がされたポリビニルアルコールフィルム中に、ホウ酸を24.0重量%、ヨウ化カリウムを1.8重量%含有するヨウ素系偏光子」以外の偏光子に設計変更することで上記相違点1に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。 (4)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和4年12月7日付け意見書の(3-1)において、「従来の技術水準は、当該比較例3の一点のみで表されているのではなく、当該比較例3の近傍に広がりをもった範囲を有するといえる。ゆえに、本件訂正発明2が当該比較例3を除いているからといって、その近傍に広がる従来の技術の範囲をも除くことができているとはいえない。また、仮に従来の技術の範囲を除くことができているとしても、本件訂正発明2の数値範囲は、飽くまで当該比較例3を含んだ範囲を特定しているのであるから、当該比較例の前後で連続性がある本件訂正発明2の数値範囲は、当業者が容易に採用し得たことである。」と主張する。 しかしながら、引用文献Aにおいて、従来の技術水準とされている範囲がどの範囲までを想定しているかにかかわらず、引用文献Aに接した当業者が、好ましくない特性を有する引用文献A偏光子発明を改良の出発点とするように動機づけられることがないことは、上記(3)で述べたとおりである。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (5)小括 本件訂正発明2は、引用文献Aに記載された発明ではない。 また、本件訂正発明2は、引用文献Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 3 本件訂正発明3~8について 本件特許の特許請求の範囲の請求項3~8は、いずれも、請求項2を直接又は間接的に引用するものであって、本件訂正発明3~8は、本件訂正発明2の構成を全て具備するものである。 そうしてみると、上記2と同様に、本件訂正発明3~8は、引用文献Aに記載された発明でない。また、本件訂正発明3~8は、引用文献Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第6 令和4年3月30日付け取消理由通知書における取消の理由に対する当合議体の判断 1 新規性及び進歩性について (1)判断 上記第5の2(3)及び3は、主引用発明を、引用文献A偏光子発明から、甲1(【0021】、【0023】~【0024】等参照。)の比較例1の「偏光板」に含まれる「偏光フィルム」の発明に替えても同様である。 すなわち、甲1は、カリウム含有量が0.2重量%以下である場合に、白表示の着色を低減できる点に技術的特徴を有する文献である(請求項1、【0004】、【0005】)。 他方、甲1の比較例1は、白表示部分において黄緑の着色が認められるものである(【0020】、【0024】)。 したがって、甲1の比較例1の「偏光板」に含まれる「偏光フィルム」の発明において、カリウムの含有量を「0.32重量%以上」に設計変更することで本件訂正発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。 (2)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和4年7月12日付け意見書の(3-1)で「本件特許発明2が規定するカリウムの含有量「0.32重量%以上」は、甲1フィルム発明でのカリウムの含有量「0.31重量%」から僅か0.1重量%しか離れていないので、「その前後範囲の含有量」として当業者が適宜採用し得たことである。」と主張するとともに、令和4年12月7日付け意見書の(3-3)において、「甲1フィルム発明の製造では、ヨウ化カリウムは、染色浴及び架橋浴にのみ添加されており、水中延伸時の延伸浴や洗浄浴には添加されていない(段落【0021】)。しかしながら、延伸浴や洗浄浴にもヨウ化カリウムを添加することは周知技術(必要であれば、特許4751486号(特に段落【0055】,【0059】)や特許6138755号(特に段落【0037】,【0044】)等を参照。)である。」「これによれば、甲1フィルム発明の製造において、延伸浴や洗浄浴にヨウ化カリウムを添加することは当業者が容易になし得たことである。そしてこのとき、偏光フィルム中のカリウムの含有量が高くなる。上図でいえば「口」印が上方へ移動し、本件訂正発明2領域の内部に位置することになる。」と主張する。 しかし、比較例として位置づけられている主引用発明を敢えて改良しようとする動機付けを見出し難いことは、上記第5の2(3)で述べたとおりである。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (3)小括 本件訂正発明2~8は、甲1に記載された発明ではない。 また、本件訂正発明2~8は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 2 サポート要件について (1)発明の課題 本件訂正発明2の課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0006】~【0007】に記載のとおり、「高温環境下に曝された場合に、ポリビニルアルコールのポリエン化が進行することにより、偏光子に着色が生じ、その光学特性が低下する問題」、「とくに、上記の偏光フィルムや積層偏光フィルムを、画像表示セルと透明板との間に粘着剤層を介して貼合することにより構成される画像表示装置は、偏光子の着色が著しく、その光学特性の低下が顕著になる問題」に鑑み、「高温環境下において、光学特性の低下の抑制効果に優れる偏光子を提供する」というものと認められる。 (2)課題を解決するための手段及び作用機序 本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0015】には、「本発明の偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムから形成され、ホウ素およびカリウムを含む。前記偏光子中、前記ホウ素の含有量は4重量%以上6重量%以下であり、かつ前記ホウ素の含有量(重量%)に前記カリウムの含有量(重量%)を乗じた値は1.2以上である。従前の偏光子がホウ素およびカリウムを含むことは知られているが、本発明の偏光子は、上記の特定量のホウ素およびカリウムを含むことにより、従前の偏光子よりも、耐熱性をより向上させることができる。とくに、本発明の偏光子ように、前記ホウ素の含有量(重量%)に前記カリウムの含有量(重量%)を乗じた値が1.2以上である偏光子が、それ未満の偏光子よりも、優れた耐熱性を奏することは知られていない。」と記載されている。 また、同【0016】には、「従来、偏光フィルムや積層偏光フィルムを、画像表示セルと透明板との間に粘着剤層を介して貼合することにより構成される画像表示装置が、高温環境下に曝された場合、偏光子や粘着剤層等に含まれる水分等が当該画像表示装置内に閉じ込められることにより、偏光子中のポリビニルアルコールの劣化(ポリエン化)が促進されるため、その光学特性の低下が顕著になる問題があったが、本発明の偏光子を用いれば、従前の偏光子よりも、ホウ素の含有量が多く、カリウムの含有量が少ないため、ホウ酸架橋により偏光子中のポリビニルアルコールの水酸基末端が保護(安定化)されていること、また、適量なカリウム含有率によって、偏光子中で対イオンとなるヨウ素イオンが安定化されていることから、上記のようなポリエン化を抑制できるものと推定される。」と記載されている。 ここで、「ホウ素の含有量が多く」及び「適量なカリウム含有率」という点は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、 ア 「前記ホウ素の含有量は、高温環境下における偏光子の光学特性の低下を抑制する観点から、4.0重量%以上」(【0024】)、 イ 「前記カリウムの含有量は、高温環境下における偏光子の光学特性の低下を抑制する観点から、0.28重量%以上であることが好ましく、0.32重量%以上であることがより好ましく」(【0025】)、 ウ 「前記ホウ素の含有量(重量%)に前記カリウムの含有量(重量%)を乗じた値(ホウ素の含有量(重量%)×カリウムの含有量(重量%))は高温環境下における偏光子の光学特性の低下を抑制する観点から、1.2以上であることが好ましく」(【0026】)と、それぞれ記載されている。 そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例1~5は、比較例1~4と比べて、「高温環境下における」「単体透過率(ΔTs)」が優れ、かつ、「高温環境下における」「ポリエン化」を抑制できることが示されているところ、上記アの点は実施例1~5と比較例1及び4の対比により、上記イ及びウの点は実施例1~5と比較例2~3の対比により、それぞれ実証されているといえる。 (3)判断 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に記載する要件(いわゆる、サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認定できる範囲のものであるか否かを検討して判断される。 これを本件についてみると、上記(1)に示したとおり、本件訂正発明2は、「高温環境下において、光学特性の低下の抑制効果に優れる偏光子を提供する」ことを課題としているところ、当該「光学特性の低下」とは、「高温環境下に曝された場合に、ポリビニルアルコールのポリエン化が進行することにより、偏光子に着色が生じ」た結果としての「光学特性の低下」であると解される。 そして、上記(2)によれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記ア~ウの技術的特徴を備えることで、「ポリエン化が進行すること」による「光学特性の低下」を防止できることが、実施例と比較例の対比をもって示されている。 そうしてみると、本件訂正発明2は、上記ア~ウの技術的特徴をすべて有しているので、上記(1)に示した課題を解決できることを当業者が認識し得るに足りる十分なものである。 (4)特許異議申立人の主張について ア 課題について 特許異議申立人は、令和4年7月12日付け意見書の(3-2-1)において、「光学特性を低下させる事項としては、例えば乙第2号証の段落【0096】~【0098】に記載されている「ポリエン化」、「色抜け」、「加熱赤変」が挙げられる。これらが原因となって発生する好ましくない変化はいずれも「光学特性の低下」という表現に包含されるのであり、本件特許発明2が解決しようとする課題(「偏光子の光学特性の低下を抑制する」)に含まれることである。」と主張し、令和4年12月7日付け意見書の(3-2)においてもこれと同旨の意見を主張する。 しかし、上記(1)に示したとおり、本件訂正発明2の課題は「高温環境下に曝された場合に、ポリビニルアルコールのポリエン化が進行することにより、偏光子に着色が生じ、その光学特性が低下する問題」に鑑みて「高温環境下において、光学特性の低下の抑制効果に優れる偏光子を提供する」ものである。そうすると、「ポリエン化が進行すること」以外に起因する「光学特性」の解決も要求する特許異議申立人の主張は失当である。 イ 実施例がない領域について 特許異議申立人は、令和4年12月7日付け意見書の(3-2)において、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例及び比較例等を、ホウ素含有量を横軸、カリウム含有量を縦軸とした図に整理した上で、「本件訂正発明2がサポート要件に適合するというためには、本件訂正発明2領域の左下の隅の部分におけるような検討が、本件訂正発明2領域の他の部分においてもなされ、課題を解決できることが示されているべきである。本件特許明細書では、それがなされていない。」「本件特許明細書では、本件訂正発明2領域のうち左下の隅という特定の領域のみで臨界性が示されているのみであるので、この検討をもって本件訂正発明2領域の他の広い部分についてまで当業者が課題を解決できると認識することができるとはいえない。」と主張する。 特許異議申立人の上記主張は、要するに、本件訂正発明2が実施例以外の態様も含むからサポート要件違反に該当するというものであるが、本件訂正発明2は、たとえ実施例以外の態様であっても、前述したとおり、当業者が本件訂正発明2の課題を解決できると認識できる範囲のものである。そして、本件訂正発明2がサポート要件に適合するためには、本件訂正発明2がその課題を解決できることを当業者が認識できることで足り、臨界性まで求められるものではない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (5)小括 本件訂正発明2は、発明の詳細な説明に記載したものである。本件訂正発明3~8も同様である。 第7 むすび 請求項2~8に係る特許は、いずれも、令和4年3月30日付け取消理由通知書に記載した取消しの理由、令和4年8月29日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項2~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項1は、本件訂正請求による訂正で削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てのうち、本件特許の請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700090

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