特許異議申立
2021-700985
フレキシブル画像表示装置およびそれに用いる光学積層体
- 審判番号
- 2021-700985
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-159579
- 登録番号
- 6858912
- 請求日
- 2021年10月13日
- 審決日
- 2022年11月14日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】日東電工株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人河崎特許事務所
- 【異議申立人】浜 俊彦
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 中塚 直樹
- 審判官 濱本 禎広
- 分類
- P1651.121-ZAA(G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6858912号発明「フレキシブル画像表示装置およびそれに用いる光学積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6858912号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第6858912号の請求項1~13に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6858912号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和2年9月24日に出願され(優先権主張令和元年10月9日)、令和3年3月26日にその特許権の設定登録がされ、同年4月14日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和3年10月13日に、請求項1~13に係る特許に対し、特許異議申立人である浜俊彦(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和4年 1月13日付け: 取消理由通知書
同年 3月 7日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 4月19日 : 申立人による意見書の提出
同年 6月 2日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
同年 7月20日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 8月30日 : 申立人による意見書の提出
以下、令和4年7月20日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
なお、本件訂正により、令和4年3月7日に提出された訂正請求書は取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。
第2 本件訂正について
1 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正の請求の趣旨は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の一群の請求項1~13について、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その内容は次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、次のアに示した本件訂正前の請求項1の記載を、後記のイに示した本件訂正後の請求項1の記載のとおり訂正し、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~13についても同様に訂正する。
ア 本件訂正前の請求項1の記載
「ウインドウ部材と、
前記ウインドウ部材に積層された第1部材と、
前記ウインドウ部材に前記第1部材を介して積層された第1積層体または第1タッチセンサ付パネル部材と、
複数層の粘着部材と、を具備するフレキシブル画像表示装置であって、 前記第1積層体は、前記ウインドウ部材に、前記第1部材を介して積層された第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を介して積層された第3A部材との積層体であり、
前記フレキシブル画像表示装置が前記第1積層体を備える場合、
前記第1部材および前記第2部材の一方は、光学フィルムであり、他方は、光学フィルムまたはタッチセンサであり、
前記第3A部材は、少なくともパネル部材を含み、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、前記第1部材と前記第2部材との間、および前記第2部材と前記第3A部材との間に配置される3層を含み、
前記フレキシブル画像表示装置が前記第1タッチセンサ付パネル部材を備える場合、
前記第1部材は、光学フィルムであり、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、および前記第1部材と前記第1タッチセンサ付パネル部材との間に配置される2層を含み、
前記ウインドウ部材の引張弾性率(GPa)をE0とし、前記ウインドウ部材の厚み(mm)をT0とするとき、E0×T0は、前記ウインドウ部材側のJIS K 5600-5-4:1999に規定される鉛筆硬度を規制するとともに、E0×T0≦0.32であり、
前記複数層の粘着部材の各層の厚みが、18μm以下の条件を満たす、フレキシブル画像表示装置。」
イ 本件訂正後の請求項1の記載
「ウインドウ部材と、
前記ウインドウ部材に積層された第1部材と、
前記ウインドウ部材に前記第1部材を介して積層された第1積層体または第1タッチセンサ付パネル部材と、
複数層の粘着部材と、を具備するフレキシブル画像表示装置であって、
前記複数層の粘着部材の各層のJIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における貯蔵弾性率は、3MPa以下であり、
前記第1積層体は、前記ウインドウ部材に、前記第1部材を介して積層された第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を介して積層された第3A部材との積層体であり、
前記フレキシブル画像表示装置が前記第1積層体を備える場合、
前記第1部材および前記第2部材の一方は、光学フィルムであり、他方は、光学フィルムまたはタッチセンサであり、
前記第3A部材は、少なくともパネル部材を含み、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、前記第1部材と前記第2部材との間、および前記第2部材と前記第3A部材との間に配置される3層を含み、
前記フレキシブル画像表示装置が前記第1タッチセンサ付パネル部材を備える場合、
前記第1部材は、光学フィルムであり、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、および前記第1部材と前記第1タッチセンサ付パネル部材との間に配置される2層を含み、
前記ウインドウ部材の引張弾性率(GPa)をE0とし、前記ウインドウ部材の厚み(mm)をT0とするとき、E0×T0は、前記ウインドウ部材側のJIS K 5600-5-4:1999に規定される鉛筆硬度を規制するとともに、E0×T0≦0.32であり、
前記複数層の粘着部材の各層の厚みが、15μm以下の条件を満たす、フレキシブル画像表示装置。」
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項12について、次のアに示した本件訂正前の請求項12の記載を、後記のイに示した本件訂正後の請求項12の記載のとおり訂正し、請求項12の記載を引用する請求項13についても同様に訂正する。
ア 本件訂正前の請求項12の記載
「請求項1~11のいずれか1項に記載のフレキシブル画像表示装置に用いられ、
ウインドウ部材と、
前記ウインドウ部材に積層された第1部材と、
前記ウインドウ部材に前記第1部材を介して積層された第2積層体または第1セパレータと、
複数層の粘着部材と、を具備する光学積層体であって、
前記第2積層体は、前記ウインドウ部材に、前記第1部材を介して積層された第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を介して積層された第3B部材との積層体であり、
前記光学積層体が前記第2積層体を備える場合、
前記第1部材および前記第2部材の一方は、光学フィルムであり、他方は、光学フィルムまたはタッチセンサであり、
前記第3B部材は、少なくとも第2セパレータを含み、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、前記第1部材と前記第2部材との間、および前記第2部材と前記第3B部材との間に配置される3層を含み、
前記光学積層体が前記第1セパレータを備える場合、
前記第1部材は、光学フィルムであり、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、および前記第1部材と前記第1セパレータとの間に配置される2層を含み、
前記ウインドウ部材の引張弾性率(GPa)をE0とし、前記ウインドウ部材の厚み(mm)をT0とするとき、E0×T0は、前記ウインドウ部材側の表面におけるJIS K 5600-5-4:1999に規定される鉛筆硬度を規制するとともに、E0×T0≦0.32であり、
前記複数層の粘着部材の各層の厚みが、18μm以下の条件を満たす、光学積層体。」
イ 本件訂正後の請求項12の記載
「請求項1~11のいずれか1項に記載のフレキシブル画像表示装置に用いられ、
ウインドウ部材と、
前記ウインドウ部材に積層された第1部材と、
前記ウインドウ部材に前記第1部材を介して積層された第2積層体または第1セパレータと、
複数層の粘着部材と、を具備する光学積層体であって、
前記複数層の粘着部材の各層のJIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における貯蔵弾性率は、3MPa以下であり、
前記第2積層体は、前記ウインドウ部材に、前記第1部材を介して積層された第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を介して積層された第3B部材との積層体であり、
前記光学積層体が前記第2積層体を備える場合、
前記第1部材および前記第2部材の一方は、光学フィルムであり、他方は、光学フィルムまたはタッチセンサであり、
前記第3B部材は、少なくとも第2セパレータを含み、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、前記第1部材と前記第2部材との間、および前記第2部材と前記第3B部材との間に配置される3層を含み、
前記光学積層体が前記第1セパレータを備える場合、
前記第1部材は、光学フィルムであり、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、および前記第1部材と前記第1セパレータとの間に配置される2層を含み、
前記ウインドウ部材の引張弾性率(GPa)をE0とし、前記ウインドウ部材の厚み(mm)をT0とするとき、E0×T0は、前記ウインドウ部材側の表面におけるJIS K 5600-5-4:1999に規定される鉛筆硬度を規制するとともに、E0×T0≦0.32であり、
前記複数層の粘着部材の各層の厚みが、15μm以下の条件を満たす、光学積層体。」
2 訂正の適否についての判断
(1) 訂正の目的
ア 前記訂正事項1による請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~9、11~13の訂正は、本件訂正前の「複数層の粘着部材」について「前記複数層の粘着部材の各層のJIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における貯蔵弾性率は、3MPa以下であ[る]」ことを追加して、「複数層の粘着部材」の材料特性を限定し、また、本件訂正前に「前記複数層の粘着部材の各層の厚み」について「18μm以下の条件を満たす」とされていたものを「15μm以下の条件を満たす」と限定したものである。
したがって、前記訂正事項1による請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~9、11~13の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 本件訂正前の請求項10は「前記複数層の粘着部材の各層の25℃における貯蔵弾性率が、1MPa以下の条件を満たす、請求項1~9のいずれか1項に記載のフレキシブル画像表示装置。」というものであって、「貯蔵弾性率が3MPa以下」の条件範囲より狭い範囲を特定していた。
この点を踏まえると、前記訂正事項1による請求項10についての訂正は、「貯蔵弾性率」が「JIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における」ものであることを特定するとともに「前記複数層の粘着部材の各層の厚み」について「15μm以下の条件を満たす」と限定することが実質的訂正内容である。
そうすると、前記訂正事項1による、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項10についての訂正は、特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
ウ 前記訂正事項2による請求項12及び請求項12の記載を引用する請求項13についての訂正も、上記アにおける訂正事項1の訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
エ よって、前記訂正事項1及び2の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号又は3号に掲げる特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(2) 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
ア 前記訂正事項1及び2の訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる「明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)」は、特許権の設定の登録がされた時点における願書に添付した明細書等(以下「特許明細書等」という。)である。
イ 上記訂正事項1及び2の訂正は、特許明細書等の段落【0026】、【0032】及び【0035】の記載に基づくものであると認められる。 したがって、上記訂正事項1及び2の訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。
また、上記訂正事項1及び2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項に規定する要件を満たすことは明らかである。
(3) 独立特許要件
本件特許異議の申立てにおいては、請求項1~13について特許異議の申立てがされているから、本件訂正後における請求項1~13に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項が規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
(4) 訂正の適否のまとめ
前記(1)~(3)において検討したとおり、前記訂正事項1及び2の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号又は3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条9項で準用する126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許第6858912号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
本件特許について、当合議体の審判長が令和4年6月2日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
<引用文献一覧>
1.甲1号証:韓国公開特許第10-2019-0030912号公報 2.甲3号証:国際公開第2019/026753号
3.補助引用例1:国際公開第2019/054441号
4.補助引用例2:特開2016-188354公報
第4 当審の判断
1 本件特許に係る発明
前記第2において示したとおり、本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~13に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」等という。)は、次のとおり、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次の事項により特定されるものであると認められる。
「【請求項1】
ウインドウ部材と、
前記ウインドウ部材に積層された第1部材と、
前記ウインドウ部材に前記第1部材を介して積層された第1積層体または第1タッチセンサ付パネル部材と、
複数層の粘着部材と、を具備するフレキシブル画像表示装置であって、 前記複数層の粘着部材の各層のJIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における貯蔵弾性率は、3MPa以下であり、 前記第1積層体は、前記ウインドウ部材に、前記第1部材を介して積層された第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を介して積層された第3A部材との積層体であり、
前記フレキシブル画像表示装置が前記第1積層体を備える場合、
前記第1部材および前記第2部材の一方は、光学フィルムであり、他方は、光学フィルムまたはタッチセンサであり、
前記第3A部材は、少なくともパネル部材を含み、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、前記第1部材と前記第2部材との間、および前記第2部材と前記第3A部材との間に配置される3層を含み、
前記フレキシブル画像表示装置が前記第1タッチセンサ付パネル部材を備える場合、
前記第1部材は、光学フィルムであり、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、および前記第1部材と前記第1タッチセンサ付パネル部材との間に配置される2層を含み、
前記ウインドウ部材の引張弾性率(GPa)をE0とし、前記ウインドウ部材の厚み(mm)をT0とするとき、E0×T0は、前記ウインドウ部材側のJIS K 5600-5-4:1999に規定される鉛筆硬度を規制するとともに、E0×T0≦0.32であり、
前記複数層の粘着部材の各層の厚みが、15μm以下の条件を満たす、フレキシブル画像表示装置。
【請求項2】
前記第3A部材を備え、
前記第1部材および前記第2部材の一方は、前記光学フィルムであり、他方は、前記タッチセンサである、請求項1に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項3】
前記複数層の粘着部材は、前記第3A部材内に配置される少なくとも1層をさらに含む、請求項1または2に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項4】
前記第3A部材が、第2タッチセンサ付パネル部材を含み、
前記第1部材および前記第2部材のそれぞれは、前記光学フィルムである、請求項1に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項5】
前記ウインドウ部材と前記タッチセンサまたは前記第1タッチセンサ付パネル部材との間において、いずれか1層の前記粘着部材と接触するように、加飾層が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項6】
前記ウインドウ部材と、前記第2タッチセンサ付パネル部材との間において、いずれか1層の前記粘着部材と接触するように、加飾層が設けられている、請求項4に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項7】
前記加飾層が接触する前記粘着部材の厚みは、10μm以上である、請求項5または6に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項8】
前記複数層の粘着部材の各層の厚みが、3μm以上の条件を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項9】
前記ウインドウ部材側のJIS K 5600-5-4:1999に規定される鉛筆硬度試験による硬度が、Fよりも硬い、請求項1~8のいずれか1項に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項10】
前記複数層の粘着部材の各層の25℃における貯蔵弾性率が、1MPa以下の条件を満たす、請求項1~9のいずれか1項に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項11】
前記ウインドウ部材は、ハードコート層を備え、
前記ハードコート層は、少なくとも前記ウインドウ部材の前記第1部材側とは反対側に設けられている、請求項1~10のいずれか1項に記載のフレキシブル画像表示装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のフレキシブル画像表示装置に用いられ、
ウインドウ部材と、
前記ウインドウ部材に積層された第1部材と、
前記ウインドウ部材に前記第1部材を介して積層された第2積層体または第1セパレータと、
複数層の粘着部材と、を具備する光学積層体であって、
前記複数層の粘着部材の各層のJIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における貯蔵弾性率は、3MPa以下であり、 前記第2積層体は、前記ウインドウ部材に、前記第1部材を介して積層された第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を介して積層された第3B部材との積層体であり、
前記光学積層体が前記第2積層体を備える場合、
前記第1部材および前記第2部材の一方は、光学フィルムであり、他方は、光学フィルムまたはタッチセンサであり、
前記第3B部材は、少なくとも第2セパレータを含み、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、前記第1部材と前記第2部材との間、および前記第2部材と前記第3B部材との間に配置される3層を含み、
前記光学積層体が前記第1セパレータを備える場合、
前記第1部材は、光学フィルムであり、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、および前記第1部材と前記第1セパレータとの間に配置される2層を含み、
前記ウインドウ部材の引張弾性率(GPa)をE0とし、前記ウインドウ部材の厚み(mm)をT0とするとき、E0×T0は、前記ウインドウ部材側の表面におけるJIS K 5600-5-4:1999に規定される鉛筆硬度を規制するとともに、E0×T0≦0.32であり、
前記複数層の粘着部材の各層の厚みが、15μm以下の条件を満たす、光学積層体。
【請求項13】
前記第3B部材を備え、
前記第1部材および前記第2部材の一方は、前記光学フィルムであり、他方は、前記タッチセンサである、請求項12に記載の光学積層体。」
2 各引用文献に記載された事項及び技術常識・周知技術の認定
(1) 甲1号証に記載された事項及び甲1発明の認定
ア 甲1号証に記載された事項
甲1号証には、以下の技術事項が記載されている。なお、日本語訳は、特許異議申立人が提出したものを参考にしつつ合議体が作成した。下線は当合議体が付した。
(ア) 請求の範囲
「
[図:0001395182000001.jpg]
[図:0001395182000002.jpg]
[図:0001395182000003.jpg]
[図:0001395182000004.jpg]
[図:0001395182000005.jpg]
[図:0001395182000006.jpg]
[図:0001395182000007.jpg]
[図:0001395182000008.jpg]
[図:0001395182000009.jpg]
[図:0001395182000010.jpg]
[図:0001395182000011.jpg]
[図:0001395182000012.jpg]
[図:0001395182000013.jpg]
[図:0001395182000014.jpg]
[図:0001395182000015.jpg]
[図:0001395182000016.jpg]
」
(日本語訳:
請求の範囲
請求項1
表示パネル; 前記表示パネル上に配置された機能性構造物; 前記機能性構造物上に配置されたウインドウ; 前記表示パネルと前記機能性構造物の間に配置された第1粘接着層; 及び前記機能性構造物と前記ウインドウの間に配置された第2粘接着層を含み、前記第1粘接着層及び前記第2粘接着層はそれぞれ下記数式1に従って計算される、0.02~50MPaの屈曲粘着剤係数(Bending Adhesive Modulus: BAM)を有する、フレキシブル表示装置:
[数式1]屈曲粘着剤係数(BAM) = 粘接着層貯蔵弾性率/粘接着層厚さの割合
(数式1において、粘接着層厚さの割合は、前記フレキシブル表示装置の全体厚さに対する粘接着層の全厚さの割合))。
請求項2
請求項1において、前記表示パネルは有機発光ダイオード(OLED)パネル又は液晶表示(LCD)パネルを含むフレキシブル表示装置。
請求項3
請求項1において,前記機能性構造物はタッチセンサ又は偏光層の少なくとも一つを含むフレキシブル表示装置。
請求項4
請求項1において、前記フレキシブルディスプレイ装置が曲げられる際に、前記表示パネル、前記機能性構造物及び前記ウインドウの内部にそれぞれ中立面が形成されるフレキシブル表示装置。
請求項5
請求項1において、前記第1粘接着層及び前記第2粘接着層はそれぞれ10~100μmの厚さ、0.01~5MPaの貯蔵弾性率を有するフレキシブル表示装置。
請求項6
請求項1において、前記機能性構造物はタッチセンサ及び偏光板を含み、前記タッチセンサ及び前記偏光板の間に形成された第3粘接着層を更に含む、フレキシブル表示装置。
請求項7
請求項6において、前記第3粘接着層は0.02~50MPaの屈曲粘着剤係数を有するフレキシブル表示装置。
請求項8
請求項7において、前記タッチセンサ及び前記偏光板内部にそれぞれ中立面が形成されるフレキシブル表示装置。
請求項9
請求項1において、前記ウインドウ上に配置された保護フィルムを更に含むフレキシブル表示装置。
請求項10
請求項9において,前記ウインドウ及び前記保護フィルムの間に配置された第3粘接着層を更に含むフレキシブル表示装置。
請求項11
請求項10において、前記第3粘接着層は0.02~50MPaの屈曲粘着剤係数を有し、前記保護フィルム内部に中立面が形成されるフレキシブル表示装置。
請求項12
請求項1において、前記第1粘接着層は前記表示パネル及び前記機能性構造物と直接接触し、前記第2粘接着層は前記機能性構造物及び前記ウインドウと直接接触する、フレキシブルディスプレイ装置。
請求項13
請求項1において、前記第1粘接着層及び前記第2粘接着層はアクリル系感圧性粘接着剤(pressure sensitive adhesive: PSA)組成物又は光学透明粘接着剤(optically clear adhesive: OCA)組成物から形成されたフレキシブルディスプレイ装置。
請求項14
請求項1において、前記第1粘接着層及び前記第2粘接着層により前記表示パネル、前記機能性構造物及び前記ウインドウの間に歪み分離が生成されるフレキシブルディスプレイ装置。
請求項15
請求項1において、前記第1粘接着層及び前記第2粘接着層の屈曲粘着剤係数はそれぞれ0.2~10MPaであるフレキシブル表示装置。
請求項16
請求項1において、前記フレキシブル表示装置の全体厚さは200~1,000μmであるフレキシブル表示装置。」
(イ) 段落[0001]
「
[図:0001395182000017.jpg]
」
(日本語訳:
明細書
[技術分野]
[0001] 本発明は、フレキシブル表示装置に関する。より詳細には、表示パネル上に積層された複数の層を含むフレキシブル表示装置に関する。)
(ウ) 段落[0002]-[0006]
「
[図:0001395182000018.jpg]
」
(日本語訳:
[背景技術]
[0002] 最近、画像イメージを含む情報を表示することができる表示装置が活発に開発されている。表示装置は、液晶表示(liquid crystal display: LCD)装置、有機発光表示(organic light emitting display: OLED)装置、プラズマ表示(plasma display panel: PDP) 装置及び電界放出表示(field emission display: FED)device)装置等を含む。
[0003] 前記表示装置において、例えば、LCDパネル及びOLEDパネルのような表示パネル上部に外部環境から前記表示パネルを保護するためのウインドウ基板が配置され得る。前記ウインドウ基板及び前記表示パネルは、最近フレキシブル表示装置が開発され、例えば、柔軟性を有する透明プラスチック材質を含むことができる。
[0004] また、前記ウインドウ基板と前記表示パネルの間には、偏光板、タッチスクリーンパネルのような表示装置の追加部材が配置され得る。前記偏光板によって、例えば、前記表示パネルの電極パターンから反射された外光を遮断することができる。また、前記タッチスクリーンパネルによってユーザーの命令を画面を介して入力することができる。
[0005] しかし、前記表示パネル上に前記偏光板、タッチスクリーンパネル、ウインドウ基板等の複数の層又は構造物が積層されるによって、フレキシブル特性向上、薄型化のような最近の表示装置での要求事項が十分に容易に実現されないことがある。また、前記複数の層又は構造物が積層されるによって、曲げ又は折れ動作時に構造物のクラック、破断等の損傷を防止しつつ十分な柔軟性を容易に確保することができない。
[0006] 例えば 韓国公開特許第2012-0076026号には、偏光板を含むタッチスクリーンパネルを含む透明基板が開示されている。)
(エ) 段落[0008]
「
[図:0001395182000019.jpg]
」
(日本語訳:
[発明の内容]
[発明が解決しようとする課題]
[0008] 本発明の一つの課題は、柔軟性及び機械的信頼性が向上したフレキシブル表示装置を提供することである。)
(オ) 段落[0009]-[0028]
「
[図:0001395182000020.jpg]
[図:0001395182000021.jpg]
[図:0001395182000022.jpg]
[図:0001395182000023.jpg]
[図:0001395182000024.jpg]
」
(日本語訳:
[課題を解決するための手段]
[0009] 1.表示パネル; 前記表示パネル上に配置された機能性構造物;前記機能性構造物上に配置されたウインドウ; 前記表示パネルと前記機能性構造物の間に配置された第1粘着層; 及び前記機能性構造物と前記ウインドウの間に配置された第2粘接着層を含み、
[001O] 前記第1粘接着層及び前記第2粘接着層は、それぞれ下記数式1に従って計算される、0.02~50MPaの屈曲粘着剤係数(Bending Adhesive Modulus: BAM)を有する、フレキシブル表示装置:
[0011] [数式1]
[0012] 屈曲粘着剤係数(BAM) = 粘接着層貯蔵弾性率/粘接着層厚さの割合
[0013] (数式1において、粘接着層厚さの割合は、前記フレキシブル表示装置の全体厚さに対する粘接着層の全厚さの割合)。
[0014] 2. 上記1において、前記表示パネルは有機発光ダイオード(OLED)パネル又は液晶表示(LCD)パネルを含むフレキシブル表示装置。
[0015] 3. 上記1において、前記機能性構造物は、タッチセンサ又は偏光層の少なくとも一つを含むフレキシブル表示装置。
[0016] 4. 上記1において、前記フレキシブル表示装置が曲げられる際に、前記表示パネル、前記機能性構造物及び前記ウインドウの内部にそれぞれ中立面が形成されるフレキシブル表示装置。
[0017] 5. 上記1において、前記第1及び前記第2粘接着層はそれぞれ10~100μmの厚さ、0.01~5MPaの貯蔵弾性率を有するフレキシブル表示装置。
[0018] 6. 上記1において、前記機能性構造物はタッチセンサ及び偏光板を含み、前記タッチセンサと前記偏光板の間に形成された第3粘接着層を更に含むフレキシブル表示装置。
[0019] 7. 上記6において、前記第3粘接着層は0.02~50MPaの屈曲粘着剤係数を有するフレキシブル表示装置。
[0020] 8. 上記7において、前記タッチセンサ及び前記偏光板内部にそれぞれ中立面が形成されるフレキシブル表示装置。
[0021] 9. 上記1において、前記ウインドウ上に配置された保護フィルムを更に含むフレキシブル表示装置。
[0022] 10. 上記9において、前記ウインドウ及び前記保護フィルムの間に配置された第3粘接着層を更に含むフレキシブル表示装置。
[0023] 11. 上記10において、前記第3粘接着層は0.02~50MPaの屈曲粘着剤係数を有し、前記保護フィルム内部に中立面が形成されるフレキシブル表示装置。
[0024] 12. 上記1において、前記第1粘接着層は前記表示パネル及び前記機能性構造物と直接接触し、前記第2粘接着層は、前記機能性構造物及び前記ウインドウと直接接触するフレキシブル表示装置。
[0025] 13. 上記1において、前記第1粘接着剤層及び第2の粘接着層は、アクリル系感圧性粘接着剤(pressure sensitive adhesive: PSA)組成物又は光学透明粘接着剤(optically clear adhesive: OCA)組成物から形成されたフレキシブル表示装置。
[0026] 14. 上記1において、前記第1粘接着層及び前記第2粘接着層により前記表示パネル、前記機能性構造物と前記ウインドウの間に歪み分離が生成されるフレキシブル表示装置。
[0027] 15. 上記1において、 前記第1粘接着層及び前記第2粘接着層の屈曲粘着剤係数はそれぞれ0.2~10MPaであるフレキシブル表示装置。
[0028] 16. 上記1において、前記フレキシブル表示装置の全体厚さは200~1,000μmであるフレキシブル表示装置。)
(カ) 段落[0029]-[0031]
「
[図:0001395182000025.jpg]
」
(日本語訳:
[0029] 本発明の実施形態によるフレキシブル表示装置において、各表示部材の間に粘接着層を挿入し、前記粘接着層の厚さ及び弾性率を調節してそれぞれの表示部材に中立面を形成することができる。
[0030] これにより、前記フレキシブル表示装置に折れ又は曲げのようなストレスが加えられても、前記中立面により各表示部材の屈曲変形、応力変形を最小化することができる。
[0031] 前記フレキシブル表示装置は、表示パネル、タッチセンサ層、偏光層及び/又はウインドウ層を含み、各層ごとに形成された中立面により各種配線、絶縁膜、センシング電極、偏光子、ハードコート層等を含む構造物の応力損傷、クラック、破断等の欠陥が防止される。)
(キ) 段落[0032]
「
[図:0001395182000026.jpg]
」
(日本語訳:
[図面の簡単な説明]
[0032]
図1は、例示的な実施形態によるフレキシブル表示装置を示す概略的な断面図である。
図2は、例示的な実施形態による表示パネルを示す概略的な断面図である。図3は、例示的な実施形態によるタッチセンサを示す概略的な平面図である。
図4は、例示的な実施形態によるフレキシブル表示装置の歪み(strain)プロファイルを示すグラフである。
図5は、いくつかの実施形態によるフレキシブル表示装置を示す概略的な断面図である。
図6は、いくつかの実施形態によるフレキシブル表示装置を示す概略的な断面図である。)
(ク) 段落[0033]-[0034]
「
[図:0001395182000027.jpg]
[図:0001395182000028.jpg]
」
(日本語訳:
[発明を実施するための形態]
[0033] 本発明の実施形態は、表示パネル、前記表示パネル上に配置された機能性構造物、前記機能性構造物上に配置されたウインドウ、前記表示パネルと前記機能性構造物の間に配置された第1粘接着層及び前記機能性構造物と前記ウインドウの間に配置された第2粘接着層を含むフレキシブル表示装置を提供する。前記第1粘接着層及び前記第2粘接着層は、特定の範囲の屈曲粘着剤係数値を有し、これによって、優れた屈曲特性及び機械的安定性を有することができる。
[0034] 以下、図面を参照して、 本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、本明細書に添付される次の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、前述の発明の内容とともに本発明の技術思想をより理解させる役割をするものであるため、本発明は、そのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはならない。)
(ケ) 段落[0035]-[0060]
「
[図:0001395182000029.jpg]
・・・(中略)・・・
[図:0001395182000030.jpg]
・・・(中略)・・・
[図:0001395182000031.jpg]
[図:0001395182000032.jpg]
・・・(中略)・・・
[図:0001395182000033.jpg]
[図:0001395182000034.jpg]
[図:0001395182000035.jpg]
」
(日本語訳:
[0035] 図1は、例示的な実施形態によるフレキシブル表示装置を示す概略的な断面図である。
[0036] 図1を参照すると、前記フレキシブル表示装置は、表示パネル(100)、機能性構造物(200)及びウィンドウ(300)を含むことができる。
[0037] 表示パネル(100)は、例えば、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode: OLED)パネル又は液晶表示(Liquid Crystal Display: LCD)パネルを含むことができる。表示パネル(100)の詳細な構成及び構造については、図2を参照して後述する。
[0038] 機能性構造物(200)は、例えば、タッチセンサ又は偏光層の少なくとも一つを含むことができる。前記タッチセンサの詳細な構成及び構造については、図3を参照して後述する。
[0039] 前記偏光層は、例えば、延伸型偏光子を含む偏光板で提供され得る。この場合、前記偏光板は、偏光子及び前記偏光子の少なくとも一面に形成された保護フィルムを含むことができる。
・・・(中略)・・・
[0045] ウインドウ(300)は、例えば、前記フレキシブル表示装置のユーザー視認面側に露出されて外部環境に対する保護フィルムとして提供されることができる。
[0046] ウインドウ(300)は、柔軟性を有するプラスチック材質又は高分子材質を含む基材層を含むことができる。例えば、前記基材層はポリイミド(polyimide: PI)、ポリエーテルスルホン(polyethersulphone: PES)、ポリアクリレート(polyacrylate: PAR)、ポリエーテルイミド(polyetherimide: PEI)、ポリエチレンナフタレート(polyethyelenen napthalate: PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET,polyethyelene terepthalate)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide: PPS)、ポリアリレート(polyallylate)、ポリカーボネート(PC,polycarbonate)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロース酢酸塩プロピオネート(cellulose acetate propionate: CAP)等を含むことができる。これらは単独にあるいは2以上が組み合わせられて使用され得る。
[0047] ウインドウ(300)は、前記基材層の少なくとも一面上に形成されたハードコート層を更に含むこともできる。前記ハードコート層は、例えば、光硬化性化合物、光開始剤及び溶剤を含むハードコート組成物を用いて形成され、これにより、ウインドウ(300)の優れた柔軟性、耐磨耗性、表面硬度を追加的に確保することができる。
・・・(中略)・・・
[0050] 例示的な実施形態によれば、表示パネル(100)と機能性構造物(200)の間に第1粘接着層(50)が配置され得る。いくつかの実施形態においては、第1粘接着層(50)は、表示パネル(100)及び機能性構造物(200)の表面と直接接触することができる。例えば、第1粘接着層(50)を機能性構造物(200)(例えば、タッチセンサ又は偏光板)の底面上に形成した後、第1粘接着層(50)の露出面を表示パネル(100)の上面に取り付けることができる。
[0051] 機能性構造物(200)とウインドウ(300)の間には、第2粘接着層(90)が配置され得る。いくつかの実施形態においては、第2粘接着層(90)は、機能性構造物(200)及びウインドウ(300)の表面と直接接触することができる。例えば、第2粘接着層(90)をウインドウ(300)の底面上に形成した後、第2粘接着層(90)の露出面を機能性構造物(200)上面に取り付けることができる。
[0052] 本出願で用いられる用語「粘接着層」は、粘着層及び接着層を包含する意味として用いられる。粘接着層は、感圧性接着剤(pressure sensitive adhesive: PSA)組成物又は光学透明粘接着剤(optically clear adhesive: OCA)組成物を用いて形成することができる。
[0053] 第1及び第2の粘接着層(50、90)は、前記フレキシブル表示装置に屈曲発生時、剥離、気泡等がもたらされないように適切な粘着力を有すると同時に、フレキシブル表示装置に適用可能な粘弾性特性を有することができる。いくつかの実施形態において、第1及び第2の粘接着層(50、90)は、アクリレート系PSA組成物を用いて形成することができる。例えば、前記PSA組成物は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、架橋剤及び溶剤を含むことができる。
・・・(中略)・・・
[0056] 例示的な実施形態によると、第1及び第2の粘接着層(50、90)が前記フレキシブル表示装置に含まれた各層又は各部材の間に挿入されることによって、前記フレキシブル表示装置に引張圧縮のような歪み(strain)又は応力発生時に、歪み分離を生成することができる。
[0057] したがって,前記フレキシブル表示装置に含まれた各層又は各部材内に中立面(Neutral Plane: NP)を形成することができる。
[0058] 図1に示すように、表示パネル(100)内に第1中立面(NP1)を形成し、機能性構造物(200)内に第2中立面(NP2)を形成し、ウインドウ(300)内に第3中立面(NP3)を形成することができる。
[0059] 第1及び第2の粘接着層(50、90)による前記歪み分離によって中立面が形成されるように、第1及び第2の粘接着層(50、90)の弾性率及び厚さを調節することができる。上述したように、第1及び第2の粘接着層(50、90)により前記フレキシブル表示装置の各層別部材ごとに中立面が形成されて屈曲特性が向上し、表示パネル(100)、機能性構造物(200)及びウインドウ(300)の各層内での応力損傷が抑制されることができる。
[0060] 第1及び第2粘接着層(50、90)による中立面の形成は、図4を参照してより詳細に後述する。)
(コ) 段落[0084]-[0103]
「
[図:0001395182000036.jpg]
[図:0001395182000037.jpg]
[図:0001395182000038.jpg]
[図:0001395182000039.jpg]
[図:0001395182000040.jpg]
[図:0001395182000041.jpg]
[図:0001395182000042.jpg]
[図:0001395182000043.jpg]
[図:0001395182000044.jpg]
[図:0001395182000045.jpg]
[図:0001395182000046.jpg]
[図:0001395182000047.jpg]
[図:0001395182000048.jpg]
」
(日本語訳:
[0084] 図4は、例示的な実施形態によるフレキシブル表示装置の歪みプロファイルを示すグラフである。
[0085] 図4を参照すると、図1を参照して説明したように、表示パネル(100)、機能性構造物(200)及びウインドウ(300)のそれぞれごとに中立面を形成することができる。
[0086] 本出願で用いられる用語「中立面」は、フレキシブル表示装置が曲げられたときに、圧縮応力(図4で「-」で表示される。)と引張応力(図4で「+」で表示される。)が実質的に同じ面として定義される。したがって、中立面では、歪みが実質的に0(ゼロ)に収束することができる。
[0087] 前記フレキシブル表示装置が曲げられるとき、曲にげられる内側には圧縮力が、外側には引張力がかかり、これによって内部構造物に損傷が発生し得る。
[0088] 例示的な実施形態によると、前記フレキシブル表示装置に含まれた光学部材又は情報伝達部材のそれぞれは、全て中立面を含むので、圧縮力及び引張力が内部的に相殺されて、前記の内部構造物の破断、クラック、損傷を防止することができる。したがって、前記フレキシブル表示装置の屈曲又は曲げ可能な範囲が拡張されて柔軟性及び機械的信頼性をともに向上することができる。
[0089] 図4に示されたように、表示パネル(100)と機能性構造物(200)の間では、第1粘接着層(50)により歪み分離が生成され、第1中立面(NP1)及び第2中立面(NP2)をそれぞれ表示パネル(100)及び機能性構造物(200)内に形成することができる。
[0090] さらに、機能性構造物(200)とウインドウ(300)の間では、第2粘接着層(90)により歪み分離が生成され、第3中立面(NP3)をウインドウ(300)内に形成することができる。
[0091] 例示的な実施形態によると、第1及び第2粘接着層(50、90)は、それぞれ約0.02~50Mpa範囲の屈曲粘着剤係数(Bending Adhesive Modulus: BAM)を有し、前記BAMは下記の数式1で定義される。
[0092] [数式1]
[0093] 屈曲粘着剤係数(BAM) = 粘接着層貯蔵弾性率/粘接着層厚さの割合
[0094] 前記数式1において、粘接着層厚さの割合は、下記の数式1-1で定義される。
[0095] [数式1-1]
[0096] 粘接着層厚さの割合 = 粘接着層の厚さ/フレキシブル表示装置の全厚さ
[0097] 前記数式1-1において、前記粘接着層の厚さは、第1粘接着層(50)及び第2粘接着層(90)の厚さの合計を示し、前記粘接着層厚さの割合は、前記粘接着層の厚さの合計を図1に示された積層体の全体厚さで割った値を示すことができる。
[0098] 粘接着層のBAMが約0.02MPa未満の場合(例えば、粘接着層の厚さが過度に増加)、第1及び第2粘の接着層(50、90)による歪み分離は、弛緩又は緩和され、各層の中立面の形成が実現されなくなり得る。粘接着層のBAMが約50MPaを超える場合(例えば粘接着層の貯蔵弾性率が過度に増加)、十分な粘着力が得られず、各層の剥離、気泡、浮き現像等がもたらされ得る。
[0099] 例えば、粘着層は約0.02~50.5MPa又は約0.02~50.3MPaのBAMを有することができる。
[0100] いくつかの実施形態において、屈曲時の損傷防止及び安定した粘着力の実現の側面を考慮して、粘接着層のBAMは、約0.2~10MPa範囲に調節されることができる。
[0101]
第1及び第2の粘接着層(50、90)のそれぞれの貯蔵弾性率及び厚さは、前記BAMの範囲内で調節されることができ、特に限定されるものではない。例えば、第1及び第2の粘接着層(50,90)それぞれの厚さは、約10~100μm、貯蔵弾性率は、約0.01~5MPaであってもよい。
第1及び第2粘接着層(50、90)は、上述したBAM範囲内で互いに同一又は異なる厚さ及び貯蔵弾性率を有することができる。
[0102] 表示パネル(100)、機能性構造物(200)及びウインドウ(300)の厚さ及び弾性率は、内部に中立面の形成を促進するように調節されることができる。例えば、表示パネル(100)の厚さは約80~400μm、弾性率は約1~8GPa範囲であることができる。例えば、機能性構造物(200)の厚さは約50~150μmであり、弾性率は約0.5~8GPaであることができる。例えば、ウインドウ(300)の厚さは約30~150μmであり、弾性率は約1~8GPaの範囲であることができる。
[0103] いくつかの実施形態において、前記フレキシブル表示装置の全体厚さは、約200~1,000μmの範囲とすることができる。前記全体厚さが約200μm未満の場合、粘接着層(50、90)による各層の中立面生成が容易に実現できなくなり得る。前記全体厚さが約1,000μmを超える場合、十分な柔軟性確保が難しくて、各層の中立面生成による応力相殺効果が有意に発現されなくなり得る。)
(サ) 段落[0104]-[0107]
「
[図:0001395182000049.jpg]
[図:0001395182000050.jpg]
[図:0001395182000051.jpg]
」
(日本語訳:
[0104] 図5は、いくつかの実施形態によるフレキシブル表示装置を示す概略的な断面図である。
[0105] 図5を参照すると、機能性構造物はタッチセンサ(200a)及び偏光板(200b)を含むことができる。また、タッチセンサ(200a)及び偏光板(200b)の間には第3粘接着層(70)を形成することができる。
[0106] 第3粘接着層(70)は、上述した範囲のBAM(約0.02~50MPa)を有することができる。第33粘接着層(70)によりタッチセンサ(200a)及び偏光板(200b)の間の歪み分離が促進され、タッチセンサ(200a)及び偏光板(200b)それぞれの内部に中立面を形成することができる。
[0107] 例えば、タッチセンサ(200a)内部に第2中立面(NP2)を形成し、偏光板(200b)内部に第3中立面(NP3)を形成することができる。ウインドウ(300)内部には、上述したように、第2粘接着層(90)による歪み分離によって第4中立面(NP4)を形成することができる。)
(シ) 段落[0114]-[0131]
「
[図:0001395182000052.jpg]
[図:0001395182000053.jpg]
[図:0001395182000054.jpg]
[図:0001395182000055.jpg]
[図:0001395182000056.jpg]
[図:0001395182000057.jpg]
[図:0001395182000058.jpg]
[図:0001395182000059.jpg]
」
(日本語訳:
[0114] 実施例及び比較例
[0115] 実施例1
[0116]縦横の長さがそれぞれ10cmである基板(ポリイミド系ポリマー、厚さ30μm)上に画素電極、有機発光層、対向電極、カプセル化層を順に形成して表示パネルサンプルを製造した(全体厚さ:120μm)。前記表示パネルサンプル上にアクリル系OCA組成物を塗布して厚さ100μmの第1粘接着層を形成した。
[0117]前記第1粘接着層上にタッチセンサ層(トリアセチルセルロースフィルム上にITO電極パターン層を形成する)及び偏光板(ポリビニルアルコール偏光子フィルムの両面にトリアセチルセルロース(TAC)保護フィルムを貼り合わせ、光学補償フィルムを一つの保護フィルムの面に付着する、東友ファインケム製)を積層して機能性構造物を形成した。前記機能性構造物の全体厚さは100μmで形成された。
[0118] 次に、前記偏光板上に第1粘接着層と同じ物質及び厚さ(100
μm)の第2粘着層及びウインドウ基板(ポリイミド系、厚さ:70μm、住友ベークライト社製)を積層し、実施例1のフレキシブル表示装置(全体厚さ:490μm)を製造した。
[0119] 実施例2~6、比較例1及び2
[0120] 第1及び第2粘接着層の厚さを変更し、粘接着層の硬化度を調節して貯蔵弾性率を変更したことを除き、実施例1と同様の方法で実施例2~6、比較例1及び2のフレキシブル表示装置を製造した。実施例及び比較例に含まれた粘接着層のそれぞれの厚さ及び貯蔵弾性率は、下記表1に記載されたとおりである。
[0122] 実験例
[0123] 1.貯蔵弾性率測定
[0124] 粘接着層の貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置(MCR-301、Anton Paar社)を用いて測定した。具体的に、粘接着層サンプルサイズを長さ30mm× 幅30mmとし、サンプルをガラス板に接合後、測定tipと接着した状態で周波数1.0Hz、変形2%の条件下で測定した。
[0125] 2.クラック評価
[0126] 曲げ試験は、屈曲試験機(DLDMLH-FS、YUASA社)を用いて、実施例及び比較例のフレキシブル表示装置に行った。接合サンプルのサイズは100mm×10mmとし、一つのサンプルは引張曲げ応力が付加されるように、他の一つのサンプルは圧縮曲げ応力が加えられるようにサンプルを試験機にそれぞれ逆に接合して行った。サンプル装着後、lR、30回/分の速度で20万回屈曲評価を行った。
[0127] 屈曲後、各サンプルの屈曲部を光学顕微鏡(ECLIPSE LV100ND、NIKON社)で観察してクラック数を測定した。評価結果は、下記の表1に併せて示す。
[0128]
[表1]
[図:0001395182000060.jpg]
[0130] 表1を参照すると、約0.02~50MPa範囲の粘接着層BAMを有する実施例の場合、比較例に比べて屈曲によるクラック個数が顕著に減少した。約0.2~10MPa範囲の粘接着層BAMを有する実施例3及び4の場合には、実質的にクラックは観察されなかった。
[0131] 比較例の場合、クラック個数が20個以上に増加し、クラックが幅方向に伝播されることが観察された。)
(ス) 段落[0132]
「
[図:0001395182000061.jpg]
」
(日本語訳:
[符号の説明]
[0132]
50: 第1粘接着層 70: 第3粘接着層
90: 第2粘接着層 100: 表示パネル
105: パネル基板 110: アクティブ層
115: ゲート絶縁膜 120: ゲート電極
125: 層間絶縁膜 132: ソース電極
134: ドレイン電極 140: ビア絶縁膜
145: 画素電極 150: 画素定義膜
170: 対向電極 180: カプセル化層
160: 表示層 200: 機能性構造物
200a: タッチセンサ 200b: 偏光板
210: センシング電極 220: トレース
230: パッド 300: ウインドウ)
(セ) 図1
「
[図:0001395182000062.jpg]
」
(ソ) 図4
「
[図:0001395182000063.jpg]
」
(タ) 図5
「
[図:0001395182000064.jpg]
」
(チ) 実施例6について
段落[0118]において、実施例1については、「前記偏光板上に第1粘接着層と同じ物質及び厚さ(100μm)の第2粘着層」との記載があり、段落[0120]においては、「第1及び第2粘接着層の厚さを変更し、粘接着層の硬化度を調節して貯蔵弾性率を変更したことを除き、実施例1と同様の方法で」実施例6のフレキシブル表示装置を製造した旨の記載がある。そして、表1を参照すると、実施例6においては、弾性率は5MPa、厚さ16μmとの記載があるから、実施例6においては、「第1及び第2粘接着層は、いずれも、厚さが16μmであり、弾性率が5MPaである」と認められる。
イ 甲1号証に記載された発明の認定
前記アで摘記した事項を総合すると、甲1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「表示パネル;
前記表示パネル上に配置された機能性構造物;
前記機能性構造物上に配置されたウインドウ;
前記表示パネルと前記機能性構造物の間に配置された第1粘接着層; 及び
前記機能性構造物と前記ウインドウの間に配置された第2粘接着層を含む、
フレキシブル表示装置であって([請求項1])、
縦横の長さがそれぞれ10cmである基板(ポリイミド系ポリマー、厚さ30μm)上に画素電極、有機発光層、対向電極、カプセル化層を順に形成した表示パネルを備え(全体厚さ:120μm)([0116])、
前記表示パネル上にアクリル系OCA組成物を塗布して第1粘接着層が形成され([0116])、
前記第1粘接着層上にタッチセンサ層及び偏光板を積層して機能性構造物が形成され、前記機能性構造物の全体厚さは100μmであり([0117])、
前記偏光板上に第1粘接着層と同じ物質及び厚さの第2粘着層及びウインドウ基板(ポリイミド系、厚さ:70μm、住友ベークライト社製)が積層され([0118])、
第1及び第2粘接着層は、いずれも、厚さが16μmであり、弾性率が5MPaである(前記ア(チ)参照)、
フレキシブル表示装置([請求項1])。」
(2) 技術常識Aの認定
ア 補助引用例1に記載された事項
補助引用例1には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。
「【0002】
本発明は、画像表示装置等に用いられる積層体、該積層体を含むデバイス、及び該積層体を有するフレキシブル画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置の光学部材として、偏光板や位相差板などを含む積層体又はデバイスが使用されている(例えば特許文献1)。近年、画像表示装置の薄型化の要求が高まり、偏光板や位相差板などの積層体を構成する部材に対しても薄型化が要求されている。従来のポリビニルアルコール(PVA)樹脂を延伸したタイプの偏光子を含む偏光板や樹脂フィルムを延伸したタイプの位相差フィルムが、液晶塗布型の偏光子を含む偏光板や、液晶塗布型の位相差層を含む位相差フィルムに置き換えられつつある。
・・・(中略)・・・
【0006】
従って、本発明の目的は、優れた耐熱性を有する積層体、該積層体を含むデバイス、及び該積層体を有するフレキシブル画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、偏光板と、該偏光板の一方の面に積層された前面板とを含む積層体において、該前面板が基材層を含み、かつ前面板の酸素透過度が1300cc/(m2・24h・atm)以下であると、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
【0008】
[1]偏光板と、該偏光板の一方の面に積層された前面板とを含み、該前面板は、基材層を含み、該前面板の酸素透過度は1300cc/(m2・24h・atm)以下である、積層体。
[2]前記前面板はハードコート層を含み、該ハードコート層は、基材層と偏光板との間に配置され、かつ基材層に隣接する、[1]に記載の積層体。[3]前記ハードコート層は、第一の紫外線吸収剤を含有する、[2]に記載の積層体。
[4]前記偏光板は偏光子を含み、該偏光子は、重合性液晶化合物が硬化した層を含む、
[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]前記偏光板は位相差フィルムを含み、該位相差フィルムは、偏光子の前面板側とは反対側に配置され、重合性液晶化合物が硬化した層を含む、[4]に記載の積層体。
[6]前記前面板は、波長430nmにおける吸光度(A430)に対する波長405nmにおける吸光度(A405)の比(A405/A430)が3.00以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]前記前面板は、基材層のハードコート層側とは反対側の面に、ガスバリア層を含む、[2]又は[3]に記載の積層体。
[8]前記基材層及び前記ガスバリア層の少なくとも一方は、第二の紫外線吸収剤を含有する[7]に記載の積層体。
・・・(中略)・・・
[15]タッチセンサを含む、[1]~[14]のいずれかに記載の積層体。
[16]フレキシブル画像表示装置用の、[1]~[15]のいずれかに記載の積層体。
[17][1]~[16]のいずれかに記載の積層体を含む、デバイス。
[18][16]に記載の積層体を有する、フレキシブル画像表示装置。 【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体は、優れた耐熱性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明のデバイスの層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
・・・(中略)・・・
【0039】
基材層の厚みは、用途に応じて適宜調整されるが、例えば10~1000
μm、好ましくは15~500μm、より好ましくは20~400μm、さらに好ましくは25~300μmであってもよい。また、基材層の厚みは、例えば5~1000μm、好ましくは10~500μm、より好ましくは15~200μm、さらに好ましくは20~100μmであってもよい。基材層の厚みが上記範囲であると、屈曲性が良好であり、同時にデバイスの薄型化に有利に寄与することができる。
・・・(中略)・・・
【0064】
重合性液晶化合物が硬化した硬化層を含む偏光子は、例えば、重合性液晶化合物を含む偏光子形成用組成物を、支持体上に形成された配向膜に塗布する工程、活性エネルギー線(例えば紫外線)を塗膜に照射して、重合性液晶化合物を硬化させる工程を経て製造される。また、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させてなる偏光子は、例えば、原反フィルムに対して、一軸延伸する工程、二色性色素でフィルムを染色してその二色性色素を吸着させる工程、ホウ酸水溶液でフィルムを処理する工程、及び、フィルムを水洗する工程が施され、最後に乾燥されて製造される。偏光子の厚みは、通常1~30μmであり、薄膜化の観点から、好ましくは20
μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に10μm以下であり、4μ
m以下であることもできる。
・・・(中略)・・・
【0076】
位相差層の厚みは、0.5μm以上であることが好ましい。また、前記位相差層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。位相差層の厚みが前記下限値以上であると、十分な耐久性が得られる。位相差層の厚みが前記上限値以下であると、円偏光板の薄層化に貢献し得る。位相差層の厚みは、λ/4の位相差を与える層、λ/2の位相差を与える層、又はポジティブC層の所望の面内位相差値、及び厚み方向の位相差値が得られるよう調整し得る。
・・・(中略)・・・
【0078】
粘着剤層は、位相差フィルムの偏光子側とは反対側の面に積層されてもよい。粘着剤層は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等の樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。粘着剤層の厚みは、通常3~30μmであり、好ましくは3~25μmである。
・・・(中略)・・・
【0185】
ガスバリア層の厚みは、ハードコート層及び基材層等の厚みに応じて適宜選択でき、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~30μmである。
・・・(中略)・・・
【0216】
[デバイス]
本発明は、前記積層体を含むデバイスを包含する。本発明のデバイスは、前記積層体の偏光板側を画像表示装置の光学部材、例えば位相差フィルム、表示素子、タッチセンサーフィルム等に積層又は貼合した形態を有する。好ましい態様では、積層体の偏光板側に粘着剤層を配置して、該粘着剤層を光学部材に積層又は貼合することでデバイスを得ることができる。本発明のデバイスは、前記積層体を含むため、優れた耐熱性を有する。さらに、本発明のデバイスは、優れた酸素バリア性と耐候性とを有することもできる。図1は、本発明のデバイスの層構成の一例を示す概略断面図である。図1に示されるデバイス1は、表面側(視認側)から順に、ガスバリア層2/基材層3/ハードコート層4/偏光板5/粘着剤層6/位相差フィルム7という構成を有する。
【0217】
ガスバリア層2、基材層3、ハードコート層4、偏光板5、及び粘着剤層6は、上述のガスバリア層、基材層、ハードコート層、偏光板、及び粘着剤層と同様のものである。位相差フィルム7は、<偏光層>の項に記載の位相差フィルムと同様のものであってもよく、慣用の延伸フィルムであってもよい。
・・・(中略)・・・
【0239】
[1]実施例1
[1-1]ハードコート層形成用組成物の調製
・・・(中略)・・・
【0240】
[1-2]前面板の作製
基材層として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。基材層の厚みは50μmであった。
【0241】
基材層の一方の表面に、ハードコート層形成用組成物Aを塗工し、塗膜を形成した。塗膜を温度80℃で5分間乾燥し、紫外線照射装置(SPOT CURE SP-7、ウシオ電機株式会社製)を用いて、積算光量500mJ/cm2(波長365nm基準)の紫外線を照射してハードコート層を形成した。なお、ハードコート層の厚みは10.0μmであった。このようにして、ハードコート層と基材層とからなる前面板を得た。
・・・(中略)・・・
【符号の説明】
【0280】
1・・・デバイス、2・・・ガスバリア層、3・・・基材層、4・・・ハードコート層、5・・・偏光板、6・・・粘着剤層、7・・・位相差フィルム」
「【図1】
[図:0001395182000065.jpg]
」
イ 技術常識A
上記アにおいて摘記した補助引用例1の記載事項から、次の技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識A」という。)。
<技術常識A>
「フレキシブル画像表示装置を構成する各部材においては、μmオーダーでの薄型化が要請されていること。」
(3) 技術常識Bの認定
ア 補助引用例2に記載された事項
補助引用例2には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(liquid crystal display)又は有機発光表示装置(organic light emitting diode display)等の平板表示装置を用いた薄型表示装置が注目を集めている。特に、これらの薄型表示装置は、タッチスクリーンパネル(touch screen panel)の形で実現され、スマートフォン(smart phone)、タブレット(tablet)PCのみならず、各種のウェアラブル機器(wearable device)に至るまで、携帯性を特徴とする様々なスマート機器(smart device)に広く用いられている。
【0003】
これらの携帯可能なタッチスクリーンパネルをベースとする表示装置は、スクラッチや外部の衝撃からディスプレイパネルを保護するために、ディスプレイパネル上にディスプレイ保護用のウィンドウカバーを備えており、ほとんどの場合、ディスプレイ用強化ガラスをウィンドウカバーとして用いている。ディスプレイ用強化ガラスは、通常のガラスより薄いが、高強度とともに傷に強い特徴がある。
【0004】
しかし、強化ガラスは、重量が大きくて携帯機器の軽量化に適していないだけでなく、外部からの衝撃に脆弱であるため、壊れにくい性質(unbreakable)を実現することが困難であり、また一定水準以上には曲がらない。このため、強化ガラスは、曲げられる(bendable)又は折り畳める(foldable)機能を有するフレキシブル(flexible)ディスプレイの素材としては適していない。
【0005】
最近では、柔軟性及び耐衝撃性を確保するとともに、強化ガラスに相当する強度や耐スクラッチ性を有する光学用プラスチックカバーについて、盛んな検討が行われている。一般に、強化ガラスに比べて柔軟性を有する光学用透明プラスチックカバーの素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)等がある。しかし、これらの高分子プラスチック基板は、ディスプレイ保護用のウィンドウカバーとして用いられる強化ガラスと比較して、硬度及び耐スクラッチ性の面で不十分な物性を示すだけでなく、耐衝撃性も十分ではない。このため、これらのプラスチック基板に複合樹脂組成物をコートすることにより、要求される物性を補完しようとする様々な試みが行われている。
【0006】
通常のハードコートでは、光硬化型の官能基を含む樹脂と硬化剤、又は硬化触媒、及びその他の添加剤からなる組成物を用いるが、特に、高官能基の複合樹脂の場合、これを光学用プラスチック基材フィルム上にコーティングすることで、硬度及び耐スクラッチ性が向上したディスプレイ保護用ウィンドウとしての使用が可能である。
【0007】
しかし、一般的な光硬化型複合樹脂は、強化ガラスに相当する高硬度を実現し難いだけでなく、硬化時の収縮によるカール(curl)現象が大きく発生し、また柔軟性も十分でないため、フレキシブルディスプレイに適用するための保護用ウィンドウカバーとしては適していない欠点を有する。
・・・(中略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高硬度及び柔軟性を同時に実現できるハードコート層形成用組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記組成物から製造されたハードコート層を備えたハードコートフィルムを提供することを目的とする。
・・・(中略)・・・
【0086】
ハードコート層は、下記数式4で表される剛直性の値が7~12kPa・mmであってもよい。
【0087】
[数式4]
剛直性(kPa・mm)=弾性率(GPa)×層の厚さ(μm)
【0088】
前記数式4で表される剛直性パラメータは、フィルムの硬度及び曲げ特性に影響する弾性率と厚さとの特定の関係を導出したものである。本発明の組成物から形成されたハードコート層は、特定範囲の剛直性の値を示すことで、相反する関係にある硬度及び曲げ特性を同時に向上できる。このため、疲労破壊に対する耐性を大幅に向上させ、フレキシブルディスプレイへの適用を容易にした。
【0089】
本発明によるハードコート層の弾性率は、前記数式4の剛直性関係を満たす範囲内であれば特に限定されないが、例えば1~10Gpa、好ましくは3~6GPaであってもよい。弾性率が前記範囲よりも低いと、硬度を確保しにくく、前記範囲以上であると、折り畳む際に耐久性が低下することがある。前記弾性率は、厚さと同時に適正範囲に調整することにより、数式4の剛直性の値を満たすことができるようになる。
【0090】(後略)」
イ 技術常識B
上記アにおいて摘記した補助引用例2の記載事項から、次の技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識B」という。)。
<技術常識B>
「弾性率と層の厚さの積で表される剛直性パラメータ(剛直性(kPa・mm)=弾性率(GPa)×層の厚さ(μm))は、フィルムの曲げにくさを表す指標となること。」
(4) 周知技術Cの認定
ア 甲3号証に記載された事項
甲3号証には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。
「[0001] 本発明は、粘着剤層、及び、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムを含むフレキシプル画像表示装置用積層体、並びに、前記フレキシブル画像表示装置用積層体が配置されたフレキシブル画像表示装置に関する。」
「[0129] また、本発明のフレキシブル画像表示装置としては、図4に示すように、タッチセンサを構成する透明導電層6が有機EL表示パネル10-1に内蔵されたインセル型のフレキシブル画像表示装置としても使用することが可能である。」
「
[図:0001395182000066.jpg]
[図:0001395182000067.jpg]
」
「
[図:0001395182000068.jpg]
」
上記図4から、「加飾印刷フィルム 13」が「第1の粘着剤層 12-1」に接触して設けられていることが読み取れる。
イ 周知技術C等の認定
上記アにおいて甲3号証の記載事項を摘記して例示したように、次の技術事項は、周知技術であると認められる(以下「周知技術C」という。)。
<周知技術C>
「フレキシブル画像表示装置において、加飾層を粘着剤層と接触するように設けること。」
3 対比・判断
(1) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定
(ア) 本件発明1と甲1発明の対比
請求項1に記載された発明特定事項の記載の順番を考慮しつつ、以下、本件発明1と甲1発明を対比する。
a 甲1発明の「フレキシブルディスプレイ装置」は、本件発明1の「フレキシブル画像表示装置」に相当するから、本件発明1と甲1発明は、「フレキシブル画像表示装置の発明」である点において一致する。
b 甲1発明の「ウインドウ」は、本件発明1の「ウインドウ部材」に相当するから、本件発明1と甲1発明は、「ウインドウ部材を具備する」点において一致する。
c 甲1発明の「偏光板」は、本件発明1の「光学フィルム」である「第1部材」に相当するから、甲1発明において「前記偏光板上に第1粘接着層と同じ物質及び厚さの第2粘着層及びウインドウ基板(ポリイミド系、厚さ:70μm、住友ベークライト社製)が積層され[ている]」ことは、本件発明1において、「第1部材」が「ウインドウ部材に積層」されていることに相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記ウインドウ部材に積層された第1部材を具備する」点において一致する。
d 甲1発明の「タッチセンサ層」及び「表示パネル」は、それぞれ本件発明1の「タッチセンサ」である「第2部材」、及び「パネル部材」を含む「第3A部材」に相当する。
また、甲1発明においては、「前記表示パネル上に」「第1粘接着層が形成され」、「前記第1粘接着層上にタッチセンサ層及び偏光板」が積層され、「前記偏光板上に」「第2粘着層及びウインドウ基板」が積層されていることも踏まえると、甲1発明の「タッチセンサ層」及び「表示パネル」は全体として、本件発明1における「前記ウインドウ部材に、前記第1部材を介して積層された第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を介して積層された第3A部材との積層体」である「第1積層体」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記ウインドウ部材に前記第1部材を介して積層された第1積層体を具備する」点において一致するとともに、「前記第1積層体は、前記ウインドウ部材に、前記第1部材を介して積層された第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を介して積層された第3A部材との積層体」である点においても一致し、さらに「前記フレキシブル画像表示装置が前記第1積層体を備える場合、前記第1部材および前記第2部材の一方は、光学フィルムであり、他方は、タッチセンサであり、前記第3A部材は、少なくともパネル部材を含[む]」点において一致する。
e(a) 本件特許の明細書の段落【0033】から【0034】を参照すると、次のように記載されている。
「 各粘着部材の25℃における貯蔵弾性率は、通常、10MPa以下であり、3MPa以下または2MPa以下であってもよく、1.5MPa以下であってもよい。・・・(中略)・・・
一方、接着部材の25℃における貯蔵弾性率は、10MPaより大きく、100MPa以上であってもよく、通常、1GPa程度である。本明細書中、接着部材とは、このような貯蔵弾性率を有するものを意味するものとする。
このように、粘着部材は、接着部材とは貯蔵弾性率により区別される。」
(b) 甲1発明における「第1粘接着層」及び「第2粘接着層」は、いずれも、「(貯蔵)弾性率が5MPaである」から、本件発明の「粘着部材」であるということができる。したがって、本件発明1と甲1発明は、「複数層の粘着部材を具備する」点において一致する。
(c) 上記b及び前記a~eにおける検討結果も踏まえると、甲1発明の「前記表示パネル上に」形成された「第1粘接着層」であって、その上に「タッチセンサ層」が積層された「第1粘接着層」は、本件発明1の「複数層の粘着部材」のうちの、「前記第2部材と前記第3A部材との間に配置される」「層」に相当する。
また、甲1発明における「前記偏光板」と「ウインドウ基板」の間に積層された「第2粘着層」は、本件発明1の「複数層の粘着部材」のうちの、「前記ウインドウ部材と前記第1部材との間」に「配置される」「層」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間および前記第2部材と前記第3A部材との間に配置される2層を含[む]」点において共通する。
(イ) 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点
上記アの検討結果をまとめると、本件発明1と甲1発明は、次の「本件発明1と甲1発明の一致点」の点において一致し、後記の「相違点1」及び「相違点2」の点において相違する。
<本件発明1と甲1発明の一致点>
「ウインドウ部材と、
前記ウインドウ部材に積層された第1部材と、
前記ウインドウ部材に前記第1部材を介して積層された第1積層体と、
複数層の粘着部材と、を具備するフレキシブル画像表示装置であって、
前記第1積層体は、前記ウインドウ部材に、前記第1部材を介して積層された第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を介して積層された第3A部材との積層体であり、
前記フレキシブル画像表示装置が前記第1積層体を備える場合、
前記第1部材および前記第2部材の一方は、光学フィルムであり、他方は、タッチセンサであり、
前記第3A部材は、少なくともパネル部材を含み、
前記複数層の粘着部材は、少なくとも、前記ウインドウ部材と前記第1部材との間、前記第2部材と前記第3A部材との間に配置される2層を含む、フレキシブル画像表示装置」である点。
<相違点1>
「粘着部材」について、
本件発明においては、「前記第1部材と前記第2部材との間」に配置される「粘着部材」を含むのに対して、
甲1発明においては、それぞれ本件発明1の「第1部材」と「第2部材」に相当する「偏光板」と「タッチセンサ層」の間に配置される粘着部材を備えておらず、
複数層の粘着部材の各層について、
本件発明1においては、「厚みが、15μm以下の条件を満た[し]」、「JIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における貯蔵弾性率は、3MPa以下であ[る]」のに対して、
甲1発明においては、「第1及び第2粘接着層は、いずれも、「厚さが16μmであり」、「弾性率が5MPaである」点。
<相違点2>
本件発明1においては、「前記ウインドウ部材の引張弾性率(GPa)をE0とし、前記ウインドウ部材の厚み(mm)をT0とするとき、E0×T0は、前記ウインドウ部材側のJIS K 5600-5-4:1999に規定される鉛筆硬度を規制するとともに、E0×T0≦0.32であ[る]」のに対して、
甲1発明においては、ウインドウの厚みT0は70[μm]であるが、引張弾性率E0は不明である点。
イ 相違点についての評価
(ア) 相違点1について
a 甲1号証の段落[0105]及び図5には、タッチセンサと偏光版の間に第3粘接着層を設けることが記載されている。
したがって、甲1発明において、タッチセンサと偏光版の間に第3粘接着層を備えるようにすることは、当業者にとっては自明のことであるから、「前記第1部材と前記第2部材との間」に配置される「粘着部材」を含むことは、格別のものではない。
b(a) 甲1号証の段落[0101]には、各粘接着層の厚さについて、少なくとも約10~100μmの範囲内において限定されることなく選択可能である旨が記載されている。
ここで、フレキシブル画像表示装置を構成する各部材においては、μmオーダーでの薄型化が要請されている」(技術常識A(前記2(2)イ参照))ことを踏まえると、各粘接着層(タッチセンサと偏光版の間に第3粘接着層が設けられる場合には当然これを含む。)をできるだけ薄くすることを試みることが強く期待されるから、各粘接着層の厚みを、甲1号証の前記段落[0101]で示唆された10~100μmの範囲内のうちの最小の値である10μmとすることは、当業者が試みることに強い動機があるといえる。
(b) 甲1号証の段落[0130]には「表1を参照すると、約0.02~50MPa範囲の粘接着層BAMを有する実施例の場合、比較例に比べて屈曲によるクラック個数が顕著に減少した。約0.2~10MPa範囲の粘接着層BAMを有する実施例3及び4の場合には、実質的にクラックは観察されなかった。」と記載されており、BAMの値が0.2~10[MPa]の範囲であると、最もクラックの発生を防止できることが理解できるから、好ましくは、BAMの値を0.2~10[MPa]の範囲にすべきことが理解でき、強く動機付けられると認められる。
前記(a)に従って各粘接着層の厚みを、10μmにすると、「粘接着層厚さの割合」={(10×3)÷(120+100+70+10×3)}=0.094となる。
「屈曲粘着剤係数(BAM) = 粘接着層貯蔵弾性率/粘接着層厚さの割合」の式を変形すると、粘接着層貯蔵弾性率 = BAM× 接着層厚さの割合 である。この式に、「粘接着層厚さの割合」=0.094を代入してBAMの値が0.2~10[MPa]となる「粘接着層貯蔵弾性率」の値の範囲を求めると、0.019~0.94[MPa]となる。
(c) また、甲1号証の段落[0101]には、各粘接着層の貯蔵弾性率について、少なくとも約0.01~5MPaの範囲内において限定されることなく選択可能である旨が記載されている。
(d) 以上のとおりであるから、甲1発明において、各粘接着層の厚みを10μmとし、「粘接着層貯蔵弾性率」の値の範囲を0.019~0.94[MPa]とすることは、当業者が強く動機付けられるものであり、容易に想到し得たことである。
そして、この場合、複数層の粘着部材の各層について、「厚みが、15μm以下の条件を満た[し]」、かつ、「JIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における貯蔵弾性率」での「3MPa以下」という条件を満たすことは明らかである。
c 以上のとおりであるから、相違点1は、格別のものではなく、甲1発明、甲1号証に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(イ) 相違点2について
a 甲1号証の段落[0102]には、「例えば、ウインドウ(300)の厚さは約30~150μmであり、弾性率は約1~8GPaの範囲であることができる。」と記載されている。
b ここで、「弾性率と層の厚さの積で表される剛直性パラメータ(剛直性(kPa・mm)=弾性率(GPa)×層の厚さ(μm))は、フィルムの曲げにくさを表す指標となること」は、技術常識である(技術常識B(前記2(3)イ参照))。
c 甲1発明を追試等により実施しようとする当業者は、その実施をするに当たり、ウインドウ基板の材料を選択し、引張弾性率のパラメータを選択しなければならないところ、前記技術常識Bも踏まえると、甲第1号証の段落[0102]におけるウインドウ(300)の厚さとして、最小値の30μmを選択するときには、弾性率はその最大値の8GPaを選択し、逆にウインドウ(300)の厚さとして最大値の150μmを選択するときには、弾性率は最小値の1GPaを選択することは、容易に推論のできることである。
30[μm](0.03[mm])と8[GPa]のときは、「E0×T0」=0.24であり、150[μm](0.15[mm])と1[GPa]のときは、「E0×T0」=0.15であり、いずれも0.32未満の値となる。ここで、後者の組合せのときには、「E0×T0」は小さい値であるが、甲1の段落[0047]を参照するとハードコート層を備えて対応することがうかがえる(「ウインドウ(300)は、前記基材層の少なくとも一面上に形成されたハードコート層を更に含むこともできる。前記ハードコート層は、例えば、光硬化性化合物、光開始剤及び溶剤を含むハードコート組成物を用いて形成され、これにより、ウインドウ(300)の優れた柔軟性、耐磨耗性、表面硬度を追加的に確保することができる。」と記載されている)。
してみれば、甲1発明において、厚さ70[μm]のポリイミド系のウインドウ基板の材料として、「E0×T0」=0.24程度の値となるように、「0.24/0.07=3.4[GPa]」である材料を選択して、「E0×T0≦0.32」の条件を満たすようにすることは、当業者が通常試みるところである。
d なお、「前記ウインドウ部材側のJIS K 5600-5-4:1999に規定される鉛筆硬度を規制する」は、本件特許発明の構成を充足することに起因する作用であるから、引用発明においても、「E0×T0≦0.32」の条件を満たすように材料を選択した結果として当然に奏される作用であると認められる。
e 以上のとおりであるから、相違点2は、格別のものではなく、甲1発明、甲1号証に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(ウ) 相違点についてのまとめ
以上検討のとおり、相違点1及び相違点2は、甲1発明、甲1号証に記載の事項及び技術常識から、当業者が十分に動機付けられるものであり、その結果、ウインドウ部材側の鉛筆硬度が十分に得られることは、付随的な効果にすぎないというべきであり、また、容易に確認することができるものでもあると認められる。
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲1号証に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 特許権者の主張について
(ア) 主張その1(相違点1の粘着部材厚みについての反論)
a 主張その1の内容
特許権者は、令和4年7月20日に提出した意見書において、次の主張をしている(当該意見書の(2-4)参照)。
審判官の判断は、「技術常識A」を踏まえると「第3粘接着層としてもできるだけ薄くすることを試みることが強く期待されるから、第3粘接着層の厚みも、第1及び第2の粘接着層と同じ16μmを選択することが期待される。」というものである。
しかし、当業者が、表1の実施例6の結果を見て、比較例2の15μm(最もクラック数が多い)に極めて近い厚さ16μmを採用することを動機づけられるとする判断には承服できない。表1の結果は、むしろ、第3粘接着層の厚さを16μm以下にすることを阻害する内容であるといえる。ましてや、訂正特許請求の範囲の請求項1に係る本件発明1は、表1で最悪の結果を示している比較例2と同じく、15μmもしくはそれ以下の厚さを規定している。
さらに、3層全ての粘接着層を16μmにすることで、実施例6相当以上の、より良い結果が予測できる状況でもない。なぜなら、甲1号証は、BAMが0.02~50MPaの範囲内であっても、粘接着層の厚さを小さくしていくと、クラック数が多くなる明確な傾向を示しているからである。むしろ、3層中、1層でもより厚く(例えば実施例3、4のように50μm)にして、BAMを小さくする方向に動機づけられるものといえる。
b 主張その1についての検討
前記イ(ア)b(a)において検討したように、そもそも甲1号証においては、各粘接着層の厚さについて、少なくとも約10~100μmの範囲内において限定されることなく選択可能である旨が記載されている。したがって、各粘接着層の厚さを15μm以下とすることを含め検討することについては、甲1号証自体により動機づけされているといえ、特許権者の前記主張は認められない。
また、特許権者は、「当業者が、表1の実施例6の結果を見て、比較例2の15μm(最もクラック数が多い)に極めて近い厚さ16μmを採用することを動機づけられるとする判断には承服できない。表1の結果は、むしろ、第3粘接着層の厚さを16μm以下にすることを阻害する内容であるといえる。」と主張しているが、甲1号証に記載されているのは「屈曲粘着剤係数(BAM)= 粘接着層貯蔵弾性率/粘接着層厚さの割合(粘接着層厚さの割合は、前記フレキシブル表示装置の全体厚さに対する粘接着層の全厚さの割合)」がクラック数に影響を与えているという技術思想であるから、厚さだけを論じる特許権者の主張は、甲1号証に記載された技術事項の正しい理解であるとはいえない。
さらに、甲1号証においてBAMが所定の範囲内であっても、粘接着層の厚さを小さくしていくと、クラック数が多くなる明確な傾向を示しているので、粘接着層を厚くする動機づけがある、とも主張されているが、甲1号証の[表1]において各実施例の数値を見ると、厚さが最大の100μmである実施例1のクラック個数が10であるのに対し、厚さが最小の16μmである実施例6のクラック個数も同数の10となっており、当該主張は根拠のないものといわざるを得ない。
以上のとおりであるから、主張その1は採用することができない。
(イ) 主張その2(相違点1の弾性率についての反論)
a 主張その2の内容
特許権者は、令和4年7月20日に提出した意見書において、次の主張をしている(当該意見書の(2-4)参照)。
審判官の判断は、甲1発明において、例えば、BAMの値を一桁小さくするために、粘接着層の(貯蔵)弾性率の値を5MPaから0.5MPaに変更することは、当業者にとっては、ごく自然の選択にすぎない、というものである。
しかし、表1では、粘接着層の厚さが小さいほど、弾性率には大きい値が採用されており、両者には、概ね、反比例の関係性がある。その傾向に反して、実施例6の5MPaを0.5MPaに極端に小さくすることを動機づけられるとは考えられない。
審判官は、甲1号証の[0130]の「約0.2~10MPa範囲の粘接着層BAMを有する実施例3及び4の場合には、実質的にクラックは観察されなかった。」という記載を参照して、「BAMの値が0.2~10[MPa]の範囲であると、最もクラックの発生を防止できることが理解できるから、実施例6に相当する甲1発明を出発点とするとき、BAMの値をより小さくすべきことが理解できる。(甲1発明において、厚さが16[μm]の第3粘接着層を備えるようにすると、BAM=35.2[MPa]である。)」とも判断している。
しかしながら、甲1号証(の表1)は、BAMの値が0.2~10[MPa]の範囲であれば、常に良好な結果が得られることを示しているとは解釈できない。BAMに直接影響を与える2つのパラメータである弾性率と厚さの傾向を無視して、「BAMの値が0.2~10[MPa]の範囲であると、最もクラックの発生を防止できることが理解できるから・・・」という判断をすることは妥当ではない。また、記述のように、実施例6に相当する甲1発明を出発点とすること自体を、そもそも当業者は動機づけられない。さらに、「・・・実施例6に相当する甲1発明を出発点とするとき、BAMの値をより小さくすべきことが理解できる。(甲1発明において、厚さが16[μm]の第3粘接着層を備えるようにすると、BAM=35.2[MPa]である。)」との言及は、甲1発明そのものの解釈を離れ、厚さ16[μm]の第3粘接着層を備えさせた発明を事後的に成立させているともいえ、後知恵が排除されていないのではないかと思量する。
甲1号証(の表1)は、実施例6に相当する甲1発明を出発点とし、BAMの値を小さくして0.2~10MPaに近づけるならば、明らかに、弾性率を小さくしながら、厚さを大きくすべきことを示している。それぞれ単独で、弾性率のみを小さくしたり、粘接着層の厚さの割合だけを大きくしたりすべきことは、甲1号証から読み取れない。
そして、再度述べるが、本件発明1及び12においては、複数層の粘着部材の各層の厚みを15μm以下に限定している。甲1号証では、第1、第2粘接着層の厚みが15μmの比較例2では、厚みが16μmの実施例6に比べてクラック数が大幅に増加し、甲1号証で意図する効果が得られなくなる。そのため、甲1号証には、複数層の粘着部材の各層の厚みを15μm以下とすることについて、阻害要因が存在することは明白である。
b 主張その2についての検討
前記イ(ア)b(c)において指摘したとおり、そもそも甲1号証においては、各粘接着層の貯蔵弾性率について、少なくとも約0.01~5MPaの範囲内において限定されることなく選択可能である旨が記載されている。したがって、各粘接着層の貯蔵弾性率を3MPa以下とすることを含め検討することについては、甲1号証自体により動機づけされているといえ、前記主張は認められない。
また、粘接着層の厚さと弾性率に概ね反比例の関係性があることを前提とした主張を展開しているが、甲1号証において示されているのは、屈曲粘着剤係数(BAM)= 粘接着層貯蔵弾性率/粘接着層厚さの割合という関係のみである。そしてこのBAMを定義する関係式を見れば、BAMを一定に保ちながら粘接着層の厚さと弾性率の双方を増加させ得ることは自明である。甲1号証の段落[0101]の「第1及び第2の粘接着層(50、90)のそれぞれの貯蔵弾性率及び厚さは、前記BAMの範囲内で調節されることができ、特に限定されるものではない。例えば、第1及び第2の粘接着層(50,90)それぞれの厚さは、約10~100μm、貯蔵弾性率は、約0.01~5MPaであってもよい。」なる記載を見ても、貯蔵弾性率及び厚さの調節に関し、BAMのみを制限として、それ以外に限定されることなく選択可能である旨が記載されている。したがって、両者に反比例の関係性があることを前提とした主張は、いずれも根拠のないものといわざるを得ない。
また、前記段落[0101]の記載から、甲1号証において「15μm以下」という値が、粘着部材の各層の厚みを選択する際に検討すべき数値範囲内の値とされていることは明らかであって、粘着部材の各層の厚みを15μm以下とすることに阻害要因が存在するという前記主張を認める余地はない。
なお、本件発明1の進歩性を検討するに際し、甲1号証に実施例として開示された発明を出発点として検討できることは当然である。また、第3粘接着層を備える点に関しては、前記イ(ア)aにおいて検討したとおり、自明のことである。
以上のとおりであるから、主張その2は採用することができない。
(ウ) 主張その3(相違点1の粘着部材厚みについての反論)
a 主張その3の内容
特許権者は、令和4年3月7日に提出した意見書において、次の主張をしている(当該意見書の(4-3)ア参照)。
補助引用例1には、画像表示装置の薄型化の要求が高まっていること、偏光板や位相差板などの積層体を構成する部材に対しても薄型化が要求されていることが教示されている(段落【0003】)。補助引用例1の各部材の厚さに関する記載が技術常識Aの根拠の一部とされているが、薄型化に有利に寄与する基材層の厚みは10~1000μmといった範囲であり(段落【0039】)、薄型化の観点から偏光板の厚みは20μm以下が好ましいこと(段落【0064】)、位相差板の厚みが10μm以下であると円偏光板の薄型化に貢献し得ること(段落【0076】)が教示されている。しかし、粘着剤層及びガスバリア層については、薄型化と関連する教示はなく、単に、粘着剤層について、通常3~30μm(好ましくは3~25μm)の範囲、ガスバリア層について好ましくは1~50μm(2~30μm)の範囲が記載されているだけである(段落【0078】【0185】)。そもそも、補助引用例1は、フレキシブル画像表示装置に含まれる積層体の優れた耐熱性を確保することが目的であり(【0006】)、偏光板の一方の面に積層される前面板の酸素透過度を1300cc/(m2・24h・atm)以下にすることが特徴である(請求項1)。ガスバリア層の厚みは、大きい方が、酸素透過度が低くなる。そのため、補助引用例1には、薄型化の観点から粘着剤層やガスバリア層の厚さを必要以上に小さくするといった思想はないものと思量する。また、薄型化に有利な基材の厚みは10μm~1000μmと非常に幅広い範囲であり、偏光板や位相差板の厚みの上限も記載されているが、これらの記載から、1μmオーダーの薄型化が求められているのか、20μmオーダーや100μmオーダーの薄型化が求められているのか、何ら把握することはできない。また、これらの部材は、粘着剤層とは無関係である。そのため、補助引用例1からは、「第3粘接着層の厚みも、第1及び第2の粘接着層と同じ16μmを選択することが期待される。」とはいえないものと思量する。
一方、甲1号証は、フレキシブルディスプレイ装置の柔軟性及び機械的信頼性を向上する目的で(段落[0008])、ディスプレイパネルと機能性構造物との間に第1粘接着層を設け、機能性構造物とウィンドウとの間に第2粘接着層を設け、これらの粘接着層が0.02~50MPaのBAMを有することが特徴である(請求項1)。実施例では、第1、第2粘接着層の厚さが50μmのときが、クラックがなく最も優れた結果を示し、厚さが大きく(例えば、100μmに)なっても、小さく(仮に、25μmまたは16μmに)なっても、クラック数は増加する。そのため、甲1号証において、クラック数を減らす観点からは、第1、第2粘接着層の表1の結果を参照すると、第3粘接着層の厚さは、16μmや100μmよりも、50μmを選択する方が有利である。そのため、「第3粘接着層の厚みも、第1及び第2の粘接着層と同じ16μmを選択することが期待される。」ともいえないものと思量する。
甲1号証および補助引用例1のいずれにも、3層の粘着部材の全ての厚みが18μm以下であることによる有利な効果について何ら教示されていない。
したがって、これらの引用発明からは、相違点1を容易に想到することはできない。
b 主張その3についての検討
表示装置全体の薄型化が要求されている以上、装置の構成要素の全てに関して薄型化の検討を行うべきことは当然といえる。そして粘着部材が複数設けられる場合には、そのいずれについても薄型化を検討する必要があることも明らかである。
また、特許権者は、「甲1号証において、クラック数を減らす観点からは、第1、第2粘接着層の表1の結果を参照すると、第3粘接着層の厚さは、16μmや100μmよりも、50μmを選択する方が有利である」と主張しているが、この点に関しては、前記(ア)bで検討したように、甲1号証に記載されているものはBAMがクラック数に影響を与えているという技術思想であって、厚さだけを論じる特許権者の主張は、甲1号証に記載された技術事項の正しい理解であるとはいえない。
以上のとおりであるから、主張その3は前記イ(ア)の結論を左右するものではない。
(エ) 主張その4(相違点1の弾性率についての反論)
a 主張その4の内容
特許権者は、令和4年3月7日に提出した意見書において、次の主張をしている(当該意見書の(4-3)イ参照)。
甲1号証の段落[0102]には、ウインドウ(300)の弾性率が約1ないし8GPaの範囲であることが記載されているが、この弾性率は、引張弾性率であるのか、曲げ弾性率であるのか、弾性率の種類については具体的に記載されていない。したがって、甲1号証に記載の発明を実施しようとする当業者は、実施に当たり、ウインドウ基板の引張弾性率のパラメータを選択しなければならないかどうかは、甲1号証からは把握することはできない。
仮に、甲1号証の段落[0102]に記載の弾性率が引張弾性率であるとしても、ウインドウの厚さとして、約300~150μmの範囲が記載され、弾性率として、約1~8GPaの範囲が記載されているときに、30μm(=0.03mm)×1GPaから150μm(=0.15mm)×8GPaの範囲のいずれの値を選択することにも優劣はない。つまり、最小値の厚さ30mを選択するときに弾性率として最大値の8GPaを選択し、最大値の厚さ150mを選択するときに弾性率として最小値の1GPaを選択する動機付けは、補助引用例2だけでなく、甲1号証にもない。したがって、0.32GPa・mm以下の範囲を選択する動機付けは甲1号証にはない。 また、補助引用例2では、ハードコート層の剛直性(kPa・mm)を弾性率(GPa)×層の厚さ(μm)で表し、相反する関係にある硬度及び曲げ特性を同時に向上できる範囲として、7~12kPa・mmの範囲を教示している(段落[0086]~[0088])。つまり、上記の剛直性は、硬化物であるハードコート層の曲げにくさを表す指標であるかもしれないが、ウインドウ部材やフィルム全般の曲げにくさを表す指標とはいえず、補助引用例2からは、技術常識Bが導き出されるわけではないものと思量する。 また、補助引用例2では、ハードコート層の厚さとして5~100μmの範囲が記載され、弾性率として1~10GPaの範囲が記載されている。これらの範囲から、最小値の厚さ5μm(0.005mm)を選択するときに、弾性率として最大値のl0GPa(10×106kPa)を選択し、最大値の厚さ100μm(0.1mm)を選択するときに、弾性率として最小値の1GPa(1×106kPa)を選択すると、剛直性の範囲は、50×103kPa・mm~100×103kPa・mmとなる。補助引用例2で効果が得られるとされている剛直性の範囲7~12kPa・mmと大きく外れている。なお、補助引用例2の実施例では、剛直性の単位はkPa・mm3となっており、ハードコート層の厚さ20mと表3や表4の弾性率とから剛直性の式によって算出される値との関係が不明である。このような補助引用例2の教示から、仮に、補助引用例2のハードコート層の剛直性がハードコート層だけでなく「フィルム全般の曲げにくさを表す指標」を示しているとしても、ウインドウの厚さの最小値を選択するときには、弾性率は最大値を選択し、逆に厚さの最大値を選択するときには、弾性率は最小値を選択することは、少なくとも補助引用例2からは容易に推論できないと思量する。
b 主張その4についての検討
フィルム材の弾性率を示す値として引張弾性率は代表的なものであるから、他のものであることの明示がない甲1号証のウインドウ弾性率は引張弾性率であると考えるのが通常である。
また、剛直性パラメータを特定の値に設定した場合、厚さを大とすれば弾性率を小とする必要があることは自明である。そして、比較的曲げやすいものでも厚くなれば曲げにくくなり、比較的曲げにくいものでも薄くなれば曲げやすくなることは、当業者ならずとも、一般人でさえ理解しているものであり、技術常識Bは、これを数式で表現しただけのものである。してみれば、曲げやすさの観点では、「最小の厚さと最大の弾性率」又は「最大の厚さと最小の弾性率」の組合せといったものは、当業者が通常検討すべき範囲内のものであるといえる。
以上のとおりであるから、主張その4は前記イ(イ)の結論を左右するものではない。
(オ) 主張その5(相違点の看過について)
a 主張その5の内容
特許権者は、令和4年3月7日に提出した意見書において、次の主張をしている(当該意見書の(4-3)ハ参照)。
甲1号証の実施例6及び比較例2では、第1、第2粘接着層の厚みが、16μm及び15μmとなっています。そして、第1、第2粘接着層の硬化度及び厚みを調節することで貯蔵弾性率を変更したことが記載されており(段落【0119】【0120】)、粘接着層の厚みが大きな例に比較すると5MPaや5.5MPaの大きな貯蔵弾性率を有している(表1)。本件特許と甲1号証では貯蔵弾性率の測定方法が異なるため、一概に数値を比較できないが、硬化度を調節していることから、少なくとも実施例6や比較例2の粘接着層では、硬化性の材料がある程度硬化した状態であるといえる。 つまり、甲1号証には、本件特許明細書の【0020】に記載されるように流動性を有するような粘着部材で複数層の粘着部材の各層を構成するとともに、各層の厚みを18μm以下とすることは記載されていない。
特に、発明1及び12における「前記複数層の粘着部材の各層のJIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における貯蔵弾性率は、3MPa以下であり」、かつ「前記複数層の粘着部材の各層の厚みが、18μm以下の条件を満たす」ことは、甲1号証には記載されていない。 そもそも、硬化した硬化性材料(接着部材)を介して構成部材が接着されている場合には、視認側の表面において鉛筆硬度が低下する課題が生じない。
甲1号証の表1に示されるように、貯蔵弾性率は、粘接着層の厚さが小さくなるほど大きくなる傾向があるので、粘接着層の厚さが16μmや15μmといった小さな値の場合には、粘接着層は少なくともある程度は硬化した状態であるといえる。
したがって、補助引用例1、2及び甲3号証の技術常識を参照したとしても、甲1号証からは、流動性を有するような粘着部材の(特に、上記の貯蔵弾性率が3MPa以下である)複数層の各層の厚みを18μm以下とすることを導き出すことは困難である。
b 主張その5についての検討
本件特許の明細書の段落【0032】から【0034】までには、次の記載がある。なお、下線は合議体による。
「【0032】
各粘着部材の25℃における貯蔵弾性率は、通常、10MPa以下であり、3MPa以下または2MPa以下であってもよく、1.5MPa以下であってもよい。各粘着部材の25℃における貯蔵弾性率は、好ましくは1MPa以下であり、0.3MPa以下または0.2MPa以下であってもよく、0.15MPa以下または0.1MPa以下であってもよい。粘着部材の貯蔵弾性率がこのような範囲である場合、高い接着性を確保できるとともに、硬化した接着部材の場合とは異なり、押圧による応力を緩和し易く、鉛筆硬度が低下し易い。本発明によれば、フレキシブル画像表示装置が、このように押圧による応力を緩和し易い粘着部材を複数層含む場合でも、粘着部材の各層の厚みを制御することにより高い鉛筆硬度を確保することができる。各粘着部材の25℃における貯蔵弾性率は、0.001MPa以上であってもよく、0.005MPa以上であってもよい。
【0033】
上述した粘着部材の貯蔵弾性率の上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。
【0034】
一方、接着部材の25℃における貯蔵弾性率は、10MPaより大きく、100MPa以上であってもよく、通常、1GPa程度である。本明細書中、接着部材とは、このような貯蔵弾性率を有するものを意味するものとする。
このように、粘着部材は、接着部材とは貯蔵弾性率により区別される。」 本件特許の明細書を参酌すると、貯蔵弾性率が10MPa以下であれば、粘着部材であるところ、甲1号証に記載のものは当該物性値を満たすといえる。そして、貯蔵弾性率としては、常温で測定すべきことは自明である。してみれば、当該物性値を「JIS K 7244-1:1998に準拠して測定される25℃における貯蔵弾性率」とすることの特定がないことをもっては、実質的な相違点とすることはできない。
したがって、主張その5は、前記アからイ(エ)までの検討結果又は結論を左右するものではない。
(カ) 主張その6(課題の新規性、発明の効果の予測困難性・顕著性) a 主張その6の内容
特許権者は、令和4年3月7日に提出した意見書において、次の主張をしている(当該意見書の(4-3)ニ参照)。
フレキシブル画像表示装置では、視認側であるウインドウ部材側の表面には高い耐傷性(鉛筆硬度)が求められる(段落【0018】)。しかし、ウインドウ部材のみでは高い鉛筆硬度が得られる場合でも、他の部材と粘着部材を介して積層してフレキシブル画像表示装置にした場合には、ウインドウ部材側の表面の鉛筆硬度が大きく低下する場合があることが今回明らかとなった(段落【0018】)。
すなわち、同じウインドウ部材を用いる場合でも、ウインドウ部材単独の場合の鉛筆硬度は、4Hと非常に高いにも拘わらず、複数の粘着部材を有するフレキシブル画像表示装置では、F~6Bにまでウインドウ部材側の表面の鉛筆硬度は低下する場合がある(本件明細書の表1のR1~R8、表2のR10~R16)。また、3層の粘着部材のうち2層の厚みが18μm以下でも、残りの1層が18μmを超える場合には、ウインドウ部材側の表面の鉛筆硬度は、B又は5Bと実施例に比べて大きく低下する(表1のR6~R8)。
これは、粘着部材が各部材を貼り合わせた後も高い粘性を有することによるもので、硬化により接着する接着部材の場合にはこのような課題は生じ得ない(段落【0018】)。
本件発明では、ウインドウ部材のコシを表すE0×T0が比較的小さい場合(具体的には、E0×T0≦0.32)に、複数層の粘着部材の各層の厚みを18μm以下とする。これによって、フレキシブル画像表示装置が流動性を有する複数層の粘着部材(特に、上記の貯蔵弾性率が3MPa以下である複数層の粘着部材)を含むにも拘わらず、H以上の高い鉛筆硬度を確保することができる(表1及び表2のE1~E11)。
一方、甲1号証では、ウインドウ部材側の表面において高い鉛筆硬度を確保する重要性について全く着目していない。そして、粘接着層と記載していることからも明らかなように、接着層と粘着層とを同列に考えており、厚さ16μmや15μmの第1、第2粘接着層を有する実施例6や比較例2では、粘接着層の形成に硬化性の材料が使用されており、他の部材と粘着部材を介して積層してフレキシブル画像表示装置にした場合におけるウインドウ部材側の表面における鉛筆硬度の低下について、全く着眼していない。したがって、25℃における貯蔵弾性率が3MPa以下の複数層の粘着部材のそれぞれの厚さを18μm以下とすることと、ウインドウ部材側の表面における高い鉛筆硬度との関係を、甲1号証から把握することは困難であり、甲1号証からは前記のような粘着部材を用いた場合の課題を導き出すことは困難である。
甲1号証、甲3号証、補助引用例1及び2は、いずれも、上記の課題に着眼しておらず、課題が生じるメカニズムや課題を解決するための手段についても何ら教示していないから、上記のような本件発明の効果をこれらの引用文献から予測することは困難である。したがって、本件発明1及び12は進歩性を有する。
b 主張その6についての検討
前記主張その6は、令和4年6月2日付け取消理由通知(決定の予告)で示した相違点1から相違点3までについての想到容易性の論理付けの欠陥等を否定するものではないから、前記主張その6は、本件発明1の概念範囲に含まれるものが甲1発明から想到容易であったとしても、本件発明1は、当該構成のものとして予測が困難であって、かつ、格別に顕著な効果を奏するものであるから、本件発明1は進歩性を有するものとして評価すべきとの主張と解される。
しかしながら、ウインドウ部材のコシを表すE0×T0が0.32以下の比較的小さい場合に、複数層の粘着部材の各層の厚みが18μmを超えるものがあると、ウインドウ層にいくら硬い材料を用いたり、ハードコート層を設けても、F未満の低い鉛筆硬度になってしまうことがあることが、むしろ意外な原因の発見というべきものであり、前記イ(イ)において検討したとおり、粘着層の厚みを10μmとして本件発明1の構成要件を満たしたときに、F以上の鉛筆硬度が得られたことは、むしろ狙ったとおりの結果が得られたというべきものである。
また、仮に、本件発明1が当該構成のものとして予測が困難な効果を奏するとしても、前記イ(イ)において説示したとおり、本件発明1の概念範囲に含まれるものである結果、ウインドウ部材側の鉛筆硬度が十分に得られることは、付随的な効果にすぎないというべきであり、また、容易に確認することができるものでもあると認められるから、特許権者の主張は採用することができない。
エ 本件発明1についての小括
以上検討のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、甲1号証の記載事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
(2) 本件発明2から13までについて
ア 本件発明2について
甲1発明の「偏光板」は、本件発明1の「光学フィルム」である「第1部材」に相当し、また、甲1発明の「タッチセンサ層」は、本件発明1の「タッチセンサ」である「第2部材」に相当する。
したがって、本件発明2は、甲1発明、甲1号証の記載事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
イ 本件発明3~4について
タッチセンサ付きパネル部材の利用や、複数の光学フィルムの利用は、特に例を示すまでもなく画像表示装置一般において周知なものであって、それらの選択は設計事項であるといえる。また、それらの層間に粘着部材が配置されることは当然である。
したがって、本件発明3~4は、甲1発明及び甲1号証の記載事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 本件発明5~7について
フレキシブル画像表示装置において、加飾層を粘着剤層と接触するように設けることは周知技術(周知技術C(前記2(4)イ参照))であって、これを甲1発明に採用することは、当業者が容易になし得たものといえる。また、加飾層をいずれの層の間に配置するかは設計事項であるといえる。
したがって、本件発明5~7は、甲1発明、甲1号証の記載事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
エ 本件発明8について
前記(1)イ(ア)b(a)において検討したように、甲1号証には各粘接着層の厚さについて、少なくとも約10~100μmの範囲内、すなわち3μm以上の範囲内において限定されることなく選択可能である旨が記載されている。
したがって、本件発明8は、甲1発明、甲1号証の記載事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
オ 本件発明9について
請求項9で特定した技術事項は、本件発明1が備える構成に基づく効果を記載しただけのことにすぎないから、本件発明1と同様に、本件発明9の進歩性を認めることはできない(逆に、請求項9で特定した技術事項が、本件発明1が備える構成に基づく効果を記載したものではないときには、請求項1の数値限定等の技術上の意義が不明となり、実施可能要件(委任省令要件を含む)又はサポート要件違反ともなるものである)。
なお、ウインドウ部材の鉛筆硬度試験による硬度をFよりも硬くすべきこと自体は自明の事項である。
したがって、本件発明9は、甲1発明、甲1号証の記載事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
カ 本件発明10について
前記(1)イ(ア)の検討は、本件発明10についても同様に当てはまる。したがって、本件発明10は、甲1発明、甲1号証の記載事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
キ 本件発明11について
甲1号証の段落[0047]には、「ウインドウ(300)は、前記基材層の少なくとも一面上に形成されたハードコート層を更に含むこともできる。」と記載されている。
したがって、本件発明11は、甲1発明、甲1号証の記載事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
ク 本件発明12~13について
本件発明12~13は、実質的に本件発明1~2の「パネル部材」を「第2セパレータ」に置き換えたものであるといえる。パネル部材に貼付ける光学積層体として、貼付面にセパレータを設けることは、特に例を示すまでもなく周知な構成であるから、前記「(1) 本件発明1について」及び「(2)ア 本件発明2について」において説示したのと同様の理由により、本件発明12~13は、甲1発明、甲1号証の記載事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
第5 むすび
以上検討のとおり、本件発明1~13は、甲1発明、甲1号証の記載事項及び技術常識又はこれらと周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明1~13に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1~13に係る特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-700985