2022-700089
ゴム組成物
- 審判番号
- 2022-700089
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-571487外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6934075
- 請求日
- 2022年02月02日
- 審決日
- 2023年02月28日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人池内アンドパートナーズ
- 【異議申立人】藤央弁理士法人
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
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特許第6934075号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、2019年(平成31年)1月30日(優先権主張 2018年(平成30年)2月7日、韓国(KR))を国際出願日とする特許出願(特願2019-571487号、以下「本願」という。)に係るものであって、令和3年8月24日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、同年9月8日である。)
その後、令和4年2月2日に、本件特許の請求項1~6に係る特許に対して、特許異議申立人である特許業務法人藤央特許事務所(その後、令和4年8月16日受理の名称変更の手続により、「藤央弁理士法人」となった。以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
(1)特許異議の申立て後の経緯
令和4年 7月28日付け 取消理由通知
同年10月28日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年11月 7日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛)
同年12月 5日 意見書(申立人)
(2)証拠方法
ア 申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠方法
申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。
イ 特許権者が令和4年10月28日付け意見書に添付して提出した証拠方法
第2 訂正の適否についての判断
令和4年10月28日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。
(以下、「本件訂正」という。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。以下、下線は当審で付与した。)
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「溶解度パラメーターの差が0.82より大きく」を「溶解度パラメーターの差が0.82超過1.00以下であり」へ訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において、「請求項1または2に記載のゴム組成物」を「請求項1に記載のゴム組成物」へ訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物」を「請求項1または3に記載のゴム組成物」へ訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5において、「請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物」を「請求項1、3およぴ4のいずれか一項に記載のゴム組成物」へ訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6において、「請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物」を「請求項1およぴ3~5のいずれか一項に記載のゴム組成物」へ訂正する。
(7)一群の請求項
訂正前の請求項2~6は、それぞれ訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正前の請求項1~6は一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。
2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「溶解度パラメーターの差」について「0.82より大きく」とあったのを、上限を限定し、「0.82超過1.00以下であり」と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1の訂正前の請求項1の「溶解度パラメーターの差」について「0.82より大きく」とあったのを「0.82超過1.00以下であり」と上限を特定する訂正は、本件特許明細書等の段落【0019】及び【0020】にそれぞれ「前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターが0.82超過、1.05以下に差があるものであってよく」、「前記溶解度パラメーターは、・・・0.82超過、1.05以下に差があるものであってよい」と記載され、また、段落【0082】の【表2】には、実施例2の「溶解度パラメーターの差」が「1.00」と記載されていることから、新規事項の追加に当たらず、また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は本件訂正前の請求項2を単に削除するものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2による訂正は、単に特許請求の範囲を削除するものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。
(3)訂正事項3~6について
ア 訂正の目的
訂正事項3~6による訂正は、上記の訂正事項2による訂正前の請求項2の削除に合わせて、本件訂正前の請求項3~6において、引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項3~6は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1~6による請求項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第6934075号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6記載の以下のとおりのものである(以下、請求項1~6に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】第1合成ゴムと第2合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、30重量部から90重量部の第1合成ゴムと、10重量部から70重量部の第2合成ゴムと、続きを表示(全18行)30から200重量部の充填剤とを含み、前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターの差が0.82超過1.00以下であり、前記第1合成ゴムは、スチレン含量が38重量%以上であり、両末端に官能基が結合されている両末端変性溶液重合共役ジエン系ゴムであり、前記第2合成ゴムは、重合体内のシス結合の含量が96重量%以上のブタジェン系ゴムであるゴム組成物。【請求項2】(削除)【請求項3】前記溶液重合共役ジエン系ゴムは、エクステンダー油を0重量%超過、37.5重量%以下の含量で含む、請求項1に記載のゴム組成物。【請求項4】前記充填剤は、シリカである、請求項1または3に記載のゴム組成物。【請求項5】前記ゴム組成物は、加硫剤を含む、請求項1、3および4のいずれか一項に記載のゴム組成物。【請求項6】請求項1および3~5のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて製造されたタイヤ。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が令和4年7月28日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)取消理由A(新規性)
本件訂正前の請求項1~2、4~6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)取消理由B(進歩性)
本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立て理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~2、4~6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)申立理由B(進歩性)
本件訂正前の請求項3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
第5 本件明細書、甲第1~3号証、乙第1号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(本a)「【技術分野】
・・・
【0002】
本発明は、ゴム成分間の相溶性を調節して、耐磨耗性に優れつつも引張特性及び粘弾性特性が改善されたゴム組成物、及びこれを用いて製造されたタイヤに関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するために案出されたものであり、ゴム成分間の相溶性を調節して、耐磨耗性に優れつつも引張特性及び粘弾性特性が改善されたゴム組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明によるゴム組成物は、第1合成ゴム及び第2合成ゴムの異種ゴム成分を含み、且つ、互いに溶解度パラメーターが特定範囲で差があるように第1合成ゴムと第2合成ゴムを選択して含むことで、ゴム間の相溶性を調節でき、このため、耐磨耗性に優れつつ引張特性及び粘弾性特性が改善され得る。」
(本b)「【0016】
本発明において用いられる用語「溶解度パラメーター(solubility parameter、δ)」は、物質の混合の尺度となる物質の特定値を示すものであり、公知された溶解度パラメーター計算式(RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY:November 1996,Vol.69,No.5,pp.769-780)である下記数式1によって計算した。
【0017】
[数式1]
δ=17.17+0.0272(スチレン重量%)-0.0069(ビニル重量%)
本発明は、耐磨耗性に優れつつも引張特性及び粘弾性特性が改善されたゴム組成物を提供する。
【0018】
本発明の一実施形態による前記ゴム組成物は、第1合成ゴムと第2合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、30重量部から90重量部の第1合成ゴムと、10重量部から70重量部の第2合成ゴムと、30重量部から200重量部の充填剤とを含み、前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターが0.82を超過して差があるものであり、前記第1合成ゴムは、スチレン含量が38重量%以上であり、両末端に官能基が結合されている両末端変性ゴムであることを特徴とする。
【0019】
具体的に、前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターが0.82超過、1.05以下に差があるものであってよく、前記溶解度パラメーターが前記範囲を有する場合には、第1合成ゴムと第2合成ゴム間の相分離が容易であるため、優秀な濡れた路面の抵抗性(制動性能)及び耐磨耗性を有し得る。
【0020】
具体的に、前記溶解度パラメーターが0.82以下に差がある場合には、第1合成ゴムと第2合成ゴム間の相分離が抑制されて濡れた路面の抵抗性(制動性能)が低下し得る。一方、前記溶解度パラメーターは、0.82を超過して差がある場合であれば目的とする効果は達成できるが、より好ましい効果のために、0.82超過、1.05以下に差があるものであってよい。もし、前記溶解度パラメーターが1.05を超過して差がある場合には、第1合成ゴムと第2合成ゴム間の相分離が過度に起こり、むしろ耐磨耗性(若しくはティア(tear)性能)が低下する問題が発生し得る。
【0021】
本発明の一実施形態による前記ゴム組成物は、第1合成ゴム及び第2合成ゴムの異種ゴム成分を含み、且つ、互いに溶解度パラメーターが特定範囲で差があるように第1合成ゴムと第2合成ゴムを選択して含むことで、前記ゴム成分間の相溶性を調節でき、このため、第1合成ゴムと第2合成ゴムそれぞれが有する物性を同時に発現することができ、結果的に耐磨耗性に優れつつ引張特性及び粘弾性特性が改善され得る。」
(本c)「【0023】
[第1合成ゴム]
本発明の一実施形態において、前記第1合成ゴムは、溶液重合共役ジエン系ゴムのものであってよく、具体的には、前記第1合成ゴムは両末端に官能基が結合されている両末端変性ゴムのものであってよい。
【0024】
具体的に、前記第1合成ゴムは、溶液重合共役ジエン系ゴムであり、このとき、溶液重合共役ジエン系ゴムは芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位及び共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含み、両末端に官能基が結合されている共重合体であってよく、スチレン含量が38重量%以上、より具体的にはスチレン含量が38重量%以上、55重量%以下のものであってよく、さらに具体的にはスチレン含量が38重量%以上、45重量%以下のものであってよく、前記溶液重合共役ジエン系ゴムが前記のスチレン含量を有する場合、転がり抵抗、濡れた路面の抵抗性及び低燃費性に優れた効果がある。
【0025】
また、前記溶液重合共役ジエン系ゴムは、エクステンダー油を含むものであってよく、この場合、前記溶液重合共役ジエン系ゴムは、エクステンダー油含量が0重量%超過、37.5重量%以下のものであってよい。
【0026】
また、前記溶液重合共役ジエン系ゴムは、ビニル含量が10重量%以上、10重量%から40重量%、又は20重量%から40重量%であってよく、この範囲内で硝子転移温度が適切な範囲に調節され得るため、転がり抵抗、濡れた路面の抵抗性及び低燃費性に優れた効果がある。ここで、前記ビニル含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体でなる共役ジエン系共重合体100重量%に対して、1,4-添加ではない1,2-添加された共役ジエン系単量体の含量を意味してよい。」
(本d)「【0048】
[第2合成ゴム]
本発明の一実施形態において、前記第2合成ゴムは、ブタジエン系ゴムであってよく、具体的には、重合体内のシス(cis)結合の含量が96重量%以上のブタジエン系ゴムのものであってよい。
【0049】
また、前記ポリブタジエン系ゴムは、ビニル結合の含量が50重量%以下のものであってよく、具体的には、重合体内のシス結合の含量が96重量%以上であり、ビニル含量が40重量%以下のものであってよい。ここで、前記シス結合及びビニル結合は、フーリエ変換赤外分光法で測定したものである。
【0050】
一方、前記ブタジエン系ゴムは、希土類金属触媒、遷移金属触媒又はアルカリ金属触媒等を用いて、共役ジエン系単量体を重合して製造されたものであってよく、ここで、共役ジエン系単量体は前述した通りである。」
(本e)「【0052】
[充填剤]
本発明の一実施形態において、前記充填剤は、ゴム成分と混合されゴム組成物の物性を改善させる役割をするものであり、具体的にはシリカであってよい。
・・・
【0054】
一方、本発明の一実施形態による前記ゴム組成物は、前述したゴム成分以外に必要に応じて他のゴム成分をさらに含んでよく、このとき、前記他のゴム成分は、ゴム組成物の全体重量に対して90重量%以下の含量で含まれてよい。
【0055】
前記他のゴム成分は、一例として、天然ゴム又は合成ゴムであってよく、具体的な例として、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR)と、前記一般的な天然ゴムを変性又は精製したエポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴム等の変性天然ゴムと、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のような合成ゴムであってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0056】
また、本発明の一実施形態によるゴム組成物は、硫黄架橋性であってよく、これによって加硫剤をさらに含んでよい。
【0057】
前記加硫剤は、具体的に硫黄粉末であってよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部から10重量部で含まれてよく、この範囲内で加硫ゴム組成物の必要な弾性率及び強度を確保するとともに、低燃費性に優れた効果がある。
【0058】
また、本発明の一実施形態によるゴム組成物は、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性及び低発熱性の改善のためのシランカップリング剤が共に用いられてよく、具体的な例として、前記シランカップリング剤は、・・・等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。好ましくは、補強性改善効果を考慮する際、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド又は3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってよい。
【0059】
本発明の一実施形態による前記ゴム組成物は、前記の成分以外に、通常ゴム工業界で用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂等をさらに含んでよい。
【0060】
前記加硫促進剤は、一例として、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系化合物、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系化合物が用いられてよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部から5重量部で含まれてよい。
【0061】
前記プロセス油は、ゴム組成物内で軟化剤として作用するものであり、一例として、パラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系の化合物であってよく、引張強度及び耐磨耗性を考慮する際に芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損失及び低温特性を考慮する際にナフテン系又はパラフィン系のプロセス油が用いられてよい。前記プロセス油は、一例として、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてよく、この範囲内で加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止する効果がある。
【0062】
前記老化防止剤は、一例として、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、又はジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等であってよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部から6重量部で用いられてよい。」
(本f)「【0066】
[実施例]
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、これらだけに本発明の範囲が限定されるのではない。
【0067】
実施例及び比較例においてゴム成分を除いた他の成分の重量部は、各実施例及び比較例で用いられたゴム成分100重量部を基準にして示した。
【0068】
また、実施例及び比較例においてゴム成分を除いた他の成分は、同一物質を用いており、カップリング剤はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、プロセス油はTDAEオイル、加硫促進剤はCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)及びDPG(ジフェニルグアニジン)を用いた。
【0069】
<実施例1>
溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF3925、LG化学)63重量部、希土類触媒化ブタジエンゴム(シス結合含量96重量%)40重量部、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油27.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.89であった(溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=18.06、希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
【0070】
<実施例2>
溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量43重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF4325、LG化学)63重量部、希土類触媒化ブタジエンゴム(シス結合含量96重量%)40重量部、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油27.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、1.00であった(溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=18.17、希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
【0071】
<実施例3>
溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF3925、LG化学)84重量部、希土類触媒化ブタジエンゴム(シス結合含量96重量%)20重量部、シリカ100重量部、カップリング剤8.0重量部、プロセス油36.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差
(△)は、0.89であった(溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=18.06、希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
【0072】
<比較例1>
溶液重合した片末端スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量21重量%、ビニル含量50重量%、エクステンダー油含量5重量%)(F2150、LG化学)63重量部、希土類触媒化ブタジエンゴム(シス結合含量96重量%)40重量部、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油27.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した片末端スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.23であった(溶液重合した片末端変性スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.40、希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
<比較例2>
溶液重合した片末端スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量37.5重量%)(F3925、LG化学)82.5重量部、希土類触媒化ブタジエンゴム(シス結合含量96重量%)40重量部、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油7.5重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した片末端スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.89であった(溶液重合した片末端変性スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=18.06、希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
【0073】
<比較例3>
溶液重合した片末端スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量36重量%、ビニル含量26重量%、エクステンダー油含量25重量%)(F3626Y、LG化学)75重量部、希土類触媒化ブタジエンゴム(シス結合含量96重量%)40重量部、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油15.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.80であった(溶液重合した片末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.97、希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
【0074】
<比較例4>
溶液重合した片末端スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量21重量%、ビニル含量50重量%、エクステンダー油含量5重量%)(F2150、LG化学)84重量部、希土類触媒化ブタジエンゴム(シス結合含量96重量%)20重量部、シリカ100重量部、カップリング剤8.0重量部、プロセス油36.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した片末端スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.23であった(溶液重合した片末端変性スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.40、希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
【0075】
<比較例5>
溶液重合した片末端スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量21重量%、ビニル含量50重量%、エクステンダー油含量5重量%)(F2150、LG化学)105重量部、シリカ100重量部、カップリング剤8.0重量部、ロセス油35.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。
<比較例6>
溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF3925、LG化学)105重量部、シリカ100重量部、カップリング剤8.0重量部、プロセス油35.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。
【0076】
[実験例]
前記実施例及び比較例で製造された各ゴム組成物及びこれから製造された成型品の物性を比較分析するために、引張特性、耐磨耗性及び粘弾性特性をそれぞれ測定し、その結果を下記表1及び表2に示した。また、前記実施例及び比較例の各ゴム組成物の製造に用いられたゴム成分及びその他成分と各含量も、表1及び表2に共に示した。
【0077】
1)引張特性
引張特性は、ASTM 412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の切断時の引張強度及び300%伸張時の引張応力(300%モデュラス)を測定した。具体的に、引張特性はUniversal Test Machin 4204(Instron社)引張試験機器を利用し、室温で50cm/minの速度で測定した。
【0078】
2)耐磨耗性
前記引張特性と同じ方法で製造されたゴム試料の耐磨耗性を、DIN摩耗試験機器を利用して磨耗紙が付けられた回転ドラム(Drum)に10Nの荷重を付加し、ゴム試料をドラムの回転方向の直角方向に移動させた後、摩耗された損失重量を測定しており、比較例2の損失重量を基準に指数化して示した。ドラムの回転速度は40rpmであり、試験完了時の試料の全体移動距離は40mである。損失重量の指数値が大きいほど耐磨耗性に優れたものを示す。
【0079】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析機(TA社、ARES G2)を利用してねじりモードで周波数10Hz、各測定温度(-100℃~80℃)で変形を変化させG’’(dynamic loss modulus、E’’)とtanδを測定した。0℃の低温におけるtanδの指数値が高いものであるほど濡れた路面の抵抗性(制動性能)に優れ、60℃の高温におけるtanδの指数値が高いほどヒステリシス損失が少なく、低走行抵抗性(燃費性能)に優れることを示す。
【0080】
また、前記動的機械分析機を介して温度スウィープ試験を行い、G’’変化を測定しており、これを介してゴム間の相溶性差による相分離現象を確認した。
【0081】
4)TEM(Transmission Electron Microscopy)分析 TEMイメージは、Titan G2 80-200 Field Emission Transmission Electron Microscope装備(TEI社)を利用して各ゴム組成物をミクロトームにより薄片に製作し、20K~200Kの倍率で測定した。
【0082】
【表1】
[図:0001397177000001.jpg]
【0083】
前記表1において、実施例1、実施例2、比較例2及び比較例3の引張特性、耐磨耗性及び粘弾性の結果値は、比較例1の測定値を基準に指数化して示したものである。前記表1に示された通り、本発明の一実施形態による実施例1及び実施例2が、比較例1から比較例3対比引張特性及び粘弾性特性に著しく優れつつ耐磨耗性が改善されたことを確認した。
【0084】
具体的に、実施例1及び実施例2は、引張特性及び粘弾性特性に優れつつも耐磨耗性が大きく改善されている一方、異種の合成ゴムを含み、且つ二つの合成ゴム間に溶解度パラメーターの差が0.82以下である比較例1及び比較例3の場合には、引張特性と粘弾性特性が著しく減少し、耐磨耗性も大きく減少することを確認した。
・・・
【0088】
【表2】
[図:0001397177000002.jpg]
【0089】
前記表2において、実施例3、比較例5及び6の引張特性、耐磨耗性及び粘弾性結果値は、比較例4の測定値を基準に指数化して示したものである。
【0090】
前記表2に示された通り、本発明の一実施形態による実施例3は、比較例4対比耐磨耗性が改善されつつも優れた引張特性と著しく高い粘弾性特性を有することを確認した。」
2 各甲号証及び乙号証に記載された事項
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(甲1a)「請求の範囲
[請求項1] ゴム成分100質量%中にスチレンブタジエンゴムを35質量%以上含むゴム組成物であって、
下記式(I)で表される重合開始剤を用いて共役ジエン化合物及びケイ素含有ビニル化合物を含む単量体成分を重合させて得られる共重合体の活性末端に、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物を反応させて得られる共役ジエン系重合体と、
窒素吸着比表面積が40~400m2/gのシリカとを含み、
前記ゴム成分100質量%中、前記共役ジエン系重合体の含有量が1~90質量%、ポリイソプレン系ゴムの含有量が0~40質量%であり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が10~150質量部であるゴム組成物。
[化1]
[図:0001397177000003.jpg]
・・・
[請求項5] 前記共役ジエン系重合体が芳香族ビニル化合物由来の構造単位を有する請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
・・・
[請求項17] トレッドに使用される請求項1~16のいずれかに記載のゴム組成物。
[請求項18] 請求項1~17のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。」
(甲1b)「技術分野
[0001] 本発明は、ゴム組成物及びそれを用いて作製した空気入りタイヤに関するものである。
・・・
[0006] 本発明は、前記課題を解決し、加工性、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性能及び操縦安定性をバランス良く改善できるゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
・・・
発明の効果
[0025] 本発明によれば、特定量のスチレンブタジエンゴムを含むゴム組成物において、特定の共役ジエン系重合体とシリカとをそれぞれ特定量配合したゴム組成物であるので、加工性、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性能及び操縦安定性(特に、ドライ路面での操縦安定性)がバランス良く改善された空気入りタイヤを提供できる。」
(甲1c)「[0027] 本発明に係る共役ジエン系重合体は、下記式(I)で表される重合開始剤を用いて共役ジエン化合物及びケイ素含有ビニル化合物を含む単量体成分を重合させて得られる共重合体の活性末端に、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物を反応させて得られるものである。
・・・
[0028]本明細書において「変性する」とは、ジエン化合物、又はジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を有する共重合体に、これら以外の化合物を結合させることを意味する。上記共役ジエン系重合体の場合、上記式(I)で表される重合開始剤により重合体開始末端が変性され、ケイ素含有ビニル化合物を共重合させる事により主鎖が変性され、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物ケイ素含有ビニル化合物によって停止末端が変性された構造を有する。上記共役ジエン系重合体をポリイソプレン系ゴムなどの他のゴム成分とともに併用することで、シリカを良好に分散させ、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性能及び操縦安定性をバランス良く改善できる。また、通常、開始末端、主鎖、停止末端の全てが変性された変性ゴムを使用すると、加工性が大幅に悪化してしまう傾向があるが、上記共役ジエン系重合体は、開始末端、主鎖、停止末端のそれぞれを特定の化合物の組合せで変性しているため、良好な加工性を確保することができ、さらに、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性能及び操縦安定性の改善効果を相乗的に高めることもできる。その結果、加工性、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性能及び操縦安定性を高次元でバランス良く改善することができる。」
(甲1d)「[0075] 上記共役ジエン系重合体の製造においては、単量体成分として、共役ジエン化合物やケイ素含有ビニル化合物に加え、さらに、重合可能な単量体を用いてもよい。該単量体としては、芳香族ビニル化合物、・・・などがあげられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、・・・を例示することができる。・・・これらの中では、芳香族ビニル化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
[0076] 上記共役ジエン系重合体を製造する際に、芳香族ビニル化合物を用いる場合、芳香族ビニル化合物の使用量としては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との総量を100質量%として、好ましくは10質量%以上(共役ジエン化合物の使用量は90質量%以下)・・・である。また、低燃費性の観点から、芳香族ビニル化合物の使用量は、好ましくは50質量%以下(共役ジエン化合物の使用量は50質量%以上)・・・である。
[0077] 上記共役ジエン系重合体の製造においては、重合は炭化水素溶媒中で行うことが好ましい。炭化水素溶媒は式(I)の重合開始剤を失活させない溶媒であり、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素などをあげることができる。・・・
[0078] 重合反応は、共役ジエン単位のビニル結合量を調整する剤、共役ジエン系重合体鎖中での共役ジエン単位と共役ジエン以外の単量体に基づく単量体単位の分布を調整する剤(以下、総称して「調整剤」と記す。)の存在下で行ってもよい。・・・
・・・
[0082] 上記共役ジエン系重合体は、式(I)で表される重合開始剤を用いて共役ジエン化合物及びケイ素含有ビニル化合物を含む単量体成分を重合させて得られる共重合体の活性末端(共重合体の活性末端には、当該重合開始剤由来のアルカリ金属を有すると考えられる。)に、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物を反応させて得られる(末端変性反応)。具体的には、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物を重合溶液に添加し、混合することにより行われる。重合溶液に添加する窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物の量は、使用する式(I)で表される重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、通常、0.1~3molであり、好ましくは、0.5~2molであり、より好ましくは、0.7~1.5molである。
・・・
[0139] 上記共役ジエン系重合体において、式(I)で表される重合開始剤由来の構造単位の含有量は、加工性、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性能及び操縦安定性をバランス良く高める観点から、重合体単位質量あたり、好ましくは、0.0001mmol/g重合体以上、より好ましくは0.001mmol/g重合体以上であり、好ましくは0.15mmol/g重合体以下、より好ましくは、0.1mmol/g重合体以下である。
[0140] 上記共役ジエン系重合体において、ケイ素含有ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、加工性、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性能及び操縦安定性をバランス良く高める観点から、重合体単位質量あたり、好ましくは、0.01mmol/g重合体以上、より好ましくは0.02mmol/g重合体以上であり、好ましくは0.4mmol/g重合体以下、より好ましくは、0.2mmol/g重合体以下である。
・・・
[0144] 上記共役ジエン系重合体が芳香族ビニル化合物に基づく構造単位を有する場合、上記共役ジエン系重合体のビニル結合量(ビニル含有量)は、共役ジエン単位の含有量を100mol%として、低燃費性の観点から、好ましくは80mol%以下であり、より好ましくは70mol%以下である。また、ウェットグリップ性能の観点から、好ましくは10mol%以上であり、より好ましくは15mol%以上であり、さらに好ましくは20mol%以上であり、特に好ましくは40mol%以上である。
・・・
[0223] 添加剤としては、公知のものを用いることができ、硫黄などの加硫剤;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤などの加硫促進剤;ステアリン酸、酸化亜鉛などの加硫活性化剤;有機過酸化物;カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;伸展油、滑剤などの加工助剤;老化防止剤を例示することができる。」
(甲1e)「[0150] 本発明のゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム(SBR)を含有する。SBRとしては、変性SBRとして合成された上記共役ジエン系重合体のほか、日本ゼオン(株)製のNipol NS116Rなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
[0151] ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、35質量%以上、好ましくは45質量%以上である。35質量%未満であると、ドライ路面での操縦安定性や、ウェットグリップ性能を充分に改善できないおそれがある。また、SBRの含有量は、100質量%であってもよいが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。80質量%を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。
なお、SBRの含有量は、変性SBR及び非変性SBRの合計含有量である。
[0152] 上記共役ジエン系重合体と併用する他のゴム成分としては、ポリイソプレン系ゴムを好適に使用できる。ポリイソプレン系ゴムを配合することで、ゴム強度が向上するとともに、混練り時のゴムの纏まりが良くなり、生産性を改善できる。
・・・
[0155] ポリイソプレン系ゴム以外に使用できるゴム成分としては、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、ブチルゴムなどをあげることができる。・・・
[0156] BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150Bなどの高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617などのシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。」
(甲1f)「[0236] 本発明の空気入りタイヤは、サマータイヤ(特に乗用車用サマータイヤ)として好適に用いることができる。
実施例
[0237] 実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
[0238] 以下、合成、重合時に用いた各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
メチルビニルジクロロシラン:信越化学工業(株)製
n-ブチルリチウム溶液:関東化学(株)製の1.6M n-ブチルリチウムヘキサン溶液
開始剤(1):FMC社製AI-200CE2(3-(N,N-ジメチルアミノ)-1-プロピルリチウムにイソプレン由来の構造単位が2単位結合した化合物(下記式で表される化合物))(0.9M)
・・・
2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン:信越化学工業(株)製
N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド:東京化成工業(株)製
3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン:アヅマックス(株)製
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン:東京化成工業(株)製
N-フェニル-2-ピロリドン:東京化成工業(株)製
N-メチル-ε-カプロラクタム:東京化成工業(株)製
トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート:信越化学工業(株)製
N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール:東京化成工業(株)製
1,3-ジイソプロペニルベンゼン:東京化成工業(株)製
sec-ブチルリチウム溶液:関東化学(株)製(1.0mol/L)
[0239]<変性剤(1)(主鎖変性剤)の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコにビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランを15.8g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を100mlにして作成した。
[0240] <変性剤(2)(末端変性剤)の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコにN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを15.6g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を100mlにして作成した。
・・・
[0242] <開始剤(2)の作製>
充分に窒素置換した200mLナスフラスコに、無水ヘキサン127.6ml、ピペリジン8.5gを加えた。0℃に冷却後、n-ブチルリチウム溶液62.5mLを1時間かけてゆっくり添加し、作製した。
・・・
[0249] <変性剤(8)(末端変性剤)の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコにトリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを30.7g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を200mlにして作製した。
[0250] <変性剤(9)(末端変性剤)の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコにN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを11.9g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を200mlにして作製した。
・・・
[0254] <共重合体(1)の合成>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn-ヘキサンを18L、スチレンを600g、ブタジエンを1400g、変性剤(1)を40mL、TMEDAを10mmol加え、40℃に昇温した。次に、開始剤(2)を34mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、変性剤(2)を20mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール15mL及び2,6-tert-ブチル-p-クレゾール0.1gを添加後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収し、得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、共重合体(1)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(1))は、単量体成分100gあたり0.32gであった。投入した重合開始剤(開始剤(2))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(2))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
・・・
[0256] <共重合体(3)の合成>
スチレンの量を900gに、ブタジエンの量を1100gに変えた以外は、共重合体(1)の合成と同じ処方により、共重合体(3)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(1))は、単量体成分100gあたり0.32gであった。投入した重合開始剤(開始剤(2))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(2))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
・・・
[0298] <共重合体(45)の合成>
変性剤(2)20mLを変性剤(8)20mLに変えた以外は、共重合体(3)の合成と同じ処方により、共重合体(45)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(1))は、単量体成分100gあたり0.32gであった。投入した重合開始剤(開始剤(2))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(8))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
・・・
[0305] <共重合体(52)の合成>
変性剤(2)20mLを変性剤(9)20mLに変えた以外は、共重合体(3)の合成と同じ処方により、共重合体(52)を得た。なお、投入したケイ素含有ビニル化合物(変性剤(1))は、単量体成分100gあたり0.32gであった。投入した重合開始剤(開始剤(2))は、単量体成分100gあたり0.85mmolであった。投入した窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物(変性剤(9))は、投入した重合開始剤に由来するアルカリ金属1molあたり、1.18molであった。
・・・
[0314]
[表4]
[図:0001397177000004.jpg]
[0315]
[表5]
[図:0001397177000005.jpg]
[0316] 以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
共重合体(1)~(56):上記方法で合成
・・・
・・・
シランカップリング剤A:EVONIK-DEGUSSA社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤B:EVONIK-DEGUSSA社製のSi363
・・・
クマロンインデン樹脂1(固体樹脂):ルトカーズケミカル社製のNOVARES C90(Tg:90℃)
・・・
[0317] (実施例及び比較例)
表6~25に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。
・・・
[0331]
[表12]
[図:0001397177000006.jpg]
[0332]
[表13]
[図:0001397177000007.jpg]
・・・
[0337]
[表18]
[図:0001397177000008.jpg]
・・・
[0344]
[表25]
[図:0001397177000009.jpg]
」
(2)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(甲2a)「【0087】
以下に実施例及び比較例で用いた各種薬品について、まとめて説明する。
・・・
・・・」
(3)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(甲3a)「【0028】本発明のスチレンーブタジエン共重合体ゴムは、一般のゴムにおいて行われているようにスチレンーブタジエン共重合体ゴム100重量部に対しゴム用伸展油を5~100重量部添加し油展ゴムとして実用に供することが可能であり、加工性を向上するために油展ゴムとするのが好ましい。油展ゴムとした場合の油展ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は30~80が好ましい範囲である。」
3 乙第1号証に記載された事項
乙第1号証には、以下の事項が記載されている。
(乙1a)「
[図:0001397177000010.jpg]
」(第1頁)
(乙1b)「
[図:0001397177000011.jpg]
」(第2頁)
(乙1c)「
[図:0001397177000012.jpg]
」(第3頁)
(乙1d)「
[図:0001397177000013.jpg]
」(第4頁
第6 当審の判断
特許異議の申立ての審理対象である請求項1~6のうち、上記「第2 本件訂正の内容」及び「第3 特許請求の範囲の記載」で示したとおり、請求項2は、本件訂正により削除されているので、請求項2についての申立てを却下する。
当審は、当審が通知した取消理由A~B及び申立人がした申立理由1によっては、いずれも、本件発明1、3~6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
取消理由A(新規性)と申立理由1(新規性)は同旨であり、また、取消理由A(新規性)、取消理由B(進歩性)、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)はいずれも甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性に関する理由であるから、以下、併せて検討する。
1 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の(甲1f)には、「変性剤(1)(主鎖変性剤)」、「開始剤(2)」、「開始剤(8)(末端変性剤)」を用いた「共重合体(45)」、及び「変性剤(1)(主鎖変性剤)」、「開始剤(2)」、「開始剤(9)(末端変性剤)」を用いた「共重合体(52)」が記載されており、「変性剤(1)(主鎖変性剤)」、「開始剤(2)」、「開始剤(8)(末端変性剤)」、「開始剤(9)(末端変性剤)」はそれぞれ以下のとおりである。
「充分に窒素置換した30L耐圧容器にn-ヘキサンを18L、スチレンを900g、ブタジエンを1100g、窒素雰囲気下100mlメスフラスコにビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランを15.8g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を100mlにして作成した変性剤(1)」
「充分に窒素置換した200mLナスフラスコに無水ヘキサン127.6ml、ピペリジン8.5gを加え、0℃に冷却後、n-ブチルリチウム溶液62.5mLを1時間かけてゆっくり添加し、作製した開始剤(2)」
「窒素雰囲気下100mlメスフラスコにトリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを30.7g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を200mlにして作製した変性剤(8)」
「窒素雰囲気下、100mlメスフラスコにN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを11.9g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を200mlにして作製した変性剤(9)」
そして、甲第1号証の(甲1f)の実施例95に着目すると、
「変性剤(1)を40mL、TMEDAを10mmol加え、40℃に昇温し、次に、開始剤(2)を34mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌し、次に、変性剤(8)を20mL追加し30分間撹拌を行い、反応溶液にメタノール15mL及び2,6-tert-ブチル-p-クレゾール0.1gを添加後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収し、得られた凝集体を24時間減圧乾燥させて、スチレン含有量が45質量%で、ビニル含有量が57mol%の共重合体(45)を得て、当該共重合体(45) 65質量部天然ゴム(TSR20) 20質量部続きを表示(全18行)ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B) 15質量部シリカ2(ローディア社製のZEOSIL 115GR(窒素吸着比表面積:110m2/g))75質量部シランカップリング剤B(EVONIK-DEGUSSA社製のSi363) 6質量部カーボンブラック(三菱化学(株)製のダイアブラックN339(N2SA:96m2/g、DBP吸収量:124ml/100g)) 5質量部オイル(JX日鉱日石エネルギー(株)製のX-140) 20質量部老化防止剤(住友化学(株)製のアンチゲン3C) 1.5質量部ステアリン酸(日油(株)製のビーズステアリン酸つばき) 2質量部酸化亜鉛(三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号) 2.5質量部ワックス(大内新興化学工業(株)製のサンノックN) 1質量部の配合材料を、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得て、次に、得られた混練り物に硫黄(鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄) 2質量部加硫促進剤1(住友化学(株)製のソクシノールCZ) 1.8質量部加硫促進剤2(住友化学(株)製のソクシノールD) 1.2質量部を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、得た未加硫ゴム組成物」の発明(以下「甲1発明A1」という。)が記載されているといえる。
同様に、実施例107に着目すると、
「変性剤(1)を40mL、TMEDAを10mmol加え、40℃に昇温し、次に、開始剤(2)を34mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌し、次に、変性剤(9)を20mL追加し30分間撹拌を行い、反応溶液にメタノール15mL及び2,6-tert-ブチル-p-クレゾール0.1gを添加後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収し、得られた凝集体を24時間減圧乾燥させて、スチレン含有量が45質量%で、ビニル含有量が55mol%の共重合体(52)を得て、当該共重合体(52) 65質量部天然ゴム(TSR20) 20質量部続きを表示(全18行)ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B) 15質量部シリカ2(ローディア社製のZEOSIL 115GR(窒素吸着比表面積:110m2/g))75質量部シランカップリング剤B(EVONIK-DEGUSSA社製のSi363) 6質量部カーボンブラック(三菱化学(株)製のダイアブラックN339(N2SA:96m2/g、DBP吸収量:124ml/100g)) 5質量部オイル(JX日鉱日石エネルギー(株)製のX-140) 20質量部老化防止剤(住友化学(株)製のアンチゲン3C) 1.5質量部ステアリン酸(日油(株)製のビーズステアリン酸つばき) 2質量部酸化亜鉛(三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号) 2.5質量部ワックス(大内新興化学工業(株)製のサンノックN) 1質量部の配合材料を、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得て、次に、得られた混練り物に硫黄(鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄) 2質量部加硫促進剤1(住友化学(株)製のソクシノールCZ) 1.8質量部加硫促進剤2(住友化学(株)製のソクシノールD) 1.2質量部を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、得た未加硫ゴム組成物」の発明(以下「甲1発明B1」という。)が記載されているといえる。
同様に、実施例158に着目すると、
「変性剤(1)を40mL、TMEDAを10mmol加え、40℃に昇温し、次に、開始剤(2)を34mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌し、次に、変性剤(8)を20mL追加し30分間撹拌を行い、反応溶液にメタノール15mL及び2,6-tert-ブチル-p-クレゾール0.1gを添加後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収し、得られた凝集体を24時間減圧乾燥させて、スチレン含有量が45質量%で、ビニル含有量が57mol%の共重合体(45)を得て、当該共重合体(45) 60質量部天然ゴム(TSR20) 20質量部ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B) 20質量部続きを表示(全18行)カーボンブラック(三菱化学(株)製のダイアブラックN339(N2SA:96m2/g、DBP吸収量:124ml/100g)) 15質量部オイル(JX日鉱日石エネルギー(株)製のX-140) 25質量部シリカ2(ローディア社製のZEOSIL 115GR(窒素吸着比表面積:110m2/g))60質量部シリカ3(ローディア社製のZEOSIL 1165MP(窒素吸着比表面積:160m2/g)) 15質量部シランカップリング剤A(EVONIK-DEGUSSA社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)) 6質量部老化防止剤(住友化学(株)製のアンチゲン3C) 1.5質量部ステアリン酸(日油(株)製のビーズステアリン酸つばき) 2質量部酸化亜鉛(三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号) 2.5質量部ワックス(大内新興化学工業(株)製のサンノックN) 1質量部の配合材料を、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得て、次に、得られた混練り物に硫黄(鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄) 2質量部加硫促進剤1(住友化学(株)製のソクシノールCZ) 1.8質量部加硫促進剤2(住友化学(株)製のソクシノールD) 1.2質量部を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、得た未加硫ゴム組成物」の発明(以下「甲1発明C1」という。)が記載されているといえる。
同様に、実施例210に着目すると、
「変性剤(1)を40mL、TMEDAを10mmol加え、40℃に昇温し、次に、開始剤(2)を34mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌し、次に、変性剤(9)を20mL追加し30分間撹拌を行い、反応溶液にメタノール15mL及び2,6-tert-ブチル-p-クレゾール0.1gを添加後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収し、得られた凝集体を24時間減圧乾燥させて、スチレン含有量が45質量%で、ビニル含有量が55mol%の共重合体(52)を得て、当該共重合体(52) 60質量部天然ゴム(TSR20) 20質量部続きを表示(全19行)ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B) 20質量部シリカ2(ローディア社製のZEOSIL 115GR(窒素吸着比表面積:110m2/g))75質量部シランカップリング剤A(EVONIK-DEGUSSA社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)) 6質量部カーボンブラック(三菱化学(株)製のダイアブラックN339(N2SA:96m2/g、DBP吸収量:124ml/100g)) 15質量部オイル(JX日鉱日石エネルギー(株)製のX-140) 25質量部クマロンインデン樹脂1((固体樹脂)、ルトカーズケミカル社製のNOVARES C90(Tg:90℃)) 10質量部老化防止剤(住友化学(株)製のアンチゲン3C) 1.5質量部ステアリン酸(日油(株)製のビーズステアリン酸つばき) 2質量部酸化亜鉛(三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号) 2.5質量部ワックス(大内新興化学工業(株)製のサンノックN) 1質量部の配合材料を、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得て、次に、得られた混練り物に硫黄(鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄) 2質量部加硫促進剤1(住友化学(株)製のソクシノールCZ) 1.8質量部加硫促進剤2(住友化学(株)製のソクシノールD) 1.2質量部を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、得た未加硫ゴム組成物」の発明(以下「甲1発明D1」という。)が記載されているといえる。
2 本件発明1について
(1)対比
ア 本件発明1と甲1発明A1との対比・判断
まず、本件発明1と甲1発明A1とを対比する。
甲1発明A1の「変性剤(1)を40mL、TMEDAを10mmol加え、40℃に昇温し、次に、開始剤(2)を34mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌し、次に、変性剤(8)を20mL追加し30分間撹拌を行い、反応溶液にメタノール15mL及び2,6-tert-ブチル-p-クレゾール0.1gを添加後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収し、得られた凝集体を24時間減圧乾燥させて」得た「スチレン含有量が45質量%で、ビニル含有量が57mol%の共重合体(45)」(以下「共重合体(45)」という。)に関連して、甲第1号証の(甲1c)の段落[0028]には、以下の記載がある。
「[0028] 本明細書において「変性する」とは、ジエン化合物、又はジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を有する共重合体に、これら以外の化合物を結合させることを意味する。上記共役ジエン系重合体の場合、上記式(I)で表される重合開始剤により重合体開始末端が変性され、ケイ素含有ビニル化合物を共重合させる事により主鎖が変性され、窒素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物ケイ素含有ビニル化合物によって停止末端が変性された構造を有する。上記共役ジエン系重合体をポリイソプレン系ゴムなどの他のゴム成分とともに併用することで、シリカを良好に分散させ、低燃費性、ゴム強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性能及び操縦安定性をバランス良く改善できる。」
当該記載をみると、甲1発明A1の「共重合体(45)」は「スチレン含有量が45質量%」の「共役ジエン系重合体」であり、「重合体開始末端」は「重合開始剤」である「充分に窒素置換した200mLナスフラスコに無水ヘキサン127.6ml、ピペリジン8.5gを加え、0℃に冷却後、n-ブチルリチウム溶液62.5mLを1時間かけてゆっくり添加し、作製した開始剤(2)」により変性されており、「停止末端」は「窒素雰囲気下100mlメスフラスコにトリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを30.7g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を200mlにして作製した変性剤(8)」により変性されているといえる。
そうすると、甲1発明A1の「共重合体(45)」は、本件発明1の「スチレン含量が38重量%以上であり、両末端に官能基が結合されている両末端変性溶液重合共役ジエン系ゴム」である「第1合成ゴム」に相当するといえる。
甲1発明A1の「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」は、甲第2号証の(甲2a)の段落【0087】の「BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR150B(シス含量:97質量%、ML1+4(100℃):40、Mw:4.4×105、Mw/Mn:3.3)」(以下「ブタジエンゴム」という。)の記載からみて、「シス含量」は「97質量%」であるから、本件発明1の「重合体内のシス結合の含量が96重量%以上のブタジエン系ゴム」である「第2の合成ゴム」に相当するといえる。
甲1発明A1の「シリカ2(ローディア社製のZEOSIL 115GR(窒素吸着比表面積:110m2/g))」(以下「シリカ2」という。)は、本件発明1の「充填材」に相当する。
甲1発明A1の「未加硫ゴム組成物」は、他に「天然ゴム(TSR20)」、「シランカップリング剤B」、「カーボンブラック」、「老化防止剤」、「ステアリン酸」、「酸化亜鉛」、「ワックス」、「硫黄」、「加硫促進剤1」及び「加硫促進剤2」も含有するものであるが、本件発明1の「ゴム組成物」も、本件明細書の(本e)の段落【0054】~【0062】の記載からみて、これらの成分を含むことも意図しているといえるから、この点は相違点とはならない。
甲1発明Aにおいて、「共重合体(45)」、「ブタジエンゴム」及び「シリカ2」は、「共重合体(45)」及び「ブタジエンゴム」のゴム成分の合計量の100質量部に対して、
「共重合体(45)」は、81質量部(=65/(65+15)×100)
「ブタジエンゴム」は、19質量部(=15/(65+15)×100)
「シリカ2」は、93質量部(=75/(65+15)×100)
含有しているから、本件発明1と同様に、「第1合成ゴムと第2合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、30重量部から90重量部の第1合成ゴムと、10重量部から70重量部の第2合成ゴムと、30から200重量部の充填剤とを含」んでいるといえる。
本件発明1の「第1合成ゴム」と「第2合成ゴム」の「溶解度パラメーター」について、本件明細書の(本b)の段落【0016】~【0017】には、「溶解度パラメーター(solubility parameter、δ)」について、
「[数式1]δ=17.17+0.0272(スチレン重量%)-0.0069(ビニル重量%)」
により計算することが記載され、
また、このうちの「ビニル重量(%)」について、本件明細書の(本c)の段落【0026】には「ここで、前記ビニル含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体でなる共役ジエン系共重合体100重量%に対して、1,4-添加ではない1,2-添加された共役ジエン系単量体の含量を意味してよい」と記載されているから、「[数式1]」における「ビニル重量(%)」とは、「ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体でなる共役ジエン系ゴム」全体を「100重量%」とした場合の、これに対する量であると解される。
一方、甲1発明A1の「共重合体(45)」の「ビニル含有量」とは、甲第1号証の(甲1d)の段落[0144]の「上記共役ジエン系重合体が芳香族ビニル化合物に基づく構造単位を有する場合、上記共役ジエン系重合体のビニル結合量(ビニル含有量)は、共役ジエン単位の含有量を100mol%として、低燃費性の観点から、好ましくは80mol%以下であり、より好ましくは70mol%以下である。また、ウェットグリップ性能の観点から、好ましくは10mol%以上であり、より好ましくは15mol%以上であり、さらに好ましくは20mol%以上であり、特に好ましくは40mol%以上である」との記載からみて、「共役ジエン単量体単位」中の「ビニル結合含有量」であると解される。
ここで、甲1発明A1の「共重合体(45)」について、その全体を「100質量%」とした場合の「ビニル質量(%)」を算出する。
甲1発明A1の「共重合体(45)」は「スチレン」及び「ブタジエン」以外に「窒素雰囲気下100mlメスフラスコにビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランを15.8g入れ、さらに無水ヘキサンを加え全量を100mlにして作成した変性剤(1)」を、単量体成分100gあたり0.32g含むものであるが、全体としてごく微量であるため、「変性剤(1)」を含まないとして算出すると、甲1発明A1の「共重合体(45)」は、「ビニル基を有する単量体」である「ブタジエン」と「芳香族ビニル系単量体」である「スチレン」を重合したものであり、「共重合体(45)」全体中の「ブタジエン」由来の含量は、
100質量%-45質量%(スチレン単量体単位含有量)=約55質量%であり、このうちの57モル%が「ビニル結合含有量」であるから、甲1発明A1の「共重合体(45)」全体としては、約31.35重量%(=55重量%×57モル%)の「ビニル重量(%)」を有するといえる。
以上を踏まえて、甲1発明A1の「共重合体(45)」の「溶解度パラメーター」を算出すると、
17.17+0.0272×45(スチレン重量%)-0.0069×31.35(ビニル重量%)=約18.177685
となる。
同様にして、「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の「溶解度パラメーター」を算出すると、「ブタジエンゴム」のシス結合の含量は「97質量%」であり、残りの0~3質量%は「トランス結合の含量」か「ビニル結合の含量」であるから、「ビニル結合の含量」は0~3質量%であるといえる。そして、「ブタジエンゴム」の「スチレン含量」は0%であることから、
17.17+0.0272×0(スチレン重量%)-0.0069×(0~3)(ビニル重量%)=17.01493~17.17
となり、甲1発明A1における「共重合体(45)」と「ブタジエンゴム」との「溶解度パラメーター」の差は、約1.007685~1.028385(=18.177685-17.17~17.01493)となる。
そうすると、本件発明1と甲1発明A1とは、
「第1合成ゴムと第2合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、30重量部から90重量部の第1合成ゴムと、10重量部から70重量部の第2合成ゴムと、30から200重量部の充填剤とを含み、前記第1合成ゴムは、スチレン含量が38重量%以上であり、両末端に官能基が結合されている両末端変性溶液重合共役ジエン系ゴムであり、前記第2合成ゴムは、重合体内のシス結合の含量が96重量%以上のブタジエン系ゴムであるゴム組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
イ 本件発明1と甲1発明B1との対比・判断
甲1発明B1は、甲1発明A1の「共重合体(45)」に代えて、「共重合体(52)」を用いたものであるといえる。
本件発明1と甲1発明B1とを、上記「ア 本件発明1と甲1発明A1との対比」での検討を踏まえて行う。
甲1発明B1の「共重合体(52)」は「スチレン含有量が45質量%」の「共役ジエン系重合体」であり、「重合体開始末端」は「重合開始剤」である「開始剤(2)」により変性されており、「停止末端」は「変性剤(9)」により変性されているといえる。
そうすると、甲1発明B1の「共重合体(52)」も、本件発明1の「スチレン含量が38重量%以上であり、両末端に官能基が結合されている両末端変性溶液重合共役ジエン系ゴム」である「第1合成ゴム」に相当するといえる。
次に、甲1発明B1の「共重合体(52)」の溶解度パラメータを算出すると、「共重合体(52)」は、「ビニル基を有する単量体」である「ブタジエン」と「芳香族ビニル系単量体」である「スチレン」を重合したものであり、「共重合体(52)」全体中の「ブタジエン」由来の含量は、55質量%(=100質量%-45質量%(スチレン単量体単位含有量)。「変性剤(1)の含量は、単量体成分100gあたり0.32gであり、ごく微量である。)であり、このうちの55モル%が「ビニル結合含有量」であるから、「共重合体(52)」全体としては、30.25重量%(=55重量%×55モル%)の「ビニル重量(%)」を有するといえる。
そうすると、甲1発明B1の「共重合体(52)」の「溶解度パラメーター」は、
17.17+0.0272×45(スチレン重量%)-0.0069×30.25(ビニル重量%)=約18.185275
となる。
そして、「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の「溶解度パラメーター」は、17.01493~17.17であるから、甲1発明B1における「共重合体(52)」と「ブタジエンゴム」との「溶解度パラメーター」の差は約1.015275~1.035975(=18.185275-17.17~17.01493)」となる。
そうすると、本件発明1と甲1発明B1とは、
「第1合成ゴムと第2合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、30重量部から90重量部の第1合成ゴムと、10重量部から70重量部の第2合成ゴムと、30から200重量部の充填剤とを含み、前記第1合成ゴムは、スチレン含量が38重量%以上であり、両末端に官能基が結合されている両末端変性溶液重合共役ジエン系ゴムであり、前記第2合成ゴムは、重合体内のシス結合の含量が96重量%以上のブタジエン系ゴムであるゴム組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
ウ 本件発明1と甲1発明C1との対比・判断
甲1発明C1は、甲1発明A1において、「共重合体(45)」の含有量を65質量部から60質量部に、「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の含有量を15質量部から20質量部に、シリカとして「シリカ2」を75質量部から「シリカ2」を60質量部及び「シリカ3」を15質量部用いるものとし、さらに、シランカップリング剤の種類、カーボンブラックやオイルの量等を変更したものである。
本件発明1と甲1発明C1とを、上記「ア 本件発明1と甲1発明A1との対比」での検討を踏まえて行う。
甲1発明C1において、「共重合体(45)」、「ブタジエンゴム」及び「シリカ2」と「シリカ3」は、「共重合体(45)」及び「ブタジエンゴム」のゴム成分の合計量の100質量部に対して。
「共重合体(45)」は、75質量部(=60/(60+20)×100)
「ブタジエンゴム」は、25質量部(=20/(60+20)×100)
「シリカ2」は、93質量部(=75/(60+20)×100)
含有しているから、本件発明1と同様に、「第1合成ゴムと第2合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、30重量部から90重量部の第1合成ゴムと、10重量部から70重量部の第2合成ゴムと、30から200重量部の充填剤とを含」んでいるといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明C1とは、
「第1合成ゴムと第2合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、30重量部から90重量部の第1合成ゴムと、10重量部から70重量部の第2合成ゴムと、30から200重量部の充填剤とを含み、前記第1合成ゴムは、スチレン含量が38重量%以上であり、両末端に官能基が結合されている両末端変性溶液重合共役ジエン系ゴムであり、前記第2合成ゴムは、重合体内のシス結合の含量が96重量%以上のブタジエン系ゴムであるゴム組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
エ 本件発明1と甲1発明D1との対比・判断
甲1発明D1は、甲1発明B1において、「共重合体(52)」の含有量を65質量部から60質量部に、「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の含有量を15質量部から20質量部とし、さらに、シランカップリング剤の種類、カーボンブラックやオイルの量を変更し、「クロマインデン樹脂1」を用いる等の変更をしたものである。
そうすると、本件発明1と甲1発明D1とは、
「第1合成ゴムと第2合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、30重量部から90重量部の第1合成ゴムと、10重量部から70重量部の第2合成ゴムと、30から200重量部の充填剤とを含み、前記第1合成ゴムは、スチレン含量が38重量%以上であり、両末端に官能基が結合されている両末端変性溶液重合共役ジエン系ゴムであり、前記第2合成ゴムは、重合体内のシス結合の含量が96重量%以上のブタジエン系ゴムであるゴム組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
(2)判断
上記相違点1~4は、いずれも「第1合成ゴム」と「第2合成ゴム」の「溶解度パラメーターの差」に関する事項であるから、併せて検討する。
甲1発明A1及び甲1発明C1の「共重合体(45)」と「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の「溶解度パラメーターの差」は「約1.007685~1.028385」であり、本件発明1の上限1.00と一致すると解すべき事情もない。また、甲1発明B1及び甲1発明D1の「共重合体(52)」と「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の「溶解度パラメーターの差」は「約1.015275~1.035975」であり、本件発明1において特定される「0.82超過1.00以下」の範囲ではないから、相違点1~4は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
次に、相違点1~4について、甲第1号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
甲第1号証には、甲1発明A1~甲1発明D1の「共重合体(45)」ないしは「共重合体(52)」である「共役ジエン系重合体」についての「溶解度パラメーター」についての記載はなく、また、甲1発明A1~甲1発明D1の「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」は(甲1e)の段落[0155]~[0156]に記載される任意に使用できる「ゴム成分」に過ぎず、「共役ジエン系重合体」と「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」との「溶解度パラメーター」を調整しようとする動機付けとなる記載はない。
また、本件明細書の(本b)の段落【0016】~【0017】によれば「溶解度パラメーター」は「スチレン重量%」、「ビニル重量%」により変化するものであるところ、(甲1d)の段落[0076]には「共役ジエン系重合体を製造する際に、芳香族ビニル化合物を用いる場合、芳香族ビニル化合物の使用量」についての記載、段落[0078]には「共役ジエン単位のビニル結合量を調整する剤」についての記載はあるものの、「共役ジエン系重合体」と任意に使用できるゴム成分に過ぎない「ブタジエンゴム」との「溶解度パラメーターの差」を、本件発明1における特定の範囲としようとする動機付けとなる記載があるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
さらに、甲第2~3号証の記載をみても、甲1発明A1及び甲1発明C1の「共重合体(45)」と「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の「溶解度パラメーターの差」、甲1発明B1及び甲1発明D1の「共重合体(52)」と「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の「溶解度パラメーターの差」を本件発明1における特定の範囲としようとする動機付けとなる記載があるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
(3)令和4年12月5日付け意見書における申立人の主張について
令和4年12月5日付け意見書において、申立人は、以下の主張をしている。
「・・・甲第1号証の発明A(実施例95)、甲第1号証の発明C(実施例158)は、「溶解度パラメーターの差」が「約1.007685~1.028385」であり、下限値である「1.007685」は、本件特許の上限である「1.00」に対し、わずかに、「0.007」異なるのみであり、その差は、「0.7%」と非常に小さなものであります。特に、本件特許の明細書の実施例2によれば、本件特許の「溶解度パラメーターの差」の上限値である「1.00」であれば、本件特許の効果を奏することができるのに対し、「溶解度パラメーターの差」の値が、わずかに、「0.007」だけ高くなった場合に、本件特許の効果が奏されなくなるという事情があるとは到底考えられず、そのため、「溶解度パラメーターの差」を「0.82超過1.00以下」とすることによる技術的な臨界的意義が存在するとは到底考え得ないと思料いたします」(当該意見書の「(3)訂正された「溶解度パラメーターの差」の数値範囲の臨界的意義について」の項目を参照)、
「特許権者は、請求項1について、『前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターの差が0.82超過1.00以下であり、』との訂正を行った上で、甲第1号証の発明A(実施例95)、甲第1号証の発明C(実施例158)に対し、「溶解度パラメーターの差」が、わずかに、「0.007」異なることに基づき、本件特許発明が新規性、進歩性を有する旨主張するものであります。しかしながら、本件特許における「溶解度パラメーターの差」の有効数字から考えても、このような特許権者の主張は、失当であるといえます。・・・本件特許の明細書中では、実施例2の両末端スチレンーブタジェンゴムの溶解度パラメーターは、「18.17」とされておりますが、実際に計算すると、「18.1671」であることから、本件特許におきましては、「溶解度パラメーターの差」を求める際に、四捨五入操作等の有効数字についての操作が行われたものと判断できます。・・・そもそも、本件特許の明細書では、「少数点第三位」は、四捨五入可能な範囲として認識されている程度のものであるといえることから、たとえ、本件特許発明における「溶解度パラメーターの差」と、甲第1号証の発明A(実95)、甲第1号証の発明C(実施例158)の「溶解度パラメーターの差」とが、「0.007」と、「少数点第三位」のレベルにおいて相違していたとして も、その相違は、技術的な相違あるいは実質的な相違とは言い得ないものと思料いたします」(当該意見書の「(4)訂正された「溶解度パラメーターの差」の有効数字について」の項目を参照)
申立人の当該主張について検討すると、確かに、本件発明1の「第1合成ゴム」と「第2合成ゴム」の「溶解度パラメーターの差」が「0.82超過1.00以下」であることについて、甲第1号証の発明A(実95)、甲第1号証の発明C(実施例158)の「溶解度パラメーターの差」とが、「1.007」の場合には、本件発明1の当該範囲の上限である「1.00」に対して「0.007」の違いのみであり微差ともいえる。
しかしながら、甲1発明A1(実施例95)及び甲1発明C1(実施例158)の「共重合体(45)」と「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の「溶解度パラメーターの差」は、「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の「ビニル結合の含量」が「0~3質量%」と幅があることに起因して、「約1.007685~1.028385」と幅があるものであり、最大値である「1.028385」の場合は、本件発明1の当該範囲の上限である「1.00」に対して「0.028」となり、本件発明1の当該範囲の有効数字は小数点以下2桁であるから、当該値は、有効数字を考慮しても単なる微差とも直ちにいうことはできない。
したがって、甲1発明A1(実施例95)及び甲1発明C1(実施例158)の「共重合体(45)」と「ブタジエンゴム(宇部興産(株)製のウベポールBR150B)」の「溶解度パラメーターの差」の最小値が「1.007685」であることのみをもって、甲1発明A1(実施例95)及び甲1発明C1(実施例158)における「溶解度パラメーターの差」が本件発明1の当該範囲の上限である「1.00」に対して微差と直ちに判断することはできない。
そして、上記「(2)判断」で述べたとおり、甲第1号証には、「共重合体(45)」である「共役ジエン系重合体」と任意に使用できるゴム成分に過ぎない「ブタジエンゴム」との「溶解度パラメーターの差」を、本件発明1における特定の範囲としようとする動機付けとなる記載があるとはいえない。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記「2 本件発明1について」「(2)判断」で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)取消理由A(新規性)、取消理由B(進歩性)、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由A(新規性)、取消理由B(進歩性)、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)によって、本件発明1、3~6に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
特許第6934075号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第6934075号の請求項2に係る特許に対する申立てを却下する。
当審が通知した取消理由および申立人がした申立理由によっては、請求項1、3-6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3-6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700089