特許異議申立
2021-701173
ゴム組成物
- 審判番号
- 2021-701173
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-501499外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6892966
- 請求日
- 2021年12月13日
- 審決日
- 2022年11月30日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人池内アンドパートナーズ
- 【異議申立人】藤央弁理士法人
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6892966号発明「ゴム組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6892966号の特許請求の範囲を令和4年7月22日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第6892966号の請求項1-9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6892966号(請求項の数9。以下、「本件特許」という。)は、2019年(平成31年)4月10日(優先権主張 2018年(平成30年)5月17日、韓国(KR))を国際出願日とする特許出願(特願2020-501499号、以下「本願」という。)に係るものであって、令和3年6月1日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、同年6月23日である。)
その後、令和3年12月13日に、本件特許の請求項1~9に係る特許に対して、特許異議申立人である特許業務法人藤央特許事務所(その後、令和4年8月16日受理の名称変更の手続により、「藤央弁理士法人」となった。以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
(1)特許異議の申立て後の経緯
令和4年 4月20日付け 取消理由通知
同年 7月22日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年 8月 1日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛)
なお、当該通知に対し、申立人からの応答はなかった。
(2)証拠方法
ア 申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠方法
申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。
・甲第1号証:特開2012-149239号公報
イ 特許権者が令和4年7月22日付け意見書に添付して提出した証拠方法
・乙第1号証:「実験成績証明書」、エルジー・ケミ・リミテッド、研究員ナ、ユク-ヨルによる、2022年7月21日
第2 訂正の適否についての判断
令和4年7月22日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。
(以下、「本件訂正」という。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。以下、下線は当審で付与した。)
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「少なくとも一末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムであり」を、「両末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムであり」へ訂正する。
(2)一群の請求項
訂正前の請求項2~9は、それぞれ訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正前の請求項1~9は一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。
2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴム」の「官能基」の「末端」での結合について、訂正前は「少なくとも一末端」と「一末端」のみか「両末端」の両方の態様があったのを、本件訂正により「両末端」に結合と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1の訂正前の請求項1の「官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴム」の「官能基」の「末端」での結合について「両末端」に結合すると特定する訂正は、本件明細書の段落【0030】の「本発明の一実施形態による前記第1合成ゴムは、一末端若しくは両末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムであってよく、・・・前記第1合成ゴムが両末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムの場合、両末端それぞれにアミン基及びアミノアルコキシシラン基が結合されているものであるか、一末端にアミン基が結合されており他の一末端にはアミノアルコキシシラン基が結合されているものであってよい」との記載、本件明細書の実施例の段落【0095】の「溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF3925、LG化学)」、段落【0096】の「溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量43重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF4325、LG化学)」、段落【0097】の「溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)」との記載からみて、新規事項の追加に当たらないことは明らかであり、また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。
(2)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1による請求項1~9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第6892966号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1~9に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
第1合成ゴムと、
第2合成ゴムと、
充填剤とを含み、
前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターの差が0.6より大きく、
前記第1合成ゴムは、0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、両末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムであり、
前記第2合成ゴムは、少なくとも一末端に官能基が結合されているリチウム触媒存在下で重合された変性ブタジエン系ゴムである、ゴム組成物。
【請求項2】
前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターの差が0.8より大きく、1.1以下である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記第1合成ゴムは、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位及び芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位を含む溶液重合共役ジエン系ゴムである、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記第2合成ゴムは、重合体内のビニル結合の含量が50重量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム組成物は、前記第1合成ゴム及び前記第2合成ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、前記第1合成ゴムを30重量部から90重量部と、前記第2合成ゴムを10重量部から70重量部と、前記充填剤を30重量部から200重量部とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記充填剤は、シリカ又はカーボンブラックである、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ゴム組成物は、加硫剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム組成物は、加硫促進剤、プロセス油及び老化防止剤の中から選択される一つ以上の添加剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて製造されたタイヤ。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が令和4年4月20日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)取消理由A(新規性)
本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)取消理由B(進歩性)
本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立て理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。(取消理由Aと同旨)
第5 本件明細書、甲第1号証、乙第1号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(本a)「【0002】
本発明は、ゴム成分間の相溶性を調節して、耐磨耗性に優れつつも引張特性及び粘弾性特性が改善されたゴム組成物、及びこれを用いて製造されたタイヤに関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであり、ゴム成分間の相溶性を調節して、耐磨耗性に優れつつも引張特性及び粘弾性特性が改善されたゴム組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、第1合成ゴムと、第2合成ゴムと、充填剤とを含み、前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターが0.6を超過して差があるものであり、前記第1合成ゴムは、結合スチレン含量が30重量%以上の溶液重合共役ジエン系ゴムであり、前記第2合成ゴムは、少なくとも一末端に官能基が結合されているリチウム触媒化変性ブタジエン系ゴムのものであるゴム組成物を提供する。
・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明によるゴム組成物は、第1合成ゴム及び第2合成ゴムの異種ゴム成分を含み、且つ、互いに溶解度パラメーターが特定範囲で差があるように第1合成ゴムと第2合成ゴムを選択して含むことで、ゴム間の相溶性を調節でき、このため、耐磨耗性に優れつつ引張特性及び粘弾性特性が改善され得る。また、前記ゴム組成物は、第2合成ゴムとして少なくとも一末端に官能基が結合されたリチウム触媒化変性ブタジエンゴムを含むことで充填剤との親和性がより優れるため、ゴム組成物内の充填剤の分散性がより改善され得、これにより粘弾性が大きく向上され得る。
・・・
【0016】
本発明において用いられる用語「溶解度パラメーター(solubility parameter、δ)」は、物質の混合の尺度となる物質の特定値を示すものであり、公知された溶解度パラメーター計算式(RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY:November 1996,Vol.69,No.5,pp.769-780)である下記数式1によって計算した。
【0017】
[数式1]
δ=17.17+0.0272(スチレン重量%)-0.0069(ビニル重量%)
本発明は、耐磨耗性に優れつつも引張特性及び粘弾性特性が改善されたゴム組成物を提供する。」
(本b)「【0025】
[第1合成ゴム]
本発明の一実施形態において、前記第1合成ゴムは、結合スチレン含量が30重量%以上の溶液重合共役ジエン系ゴムのものであってよい。
・・・
【0030】
また、本発明の一実施形態による前記第1合成ゴムは、少なくとも一末端に官能基が結合されている変性共役ジエン系ゴムであってよく、このとき、前記官能基は、アミン基及びアミノアルコキシシラン基から選択された何れか一つ以上であってよい。具体的に、本発明の一実施形態による前記第1合成ゴムは、一末端若しくは両末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムであってよく、前記第1合成ゴムが一末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムの場合、一末端にアミン基及びアミノアルコキシシラン基のうち何れか一つ以上が結合されているものであってよく、前記第1合成ゴムが両末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムの場合、両末端それぞれにアミン基及びアミノアルコキシシラン基が結合されているものであるか、一末端にアミン基が結合されており他の一末端にはアミノアルコキシシラン基が結合されているものであってよい。」
(本c)「【0058】
[第2合成ゴム]
本発明の一実施形態において、前記第2合成ゴムは、前述した通り少なくとも一末端に官能基が結合されているリチウム触媒化変性ブタジエン系ゴムであってよい。
・・・
【0062】
一方、本発明の一実施形態による前記リチウム触媒化変性ブタジエン系ゴムは、一例として、リチウム含有化合物を含む触媒組成の存在下で共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造し、製造された活性重合体と変性剤を反応させて製造されるものであってよい。これによって製造された前記リチウム触媒化変性ブタジエン系ゴムは、変性剤由来の官能基が容易に導入され得、狭い分子量分布を有し得、結果的に燃費特性に優れ得る。」
(本d)「【0078】
[充填剤]
本発明の一実施形態において、前記充填剤は、ゴム成分と混合されゴム組成物の物性を改善させる役割をするものであり、具体的にはシリカであってよい。
・・・
【0080】
一方、本発明の一実施形態による前記ゴム組成物は、前述したゴム成分以外に必要に応じて他のゴム成分をさらに含んでよく、このとき、前記他のゴム成分は、ゴム組成物の全体重量に対して90重量%以下の含量で含まれてよい。
・・・
【0082】
また、本発明の一実施形態によるゴム組成物は、硫黄架橋性であってよく、これによって加硫剤をさらに含んでよい。
【0085】
本発明の一実施形態による前記ゴム組成物は、前記の成分以外に、通常ゴム工業界で用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂等をさらに含んでよい。」
(本e)「【0092】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、これらだけに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0093】
実施例及び比較例において、ゴム成分を除いた他の成分の重量部は、各実施例及び比較例で用いられたゴム成分100重量部を基準にして示しており、ここで、ゴム成分は、実施例及び比較例で用いられた各スチレン-ブタジエンゴムとブタジエンゴム内のオイルを除いた純粋ゴムだけを示すものである。
【0094】
また、実施例及び比較例においてゴム成分を除いた他の成分は、同一物質を用いており、カップリング剤はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、プロセス油はTDAEオイル、加硫促進剤はCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)及びDPG(ジフェニルグアニジン)を混合して用いた。
【0095】
[実施例1]
溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF3925、LG化学)63重量部(ゴム成分60重量部、オイル3重量部)、一末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴム(ビニル含量10重量%、エクステンダー油含量5重量%)(LG F0010、LG化学)42重量部(ゴム成分40重量部、オイル2重量部)、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油25.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴムと一末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.96であった(溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=18.06、一末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.10)。
【0096】
[実施例2]
溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量43重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF4325、LG化学)63重量部(ゴム成分60重量部、オイル3重量部)、一末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴム(ビニル含量10重量%、エクステンダー油含量5重量%)(LG F0010、LG化学)42重量部(ゴム成分40重量部、オイル2重量部)、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油25.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴムと一末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、1.07であった(溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=18.17、一末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.10)。
【0097】
[実施例3]
溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF3925、LG化学)78.8重量部(ゴム成分75重量部、オイル3.8重量部)、一末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴム(ビニル含量10重量%、エクステンダー油含量5重量%)(LG F0010、LG化学)26.3重量部(ゴム成分25重量部、オイル1.3重量部)、シリカ90重量部、カップリング剤7.2重量部、プロセス油34.9重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴムと一末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.96であった(溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=18.06、一末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.10)。
【0098】
[比較例1]
溶液重合した単末端スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量21重量%、ビニル含量50重量%、エクステンダー油含量5重量%)(F2150、LG化学)63重量部(ゴム成分60重量部、オイル3重量部)、未変性希土類触媒化ブタジエンゴム(CB24、Lanxess)40重量部、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油27.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した単末端スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.23であった(溶液重合した単末端変性スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.40、希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
【0099】
[比較例2]
溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF3925、LG化学)63重量部(ゴム成分60重量部、オイル3重量部)、未変性希土類触媒化ブタジエンゴム(CB24、Lanxess)40重量部、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油27.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.89であった(溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=18.06、未変性希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
【0100】
[比較例3]
溶液重合した単末端スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量21重量%、ビニル含量50重量%、エクステンダー油含量5重量%)(F2150、LG化学)63重量部(ゴム成分60重量部、オイル3重量部)、単末端変性リチウム触媒化ブタジエンゴム(ビニル含量10重量%、エクステンダー油含量5重量%)(LG F0010、LG化学)42重量部(ゴム成分40重量部、オイル2重量部)、シリカ70重量部、カップリング剤5.6重量部、プロセス油25.0重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.30であった(溶液重合した単末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.40、単末端リチウム触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.10)。
【0101】
[比較例4]
溶液重合した両末端変性スチレン-ブタジエンゴム(スチレン含量39重量%、ビニル含量25重量%、エクステンダー油含量5重量%)(MF3925、LG化学)78.8重量部(ゴム成分75重量部、オイル3.8重量部)、未変性希土類触媒化ブタジエンゴム(CB24、Lanxess)25重量部、シリカ90重量部、カップリング剤7.2重量部、プロセス油36.2重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸1重量部を配合して1次配合物を製造し、ここに硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.8重量部を配合してゴム組成物を製造した。このとき、溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムと希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーターの差(△)は、0.89であった(溶液重合した両末端スチレン-ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=18.06、未変性希土類触媒化ブタジエンゴムの溶解度パラメーター=17.17)。
【0102】
<実験例>
前記実施例及び比較例で製造された各ゴム組成物及びこれから製造された成型品の物性を比較分析するために、引張特性、耐磨耗性及び粘弾性特性をそれぞれ測定し、その結果を下記表1及び表2に示した。また、前記実施例及び比較例の各ゴム組成物の製造に用いられたゴム成分及びその他成分と各含量も、表1及び表2に共に示した。
【0103】
1)引張特性
引張特性は、ASTM 412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の切断時の引張強度及び300%伸張時の引張応力(300%モデュラス)を測定した。具体的に、引張特性はUniversal Test Machin 4204(Instron社)引張試験機器を利用し、室温で50cm/minの速度で測定した。
【0104】
2)耐磨耗性
前記引張特性と同じ方法で製造されたゴム試料の耐磨耗性を、DIN摩耗試験機器を利用して磨耗紙が付けられた回転ドラム(Drum)に10Nの荷重を付加し、ゴム試料をドラムの回転方向の直角方向に移動させた後、摩耗された損失重量を測定しており、比較例2の損失重量を基準に指数化して示した。ドラムの回転速度は40rpmであり、試験完了時の試料の全体移動距離は40mである。損失重量の指数値が大きいほど耐磨耗性に優れたものを示す。
【0105】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析機(TA社、ARES G2)を利用してねじりモードで周波数10Hz、各測定温度(-100℃~80℃)で変形を変化させG’’(dynamic loss modulus、E’’)とtanδを測定した。0℃の低温におけるtanδの指数値が高いものであるほど濡れた路面への抵抗性(制動性能)に優れ、60℃の高温におけるtanδの指数値が高いほどヒステリシス損失が少なく、低走行抵抗性(燃費性能)に優れることを示す。
【0106】
また、前記動的機械分析機を介して温度スウィープ試験を行い、G’’変化を測定しており、これを介してゴム間の相溶性差による相分離現象を確認しており、結果を図1に示した。
【0107】
4)TEM(Transmission Electron Microscopy)分析
TEMイメージは、Titan G2 80-200 Field Emission Transmission Electron Microscope装備(TEI社)を利用して各ゴム組成物をミクロトームにより薄片に製作し、20K~200Kの倍率で測定しており、結果は図2に示した。
【0108】
【表1】
[図:0001393992000001.jpg]
【0109】
前記表1において、実施例1、実施例2、比較例2及び比較例3の引張特性、耐磨耗性及び粘弾性の結果値は、比較例1の測定値を基準に指数化して示したものである。前記表1に示された通り、本発明の一実施形態による実施例1及び実施例2が、比較例1から比較例3対比耐磨耗性が類似水準に優れつつも引張特性及び粘弾性特性が大きく改善されることを確認した。
【0110】
具体的に、実施例1及び実施例2は、優れた耐磨耗性を有しつつ引張特性及び粘弾性特性が大きく改善されたが、異種の合成ゴムを含み、且つ二つの合成ゴム間の溶解度パラメーターの差が0.6以下である比較例1及び比較例3の場合には、引張特性及び粘弾性特性が実施例1及び実施例2対比著しく低下したことを確認した。
【0111】
また、図1に示された通り、実施例1及び実施例2の場合、変曲点が二つであるが、比較例1及び比較例3は、変曲点が1つであることが確認できる。ここで、変曲点は、通常硝子転移温度と判断され、よって変曲点が二つであることは、二つの硝子転移温度が存在することを示すものである。すなわち、実施例1及び実施例2の場合、二つの合成ゴム間の溶解度パラメーターの差を特定範囲に調節し、ゴム組成物内の各ゴム成分が完全に均一な状態で混合されないように相溶性を調節することで、二つの合成ゴム間の相分離によって二つの硝子転移温度を示し得、比較例1及び比較例3の場合には、二つの合成ゴム間の溶解度パラメーターの差が小さいため、ゴム組成物内の各ゴム成分が完全に均一な状態で混合されることで一つの相を有することから、一つの硝子転移温度を示すことが分かる。
【0112】
前記の結果を介して、実施例1及び実施例2の場合、二つの合成ゴム間の溶解度パラメーターの差を特定範囲以上に調節し、ゴム組成物内の各ゴム成分が完全に均一な状態で混合されないように相溶性を調節することで、前記二つの合成ゴム間の相分離によって合成ゴムそれぞれで発現する効果が維持される一方、比較例1及び比較例3の場合には、二つの合成ゴム間の溶解度パラメーターの差が小さいため、ゴム組成物内の各ゴム成分が完全に均一な状態で混合されることで、前記各合成ゴムで発現する効果が維持されないことが確認できる。
【0113】
また、図2のTEMイメージを介して、実施例1の場合、比較例1及び比較例2対比ゴム組成物内の充填剤の分散性が著しく優れることが確認できる。比較例1及び比較例2のTEMイメージに示された通り、通常ブタジエンゴムの場合には、シリカとの親和性が低いためブタジエンゴム周辺にシリカが均一に分散されない問題がある。しかし、本願実施例1の場合には、シリカがゴム組成物全体に均一に分散されており、これを介して本発明のゴム組成物は、第2合成ゴムとして少なくとも一末端に官能基が結合されているリチウム触媒化変性ブタジエンゴムを含むことで、シリカとの親和性に優れることが確認できる。また、結果的に本発明ゴム組成物は、充填剤との親和性により優れ、このため、粘弾性特性がより著しく改善され得ることが確認できる。
【0114】
一方、比較例2の場合には、二つの合成ゴムを含み、且つ溶解度パラメーターの差を本発明で提示する範囲に調節することで、実施例1と比較して耐磨耗性及び引張特性は類似水準を示したが、粘弾性特性が大きく低下することを確認した。
【0115】
【表2】
[図:0001393992000002.jpg]
【0116】
前記表2において、実施例3の引張特性、耐磨耗性及び粘弾性結果値は、比較例4の測定値を基準に指数化して示したものである。
【0117】
前記表2に示された通り、本発明の一実施形態による実施例3が比較例4対比引張特性及び耐磨耗性は類似水準に優れつつも粘弾性特性が大きく改善されることを確認した。ここで、実施例3及び比較例4は、それぞれ実施例1及び比較例2対比第1合成ゴムとシリカの比率を増加させて第2合成ゴムの比率を減少させたものであり、ゴム組成物内の比率が異なっていても本発明の一実施形態による実施例3は、優れた引張特性及び耐磨耗性を維持しつつ粘弾性特性が大きく改善されることが分かる。」
2 甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(甲1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が-60℃以上、-10℃以下である変性共役ジエン系ゴム(A)と、
上記変性剤にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が-120℃以上、-50℃以下であり、上記変性共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20℃以上100℃以下低い変性共役ジエン系ゴム(B)と、
の混合物を含み、
変性共役ジエン系ゴム(A)と変性共役ジエン系ゴム(B)との重量混合比が、変性共役ジエン系ゴム(A):変性共役ジエン系ゴム(B)にて、(50:50)~(95:5)である、変性共役ジエン系ゴム組成物。
【請求項2】
上記変性共役ジエン系ゴム(A)は、共役ジエン単量体単位40重量%以上、95重量%以下と、芳香族ビニル単量体単位5重量%以上、60重量%以下と、を含み、かつ、上記変性共役ジエン系ゴム(A)の共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量が90重量%以下であり、
上記変性共役ジエン系ゴム(B)は、共役ジエン単量体単位70重量%以上と、芳香族ビニル単量体単位30重量%以下と、を含み、かつ、上記変性共役ジエン系ゴム(B)の共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量が55重量%以下である、請求項1に記載の変性共役ジエン系ゴム組成物。
【請求項3】
上記変性剤が下記一般式(I)で示されるポリオルガノシロキサンである、請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系ゴム組成物。
・・・
【請求項4】
上記変性共役ジエン系ゴム(A)及び上記変性共役ジエン系ゴム(B)は、それぞれ、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、上記変性剤に含まれるエポキシ基及び/又はアルコキシ基を、当該エポキシ基及びアルコキシ基の総量/当該活性末端の比が0.03当量以上、0.6当量以下にて、反応させたものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性共役ジエン系ゴム組成物。
・・・
【請求項8】
請求項7に記載のゴム組成物を架橋してなる、ゴム架橋物。
【請求項9】
請求項8に記載のゴム架橋物を含む、タイヤ。」
(甲1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は変性共役ジエン系ゴム組成物、ゴム組成物、ゴム架橋物、タイヤ及び変性共役ジエン系ゴム組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、変性共役ジエン系ゴム組成物、この変性共役ジエン系ゴム組成物を含有するゴム組成物、このゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物、このゴム架橋物を含むタイヤ、及び変性共役ジエン系ゴム組成物の製造方法に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年の自動車用タイヤに対する要求性能の高まりを鑑みると、上述の特許文献に記載されたゴム組成物を用いても、そのゴム組成物から得られるゴム架橋物の耐摩耗性、低発熱性及びウェットグリップ性の性能が不十分な場合がある。
【0014】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低発熱性、耐摩耗性及びウェットグリップ性の性能バランスに優れるゴム架橋物を得るための変性共役ジエン系ゴム組成物を提供することにある。
・・・
【発明の効果】
【0028】
本発明により、低発熱性、耐摩耗性及びウェットグリップ性の性能バランスに優れるゴム架橋物と、それを得るための変性共役ジエン系ゴム組成物を提供することができる。」
(甲1c)「【0029】
<変性共役ジエン系ゴム組成物>
本発明に係る変性共役ジエン系ゴム組成物は、エポキシ基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が-60℃以上、-10℃以下である変性共役ジエン系ゴム(A)と、上記変性剤にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が-120℃以上、-50℃以下であり、上記変性共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20℃以上100℃以下低い変性共役ジエン系ゴム(B)と、の混合物を含み、変性共役ジエン系ゴム(A)と変性共役ジエン系ゴム(B)との重量混合比が、変性共役ジエン系ゴム(A):変性共役ジエン系ゴム(B)にて、(50:50)~(95:5)である。本発明に係る変性共役ジエン系ゴム組成物によれば、低発熱性、耐摩耗性及びウェットグリップ性の性能バランスに優れるゴム架橋物を得ることができる。「性能バランスに優れる」とは、低発熱性、耐摩耗性及びウェットグリップ性が全て優れていることはもちろん、いずれかの性能が若干劣っていたとしても他の性能が優れていることからタイヤ等の用途に好適に用いることができることも包含する。
【0030】
〔変性剤〕
本発明に係る変性共役ジエン系ゴム組成物に含まれる変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)は、いずれも、エポキシ基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られる。
【0031】
本明細書において「変性剤」とは、1分子中に、共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有するものであり、本発明においては、この官能基はエポキシ基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であり、その数は、1分子中に3以上である(以下、このような変性剤を「変性剤(C)」という。)。そして、異なる共役ジエン系重合体鎖の活性末端とそれぞれ反応して、変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)をそれぞれ与える。エポキシ基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有する変性剤(C)を用いることにより、変性剤(C)と共役ジエン系重合体鎖とを高効率に結合させることができるため、変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)とシリカとの親和性が高まる。また、変性剤(C)を介して、高分岐の構造体が形成されるため、分子量が大きい変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を得ることができる。
・・・
【0045】
変性剤(C)の使用量については、目的とする変性共役ジエン系ゴム組成物、ゴム組成物、ゴム架橋物、タイヤの性能に応じて適宜設定できるが、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、変性剤(C)に含まれるエポキシ基及び/又はアルコキシ基を、当該エポキシ基及びアルコキシ基の総量/当該活性末端の比が0.03当量以上、0.6当量以下にて反応させる量であることが好ましく、0.1当量以上、0.5等量以下で反応させる量であることがより好ましく、0.2当量以上、0.5等量以下で反応させることが特に好ましい。この範囲であれば、低発熱性、耐摩耗性及びウェットグリップ性の性能バランスに優れるゴム架橋物を与える変性共役ジエン系ゴム組成物に含まれる変性共役ジエン系ゴムを得ることができる。また、当該エポキシ基及びアルコキシ基の総量/当該活性末端の比をこの範囲にすることにより、変性剤(C)を介して、高分岐の構造体が形成されるため、分子量が大きい変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を得ることができ、その結果、得られるゴム架橋物は耐摩耗性に優れる。」
(甲1d)「【0046】
〔変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)〕
変性共役ジエン系ゴム(A)は、ガラス転移温度が-60℃以上、-10℃以下であり、変性剤(C)で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものである。
【0047】
変性共役ジエン系ゴム(B)は、ガラス転移温度が-120℃以上、-50℃以下であり、且つ、変性共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20℃以上100℃以下低く、変性剤(C)で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものである。
【0048】
変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を得るための、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、例えば、共役ジエン単量体単独、又は共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体等の種々の単量体を後述する特定の条件下、特定の開始剤を用いて重合することにより得ることができる。
・・・
【0060】
変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)は、それぞれ、変性剤(C)にて、活性末端を有する、異なる共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部をそれぞれ変性させて得られるものである。
・・・
【0072】
変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)は、変性剤(C)にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性される他に、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の一部は、本発明の効果を阻害しない範囲で、重合停止剤、変性剤(C)以外の重合末端変性剤、及びカップリング剤等を重合系内に添加して一部の共役ジエン系重合体鎖の活性末端を不活性化してもよい。これらの中でも、一部の共役ジエン系重合体鎖をカップリング剤と反応させることが好ましい。
【0074】
カップリング剤の使用量は、特に限定されず、カップリング剤の種類や要求されるカップリング率によって適宜選択されるが、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、カップリング剤の反応点を、カップリング剤の反応点の総量/当該活性末端の比が、0.01当量以上、0.9当量以下であることが好ましく、0.05当量以上、0.7当量以下であることがより好ましく、0.1当量以上、0.5当量以下であることがさらに好ましい。カップリング剤の使用量が上記範囲内であると、カップリング剤を介して、高分岐の構造体が形成されるため、分子量が大きい変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を得ることができ、その結果、得られるゴム架橋物は耐摩耗性に優れる。
【0075】
これらのカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、変性剤(C)及びカップリング剤等を添加する際には、反応を良好に制御する観点から、それらを不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましい。変性剤(C)及びカップリング剤等の不活性溶媒中溶液濃度は、1重量%以上、50重量%以下の範囲とすることが好ましい。
【0077】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と変性剤(C)及びカップリング剤等との反応は、例えば、共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、変性剤(C)及びカップリング剤等を添加することにより行なうことができる。変性剤(C)及びカップリング剤等を添加する時期は、特に限定されないが、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、好ましくは100ppm以上、より好ましくは300ppm以上、50,000ppm以下の単量体を含有している状態で、この溶液に変性剤(C)及びカップリング剤等を添加することが望ましい。変性剤(C)及びカップリング剤等の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物との副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0078】
変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を得るにあたり、変性剤(C)及びカップリング剤等を2種以上併用する場合において、それらを重合系に添加する順序は特に限定されないが、カップリング剤の添加を変性剤(C)の添加より先に行なうことが好ましい。このような順序で添加を行なうことにより、カップリング剤を介して高分岐の構造体が形成されるため、分子量が大きい変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を得ることができ、その結果、得られるゴム架橋物は耐摩耗性に優れる。
・・・
【0081】
共役ジエン系重合体鎖の活性末端を失活させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤等の老化防止剤、クラム化剤及びスケール防止剤等を重合溶液に添加し、その後、直接乾燥及びスチームストリッピング等により重合溶液から重合溶媒を分離して、変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を回収する。重合溶液から重合溶媒を分離する前に、重合溶液に伸展油を混合し、変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を油展ゴムとして回収してもよく、この場合、変性共役ジエン系ゴム(A)と変性共役ジエン系ゴム(B)の両方を油展ゴムとしても、どちらか一方を油展ゴムとしてもよい。
【0082】
変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、例えば、パラフィン系、芳香族系及びナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸等が挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、変性共役ジエン系ゴム100重量部に対して、例えば、5重量部以上、100重量部以下、好ましくは10重量部以上、60重量部以下、より好ましくは15重量部以上、50重量部以下である。
【0083】
変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)は、2つ以上の共役ジエン系重合体鎖が、変性剤(C)又は上述したカップリング剤を介して結合された構造体を有していてもよく、そのような構造体を10重量%以上、80重量%以下、含有していることが好ましく、20重量%以上、70重量%以下、含有していることがより好ましい。2分岐以上の構造体を形成する場合、2つ以上の共役ジエン系重合体鎖は、反応後の変性剤(C)の残部又は反応後のカップリング剤の残部を介して結合されている。このような構造体が上記範囲内であると、分子量が大きい変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)を得ることができ、その結果、得られるゴム架橋物は耐摩耗性に優れる。なお、本願においては、共役ジエン系ゴム全体に対する、2つ以上の共役ジエン系重合体鎖が、変性剤(C)又は上述したカップリング剤を介して結合された構造体の割合(重量分率)をカップリング率と表す。」
(甲1e)「【0091】
本発明に係る変性共役ジエン系ゴム組成物は、架橋剤及び充填剤等の配合剤を添加した上で、種々の用途に好適に用いることができる。中でも、充填剤としてシリカを配合した場合に、耐摩耗性、低発熱性、及びウェットグリップ性に優れるタイヤを得るために好適に用いられるゴム組成物を与える。
・・・
【0095】
<ゴム組成物>
本発明に係るゴム組成物は、上述した本発明に係る変性共役ジエン系ゴム組成物と、当該変性共役ジエン系ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、10重量部以上、200重量部以下のシリカと、を含むものである。
・・・
【0098】
タイヤの低発熱性をさらに改良する観点より、本発明に係るゴム組成物には、さらにシランカップリング剤を配合することが好ましい。・・・
【0099】
本発明に係るゴム組成物には、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック及びグラファイト等のカーボンブラックをさらに配合してもよい。
・・・
【0102】
本発明に係るゴム組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。架橋剤としては、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物及びメチロール基を有するアルキルフェノール樹脂等が挙げられる。中でも、硫黄が好ましい。架橋剤の配合量は、本発明に係るゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、より好ましくは0.1重量部以上、15重量部以下、さらに好ましくは0.5重量部以上、5重量部以下、特に好ましくは1重量部以上、4重量部以下である。架橋剤の配合量が上記範囲にあると、架橋が十分に行われ、得られるゴム架橋物の機械的特性が優れる。
・・・
【0105】
本発明に係るゴム組成物には、老化防止剤、スコーチ防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、充填剤(上述したシリカ及びカーボンブラックを除く)、粘着付与剤等の、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を、配合目的に応じて、適宜配合できる。」
(甲1f)「【実施例】
【0114】
各特性については、以下の方法に従って評価した。
・・・
【0124】
〔製造例1:油展変性共役ジエン系ゴムA〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、スチレン370g、1,3-ブタジエン205g、イソプレン25g及びテトラメチルエチレンジアミン2.7mmolを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを、シクロヘキサン、スチレン、1,3-ブタジエン及びイソプレンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n-ブチルリチウムを重合反応に用いる分として3.3mmolを加え、40℃で重合を開始した。
【0125】
重合を開始してから30分経過後、スチレン50g、1,3-ブタジエン335gを90分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は75℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、イソプレン15gを添加し10分間反応させた後、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。サンプリングした重合体の重量平均分子量は56.7万であった。
【0126】
少量の重合溶液をサンプリングした直後に、カップリング剤として1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.083mmolを20重量%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。
【0127】
次に、変性剤として下記構造式(IV)で表されるポリオルガノシロキサンA0.017mmolを40重量%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。
【0128】
その後、重合停止剤として、重合反応に使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムAを含有する溶液を得た。
【0129】
この変性共役ジエン系ゴムAを含有する溶液の一部を取り出し、ゴム成分100部あたり、老化防止剤として、2,4-ビス(n-オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール0.2部を添加した。次に、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、固形状ゴムの回収を行ない、ロールにかけて脱水し、さらに熱風乾燥機にて乾燥し、変性共役ジエン系ゴムAを得た。この変性共役ジエン系ゴムAのスチレン単位含有量、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量及びシス-1,4結合含有量、重量平均分子量、カップリング率、並びにガラス転移温度を測定した。この結果を表1に示す(以下、後述の製造例2~8において、製造例1と同様に、変性共役ジエン系ゴムを含有する溶液から固形状ゴムの回収を行なったものであって、製造例2、5、6、8については伸展油を加えないものについて、スチレン単位含有量、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量及びシス-1,4結合含有量、重量平均分子量、カップリング率、並びにガラス転移温度を測定した。この結果を表1に示す。)。
【0130】
この変性共役ジエン系ゴムAを含有する溶液の残部に、ゴム成分100部あたり、老化防止剤として、2,4-ビス(n-オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール0.2部、及び伸展油として、T-DAE(JX 日鉱日石エネルギー社製)25.0部を添加した。次に、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、固形状ゴムの回収を行ない、ロールにかけて脱水し、さらに熱風乾燥機にて乾燥し、油展変性共役ジエン系ゴムAを得た。油展変性共役ジエン系ゴムAについて、ムーニー粘度を測定した。その値を表1に示す。
【0131】
【化3】
[図:0001393992000003.jpg]
・・・
【0142】
〔製造例4:変性共役ジエン系ゴムD〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、1,3-ブタジエン600g及びテトラメチルエチレンジアミン0.1mmolを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを、シクロヘキサン、及び1,3-ブタジエンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n-ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.5mmolを加え、40℃で重合を開始した。
【0143】
重合を開始してから30分経過後、1,3-ブタジエン400gを90分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は75℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。サンプリングした重合体の重量平均分子量は24.3万であった。
【0144】
少量の重合溶液をサンプリングした直後に、カップリング剤として1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.298mmolを20重量%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。
【0145】
次に、変性剤としてポリオルガノシロキサンA0.043mmolを40重量%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。
【0146】
その後は、伸展油を添加せずに、油展ゴムとしなかった以外は、製造例1と同様の操作を行ない、変性共役ジエン系ゴムDを得た。また、変性共役ジエン系ゴムDのムーニー粘度を測定した。その値を表1に示す。
【0147】
〔製造例5:油展変性共役ジエン系ゴムE〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、スチレン420g、1,3-ブタジエン155g、イソプレン25g及びテトラメチルエチレンジアミン3.2mmolを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを、シクロヘキサン、スチレン、1,3-ブタジエン及びイソプレンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n-ブチルリチウムを重合反応に用いる分として2.8mmolを加え、40℃で重合を開始した。
【0148】
重合を開始してから30分経過後、スチレン40g、1,3-ブタジエン345gを90分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は75℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、イソプレン15gを添加し10分間反応させた後、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。サンプリングした重合体の重量平均分子量は58.6万であった。
【0149】
少量の重合溶液をサンプリングした直後に、カップリング剤として1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.070mmolを20重量%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。
【0150】
次に、変性剤としてポリオルガノシロキサンA0.014mmolを40重量%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。
【0151】
その後は製造例1と同様の操作を行ない、油展変性共役ジエン系ゴムEを得た。また、油展変性共役ジエン系ゴムEのムーニー粘度を測定した。その値を表1に示す。
【0152】
〔製造例6:油展変性共役ジエン系ゴムF〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、スチレン370g、1,3-ブタジエン205g、イソプレン25g及びテトラメチルエチレンジアミン2.7mmolを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを、シクロヘキサン、スチレン、1,3-ブタジエン及びイソプレンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n-ブチルリチウムを重合反応に用いる分として3.5mmolを加え、40℃で重合を開始した。
【0153】
重合を開始してから30分経過後、スチレン50g、1,3-ブタジエン335gを90分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は75℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、イソプレン15gを添加し10分間反応させた後、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。サンプリングした重合体の重量平均分子量は50.5万であった。
【0154】
少量の重合溶液をサンプリングした直後に、カップリング剤として1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.165mmolを20重量%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。
【0155】
次に、変性剤としてポリオルガノシロキサンA0.003mmolを40重量%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。
【0156】
その後は製造例1と同様の操作を行ない、油展変性共役ジエン系ゴムFを得た。また、油展変性共役ジエン系ゴムFのムーニー粘度を測定した。その値を表1に示す。
・・・
【0162】
【表1】
[図:0001393992000004.jpg]
・・・
【0168】
〔実施例1〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、変性共役ジエン系ゴムD20部及び油展変性共役ジエン系ゴムF80部を30秒素練りした。(各ゴムの部数は、油展ゴムにおいては伸展油分を除いたゴム成分としての値であり、「部」は、各々の実施例及び比較例にて使用した、各ゴムの伸展油分を除いたゴム成分の合計量を100部としたときの値であり、以下の説明においても同様である。)次いで、シリカ(Zeosil 1165MP、ローディア社製)50部及びシランカップリング剤(Si69、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、デグッサ社製)4.8部を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練した。次に、プロセスオイルとしてT-DAE(JX 日鉱日石エネルギー社製)5部、シリカ(Zeosil 1165MP)10部、カーボンブラック(シースト7HM、東海カーボン社製)5部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部、及び老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学社製)2部を添加した。その後、2.5分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させた。
【0169】
混練終了時のゴム混練物の温度は150℃であった。ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、3分間混練した。次に、ブラベンダータイプミキサーからゴム混練物を排出させた。
【0170】
次いで、50℃のオープンロールで、ゴム混練物、硫黄1.5部及び架橋促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド1.8部とジフェニルグアニジン1.5部の混合物)を混練した。そして、シート状のゴム組成物を取り出した。
【0171】
このゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して試験片を作製した。この試験片について、耐摩耗性、低発熱性及びウェットグリップ性の評価を行なった。表2にその結果を示す。なお、これらの評価の結果は、後述する比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0172】
〔実施例2~4、比較例1~5〕
ゴムの配合量を表2に示した量にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない、試験片を作製して、耐摩耗性、低発熱性及びウェットグリップ性の評価を行なった。表2にその結果を示す。なお、実施例2~4及び比較例1~5のそれぞれのゴム組成物は、オイル量が油展ゴムに含まれる伸展油分を含めて25部になるように、プロセスオイルにより調製した。
【0173】
【表2】
[図:0001393992000005.jpg]
」
3 乙第1号証に記載された事項
乙第1号証には、以下の事項が記載されている。
(乙1a)「
[図:0001393992000006.jpg]
」
(乙1b)「
[図:0001393992000007.jpg]
」
第6 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由A~B及び申立人がした申立理由1によっては、いずれも、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
取消理由A(新規性)と申立理由1(新規性)は同旨であり、また、取消理由A(新規性)、取消理由B(進歩性)及び申立理由1(新規性)はいずれも甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性に関する理由であるから、以下、併せて検討する。
1 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の(甲1f)の実施例1に着目すると、
「容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、
変性共役ジエン系ゴムD(スチレン単量体単位含有量:0%、ビニル結合含有量:11%、油展量:0wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)20部及び
油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)80部
を30秒素練りし、次いで、
シリカ(Zeosil 1165MP、ローディア社製)50部及び
シランカップリング剤(Si69、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、デグッサ社製)4.8部
を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練し、次に、
プロセスオイルとしてT-DAE(JX 日鉱日石エネルギー社製)5部、
シリカ(Zeosil 1165MP)10部、
カーボンブラック(シースト7HM、東海カーボン社製)5部、
酸化亜鉛3部、
ステアリン酸2部、及び
老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学社製)2部
を添加し、その後、2.5分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させ、ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、3分間混練し、次に、ブラベンダータイプミキサーからゴム混練物を排出させ、次いで、50℃のオープンロールで、
ゴム混練物、
硫黄1.5部及び
架橋促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド1.8部とジフェニルグアニジン1.5部の混合物)
を混練して、取り出したシート状のゴム組成物。」の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。
同様に、甲第1号証の実施例3に着目すると、
「容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、
油展変性共役ジエン系ゴムA(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)80部
変性共役ジエン系ゴムD(スチレン単量体単位含有量:0%、ビニル結合含有量:11%、油展量:0wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)20部及び
を30秒素練りし、次いで、
シリカ(Zeosil 1165MP、ローディア社製)50部及び
シランカップリング剤(Si69、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、デグッサ社製)4.8部
を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練し、次に、
プロセスオイルとしてT-DAE(JX 日鉱日石エネルギー社製)5部、
シリカ(Zeosil 1165MP)10部、
カーボンブラック(シースト7HM、東海カーボン社製)5部、
酸化亜鉛3部、
ステアリン酸2部、及び
老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学社製)2部
を添加し、その後、2.5分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させ、ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、3分間混練し、次に、ブラベンダータイプミキサーからゴム混練物を排出させ、次いで、50℃のオープンロールで、
ゴム混練物、
硫黄1.5部及び
架橋促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド1.8部とジフェニルグアニジン1.5部の混合物)
を混練して、取り出したシート状のゴム組成物。」の発明(以下「甲1発明B」という。)が記載されているといえる。
同様に、甲第1号証の実施例4に着目すると、
「容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、
油展変性共役ジエン系ゴムA(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)60部
変性共役ジエン系ゴムD(スチレン単量体単位含有量:0%、ビニル結合含有量:11%、油展量:0wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)40部及び
を30秒素練りし、次いで、
シリカ(Zeosil 1165MP、ローディア社製)50部及び
シランカップリング剤(Si69、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、デグッサ社製)4.8部
を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練し、次に、
プロセスオイルとしてT-DAE(JX 日鉱日石エネルギー社製)5部、
シリカ(Zeosil 1165MP)10部、
カーボンブラック(シースト7HM、東海カーボン社製)5部、
酸化亜鉛3部、
ステアリン酸2部、及び
老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学社製)2部
を添加し、その後、2.5分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させ、ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、3分間混練し、次に、ブラベンダータイプミキサーからゴム混練物を排出させ、次いで、50℃のオープンロールで、
ゴム混練物、
硫黄1.5部及び
架橋促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド1.8部とジフェニルグアニジン1.5部の混合物)
を混練して、取り出したシート状のゴム組成物。」の発明(以下「甲1発明C」という。)が記載されているといえる。
同様に、甲第1号証の比較例4に着目すると、
「容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、
変性共役ジエン系ゴムD(スチレン単量体単位含有量:0%、ビニル結合含有量:11%、油展量:0wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)20部及び
油展変性共役ジエン系ゴムE(スチレン単量体単位含有量:46%、ビニル結合含有量:50%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)80部
を30秒素練りし、次いで、
シリカ(Zeosil 1165MP、ローディア社製)50部及び
シランカップリング剤(Si69、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、デグッサ社製)4.8部
を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練し、次に、
プロセスオイルとしてT-DAE(JX 日鉱日石エネルギー社製)5部、
シリカ(Zeosil 1165MP)10部、
カーボンブラック(シースト7HM、東海カーボン社製)5部、
酸化亜鉛3部、
ステアリン酸2部、及び
老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学社製)2部
を添加し、その後、2.5分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させ、ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、3分間混練し、次に、ブラベンダータイプミキサーからゴム混練物を排出させ、次いで、50℃のオープンロールで、
ゴム混練物、
硫黄1.5部及び
架橋促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド1.8部とジフェニルグアニジン1.5部の混合物)
を混練して、取り出したシート状のゴム組成物。」の発明(以下「甲1発明D」という。)が記載されているといえる。
2 本件発明1について
(1)対比
ア 本件発明1と甲1発明Aとの対比
まず、本件発明1と甲1発明Aとを対比する。
甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、本件発明1の「第1合成ゴム」と同様に、「共役ジエン系ゴム」であるといえる。
甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」における「油展量」とは、甲第1号証の(甲1f)の段落【0130】の「この変性共役ジエン系ゴムAを含有する溶液の残部に、ゴム成分100部あたり、・・・、及び伸展油として、T-DAE(JX 日鉱日石エネルギー社製)25.0部を添加した」との記載の「伸展油」の量であり、この「伸展油」は、本件発明1の「エクステンダー油」と同義である。そして、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、本件発明1の「第1合成ゴム」と同様に、「0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油」を含むといえる。
甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、「スチレン単量体単位含有量:42%」であるから、本件発明1の「第1合成ゴム」と同様に、「結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下」であるといえる。
また、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」の「ポリオルガノシロキサンAによる変性」について、甲第1号証の(甲1f)の段落【0127】及び【0131】の「ポリオルガノシロキサンA」は、その化学構造からみて、「官能基」である「エポキシ基」を有しており、甲第1号証の(甲1f)の段落【0152】~【0156】の「油展変性共役ジエン系ゴムF」の製造方法からみて重合体を取得した後にポリオルガノシロキサンAを反応させて変性していることから、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」も、少なくとも一末端に「官能基が結合されている」といえる。
また、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、甲第1号証の(甲1f)の段落【0152】~【0153】の記載からみて、「シクロヘキサン」中で重合して製造されたものであるから、本件発明1の「第1合成ゴム」と同様に、「溶液重合変性共役ジエン系ゴム」であるといえる。
以上を踏まえると、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、本件発明1の「0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、少なくとも一末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴム」と、「0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴム」である限りにおいて一致する。
甲1発明Aの「変性共役ジエン系ゴムD(スチレン単量体単位含有量:0%、ビニル結合含有量:11%、油展量:0wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、甲第1号証の(甲1f)の段落【0142】~【0146】の製造方法に関する記載からみて、単量体として「1,3-ブタジエン」のみを用いているから、本件発明1の「第2合成ゴム」と同様に、「変性ブタジエン系ゴム」であるといえる。
甲1発明Aの「変性共役ジエン系ゴムD(スチレン単量体単位含有量:0%、ビニル結合含有量:11%、油展量:0wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、甲第1号証の(甲1f)の段落【0142】~【0146】の製造方法からみて重合体を取得した後に「ポリオルガノシロキサンAによる変性」されたものであるから、本件発明1の「第2合成ゴム」と同様に、「少なくとも一末端に官能基が結合されている」といえる。
また、甲1発明Aの「変性共役ジエン系ゴムD(スチレン単量体単位含有量:0%、ビニル結合含有量:11%、油展量:0wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、甲第1号証の(甲1f)の段落【0142】の記載からみて、「重合触媒」として「n-ブチルリチウム」を用いて製造されたものであるから、本件発明1の「第2合成ゴム」と同様に、「リチウム触媒存在下で重合された」ものといえる。
以上を踏まえると、甲1発明Aの「変性共役ジエン系ゴムD(スチレン単量体単位含有量:0%、ビニル結合含有量:11%、油展量:0wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、本件発明1の「少なくとも一末端に官能基が結合されているリチウム触媒存在下で重合された変性ブタジエン系ゴム」である「第2合成ゴム」に相当するといえる。
本件発明1の「第1合成ゴム」と「第2合成ゴム」の「溶解度パラメーター」について、本件明細書の(本a)の段落【0016】~【0017】には、「溶解度パラメーター(solubility parameter、δ)」について、
「[数式1]
δ=17.17+0.0272(スチレン重量%)-0.0069(ビニル重量%)」
により計算することが記載され、また、このうちの「ビニル重量(%)」について、本件明細書の段落【0029】には「前記ビニル含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体でなる共役ジエン系ゴム100重量%に対して、1,4-添加ではなく1,2-添加された共役ジエン系単量体の含量を意味してよい」と記載されているから、「[数式1]」における「ビニル重量(%)」とは、「ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体でなる共役ジエン系ゴム」全体を「100重量%」とした場合の、これに対する量であると解される。
一方、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」の「ビニル結合含有量」とは、甲第1号証の段落【0017】の「上記変性共役ジエン系ゴム(A)の共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量が90重量%以下であり、・・・」との記載からみて、「共役ジエン単量体単位」中の「ビニル結合含有量」であると解される。
ここで、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」について、「ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体でなる共役ジエン系ゴム」全体を「100重量%」とした場合の「ビニル重量(%)」を算出すると、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF」は甲第1号証の(甲1f)の段落【0152】~【0156】の製造方法からみて、「ビニル基を有する単量体」である「1,3-ブタジエン」と「イソプレン」と、「芳香族ビニル系単量体」である「スチレン」を重合したものであり、「油展変性共役ジエン系ゴムF」全体中の「1,3-ブタジエン」と「イソプレン」由来の含量は、
100重量%-42重量%(スチレン単量体単位含有量)=58重量%であり、このうちの30%が「ビニル結合含有量」であるから、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF」全体としては、17.4重量%(=58重量%×0.3(30%))の「ビニル重量(%)」を有するといえる。
以上を踏まえて、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF」の「溶解度パラメーター」を算出すると、
17.17+0.0272×42(スチレン重量%)-0.0069×17.4(ビニル重量%)=18.19234
となる。
同様にして、「変性共役ジエン系ゴムD(スチレン単量体単位含有量:0%、ビニル結合含有量:11%、油展量:0wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」の「溶解度パラメーター」を算出すると、
17.17+0.0272×0(スチレン重量%)-0.0069×11(ビニル重量%)=17.0941
となる。
そうすると、甲1発明Aにおける「油展変性共役ジエン系ゴムF」と「変性共役ジエン系ゴムD」との「溶解度パラメーター」の差は1.09824(=18.19234-17.0941)」であり、本件発明1と同様に「第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターの差が0.6より大き」いといえる。
甲1発明Aの「シリカ(Zeosil 1165MP、ローディア社製)」及び「カーボンブラック(シースト7HM、東海カーボン社製)」は、本件発明1の「充填剤」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明Aとは、
「第1合成ゴムと、
第2合成ゴムと、
充填剤とを含み、
前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターの差が0.6より大きく、
前記第1合成ゴムは、0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムであり、
前記第2合成ゴムは、少なくとも一末端に官能基が結合されているリチウム触媒存在下で重合された変性ブタジエン系ゴムである、ゴム組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:「第1合成ゴム」の末端の「官能基」について、本件発明1では、「両末端」に「官能基」が結合しているのに対して、甲1発明Aでは、「油展変性共役ジエン系ゴムF」の末端に「官能基」が結合しているものの、「両末端」に結合しているか不明である点。
イ 本件発明1と甲1発明B、Cとの対比
本件発明1と甲1発明B、Cとを、上記「ア 本件発明1と甲1発明Aとの対比」での検討、及び、甲第1号証の(甲1f)の段落【0124】~【0131】の「油展変性共役ジエン系ゴムA」の製造方法の記載を踏まえて行う。
甲1発明B、Cの「油展変性共役ジエン系ゴムA(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、本件発明1の「0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、少なくとも一末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴム」と、「0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴム」である限りにおいて一致する。
また、甲1発明B、Cの「油展変性共役ジエン系ゴムA(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF(スチレン単量体単位含有量:42%、ビニル結合含有量:30%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」と同じ「スチレン単量体単位含有量」と「ビニル結合含有量」を有するものであるから、甲1発明B、Cの「油展変性共役ジエン系ゴムA」の「溶解度パラメーター」は、「油展変性共役ジエン系ゴムF」と同じ「18.19234」となる。
そうすると、本件発明1と甲1発明B、Cとは、
「第1合成ゴムと、
第2合成ゴムと、
充填剤とを含み、
前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターの差が0.6より大きく、
前記第1合成ゴムは、0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムであり、
前記第2合成ゴムは、少なくとも一末端に官能基が結合されているリチウム触媒存在下で重合された変性ブタジエン系ゴムである、ゴム組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
相違点2:「第1合成ゴム」の末端の「官能基」について、本件発明1では、「両末端」に「官能基」が結合しているのに対して、甲1発明B、Cでは、「油展変性共役ジエン系ゴムA」の末端に「官能基」が結合しているものの、「両末端」に結合しているか不明である点。
ウ 本件発明1と甲1発明Dとの対比
本件発明1と甲1発明Dとを、上記「ア 本件発明1と甲1発明Aとの対比」での検討、及び、甲第1号証の(甲1f)の段落【0147】~【0151】の「油展変性共役ジエン系ゴムE」の記載を踏まえて行う。
甲1発明Dの「油展変性共役ジエン系ゴムE(スチレン単量体単位含有量:46%、ビニル結合含有量:50%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」は、本件発明1の「0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、少なくとも一末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴム」と、「0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴム」である限りにおいて一致する。
甲1発明Dの「油展変性共役ジエン系ゴムE(スチレン単量体単位含有量:46%、ビニル結合含有量:50%、油展量:20wt%、ポリオルガノシロキサンAによる変性)」の「溶解度パラメーター」は、上記本件明細書の(本a)の段落【0016】~【0017】の「[数式1]」から算出すると、
17.17+0.0272×46重量%(スチレン重量%)-0.0069×54重量%×0.5(ビニル重量%)=18.2349
となる。
そして、甲1発明Dにおける「油展変性共役ジエン系ゴムE」と「変性共役ジエン系ゴムD」との「溶解度パラメーター」の差は1.1408(=18.2349-17.0941)」であり、本件発明1と同様に「第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターの差が0.6より大き」いといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明Dとは、
「第1合成ゴムと、
第2合成ゴムと、
充填剤とを含み、
前記第1合成ゴムと第2合成ゴムは、溶解度パラメーターの差が0.6より大きく、
前記第1合成ゴムは、0重量%超過37.5重量%以下のエクステンダー油を含み、結合スチレン含量が38重量%以上55重量%以下であり、末端に官能基が結合されている溶液重合変性共役ジエン系ゴムであり、
前記第2合成ゴムは、少なくとも一末端に官能基が結合されているリチウム触媒存在下で重合された変性ブタジエン系ゴムである、ゴム組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
相違点3:「第1合成ゴム」の末端の「官能基」について、本件発明1では、「両末端」に「官能基」が結合しているのに対して、甲1発明Dでは、「油展変性共役ジエン系ゴムE」の末端に「官能基」が結合しているものの、「両末端」に結合しているか不明である点。
(2)判断
相違点1~3は、いずれも「第1の合成ゴム」の末端の「官能基」の結合に関する事項であるから、併せて検討する。
相違点1に係る甲1発明Aの「油展変性共役ジエン系ゴムF」、相違点2に係る甲1発明B、Cの「油展変性共役ジエン系ゴムA」及び相違点3に係る甲1発明Dの「油展変性共役ジエン系ゴムE」の製造方法を確認する。
(甲1f)の段落【0124】~【0128】、【0147】~【0156】には、「油展変性共役ジエン系ゴムA」、「油展変性共役ジエン系ゴムE」及び「油展変性共役ジエン系ゴムF」のいずれも、「スチレン」、「1,3-ブタジエン」及び「イソプレン」を「n-ブチルリチウム」を用いて重合を行い、その後、「カップリング剤」との反応、さらに「変性剤」として「構造式(IV)で表されるポリオルガノシロキサンA」を用いて変性を行っている。そうすると、「共役ジエン系ゴム」の重合物の片末端には「変性剤」である「構造式(IV)で表されるポリオルガノシロキサンA」に基づく基が存在しているものの、もう片方の末端には「n-ブチルリチウム」に由来するn-ブチル基が結合している蓋然性が高く、「両末端」に「官能基」が結合しているとはいえない。
したがって、相違点1~3は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
次に、相違点1~3について、甲第1号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
甲第1号証には、「変性共役ジエン系ゴム組成物」に含まれる「変性共役ジエン系ゴム(A)」及び「変性共役ジエン系ゴム(B)」の変性について、以下の記載がある。
・「本発明に係る変性共役ジエン系ゴム組成物は、エポキシ基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が-60℃以上、-10℃以下である変性共役ジエン系ゴム(A)と、上記変性剤にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られるものであり、ガラス転移温度が-120℃以上、-50℃以下であり、上記変性共役ジエン系ゴム(A)よりガラス転移温度が20℃以上100℃以下低い変性共役ジエン系ゴム(B)と、の混合物を含み・・・」((甲1c)の段落【0029】)
・「本発明に係る変性共役ジエン系ゴム組成物に含まれる変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)は、いずれも、エポキシ基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性させて得られる。」((甲1c)の段落【0030】)
・「本明細書において「変性剤」とは、1分子中に、共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有するものであり、本発明においては、この官能基はエポキシ基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であり、その数は、1分子中に3以上である(以下、このような変性剤を「変性剤(C)」という。)」((甲1c)の段落【0031】)
・「変性剤(C)の使用量については、目的とする変性共役ジエン系ゴム組成物、ゴム組成物、ゴム架橋物、タイヤの性能に応じて適宜設定できるが、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、変性剤(C)に含まれるエポキシ基及び/又はアルコキシ基を、当該エポキシ基及びアルコキシ基の総量/当該活性末端の比が0.03当量以上、0.6当量以下にて反応させる量であることが好ましく・・・」((甲1c)の段落【0045】)
・「変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)は、それぞれ、変性剤(C)にて、活性末端を有する、異なる共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部をそれぞれ変性させて得られるものである。」((甲1d)の段落【0060】)
・「変性共役ジエン系ゴム(A)及び変性共役ジエン系ゴム(B)は、変性剤(C)にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部を変性される他に、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の一部は、本発明の効果を阻害しない範囲で、重合停止剤、変性剤(C)以外の重合末端変性剤、及びカップリング剤等を重合系内に添加して一部の共役ジエン系重合体鎖の活性末端を不活性化してもよい。」((甲1d)の段落【0072】)
・「カップリング剤の使用量は、特に限定されず、カップリング剤の種類や要求されるカップリング率によって適宜選択されるが、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、カップリング剤の反応点を、カップリング剤の反応点の総量/当該活性末端の比が、0.01当量以上、0.9当量以下であることが好ましく、0.05当量以上、0.7当量以下であることがより好ましく、0.1当量以上、0.5当量以下であることがさらに好ましい。」((甲1d)の段落【0074】)
以上の記載、特に、「変性剤(C)」として「エポキシ基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を1分子中に3以上有している変性剤」を用いること、「変性剤(C)」の使用量について「エポキシ基及びアルコキシ基の総量/当該活性末端の比が0.03当量以上、0.6当量以下にて反応させる量」であることが好ましいこと、「カップリング剤」を用いる場合であってもその使用量は「カップリング剤の反応点を、カップリング剤の反応点の総量/当該活性末端の比が、0.01当量以上、0.9当量以下であることが好ましく、・・・0.1当量以上、0.5当量以下であることがさらに好ましい」との「変性剤」の種類や使用量や「カップリング剤」の使用量の記載からみて、「変性共役ジエン系ゴム(A)」又は「変性共役ジエン系ゴム(B)」の「両末端」を変性させることが記載されているとまではいえず、また、それらの「両末端」を変性させることが動機づけられるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明A~D及び甲第1号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記「2 本件発明1について」「(2)判断」で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 取消理由A(新規性)、取消理由B(進歩性)及び申立理由1(新規性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由A(新規性)取消理由B(進歩性)、申立理由1(新規性)によって、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
特許第6892966号の特許請求の範囲を令和4年7月22日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
当審が通知した取消理由および申立人がした申立理由によっては、本件発明1-9に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1-9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701173