特許異議申立
2022-700075
射出成形機
- 審判番号
- 2022-700075
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-565617外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6918841
- 請求日
- 2022年01月27日
- 審決日
- 2023年02月06日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.111-YAA(B29C) / P1651.112-YAA(B29C) / P1651.113-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第6項、特許法第126条、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6918841号発明「射出成形機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6918841号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4について訂正することを認める。
特許第6918841号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第6918841号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願(特願2018-565617号)は、平成30年(2018年)1月31日(先の出願に基づく優先権主張 平成29年1月31日)を国際出願日とする出願であって、令和3年7月27日にその特許権の設定登録がされ、同年8月11日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和4年1月27日に特許異議申立人 大山滋郎(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和4年 5月31日付け:取消理由通知書
令和4年 8月12日付け:意見書(特許権者)
令和4年 8月12日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和4年11月16日付け:意見書(特許異議申立人)
令和4年12月21日付け:上申書(特許異議申立人)
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6918841号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める、というものである。
(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記シリンダの前部に溜めた前記成形材料を前記金型装置の内部に充填する充填工程の開始前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する、射出成形機。」
と記載されているのを、
「金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記計量工程の完了前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する、射出成形機。」
に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記弁体移動機構は、前記ノズルに対し揺動自在に取り付けられて前記弁体に当接する揺動レバーと、前記揺動レバーを、前記弁体が前記開放位置から前記閉塞位置に移動する第1方向および該第1方向とは逆方向で前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除する第2方向に揺動させる流体圧シリンダとを有する、請求項1に記載の射出成形機。」
と記載されているのを、
「金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記シリンダの前部に溜めた前記成形材料を前記金型装置の内部に充填する充填工程の開始前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行し、
前記制御装置は、前記計量工程の完了後の前記スクリュの前進量、または、前記計量工程の完了後の前記スクリュの回転量を、前記成形材料の圧力が設定値以下になるように調整し、
前記弁体移動機構は、前記ノズルに対し揺動自在に取り付けられて前記弁体に当接する揺動レバーと、前記揺動レバーを、前記弁体が前記開放位置から前記閉塞位置に移動する第1方向および該第1方向とは逆方向で前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除する第2方向に揺動させる流体圧シリンダとを有する、射出成形機。」
に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記制御装置は、前記計量工程の完了後であって、前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを回転させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高める、請求項1または2に記載の射出成形機。」
と記載されているのを、
「金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを回転させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する、射出成形機。」
に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「前記制御装置は、前記計量工程の完了後であって、前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを前進させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高める、請求項1~3のいずれか1項に記載の射出成形機。」
と記載されているのを、
「金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを前進させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する、射出成形機。」
に訂正する。
オ 訂正事項5
明細書の段落【0007】に
「上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記シリンダの前部に溜めた前記成形材料を前記金型装置の内部に充填する充填工程の開始前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する、射出成形機が提供される。」
と記載されているのを、
「上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記計量工程の完了前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する、射出成形機が提供される。」
に訂正する。
(3)一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項〔1~4〕に対して請求されたものである。
また、特許権者から、請求項2~4についての訂正が認められるときは、請求項2、請求項3及び請求項4は、請求項1と別の訂正単位とする求めがあった。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1に係る訂正は、「弁体の固定を解除する」時期を、特許請求の範囲の請求項1において、「前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記シリンダの前部に溜めた前記成形材料を前記金型装置の内部に充填する充填工程の開始前に」と特定していたものを「前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記計量工程の完了前に」とするものであって、前記「弁体の固定を解除する」時期を、より時間的に狭い範囲に限定するものである。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
イ 訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0115】の「また、制御装置700は、予め設定されたタイミングで、流体圧シリンダ326に圧力を供給して揺動レバー325を第2方向に揺動させ、揺動レバー325を元の位置に戻す。これにより、揺動レバー325は、弁体322の閉塞位置から開放位置への移動を妨害しなくなる。従って、閉塞位置にある弁体322の固定が解除され、ノズル320の内部に溜まる成形材料の圧力による弁体322の開放位置への移動が可能になる。」及び【0116】の「揺動レバー325の第2方向への揺動は、例えば図6に示すように計量工程の途中からサックバック工程の開始の前までの所定のタイミング(例えば計量工程の完了の直前または計量工程の完了時に)で行われる。」という記載に基づくものである。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項1に係る訂正は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 特許異議申立人は、令和4年11月16日付け意見書2~3頁において、「弁体の固定解除が訂正前であれば技術的範囲に含まれていなかった『充填工程の開始後』のタイミングであっても『計量工程の完了前』であれば本請求項に係る特許の技術的範囲に含まれることになる」、「以上から請求項1に係る上記訂正は、特許法120条の5第2項第1項及び同条第9項で準用する特許法126条第6項に反する不適法なものである」と主張する。
しかしながら、本件請求項1に係る発明においては、計量工程の完了は、充填工程の開始前であるのが前提である(本件特許の明細書【0110】及び【図6】参照。)から、計量工程の完了前にノズルをオープンにすることが従来から行われていたとしても、そのことは上記ア及びイの判断を左右しない。
よって、当該主張は採用できない。
また、請求項1に対して特許異議の申立てがされているから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法126条7項の要件、いわゆる、独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項2において、請求項1の記載を引用しないものとした上で、「制御装置」を「前記計量工程の完了後の前記スクリュの前進量、または、前記計量工程の完了後の前記スクリュの回転量を、前記成形材料の圧力が設定値以下になるように調整」するものに限定するものである。
そうすると、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる事項(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)及び同1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
イ 訂正事項2に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0128】の「計量工程の完了後のスクリュ330の回転量は、弁体322の閉塞位置から開放位置への移動に利用する成形材料の圧力が設定値以下になるように調整される。」及び【0129】の「計量工程の完了後のスクリュ330の前進量は、弁体322の閉塞位置から開放位置への移動に利用する成形材料の圧力が設定値以下になるように調整される。」という記載に基づくものである。
そうすると、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項2に係る訂正は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 特許異議申立人は、令和4年11月16日付け意見書6頁において、「訂正後の請求項2は、訂正前の請求項2と実質的にほとんど変わっていないため、訂正の目的である特許請求の範囲の減縮になっておらず、特許法120条の5第2項第1項及び同条第9項で準用する特許法126条第6項に反する不適法なものである。更に、甲第3号証に記載の発明と同一であるから、 特許法120条の5第9項で準用する特許法126条第7項に規定の所謂独立特許性を備えてない。」と主張する。
しかしながら、前記(2)アで述べたとおり、訂正事項2に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(特許法120条の5第2項ただし書4号)を目的とするとともに、特許請求の範囲の減縮(特許法120条の5第2項ただし書1号)も目的としているものでもある。
また、請求項2に対して特許異議の申立てがされているから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法126条7項の要件、いわゆる、独立特許要件は課されない。
したがって、当該主張は採用できない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項3において、請求項1又は2の記載を引用しないものとした上で、「制御装置」を「前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを回転させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する」ものに限定するものである。
そうすると、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる事項及び同1号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。
イ 訂正事項3に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0128】の「そこで、制御装置700は、計量工程の完了後、弁体322の閉塞位置から開放位置への移動前に、スクリュ330の進退を停止させると共に、スクリュ330を回転させることでスクリュ330前方に成形材料を送り、スクリュ330前方の成形材料の圧力を高めてもよい。計量工程において生じる成形材料の圧力と、計量工程の完了後にスクリュ330の回転によって生じる成形材料の圧力の両方を利用して、弁体322を閉塞位置から開放位置に移動できる。」という記載に基づくものである。
そうすると、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項3に係る訂正は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項4において、請求項1又は2の記載を引用しないものとした上で、「制御装置」を「前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを前進させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する」ものに限定するものである。
そうすると、訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる事項及び同1号に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。
イ 訂正事項4に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0129】の「また、制御装置700は、計量工程の完了後、弁体322の閉塞位置から開放位置への移動前に、スクリュ330の回転を停止させると共に、スクリュ330を前進させることで、スクリュ330前方の成形材料の圧力を高めてもよい。計量工程において生じる成形材料の圧力と、計量工程の完了後にスクリュ330の前進によって生じる成形材料の圧力の両方を利用して、弁体322を閉塞位置から開放位置に移動できる。」という記載に基づくものである。
そうすると、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項4に係る訂正は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正事項5に係る訂正は、訂正事項1により訂正された特許請求の範囲の請求項1の記載と整合するように明細書の【0007】の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項5に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。
イ 訂正事項5に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正(訂正事項1~5に係る訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号及び4号を目的とするものであって、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
また、特許権者から別の訂正単位とする求めがあったところ、訂正後の一群の請求項は、それぞれ1、2、3、4である。
よって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、請求項に付す番号を使って、それぞれ、「本件特許発明1」などという。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記計量工程の完了前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する、射出成形機。
【請求項2】
金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記シリンダの前部に溜めた前記成形材料を前記金型装置の内部に充填する充填工程の開始前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行し、
前記制御装置は、前記計量工程の完了後の前記スクリュの前進量、または、前記計量工程の完了後の前記スクリュの回転量を、前記成形材料の圧力が設定値以下になるように調整し、
前記弁体移動機構は、前記ノズルに対し揺動自在に取り付けられて前記弁体に当接する揺動レバーと、前記揺動レバーを、前記弁体が前記開放位置から前記閉塞位置に移動する第1方向および該第1方向とは逆方向で前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除する第2方向に揺動させる流体圧シリンダとを有する、射出成形機。
【請求項3】
金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを回転させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する、射出成形機。
【請求項4】
金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを駆動する駆動源と、
前記流路開閉機構および前記駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを前進させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する、射出成形機。」
第4 取消しの理由の概要
令和4年5月31日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
理由1(新規性欠如)本件特許の請求項1~2に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であって、特許法29条1項3号の規定に該当するから、請求項1~2に係る特許は、いずれも、特許法29条の規定に違反してされたものである。
理由2(進歩性欠如)本件特許の請求項1~4に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、いずれも、特許法29条の規定に違反してされたものである。
甲2号証:中国特許出願公開第106182602号明細書(以下「甲2」という。)
甲3号証:BHPシャットオフノズル整備要領書,株式会社タイヘイテクノサービス,2015年8月アップデート,1頁~5頁(以下「甲3」という。)
(当合議体注:甲3号証の証拠の表記は、令和4年1月27日に提出された特許異議申立書及び証拠説明書の記載にしたがった。)
第5 取消理由についての当合議体の判断
1 甲3を主引用例とする場合
(1)甲3の記載
取消しの理由で引用された甲3には、次の事項が記載されている。
ア 「
[図:0001397176000001.jpg]
」(1頁)
イ 「
[図:0001397176000002.jpg]
」(3頁)
ウ 「
[図:0001397176000003.jpg]
」(4頁)
(2)甲3に記載された発明
甲3の1頁の図、3頁の「理想的なノズルの作動期」、3頁の「樹脂圧/ノズル動作の関係図」及び4頁の図及び表の記載から理解される「ノズル付き射出成形機」の発明を、以下、「甲3発明」という。
(3)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明は、射出成形機に用いられるノズル(第1頁、第3頁)であるから、本件特許発明1の「金型装置内に成形材料を射出するノズル」に相当する。
また、甲3発明は、第3頁の分解図面から見て、ノズルのボディー(1)の軸方向に直交する方向に、流路を開閉するシャットオフボルト(4)が設けられており、当該シャットオフボルト(4)をアクチュエーター(11)の動作によりレバーユニット(7)を介して、ノズルの流路の開閉を行うものであることは明らかである。
そうすると、甲3発明のノズルは、本件特許発明1の「前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と」、「前記流路開閉機構」「を制御する制御装置とを備え、前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり」という構成を具備している。
イ 一致点・相違点
前記アの対比結果により、本件特許発明1と甲3発明は、
「金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前記流路開閉機構を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向である、射出成形機。」
の点で一致し、下記の点で相違する。
(相違点3-1-1)
本件特許発明1は、「前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、前記スクリュを駆動する駆動源と、」「前記駆動源を制御する制御装置とを備え」るのに対し、甲3発明は、そのような構成を有するのかが明らかでない点。
(相違点3-1-2)
本件特許発明1は、「制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記計量工程の完了前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する」のに対し、甲3発明は、そのような構成を有していない点。
ウ 判断
事案に鑑み、相違点3-1-2について検討する。
射出成形機の制御装置において、シリンダの前部に成形材料を溜める計量工程の開始後、計量工程の完了前に、閉塞位置にある弁体の固定を解除することにより、ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による弁体の開放位置への移動を可能にする制御を実行するという技術的事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術又は周知技術であることを示す他の証拠を見いだすこともできない。
また、甲3発明は、計量工程完了後で成形材料である樹脂の圧力が最も低い時にノズルを作動させ、ノズルオープン状態にする(甲3の3頁)ものであるところ、計量工程完了前には樹脂の圧力が最も低くならないから、甲3発明において、前記技術的事項を採用する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲3発明において、相違点3-1-2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
エ 小括
上記アないしウのとおりであるから、本件特許発明1は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件特許発明2について
ア 対比・一致点・相違点
前記(3)アと同様にして、本件特許発明2と甲3発明とを対比すると、両者は、
「金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前記流路開閉機構を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記シリンダの前部に溜めた前記成形材料を前記金型装置の内部に充填する充填工程の開始前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行し、
前記弁体移動機構は、前記ノズルに対し揺動自在に取り付けられて前記弁体に当接する揺動レバーと、前記揺動レバーを、前記弁体が前記開放位置から前記閉塞位置に移動する第1方向および該第1方向とは逆方向で前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除する第2方向に揺動させる流体圧シリンダとを有する、射出成形機。」
の点で一致し、下記の点で相違する。
(相違点3-2-1)
本件特許発明2は、「前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、前記スクリュを駆動する駆動源と、」「前記駆動源を制御する制御装置とを備え」るのに対し、甲3発明は、そのような構成を有するのかが明らかでない点。
(相違点3-2-2)
本件特許発明2は、「制御装置は、前記計量工程の完了後の前記スクリュの前進量、または、前記計量工程の完了後の前記スクリュの回転量を、前記成形材料の圧力が設定値以下になるように調整」するのに対し、甲3発明は、そのような構成を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点3-2-2について検討する。
射出成形機の制御装置において、弁体や弁体移動機構の破損を抑制するために、計量工程の完了後のスクリュの前進量又は計量工程の完了後のスクリュの回転量を、成形材料の圧力が設定値以下になるように調整するという技術的事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術又は周知技術であることを示す他の証拠を見いだすこともできない。
また、甲3発明は、計量工程完了後で成形材料である樹脂の圧力が最も低い時にノズルを作動させ、ノズルオープン状態にする(甲3の3頁)ものであり、計量工程完了後に樹脂の圧力を高めるためにスクリュを前進又は回転させるものではないから、甲3発明において、前記技術的事項を採用する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲3発明において、相違点3-2-2に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 小括
上記ア及びイのとおりであるから、本件特許発明2は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件特許発明3について
ア 対比・一致点・相違点
前記(3)アと同様にして、本件特許発明3と甲3発明とを対比すると、両者は、少なくとも下記の点で相違する。
(相違点3-3-1)
本件特許発明3は、「制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを回転させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する」のに対し、甲3発明は、そのような構成を有しない点。
イ 判断
相違点3-3-1について検討する。
射出成形機の制御装置において、シリンダの前部に成形材料を溜める計量工程の完了後であって、閉塞位置にある弁体の固定を解除して弁体の開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ弁体の閉塞位置から開放位置への移動前に、スクリュを回転させて、スクリュよりも前方の成形材料の圧力を高めて、ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による弁体の開放位置への移動を可能にする制御を実行するという技術的事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術又は周知技術であることを示す他の証拠を見いだすこともできない。
また、甲3発明は、計量工程完了後で成形材料である樹脂の圧力が最も低い時にノズルを作動させ、ノズルオープン状態にする(甲3の3頁)ものであり、計量工程完了後に樹脂の圧力を高めるためにスクリュを回転させるものではないから、甲3発明において、前記技術的事項を採用する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲3発明において、相違点3-3-1に係る本件特許発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 小括
上記ア及びイのとおりであるから、本件特許発明3は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(6)本件特許発明4について
ア 対比・一致点・相違点
前記(3)アと同様にして、本件特許発明4と甲3発明とを対比すると、両者は、少なくとも下記の点で相違する。
(相違点3-4-1)
本件特許発明4は、「制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを前進させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する」のに対し、甲3発明は、そのような構成を有しない点。
イ 判断
相違点3-4-1について検討する。
射出成形機の制御装置において、シリンダの前部に成形材料を溜める計量工程の完了後であって、閉塞位置にある弁体の固定を解除して弁体の開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ弁体の閉塞位置から開放位置への移動前に、スクリュを前進させて、スクリュよりも前方の成形材料の圧力を高めて、ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による弁体の開放位置への移動を可能にする制御を実行するという技術的事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術又は周知技術であることを示す他の証拠を見いだすこともできない。
また、甲3発明は、計量工程完了後で成形材料である樹脂の圧力が最も低い時にノズルを作動させ、ノズルオープン状態にする(甲3の3頁)ものであり、計量工程完了後に樹脂の圧力を高めるためにスクリュを前進させるものではないから、甲3発明において、前記技術的事項を採用する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲3発明において、相違点3-4-1に係る本件特許発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 小括
上記ア及びイのとおりであるから、本件特許発明4は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 甲2を主引用例とする場合
(1)甲2の記載
取消しの理由で引用された甲2には、次の事項が記載されている。なお、甲2は外国語書面であるため、甲2の訳文のみを摘記する。
ア 「[0003] 上記の問題を解決するために、本発明は、射出成形機のシャットオフノズルを提供する。
[0004] 本発明の射出成形機のシャットオフノズルは、ねじ、ノズル本体、接続ヘッド、駆動部から構成される。
[0005] 本発明は、互いに接続されたノズル本体と接続ヘッドを含み、これらノズル本体と接続 ヘッドには中空の流路が形成されてプラスチック成形液が当該流路内を流れる。
[0006] ノズル本体は、2本のロッキングボルト、プランジャ制限シャフト、シャットオフシャフト、およびシャットオフシャフトの移動をガイドするスリーブが含まれ、前記2本のロッキングボルトは、プランジャ制限シャフトとシャットオフシャフトをノズル本体に固定するために使用される。ノズル本体内の前記プランジャ制限シャフトとシャットオフシャフとが接する面には一定の勾配が設けられる。また、プランジャ制限シャフトはシャットオフシャフトの移動を制限する。シャットオフシャフトの移動方向は流路に対して垂直であり、その動きにより前記流路内のプラスチック成形液の流れを遮断する。
[0007] 前記駆動部は、レバーアーム、シリンダ駆動装置、ブラケットを含む。レバーアームは、シャットオフシャフトに当接され、シリンダ駆動装置は前記レバーアームを介して前記シャットオフシャフトのシャット軸方向の動きを制御する。
[0008] 前記ノズルヘッドは、ノズルヘッドと不純物フィルタを含み、ノズルヘッドはノズル本体と連結しており、不純物フィルタは糸状体で構成され、ノズルヘッドとノスツレ本体との間に配置される。
[0009] 好ましくは、シリンダ駆動装置はシリンダ本体を含み、シリンダ本体の一端には空気を取り入れるジョイントが設けられ、他端は回転軸を介してレバーアームと連結する。レバーアームとシリンダ本体の間には、 シャットオフシャフトが配置される。
[0010] プラスチック製の接続ヘッドとノズル本体は、フランジリングを介してねじで固定することが望ましい。
[0011] また、シリンダ駆動装置は空圧シリンダまたは油圧ンリンダとすることが望ましい。
[0012] 更に、接続ヘッドを通過するプラスチック成形液の温度を検出する温度センサーを流路内に設けるのが望ましい。当該温度センサーは、アラームインジケーターライトに接続するものとする。
[0013] 本発明の有効な効果:この発明では、プランジャ方式を採用して流路を遮断する。シリンダ駆動装置がレバーアームを駆動してシャットオフシャフトを押すと、シャットオフシャフトは流路に対し垂直方向に動いてプラスチック成形液の流路を完全に遮断する。これにより遮断されない状態のときにプラスチック成形液がノズル本体から漏れるのを完全に防止する。また、シャットオフノズルの寿命が大幅に改善され、通常の2~3倍の寿命となる。シャットオフノズルについて;射出成型機が金型を閉じてプラスチック成形液を金型に注入する準備ができると、シャットオフシャフトとプランジャ制限シャフトとを動かす。すなわち、これらの接触面の勾配により流路を遮断していたが、射出成形機の流体の温度を検出してシャットオフシャフトを開き、プラスチック成形液を金型にすばやく注入する。これにより高品質のプラスチック製品を製造できる。
図面の説明
[0014]図1は、一実施形態の概略断面図である。
[0015]図2は、実施形態の構造の概略図である。
[0016]図3は、実施形態の分解概略図である。
[0017]図4は、本実施形態の部分断面図である。
[0018]図5は、実施形態2の概略断面図である。
[0019]1ノズル本体、2接続ヘッド、3ロッキングボルト、4プランジャ制限シャフト、5シャットオフシャフト、6レバーアーム、7シリンダ駆動装置、8ブラケット、9ノズルヘッド、10フィルタ、11フランジリング、12ねじ、13回転軸、14ジョイント、15スリープ、16温度センサー、17アラームインジケーターライト」
イ 「[0020] 本発明を、図面および実施形態を用いて以下のように説明する。
[0021] 本発明の射出成形機のシャットオフノズルは、射出成形機との接続ヘッド、ノズル本体、ノズルヘッドおよび駆動部分を含む。
[0022] ノズル本体1と接続ヘッド2とは互いに接続されており、ノズル本体1と接続ヘッド2は、中空の流路を備え、当該流路内にはプラスチック成形液が流れる。
[0023]遮断部分は、2つのロッキングボルト3、プランジャ制限シャフト4、シャットオフシャフト5、およびシャットオフシャフト5の移動をガイドするスリーブ15を含む。2つのロッキングボルト3は、それぞれ、プランジャ制限シャフト4およびシャットオフシャフト5のノズル本体1に固定する。プランジャ制限シャフト4およびシャットオフシャフト5の接触面には一定の勾配がある。プランジャ制限シャフト4は、シャットオフシャフト5の移動を制限するために使用される。シャットオフシャフト5は、流路方向に対して垂直方向に動いて、流路内のプラスチック成形液の流れを遮断する。
[0024] 前記駆動部は、レバーアーム6、シリンダ駆動装置7およびブラケット8を含む。レバーアーム6は、シャットオフシャフト5の後端に当接される。シリンダ駆動装置7は、レバーアーム6を介してシャットオフシャフト5を移動させる。
[0025] ノズルヘッドは、ノズルヘッド9と不純物フィルタ10とを含む。ノズルヘッド9は、ノズル本体1と連結する。フィルタ10は、ノズルヘッド9とノズル本体1との間に配置され、フィルタは糸で形成される。
[0026]シリンダ駆動装置7が、レバーアーム6を駆動してシャットオフシャフト5を押し、シャットオフシャフト5が流路に対し垂直方向に動いて流れを遮断する。プラスチック成形液を完全に遮断することにより、プラスチック成形液がノズルから流出しないようにする。これによりプラスチック成形液の漏れは完全に防止され、寿命が通常のシャットオフノズルの2~3倍と大幅に向上する。射出成形機が金型を閉じてプラスチック成形液を金型に注入する準備ができると シャットオフシャフトとプランジャ制限シャフトとを動かす。すなわち、これらの接触面の勾配により流路を遮断していたが、射出成形機の流体の温度を検出してシャットオフシャフトを開き、プラスチック成形液を金型にすばやく注入する。これにより高品質のプラスチック製品を製造できる。
[0027] シリンダ駆動装置7は空圧式シリンダである。シリンダ駆動装置7はシリンダ本体を含み、シリンダ本体の一端には空気を取り入れるジョイント14が設けられ、他端は回転軸13を介してレバーアーム6と連結する。レバーアーム6とシリンダ本体1の間には、シャットオフシャフトが配置される。」
ウ 「図1
[図:0001397176000004.jpg]
図2
[図:0001397176000005.jpg]
図3
[図:0001397176000006.jpg]
図4
[図:0001397176000007.jpg]
」
(2)引用発明
甲2の[0003]~[0013]、[0020]~[0027]、図1~4の記載から理解される「シャットオフノズル付き射出成形機」の発明(以下「甲2発明」とする。)を引用発明とする。
(3)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明は、射出成形機のシャットオフノズル([0021])であるから、本件特許発明1の「金型装置内に成形材料を射出するノズル」に相当する。
また、甲2発明は、図1及び[0023]の記載から、ノズル本体1内の流路方向に対して垂直方向に動いて、流路内のプラスチック成形液の流れを遮断する、シャットオフシャフト5が設けられており、当該シャットオフシャフト5をシリンダー駆動装置7の動作によりレバーアーム6を介して移動させ、ノズルの流路の開閉を行うものであることは明らかである。
そうすると、甲2発明のシャットオフノズルは、本件特許発明1の「前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と」、「前記流路開閉機構」「を制御する制御装置とを備え、前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、」「前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり」という構成を具備している。
イ 一致点・相違点
前記アの対比結果により、本件特許発明1と甲2発明は、
「金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前記流路開閉機構を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向である、射出成形機。」
の点で一致し、下記の点で相違する。
(相違点2-1-1)
本件特許発明1は、「前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、前記スクリュを駆動する駆動源と、」「前記駆動源を制御する制御装置とを備え」るのに対し、甲2発明は、そのような構成を有するのかが明らかでない点。
(相違点2-1-2)
本件特許発明1は、「弁体移動機構」が「前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行」い、「制御装置は、前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記計量工程の完了前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する」のに対し、甲2発明は、そのような構成を有していない点。
ウ 判断
事案に鑑み、相違点2-1-2について検討する。
射出成形機の制御装置において、シリンダの前部に成形材料を溜める計量工程の開始後、計量工程の完了前に、閉塞位置にある弁体の固定を解除することにより、ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による弁体の開放位置への移動を可能にする制御を実行するという技術的事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術又は周知技術であることを示す他の証拠を見いだすこともできない。
(当合議体注:甲24~甲28の公知性については、後記3(1)で述べるとおりである。)
また、そもそも甲2発明は、「射出成形機の流体の温度を検出してシャットオフシャフトを開き、プラスチック成形液を金型にすばやく注入する」(甲2[0026])ものであり、ノズルの内部に溜まるプラスチック成形液の圧力によりシャットオフシャフトを開放位置へ移動させるものではないから、甲2発明において、前記技術的事項を採用する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲2発明において、相違点2-1-2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
エ 小括
上記アないしウのとおりであるから、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件特許発明2について
ア 対比・一致点・相違点
前記(3)アと同様にして、本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、両者は、
「金型装置内に成形材料を射出するノズルと、
前記ノズルにおける前記成形材料の流路を開閉する流路開閉機構と、
前記流路開閉機構を制御する制御装置とを備え、
前記流路開閉機構は、前記流路を開く開放位置と前記流路を閉じる閉塞位置との間で移動させられる弁体と、前記開放位置にある前記弁体を前記閉塞位置に移動させ、前記閉塞位置で前記弁体を固定する動作、および、前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行う弁体移動機構とを有し、
前記弁体の移動方向は、前記ノズルの軸方向に直交する方向であり、
前記弁体移動機構は、前記ノズルに対し揺動自在に取り付けられて前記弁体に当接する揺動レバーと、前記揺動レバーを、前記弁体が前記開放位置から前記閉塞位置に移動する第1方向および該第1方向とは逆方向で前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除する第2方向に揺動させる流体圧シリンダとを有する、射出成形機。」
の点で一致し、下記の点で相違する。
(相違点2-2-1)
本件特許発明2は、「前端部に前記ノズルが設けられるシリンダと、前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、前記スクリュを駆動する駆動源と、」「前記駆動源を制御する制御装置とを備え」るのに対し、甲2発明は、そのような構成を有するのかが明らかでない点。
(相違点2-2-2)
本件特許発明2は、「弁体移動機構」が「前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行」い、「制御装置」が「前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の開始後、前記シリンダの前部に溜めた前記成形材料を前記金型装置の内部に充填する充填工程の開始前に、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行し」、「前記計量工程の完了後の前記スクリュの前進量、または、前記計量工程の完了後の前記スクリュの回転量を、前記成形材料の圧力が設定値以下になるように調整」するのに対し、甲2発明は、そのような構成を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-2-2について検討する。
射出成形機の制御装置において、弁体や弁体移動機構の破損を抑制するために、計量工程の完了後のスクリュの前進量又は計量工程の完了後のスクリュの回転量を、成形材料の圧力が設定値以下になるように調整するという技術的事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術又は周知技術であることを示す他の証拠を見いだすこともできない。
また、甲2発明は、「射出成形機の流体の温度を検出してシャットオフシャフトを開き、プラスチック成形液を金型にすばやく注入する」(甲2[0026])ものであり、ノズルの内部に溜まるプラスチック成形液の圧力によりシャットオフシャフトを開放位置へ移動させるものではなく、また、計量工程完了後に樹脂の圧力を高めるためにスクリュを前進又は回転させるものではないから、甲2発明において、前記技術的事項を採用する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲2発明において、相違点2-2-2に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 小括
上記ア及びイのとおりであるから、本件特許発明2は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件特許発明3について
ア 対比・一致点・相違点
前記(3)アと同様にして、本件特許発明3と甲2発明とを対比すると、両者は、少なくとも下記の点で相違する。
(相違点2-3-1)
本件特許発明3は、「弁体移動機構」が「前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行」い、「制御装置」が「前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを回転させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する」のに対し、甲2発明は、そのような構成を有していない点。
イ 判断
相違点2-3-1について検討する。
射出成形機の制御装置において、シリンダの前部に成形材料を溜める計量工程の完了後であって、閉塞位置にある弁体の固定を解除して弁体の開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ弁体の閉塞位置から開放位置への移動前に、スクリュを回転させて、スクリュよりも前方の成形材料の圧力を高めて、ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による弁体の開放位置への移動を可能にする制御を実行するという技術的事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術又は周知技術であることを示す他の証拠を見いだすこともできない。
また、甲2発明は、「射出成形機の流体の温度を検出してシャットオフシャフトを開き、プラスチック成形液を金型にすばやく注入する」(甲2[0026])ものであり、ノズルの内部に溜まるプラスチック成形液の圧力によりシャットオフシャフトを開放位置へ移動させるものではなく、また、計量工程完了後に樹脂の圧力を高めるためにスクリュを回転させるものではないから、甲2発明において、前記技術的事項を採用する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲2発明において、相違点2-3-1に係る本件特許発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 小括
上記ア及びイのとおりであるから、本件特許発明3は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(6)本件特許発明4について
ア 対比・一致点・相違点
前記(3)アと同様にして、本件特許発明4と甲2発明とを対比すると、両者は、少なくとも下記の点で相違する。
(相違点2-4-1)
本件特許発明4は、「弁体移動機構」が「前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除することにより、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作を行」い、「制御装置」が「前記シリンダの前部に前記成形材料を溜める計量工程の完了後であって、前記閉塞位置にある前記弁体の固定を解除して前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ前記弁体の前記閉塞位置から前記開放位置への移動前に、前記スクリュを前進させて、前記スクリュよりも前方の前記成形材料の圧力を高めて、前記ノズルの内部に溜まる前記成形材料の圧力による前記弁体の前記開放位置への移動を可能にする制御を実行する」のに対し、甲2発明は、そのような構成を有していない点。
イ 判断
相違点2-4-1について検討する。
射出成形機の制御装置において、シリンダの前部に成形材料を溜める計量工程の完了後であって、閉塞位置にある弁体の固定を解除して弁体の開放位置への移動を可能にする動作の後から充填工程の開始前までかつ弁体の閉塞位置から開放位置への移動前に、スクリュを前進させて、スクリュよりも前方の成形材料の圧力を高めて、ノズルの内部に溜まる成形材料の圧力による弁体の開放位置への移動を可能にする制御を実行するという技術的事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術又は周知技術であることを示す他の証拠を見いだすこともできない。
また、甲2発明は、「射出成形機の流体の温度を検出してシャットオフシャフトを開き、プラスチック成形液を金型にすばやく注入する」(甲2[0026])ものであり、ノズルの内部に溜まるプラスチック成形液の圧力によりシャットオフシャフトを開放位置へ移動させるものではなく、また、計量工程完了後に樹脂の圧力を高めるためにスクリュを前進させるものではないから、、甲2発明において、前記技術的事項を採用する動機付けを見いだすことはできない。
そうすると、甲2発明において、相違点2-4-1に係る本件特許発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 小括
上記ア及びイのとおりであるから、本件特許発明4は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 令和4年11月16日付け意見書(特許異議申立人)について
(1)特許異議申立人は、証拠方法として、甲24号証~甲29号証を申し出ているが、甲24号証~甲28号証は、先の出願前に頒布された刊行物又は公知となった文献であるとはいえず、甲24号証~甲28号証を新規性欠如及び進歩性欠如の根拠とすることはできない。また、甲24号証~甲29号証には、前記1及び2で検討した相違点に係る構成は記載されていない。
(2)特許異議申立人は、同意見書の5頁において、「『計量工程の完了』と『充填工程の開始』とは技術的に同じタイミングを互いに反対から表現したにすぎず、表現形式が異なるだけで全くの同義である」と主張するが、計量工程の完了と充填工程の開始との間に時間があったり(甲3の3頁の「樹脂圧/ノズル動作の関係図」参照のこと。)、他の工程(サックバック工程など)が入る場合もあるから、「計量工程の完了」と「充填工程の開始」が全くの同義であるとはいえず、また、両者は概念上区別できるものである。
したがって、当該主張は採用できない。
(3)特許異議申立人は、3~6頁において、本件特許発明1は進歩性を有さないと主張するが、この点は、前記1(3)及び2(3)で判断したとおりである。
したがって、当該主張は採用できない。
本件特許発明2~4の進歩性についての主張についても同様である。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当合議体の判断
第5で述べたとおり、本件特許発明1~4は、いずれも、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載されていない。
したがって、本件特許発明1~4は、いずれも、特許法29条1項1号~3号に掲げる発明に該当せず、新規性欠如の取消しの理由はない。
第7 むすび
請求項1~4に係る特許は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700075