特許異議申立
2022-700065
ルウの製造方法並びにルウ及びソース
- 審判番号
- 2022-700065
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-225223
- 登録番号
- 6924813
- 請求日
- 2022年01月26日
- 審決日
- 2022年05月12日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ハウス食品株式会社
- 【権利者代理人】田中 伸一郎
- 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
- 【権利者代理人】須田 洋之
- 【権利者代理人】山崎 一夫
- 【権利者代理人】市川 さつき
- 【権利者代理人】服部 博信
- 【権利者代理人】小松 邦光
- 【異議申立人】奥谷 宏邦
- 審判長/審判官
- 審判長 須藤 康洋
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 奥田 雄介
- 分類
- P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6924813号発明「ルウの製造方法並びにルウ及びソース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6924813号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6924813号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和1年12月13日を出願日とする出願であって、令和3年8月4日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年1月26日に特許異議申立人 奥谷 宏邦(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という場合がある。)は、それぞれ、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ルウの製造方法であって、
澱粉質原料及び第1の油脂を含む加熱処理混合物を用意する工程と、
前記加熱処理混合物に第1のオニオン原料を添加して、ルウ原料混合物を調製する工程と、
前記ルウ原料混合物を加熱撹拌して、溶融状のルウを調製する工程と
を含み、前記ルウ原料混合物又は前記溶融状のルウに、飴色化オニオンを添加する工程をさらに含み、及び/又は、前記加熱処理混合物が、飴色化オニオンをさらに含み、
前記第1のオニオン原料は、飴色化されておらず、
乳素材及び香辛料を添加する工程をさらに含み、
前記第1のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.01~5質量%であり、前記飴色化オニオンが、第2のオニオン原料及び第2の油脂を含み、前記第2のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.005~2.0質量%である、ルウの製造方法。
【請求項2】
前記第2のオニオン原料及び前記第2の油脂を混合し、110~130℃で25分以上加熱して、前記飴色化オニオンを得る工程をさらに含む、請求項1に記載のルウの製造方法。
【請求項3】
前記ルウにおいて、前記第2のオニオン原料の含有量が、前記第1のオニオン原料の含有量以下である、請求項1又は2に記載のルウの製造方法。
【請求項4】
澱粉質原料と、第1の油脂と、第1のオニオン原料と、飴色化オニオンとを含むルウであって、乳素材及び香辛料をさらに含み、
前記第1のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.01~5質量%であり、前記飴色化オニオンが、第2のオニオン原料及び第2の油脂を含み、前記第2のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.005~2.0質量%である、ルウ。
【請求項5】
前記第2のオニオン原料の含有量が、前記第1のオニオン原料の含有量以下である、請求項4に記載のルウ。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年1月26日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて、本件特許の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、理由の概略は以下のとおりである。
(1)第1のオニオン原料について
発明の詳細な説明の記載によれば、本件特許発明1又は4の「第1のオニオン原料」は、オニオンパウダーの他、オニオンペースト、みじん切りされた玉ねぎ、又はすりおろし玉ねぎなど生の玉ねぎを単にカットしたものを含むものである。
一方、実施例においては、オニオンパウダーを0.1~0.5質量部加えたものが記載されているが、この水分がほとんど含まれていないオニオンパウダーと約90%が水分である「生の玉ねぎ」を使用した場合とを同列に扱うことはできず、実施例で奏されている効果が、生の玉ねぎを含みうる本件特許発明1又は4まで奏されるとはいえない。本件特許発明2及び3、本件特許発明5についても同様である。
(2)「飴色化オニオン」について
本件特許発明1において「第2のオニオン原料の配合量が、ルウの全質量に対して0.005~2.0質量%」を特定しているが、実施例で用いられている第2のオニオン原料は、オニオンパウダーが用いられていて、上記(1)で説明したように、オニオンパウダーと「生の玉ねぎ」を利用したオニオン原料とを同等に扱うことはできないから、実施例で奏されている効果が、生の玉ねぎを含みうる飴色化オニオンについての第2のオニオン原料の配合量が特定されている本件特許発明1又は4まで奏されるとはいえない。本件特許発明2及び3、本件特許発明5についても同様である。
(3)「第1のオニオン原料」及び「飴色化オニオン」の配合量について
本件特許発明1には「第1のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.01~5質量%であり、前記飴色化オニオンが、第2のオニオン原料及び第2の油脂を含み、前記第2のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.005~2.0質量%である」と特定されているが、具体的な実施例においての第1のオニオン原料と第2のオニオン原料の配合量は、その範囲を担保していないから、サポートされていない。
(4)「乳素材及び香辛料」について
本件特許発明1及び4では、「乳素材及び香辛料」の配合量が特定されておらず、本件特許発明1の構成によりどうして課題が解決できるか全くもって不明であり、具体的な実施例で示された特定の乳素材及び香辛料以外の場合でどのようにして課題を解決できるか不明であるから、乳素材及び香辛料」の配合量が特定されていない本件特許発明1及び4は課題を解決するための手段が反映されておらず、サポートされていない。
3 証拠方法
甲第1号証:特開平9-294569号公報
甲第2号証:特開2009-11314号公報
甲第3号証:特開2013-110982号公報
甲第4号証:特許第6924813号公報
なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。
以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審の判断
1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について
(1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1の記載事項(なお、下線については当審において付与したものである。)
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の構成:
(1)原料を100℃~135℃になるまで漸次品温を上昇させて混合焙煎処理する、(2)該焙煎処理の最初に油脂を用いる、(3)該焙煎処理の任意の時期に小麦粉を用いる、(4)該焙煎処理の少なくとも中期までに香味原料を用いるか、終期に香辛料を用いるか、あるいは両者を併せて行う、を含むことを特徴とする小麦粉ルウの製造方法。
【請求項2】 次の構成:
(1)原料を120℃~190℃になるまで漸次品温を上昇させて混合焙煎処理する、(2)該焙煎処理の最初に油脂を用いる、(3)該焙煎処理の中期以降に小麦粉を用いる、(4)該焙煎処理の少なくとも中期までに香味原料を用いるか、終期に香辛料を用いるか、あるいは両者を併せて行う、を含むことを特徴とする小麦粉ルウの製造方法。
【請求項3】 香味原料がカレーパウダー、オニオン、ガーリック、ジンジャー、ピーナツバターから選ばれた1乃至それ以上である請求項1又は請求項2記載の小麦粉ルウの製造方法。
【請求項4】 香辛料が胡椒、唐辛子、コリアンダーから選ばれた1乃至それ以上である請求項1又は請求項2記載の小麦粉ルウの製造方法。
【請求項5】 請求項1及び/又は請求項2記載の小麦粉ルウの製造方法により得られた小麦粉ルウに、必要に応じて香味原料、香辛料等を加え、加熱処理することを特徴とするカレー、シチュー等のルウの製造方法。」
・「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様は、次の構成:(1)原料を100℃~135℃になるまで漸次品温を上昇させて混合焙煎処理する、(2)該焙煎処理の最初に油脂を用いる、(3)該焙煎処理の任意の時期に小麦粉を用いる、(4)該焙煎処理の少なくとも中期までに香味原料を用いるか、終期に香辛料を用いるか、あるいは両者を併せて行う、を含むことを特徴とする小麦粉ルウの製造方法、である。また、本発明の第2の態様は、次の構成:(1)原料を120℃~190℃になるまで漸次品温を上昇させて混合焙煎処理する、(2)該焙煎処理の最初に油脂を用いる、(3)該焙煎処理の中期以降に小麦粉を用いる、(4)該焙煎処理の少なくとも中期までに香味原料を用いるか、終期に香辛料を用いるか、あるいは両者を併せて行う、を含むことを特徴とする小麦粉ルウの製造方法、である。また、本発明は、香味原料がカレーパウダー、オニオン、ガーリック、ジンジャー、ピーナツバターから選ばれた1乃至それ以上である上記の小麦粉ルウの製造方法、香辛料が胡椒、唐辛子、コリアンダーから選ばれた1乃至それ以上である上記の小麦粉ルウの製造方法、を望ましい実施態様とするものである。更に、本発明の第3の態様は、上記各態様により得られた小麦粉ルウに、必要に応じて香味原料、香辛料等を加え、加熱処理することを特徴とするカレー、シチュー等のルウの製造方法、である。」
・「【0009】本発明では、焙煎処理の少なくとも中期までに香味原料を用いる。つまり、香味原料を上記の主原料と共に焙煎することにより、香味原料の香味を主原料のロースト香味と融合させ、特有の強い香味をもつ小麦粉ルウを得ることができるのである。香味原料は焙煎の最初あるいは初期に添加するのが、上記の点から望ましい。香味原料としては、カレーパウダー、オニオン、ガーリック、ジンジャー、ピーナツバターから選ばれた1乃至それ以上を用いることが、前記の特有の香味をもつ小麦粉ルウを得る上で特に好ましい。香味原料は、小麦粉ルウ中に0.4~45重量%(以下%と略称する)、好ましくは10~38%添加するのがよい。これにより前記の効果が好適に得られ、添加量がこの範囲より少ないと同効果が弱くなり、範囲を超えると香味が強すぎる傾向がある。尚、カレーパウダーとは、いわゆるカレー粉のことであり、ターメリック、クミン、ナツメグ、コリアンダーなどの香辛料を、カレー用に好みに応じて数種類から数十種類を組み合わせたものであり、特に限定されるものではない。」
・「【0014】
【実施例】次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(第1の態様)油脂(ヘット)40重量部(以下部と略称する)、小麦粉30部、カレーパウダー15部、オニオンパウダー5部及びピーナツバター10部を斜軸クッカーに投入して混合焙煎処理し、60分後品温が124℃になったところで加熱を止め、冷却して小麦粉ルウを製造した。この小麦粉ルウは、深みのある強い香味のものであった。尚、小麦粉は熱風乾燥により水分含量が8%まで乾燥されたものを用いた。
・・・
【0018】実施例5
(第3の態様)実施例1で得られた小麦粉ルウに油脂(ヘット)18部、食塩10部、砂糖10部、コーンスターチ8部及びアミノ酸1.5部を混合した粉体原料と、水系原料6部を加えて再び加熱撹拌し、約40分間かけて約106℃まで加熱し、カレールウを製造した。コーンスターチは熱風乾燥により水分含量が4%まで乾燥されたものを用いた。尚、上記加熱撹拌時、カレールウは撹拌を容易になし得る適当な粘度のものとなった。上記のカレールウ(固形ルウ)を用いて、常法により、水、具材と煮込んで調理したカレーは、深みのある強い香味を有する高品質のものであった。更に、上記実施例3、4で得られた小麦粉ルウを用いて同様にカレールウを製造したところ、何れも優れた香味を有する高品質のものが得られた。」
イ 甲1に記載された発明
甲1には、甲1の実施例5として記載されているカレールウ及びそのカレールウの製造方法として、以下の発明が記載されていると認める。
<甲1製造方法発明>
「油脂(ヘット)40重量部(以下部と略称する)、小麦粉30部、カレーパウダー15部、オニオンパウダー5部及びピーナツバター10部を斜軸クッカーに投入して混合焙煎処理し、60分後品温が124℃になったところで加熱を止め、冷却して小麦粉ルウを製造し、この小麦粉ルウに油脂(ヘット)18部、食塩10部、砂糖10部、コーンスターチ8部及びアミノ酸1.5部を混合した粉体原料と、水系原料6部を加えて再び加熱撹拌し、約40分間かけて約106℃まで加熱するカレールウの製造方法。」
<甲1カレールウ発明>
「油脂(ヘット)40重量部(以下部と略称する)、小麦粉30部、カレーパウダー15部、オニオンパウダー5部及びピーナツバター10部を斜軸クッカーに投入して混合焙煎処理し、60分後品温が124℃になったところで加熱を止め、冷却して小麦粉ルウを製造し、この小麦粉ルウに油脂(ヘット)18部、食塩10部、砂糖10部、コーンスターチ8部及びアミノ酸1.5部を混合した粉体原料と、水系原料6部を加えて再び加熱撹拌し、約40分間かけて約106℃まで加熱して得たカレールウ。」
(2)甲2の記載事項及び甲2に記載の技術事項
ア 甲2の記載事項
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
カレー粉、油脂6~15重量%、及び加熱調理されたオニオンパウダー10~40重量%を含有することを特徴とする、カレールウ。
【請求項2】
更に小麦粉を2~10重量%含有する、請求項1に記載のカレールウ。
【請求項3】
パウダー状である、請求項1又は2に記載のカレールウ。
【請求項4】
下記第1及び2工程を含む、パウダー状カレールウの製造方法:
カレールウ中含量6~15重量%に相当量の油脂、及び少なくとも一部のカレー香辛料を加熱混合することにより、液状ルウを調製する第1工程、並びに
カレールウ中含量10~40重量%に相当量の加熱調理されたオニオンパウダー、及び残部のカレー香辛料の混合粉末原料に、前記第1工程で得られた液状ルウを添加し、撹拌することにより、パウダー状カレールウを調製する第2工程。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、香辛風味が豊かでシャープに現れるカレーソース又はカレー味の食品を作るのに好適なカレールウ、及び該カレールウの製造方法に関する。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を解決することを目的とする。具体的には、本発明は、香辛料の香辛風味が十分に活かされ、香辛風味が豊かでシャープに現れ且つコク味を有するカレールウを提供することを目的とする。」
・「【0020】
加熱調理されたオニオンパウダーとは、加熱調理されたオニオンを粉末状にしたものである。ここで、加熱調理されたオニオンパウダーとしては、ソテーオニオンパウダー、ローストオニオンパウダー、フライドオニオンパウダー、及びその他の方法で加熱調理されたオニオンパウダーが挙げられる。ソテーオニオンは、オニオンを少量の油と共に炒めることによって得られる。ローストオニオンは、必要に応じて油を加えて、オニオンをオーブンで焼き上げること又は炒ることによって得られる。また、フライドオニオンは、オニオンを油で揚げることによって得られる。オニオンの加熱調理の程度は、特に制限されず、加熱調理の方法に応じて適宜設定すればよいが、加熱調理によりオニオンの生っぽい味が甘くこくのある風味になる程度に加熱処理されていることが好ましい。また、本発明では、加熱調理されたオニオンパウダーとして、乾燥処理に供されているものを使用することが望ましい。加熱調理されたオニオンパウダーの乾燥方法については、例えば、凍結乾燥、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等が挙げられるが、これらに制限されるものではなく、オニオンパウダーの加熱調理の方法等に応じて、適宜使い分けるとよい。」
・「【0027】
本発明のカレールウには、上記成分の他に、必要に応じて、公知の食品に含有される食材、食品原料、添加剤等の成分を1種又は2種以上組み合わせて適宜添加することができる。本発明のカレールウに配合可能な成分としては、例えば、食塩、砂糖、酵母エキス、たんぱく加水分解物等の調味料;肉類・魚介類・野菜・果実等の乾燥粉砕物、ペースト(磨砕物)又はエキス;チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、タンパク質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳等の乳製品;アミノ酸、酸味料、乳化剤、保存料、香料、着色料、強化剤、酸化防止剤等の食品添加剤等が挙げられる。」
・「【実施例】
【0046】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
実施例1-11
表1に示す組成のパウダー状カレールウを製造した。具体的には、予め加熱した開放型の加熱釜に、所定量の油脂を投入し油脂を溶解させた。この溶解した油脂に、所定量の小麦粉及びカレー香辛料Aをぞれぞれ投入し、混合しながら、約30分間かけて到達品温が120℃になるように加熱して液状ルウを調製した。
【0047】
次いで、所定量のカレー香辛料B、加熱調理されたオニオンパウダー、未加熱調理オニオンのパウダー、トマトパウダー、ガーリックパウダー、ジンジャーパウダー、肉エキス、酵母エキス、食塩、砂糖、及び澱粉を混合した混合粉末原料に、上記液状ルウを添加して、株式会社ダルトン製PK-1000S型パワーニーダーにて300rpmで3分間撹拌を続けることによって、パウダー状のカレールウが得られた。得られたパウダー状カレールウは、製造時又は製造後にブロッキングを起こすことなく、その形態が安定であった。
【0048】
【表1】
[図:0001385223000001.jpg]
」
イ 甲2に記載の技術事項
上記アの記載から、以下の技術事項が記載されているといえる。
「香辛風味が豊かでシャープに現れるカレールウを得るために、カレールウに対して、カレー粉、油脂6~15重量%、及び加熱調理されたオニオンパウダー10~40重量%を含有すること。」
(3)対比・判断
事案に鑑み、本件特許発明4から判断する。
ア 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1カレールウ発明とを対比する。
甲1カレールウ発明の「カレールウ」、「小麦粉」、「カレーパウダー」、「ピーナツバター」は、それぞれ、本件特許発明4の「ルウ」、「澱粉質原料」、「香辛料」、「乳素材」に相当する。
甲1カレールウ発明の小麦粉ルウ製造時に加えられている「油脂(ヘット)」は、本件特許発明4の「第1の油脂」に相当し、甲1カレールウ発明の小麦粉ルウに加えられている「油脂(ヘット)」は、「油脂」の限りにおいて、本件特許発明4の「第1の油脂」及び「第2の油脂」に相当する。
甲1カレールウ発明の「オニオンパウダー」は、製造加工後に飴色化しているかどうか不明ではあるが、「オニオン原料」である限りで本件特許発明4の「第1のオニオン原料」及び「第2のオニオン原料」に相当する。
甲1カレールウ発明のオニオン原料の配合量について計算すると、甲1カレールウ発明の総量は、蒸発等がないと仮定すれば、総計143.5(=40+30+15+5+10+18+10+8+1.5+6)であるから、オニオン原料の配合量は、3.5(=5/143.6×100)質量%となる。
そして、本件特許発明4は「前記第1のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.01~5質量%であり、前記飴色化オニオンが、第2のオニオン原料及び第2の油脂を含み、前記第2のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.005~2.0質量%である」と特定するものであるから、オニオン原料の配合量について、甲1カレールウ発明は、本件特許発明4の条件を一応満足するといえる。
そうすると、本件特許発明4と甲1カレールウ発明とは、
「澱粉質原料と、油脂と、オニオン原料とを含むルウであって、乳素材と香辛料をさらに含み、オニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.01~5質量%である、ルウ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
オニオン原料に関して、本件特許発明4は「第1のオニオン原料と、飴色化オニオンとを含む」と特定するとともに、「前記第1のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.01~5質量%であり、前記飴色化オニオンが、第2のオニオン原料及び第2の油脂を含み、前記第2のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.005~2.0質量%である」と特定するのに対し、甲1カレールウ発明は、オニオン原料を前記ルウの全質量に対して3.5質量%含むものである点
<相違点2>
油脂に関し、本件特許発明4では「第1の油脂」「第2の油脂」からなるのに対し、甲1カレールウ発明は、油脂を含むが、第1と第2という2種の油脂を含むか明らかでない点
以下、まず相違点1について検討する。
甲2には、香辛風味が豊かでシャープに現れるカレールウを得るために、カレールウに対してカレー粉、油脂6~15重量%、及び加熱調理されたオニオンパウダー10~40重量%を含有することが記載されている。しかし、この場合、加熱調理されたオニオンパウダーが、必ずしも飴色化オニオンということはできないから、少なくとも本件特許発明4が飴色化オニオンを含むとする点で甲2から想到容易ということはできない。
また、仮に甲2の加熱調理されたオニオンパウダーが、飴色化オニオンといえるとしても、下記のとおり相違点1は甲2に基づいて想到容易とはいえないものである。
甲2において、飴色化オニオンを10~40重量%加えるルウが記載されているとしても、甲1カレールウ発明のオニオン原料の一部だけを、甲2の加熱調理されたオニオンパウダーに置き換えるという動機はないし、さらに、甲1カレールウ発明におけるオニオン原料の配合量は3.5質量%であることから、甲1カレールウ発明に、10~40重量%もの配合量で加熱調理されたオニオンパウダーを適用することには阻害要因がある。加えて、10~40重量%の飴色化オニオンを配合できたとしても、本件特許発明4の飴色化オニオンの配合量を超えてしまうことになるし、本件特許発明4の飴色化オニオンの配合量である0.005~2.0質量%の範囲であると、甲2に記載されているような「香味風味が豊かでシャープ」になる効果は奏し得ないことになる。
そして、本件特許発明4は、相違点1に係る構成により乳感及びスパイス感を増強できるという格別の効果を奏するものである。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲1カレールウ発明、すなわち、甲1に記載された発明及び甲2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項4を直接引用するものであり、本件特許発明4をさらに限定したものであるから、本件特許発明4と同様に、甲1カレールウ発明及び甲2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1製造方法発明を対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3>
オニオン原料について、第1のオニオンに加えて、本件特許発明1は、「前記ルウ原料混合物又は前記溶融状のルウに、飴色化オニオンを添加する工程をさらに含み、及び/又は、前記加熱処理混合物が、飴色化オニオンをさらに含み、」「前記飴色化オニオンが、第2のオニオン原料及び第2の油脂を含み、前記第2のオニオン原料の配合量が、前記ルウの全質量に対して0.005~2.0質量%である」と特定するのに対し、甲1製法発明はこの点を特定しない点
そして、上記相違点3について検討するに、相違点3に係る技術的内容は、実質的にみて、相違点1と同様のものといえるところ、相違点1に係る構成が想到容易といえないのは上記アで検討のとおりであるから、相違点3についても同様に想到容易ということはできない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1製造方法発明、すなわち、甲1に記載された発明及び甲2に記載の技術事項に基づいても当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1製造方法発明及び甲2に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0004】からみて、「乳感及びスパイス感を増強し、調理品全体の風味をバランスよく強調できるルウの製造方法の提供」及び「乳感及びスパイス感を増強し、調理品全体の風味をバランスよく強調できるルウの提供」であると認められる。
(3)サポート要件についての判断
発明の詳細な説明には、「本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ルウの原料として、異なる特性のオニオン由来原料を複数使用することで、当該ルウから作製される調理品の乳感及びスパイス感を増強することができることを見出し、本発明を完成させた。」(段落【0005】)と記載され、発明の効果として「本発明に従えば、飴色化されていない第1のオニオン原料及び飴色化オニオンを組み合わせてルウに配合することにより、当該ルウから作製される調理品の乳感及びスパイス感を増強することができる。したがって、バランスよく風味が向上した調理品を、ルウを用いて手軽に作製することができる。」(段落【0006】)とあり、作用機序を説明するものとして「本発明のルウの製造方法により製造されたルウから作製される調理品において、前記第1のオニオン原料は、主として乳感を増強するのに寄与し、前記飴色化オニオンは、主としてスパイス感を増強するのに寄与するが、前記第1のオニオン原料及び前記飴色化オニオンを組み合わせて使用することにより、乳感及びスパイス感がバランスよく増強される。前記第1のオニオン原料及び前記飴色化オニオンの配合比率は、最終的な調理品の種類や、目的とする風味バランスに応じて適宜調整することができるが、ある態様では、前記ルウにおいて、前記飴色化オニオンの含有量は、前記第1のオニオン原料の含有量以下である。なお、前記乳感は、前記ルウ又は前記調理品に配合される乳素材などに由来する風味であり、前記スパイス感は、前記ルウ又は前記調理品に配合される香辛料に由来する風味である。」(段落【0017】)との記載がある。
そして、実施例及び比較例において、第1のオニオン原料と飴色化オニオンを組み合わせたルウは、発明の課題を解決するのに対し、一方だけ配合したルウは発明の課題を解決しないことを確認している。
そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は、製造方法として「澱粉質原料及び第1の油脂を含む加熱処理混合物を用意する工程と、前記加熱処理混合物に加熱処理混合物に第1のオニオン原料を添加して、ルウ原料混合物を調製する工程と、前記ルウ原料混合物を加熱撹拌して、溶融状のルウを調製する工程とを含み、前記ルウ原料混合物又は前記溶融状のルウに、飴色化オニオンを添加する工程をさらに含み、及び/又は、前記加熱処理混合物が、飴色化オニオンをさらに含み、前記第1のオニオン原料は、飴色化されておらず、乳素材及び香辛料を添加する工程をさらに含」む構成及びルウとして「乳素材及び香辛料を含み、さらに第1のオニオン原料と飴色化オニオンを組み合わせ」る構成とすることで、上記発明の課題を解決すると理解できる。
そして、本件特許発明1及び4は、上記構成を有しているから、本件特許発明1及び本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、当該発明の課題を解決できるものといえる。
本件特許発明2及び3並びに5についても同様である。
よって、本件特許発明1ないし5は、サポート要件を充足する。
(4)特許異議申立人の主張の検討
特許異議申立人は、上記第3 2(1)ないし(4)の主張をするが、第1のオニオン原料の形態や配合量、飴色化オニオンの配合量、乳素材及び香辛料の配合量は、上記(3)において検討したとおり、発明の課題の解決手段とは関係がない。当該主張は、採用できない。
(5)申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700065