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特許異議申立

2023-700471

粉末唐辛子の製造方法

審判番号
2023-700471
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-120693
登録番号
7169101
請求日
2023年05月08日
審決日
2024年10月31日
公報発行日
2025年01月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ハウス食品株式会社
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】市川 さつき
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【権利者代理人】松田 七重
  • 【異議申立人】奥谷 宏邦
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 相澤 啓祐
  • 審判官 土屋 知久
分類
P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.55 -YAA(A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7169101号発明「粉末唐辛子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7169101号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7169101号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7169101号(請求項の数4。以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年 6月26日の出願(特願2018-120693号。以下、「本願」という。)であって、令和 4年11月 1日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月10日にその特許掲載公報が発行された。 本件は、その後、令和 5年 5月 8日に特許異議申立人である奥谷 宏邦(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~4(全請求項)に係る特許に対してなされた特許異議申立事件であり、その後の経緯は以下のとおりである。 令和 5年10月20日付け 取消理由通知書 同年12月22日提出 訂正請求書及び意見書(特許権者) 令和 6年 2月28日提出 意見書(申立人) 同年 6月 7日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同年 8月 9日提出 意見書(特許権者) 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨及び訂正の内容 令和 5年12月22日提出の訂正請求書により特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求めるものであり、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当審が下線を付した。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料」と記載されているのを、「赤色のトウガラシの実をすりつぶして得た粉末唐辛子原料であって、粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料」に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4についても、同様に訂正する。 (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「製造方法。」と記載されているのを、「製造方法であって、前記粒径はレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定したものである、製造方法。」に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4についても、同様に訂正する。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無 ア 訂正事項1 (ア)訂正の目的 訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料」を、「赤色のトウガラシの実をすりつぶして得た粉末唐辛子原料であって、粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料」に限定するものである。 上記訂正は、「粉末唐辛子原料」を「赤色のトウガラシの実をすりつぶして得た」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (イ)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 訂正事項1に係る訂正は、上記(ア)で述べたとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (ウ)新規事項追加の有無 本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0001】には「本発明は、より明るさを抑えた赤黒い色味の粉末唐辛子の製造方法に関する。」と記載されており、同【0012】には「粉末唐辛子の赤色は、主にトウガラシの果皮由来の粒子であり、果皮は脆く、衝撃を与えると砕けやすいため、微粉になりやすいと推測される。一方、白色は主にワタや種子由来の粒子である。ワタは柔軟性があり柔らかいため、種子は油分を多く含むため、これらは衝撃を与えても微粉になりにくいと推測される。粉末唐辛子原料に水を添加し、混合することによって、赤色の微粉が白色のコア粒子の表面に付着して、白味が減少したことから、粉末唐辛子は、赤黒い色を有するようになったと推測される。」と記載されていることからみて、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「粉末唐辛子原料」が、「赤色の唐辛子(トウガラシ)」に由来するものであることは、本件明細書に記載されているに等しい事項であるといえる。 また、同【0002】に「粉末唐辛子は、乾燥させたトウガラシの実をすりつぶして粉末にした調味料である。」と記載されているように、一般に粉末唐辛子は「トウガラシの実をすりつぶして得」られるものであるから、上記「粉末唐辛子原料」における「粉末」が「トウガラシの実をすりつぶして得た」ものであることも、本件明細書に記載されているに等しい事項であるといえる。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 イ 訂正事項2 (ア)訂正の目的 訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料」における「粒径」について、たとえ粒径の数値が同じであっても、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定したものと、他の測定方法(例えば篩を用いたもの)により測定したものとでは、測定原理に起因して実際のサイズが異なる蓋然性が高いという不明瞭な状態を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (イ)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 訂正事項2に係る訂正は、上記(ア)で述べたとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (ウ)新規事項追加の有無 本件明細書の【0008】には「粉末唐辛子原料及び粉末唐辛子の粒径分布は、例えばレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。」と記載されており、同【0010】には「レーザ回折式粒度分布測定装置(レーゼンテック社製M400L)を用いて測定した粉末唐辛子原料、並びに実施例7及び8の粒度分布を表2に示す。」と具体的に記載されているから、訂正事項2に係る訂正は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (2)独立特許要件について 本件は、本件訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1、2について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~4について、本件訂正前の請求項2~4はそれぞれ本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~4は一群の請求項である。 そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。 また、本件訂正請求は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、訂正後の請求項〔1~4〕を訂正単位とする訂正を請求するものである。 3 本件訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件特許の請求項1~4に係る発明 上記第2の3のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件訂正請求によって訂正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。なお、以下において、請求項1~4に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」ともいう。 「【請求項1】 赤色のトウガラシの実をすりつぶして得た粉末唐辛子原料であって、粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料を混合する混合工程を有し、前記混合工程において水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加して前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合することで前記微粉の割合を減少させることを含む粉末唐辛子の製造方法であって、 前記粒径はレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定したものである、製造方法。 【請求項2】 混合後、粉末唐辛子を乾燥させることを含む請求項1記載の製造方法。 【請求項3】 粉末唐辛子原料が加熱殺菌されたものである、請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項4】 混合を蓋付焙煎装置を用いて行う請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。」 第4 申立理由、取消理由及び取消理由(決定の予告)の概要 1 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、以下の(5)に示す甲第1号証~甲第9号証を提出し、以下の申立理由1~4により、本件訂正前の請求項1~4に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 なお、申立人は、令和 6年 2月28日提出の意見書とともに、追加の証拠方法として、以下の(5)に示す甲第10号証及び甲第11号証を提出している。 (1)申立理由1(新規事項の追加) 令和 4年 4月 5日提出の手続補正書及び同年 8月30日提出の手続補正書において、本件訂正前の請求項1について「前記混合工程において水を」「添加して前記微粉と前記コア粒子を」「混合すること」を限定する補正は新規事項の追加に該当し、特許法第17条の2第3項に違反するから、本件訂正前の請求項1及び請求項1を引用する本件訂正前の請求項2~4に係る特許は、同法第113条第1号により取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(進歩性) ア 申立理由2-1 本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 イ 申立理由2-2 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(なお、特許異議申立書21ページの(f)における「甲第4号証に甲第5号証を適用することで」との記載は、「甲第5号証に甲第6号証を適用することで」の明らかな誤記と認められる。)。 また、本件訂正前の請求項2~4に係る発明は、甲第5号証に記載された発明並びに甲第6号証及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件) ア 申立理由3-1(「微粉」と「コア粒子」について) (ア)申立理由3-1-1 本件訂正前の請求項1では、単に、粒径430μm未満の粒子を「微粉」とし、粒径430μm以上の粒子を「コア粒子」としているのみで、「微粉」がトウガラシの果皮の粒子であり、「コア粒子」がワタや種子由来の粒子であることが特定されていない。そのため、「微粉」がワタや種子由来の粒子を430μm未満の粒子としたものであり、「コア粒子」が果皮の粒子を430μm以上の粒子となるように粉砕したものも含まれる記載となっているが、この場合には「より明るさを抑えた赤黒い色味の粉末唐辛子の製造方法を提供すること」という本件発明の効果を達成できないことは容易に推察される。 (イ)申立理由3-1-2 さらに、本件訂正前の請求項1では「コア粒子」と「微粉」の割合も特定されていないため、「コア粒子」の表面を十分に被覆可能な量の「微粉」が含まれていない場合には、本件発明の効果を奏することができないことは明らかである。 イ 申立理由3-2(「赤黒い色味の粉末唐辛子の製造方法」について) 「唐辛子」という場合には、赤色のほか、緑色の唐辛子(「青色唐辛子」と呼ばれる。)も含まれることから、単に「粉末唐辛子」という記載では、「赤色唐辛子」のほか、「青色唐辛子」をも含むこととなる。「青色唐辛子」については、実施例等にも記載されておらず、また、本件発明の効果を奏するものとも考えられないことから、単に「粉末唐辛子」と記載された本件訂正前の請求項1は明細書の記載を超えるものとなっている。 ウ 申立理由3-3(混合時の温度について) 本件訂正前の請求項1には「前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」と記載されているが、150℃での実施例や70℃未満の実施例は記載されていない。 エ 小括 したがって、本件訂正前の請求項1及び請求項1を引用する本件訂正前の請求項2~4の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)申立理由4(明確性要件) ア 申立理由4-1(「混合時の温度及び時間」について) (ア)申立理由4-1-1 本件訂正前の請求項1には「前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」と記載されているが、「150℃未満」が何の温度であるのか特定されていない。 (イ)申立理由4-1-2 また、本件訂正前の請求項1では混合工程の時間については限定されていない。 イ 申立理由4-2(粉末唐辛子原料の水分含量について) 本件訂正前の請求項1では粉末唐辛子原料の水分含量が特定されていない。 ウ 申立理由4-3(「粒径」と「粒径分布」について) レーザ回折式粒度分布測定装置における粒度は、粒子を球体と仮定して求められるものであるが、本件訂正前の請求項1~4に係る発明における「微粉」及び「コア粒子」の形状は非球形である。よって、本件訂正前の請求項1の「粒径」は、複雑な形状を有する非球形の「微粉」及び「コア粒子」におけるどのようなサイズであるか、具体的に特定していない。 エ 小括 したがって、本件訂正前の請求項1及び請求項1を引用する本件訂正前の請求項2~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (5)証拠方法 ・甲第1号証:特開昭57-8755号公報 ・甲第2号証:特開平2-195858号公報 ・甲第3号証:特開2001-204448号公報 ・甲第4号証:特開2015-202079号公報 ・甲第5号証:特開昭62-259567号公報 ・甲第6号証:特開2004-73125号公報 ・甲第7号証:特許第7169101号公報 ・甲第8号証:特願2018-120693号の令和 4年 2月 1日付け拒絶理由通知書 ・甲第9号証:本件特許の特許権者が令和 4年 4月 5日に提出した意見書 ・甲第10号証:落合 一男、外2名、「レーザー回折粒度分布測定装置によるサブミクロン領域の粒度分布測定」、CREATIVE、日本化学工業株式会社、2006年、No.7、p.47-52、[online]、インターネット<URL:https://www.nippon-chem.co.jp/dcms_media/other/cre2006-6.pdf> ・甲第11号証:株式会社島津製作所のウェブサイト、「レーザ回折式粒度分布測定装置」(「1 はじめに」、「9 メーカ・機種間の粒度分布データの互換性」、「24 測れるものと測れないもの」)、[online]、インターネット<URL:https://www.an.shimadzu.co.jp/service-support/technical-support/analysis-basics/powder/lecture/practice/p01/index.html> 2 取消理由の概要 当審は、上記1の各申立理由のうち、申立理由3、4のそれぞれ一部を採用した上で一部職権により追加し、令和 5年10月20日付けで以下の取消理由1、2を通知した。 なお、申立理由1についての判断を留保した。 (1)取消理由1(サポート要件) ア 取消理由1-1(「微粉」と「コア粒子」について)(申立理由3-1-1に対応) 本件明細書の【0004】の記載からすると、本件訂正前の請求項1~4に係る発明が解決しようとする課題は、「より明るさを抑えた赤黒い色味の粉末唐辛子の製造方法を提供すること」にあると認められる。 そして、本件明細書の【0012】には、本件訂正前の請求項1~4に係る発明の粉末唐辛子は、主にトウガラシの果皮由来である赤色の「微粉」が、主にワタや種子由来である白色の「コア粒子」の表面に付着して、白味が減少したことから、赤黒い色を有するようになったと推測される旨が記載されている。 しかしながら、本件訂正前の請求項1では、単に、粒径430μm未満の粒子を「微粉」とし、粒径430μm以上の粒子を「コア粒子」としているのみで、「微粉」が主にトウガラシの果皮の粒子であり、「コア粒子」が主にワタや種子由来の粒子であることが特定されていない。 このため、本件訂正前の請求項1は、例えば、ワタや種子を430μm未満となるまで砕いて「微粉」とし、果皮を430μm以上となるように砕いて「コア粒子」とした場合も含まれる記載となっており、本件訂正前の請求項1に係る発明及び請求項1を引用する本件訂正前の請求項2~4に係る発明は、上記課題を解決できているとはいえない態様を含むものである。 イ 取消理由1-2(「赤黒い色味の粉末唐辛子の製造方法」について)(申立理由3-2に対応) 一般に、「唐辛子」には、青唐辛子など果皮の色が赤色でないものも含まれる。 こうした果皮の色が赤色でない「唐辛子」を砕いた「粉末唐辛子原料」を用いて、本件訂正前の請求項1に記載の製造方法で「粉末唐辛子」を製造しても、「粒径430μm未満の微粉」に赤色の粒子が存在しないため、「より明るさを抑えた赤黒い色味の粉末唐辛子」とならないことは明らかである。 よって、「粉末唐辛子原料」のもととなる「唐辛子」の種類を特定していない本件訂正前の請求項1及び請求項1を引用する本件訂正前の請求項2~4に係る発明は、上記アに示した課題を解決できているとはいえない態様を含むものである。 ウ 小括 上記ア、イの点で、本件訂正前の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(明確性要件) ア 取消理由2-1(「混合工程」について)(職権により追加) 本件訂正前の請求項1には、「粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料を混合する混合工程を有し、前記混合工程において水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加して前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」と記載されている。 ここで、上記「混合工程」は、「水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加」することと「前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合すること」とを同時並行で行う工程であるのか、「水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加」するステップの後に、「前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」ステップを行う工程であるのか特定できないため、本件訂正前の請求項1における「混合工程」の意味が明確であるとはいえない。また、本件訂正前の請求項1を引用する本件訂正前の請求項2~4も同様である。 イ 取消理由2-2(「粒径」と「粒径分布」について)(申立理由4-3に対応) 本件訂正前の請求項1には、「粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料」と記載されている。 上記「粒径」について、本件明細書の【0008】には、「ここで、粉末唐辛子原料及び粉末唐辛子の粒径分布は、例えばレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。」としか記載されておらず、他の測定方法(例えば篩を用いたもの)による「粒径」の場合も含み得る。 ここで、レーザ回折式粒度分布測定装置は、測定対象の粒子を球体と仮定して測定するものであり、本願の願書に添付した図面の図1を参照すると、「粉末唐辛子原料」を構成する粒子は明らかに非球形である。 このため、上記のように非球形の粒子を球形と仮定して測定した「粒径430μm」の微粉又はコア粒子と、他の測定方法(例えば篩を用いたもの)により測定した「粒径430μm」の微粉又はコア粒子とでは、実際のサイズが異なる蓋然性が高い。 したがって、本件訂正前の請求項1において、微粉及びコア粒子のサイズが明確であるとはいえない。また、本件訂正前の請求項1を引用する本件訂正前の請求項2~4も同様である。 ウ 小括 上記ア、イの点で、本件訂正前の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 3 取消理由(決定の予告)の概要 当審は、上記1の各申立理由のうち、上記2で判断を留保していた申立理由1を採用し、令和 6年 6月 7日付けで以下の取消理由3を通知した。 (1)取消理由3(新規事項の追加)(申立理由1に対応) ア 令和 4年 4月 5日提出の手続補正書及び同年 8月30日提出の手続補正書による補正により、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1における「粉末唐辛子原料に水を添加し、混合する」との事項が、「粉末唐辛子原料を混合する混合工程を有し、前記混合工程において水を」「添加して」「前記微粉と前記コア粒子を」「混合する」との事項に変更された。 イ ここで、上記アの補正前の事項については、願書に最初に添付した明細書(以下、「本件当初明細書」という。)の【0005】に「粉末唐辛子原料に対して水を添加し、混合する」と記載されていることも考慮すると、粉末唐辛子原料に水を添加し終えてから混合することを意味すると解するのが自然である。 ウ 一方、特許権者は、令和 5年10月20日付けで通知した取消理由2(1)(上記2(2)ア参照)に対し、「願書に添付した明細書の【0008】に「水の添加方法は、特に限定されないが、たとえば、混合前の容器に水を直接添加してもよいし、粉末唐辛子原料に水を噴霧してもよい。」(下線追加)と記載されていることから、「混合工程」は、令和5年10月20日起案の取消理由通知書において指摘されている、「水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加」するステップの後に、「前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」ステップを行う工程であってもよいし、「水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加」することと、「前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合すること」とを同時並行で行う工程であってもよく、請求項1に記載の「混合工程」は、どちらかのものに限定されるものではないから、本件特許の請求項1における「混合工程」の意味は明確であると思料する。」(令和 5年12月22日に提出した意見書の第4頁下から15~5行)と主張している。 エ そうすると、上記アの補正は、当該補正後の事項について、「粉末唐辛子原料を混合しながら水を同時並行で添加すること」も意味するとの新たな解釈をもたらす点で、いずれも新たな技術的事項を導入するものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本件訂正前の請求項1及び請求項1を引用する本件訂正前の請求項2~4に係る特許は、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 以下に述べるとおり、特許異議申立書に記載された申立理由1~4並びに取消理由通知書に記載した取消理由1、2及び取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由3によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由1、取消理由3(新規事項の追加) (1)令和 6年 6月 7日付け取消理由通知書(決定の予告)において指摘したとおり、本件当初明細書の【0005】に記載の「粉末唐辛子原料に対して水を添加し、混合する」との表現については、「粉末唐辛子原料に水を添加し終えてから混合する」ことを意味すると解するのが自然である。 その一方で、特許権者が令和 6年 8月 9日に提出した意見書に添付された乙第2号証(特開2005-239618号公報)の【0009】には、請求項3に記載の「バインダー液を添加して造粒することを特徴とする請求項1または2に記載の固形透析用剤の製造方法。」との発明特定事項について、「この出願発明における造粒工程は、固形透析用剤を造粒するために一般的に行われている造粒方法、造粒装置であればよく、特に限定はしないが、バインダー液を添加しながら、練合・造粒・乾燥する湿式造粒法が特に好ましい。」と記載されている。 乙第2号証の上記記載によれば、「バインダー液を添加して造粒する」との表現は、「バインダー液を添加しながら」「造粒」「する」ことを意味しているとも解されるから、発明の技術分野は異なるものの、本件当初明細書の【0005】に記載の「粉末唐辛子原料に対して水を添加し、混合する」との表現についても、「粉末唐辛子原料に対して水を添加しながら混合する」ことをも意味し得ると解する余地がある。 そうすると、本件当初明細書の【0005】の上記表現は、必ずしも「粉末唐辛子原料に水を添加し終えてから混合する」ことのみを意味するものではないと解するのが相当である。 (2)そこで、本件発明において「粉末唐辛子原料に対して水を添加」「する」ことの技術的意義を検討すると、本件当初明細書に明示的な記載は存在しないものの、本件当初明細書の【0012】に「粉末唐辛子原料に水を添加し、混合することによって、赤色の微粉が白色のコア粒子の表面に付着して、白味が減少したことから、粉末唐辛子は、赤黒い色を有するようになったと推測される。」と記載されていることからみて、本件発明における「水」は、赤色の微粉が白色のコア粒子の表面に付着するためのバインダーとして機能するものであると認められる。 この点に鑑みれば、水の上記機能は、混合前に水を添加するか、混合と並行して水を添加するかによって変化するものではないと解されるから、本件当初明細書の【0005】に記載の「粉末唐辛子原料に対して水を添加し、混合する」との表現が、「粉末唐辛子原料に水を添加し終えてから混合する」ことのみならず、「粉末唐辛子原料に対して水を添加しながら混合する」ことも意味し得るとしても、そのことによって新たな技術的事項が導入されるとはいえない。 (3)したがって、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1における「粉末唐辛子原料に水を添加し、混合する」との事項を、「粉末唐辛子原料を混合する混合工程を有し、前記混合工程において水を」「添加して」「前記微粉と前記コア粒子を」「混合する」との事項に変更する、令和 4年 4月 5日提出の手続補正書及び同年 8月30日提出の手続補正書による補正は、いずれも願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているから、申立理由1、取消理由3によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(進歩性) (1)申立理由2-1 ア 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 (ア)甲1の記載事項 甲1には、「トウガラシ粉末の製造法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 a 「2. 特許請求の範囲 トウガラシを粉砕し、その後100~145℃の温度で蒸気と接触させて600~1秒間保持して殺菌及び10重量%以下の水分含量を増加させた後、40~80℃の温度で30~100分間焙煎と同時に乾燥するか、又は上記条件で焙煎した後乾燥して水分含量を5~7重量%にし、更に常法により冷却することを特徴とするトウガラシ粉末の製造法。」(第1頁左欄第4~11行) b 「換言するならば、従来技術はトウガラシの香辛味を変質させないように加熱以外の殺菌方法によつてトウガラシ粉末を殺菌する技術の開発に集中していたのである。またトウガラシ粉末の品質改善殊に香り出し、色出し(鮮やかな赤色にする)を加熱によつて積極的に改善する技術についての研究は発表されていない。 本発明者等はこうした現状に鑑み、トウガラシ粉末の品質殊に香り出し、色出しの向上という問題に着目し、トウガラシ粉末の特有の香り、色を単に保持させるだけでなく更に向上させるための技術についてトウガラシ粉末の殺菌技術と共に研究を行なつた。その結果トウガラシのホールを粉砕した後、特定の条件下にて蒸気と接触させた後特定条件下で焙煎処理することによつて殺菌、香り出し、色出しに関して充分に満足できるトウガラシ粉末を得ることができるという知見を得た。」(第1頁右欄第15行~第2頁左上欄第11行) c 「次に粉砕して得られたトウガラシ粉末を100~145℃の温度で蒸気と接触させて600~1秒間保持して殺菌及び10重量%以下の水分の含量を増加させる。この場合ノズル等から噴出する蒸気を使用することによつてトウガラシ粉末の温度を急速に上昇させることができるので、短時間での殺菌が可能となりトウガラシ粉末の香辛味の損失を抑制することができる共に、殺菌条件の設定を簡便に且つ正確に行なうことができる。」(第2頁右上欄第18行~同頁左下欄第6行) d 「実施例1 水分含量10.5重量%のトウガラシのホール1.0kgを高速粉砕機で粉砕して10~100メツシユのものが60%、100メツシユパスのものが30%10メツシユオンのものが10%、という粒度分布を有するトウガラシ粉末を得た。 次にこのトウガラシ粉末0.5kgを長方形の容器に薄層状に0.1kg宛入れそれをレトルト釜に装填した後、110℃の蒸気で200秒間処理した。得られたトウガラシ粉末の増加水分量は9.0重量%であつた。次に上記トウガラシ粉末を油による間接加熱機構を有する密閉式回転焙煎釜で70℃、35分間焙煎処理した後、流動層乾燥に入れ120℃の熱風で1分間乾燥して水分含量5.0重量%のトウガラシ粉末を得た。得られたトウガラシ粉末に殺菌効果及び香り出し、色出し効果共に優れたものであつた。」(第4頁左下欄第5行~同頁右下欄第1行) (イ)甲1に記載された発明 上記(ア)dに摘記した実施例1に着目し、上記(ア)aに摘記した特許請求の範囲の記載に倣って整理すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「トウガラシのホールを高速粉砕機で粉砕し、10~100メッシュのものが60%、100メッシュパスのものが30%、10メッシュオンのものが10%、という粒度分布を有するトウガラシ粉末を得た後、レトルト釜で110℃の温度で蒸気と接触させて200秒間保持して殺菌及び9.0重量%の水分含量を増加させた後、密閉式回転焙煎釜で70℃の温度で35分間焙煎した後、流動層乾燥で乾燥して水分含量を5.0重量%にし、更に常法により冷却するトウガラシ粉末の製造法。」(以下、「甲1発明」という。)。 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 上記ア(ア)bに摘記した「色出し(鮮やかな赤色にする)」「に関して充分に満足できるトウガラシ粉末を得ることができるという知見を得た。」との事項からすると、甲1発明における「トウガラシのホール」は「赤色」であると認められるから、甲1発明における「トウガラシのホール」は、本件発明1における「赤色のトウガラシの実」に相当する。 b 甲1発明における、「高速粉砕機で粉砕」され、「蒸気と接触させ」る前の「トウガラシ粉末」と、本件発明1における「粉末唐辛子原料」とは、赤色のトウガラシの実から得た粉末唐辛子原料である点で共通する。 c 甲1発明において、「蒸気と接触させ」た後の「密閉式回転焙煎釜」では回転によるトウガラシ粉末の混合が生じているといえるから、甲1発明において、「トウガラシ粉末を」「密閉式回転焙煎釜で70℃の温度で35分間焙煎」することは、本件発明1において、「粉末唐辛子原料を混合する混合工程を有し、前記混合工程において」「150℃未満の温度で混合すること」に相当する。 d 甲1発明における「トウガラシ粉末の製造法」は、本件発明1における「粉末唐辛子の製造方法」に相当する。 e そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「赤色のトウガラシの実から得た粉末唐辛子原料を混合する混合工程を有し、前記混合工程において150℃未満の温度で混合することを含む粉末唐辛子の製造方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件発明1における「粉末唐辛子原料」は、赤色のトウガラシの実を「すりつぶして」得たものであるのに対し、甲1発明における「蒸気と接触させ」る前の「トウガラシ粉末」は、トウガラシのホールを「高速粉砕機で粉砕し」て得たものである点。 <相違点1-2> 本件発明1における「粉末唐辛子原料」は、「粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む」ものであり、「前記粒径はレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定したものである」のに対し、甲1発明における焙煎前の「トウガラシ粉末」は、「10~100メッシュのものが60%、100メッシュパスのものが30%、10メッシュオンのものが10%、という粒度分布を有する」ものである点。 <相違点1-3> 本件発明1は、「混合工程において水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加して前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合することで前記微粉の割合を減少させる」ものであるのに対し、甲1発明は、密閉式回転焙煎釜での焙煎においてトウガラシ粉末に水を添加しておらず、微粉とコア粒子を混合することで微粉の割合を減少させるものであるのか不明である点。 (イ)相違点についての判断 a 事案に鑑み、上記相違点1-3について検討すると、上記ア(ア)a、cの摘記事項からみて、甲1発明においてトウガラシ粉末を蒸気と接触させることは、トウガラシ粉末を殺菌する上での必須の要件であると認められるし、蒸気と接触させることによってトウガラシ粉末の水分含量を増加させることができているから、甲1発明において、密閉式回転焙煎釜での焙煎に代えてトウガラシ粉末に水を添加する工程を設けたり、当該焙煎中のトウガラシ粉末に水を添加するようにしたりする動機付けがあるとはいえない。 b また、甲2~4にも、上記相違点1-3に係る発明特定事項に関する記載は存在しないから、甲2~4を参照しても、上記aの判断に変わりはない。 c したがって、甲1発明において、上記相違点1-3に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 d よって、上記相違点1-1、1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記イ(ウ)のとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明2~4も同様に、甲1に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立理由2-1についてのまとめ したがって、本件発明1~4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由2-1によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 (2)申立理由2-2 ア 甲5の記載事項及び甲5に記載された発明 (ア)甲5の記載事項 甲5には、「粒状食品およびその製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。なお、以下において、「・・・」は記載の省略を意味する。 a 「2.特許請求の範囲 ・・・ (2).運動状態にある植物種子もしくはそのパフまたはそれらの粗砕物からなる粒状物に、少なくともその一方は香味を有する微粉末と結合剤とを散布し、上記粒状物を核としてその周囲に上記微粉末の付着を行う粒状食品の製造方法。」(第1頁左欄第4~12行) b 「なお、本発明において使用可能な植物種子としては、ごま、米、麦、粟、ヒエ、トウモロコシ、大豆、小豆、エンドウ、ピーナッツ、アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、松、栗、麻、しそ、山椒、ピーマン、とうがらし、カボチャ、いちじく等の種子を挙げることができる。 また、粒状物としてはその大きさは特に問わないが、その径がたとえば5mm以下であることが好ましい。したがって、上記の植物種子または該種子のパフが5mmを超える径である場合には、これらを砕いてその径を5mm以下にして利用することもできる。」(第2頁右上欄第18行~同頁左下欄第9行) c 「本発明に適用できる微粉末としては、100メッシュを通過する程度が好ましく、具体的な種類としては、海苔もしくは昆布等の海草、玉葱やほうれん草等の野菜、ウニ、かつお、貝類もしくは鳥獣肉等の動物性蛋白質、梅、柑橘類もしくはブドウ等の果物、コーヒー、ココアもしくは茶等の嗜好物、ビーフエキス等の調味料またはカレー粉等の香辛料等を挙げられる。」(第2頁左下欄第10~17行) d 「また、本発明において運動状態とは粒状物が何らかの動きをしていることを意味し、具体的には一定の装置を用いて粒状物を転動もしくは流動状態に置くとか、またはミキサーを用いて攪拌状態に置くこと等をいい、さらには上記動作を組み合わせた状態をも意味する。上記運動状態を形成する手段については、たとえば本出願人による特開昭59-55337または特開昭59-73036等に説明されている。」(第2頁左下欄第18行~同頁右下欄第6行) e 「結合剤としては、所期の目的を達成できるものであれば如何なるものであっても適用でき、なかでも水性結合剤がコスト的にも作業性においても好ましい。この水性結合剤としては、糊着成分を含む水溶液、O/Wエマルジョンまたは懸濁液等如何なる状態のものであってもよく、また使用する微粉末自体が付着性を有している場合には、水そのものを結合剤として使用することも可能である。さらには、上記結合剤中に前記微粉末以外の香味成分を溶解または分散して使用することもできる。上記糊着成分としては、プルラン、澱粉、糖類またはアラビアガム等、可食性で糊着剤として使用できるものであれば種々利用することができる。 また、散布は粉体および液体の両者の散布を意味し、後者は噴霧することはもとより手掛けによってもよい。」(第2頁右下欄第7行~第3頁左上欄第3行) (イ)甲5に記載された発明 上記(ア)aの摘記事項によれば、甲5には、次の発明が記載されていると認められる。 「運動状態にある植物種子もしくはそのパフまたはそれらの粗砕物からなる粒状物に、少なくともその一方は香味を有する微粉末と結合剤とを散布し、上記粒状物を核としてその周囲に上記微粉末の付着を行う粒状食品の製造方法。」(以下、「甲5発明」という。)。 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲5発明とを対比する。 a 上記1(2)で検討したとおり、本件発明における「水」は、赤色の微粉が白色のコア粒子の表面に付着するためのバインダー、すなわち結合剤として機能するものであると認められるから、甲5発明において「植物種子もしくはそのパフまたはそれらの粗砕物からなる粒状物に、少なくともその一方は香味を有する微粉末と結合剤とを散布」することと、本件発明1において「水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加して前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」こととは、結合剤を「原料」に「添加」する点で共通する。 b 甲5発明における「粒状食品の製造方法」と、本件発明1における「粉末唐辛子の製造方法」とは、「食品の製造方法」である点で共通する。 c そうすると、本件発明1と甲5発明とは、 「結合剤を原料に添加することを含む食品の製造方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点2-1> 本件発明1における「原料」は、「赤色のトウガラシの実をすりつぶして得た粉末唐辛子原料であって、粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料」であり、「前記粒径はレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定したものである」のに対し、甲1発明における「原料」は、「植物種子もしくはそのパフまたはそれらの粗砕物からなる粒状物」及び「微粉末」を含むものであり、「粒状物」及び「微粉末」に使用される材料の種類及び粒径がそれぞれ不明である点。 <相違点2-2> 結合剤として、本件発明1では、「水」を原料に添加するのに対し、甲1発明では、粒状物に散布する「結合剤」の種類が不明である点。 <相違点2-3> 本件発明1は、「混合工程において水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加して前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」ものであるのに対し、甲1発明は、「運動状態にある」「粒状物に」「微粉末と結合剤とを散布」するものであり、散布する際の温度及び結合剤の量が不明である点。 <相違点2-4> 本件発明1は、「混合工程において」「前記微粉の割合を減少させる」ものであるのに対し、甲1発明は、「上記粒状物を核としてその周囲に上記微粉末の付着を行う」際に、微粉末の割合を減少させるものであるのか不明である点。 (イ)相違点についての判断 a 事案に鑑み、上記相違点2-1について検討すると、上記ア(ア)bの摘記事項からみて、甲5発明において、「粒状物」を構成する「植物種子」として「とうがらし」を選択する動機付けはあるといえる。 一方、上記ア(ア)cの摘記事項には、「本発明に適用できる微粉末としては、・・・カレー粉等の香辛料等を挙げられる。」と記載されており、「香辛料」の中に「とうがらし」が含まれると解する余地はあるといえる。 しかしながら、「植物種子」として多数挙げられている中から「とうがらし」を選択した上で、さらに「微粉末」として多数挙げられている中から直接の記載がない「とうがらし」を選択することには無理があるといわざるを得ないから、甲5発明において、上記相違点2-1に係る発明特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 b また、甲1、6にも、上記相違点2-1に係る発明特定事項に関する記載は存在しないから、甲1、6を参照しても、上記aの判断に変わりはない。 c したがって、甲5発明において、上記相違点2-1に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 d よって、上記相違点2-2~2-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明及び甲1、6に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 e 仮に上記aの動機付けがあるとしても、上記相違点2-1に係る発明特定事項を備えた本件発明1によって奏される「より明るさを抑えた赤黒い色味の粉末唐辛子の製造方法を提供することができる」との効果(本件明細書の【0006】参照)は、甲1、5、6のいずれにも記載も示唆もされていないから、当業者であっても予測し得ない顕著なものであると認められる。 f そうすると、効果の点からみても、本件発明1は、甲5発明及び甲1、6に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲5に記載された発明並びに甲第6号証及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、甲5に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記イ(ウ)のとおり、本件発明1が、甲5に記載された発明並びに甲第6号証及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明2~4も同様に、甲5に記載された発明並びに甲第6号証及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立理由2-2についてのまとめ したがって、本件発明1~4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由2-2によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3、取消理由1(サポート要件) (1)申立理由3-1、取消理由1-1 ア 申立理由3-1-1、取消理由1-1 (ア)本件明細書の【0004】からすると、本件発明が解決しようとする課題は、「より明るさを抑えた赤黒い色味の粉末唐辛子の製造方法を提供すること」にあると認められる。 (イ)ここで、本件発明1の「粉末唐辛子原料」は、「赤色のトウガラシの実をすりつぶして得た粉末唐辛子原料であって、粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料」であるから、本件明細書の【0012】の記載を踏まえると、「赤色のトウガラシの実をすりつぶして得た粉末唐辛子原料」において、「粒径430μm未満の微粉」は「主にトウガラシの果皮由来の」赤色の「粒子」であり、「粒径430μm以上のコア粒子」は「主にワタや種子由来の」白色の「粒子」であると認められる。 (ウ)そうすると、本件発明1の製造方法によって得られた「粉末唐辛子」については、本件明細書の【0012】に記載のとおり、「赤色の微粉が白色のコア粒子の表面に付着して、白味が減少したことから、粉末唐辛子は、赤黒い色を有するようになったと推測される」ため、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4は、上記(ア)に示した課題を解決することができるものであるといえる。 (エ)申立人は、令和 6年 2月28日提出の意見書の3-2.(1)(イ)において、「例えば、赤色トウガラシの実を何ロットかに分けてそれぞれのロットを別々にすりつぶしたものをその後で混合して粉末唐辛子原料とすることも排除されていない。そうとすれば、この場合に、赤色トウガラシの実をすりつぶしてその全部が粒径430μm未満となる「微粉」としたものと、別の赤色トウガラシの実をすりつぶしてその全部が粒径430μm以上となる「コア粒子」としたものをそれぞれ混合したものも含み得る記載となっている。」及び「必ずしも「微粉」が「果皮」で「コア粒子」が「ワタ及び種子」に由来するものとは限らない。」と主張しているが、技術常識から考えて、すりつぶしの程度が極端に異なるロット同士を混合することは想定されないし、上記(イ)で述べたとおり、「粒径430μm未満の微粉」は「主にトウガラシの果皮由来の粒子」であり、「粒径430μm以上のコア粒子」は「主にワタや種子由来の粒子」であればよいから、「微粉」の全てが「果皮」であり、「コア粒子」の全てが「ワタや種子由来の粒子」である必要はない。 したがって、上記申立人の主張は採用しない。 (オ)よって、本件特許の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由3-1-1、取消理由1-1によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 イ 申立理由3-1-2 (ア)本件発明1は、粉末唐辛子原料中の「微粉」と「コア粒子」の含有割合を特定しないものであるが、たとえ「コア粒子」の表面を十分に被覆可能な量の「微粉」が含まれていなくても、「混合工程において」「微粉の割合を減少させること」ができれば、従来技術と比較して多少なりとも明るさを抑えた赤黒い色味の粉末唐辛子が得られると解されるから、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4は、上記ア(ア)に示した課題を解決することができるものであるといえる。 (イ)したがって、本件特許の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由3-1-2によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 (2)申立理由3-2、取消理由1-2 ア 本件発明1は、「赤色のトウガラシの実をすりつぶして得た粉末唐辛子原料であって、粒径430μm未満の微粉と粒径430μm以上のコア粒子を含む粉末唐辛子原料」を使用するものであり、緑色(青色)ではなく、「赤色のトウガラシの実」を用いるものであるところ、「混合工程において」「微粉の割合を減少させること」で、本件明細書の【0012】に記載のとおり、「赤色の微粉が白色のコア粒子の表面に付着して、白味が減少」することにより、従来技術と比較して明るさを抑えた赤黒い色味の粉末唐辛子が得られると解されるから、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4は、上記(1)ア(ア)に示した課題を解決することができるものであるといえる。 イ したがって、本件特許の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由3-2、取消理由1-2によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立理由3-3 ア 本件発明1は、「混合工程において水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加して前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」ものであるが、本件明細書に混合温度が150℃や70℃未満の実施例は記載されていない。 イ しかしながら、本件明細書の【0008】には、「150℃未満とすることで、添加した水分の蒸発を抑制しながら、混合することができる。また、混合時に上記の温度で加熱することにより、微粉の割合を好適に減少させるとともに、適度な風味を付与することもできる。」と記載されているし、同【0010】の【表1】には、混合温度(ジャケット温度)が70~133℃の実施例1~9が記載されている。 ウ 上記イの記載を踏まえても、混合温度が70℃未満となったり133℃超となったりしたからといって、得られた粉末唐辛子の色の評価が急激に悪化する根拠は見当たらず、混合温度が150℃未満であれば、上記実施例1~9と同様に(濃い)赤黒い色を有する粉末唐辛子が得られると解されるから、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4は、上記(1)ア(ア)に示した課題を解決することができるものであるといえる。 エ したがって、本件特許の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由3-3によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由4、取消理由2(明確性要件) (1)申立理由4-1 ア 申立理由4-1-1 (ア)本件特許の請求項1に記載の「150℃未満の温度」における「温度」については、本件明細書の【0008】に「混合する際の温度は、好ましくは150℃未満、より好ましくは120℃未満、更に好ましくは60~80℃である。この温度は、粉末唐辛子原料が接触する混合装置の温度をいい、たとえば混合装置の外周にジャケットがある場合はジャケットの温度をいう。」と記載されているため、「粉末唐辛子原料が接触する混合装置の温度」であることが明確である。 (イ)したがって、本件特許の請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件特許の請求項2~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由4-1-1によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 イ 申立理由4-1-2 (ア)本件特許の請求項1には、「混合工程」における混合時間が記載されていないが、記載されていないということは、混合時間を問わないことを意味しているから、混合時間が特定されていないからといって、本件発明1が明確でないことにはならない。 (イ)したがって、本件特許の請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件特許の請求項2~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由4-1-2によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 (2)申立理由4-2 ア 本件特許の請求項1には、「粉末唐辛子原料」の水分含量が記載されていないが、記載されていないということは、水分含量を問わないことを意味しているから、水分含量が特定されていないからといって、本件発明1が明確でないことにはならない。 イ 申立人は、特許異議申立書第28頁の(D)(イ)(a)において、「一般的な粉末唐辛子の水分含量は10~15質量%と考えられるが、仮に、このような水分含量を有する粉末唐辛子原料に上限の20質量%の水分を添加した場合には粉末唐辛子原料の水分含量は35質量%となり、しかも、そのような水分含量とされた粉末唐辛子原料は混合(撹拌)状態におかれるのであるから、粉末状態を保持できるのかが不明である。」と主張しているが、本件明細書の【0010】の【表1】には、水添加量が20質量%の実施例6が記載されており、「10~15質量%」の「水分含量を有する粉末唐辛子原料に上限の20質量%の水分を添加した場合」でも、粉末唐辛子が得られる、すなわち「粉末状態を保持できる」ことが確認されているから、上記主張は失当である。 ウ したがって、本件特許の請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件特許の請求項2~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由4-2によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立理由4-3、取消理由2-2 ア 本件特許の請求項1には、「微粉」及び「コア粒子」の「粒径」について、「粒径はレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定したものである」と記載されているが、本件明細書の【0010】には、実施例において「レーザ回折式粒度分布測定装置(レーゼンテック社製M400L)」を用いたことが記載されるのみであるから、請求項1に記載の「レーザ回折式粒度分布測定装置」は「レーゼンテック社製M400L」を指すと解するのが相当であり、請求項1に記載の「微粉」及び「コア粒子」が複雑な形状を有する非球形のものであるとしても、その粒径の測定方法は明確であるといえる。 イ したがって、本件特許の請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件特許の請求項2~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由4-3、取消理由2-2によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 (4)取消理由2-1 ア 本件特許の請求項1に記載の「混合工程において水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加して前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」との発明特定事項については、特許権者が令和 5年12月22日提出の意見書において、「「混合工程」は、令和5年10月20日起案の取消理由通知書において指摘されている、「水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加」するステップの後に、「前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合する」ステップを行う工程であってもよいし、「水を粉末唐辛子原料の質量を基準にして5~20質量%添加」することと、「前記微粉と前記コア粒子を150℃未満の温度で混合すること」とを同時並行で行う工程であってもよく、請求項1に記載の「混合工程」は、どちらかのものに限定されるものではない」と主張しており、上記1(2)での検討を踏まえると、当該主張は首肯できるものであるから、上記「混合工程」の意味は明確であるといえる。 イ したがって、本件特許の請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件特許の請求項2~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、取消理由2-1によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議申立書に記載された申立理由1~4並びに令和 5年10月20日付けの取消理由通知書に記載した取消理由1、2及び令和 6年 6月 7日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由3のいずれによっても、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700471

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