特許異議申立
2022-700026
半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
- 審判番号
- 2022-700026
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-078383
- 登録番号
- 6902569
- 請求日
- 2022年01月14日
- 審決日
- 2023年09月08日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日機装株式会社
- 【権利者代理人】森下 賢樹
- 【権利者代理人】村田 雄祐
- 【権利者代理人】三木 友由
- 【異議申立人】小林 喜一
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 廣田 かおり
- 分類
- P1652.536-YAA(H01L) / P1652.537-YAA(H01L) / P1652.121-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6902569号発明「半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6902569号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第6902569号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第6902569号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成31年4月17日に出願され、令和3年6月23日にその特許権の設定登録がされ、令和3年7月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 1月14日 :特許異議申立人小林喜一(以下「異議申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 4月21日付け:取消理由通知書
令和4年 7月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 8月25日 :異議申立人による意見書の提出
令和4年11月14日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 1月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 3月 2日 :異議申立人による意見書の提出
令和5年 6月19日付け:訂正拒絶理由通知書
令和5年 7月21日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
2 訂正の適否
(1)令和5年7月21日に提出された手続補正書による補正について
令和5年7月21日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、令和5年1月16日に提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)及び本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲を補正するものである。そこで、本件補正が上記訂正請求書の要旨を変更するものであるか否かについて検討する。
ア 本件補正の内容
本件補正の内容は、以下の事項からなるものである。
(ア)本件訂正請求書における訂正事項1のうち、以下の訂正事項1-1を削除する事項。
・訂正事項1-1
「基板上に設けられるn型不純物の濃度が5x1017cm-3以下であるAlGaN系半導体材料のベース層と、」とあるのを、「基板上に設けられるn型不純物の濃度が5x1017cm-3以下であるAlNから構成されるベース層と、」と変更する。
(イ)訂正事項1-1の削除に伴い、訂正の理由における訂正事項1-1に係る記載を削除する事項。
(ウ)訂正特許請求の範囲における訂正事項1-1に係る記載を訂正前の記載に変更する事項。
イ 本件補正の適否
上記アのとおり、本件補正は、本件補正前の訂正事項1の一部を削除するものであるから、請求の趣旨の減縮的変更に該当するものである。
したがって、本件補正は、本件訂正請求書の要旨を変更するものではないから、本件補正を認める。
(2)訂正の内容
本件補正により補正された本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次のとおりである(下線部が訂正箇所である)。
なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1~5〕について請求されている。
ア 訂正事項1
請求項1に、「前記n型半導体層および前記ベース層は、前記基板に対して前記第1角度よりも大きい第2角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面を有する」とあるのを、「前記n型半導体層および前記ベース層は、前記基板に対して前記第1角度よりも大きい第2角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面を有し、前記ベース層は、前記ベース層の傾斜面の外側に設けられる上面を有し、前記上面は、前記被複層によって被覆される第1領域と、前記第1領域の外側に位置する前記被覆層によって被覆されない第2領域とを有する」に訂正する。
イ 訂正事項2
請求項2に「前記被覆層は、前記ベース層の外周において前記ベース層と厚み方向に重ならないことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。」とあるのを、「前記p型半導体層上に設けられ、前記第1角度で傾斜して前記被覆層に被覆される傾斜面を有し、酸化シリコン(SiO2)または酸窒化シリコン(SiON)で構成される保護層をさらに備え、前記被覆層は、前記ベース層の外周において前記ベース層と厚み方向に重ならないことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
請求項3に「基板上に設けられるn型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料のn型半導体層と、」とあるのを、「基板上に設けられるアンドープのAlNから構成されるベース層と、前記ベース層上に設けられるn型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料のn型半導体層と、」に訂正するとともに、請求項3に「前記活性層の前記被覆層で被覆される表面の全体が前記基板に対して前記第1角度で傾斜することを特徴とする半導体発光素子。」とあるのを、「前記ベース層は、前記基板に対して前記第2角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面と、前記傾斜面の外側に設けられる上面とを有し、前記上面は、前記被覆層によって被覆される第1領域と、前記第1領域の外側に位置する前記被覆層によって被覆されない第2領域とを有し、前記活性層の前記被覆層で被覆される表面の全体が前記基板に対して前記第1角度で傾斜することを特徴とする半導体発光素子。」に訂正する。
(3)訂正要件の判断
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、請求項1の「ベース層」につき、「ベース層の前記傾斜面の外側に設けられる上面を有し、前記上面は、前記被覆層によって被覆される第1領域と、前記第1領域の外側に位置する前記被覆層によって被覆されない第2領域とを有する」と限定するものである。
訂正事項1は、請求項1の構成を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項追加の有無
a 本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の記載がある。
「【0029】
ベース層22は、第1上面22aと、第2上面22bと、傾斜面22dとを有する。第1上面22aおよび第2上面22bは、基板20の第1主面20aに実質的に平行な面であり、基板20の厚み方向(図1の上側)に向いている。第2上面22bは、第1上面22aの径方向外側に位置し、第1上面22aとは高さが異なっている。基板20の第1主面20aからベース層22の第2上面22bまでの高さ(または厚み)は、基板20の第1主面20aからベース層22の第1上面22aまでの高さ(または厚み)よりも小さい。傾斜面22dは、第1上面22aと第2上面22bの間に設けられ、基板20の第1主面20aに対して第2角度θ2で傾斜している。」
「【0046】
被覆層40は、n型半導体層24の第2上面24bと、保護層30の上面30aと、n側コンタクト電極32と、p側コンタクト電極34とをさらに被覆する。被覆層40は、ベース層22の第2上面22bの一部である第4領域W4をさらに被覆する。なお、被覆層40は、半導体発光素子10の径方向の最外側の第5領域W5には設けられていない。したがって、被覆層40は、ベース層22の外周においてベース層22と厚み方向に重ならないように設けられる。」
b 上記aの記載からすれば、訂正事項1で加わった事項は、本件明細書等の記載から導き出せるといえる。
よって、訂正事項1は、当業者によって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質拡張変更の有無
上記(ア)及び(イ)にも照らせば、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(エ)訂正事項1の小括
よって、訂正事項1は、訂正要件を満たす。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、請求項2に「前記p型半導体層上に設けられ、前記第1角度で傾斜して前記被覆層に被覆される傾斜面を有し、酸化シリコン(SiO2)または酸窒化シリコン(SiON)で構成される保護層をさらに備え、」との限定を付加するものである。
訂正事項2は、請求項2の構成を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項追加の有無
本件明細書等の【0037】には、「保護層30は、p型半導体層28の上に設けられる。保護層30は、酸化シリコン(SiO2)または酸窒化シリコン(SiON)で構成される。・・・保護層30は、上面30aと、傾斜面30cとを有する。傾斜面30cは、基板20の第1主面20aに対して第1角度θ1で傾斜する。・・・」と、また、【0044】には「被覆層40は、半導体発光素子10の第1メサ面12および第2メサ面14を少なくとも被覆する。第1メサ面12は、基板20に対して第1角度θ1で傾斜し、n型半導体層24の第1傾斜面24c、活性層26の傾斜面26c、p型半導体層28の傾斜面28cおよび保護層30の傾斜面30cで構成される。・・・」と記載されており、この記載からすれば、訂正事項2で加わった事項は、本件明細書等の記載から導き出せるといえる。
よって、訂正事項2は、当業者によって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質拡張変更の有無
上記(ア)及び(イ)にも照らせば、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(エ)訂正事項2の小括
よって、訂正事項2は、訂正要件を満たす。
ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、請求項3の「基板」と「n型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料のn型半導体層」の間に「アンドープのAlNから構成されるベース層」を設けることを特定するとともに、「前記ベース層は、前記基板に対して前記第2角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面と、前記傾斜面の外側に設けられる上面とを有し、前記上面は、前記被覆層によって被覆される第1領域と、前記第1領域の外側に位置する前記被覆層によって被覆されない第2領域とを有し」と限定するものである。
訂正事項3は、請求項3の構成を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項追加の有無
a 本件明細書等には、以下の記載がある。
「【0027】
・・・ベース層22は、例えば、アンドープのAlN層であり、・・・」
「【0029】
ベース層22は、第1上面22aと、第2上面22bと、傾斜面22dとを有する。第1上面22aおよび第2上面22bは、基板20の第1主面20aに実質的に平行な面であり、基板20の厚み方向(図1の上側)に向いている。第2上面22bは、第1上面22aの径方向外側に位置し、第1上面22aとは高さが異なっている。基板20の第1主面20aからベース層22の第2上面22bまでの高さ(または厚み)は、基板20の第1主面20aからベース層22の第1上面22aまでの高さ(または厚み)よりも小さい。傾斜面22dは、第1上面22aと第2上面22bの間に設けられ、基板20の第1主面20aに対して第2角度θ2で傾斜している。」
「【0046】
被覆層40は、n型半導体層24の第2上面24bと、保護層30の上面30aと、n側コンタクト電極32と、p側コンタクト電極34とをさらに被覆する。被覆層40は、ベース層22の第2上面22bの一部である第4領域W4をさらに被覆する。なお、被覆層40は、半導体発光素子10の径方向の最外側の第5領域W5には設けられていない。したがって、被覆層40は、ベース層22の外周においてベース層22と厚み方向に重ならないように設けられる。」
b 上記aの記載からすれば、訂正事項3で加わった事項は、本件明細書等の記載から導き出せるといえる。
よって、訂正事項3は、当業者によって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質拡張変更の有無
上記(ア)及び(イ)にも照らせば、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(エ)訂正事項3の小括
よって、訂正事項3は、訂正要件を満たす。
(4)小括
上記のとおり、訂正事項1~3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件補正により補正された本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
3 本件発明の認定
本件訂正は上記2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」という。また、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
[本件発明1]
基板上に設けられるn型不純物濃度が5×1017cm-3以下であるAlGaN系半導体材料のベース層と、
前記ベース層上に設けられるn型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料のn型半導体層と、
前記n型半導体層上に設けられるAlGaN系半導体材料の活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記n型半導体層、前記活性層および前記p型半導体層を被覆する誘電体材料の被覆層と、を備え、
前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれは、前記基板に対して第1角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面を有し、
前記n型半導体層および前記ベース層は、前記基板に対して前記第1角度よりも大きい第2角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面を有し、
前記ベース層は、前記ベース層の傾斜面の外側に設けられる上面を有し、前記上面は、前記被複層によって被覆される第1領域と、前記第1領域の外側に位置する前記被覆層によって被覆されない第2領域とを有することを特徴とする半導体発光素子。
[本件発明2]
前記p型半導体層上に設けられ、前記第1角度で傾斜して前記被覆層に被覆される傾斜面を有し、酸化シリコン(SiO2)または酸窒化シリコン(SiON)で構成される保護層をさらに備え、
前記被覆層は、前記ベース層の外周において前記ベース層と厚み方向に重ならないことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
[本件発明3]
基板上に設けられるアンドープのAlNから構成されるベース層と、
前記ベース層上に設けられるn型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料のn型半導体層と、
前記n型半導体層上に設けられるAlGaN系半導体材料の活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記n型半導体層、前記活性層および前記p型半導体層を被覆する誘電体材料の被覆層と、を備え、
前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれは、前記基板に対して第1角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面を有し、
前記n型半導体層は、前記基板に対して前記第1角度よりも大きい第2角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面を有し、
前記ベース層は、前記基板に対して前記第2角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面と、前記傾斜面の外側に設けられる上面とを有し、前記上面は、前記被覆層によって被覆される第1領域と、前記第1領域の外側に位置する前記被覆層によって被覆されない第2領域とを有し、前記活性層の前記被覆層で被覆される表面の全体が前記基板に対して前記第1角度で傾斜することを特徴とする半導体発光素子。」
[本件発明4]
前記第1角度は、40度以上55度未満であり、前記第2角度は、55度以上70度未満であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の半導体発光素子。
[本件発明5]
前記n型半導体層の前記第2角度で傾斜する部分の厚さは、前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれの前記第1角度で傾斜する部分の厚さの合計よりも大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
4 取消理由通知(決定の予告)の概要
令和4年7月1日に提出された訂正請求書による訂正後の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和4年11月14日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1~5に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
引用文献1:K. H. Baik et.al., Light output enhancement of GAN-based flip-chip light-emitting diodes fabricated with SiO2/TiO2 distributed Bragg reflector coated on mesa sidewall, Journal of Applied Physics, (米), 2010年10月, vol. 108, 063105(甲第1号証)
5 当審の判断
(1)引用文献の記載内容、引用発明
ア 引用文献の記載内容
引用文献1には次の記載がある。
(ア)「We report on the enhanced light output of GaN-based flip-chip light-emitting diodes(LED) fabricated with SiO2/TiO2 distributed Bragg reflector (DBR) on mesa sidewall. At the wavelength of 400 nm, five pairs of SiO2/TiO2 DBR coats on the GaN layer showed a normal-incidence reflectivity as high as 99.1%, along with an excellent angle-dependent reflectivity. As compared to the reference LED, the LED fabricated with the DBR-coated mesa sidewall showed an increased output power by a factor of 1.32 and 1.12 before and after lamp packaging, respectively. This could be attributed to an efficient reflection of the laterally guided mode at the highly reflective mesa sidewall, enhancing the subsequent extraction of light through the sapphire substrate.」(063105-1)
当審訳
メサ側壁にSiO2/TiO2分布ブラッグ反射鏡(DBR)を使用して製造されたGaNベースのフリップチップ発光ダイオード(LED)の強化された光出力について報告する。400nmの波長でGaN層上の5対のSiO2/TiO2 DBR被覆は、優れた角度依存反射率とともに、99.1%という高い法線入射反射率を示した。参照LEDと比較して、DBRでコーティングされたメサ側壁は、ランプパッケージの前後でそれぞれ1.32倍と1.12倍の出力パワーの増加を示した。これは、高反射メサ側壁での横方向伝搬モードが効率よく反射されたためと考えられ、サファイア基板を介したその後の光取出が向上した。
(イ)「The epitaxial structure of the LED wafer studied here consists of a ~4.5-μm-thick undoped GaN layer, ~3.0-μm-thick n-GaN, five-period GaN/InGaN multiple quantum-well, a p-GaN/p-AlGaN electron blocking layer, and a 0.14-μm-thick p-GaN. The LED wafer was grown using the metal organic chemical vapor deposition system. The LED structures were grown on both a planar sapphire substrate and a hemispherical patterned sapphire substrate.」(063105-2)
当審訳
本研究のLEDウェーハのエピタキシャル構造は、最大4.5μmのアンドープのGaN層、最大3.0μmのn-GaN層、5周期のGaN/InGaNの多重量子井戸層、p-GaN/p-AlGaNの電子ブロック層、0.14μmのp-GaN層からなる。LEDウェーハは有機金属気相成長法により成長された。LED構造は、平面サファイア基板と半球状にパターン化されたサファイア基板の両方の上に成長した。
(ウ)「Figure 1(a) shows the schematic cross-sectional diagram of the completed LEDs. Notably, the profile angles of the shallow mesa sidewall (θmesa) and the isolation-etched mesa sidewalls (θisolation) are different, i.e., θmesa=26° and θisolation=73°. This can be attributed to the use of a different etching mask, namely, a SiO2 hard mask for the isolation etching and a photoresist mask for the shallow mesa etching.」(063105-2)
当審訳
図1(a)は、完成したLEDの概略断面図を示している。特に、浅いメサ側壁(θmesa)と分離エッチングされたメサ側壁(θisolation)の断面角度は異なる。つまり、θmesa=26°であり、θisolation=73°である。これは、異なるエッチングマスク、すなわち、分離エッチング用のSiO2ハードマスクと浅いメサエッチング用のフォトレジストマスクの使用によって可能である。
(エ)「To maximize the reflectivity of the mesa sidewall, it is important to properly design the structure of the DBR. Figure 2(a) shows the normal-incidence reflectivity of SiO2/TiO2 DBR versus the wavelength as a function of the number of DBR pairs. ・・・中略・・・
The figure shows that, first, the reflectivity increases significantly as the DBR pairs increase. For example, the normal-incidence reflectivities obtained at the Bragg wavelength were 0.565, 0.818, 0.931, 0.975, and 0.991 for one, two, three, four, and five pairs of SiO2/TiO2 DBRs, respectively. Second, the spectral width of the stop band is much wider than the emission linewidth of the LED (λFWHM=17.4nm, where FWHM is full width at half maximum). This can be attributed to a relatively large difference in the refractive indexes of the two constituent oxides. These results indicate that the coating of five pairs SiO2/TiO2 DBR onto the mesa sidewall yields an excellent normal-incidence reflectivity.
Since the light emanating from the active region is emitted isotropically, the angle-dependent reflectivity should be also taken into consideration. Figure 2(b) shows the calculated reflectivity of five pairs of SiO2/TiO2 DBR as a function of the angle of incidence.」(063105-2)
当審訳
メサ側壁の反射率を最大化するために、DBR構造の適切な設計が重要である。図2(a)はSiO2/TiO2 DBRの垂直入射光の反射率と波長との関係を、DBRの対の数ごとに表したものである。・・・中略・・・。
まず、反射率は、DBR対の増加にしたがって、大幅に増加することを、図は示している。例えば、ブラッグ波長における垂直入射光の得られた反射率は、SiO2/TiO2 DBR対が1、2、3、4、5の場合、それぞれ、0.565、0.818、0.931、0.975、0.991である。次に、阻止帯のスペクトル幅はLEDの放出の線幅(半値幅は17.4nm)よりもはるかに広い。このことは、2つの構成要素酸化物の屈折率の比較的大きな差によるものである。この結果は、5対のSiO2/TiO2 DBRのメサ側壁への被覆は、すぐれた垂直入射反射率となることを示している。
活性領域から発散する光は、等方的に放出するので、反射率の角度依存が考慮されるべきである。図2(b)は、5対のSiO2/TiO2 DBRの計算された反射率と入射角度との関係を示す。
「FIG. 1. (a) The schematic cross-sectional diagram of the completed LEDs.」(063105-2)
当審訳
図1(a) 完成したLEDの概略断面図。
FIG. 1. (a)
[図:0001404727000001.jpg]
FIG 2(a)、2(b)
[図:0001404727000002.jpg]
(オ)図1(a)と、上記(イ)の記載より、次のことが読み取れる。
a θmesaの角度で傾斜した傾斜面は、n-GaN層、GaN/InGaNの多重量子井戸層、p-GaN/p-AlGaNの電子ブロック層、p-GaN層にわたって形成され、θisolationの角度で傾斜した傾斜面は、アンドープのGaN層、n-GaN層にわたって形成されていること。
b θmesaの角度で傾斜した傾斜面が施された部分の半導体層の厚みは0.8μmであり、θisolationの角度で傾斜した傾斜面が施された部分の半導体層の厚みは7.2μmであること。
イ 引用発明
上記アから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「GaNベースのフリップチップ発光ダイオード(LED)であって、
サファイア基板と、
前記サファイア基板上に成長したLED構造とからなり、
LED構造は、最大4.5μmのアンドープのGaN層、最大3.0μmのn-GaN層、5周期のGaN/InGaNの多重量子井戸層、p-GaN/p-AlGaNの電子ブロック層、0.14μmのp-GaN層からなり、
LED構造のメサ側壁には5対のSiO2/TiO2分布ブラッグ反射鏡(DBR)が形成され、浅いメサ側壁(θmesa)と分離エッチングされたメサ側壁(θisolation)の断面角度は異なり、
θmesa=26°、θisolation=73°であり、
当該異なる断面角度は、異なるエッチングマスク、すなわち、分離エッチング用のSiO2ハードマスクと浅いメサエッチング用のフォトレジストマスクの使用によって作成可能であり、
θmesaの角度で傾斜した傾斜面は、n-GaN層、GaN/InGaNの多重量子井戸層、p-GaN/p-AlGaNの電子ブロック層、p-GaN層にわたって形成され、θisolationの角度で傾斜した傾斜面は、アンドープのGaN層、n-GaN層にわたって形成され、
θmesaの角度で傾斜した傾斜面が施された部分の半導体層の厚みは0.8μmであり、θisolationの角度で傾斜した傾斜面が施された部分の半導体層の厚みは7.2μmである、
発光ダイオード(LED)。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「発光ダイオード(LED)」、「サファイア基板」は、本件発明1の「半導体発光素子」、「基板」にそれぞれ相当する。
b 引用発明の「アンドープのGaN層」は、本件発明1の「ベース層」と、基板上に設けられる点で共通する。
c 引用発明の「n-GaN層」は、ベース層上に設けられるn型半導体層であるといえる。
d 引用発明の「多重量子井戸層」は、「n型半導体層上に設けられる半導体材料の活性層」であるといえる。
e 引用発明の「p-GaN/p-AlGaNの電子ブロック層」と「p-GaN層」は、p型半導体層であるといえる。
f 引用発明のLED構造のメサ側壁には、5対のSiO2/TiO2分布ブラッグ反射鏡(DBR)が形成されており、浅いメサ側壁(θmesa)とメサ側壁(θisolation)とが存在し、θmesaの角度で傾斜した傾斜面は、n-GaN層、GaN/InGaNの多重量子井戸層、p-GaN/p-AlGaNの電子ブロック層、p-GaN層にわたって形成され、θisolationの角度で傾斜した傾斜面は、アンドープのGaN層、n-GaN層にわたって形成されているから、「n型半導体層、活性層およびp型半導体層を被覆する誘電体材料の被覆層を備え」ており、「被覆層で被覆される傾斜面を有し」ているといえる。
また、引用発明は、「浅いメサ側壁(θmesa)と分離エッチングされたメサ側壁(θisolation)の断面角度は異なり、θmesa=26°、θisolation=73°であり」、「θmesaの角度で傾斜した傾斜面は、n-GaN層、GaN/InGaNの多重量子井戸層、p-GaN/p-AlGaNの電子ブロック層、p-GaN層にわたって形成され、θisolationの角度で傾斜した傾斜面は、アンドープのGaN層、n-GaN層にわたって形成され」ており、このことは、本件発明1の「活性層およびp型半導体層のそれぞれは、基板に対して第1角度で傾斜(する)」「傾斜面を有し」、「n型半導体層およびベース層は、基板に対して第1角度よりも大きい第2角度で傾斜」(する)「傾斜面を有する」ことに相当するといえる。
(イ)一致点及び相違点
以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基板上に設けられるベース層と、
前記ベース層上に設けられるn型半導体層と、
前記n型半導体層上に設けられる活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記n型半導体層、前記活性層および前記p型半導体層を被覆する誘電体材料の被覆層と、を備え、
前記活性層および前記p型半導体層のそれぞれは、前記基板に対して第1角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面を有し、
前記n型半導体層および前記ベース層は、前記基板に対して前記第1角度よりも大きい第2角度で傾斜して前記被覆層で被覆される傾斜面を有する半導体発光素子。」
<相違点1>
ベース層につき、本件発明1は、n型不純物濃度が5×1017cm-3以下であるAlGaN系半導体材料であるのに対し、引用発明は、アンドープのGaNである点。
<相違点2>
n型半導体層につき、本件発明1は、n型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料としたのに対し、引用発明は、n-GaNとした点。
<相違点3>
活性層につき、本件発明1は、AlGaN系半導体材料としたのに対し、引用発明は、5周期のGaN/InGaNの多重量子井戸とした点。
<相違点4>
ベース層につき、本件発明1は、その傾斜面の外側に設けられる上面を有し、前記上面は、被複層によって被覆される第1領域と、前記第1領域の外側に位置する前記被覆層によって被覆されない第2領域とを有することとしたのに対し、引用発明は、傾斜面の外側に上面は設けられていない点。
(ウ)判断
a 相違点4について
事案に鑑み、相違点4を検討する。
引用発明は、半導体層の傾斜面を、フォトマスクを用いてエッチングにより形成している(上記(1)ア(ウ))。そうすると、引用発明のサファイア基板上の半導体層は、一旦、サファイア基板の全面の上に積層された後、端部をエッチングにより取り除いて形成されたものであるといえる。
そして、引用文献1のFIG. 1. (a)によると、半導体層の端部は傾斜しており、また、サファイア基板の端部においては、半導体層は全て取り除かれている。
ここで、引用文献1のFIG. 1. (a)は模式的なものであり、劈開による素子の個片化を考慮したとしてもサファイア基板の端部においてアンドープのGaN層が全て取り除かれるか否かに技術的な意義は特段ないといい得るとしても、本件発明は、「n型半導体層上に形成される活性層の面積を相対的に大きくすることができ、基板の単位面積あたりの発光効率を高める」(本件明細書等の【0007】)ことを目的とするものであり、ベース層が傾斜面を有する半導体発光素子においては、傾斜面の外側に設けられる上面を有するという構成を採用することにより、当該上面を有しない構成と比較して傾斜面のエッチング量が少なくなることにより、n型半導体層上に形成される活性層の面積を一層大きくすることができるものと認められ、このことは、本件明細書等の記載から当業者が推論できるものであると認められる。そうすると、ベース層が傾斜面を有し、傾斜面の外側に設けられる上面を有することには格別の効果があるというべきである。
そして、傾斜面を有するベース層が、傾斜面の外側に向けられる上面を有することは、異議申立人が提出した甲1~甲15のいずれにも開示されていないから、傾斜面を有するベース層を備えた引用発明において上記相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても、容易に想到し得たこととはいえない。
b したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2~5について
(ア)本件発明2~5と引用発明とを対比すると、少なくとも、両者は、上記相違点4(ただし、「本件発明1」は、それぞれ、「本件発明2~5」に読み替える。)において相違する。
そして、相違点4については、上記ア(ウ)aの議論が成り立つから、本件発明1と同様、本件発明2~5は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によって、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)実施可能要件、サポート要件
異議申立人は、本件特許の請求項1、3~5に係る発明がベース層の外周において被覆層と重ならない外周面を設けることを特定しないから、このような発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず(実施可能要件)、また、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもない(サポート要件)と主張する。
しかしながら、本件発明1~5は、本件訂正により、ベース層が、「前記傾斜面の外側に設けられる上面を有し、前記上面は、前記被覆層によって被覆される第1領域と、前記第1領域の外側に位置する前記被覆層によって被覆されない第2領域」を有することを特定するものとなったから、異議申立人の主張は、その前提において成り立たない。
(2)明確性要件
異議申立人は、本件特許の請求項2に係る発明が「前記被覆層は、前記ベース層の外周において前記ベース層と厚み方向に重ならない」と特定するが、「ベース層の外周」が何を指すのか不明確であると主張する。
しかしながら、「ベ―ス層の外周」は、字句どおりベース層の外周(本件明細書等【0048】の外周22e)を意味し、請求項2の「前記被覆層は、前記ベース層の外周において前記ベース層と厚み方向に重ならない」との発明特定事項も、上述の外周の意味及び本件明細書等の開示に照らして不明確なところはないから、異議申立人の上記主張には理由がない。
7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議理由によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700026