商標取消審判
2022-301006
ボイス
- 審判番号
- 2022-301006
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2017-166176
- 登録番号
- 6137649
- 請求日
- 2022年11月15日
- 審決日
- 2024年10月10日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイティーブイ ステューディオズ ネザーランズ コンテント ビー.ブイ.
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】田中 克郎
- 【請求人代理人】石田 昌彦
- 【請求人代理人】右馬埜 大地
- 【請求人代理人】中山 惇子
- 【被請求人】株式会社 NOVA
- 【被請求人代理人】飯田 昭夫
- 【被請求人代理人】飯田 明弘
- 【被請求人代理人】江間 路子
- 【被請求人代理人】安藤 敏之
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T132 .1 -Y (W41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6137649号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6137649号商標(以下「本件商標」という。)は、「VOICE」の文字を横書きしてなり、平成29年12月19日に登録出願、第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,娯楽施設の提供,会員制による娯楽の提供,テキスト(広告文を除く。)の執筆及び制作,娯楽に関する競技会の企画・運営」を含む第9類、第35類、第41類及び第42類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同31年4月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年12月5日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和元年(2019年)12月5日から同4年(2022年)12月4日までを、以下「要証期間」という。
なお、本件商標は、令和4年12月21日受付で、商標権者について、株式会社VOICEから株式会社NOVAに、権利の移転がなされている。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,娯楽施設の提供,会員制による娯楽の提供,テキスト(広告文を除く。)の執筆及び制作,娯楽に関する競技会の企画・運営」(以下「請求に係る役務」という。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証(以下、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように表記する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、請求に係る役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の使用は立証されていない。
被請求人は、答弁書において乙1ないし乙5を提出し、本件商標は、「本件審判の請求の登録前3年以内に、被請求人の通常使用権者により、請求に係る役務中、少なくとも「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」について使用されたと主張する。
しかしながら、乙1ないし乙3はウェブサイト又はウェブログを印刷したものであるところ、それらの証拠によって示される役務の内容(以下「本件使用役務」という。)をもって、本件商標が、請求に係る役務に使用された事実があったことを理解することはできないし、同ウェブサイト等を運営する者が、これらウェブサイト等を投稿したとされる時期及び役務が提供されたとされる時期において、本件商標の通常使用権者であった事実を把握できない。よって、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る役務についての登録商標の使用をしていることを示す証拠としての客観性を見出すことができない。
なお、乙4及び乙5は、それぞれ被請求人の関連会社と目される2社の関連性を示す参考資料、「教育イベントの実施」又は「教育イベントの運営」なる役務が、請求に係る役務中「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」に類似する役務であることを示す参考資料のようであり、本件商標の使用の事実を示す証拠ではない。
よって、本件商標が審判請求登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る役務のいずれかについての本件商標の使用を証明するに足るものではない。
(2)本件使用役務は、請求に係る役務と同一の役務ではない。
ア 被請求人の主張への反論
被請求人は、本件商標の使用者が、本件使用役務を「イベント」と称していたこと、そして、「教育イベントの実施」等の「商品・役務名リスト」の例示役務として掲載されている事実(乙5)のみを根拠として、上記主張を行っていると推測される。
しかしながら、被請求人は、本件使用役務がいかなる内容(役務の質、効能、用途、態様、提供の方法等)であるか、かつ、その役務がいかにして請求に係る役務と同一であるのかについての説明を行っていない。
この点、本件使用役務が、請求に係る役務と同一であるか否かの判断は、その役務がどのように称されているかという事実のみによって決するべきではなく、実際に提供された役務の内容がどのようなものであったかを子細に検討した上でなすべきである。
そこで、請求人は、乙1ないし乙3での下記に示す記載事項から把握できる本件使用役務の内容を、以下のとおり検討する。
イ 本件使用役務の内容は以下のようなものであると理解できる。
本件使用役務は、英会話スクール「NOVA」の教室内において、同スクールの外国人講師により提供される。
そして、当該役務の提供を受ける者は、原則として、同スクールの受講者であり、対象者は、通常の英会話のグループレッスンと同等の人数としている。例外的に外部からの参加も認める場合があるが、受講者の友人などが想定されている。
役務の提供時間は、英会話スクール「NOVA」でのレッスンと同等である。
受講者にとっては、過去の英会話レッスンで学んだ言葉や表現を実際に声に出して話す経験、新しい英会話のフレーズ等を知る機会を得ることにより、英会話に慣れ親しむこと、スキルアップを図ることができる。
これらの役務内容からすれば、本件使用役務は、受講者の英会話の上達を目的として、受講生のうちの希望者に対して行われる、フリートーク形式の英会話の特別講座のごときものであると推測できる。このことは、乙2において、「(イベント)レッスン」「費用/1講座につき・・・」のような記載があることからも、本件使用役務が、英会話の教授を行う講座の一形態であると理解することが自然である。
そうすると、仮に、本件商標の使用者により「イベント」と称されているとしても、それは、請求に係る役務中「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を意味するものではなく、むしろ、受講者の英会話の上達を目的として行われる、フリートーク形式の英会話講座を内容とする「英会話の教授」に他ならないし、そのように無理なく理解、把握できる。
ウ まとめ
してみると、被請求人が本件商標を使用していると主張する本件使用役務は「技芸・スポーツ・又は知識の教授」であるか、これに類する役務であると考えられ、このような役務は、請求に係る役務中「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」とは同一の役務ではない。
(3)通常使用権者による使用ではない。
まず、乙1ないし乙3には、本件商標の使用者を示す詳細な表示は記載されていない。
そして、本件商標の登録原簿(甲2)によれば、株式会社NOVAランゲージカンパニー(以下「NOVAランゲージ社」という。)が、乙1ないし乙3に係る各ウェブサイトが投稿したとされる日(2022年7月1日、7月13日、10月10日)、そして、役務を提供したとされる日(2022年7月31日、7月26日、10月9日)において、本件商標の専用使用権者あるいは登録された通常使用権者であった事実はない。
ところで、本件審判事件においては、本件商標に関して、商標権者であった株式会社VOICE(以下「VOICE社」という場合がある。)から、被請求人となった株式会社NOVA(以下「商標権者」という場合がある。)に移転登録がされた旨を通知するべく、令和5年1月18日発送の手続続行通知書が出されている。そこで、本件商標に係る経過情報によれば、当該商標の商標権の移転登録は、令和5年12月21日になされていた。
よって、本件商標の移転登録は、NOVAランゲージ社が乙1ないし乙3に係る各ウェブログを投稿したとされる時期、役務を提供したとされる時期の後になされたものであるから、本件商標の使用時における原簿上の商標権者は「株式会社VOICE」であった。
このため、本件商標の使用者であると被請求人が主張するNOVAランゲージ社と、本件商標の使用時における商標権者であったVOICE社との関係は、被請求人の提出した答弁書と証拠をもってしても明らかとはなっていない。
よって、NOVAランゲージ社が、本件商標の通常使用権者であったという事実は推認することはできないので、本件商標が審判請求登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る役務についての本件商標の使用を証明するに足るものではない。
(4)不使用についての正当な理由は存在しない。
被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることは主張、立証していない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書、令和5年8月23日付け審判事件回答書及び同6年6月13日付け回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙13を提出した。
1 答弁書における主張
(1)使用の事実を立証する資料
乙1ないし乙4は、被請求人の通常使用権者であるNOVAランゲージ社が運営する英会話スクール「NOVA」のウェブサイトの写しである。
また乙1ないし乙3は、「NOVA」各校のブログからの抜粋である。
(2)商標の使用時期
乙1ないし乙3に明記されているブログヘの投稿日、及びイベント開催日は、いずれも「予告登録日(2022年12月5日)前3年以内」である。
(3)商標の使用場所
ア 乙1 NOVA 長崎校(長崎県長崎市)
イ 乙2 NOVA 呉校(広島県呉市、開催場所:東広島フジグラン校 広島県東広島市)
ウ 乙3 NOVA 仙台卸町イオン校(宮城県仙台市若林区、開催場所:仙台駅前校 宮城県仙台市青葉区)
(4)商標の使用者
乙4に示すとおり、本商標の使用者は英会話スクール「NOVA」を運営するNOVAランゲージ社であり、同社は被請求人である商標権者(株式会社NOVA)の通常使用権者である。両者の関係は以下のとおりである。
英会話スクール「NOVA」は、NOVAホールディングス株式会社(以下「NOVAホールディングス社」という。)がプロデュースしている(乙4)。そして、商標権者(株式会社NOVA)、通常使用権者(NOVAランゲージ社)は、以下のとおり、ともにNOVAホールディングス社を親会社とする、子会社同士の関係である。
ア 代表権
3社ともI氏が代表権者の一人である。
イ 株式会社NOVA
NOVAホールディングス社が株式の100%を所有している。
ウ NOVAランゲージ社
NOVAホールディングス社が株式の98.2%を所有している。
(5)使用に係る役務
本件商標は、請求に係る役務中、「興行の企画・運営又は開催(映画・・・を除く。)」、さらに詳しくは、その下位概念である「教育イベントの実施」「教育イベントの運営」について使用されている。
すなわち乙1ないし乙3に示すように、通常使用権者は英会話スクールを運営しており、その英会話スクールにおいて、需要者(=受講生)に「VOICE」が「イベント」であると看取される方法で使用されている。
特に乙1及び乙2では、タイトルに大きく「イベント」と銘打っており、文中でも「イベント」の語を繰り返し使用している。
また乙3では、「VOICEイベント」と太字で何度も使用している。
よって、乙1ないし乙3において、当該商標が「興行の企画・運営又は開催(映画・・・を除く。)」の下位概念である「教育イベントの実施」「教育イベントの運営」について使用されていることは明らかである。
(6)「教育イベントの実施」「教育イベントの運営」が「興行の企画・運営又は開催(映画・・・を除く。)」に含まれることについて
請求に係る役務「興行の企画・運営又は開催(映画・・・を除く。)」は、いわゆるイベント・催事に関する最も広い表記であるから、「除く」と明記された役務以外の全てのイベント・催事を包括的に含むものである。よって「教育イベントの実施」「教育イベントの運営」も「興行の企画・運営又は開催(映画・・・を除く。)」に含まれる。
このことは、乙5のとおり、「教育イベントの実施」「教育イベントの運営」に、「興行の企画・運営又は開催(映画・・・を除く。)」と同じ類似群コード41F06のみが付されていることからも明らかである。
(7)使用に係る商標
本件商標は、一般的な活字体で表記された「VOICE」である。
一方、乙1ないし乙3において使用されている商標も、一般的な活字体で表記された「VOICE」である。
よって両者は、社会通念上同一の商標である。
(8)結論
以上のことから、本件商標は、少なくとも「予告登録日(2022年12月5日)前3年以内」である2022年7月ないし10月にかけて、第41類の指定役務中「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」に使用されていたことは、乙1ないし乙3により明確に立証された。
2 令和5年7月26日付け審尋に対する同年8月23日付け回答書における主張
新たに乙6として「国税庁 法人番号公表サイト」における「株式会社VOICE」の項を提出する。
ここに記載されているとおり、旧権利者:VOICE社は、令和3年(2021年)12月21日付けで株式会社NOVAに合併され、解散したので、本件商標は同日付けで株式会社NOVAにより一般承継されている。
被請求人が提出した乙1ないし乙3は、いずれも旧権利者:VOICE社が株式会社NOVAに合併された後の2022年の使用である。
そして、VOICE社の一般承継人である株式会社NOVAと、本件商標の使用者(NOVAランゲージ社)との関係は、答弁書及び乙4に示すとおりである。
よって、NOVAランゲージ社による本件商標の使用は、商標権者の通常使用権者による使用にあたる。
3 令和6年5月9日付け審尋に対する同年6月13日付け回答書における主張
(1)株式会社NOVA(商標権者)、NOVAランゲージ社(以下、この項において「使用者」という場合がある。)及び両者の親会社であるNOVAホールディングス社(以下、この項において「親会社」という場合がある。)との関係について
上記3社の関係について、特許庁の審査便覧41.100.05「出願人の支配下にあると実質的に認められる者の業務に係る商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の取扱い」を参照し、乙7ないし乙9を提出して立証する。
ア 3社の関係の要約
親会社、使用者及び商標権者の3社の関係は、要約すれば、乙7の「機構図」に記載のとおりである。
「機構図」に「Management group」とあるように、親会社自身はグループ全体の管理業務などの役割を担っている。
そして、親会社が外国語教育の事業をさせているのが、「Language company」の枠内に記載されている各社である。1番目が使用者、2番目が商標権者、3、4番目は後述する株式会社NOVA東日本と株式会社NOVA西日本である。
イ 資本関係及び人事関係
親会社、使用者及び商標権者の資本関係及び人事関係は、乙8及び乙9に記載のとおりであり、商標権者及び使用者の2社は、資本関係において親会社の支配下にある子会社である。また人事面でも、商標権者、使用者ともに、3名の取締役のうち過半数の2名がI氏とK氏であり、両氏は親会社の取締役でもあり、更に3社の代表取締役はいずれもI氏であるから、親会社の支配下にあることは明らかである。
この状態から、商標権者及び使用者は、資本面、人事面のいずれについても、ともに親会社と極めて密接な関係を有しているだけでなく、子会社同士もまた密な関係にあることは明らかである。
上記中、役員に関する記述が真実なものであることを裏付けるため、乙10ないし乙12として、上記3社の履歴事項全部証明書(写)を提出する。
ウ 「英会話スクールNOVA」の運営の変遷
英会話スクールNOVA(以下単に「スクール」ともいう。)は、当初はNOVAホールディングス社(親会社)が自ら運営していた。しかし乙7に示すように、親会社は他にも多くの事業を束ねている。そのため、スクールの事業拡大に伴う幾度かの管理体制の見直しを経て現在の体制となっているので、その変遷を以下に述べる。
(ア)変遷1:株式会社NOVA(商標権者)を設立
スクールの事業拡大に伴って、親会社が98.2%を出資して株式会社NOVA(商標権者)を設立し、スクール直営校舎の運営を移管した。そして、親会社はスクール運営の具体的な企画・開発・広報活動などを行う業態本部と、フランチャイズチェーン(FC)本部のみを担うこととなった。
(イ)変遷2:株式会社NOVA東日本、株式会社NOVA西日本を設立
さらに事業が拡大したことで、商標権者が1社で日本全国の直営校舎全てを運営していくことが難しくなったため、親会社の経営判断により、使用者の100%子会社として、株式会社NOVA東日本及び株式会社NOVA西日本を設立し、商標権者を含む3社(以下「直営校運営3社」という。)で、全国の直営校舎を管轄することとなった。
(ウ)変遷3:業態本部とFC本部の移管
また事業開始から相当期間が経過し、スクールの運営方針も安定してきたことから、業態本部とFC本部も、親会社から使用者へ移管することとした。
エ 現在の親会社から使用者及び商標権者への影響力
上記したとおり、親会社自らが全ての運営を行っていた当初に比べれば、軌道に乗った運営を、業態本部機能とFC本部機能を担う使用者と、直営校舎の運営を担う商標権者を含む直営校運営3社に移管した今は、運営への関与は直接的ではなくなった。しかし、これら子会社は、そもそも親会社が1社で行っていたスクール運営を分担して運営させる目的で設立・設置したものである。そのため当該スクール運営が1社で担いきれなくなるほど拡大するまで運営していた親会社が、未だ極めて強い影響力を有していることは、前記した資本関係・人事関係からだけでなく、商標の上からも明らかである。
すなわち、乙1ないし乙4に共通して用いられているハウスマーク「NOVA」ロゴや、人気キャラクター「NOVAうさぎ」、あるいは乙4の「NOVA」ロゴ右の「駅前留学」など、スクール運営に際し使用が不可避な商標は、乙13に示すとおり、全て親会社が権利を有し、その許諾の下に使用されている。
すなわち、親会社は自らが築いたスクールの運営を、個別具体的な企画などの業態本部機能や、フランチャイズ本部機能は使用者に、また、直営校舎の運営は直営校運営3社に移管したものの、スクールの運営方針を大局的な見地からコントロールする立場、すなわち乙4に記載されているとおり、自らはプロデュースする立場にある。
オ 小括
このように、これら子会社は、そもそもスクールの運営を目的として親会社が設立・設置したこと、資本面・人事面・商標面のいずれにおいても、今もなお強く支配する親会社の存在を考慮すれば、自らが支配する子会社のうちの1社(=商標権者)が所有する登録商標を、英会話スクールNOVAの財産として、自らが所有するハウスマークやキャラクターと同様に、その使用をコントロールすることは、極めて自然なことである。よって、子会社のうちの1社(=使用者)による商標「VOICE」の使用について、他方の子会社(商標権者)の黙示の許諾があるほどに、両子会社には親会社の存在を介して密接な関係がある。
以上の理由により、使用者は本件商標の通常使用権者である。
(2)「VOICE」の使用者について
NOVAランゲージ社(使用者)が「VOICE」を使用していることは、以下の点から明らかである。
ア NOVAホールディングス社(親会社)は、英会話スクールNOVAのハウスマーク「NOVA」ロゴ(登録第3021844号 同第5760883号)、人気キャラクター「NOVAうさぎ」(登録第4658260号、同第5793990号)、及び「駅前留学」(登録第3051190号)の商標を有している(乙13)。
イ 乙1(NOVA長崎校)、乙2(NOVA呉校)、乙3(仙台卸町イオン校)の「NOVA公式スクールブログ」のいずれにおいても、乙13中の「NOVA」ロゴと社会通念上同一のNOVAロゴが使用されており、また「NOVAうさぎ」のキャラクターの変形態様も使用されている。
ウ 「会社情報」が記載された乙4には、左上にNOVAロゴが表示され、その右横には「駅前留学」の商標が使用されている。そして、「会社情報」として、使用者の情報が掲載されている。
エ 乙4中の「人材募集」の欄では、商標「NOVAロゴ」を所有する親会社が、「NOVAホールディングス株式会社がプロデュースする英会話スクールNOVA」と紹介している。事業における「プロデュース」は、顧客である事業運営者に対して「企画・提案する」ほどの意味であり、相手が顧客ではなく子会社ならば「提案」が「指示」になることは自明である。
オ 上記の記載から、以下のことが確認できる。
(ア)親会社は乙1ないし乙4で一貫して用いられている「NOVAロゴ」や「NOVAうさぎ」のキャラクター、「駅前留学」の商標を所有しており、かつ、乙4において「NOVAホールディングス株式会社がプロデュースする英会話スクールNOVA」とある。これらのことから、親会社は、現在は「英会話スクールNOVA」の運営に直接的には関わっていないものの、プロデュースする立場で深く関わっていることが確認できる。
(イ)乙4から、実際の運営者は、子会社であって同号証の「会社情報」に掲載されている使用者であることが確認できる。
(ウ)「NOVAロゴ」と同じサイトで使用されている「VOICE」は、「使用者」と同じ親会社の支配下にある商標権者の所有であり、使用者及び商標権者ともに、親会社からの移管によりスクール運営の一部を担うために存在している。よって、親会社が「英会話スクールNOVA」事業のプロデュースの一環として、自社所有のNOVAロゴなどを使用者に使用させたのと同様に、商標権者所有の商標「VOICE」も、使用者に使用するようプロデュースし、乙1ないし乙3において用いられたものである。
(3)総括
以上のとおり、商標権者も使用者も、そもそも親会社が、自らが運営するスクール事業の一部を移管するために設立・設置したものであるから、両社は親会社の支配の下、同一役務を役割分担している存在である。そして両社は、子会社として資本的にも人事的にも親会社の強い支配下にあるだけでなく、その役務の提供において使用することが不可避なハウスマーク・キャラクターの両方が「親会社」の権利であって、その許諾を受けて使用している。このような状況下においては、親会社は、自らが支配する子会社のうちの1社(=商標権者)が所有する登録商標を、英会話スクールNOVAの財産として、自らが所有するハウスマークやキャラクターと同様に、その使用をコントロールすることは、極めて自然なことである。
以上のとおり、乙1ないし乙3で用いられている「VOICE」は、使用者であるNOVAランゲージ社により使用されていることは明らかである。したがって、被請求人が提出した証拠により、本件審判の請求の登録前三年以内に日本国内において、通常使用権者が本件商標を使用した事実が証明されている。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(1)英会話スクール「NOVA」長崎校及び仙台卸町校(以下、これらをまとめて「NOVA各校」という場合がある。)のブログには、それぞれ以下のとおりの記載がある。
ア 「NOVA」長崎校のブログには、2022年7月1日付けの記事として、「【英会話イベント】駅前VOICEでリアルな英会話を楽しみましょう」「「駅前VOICE」とは?レッスンで学んだ言葉や表現を実際に試すことができるフリートークメインの大人用英会話イベント!」「長崎校の初回は7月31日(日)14:10~15:40の2コマ分です」等の記載がある(乙1)。
イ 「NOVA」仙台卸町校のブログには、2022年10月10日付けの記事として、「3年ぶりに帰ってきた!VOICE!」「普段のレッスンで鍛え上げた英語を使うチャンスでもありますね」及び「中学生以上の生徒様、外部生様もご参加可能です!」「開催日時と内容 10月9日(日)10:00~(40分)「食文化編」」「ご参加費 1ポイント、もしくはお現金にて¥2200(税込み)」等の記載がある(乙3)。
(2)本件商標の前商標権者であるVOICE社は、令和3年12月に、現商標権者である株式会社NOVAに合併され、解散した(乙6)。
(3)株式会社NOVA、NOVAランゲージ社及びNOVAホールディングス社(以下「NOVAグループ」という。)については、以下のとおりである。
ア NOVAランゲージ社は、英会話教室の運営等及び英語の催事の企画、運営に関する事業を事業目的として設立された会社であり、英会話スクール「NOVA」の運営を事業内容としている(乙4、乙12)。
イ NOVAホールディングス社は、商標権者に100%、NOVAランゲージ社に98.2%、それぞれ出資している(乙8、乙9)。
ウ I氏は、NOVAグループ3社の代表取締役に就任している(乙10~乙12)。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用役務について
上記1(1)によれば、英会話スクール「NOVA」の校舎であるNOVA各校のブログにおいて、「VOICE」と称する英会話イベントが開催される旨告知(開催場所、日時(テーマ)、対象者、参加費等)されているところ、当該イベントは、主に参加者同士で英会話を自由な形式により行うものであり、また、英会話スクールにおいて開催されるものではあるが、当該スクールの受講生だけでなく、外部の者も参加可能であることがうかがえる。
そうすると、NOVA各校は、「VOICE」と称し、英会話を自由に実践できる場を提供することを企画し、参加者を募っているといえるから、NOVA各校においては、英会話を内容とするイベント(興行)の企画や運営、開催に係る役務(以下「使用役務」という。)が行われているとみるのが相当であり、これは、請求に係る役務のうち「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の範ちゅうに属するといい得るものである。
(2)使用商標について
上記(1)のとおり、NOVA各校のブログにおける「VOICE」の文字(以下「使用商標」という。)は、NOVA各校における英会話イベントの名称として使用されていると考えられる。
そして、本件商標は、前記第1のとおり、「VOICE」の文字を横書きしてなるところ、本件商標と使用商標「VOICE」とは、同一のつづりからなり、書体のみに変更を加えたものといえるから、社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用時期について
上記1(1)のとおり、使用商標は、NOVA各校のブログにおいて、2022年7月1日及び同年10月10日(以下、これらの日付を「使用商標使用時点」という。)に表示されているところ、使用商標使用時点は、いずれも要証期間内である。
(4)使用者について
ア 前記第1のとおり、前商標権者のVOICE社から現商標権者の株式会社NOVAに商標権の移転がなされたのは、本件審判の請求後の令和4年12月21日であるが、上記1(2)によれば、VOICE社は令和3年(2021年)12月に商標権者に合併されたことにより解散しているから、使用商標使用時点においては、商標権者が、本件商標の使用について、VOICE社から黙示の許諾を受けていたとみて差し支えない。
イ 上記1(3)のとおり、NOVAホールディングス社は、株式会社NOVA(商標権者)に100%、NOVAランゲージ社に98.2%出資していること、また、同一の者がこれら3社の代表取締役に就任していることからすると、商標権者とNOVAランゲージ社は、いずれもNOVAホールディングス社傘下のグループを構成する会社であって、相互に密接な業務上のつながりがあるといえる。
ウ 上記ア及びイを踏まえると、NOVAランゲージ社は、本件商標の使用について黙示の許諾を受けていたといえる商標権者と、相互に密接なつながりを有する者といえるから、NOVAランゲージ社は、本件商標の通常使用権者ということができる。
さらに、NOVAランゲージ社は、上記1(2)のとおり、英会話教室の運営や英語に関する催事の企画及び運営を事業目的とする会社であって、実際に英会話スクール「NOVA」の運営を行っていることから、同社が、本件商標の通常使用権者として、上記1(1)のNOVA各校におけるブログの掲載を行ったものといえる。
(5)使用行為について
上記1(1)によれば、NOVA各校のブログにおいて、使用商標を使用した使用役務についての広告が掲載されたといえるものであり、これは、使用役務に関する広告を内容とする情報に使用商標を付して、電磁的方法により提供する行為と認められる。
(6)小括
上記(1)ないし(5)からすれば、商標権者は、要証期間に、日本国内において、請求に係る役務に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一の使用商標を付して電磁的方法により提供したと認められ、これは商標法第2条第3項第8号に該当する商標の使用といえる。
また、当該公開は日本国内で行われていること明らかである。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、使用役務は、受講者の英会話の上達を目的とした、フリートーク形式の英会話講座を内容とする「英会話の教授」であって、「技芸・スポーツ又は知識の教授」又はこれに類する役務と考えられるから、請求に係る役務と同一の役務ではない旨主張する。
しかしながら、ある役務が2つの指定役務の範ちゅうに属する二面性を有することはあり得るから、仮に、使用役務が請求人の主張する「技芸・スポーツ又は知識の教授」の範ちゅうに属すると認められる場合であっても、そのことをもって直ちに、使用役務が請求に係る役務の範ちゅうに属しないということはできない。そして、使用役務が請求に係る役務中、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の範ちゅうに属するといえることは、上記2(1)のとおりである。
(2)請求人は、答弁書及びその証拠によれば、NOVAランゲージ社が、本件商標の通常使用権者であった事実を推認することができない旨主張する。
しかしながら、上記2(4)のとおり、NOVAランゲージ社は、本件商標の使用について黙示の許諾を受けていたといえる商標権者と相互に密接なつながりを有する者といえることから、本件商標の通常使用権者と認められる。
(3)したがって、請求人の上記の主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、通常使用権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商標の指定商品及び指定役務中、請求に係る役務について使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-301006