商標取消審判
2025-300396
エルビイエス
- 審判番号
- 2025-300396
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2021-111767
- 登録番号
- 6536622
- 請求日
- 2025年05月08日
- 審決日
- 2026年06月16日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】小野 尚美
- 【請求人代理人】矢口 和彦
- 【被請求人】株式会社日本経済新聞社
- 【被請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 正和
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 大島 康浩
- 分類
- T132 .1 -Y (W163541)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条、商標法第2条第3項第7号、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第50条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6536622号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6536622号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、令和3年9月8日に登録出願、第16類「印刷物」、第35類「印刷物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供,電子出版物の提供,書籍の制作」を含む、第35類、第38類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同4年3月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和7年5月21日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和4年(2022年)5月21日から同7年(2025年)5月20日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。以下、証拠の記載にあたっては、甲第○号証を甲○、乙第○号証を乙○のように記載する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第16類「印刷物」、第35類「印刷物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供,電子出版物の提供,書籍の制作」について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)「使用事実1」について
ア 被請求人の主張
被請求人は、電子版記事を表したウェブページは、「電子出版物」に該当し、「電子出版物」をウェブブラウザ上で表示される形態で提供する役務は、指定役務「電子出版物の提供」に該当するため、乙4及び乙5で示す「LBS」ロゴを表示したウェブサイト上で電子版記事を配信する行為が、指定役務「電子出版物の提供」に該当すると主張する。
イ 「電子出版物」とは
電子出版物とは、書籍、雑誌、新聞などの文字情報や図版を電子データ化し、ダウンロードして利用者の手元に残せるようにした商品である。コンテンツの性質は、電子書籍、電子雑誌、電子コミックなど、紙の出版物に相当する内容であり、提供形態はインターネットなどの電気通信回線を通じてダウンロードして提供されるものがこれに該当する。CD-ROMなどの記録媒体に収録されたものも含まれる。したがって、ダウンロードできないコンテンツは一般的には「電子出版物(26A01 26D01)」には含まれないと解される。
ウ 「電子出版物の提供」と「インターネットを利用した音楽・画像・映像・動画の提供」との違い
「電子出版物の提供(41C02)」とは、電子書籍・雑誌といった、文字情報が主体の出版物をオンラインで閲覧させるサービスをいう。
他方、「インターネットを利用した音楽・画像・映像・動画の提供(41E02 41E03)」は視聴覚コンテンツが主体であり、音楽、動画、アニメーション、映画などの提供がこれに該当する。
エ 乙5の示すページについて
乙5に示されたページでは、動画エリアが正常に表示されておらず、黒い帯状のものが確認できる。しかしその形状は広告バナーのようにも見え、一般的な動画エリアの縦横比とは異なるため、動画が存在しないかのように見える(※0 WEB画面を保存する際、ブラウザの機能でPDF出力した場合は、ブラウザが印刷用に整形した形で保存するため、画面表示とはレイアウトが異なることもある。また、動画部分は黒枠や空白になることが多く、再生中の状態は残らない。一方、スクリーンショットで保存した場合は、ディスプレイ上の見え方がそのまま反映される。動画部分は「止まった状態」で画像化される。)。
しかしながら、前述ウのとおり、動画が主体であるか、文字情報が主体であるかが、「電子出版物の提供」にあたるか「インターネットを利用した音楽・画像・映像・動画の提供」にあたるか、を判断する重要なポイントとなる。
この点について、Wayback Machineの同ページを2025年8月19日に表示したスクリーンショット(甲2の1)には、大きな赤枠内に「動画エリア」があり、同エリア内にエラーメッセージが表示されている(※1 Wayback Machineで動画が再生できるか否かは、動画ファイル自体がアーカイブされているか否か、埋め込み形式などに左右される。容量や外部サービス依存、技術的制約により再生できない場合が多く、再生可能なのは直接アップロードされアーカイブに成功した稀なケースに限られる。)。
その上の細長い赤枠内のアドレスバーで当該ページのURLが表示され、このページが乙5のURLと同一であることが確認できる。
したがって、乙4における「電子版LBS記事一覧」中の「男山」をクリックした際に表示されるウェブページには、本来「動画エリア」が存在することが裏付けられる。
加えて、甲2の2は、乙5と同一URL(https://channel.nikkei.co.jp/LBS/229_tvh.html)を2025年8月14日に日経チャンネルのアーカイブページとして表示したスクリーンショットである。
この甲2の2(日経チャンネルのアーカイブ)と、甲2の1(Wayback Machineのアーカイブ)は、いずれも同一のウェブページを示しており、動画エリアの直下には小さな文字で「配信 2025/4/11(金)18:00~」との記載が確認できる。
したがって、両証拠はともに、2025年4月11日(金曜日)18時から配信された乙5が示すコンテンツと同一コンテンツのアーカイブである。
オ 被請求人サイトの主要部分
乙5に相当する「日経チャンネルによる当該ページのアーカイブ」(甲2の2)の一番上の大きな赤枠内の「動画エリア」に動画コンテンツが表示される。
表示されている「男山」のコンテンツ動画の長さ(再生時間)は画面左下(青い楕円内)の表示により「4分28秒」であることが確認できる。
下から2番目の赤枠内に「文字による文章」が記されており文字数は「153文字」である。平均的な読書速度(1分間に400~600文字)を参考にすると、153文字の文章を読む時間は、「15秒から23秒程度」である。
このことから、本サイトは、動画による情報提供が主体で、文字部分は動画内容を副次的に示したものであることが確認できる。
さらに内容的にも、動画部分が記事の「主体的な部分」すなわち「本編」「動画本編」「映像資料」であり、文字部分は「付随的・副次的部分」すなわち「概要」「抄録」「要約」に相当する。
なお、被請求人の運営する日経チャンネル(https://channel.nikkei.co.jp/)内の各ページは、NEW(配信から72時間以内の新しいコンテンツ)も、アーカイブ(掲載から72時間以降のコンテンツ)も、「上部に再生時間4分30秒程度の動画、その下に100~200文字程度の文章」という同様のスタイルとなっている。
したがって、乙4及び乙5に示されるコンテンツ(電子版記事)の提供は、量的にも質的にも、文字情報が主体でないため「電子出版物の提供」には該当せず、視聴覚的コンテンツが主体であるため「インターネットを利用した映像・動画・画像の提供」(41E02,41E03)に該当する。
さらに、同ページの(甲2の2)一番下の赤枠内には「LBS」ロゴの表示とともに「TXN系列5局と各地域を担当する日経新聞記者が共同で企画・取材した動画コンテンツ。躍動する地域経済と地方企業の取れたてニュースやトレンドを各地のリレー方式で発信していきます。」と記載されており、「LBSローカルビジネスサテライト」が動画コンテンツを配信するサイトであり、「LBS」ロゴは「インターネットを利用した映像・動画・画像の提供」についての使用であることが被請求人らにより明確に示されている。
カ 小括
乙4及び乙5は、ニュース記事動画などをオンライン表示する行為についての使用を示すものであり、請求に係る指定役務「電子出版物の提供」についての使用事実を示すものではない。
(2)答弁書「使用事実2」について
ア 被請求人の主張
被請求人は乙6から乙8により、「LBSクラブ中部」が実施するセミナーが「技芸・スポーツ又は知識の教授」に該当し、これらのセミナーに関する情報を発信する行為は、指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に該当する。また会員向けメルマガが「電子出版物」に該当し、これを配信する行為は、指定役務「電子出版物の提供」に該当すると主張する。
イ LBSクラブ中部のビジネスモデル
乙8によれば、LBSクラブ中部は、情報交流・ネットワーク形成を目的とし中小ベンチャー企業や学生を正会員・学生会員とする会員組織の体裁を整えている。
しかし、乙8の2ページ目の<参加費>の欄には「正会員/学生会員は無料」と記載される一方、「賛助パートナーは40万円(税別)、特別賛助パートナーは100万円(税別)」の記載がある。篤志家による本来の賛助金、寄付金は、いわゆる不課税取引(※2 消費税法は「物品の譲渡や役務の対価など所定の取引」を課税、「土地の譲渡・貸付など」を非課税としている。寄付などいずれにも該当しないものを一般に「不課税」と称している。)のため消費税が課税されない(消費税法第4条等)にもかかわらず、賛助パートナー、特別賛助パートナーの参加費に消費税が課税されていることから、この参加費は主催者から提供される役務に対する対価であることが確認できる。
したがって、LBSクラブ中部の活動は、顧客たる「賛助パートナー・特別賛助パートナー」に、広告や情報提供などの役務が主目的である広告業のビジネスモデルと解される。
顧客は「賛助パートナー・特別賛助パートナー」であり、「正会員/学生会員」向けのセミナーはその参加者に知識を教授するための活動ではない。スポンサーたる「賛助パートナー・特別賛助パートナー」が相談に応じるのは、「会員」たる中小ベンチャー企業や学生と接点を持つことで自社の営業活動や人材採用活動に役立てるためである。LBSクラブ中部の活動は、顧客たる「賛助パートナー・特別賛助パートナー」への役務提供の一環である。したがって、そこに使用する「LBS」ロゴマークは「第35類 広告業」についての使用であるため、請求に係る指定役務についての使用とはいえない。
上記の内容は、LBSクラブ中部の事務局が、「A社」内に置かれていることからも裏付けられる(甲3~甲5)。
甲3はWayback Machineにより保存された2024年3月5日時点のLBSクラブ中部の案内ページであり、乙6と日付違いの同一ページである。2ページ目の赤い枠内をクリックすると、LBSクラブ中部の詳細を案内するPDFページ(甲4)が表示される。
甲4はWayback Machineにより保存された2024年3月5日時点の詳細ページであり、乙第8号証と日付違いの同一ページである。2ページ目の最下部の赤枠内に「<お問合わせ>LBSクラブ中部事務局「A社内」と記載されている。
甲5は2025年8月18日現在の「LBSクラブ中部の入会申し込みフォーム」である。3ページ目の最下部の赤枠内に「<お問合わせ先>LBSクラブ中部事務局「A社内」と記載されている。
A社は、被請求人と株式を相互に保有しあう「大手広告代理店」である(甲6)。
ウ 「技芸・スポーツ又は知識の教授」と「セミナーの企画・運営又は開催」の違い
「技芸・スポーツ又は知識の教授(41A01)」は、特定分野の技能・知識を体系的・段階的に習得させることを目的とし、カリキュラムに基づく継続的な教授を行う。学習塾や予備校、料理教室、スポーツクラブなどでの教育・トレーニングが該当する。
他方、「セミナーの企画・運営又は開催(41A03)」は、特定テーマについて短期間で情報を提供することを目的とし、講師からの情報の提供が中心となるが、質疑応答や相談時間が設けられることもある。講演会、シンポジウムの開催、企業向け研修会の企画・運営、展示会でのセミナーの運営又は開催などが該当する。
したがって、両者は目的・形式・継続性の面で明確に異なる。
エ セミナーの企画・運営又は開催についての使用
乙8に記載された「情報発信セミナー」や「成長サポートセミナー」は、単発的または短期完結型の情報提供イベントであり、「セミナーの企画・運営又は開催」(41A03)に該当する可能性はあるが、継続的かつ体系的な技能習得を目的とする「技芸・スポーツ又は知識の教授」(41A01)には該当しない。
オ 「ある役務に関する情報の提供」と「ある役務」との違い
「ある役務に関する情報の提供」とは、第三者が実施する「ある役務」に関しての情報を提供する役務をいう。したがって、商標を使用して自ら実施する「ある役務」の開催日時・開催場所・講師名等の告知をしても、「ある役務」についての使用となることはあっても、「ある役務に関する情報の提供」についての商標の使用とはならない。
したがって、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」とは、第三者が行う「技芸・スポーツ又は知識の教授」について、その理念・カリキュラム・日程・料金・取得可能資格・施設概要・進路等に関する情報を提供する役務をいう。自ら実施する役務の告知は、その役務自体の実施行為であり、「情報の提供」に該当しない。
前述のとおり被請求人らの実施するセミナーは、「技芸・スポーツ又は知識の教授」には該当しないが、仮に、該当したとしても、自ら実施するセミナーの告知が請求に係る指定役務たる「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」には該当しない。
カ 「電子出版物の提供」と「メールマガジン配信」との違い
「電子出版物の提供(41C02)」とは、書籍や雑誌、漫画などの出版物を電子化し、オンライン上で閲覧可能にするサービスをいう。これは、特定の作品やコンテンツそのものを読ませることに主眼を置いており、例えば、電子書籍や電子雑誌の読み放題サービスを提供するビジネスが該当する。
他方、「メールマガジン配信」とは、メールという形式で情報を定期的あるいは不定期に送信するサービスをいう。この役務の本質は、コンテンツそのものではなく、「メールを配信する」という行為にあり、特定のコンテンツを読ませることが主目的の電子出版物の提供とは異なる。メールマガジンは、ニュース、広告、特定のテーマに関する情報など、様々な内容を含む。両者を整理すると次のとおりである。
(ア)電子出版物の提供
形式:特定の作品(電子書籍、電子雑誌など)の形態をとる。
提供方法:ウェブサイトや専用アプリ上で「閲覧」させる形が一般的。
目的:読者にコンテンツそのものを供覧させること。
対象:不特定多数の「読者」を対象とする。
その他:一般的に「ストック型」のサービスであり、一度提供が開始されたコンテンツは、特別な理由がない限り、いつでも閲覧可能な状態に保たれる。利用者は、自分の好きなタイミングでアクセスし、過去のコンテンツを閲覧することができる。
(イ)メールマガジン配信
形式:メールという「通信」の形式をとる。
提供方法:購読者に対してメールを「送信」する。
目的:定期的な情報、広告、ニュースなどを購読者に届けること。
対象:特定の「購読者」を対象とする。
その他:一般的に「フロー型」のサービスであり、定期的に新しい情報を「フロー」(流れ)として購読者に届けることに重点を置いている。過去に配信されたメールマガジンは、受信者が自身のメールボックスに保存していない限り、再度の閲覧は通常できない。
乙8に記載される「会員向けメルマガ」の配信は、スポンサー向け広報やクラブ活動案内等の定期的あるいは不定期の情報配信にすぎず、形式、提供方法、目的、対象のいずれについても「電子出版物の提供」とは異なる。よって、請求に係る役務としての「電子出版物の提供」に該当する使用とは認められない。「電子メール配信による広告」(35A01)又は「電子メールによる通信」(38A01)に該当するものである。
キ 小括
乙6から乙8は、広告・広報活動についての使用を示すにすぎず、請求に係る指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」や「電子出版物の提供」についての使用事実を示すものではない。
(3)答弁書「使用事実3」について
ア 被請求人の主張
被請求人は、乙9の新聞全面広告記載の講演会を、指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」に該当するとし、この講演会に関する情報を発信する行為が、指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に該当すると主張する。
イ 「技芸・スポーツ又は知識の教授」と「セミナーの企画・運営又は開催」との違い
「技芸・スポーツ又は知識の教授(41A01)」は、特定分野の技能・知識を体系的・段階的に習得させることを目的とし、カリキュラムに基づく継続的な教授を行う。学習塾や予備校、料理教室、スポーツクラブなどでの教育・トレーニングが該当する。
他方、「セミナーの企画・運営又は開催(41A03)」は、特定テーマについて短期間で情報を提供することを目的とし、講師からの情報の提供が中心となるが、質疑応答や相談時間が設けられることもある。講演会、シンポジウム、企業向け研修会、展示会でのセミナーの運営又は開催などが該当する。
したがって、両者は目的・形式・継続性の面で明確に異なる。
乙9に示されるイベントは単発的なものであり、体系的・継続的な教育活動とは異なるため、「技芸・スポーツ又は知識の教授」に該当しない。
ウ 「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」と「技芸・スポーツ又は知識の教授」との違い
上記(2)オに記載のとおり、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」と「技芸・スポーツ又は知識」とは異なる。すなわち、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」とは、第三者が行う「技芸・スポーツ又は知識の教授」について、その理念・カリキュラム・日程・料金・取得可能資格・施設概要・進路等に関する情報を提供する役務をいう。自ら実施する役務の告知は、その役務自体の実施行為の一環であり、「情報の提供」の役務に該当しない。
したがって、当該講演会が万が一にも「技芸・スポーツ又は知識の教授」に該当するとしても、「LBS」ロゴマークの使用は「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」についての使用とはならない。
エ 自ら開催するイベントの告知
乙9に示されているのは、被請求人らが自ら主催する講演会の告知にすぎない。しかも受講者の参加費は無料(※3 大手新聞社 主催の講演会の案内に料金が記載されていないことから「無料」であると判断できる。)であり、営利的に受講者へ役務を提供するものではない。さらに、全面広告記事の右下には「LBSローカルビジネスサテライト」と記載され、そのロゴの下に「躍動する地域経済と地方企業の取れたてニュース・トレンドを各地のリレー方式で番組と記事で発信する被請求人とTXN系列5局による共同プロジェクトです」と明記されている。
この記載から明らかなように、当該講演会は、被請求人らが共同で運営する動画配信サイト「LBSローカルビジネスサテライト」を広報・宣伝するためのイベントにすぎない。
一般的に、セミナーや講演会に関する役務は、第41類においては「教育訓練や情報提供を目的とするセミナー等」、第35類においては「役務の提供促進を目的とするセミナー等」に分類される。しかし、本件講演会はいずれの類型にも該当しない。なぜなら、役務とは「他人のために行う労務や便益の提供」であり、取引の対象となり得る無形のサービスを意味するところ、本件講演会は「他人のためにする役務」ではなく、被請求人自身の役務を宣伝・促進するために開催されたものだからである。
したがって、本件講演会における「LBS」ロゴの使用は、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に係る使用ではなく、被請求人自身の役務たる「インターネットを利用した音楽・画像・映像・動画の提供」の広告宣伝として行われた使用にすぎない。
オ 小括
乙9は、第41類の請求に係る指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」についての使用事実を示すものではない。
(4)結論
被請求人提出の乙各号証は、第16類及び第35類における使用を全く証明せず、第41類においても請求に係る指定役務とは異なる役務の使用を示すにとどまる。したがって、被請求人は商標法第50条第2項所定の要証期間内に本件商標を請求に係る指定商品・指定役務について使用したことを証明しておらず、本件商標登録は取消されるべきである。
3 意見書による主張
(1)審尋に対する回答について
被請求人は、審尋に対する回答書において、新たな証拠(乙10~乙24)を提出し、本件商標が請求に係る指定役務「電子出版物の提供」及び「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」について使用されている旨主張する。
しかしながら、被請求人提出の追加証拠及び主張を精査しても、請求に係る指定役務についての使用事実はなお立証されていない。
むしろ、被請求人の主張は、請求に係る指定役務とは異なる役務についての使用事実を述べるものにとどまり、合議体の暫定的見解を覆すものではない。
(2)「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」について
ア 被請求人提出のメールマガジンは「第三者の教授役務に関する情報提供」ではない
被請求人は、乙10ないし乙14に示されるメールマガジン「LBSクラブプレス」において、第三者主催セミナー等の情報を掲載していることをもって、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に該当すると主張する。
しかしながら、当該メールマガジンは、LBSクラブ中部の会員向け広報媒体にすぎず、その本質は、LBSクラブ中部の活動に関連する情報を会員向けに配信する広報・交流活動である。
商標法上、役務とは、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して取引の対象となるもの」をいう。そして、「他人のため」に行われるというためには、需要者が当該役務の提供を求めていることを要する。
しかし、本件において、会員募集案内(乙8)には、「会員企業の広報資料やテレビ愛知や日経からのニュース記事をピックアップ」して配信する旨が記載されているにすぎず、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」が独立した役務として提供されることは示されていない。
したがって、メルマガ受信者が、当該役務の提供を受けることを目的として会員登録又はメール受信を行っているとは認められない。
さらに、乙10ないし乙14には毎回、「会員の皆様への情報提供のお願い」として、会員企業の新規事業、新製品又は新サービスに関する情報提供を求める記載が存在する。
このことからも、当該メールマガジンに掲載された情報は、専ら読者のために知識教授情報を提供することを目的とするものではなく、イベント主催者による集客又は会員企業による広報活動のために掲載されているものと理解される。
イ 「セミナー情報掲載」と「役務としての情報提供」は異なる
被請求人は、第三者主催セミナー等の情報を掲載していることをもって、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に該当すると主張する。
また、乙12記載のイベント「メッセナゴヤ2024」(乙15)について、当該イベント内でセミナー等が開催されていることを理由に、これらを間接的に案内している以上、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に当たる旨主張する。
しかしながら、単にセミナー又はイベント情報を掲載したことのみをもって、直ちに独立した役務としての「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に該当するものではない。
仮にそのように解すれば、展示会、地域イベント、業界催事等を紹介する企業広報誌、会報、地域情報誌又は広告媒体等は、そこにセミナー等が含まれている限り、すべて「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」を行っていることとなり、不合理である。
加えて、仮に何らかの情報提供行為に当たるとしても、商標法第50条にいう「使用」と認められるためには、指定役務について自他役務識別機能を果たす態様で商標が使用されていることを要する。
しかし、本件メールマガジンにおける「LBS」表示は、あくまで「LBSクラブ中部」という組織又は活動主体を示すものにすぎず、請求に係る指定役務の出所識別標識として使用されているものではない。
ウ 被請求人主張の「対価性」は不十分である
被請求人は、賛助パートナー等から年会費を徴収していることを理由に、「間接的に対価が発生している」と主張する。
しかしながら、当該年会費は、「会員組織への参加」、「ネットワーク形成」、「交流機会」及び「・広報機会」等を含む包括的活動に対するものであり、特定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に対する対価であることは何ら立証されていない。
被請求人の主張は、役務の特定を欠く抽象的主張にすぎない。
(3)「電子出版物の提供」について
ア メールマガジン配信は「電子出版物の提供」ではない
被請求人は、「LBSクラブプレス」と題するメールマガジンを配信したことをもって、「電子出版物の提供」に該当すると主張する。
しかしながら、メールマガジン配信と「電子出版物の提供」とは役務の性質を異にする。
「電子出版物の提供」とは、通常、電子書籍、電子雑誌、電子新聞等の出版物として編集・体系化されたコンテンツを、利用者が閲覧可能な状態で提供する役務をいう。
しかし、被請求人提出証拠からは、出版物としての編集性・体系性を備え、独立したコンテンツとして継続的に閲覧可能な状態で提供されているとは認められない。また、被請求人自身、「メールマガジン」又は「会員向け配信」と述べるのみであり、電子雑誌、電子新聞又は電子書籍として提供している事実は何ら立証していない。
単にメール本文に文章が記載されていることのみをもって「電子出版物」と解するならば、一般的なメール配信行為まで広く「電子出版物の提供」に含まれることとなり、不合理である。
さらに、本件メールマガジンは、前記のとおり、LBSクラブ中部の活動紹介、会員企業の広報、イベント集客等を目的として配信されるものであり、独立した役務として取引されている実態を欠く。
実際に、乙8記載の会員募集案内においても、「会員企業の広報資料やテレビ愛知や日経からのニュース記事をピックアップ」して配信する旨説明されているにとどまり、利用者が「電子出版物の提供」役務を求めて加入することは予定されていない。
したがって、本件メールマガジン配信は、自己又は関係者の広報・情報共有活動にすぎず、商標法上の独立した役務としての「電子出版物の提供」には該当しない。
イ 乙18及び乙19について
乙18及び乙19における「LBSローカルビジネスサテライト」又は「LBS」の表示は、日本経済新聞電子版等におけるコンテンツ名又は記事出典を示すものにすぎず、「電子出版物の提供」についての自他役務識別標識として使用されているものではない。
利用者が享受している役務は、あくまで「日本経済新聞電子版」又は「日経テレコン」による電子出版物提供役務である。
乙18及び乙19における「LBS」の表示は、その電子出版物中に掲載された記事企画名又はコンテンツ名称を示すものにすぎず、「LBS」自体が独立して電子出版物提供役務の出所を表示するものではない。
例えば、日本経済新聞電子版又は日経テレコン中に「MLB」又は「NASDAQ」の表示が掲載されていたとしても、それにより日本経済新聞社が「MLB」又は「NASDAQ」の商標を「電子出版物の提供」について使用したことにはならない。
本件における「LBS」の表示も同様に、電子出版物提供役務の出所を示すものではなく、電子出版物中の記事企画名又はコンテンツ名称として表示されているにすぎない。
ウ 複数役務論について
被請求人は、「複数の役務が含まれ得る」と主張する。
しかしながら、不使用取消審判において問題となるのは、請求に係る指定役務についての使用が具体的に立証されたか否かである。
仮に動画配信役務と記事表示行為が併存していたとしても、そのことのみをもって直ちに「電子出版物の提供」についての使用が立証されるものではない。
被請求人の主張は、関連役務の存在を述べるにとどまり、本件指定役務についての使用立証とはならない。
(4)通常使用権について
被請求人は、テレビ愛知との資本関係を示す資料(乙16)及び共同運営契約書(乙17)を提出している。
ア 契約書に使用許諾条項はない
被請求人及びテレビ愛知は、共同事業に関する7頁に及ぶ詳細な契約書を締結しているにもかかわらず、本件商標の使用許諾に関する明示的規定は確認できない。
イ 使用態様等への指揮監督関係はない
被請求人は、テレビ愛知又はLBSクラブ中部による本件商標の具体的使用態様について、被請求人による具体的指揮監督関係又は使用許諾関係を基礎付ける事実を何ら立証していない。
また、同契約書第1条記載の「LBSクラブ中部」の目的及び活動内容からも、請求に係る指定役務を実施することを客観的に読み取ることはできない。
ウ 株式保有による支配関係はない
テレビ愛知は、被請求人がその株式を一部保有しているものの、一体経営を行う「100%子会社」又は「事業部型子会社」ではない。
したがって、単なる資本関係及び共同事業契約のみをもって、商標法上の通常使用権の存在を認めることはできず、合議体の暫定的見解は依然として妥当である。
(5)結論
以上のとおり、被請求人提出の追加証拠及び主張によっても、本件商標が請求に係る指定役務「電子出版物の提供」及び「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」について使用されていた事実は立証されていない。
請求人としては、本件における主張立証は既に尽くされているものと考えるため、速やかな審理終結及び審決を求める。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書及び令和8年2月24日付け審尋に対する同年4月1日付け回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙24を提出した。
1 答弁書における主張
(1)被請求人について
被請求人は、東京都千代田区大手町に本社を置く、日本の大手新聞社であり、日本経済新聞(日経新聞)などの新聞発行のほか、デジタル媒体(日経電子版など)の運営、文化事業や賞の主催・表彰なども行っている(乙3)。
(2)本件商標の使用事実1
ア 使用証拠
乙4は、ウェブアーカイブである「Wayback Machine」により、要証期間内である2025年4月16日付けで、保存・公開されている、被請求人が運営する「日経チャンネル」内の「LBS」と題するウェブサイトの画面コピーである。当該ウェブサイトでは、デザイン化された「LBS」の文字を商標として、「電子版LBS記事一覧」のもと、電子版の記事が動画コンテンツとともに提供されている。
乙5は、乙4の下方にある記事一覧中の「「男山」がレモンサワー・ビール 日本酒以外で市場開拓」との電子版記事をクリックした際に表示されるウェブページのプリントアウトである。当該ウェブページ中には、電子版記事と共にデザイン化された「LBS」の文字が表示されている。なお、当該ウェブページは、フッター部のURL「https://web.archive.org/web/20250425・・・」に示すように、「Wayback Machine」によって、要証期間内である2025年4月25日に保存・公開されたものである。また、当該電子版記事は、このウェブサイトにアクセスしたユーザの端末上にダウンロードされる形態で提供されるものではなく、乙5のフッター部のURLにより特定されるウェブページがウェブブラウザ上で表示される形態で提供されるものである。
イ 使用商標
乙4及び乙5に表示されている、「LBS」(以下「使用商標1」という。)は、「L」の右下部と「B」の左下部がつながるように、かつ、「B」の右下部が「S」の左下部とつながるようにデザイン化されているものの、本件商標と同一の「LBS」の文字を表したものと無理なく認識できるものであることから、本件商標と使用商標1とは社会通念上同一の商標というべきである。
ウ 使用役務
乙4の下方にある記事一覧中の電子版記事をクリックすることで表示される乙5に示す電子版記事を表したウェブページは、「電子出版物」に該当するものである。また、乙5はウェブブラウザ上で表示されるものである。このように、「電子出版物」をウェブブラウザ上で表示される形態で提供する役務は、指定役務「電子出版物の提供」に該当する。
エ 使用行為
乙4及び乙5に示すような、本件商標と社会通念上同一の商標を使用して、「電子出版物」に該当する「電子版記事」をウェブブラウザ上で表示される形態で提供する行為は、商標法第2条第3項第7号の「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。次号及び第26条第3項第3号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」に該当する。
オ 使用時期、使用場所
乙4に係るウェブサイト及び乙5に係る電子版記事はともに要証期間内に公開されているものであり、両者はともに被請求人が運営するウェブサイト上で公開されているものである。
カ 使用者
上述のとおり、乙4に係るウェブサイト及び乙5に係る電子版記事はともに被請求人のウェブサイト上で公開されているものであるため、使用商標1の使用者は、本件商標の商標権者である被請求人である。
キ 小括
以上より、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標が、商標権者によって、その指定役務「電子出版物の提供」について使用された事実が証明される。
(3)本件商標の使用事実2
ア 使用証拠
乙6は、ウェブアーカイブである「Wayback Machine」により、要証期間内である2025年5月14日付けで、保存・公開されている、被請求人のグループ会社であるテレビ愛知のウェブサイト上の「LBSclub中部」のウェブページのプリントアウトである。当該ウェブページの左上には、上述の使用商標1と同じデザイン化された「LBS」の文字が目立つ態様で表示されている。
乙7は、テレビ愛知が被請求人のグループ会社であることを示す、被請求人のウェブサイト中の「グループ会社」のウェブページのプリントアウトである。
乙8は、乙6にかかるウェブページの「概要」中の「詳細」欄に表示された「詳細はこちら[PDF]」をクリックすることで表示される「LBS会員組織」である「LBSクラブ中部」の詳細を説明する資料である。当該資料の第1ページの左上には、上述の使用商標1と同じデザイン化された「LBS」の文字が目立つ態様で表示されている。また、当該資料の第1ページには、活動内容として「(1)(「1」の丸囲み文字。この項において、以下同じ。)セミナーと交流会 (2)(「2」の丸囲み文字。この項において、以下同じ。)会員向けメールマガジン」が記載されており、当該資料の第2ページには、「(1)セミナー&交流会」の内容として、「情報発信セミナー:テレビ愛知の報道記者・日経の元編集記者の情報発信・広報対策講座」ならびに「成長サポートセミナー:特別賛助の企業・団体が、事業計画支援や人材採用、グローバル推進などスタートアップの成長に必要な課題解決のアドバイスをおこなう。」との記載があり、また、「(2)会員向けメルマガ」が配信されることが記載されている。
イ 使用商標
乙6及び乙8には、上述の使用商標1と同じデザイン化された「LBS」の文字が目立つ態様で表示されている(以下「使用商標2」という。)。使用商標2は、本件商標と同一の「LBS」の文字を表したものと無理なく認識できるものであることから、本件商標と使用商標2とは社会通念上同一の商標というべきである。
ウ 使用役務
乙8に記載された「情報発信セミナー:テレビ愛知の報道記者・日経の元編集記者の情報発信・広報対策講座」についての情報を発信する行為は、指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に該当する。また、同じく乙8に記載された「成長サポートセミナー:特別賛助の企業・団体が、事業計画支援や人材採用、グローバル推進などスタートアップの成長に必要な課題解決のアドバイスをおこなう」ことは「技芸・スポーツ又は知識の教授」に該当するものであり、これについての情報を発信する行為は、指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に該当する。
また、乙8に記載された「会員向けメルマガ」は「電子出版物」に該当するものであり、これを配信する行為は、指定役務「電子出版物の提供」に該当する。
エ 使用行為
乙6及び乙8に示すような、本件商標と社会通念上同一の商標を使用して、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」を行う行為、ならびに、「電子出版物の提供」を行う行為は、商標法第2条第3項第7号の「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。次号及び第26条第3項第3号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」、または、商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
オ 使用時期、使用場所
乙6に係るウェブページ及び乙8に係る説明資料はともに要証期間内に公開されているものであり、両者はともに被請求人のグループ会社であるテレビ愛知のウェブサイト上で公開されているものである。
カ 使用者
上述のとおり、テレビ愛知は被請求人のグループ会社であることから、被請求人がテレビ愛知に本件商標の使用許諾をしていることは明らかである。よって、使用商標2の使用者は、本件商標の商標権者から許諾を受けた通常使用権者である。
キ 小括
以上より、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標が、本件商標の通常使用権者によって、その指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」、「電子出版物の提供」について使用された事実が証明される。
(4)本件商標の使用事実3
ア 使用証拠
乙9は、要証期間内である2024年10月21日に発行された日本経済新聞の第12ページに掲載された全面広告の写しである。当該広告の左上部及び右下部には使用商標1と同じデザイン化された「LBS」の文字が表示されており、ソニー元社長兼CEOであり、一般社団法人プロジェクト希望代表理事であるC氏による「超競争時代のリーダーシップ~EQと「異見」で磨く経営」と題する講演会が2024年11月14日に開催されることが告知されている。また、乙9には、この講演会の主催者は、被請求人と、被請求人のグループ会社であるテレビ愛知であることが示されている。
イ 使用商標
乙9の左上部と右下部に表示されている、「LBS」(以下「使用商標3」という。)は、使用商標1と同じデザイン化された「LBS」の文字であり、本件商標と同一の「LBS」の文字を表したものと無理なく認識できるものであることから、本件商標と使用商標3とは社会通念上同一の商標というべきである。
ウ 使用役務
乙9に記載された「C氏による「超競争時代のリーダーシップ~EQと「異見」で磨く経営」と題する講演会は「技芸・スポーツ又は知識の教授」に該当するものであり、これについての情報を発信する行為は、指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に該当する。
エ 使用行為
乙9に示すような、本件商標と社会通念上同一の商標を使用して、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」を行う行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
オ 使用時期、使用場所
乙9に係る広告記事が掲載された新聞は要証期間内である2024年10月21日に発行されているものである。
カ 使用者
乙9に示す講演会の主催者は、被請求人と、被請求人のグループ会社であるテレビ愛知であることから、この講演会に関する情報の提供も両社によって行われていることになる。
被請求人は本件商標の商標権者である。また、上述のとおり、テレビ愛知は被請求人のグループ会社であることから、被請求人がテレビ愛知に本件商標の使用許諾をしていることは明らかである。
よって、使用商標3の使用者は、本件商標の商標権者及び本件商標の商標権者から許諾を受けた通常使用権者である。
キ 小括
以上より、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標が、本件商標の商標権者及び本件商標の通常使用権者によって、その指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」について使用された事実が証明される。
(5)結論
以上のとおり、本件商標の使用事実1ないし使用事実3により、本件審判請求の予告登録日である2025年5月21日の前3年以内に、本件商標と社会通念上同一の商標が、商標権者等によって、その指定役務「電子出版物の提供」、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」について使用された事実が証明されるため、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取消されるべきものではない。
よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求めるものである。
2 回答書における主張
(1)使用役務について
ア 「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」について
(ア)使用証拠及び使用役務
被請求人は、被請求人等が要証期間内に当該役務を提供していた事実を証明するために、被請求人とテレビ愛知が共同で主催運営するLBSクラブ中部によって発行・編集されたメールマガジン「LBSクラブプレス」の写し(乙10~乙14)を提出する。
乙10は、2024年8月14日に配信された「LBSクラブプレス8月14日号」の写しであり、その2ページ目には、名古屋商工会議所主催のセミナー「グリーンテックマッチング会」についての概要、日時、会場、参加費、問い合わせ先、申し込み用URLに関する情報が提供されている。このセミナーにおいては、登壇企業である3社が環境関連ニーズについてレクチャーを行っており、「技芸・スポーツ又は知識の教授」に相当するものである。
乙11は、2024年9月11日に配信された「LBSクラブプレス9月11日号」の写しであり、その3ページ目には、名古屋商工会議所主催のセミナー「販路拡大支援セミナー 北のグルメハンターが語る“仕事の流儀”~商売は縁と情熱で挑め~」についての日時、会場、内容、対象者、参加費、定員、申し込み用URL、申し込み締め切り、問い合わせ先に関する情報が提供されている。このセミナーは、北海道物産展のカリスマバイヤーが、商品PRのポイントや、ヒット商品を生み出す秘訣、バイヤーとの信頼関係を築くためのコツなどについてレクチャーするものであり、「技芸・スポーツ又は知識の教授」に該当するものである。
乙12は、2024年10月9日に配信された「LBSクラブプレス10月9日号」の写しであり、その3ページ目には、メッセナゴヤ実行委員会主催の展示会「日本最大級異業種交流展示会“メッセナゴヤ2024”」についての日時、会場、内容、入場料、詳細参照先URLに関する情報が提供されている。また、この展示会においては、「各種セミナー・イベント・シンポジウムも行う。」との記載もあり、実際に展示会の開催結果報告書(乙15)によると、「Expand our planet.Expand our future.~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」、「パーパス、志による経営~新SDGsと志本主義経営(Purposism)」、「町工場の娘から星へ、走り続けた20年戦争~「人が辞めない最高の職人集団」で目指す世界ニッチトップ~」、「社会の仕組みを理解したい人のための金融・経済知識」をテーマとする,ビジネスセミナーが開催されており、また「イケてるアイデアを借りてチートに新規事業!」、「水素エネルギーセミナー」、「リニア特別セミナー」、「水素・アンモニアビジネスフォーラム」、「AI・ロボットセミナー~AIでひらく未来のコミュニケーション~」をテーマとした併催セミナー・イベントも開催されていた。これらも「技芸・スポーツ又は知識の教授」に相当するものである。
乙13は、2024年12月11日に配信された「LBSクラブプレス12月11日号」の写しであり、その2ページ目には、名古屋商工会議所主催のセミナー「Ignite Nagoya~クリエイティビティを呼び覚ます 出会いの場~」についての日時、会場、対象、内容、参加費、定員、申し込み用URL、申し込み期限、問い合わせ先に関す情報が提供されている。このセミナーにおいては、「まちと自社をつなぐ事業開発の視点」と題するレクチャーが行われており、「技芸・スポーツ又は知識の教授」に相当するものである。
乙14は、2024年12月25日に配信された「LBSクラブプレス12月25日号」の写しであり、その2ページ目には、名古屋商工会議所主催のイベント「カーボンニュートラル・テック・フェア2025/名古屋水素技術フェア」において行われる「東京大学未来ビジョン研究センター・教授による基調講演、今後実用化が期待される最新技術・システムに関するセミナー」についての日時、会場、対象、参加費、内容、申し込み用URL、申し込み締め切り、問い合わせ先に関する情報が提供されている。この「東京大学未来ビジョン研究センター・教授による基調講演」は、「技芸・スポーツ又は知識の教授」に相当するものである。
このように、本役務は、本メールマガジン「LBSクラブプレス」において、第三者の開催するセミナー、講演会等、「技芸・スポーツ又は知識の教授」に相当するものに関して、テーマ、概要、内容、主催者、対象者、日時、会場、参加費、定員、問い合わせ先、及び申し込み用URL、申し込み締め切り等についての情報を提供する役務である。
そして、乙8に示すように、本メールマガジン「LBSクラブプレス」はLBSクラブ中部の正会員、学生会員に加えて会員賛助パートナー及び特別賛助パートナーに対して配信されている。ここで、乙8に示すように、会員賛助パートナーは40万円/年・税別、特別賛助パートナーは100万円/年・税別の有料会員であり、これらの有料会員との関係では、本メールマガジン「LBSクラブプレス」を通じた本役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」に対して間接的に対価が発生している。
よって、本役務は、「他人のために行う労務又は便益」に該当するものである。
(イ)使用商標
乙10ないし乙14として提出された「LBSクラブプレス」と題するメールマガジンは、LBS会員組織である「LBSクラブ中部」によって会員向けに配信されるものである(乙6及び乙8)。よって、これらのメールマガジンの配信にあたっては乙8に記載されたLBSクラブ中部のロゴが使用されているといえる。
そして、該ロゴには、「L」の右下部と「B」の左下部がつながるように、かつ、「B」の右下部が「S」の左下部とつながるようにデザイン化された「LBS」の文字が目立つ態様で表示されている。このデザイン化された「LBS」の文字は、本件商標と同一の「LBS」の文字を表したものと無理なく認識できるものであり、両者は社会通念上同一の商標といえる。
また、これらのメールマガジンには、発行・編集者として「LBSクラブ中部」の名称とそのURL(https://tv-aichi.co.jp/lbs/lbs-club/)が記載されており、このURLをクリックすると、乙第6号証に示す、「LBSclub中部」のウェブページが表示される。
そして、このウェブページの左上には、上記と同様のデザイン化された「LBS」の文字が目立つ態様で表示されている。
よって、これらのメールマガジンには本商標と社会通念上同一の商標が使用されているといえる。
(ウ)使用時期
乙10ないし乙14に係るメールマガジン「LBSクラブプレス」は2024年8月から12月にかけて配信されたものであるため、要証期間内に配信されたものである。
(エ)使用者
上述のとおり、乙10ないし乙14に係るメールマガジン「LBSクラブプレス」は被請求人とテレビ愛知が共同で主催運営するLBSクラブ中部によって発行・編集されたものである。ここで、テレビ愛知は被請求人のグループ会社であるのみならず被請求人と資本関係を有するものである。この点を証明するため、被請求人は、テレビ愛知の第43期(2025年3月期)の「個別注記表」の写し(乙16)を提出する。当該資料の「9.関連当事者との取引に関する注記」の「(1)法人主要株主等」には、被請求人がテレビ愛知の議決権の21.1%を直接所有していることが記載されている。
また、被請求人は、テレビ愛知と共同でLBSクラブ中部を主催運営するために両社で締結した「LBSクラブ中部共同運営に関する契約書」(乙17)を提出する。
このように両社は単なるグループ企業ではなく資本関係を有する密接な関係にあり、また両社はLBSクラブ中部を共同で主催運営することに関して契約関係にあるため、LBSクラブ中部の運営に必要となる本件商標の使用につき被請求人からテレビ愛知に黙示の許諾があったと十分評価できるものである。
(オ)小括
以上より、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標が、本件商標の商標権者及び通常使用権者によって、その指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」について使用された事実が証明される。
イ 「電子出版物の提供」について
(ア)新たな証拠について
a 使用証拠及び使用役務
被請求人は、被請求人等が要証期間内に当該役務を提供していた事実を証明するために、追加で証拠を提出する(乙18、乙19)。
乙18は、被請求人が保有するわが国最大級のデータベースをインターネット上で提供する、会員制のビジネス情報サービスである日経テレコンにおいて提供されている「LBSローカルビジネスサテライト」と題する2025年5月6日の記事コンテンツの写しである。
乙18では、右側上部において「日本経済新聞とTXN系列5局(テレビ大阪、テレビ愛知、テレビ北海道、TVQ九州放送、テレビせとうち)は地域経済の最前線を共同で取材し、映像記事コンテンツ「LBSローカルビジネスサテライト」として各局や日経電子版で放送・配信している。」と記載されている。よって、ここでは、「LBSローカルビジネスサテライト」について「映像記事コンテンツ」として記載されており、映像だけではなく記事コンテンツをも提供するものであることが明記されている。
そして、この乙18では、記事コンテンツとして、「Z世代つかむ地方の創意」に関する電子版の記事が、動画の内容を簡略的に記載した付記的な説明となっているものではなく、このコンテンツ内の約右側半分の5段を占める分量で記載されており、動画とは独立した電子版の記事として提供されている。
また、この記事コンテンツ内では、「読者の反響が大きかったLBSコンテンツ」も紹介されており、QRコードを読み取ると一覧表で紹介している記事をまとめて読むことが可能であり、このことからも本件商標を使用した「LBS」のコンテンツが電子版記事として提供されていることが理解できる。
また、乙19は、日本経済新聞電子版内で提供されている「LBSローカルビジネスサテライト特集」及び「LBS(ローカル5局発)」と題する2022年9月25日の記事コンテンツの写しであるが、ここでは「LBS」の記事コンテンツが特集としてまとめられており、ここで提供されている電子版の記事は、動画の内容を簡略的に記載した付記的な説明にとどまるものではない。
以上のとおり、被請求人は、日経テレコン内で、電子版記事コンテンツを提供しており、これは「電子出版物の提供」に該当する。また、被請求人は、日本経済新聞電子版においても電子版記事コンテンツを提供しており、これは「電子出版物の提供」に該当する。
b 使用商標、使用時期、使用者
乙18には、「LBSローカルビジネスサテライト」と記載されているが、「LBSは2021年秋の開始以来、累計約400本にのぼる。」と記載されているように、「LBSローカルビジネスサテライト」を略して「LBS」と称している。
また、乙第19号証には、「LBSローカルビジネスサテライト」及び「LBS」の記載がある。
これらの「LBS」の記載は、本件商標と社会通念上同一である。
また、乙18は2025年5月6日に掲載され、乙19は2022年9月25日に掲載されているため、ともに要証期間内のものである。
さらに、乙18及び乙19に係る日経テレコン及び日本経済新聞電子版は、被請求人が運営するものである。
c 小括
以上より、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標が、本件商標の商標権者によって、その指定役務「電子出版物の提供」について使用された事実が証明される。
d 乙4及び乙5に関する合議体の認定に対する意見
合議体は、乙5の下部に「TXN系系列5局(・・・)と、各地域を担当する日経新聞記者が共同で企画・取材した動画コンテンツ。」との記載があることから、これは、「インターネットを利用した音楽・画像・映像・動画の提供」といえるものであり、電子版記事の題名やその記事概要は、動画の内容を簡略的に記載した付記的な説明とみるのが相当であると判断された。
しかしながら、被請求人の提供する役務に関して、「インターネットを利用した音楽・画像・映像・動画の提供」であるか「電子出版物の提供」であるかをいずれか択一的に決める必要性はないものであって、被請求人の提供する役務にはこれらの複数の役務が含まれていると考えることもできるものである。
(イ)乙6及び乙8について
合議体は、これらの証拠からはメールマガジンが配信されていることが確認できないと判断されたが、今回提出した乙10から乙14により、「LBSクラブプレス」と題するメールマガジンが実際に配信されたことが証明された。答弁書で述べたとおり、これらのメールマガジンは、「電子出版物」に該当するものであり、これを配信する行為は、指定役務「電子出版物の提供」に該当する。
また、合議体は、乙6中の[PDF]が乙8であるといえる証拠がないためその関連性が明確とはいえないと判断された。
被請求人は新たに乙21と乙22を提出する。乙21は、乙6中の[PDF]にカーソルを合わせた時の画面コピーであり、画面の左下に、[PDF]のリンク先として、「https://tv-aichi.co.jp/lbs/lbs-club/pdf/lbsclub_v2.pdf」が表示されている。そして、乙22は、乙8のURL「https://tv-aichi.co.jp/lbs/lbsclub/pdf/lbsclub_v2.pdf」を含む画面コピーである。これらの証拠に示すように、乙6のPDFのリンク先と乙8のPDFのURLと一致していることから、乙6中の[PDF]が乙8であることが証明される。
(2)通常使用権者について
上記「ア「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」について」の「(1)使用役務について」の「(エ)使用者」で述べたとおり、被請求人とテレビ愛知とは単なるグループ企業ではなく資本関係を有する密接な関係にあり、また両社はLBSクラブ中部を共同で主催運営することに関して契約関係にあるため、LBSクラブ中部の運営に必要となる本件商標の使用につき被請求人からテレビ愛知に黙示の許諾があったと十分評価できるものである。
3 結論
答弁書及び本回答書で述べたとおり、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標が、商標権者等によって、その指定役務「電子出版物の提供」、「技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供」について使用された事実が証明されるため、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取消されるべきものではない。
よって、答弁書における答弁の趣旨のとおりの審決を求めるものである。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙6は、インターネットアーカイブ「Wayback Machine」に保存された、2025年(令和7年)5月14日時点におけるテレビ愛知株式会社の「LBSclub中部」のウェブサイトであり、「LBSclub中部」及び「ローカルビジネスサテライトクラブ」の見出しの下、概要欄には「主催運営」として「テレビ愛知」、商標権者の記載、「活動内容」として「会員向けメールマガジン」の記載、及び「詳細」として「詳細はこちら[PDF]」の記載がある。なお、当該ウェブサイトのURLは「https://tv-aichi.co.jp/lbs/lbs-club/」である。
(2)乙8は、上記乙6の概要欄にある「詳細 詳細はこちら[PDF]」をクリックすると表示される「LBSクラブ中部」のPDFの説明資料とするものである。
なお、乙21は、上記乙6の概要欄「詳細 詳細はこちら[PDF]」にカーソルを合わせた際のウェブサイトを表示した画面コピーであり、当該画面の左下部にリンク先のURL「https://tv-aichi.co.jp/lbs/lbs-club/pdf/lbsclub_v2.pdf」が表示されている。
さらに、乙22は、乙8の「LBSクラブ中部」のPDFの説明資料を表示した画面コピーであり、当該画面左上部のURLには、乙21に表示されたリンク先のURLと同じURLが表示されている。
(3)乙10ないし乙14は、それぞれ2024年8月14日、同年9月11日、同年10月9日、同年12月11日及び同月25日に送信された、乙6(乙21)及び乙8(乙22)に記載されている「会員向けメールマガジン」(以下「本件メールマガジン」という。)であり、本件メールマガジンの本文中には、ゴシック体で表された「LBS通信」(以下「本件使用商標」という。)の表示及びメールマガジンの最終頁には上記乙6と同じURL「https://tv-aichi.co.jp/lbs/lbs-club/」が表示されている。
(4)乙7は、商標権者のウェブサイトであるところ、「グループ会社」の見出しの下、「放送系」の一社として「テレビ愛知」の記載がある。
また、乙16は、テレビ愛知の決算情報(2025年3月期)である「個別注記表」の写しであり、「9.関連当事者との取引に関する注記」の「(1)法人主要株主等」の欄に、商標権者がテレビ愛知の株式を21.1%所有している旨の記載がある。
乙17は、テレビ愛知と商標権者が2024年2月7日に締結した「LBSクラブ中部共同運営に関する契約書」であり、第1条(目的)には「1 本契約は、テレビ愛知及び商標権者によって設立されたLBSローカルビジネスサテライトクラブ中部の企画・運営・管理をテレビ愛知と商標権者が協力して行うことについて、その協力体制の条件等を定めることを目的とする。」旨の記載がある。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用時期について
本件使用商標が表示された本件メールマガジンは、要証期間内である2024年(令和6年)8月~10月及び12月にLBSクラブ中部会員あてに送信されたものであるから、要証期間内に本件使用商標が使用されたといえる。
(2)使用者について
本件使用商標が表示された本件メールマガジンの最終頁に、「発行・編集:LBSクラブ中部」の記載があり、また、「LBSクラブ中部共同運営に関する契約書」(乙17)には、テレビ愛知と商標権者は協力してLBSローカルビジネスサテライトクラブ中部の企画・運営・管理を行う旨が記載されている。
そして、商標権者は、テレビ愛知の株式を約21%所有し(乙16)、テレビ愛知をグループ会社としている(乙7)ことをあわせ考慮すると、商標権者のグループ会社であるテレビ愛知が、自身の運営するLBSローカルビジネスサテライトクラブ中部(LBSクラブ中部)が提供するメールマガジンにおいて、本件使用商標を使用しているとみるのが相当であるから、テレビ愛知は、商標権者から、本件使用商標について黙示の使用許諾を認められた通常使用権者といえる。
(3)使用役務について
通常使用権者(テレビ愛知)が提供する本件メールマガジンは、「LBSクラブプレス〇月〇日号」(「〇」には月日が入る。)の件名の下、「LBSクラブ中部 会員のみなさまへ」、「・・・テレビ愛知報道部から気になるニュースや会員企業・団体各位の最新情報を共有する会報メルマガです。(毎月2回配信)」等の記載がある。そして、一般に、メールマガジンは、電子メールを媒体とした定期の情報発信とその購読の仕組みからなるものであるところ、本件メールマガジンについても、これと同様の仕組みのものであり、企業の各種情報や株式市況等の新着情報を掲載するなど、その内容は毎回更新され、購読者(正会員/学生会員、賛助パートナー、特別賛助パートナー)に向けて配信されていることからすると、「電子メール通信を利用した電子雑誌の提供」(以下「使用役務」という。)を行っていたといえる。
そして、上記「電子メール通信を利用した電子雑誌の提供」は、本件商標の指定役務である「電子出版物の提供」の範ちゅうに含まれる。
(4)本件商標と本件使用商標の社会通念上の同一性について
本件商標は、別掲のとおり「LBS」の欧文字を横書きに表してなるものである。
他方、本件使用商標は、本件メールマガジンの本文中にゴシック体で表示された「LBS通信」の文字からなるものである。そして、本件使用商標の構成中「通信」の文字部分は、インターネット等の通信回線を介して情報を送信することを理解させる語であり、請求に係る役務中、「電子メール通信を利用した電子雑誌の提供」との関係においては、 自他役務の識別標識として機能を果たし得ない部分といえることから、その構成中の「LBS」の文字部分が自他役務の識別標識として機能を果たす文字部分といえ、本件使用商標の要部とみるのが相当である。
そうすると、本件商標と本件使用商標の要部は、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であるから、両者は、社会通念上同一の商標といい得る。
(5)使用行為について
上記(3)のとおり、本件使用商標が表示された本件メールマガジンは、「電子出版物の提供」を行うものといえる。
そして、乙10ないし乙14によれば、本件メールマガジンは、毎月2回配信されることとなっており、少なくとも2024年8月及び10月に各1回、12月に2回、購読者(正会員/学生会員、賛助パートナー、特別賛助パートナー)に向けて送信されていたことが認められ、本件メールマガジンの発行者・編集者、発行時期及び企業の各種情報や株式市況等のニュース記事等に照らして、その役務の提供の事実について不自然な点はないというべきであるから、通常使用権者は、本件メールマガジンにより行うそのメールマガジンの配信画面を介した電子出版物の提供に当たり、その配信された画面に本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を表示して役務を提供したということができ、この行為は、商標法第2条第3項第7号の「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」に該当する。
また、当該行為は、日本国内において行われたことが明らかである。
3 請求人の主張について
請求人は、「「電子出版物の提供」とは、書籍や雑誌、漫画などの出版物を電子化し、オンライン上で閲覧可能にするサービスをいう。これは、特定の作品やコンテンツそのものを読ませることに主眼を置いており、例えば、電子書籍や電子雑誌の読み放題サービスを提供するビジネスが該当するものである」旨、及び、「「メールマガジン配信」とは、メールという形式で情報を定期的あるいは不定期に送信するサービスをいう。この役務の本質は、コンテンツそのものではなく、「メールを配信する」という行為にあり、特定のコンテンツを読ませることが主目的の電子出版物の提供とは異なる。そうすると、乙8に記載される「会員向けメルマガ」の配信は、スポンサー向け広報やクラブ活動案内等の定期的あるいは不定期の情報配信にすぎず、形式、提供方法、目的、対象のいずれについても「電子出版物の提供」とは異なることからすれば、請求に係る役務としての「電子出版物の提供」に該当する使用とはいえず、「電子メール配信による広告」又は「電子メールによる通信」に該当するものである」旨主張する。
しかしながら、上記2(3)のとおり、本件メールマガジンは、「LBSクラブプレス〇月〇日号(「〇」には月日が入る。)」を題号とし、電子メールを媒体とした定期の情報発信とその購読の仕組みからなっており、企業の各種情報や株式市況等の新着情報を掲載するなど、その内容は毎回更新され、購読者(正会員/学生会員、賛助パートナー、特別賛助パートナー)に向けて配信されていることからすれば、本件メールマガジンを送信する行為は、第41類の「電子メール通信を利用した電子雑誌の提供」といえるものであり、当該役務は、「電子出版物の提供」の範ちゅうに含まれる。
そうすると、メールマガジンは、一般に、文字情報を中心とした定期的な情報配信と認識されているものであることからすると、請求人の主張するような単なるメールの配信行為というよりは、「電子メール通信を利用した電子雑誌の提供」と理解されるとみるのが相当であるから、本件商標の指定役務である「電子出版物の提供」の範ちゅうに含まれるといえる。
したがって、請求人の上記の主張は、採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、通常使用権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商標の指定役務について使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-300396