特許拒絶査定不服審判
2022-021157
車載機器
- 審判番号
- 2022-021157
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-154206
- 請求日
- 2022年12月27日
- 審決日
- 2024年10月21日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ユピテル
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 小岩 智明
- 審判官 草野 顕子
- 分類
- P18 .121-WZ (G07C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第44条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-154206号「車載機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月14日出願公開、特開2021- 5402号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月9日に出願した特願2014-183413号の一部を、平成31年3月19日に新たな特許出願とした特願2019-50542号の一部を、令和2年9月8日に新たな特許出願とした特願2020-150198号の一部を、令和2年9月15日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 9月 6日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月12日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 3月24日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和4年 6月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 9月12日付け:令和4年6月2日の手続補正についての補正
の却下の決定、拒絶査定
令和4年12月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 1月22日付け:当審における拒絶理由通知書
令和6年 3月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 4月23日付け:当審における拒絶理由(最後の拒絶理由)
通知書
令和6年 6月21日 :意見書の提出
なお、特許法44条2項の規定により、本願は、特願2014-183413号の出願日である平成26年9月9日に出願したものとみなす。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年3月21日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ルームミラーの裏面側に取り付け可能で車両の前方側をカメラで撮影可能なドライブレコーダであって、
ドライブレコーダの筐体と、前記ドライブレコーダの筐体をルームミラーの裏面側に取り付けるための取付け部を備え、
前記取付け部によって前記ドライブレコーダの筐体をルームミラーの裏面側に取り付けた状態で、前記ドライブレコーダの筐体の運転者側の側面から前記ルームミラーの幅方向と略平行に延出した状態となるカメラを備えるフレキシブルアームであって、前記車両の前方側を、前記フレキシブルアームの先端に備えたカメラで撮影可能に調整可能なフレキシブルアームを備え、
前記フレキシブルアームの先端に備えた前記カメラで撮影された映像を、無線通信部を介してスマートホンに送信し、前記スマートホンの画面上に表示させることにより、前記スマートホンの画面に表示される映像を見ながら前記車両の前方が撮影可能になるように、人の手で前記フレキシブルアームを曲げ変形させ、前記カメラが車内の障害物を回避して、前記車両の前方が撮影可能になるよう調整可能な構成としたこと
を特徴とするドライブレコーダ。」
第3 当審における拒絶の理由
当審が、令和6年4月23日付けで通知した拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし4に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1:特開2005-333201号公報
引用文献2:特開2008-140334号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:登録実用新案第3187199号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2011-151460号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
・「【0020】
・・・図1は、カメラ装置10が、固定部となる車の窓部26に取り付けられている状態のカメラ装置10の側面図である。・・・。
【0021】
図1に示すように、カメラ装置10は、本体12と、カメラ部14と、カメラ部14の方向を自在に変えることが可能なアーム部20と、本体12を窓部26に取り付けるための取り付け部24と、を有している。なお、カメラ装置10には、後述するモニタ34やビデオデッキ等その他の部材が付加されることがあるが、そのような場合を含めてカメラ装置10とする。
【0022】
本体12は、後述する撮像素子16から得られる画像信号を信号処理し、その信号をモニタ34に送信するための部分であり、図1において本体12の下端面の略中央部からはアーム部20が延出しており、その先端にはカメラ部14が取り付けられている。」
・「【0025】
カメラ部14は、被写体を撮影するための部分であり、上述したようにカメラ部14は、アーム部20の先端に取り付けられている。・・・。」
・「【0028】
図1において、アーム部20が取り付けられている面と反対側の面となる本体12の上端面には、車内の窓部26に固定するための取り付け部24が設けられている。・・・。」
・「【0030】
カメラ装置10において、本体12に配設される画像信号処理部は、カメラ部14に配設されている撮像素子16から得られる画像信号を信号処理するための部分とされている。画像信号処理部では、撮像素子16から伝達された電気信号が、まず初めに、アナログ信号処理回路28により増幅される。その後、A/D変換回路29にてアナログ信号からデジタル信号に変換され、この変換されたデジタル信号が、デジタル信号処理回路30へ入力することにより所定のデジタル信号処理が施され、デジタル映像信号に変換される。変換されたデジタル映像信号は、画像デジタルデータとして画像記憶メモリ部31に書き込まれる。
【0031】
そして、画像記憶メモリ部31に書き込まれた画像デジタルデータがD/A変換回路32に出力され、デジタル信号からアナログ信号に変換された後、再びアナログ信号処理回路33にて所定のアナログ信号に変換され、画像データに対応した映像がモニタ34の表示画面に映し出される。モニタ34は車内に設置される。モニタ34をナビゲーション用のモニタと兼用させたり車内に置かれるテレビジョンモニタと兼用させたりしても良い。
【0032】
以上のように構成されたカメラ装置10では、アーム部20は、その先端にカメラ部14を有しており、そのアーム部20は可撓性の部材により形成されているので、本体12を動かすことなく、アーム部20を自在に曲げることで容易にカメラ部14を撮影方向に向けることができる。
【0033】
また、カメラ装置10では、取り付け部24を吸盤24a、24b、24cとすることで、本体12を車の窓部26に容易に着脱可能に固定することができる。また、車のフロントガラスやリヤガラス等、傾斜がきつく、さらには曲面状となっている窓部26にも、取り付け部24を吸盤24a、24b、24cとすることで、容易に取り付けることができる。
【0034】
このカメラ装置10を車内の窓部26に取り付けることで盗難防止が図れる。これは車を盗もうとする人が、カメラ装置10が車内にあることを確認すると、自分を撮られる危険性を察知し、盗むのをあきらめるためである。また、カメラ部14を向ける方向によっては、追突防止や居眠り運転の防止が図られる。」
・「【0037】
第2の実施の形態に係るカメラ装置40は、図4に示すように、本体12と、カメラ部14と、アーム部20と、取り付け部24と、外光により発電可能な太陽電池41と、カメラ部14で撮影した画像データをモニタ34に送信するための無線機44とから、主に構成されている。なお、カメラ装置40には、モニタ34やビデオデッキ等その他の部材が付加されることがあるが、そのような場合を含めてカメラ装置40とする。
【0038】
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、本体12は、撮像素子16から得られる画像信号を信号処理するための画像信号処理部が配設される部分である。本体12の下端面の略中央部からは、アーム部20が延出している。また、アーム部20の先端にはカメラ部14が取り付けられており、このアーム部20は、多数の湾曲駒(図示省略)を有している。このため、アーム部20を手で撮影方向に自由に屈曲させ、撮影方向にカメラ部14を向けかつその状態を維持させることができる。」
・「【0045】
送信された電波は、モニタ側装置の一部となるモニタ側受信機44cで受信され、該モニタ側受信機44cにおいて、その電波に含まれているデジタル信号が復調され、その復調された信号は、デジタル信号処理部52に伝達され、そこで圧縮が解除され復号化される。復号化されたデジタル信号は、D/A変換回路54でデジタル信号からアナログ信号に変換されて、さらにアナログ信号処理回路56により所定のアナログ信号に変換され、画像データに対応した映像がモニタ34の表示画面に映し出される。」
【0046】
・・・。また、アーム部20を任意の方向に曲げることができるので、被撮影体の場所によって、本体12の取り付け位置が制限されることはない。」
・「【0050】
上述の各実施の形態では、取り付け部24は3つの吸盤24a、24b、24cとしたり4つの吸盤24a1、24a2、24b、24cとしたりされているが、吸盤の数は3つや4つに限られることなく、2つであっても良いし、5つ以上であってもよい。また、吸盤の配設位置を、本体12の上端面の他端側と、一端側に限ることはない。また、取り付け部24を吸盤とすることなく、例えば両面テープとしたり、嵌合式の固定ユニットを設ける等、簡単に取り付けることができる取り付け手段としても良い。」
・「【0053】
また、上述の各実施の形態では、図2および図4において、アーム部20は本体12の下端面から延出しており、取り付け部24は本体12の上端面に取り付けられているが、これらに限ることなく、アーム部20および取り付け部24を本体の他の端面に取り付けるようにしても良い。」
・「【0055】
また、上述の各実施の形態では、カメラ装置10、40は車内の窓部26に内部から取り付けることを前提としているが、これに限らず、車の内部であっても窓部26以外の場所に取り付けるようにしても良いし、車の外部に取り付けるようにしても良い。また、電柱、玄関先、屋内等、車以外の場所に取り付けるようにしても良い。
【0056】
上述の第2の実施の形態では、バッテリー43は本体12の内部に配置されているが、本体12の外部に取り付けるようにしても良い。また、無線機44は、送信機44aおよび受信機44bの機能を有しているが送信機44aのみとしても良い。さらに、無線機44およびモニタ側受信機44cは、本体12およびモニタ部48に隣接して配設されているが、本体12およびモニタ部48の内部に配設するようにしても良い。
【0057】
また、上述の第2の実施の形態では、画像信号処理部がカメラ装置40と、モニタ部48とに分割されて配置されているが、画像信号処理部全体がカメラ装置40に配置され、モニタ用の映像データが送信機44aから送信されるようにしても良い。」
・【図1】には、以下の内容が示されている(対応する構成を当審で付記した)。
「
[図:0001417956000001.jpg]
」
(2)引用発明
引用文献1の上記記載事項より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。なお、括弧内は主な参照箇所を示す(以下同じ。)。
「車内の窓部26に着脱可能に固定することができ、カメラ部14で撮影することができるカメラ装置10であって(段落【0025】、【0028】、【0033】及び【図1】)、
カメラ装置10の本体12と、カメラ装置10の本体12を車内の窓部26に取り付けるための取り付け部24を有し(段落【0021】、【0028】)、
取り付け部24によりカメラ装置10の本体12を車内の窓部26に取り付けられている状態で、カメラ装置10の本体12の下端面の略中央部から延出するカメラ部14を有する可撓性の部材により形成されているアーム部20であって(段落【0020】、【0021】、【0028】、【0032】、【0038】)、アーム部20の先端に取り付けられているカメラ部14の方向を自在に変えて撮影することが可能なアーム部20を有し(段落【0022】、【0025】、【0032】)、
アーム部20の先端に取り付けられているカメラ部14で撮影した映像データを、無線機44の送信機44aからモニタ34に送信し、映像がモニタ34の表示画面に映し出され(段落【0022】、【0037】、【0045】、【0056】、【0057】)、アーム部20を手で撮影方向に自由に屈曲させ、撮影方向にカメラ部14を向けることができる(段落【0038】)
カメラ装置10(段落【0020】)。」
2 引用文献4
(1)記載事項
引用文献4には、以下の記載がある。
・「【0002】
従来、車両の走行状況や偶発的な事故などを記録するためにドライブレコーダが普及しつつある。このドライブレコーダは、例えば車両のフロントガラスの内側に搭載され、運転者の視界に近似した画像を撮影して記録する(ドライブレコーダについて、例えば特許文献1参照)。ドライブレコーダで撮影した画像は、走行状況や事故を確認する際に、必要に応じて再生される。そのため、ドライブレコーダは、撮影した画像を再生する頻度が小さく、撮影した画像を表示する表示部を備えていない。したがって、ドライブレコーダで記録した画像を確認する場合、ドライブレコーダから画像データを記憶した例えば不揮発性メモリなどの記憶装置を取り出し、記憶装置に記憶された画像データをパーソナルコンピュータやテレビなどの固定端末で再生される。」
・「【0012】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態によるドライブレコーダシステムを図1および図2に示す。ドライブレコーダシステム10は、ドライブレコーダ11および携帯端末12を備えている。ドライブレコーダ11は、図1に示すように車両13に搭載されている。ドライブレコーダ11は、例えば車両13のフロントガラス14の内側などに搭載され、車両13の前方外部および車両13の内部など、車両13の外部または内部の少なくともいずれかの画像を撮影する。なお、ドライブレコーダ11は、車両13の前方だけでなく、側方や後方の外部や内部を撮影するものでもよい。
【0013】
ドライブレコーダ11は、図2に示すようにカメラ部21、信号処理部22、記録部23および画像データ出力部24を有している。カメラ部21は、例えばCCDやCMOSなどの撮像素子を有しており、撮影した画像に基づく電気信号を出力する。カメラ部21は、例えばNTSC規格の信号を生成し、信号処理部22へ出力する。信号処理部22は、デジタル変換部25および符号化部26などから構成されている。デジタル変換部25は、カメラ部21から出力されたNTSC信号をデジタルデータへ変換する。符号化部26は、デジタル変換部25で生成されたデジタルデータから所定のフォーマットの動画の画像データを生成する。符号化部26は、例えばMPEG-1、MPEG-4あるいはH.264など周知の各種動画フォーマットの画像データを生成する。
【0014】
記録部23は、取り外し可能なHDDなどの記憶媒体を有しており、デジタル変換部25で生成されたデジタルデータを記録する。記録部23は、符号化部26で生成された画像データを記録してもよい。記録部23は、記録容量に限りがあるため、記録するデータが記録容量を超えると、最も古いデータを消去しながら新たなデータを記録する。画像データ出力部24は、例えばUSBなど標準化規格に合致する有線のインターフェイス27を有している。符号化部26で生成された画像データは、画像データ出力部24のインターフェイス27を経由して外部の携帯端末12へ出力される。」
・「【0018】
次に、上記の構成によるドライブレコーダシステム10の調整手順について図3に基づいて説明する。
ユーザは、ドライブレコーダ11を車両13に取り付けると、ドライブレコーダ11と携帯端末12とを接続する(S101)。具体的には、ユーザは、ドライブレコーダ11を車両13の所定位置に取り付けた後、ドライブレコーダ11の画像データ出力部24のインターフェイス27と携帯端末12のデータ取得部31のインターフェイス37との間をUSBケーブル40で接続する。この場合、ドライブレコーダ11は、撮影範囲を調整可能な程度に車両13に仮固定されている。そして、ユーザは、ドライブレコーダ11の電源を「オン」する。次に、ユーザは、携帯端末12を、ドライブレコーダ11のカメラ部21で撮影した画像を表示部33に表示する画像表示モードに設定する(S102)。ユーザは、携帯端末12の入力部34を操作することにより、携帯端末12の表示部33を画像表示モードに設定する。」
・「【0020】
取得したアプリケーションソフトウェアを携帯端末12で実行させることにより、携帯端末12の表示部33を画像表示モードに切り替えると、ユーザは、表示部33にドライブレコーダ11で撮影した画像が表示されていることを確認する(S103)。ドライブレコーダ11と携帯端末12との間に通信が確立している場合、携帯端末12の表示部33にはドライブレコーダ11のカメラ部21で撮影した画像がほぼ同期して表示される。ユーザは、このように表示部33にドライブレコーダ11で撮影した画像が表示されていることを確認すると、この表示部33に表示されている画像を参考にドライブレコーダ11の撮影範囲を調整する(S104)。具体的には、仮固定されているドライブレコーダ11を任意の方向に移動させることにより、表示部33に表示される画像はドライブレコーダ11の移動に応じて変化する。そこで、ユーザは、表示部33に表示されている画像を参考にしながら、ドライブレコーダ11で撮影する画像が所望の撮影範囲となるようにドライブレコーダ11の位置を微調整する。」
・「【0024】
また、第1実施形態のドライブレコーダシステム10は、画像データ出力部24は、カメラ部21で撮影した画像をその撮影と同期して携帯端末12へ出力する。そして、携帯端末12は、カメラ部21で撮影した画像をその撮影と同期して表示部33に表示する。そのため、携帯端末12の表示部33には、カメラ部21で撮影した画像が同期して、すなわちリアルタイムで表示される。したがって、表示部33に表示された画像を参照しつつ、カメラ部21の撮影範囲を容易に調整することができる。」
・「【0026】
(第2実施形態)
第2実施形態によるドライブレコーダシステムを図4および図5に示す。
第2実施形態のドライブレコーダシステム10の場合、図4および図5に示すようにドライブレコーダ11と携帯端末12との間は無線41で通信可能に接続されている。すなわち、ドライブレコーダ11の画像データ出力部24のインターフェイス27、および携帯端末12のデータ取得部31のインターフェイス37は、無線41の通信規格に対応している。すなわち、第2実施形態の場合、無線41は、特許請求の範囲の通信媒体に相当する。携帯端末12として携帯電話機を利用する場合、特に3G規格以降の携帯電話機は、標準的な無線通信機能として「Bluetooth(登録商標)」をサポートしている機種が多い。そこで、このような普及率の高い無線通信規格を利用してドライブレコーダ11と携帯端末12との間を通信可能に接続することにより、第1実施形態の有線での通信と同様にドライブレコーダ11で撮影した画像は携帯端末12の表示部33で確認可能となる。
以上のように、第2実施形態のドライブレコーダシステム10の場合、有線での通信に代えてドライブレコーダ11と携帯端末12との間を無線41で接続する構成としてもよい。なお、無線41は、説明したような「Bluetooth」に限らず、例えば「無線LAN」など他の無線通信媒体を利用してもよい。」
(2)引用文献4の技術事項
引用文献4の上記記載事項より、引用文献4には、以下の技術事項(以下「引用文献4の技術事項」という。)が記載されていると認める。
「ドライブレコーダ11のカメラ部21で撮影した画像を、無線41の通信規格に対応しているドライブレコーダ11のインターフェイス27および携帯端末12としての携帯電話機のデータ取得部31のインターフェイス37の間を通信可能に接続し、携帯端末12としての携帯電話機の表示部33で確認可能とすることにより(段落【0018】、【0026】)、表示部33に表示されている画像を参考にしながら、車両13の前方外部を撮影するように、ドライブレコーダ11を移動させ、撮影する画像が車両13の前方外部の所望の撮影範囲となるように位置を微調整する構成とすること(段落【0012】、【0020】)。」
第5 対比
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「カメラ部14」は前者の「カメラ」に相当し、以下同様に、「本体12」は「筐体」に、「取り付け部24」は「取付け部」に、「可撓性の部材により形成されているアーム部20」及び「アーム部20」は「フレキシブルアーム」に、「映像データ」は「映像」に、「無線機44の送信機44a」は「無線通信部」に、「表示画面」は「画面」に、「手」は「人の手」に、「屈曲」は「曲げ変形」に、それぞれ相当する。
そして、上記相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
(2)引用発明の「車内の窓部26に着脱可能に固定することができ、カメラ部14で撮影することができるカメラ装置10」と、本願発明の「ルームミラーの裏面側に取り付け可能で車両の前方側をカメラで撮影可能なドライブレコーダ」とは、「車内に取り付け可能でカメラで撮影可能な車載機器」という点において共通する。
(3)引用発明の「カメラ装置10の本体12と、カメラ装置10の本体12を車内の窓部26に取り付けるための取り付け部24を有」する構成と、本願発明の「ドライブレコーダの筐体と、前記ドライブレコーダの筐体をルームミラーの裏面側に取り付けるための取付け部を備え」る構成とは、「車載機器の筐体と、前記車載機器の筐体を車内に取り付けるための取付け部を備え」る構成において共通する。
(4)引用発明では、「アーム部20」により、「アーム部20の先端に取り付けられているカメラ部14の方向を自在に変えて撮影することが可能」であるから、「カメラ部14」は「撮影可能」かつ撮影方向を「調整可能」であると認められる。
したがって、引用発明の「取り付け部24によりカメラ装置10の本体12を車内の窓部26に取り付けられている状態で、カメラ装置10の本体12の下端面の略中央部から延出するカメラ部14を有する可撓性の部材により形成されているアーム部20であって、アーム部20の先端に取り付けられているカメラ部14の方向を自在に変えて撮影することが可能なアーム部20を有」する構成と、本願発明の「前記取付け部によって前記ドライブレコーダの筐体をルームミラーの裏面側に取り付けた状態で、前記ドライブレコーダの筐体の運転者側の側面から前記ルームミラーの幅方向と略平行に延出した状態となるカメラを備えるフレキシブルアームであって、前記車両の前方側を、前記フレキシブルアームの先端に備えたカメラで撮影可能に調整可能なフレキシブルアームを備え」る構成とは、「前記取付け部によって前記車載機器の筐体を車内に取り付けた状態で、前記車載機器の筐体から延出した状態となるカメラを備えるフレキシブルアームであって、前記フレキシブルアームの先端に備えたカメラで撮影可能に調整可能なフレキシブルアームを備え」る構成において共通する。
(5)引用発明は、「アーム部20を手で撮影方向に自由に屈曲させ、撮影方向にカメラ部14を向けることができる」ものであるから、「カメラ部14」は自由な撮影方向が「撮影可能になるよう調整可能」であるものと認められる。
また、引用文献1の段落【0046】の「アーム部20を任意の方向に曲げることができるので、被撮影体の場所によって、本体12の取り付け位置が制限されることはない」という記載を参酌すると、引用発明は、車内に取り付けられた状態で「アーム部20を手で撮影方向に自由に屈曲させ」る際には、当然、「カメラ部14」が車内の障害物を回避することができるものと認められる。
したがって、引用発明の「アーム部20の先端に取り付けられているカメラ部14で撮影した映像データを、無線機44の送信機44aによりモニタ34に送信し、映像がモニタ34の表示画面に映し出され、アーム部20を手で撮影方向に自由に屈曲させ、撮影方向にカメラ部14を向けることができる」構成と、本願発明の「前記フレキシブルアームの先端に備えた前記カメラで撮影された映像を、無線通信部を介してスマートホンに送信し、前記スマートホンの画面上に表示させることにより、前記スマートホンの画面に表示される映像を見ながら前記車両の前方が撮影可能になるように、人の手で前記フレキシブルアームを曲げ変形させ、前記カメラが車内の障害物を回避して、前記車両の前方が撮影可能になるよう調整可能な構成とした」こととは、「前記フレキシブルアームの先端に備えた前記カメラで撮影された映像を、無線通信部を介して送信し、画面上に表示させ、人の手で前記フレキシブルアームを曲げ変形させ、前記カメラが車内の障害物を回避して、撮影可能になるよう調整可能な構成とした」点において共通する。
(6)そうすると、両者は、
「車内に取り付け可能でカメラで撮影可能な車載機器において、
車載機器の筐体と、前記車載機器の筐体を車内に取り付けるための取付け部を備え、
前記取付け部によって前記車載機器の筐体を車内に取り付けた状態で、前記車載機器の筐体から延出した状態となるカメラを備えるフレキシブルアームであって、前記フレキシブルアームの先端に備えたカメラで撮影可能に調整可能なフレキシブルアームを備え、
前記フレキシブルアームの先端に備えた前記カメラで撮影された映像を、無線通信部を介して送信し、画面上に表示させ、人の手で前記フレキシブルアームを曲げ変形させ、前記カメラが車内の障害物を回避して、撮影可能になるよう調整可能な構成とした
車載機器。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
車載機器に関し、本願発明は、「車両の前方側を」「撮影可能なドライブレコーダ」を対象としているのに対し、引用発明は、「カメラ装置10」が車両の前方側を撮影可能なドライブレコーダであるか不明である点。
[相違点2]
車載機器の取付けに関し、本願発明は、「ルームミラーの裏面側に取り付け可能」であり、「筐体をルームミラーの裏面側に取り付けるための取付け部を備え」、「ルームミラーの裏面側に取り付けた状態で」、フレキシブルアームが、「筐体の運転者側の側面から前記ルームミラーの幅方向と略平行に延出した状態となる」のに対し、引用発明は、「車内の窓部26に着脱可能に固定する」ものであり、フレキシブルアームに相当する「アーム部20」の延出する方向とルームミラーの幅方向との関係の特定もない点。
[相違点3]
カメラの調整に関し、本願発明は、カメラで撮影された映像を、「無線通信部を介してスマートホンに送信し、前記スマートホンの画面上に表示させることにより、前記スマートホンの画面に表示される映像を見ながら」「調整可能な構成とした」のに対し、引用発明では、調整をどのように行うか特定されていない点。
第6 判断
1 相違点1について
(1)ドライブレコーダとは通常、カメラとカメラによる情報を記録するメモリとを備え、追突等の事故時のために車両の前方を含む車両の周囲を撮影可能に取り付けられる車載機器であると認められる(例えば、引用文献2の段落【0002】、【0009】及び【0013】、又は、引用文献4の段落【0002】【0012】~【0014】を参照。)。
(2)また、引用文献1の段落【0030】には、カメラ装置10が画像記憶メモリ部31を備えることが記載されており、同段落【0034】には、カメラ装置10を追突防止のために使用することが示唆されていることに鑑みると、引用発明のカメラ装置10は、カメラ部14とカメラ部14による情報を記録する画像記憶メモリ部31とを備え、車外を撮影することも想定されている車載機器であると認められる。
(3)したがって、引用発明のカメラ装置10は、ドライブレコーダと同等の構成を備える車載機器であると認められるところ、このようなカメラ装置10をドライブレコーダとして使用することは、当業者が容易になし得たことである。
(4)さらに、ドライブレコーダとして、フロントガラスの近傍に取り付けられて車両の前方側を撮影可能な構成は、本願の出願時における技術常識である(例えば、引用文献2の段落【0009】、又は、引用文献4の段落【0012】を参照。以下「技術常識1」という。)。
(5)そして、引用文献1の段落【0033】に、カメラ装置10を車のフロントガラスに取り付けることが示唆されていることも併せて参酌すると、引用発明の「カメラ装置10」をドライブレコーダとして使用する際に、上記技術常識1に鑑み、「車両の前方側を撮影可能」な構成とすることも、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
2 相違点2について
(1)引用文献1には、段落【0055】に、カメラ装置10を、車の内部であっても窓部26以外の場所に取り付けることが示唆されており、段落【0050】には、カメラ装置10の取り付け部24として、嵌合式の固定ユニットを設けることが示唆されている。
(2)また、カメラで撮影可能な車載機器として、「ルームミラーの裏面側に取り付け可能」であり、「筐体をルームミラーの裏面側に取り付けるための取付け部を備え」る構成は、本願の出願前に周知の技術である(例えば、引用文献2の段落【0009】及び【図3】、又は、引用文献3の段落【0002】、【0013】及び【図4】を参照。以下「周知技術」という。)。
(3)したがって、引用発明において、引用文献1に記載された上記示唆に基づき、上記周知技術を採用することで、カメラ装置10を嵌合式の取り付け部24によってルームミラーの裏面側に取り付ける構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(4)さらに、ルームミラーの裏面側に取り付けた際に、アーム部20を運転者の視界の妨げにならない位置に設定することは、当業者が当然考慮し得る事項であり、引用文献1の段落【0053】に、アーム部20を本体12の下端面以外の他の端面に取り付けるようにしても良いことが示唆されていることも併せて参酌すると、アーム部20を本体12の「運転者側の側面からルームミラーの幅方向と略平行に延出した状態」とすることも、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
3 相違点3について
(1)引用文献4の技術事項について
ア 本願発明と引用文献4の技術事項とを対比すると、後者の「ドライブレコーダ11」は前者の「ドライブレコーダ」に対応し、以下同様に、「カメラ部21」は「カメラ」に、「無線41の通信規格に対応しているドライブレコーダ11のインターフェイス27および携帯端末12としての携帯電話機のデータ取得部31のインターフェイス37」は「無線通信部」に、それぞれ対応する。
イ 引用文献4の段落【0024】の記載を参照すると、引用文献4では、「携帯端末12の表示部33には、カメラ部21で撮影した画像が同期して、すなわちリアルタイムで表示される」ものであるので、引用文献4の技術事項の「カメラ部21で撮影した画像」は、「映像」を含むものと認められる。
ウ そうすると、引用文献4の技術事項は、本願発明の構成に倣うと、
「カメラで撮影された映像を、無線通信部を介して携帯電話機に送信し、前記携帯電話機の画面上に表示させることにより、前記携帯電話機の画面に表示される映像を見ながら車両の前方が撮影可能になるように、調整可能な構成としたこと。」
と整理できる。
(2)相違点3に係る判断について
ア 引用発明と引用文献4の技術事項とは、カメラで撮影可能な車載機器である点で技術分野が関連し、引用発明におけるモニタ34と、引用文献4の技術事項における携帯電話機とは、車載機器のカメラで撮影し、車載機器の無線通信部から送信された映像を表示する点で機能が共通する。
イ また、引用文献4には、携帯端末12としての携帯電話機がスマートホンであることは記載されていないものの、画面を有する携帯電話機としてスマートホンが広く普及していることは本願の出願時における技術常識にすぎない(以下「技術常識2」という。)。
ウ したがって、引用発明において、引用文献4の技術事項及び上記技術常識2に鑑み、モニタ34として携帯電話機であるスマートホンを使用し、カメラ部14で撮影した映像データを、無線機44の送信機44aによりスマートホンに送信し、スマートホンの画面に表示される映像を参考にしながら、手でアーム部20を自由に屈曲させ、所望の撮影範囲が撮影可能になるように微調整する構成とすることで、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
4 作用効果について
本願発明が奏する効果も、引用発明、引用文献4の技術事項、周知技術並びに技術常識1及び2から、当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。
5 請求人の主張について
請求人は、令和6年6月21日に提出した意見書において、
「このような構成により、ドライブレコーダの筐体をルームミラー裏に隠すことができるとともに、ルームミラーは、運転者が変わった場合に、その角度が調整されるため、ルームミラーの調整によってドライブレコーダのカメラの撮影方向が変わってしまうという課題があるところ、本願発明によれば、ドライブレコーダの筐体の運転者側の側面からルームミラーの幅方向と略平行に延出した状態となるカメラを備えるフレキシブルアームにより、新たな運転者は、運転席側から手で触って動かし、そのフレキシブルアームの先端に備えたカメラで撮影される映像が車内の障害物を回避して車両の前方が撮影可能になるように、フレキシブルアームを曲げ変形させて調整することを、スマートホンの画面に表示された映像を見ながら容易に行うことができるという効果を奏します。
こうした本願発明の特定した構成要素の有機的連携による相乗効果を奏する構成の記載はいずれの引用文献にもありません。いずれの引用文献を組み合わせても本願固有の効果を奏するこの構成には想到しません。」
と主張する。
しかしながら、前記2(4)に示したとおり、カメラ装置10を、ルームミラーの裏面側に取り付けた際に、アーム部20が運転者の視界の妨げにならないように設定することは、当業者が当然考慮し得る事項であり、その際に、手で撮影方向に自由に屈曲させやすいように、本体12の運転者側の側面からルームミラーの幅方向と略平行に延出した状態となる構成とすることも、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
さらに、前記3(2)に示したとおり、カメラの撮影範囲を調整することを、携帯電話機の画面に表示された映像を見ながら行うことも、引用文献4の技術事項にあり、引用文献4の段落【0024】にはその効果として、カメラの撮影範囲を容易に調整することができることも記載されていることに鑑みると、請求人の当該主張に係る本願発明の効果は、引用発明において引用文献4の技術事項、周知技術並びに技術常識1及び2を採用した際に、当業者が通常予測し得る範囲のものであって、格別なものとは認められない。
6 小括
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献4の技術事項、周知技術並びに技術常識1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-021157