2022-020897
真空掃除機
- 審判番号
- 2022-020897
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-552334外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月23日
- 審決日
- 2024年03月27日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】杉村 光嗣
- 【請求人代理人】鈴木 裕貴
- 分類
- P18 .121-Z (A47L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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この出願(以下、「本願」という。)は、2019年(平成31年)2月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年3月29日(以下、「優先日」という。)、(GB)英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概ね以下のとおりである。
令和 3年11月 1日付け 拒絶理由通知書
令和 4年 4月 1日 意見書、手続補正書の提出
令和 4年 8月23日付け 拒絶査定
令和 4年12月23日 審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 6月14日 上申書の提出
第2 令和4年12月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月23日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)
「【請求項1】吸引チャンバを画成しかつ撹拌器モータによって回転されるように構成された撹拌器を有する掃除機ヘッドと、塵埃分離器と、空気を前記吸引チャンバ内へそして前記塵埃分離器内へ引き込むように構成された真空モータと、前記撹拌器モータの電気的負荷を観測し、前記電気的負荷の大きさを閾値と比較し、前記真空モータに送られる電力を選択的に調整するように構成されたコントローラと、を備え、前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的負荷が前記閾値を超えて上昇するときに所定の上電力レベルへ漸次的に増加させ、あるいは、前記電気的負荷が前記閾値を超えて下降するときに所定の下電力レベルへ漸次的に減少させるように構成されていることを特徴とする真空掃除機。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】吸引チャンバを画成しかつ撹拌器モータによって回転されるように構成された撹拌器を有する掃除機ヘッドと、塵埃分離器と、空気を前記吸引チャンバ内へそして前記塵埃分離器内へ引き込むように構成された真空モータと、前記撹拌器モータの電気的負荷を観測し、前記電気的負荷の大きさを閾値と比較し、前記真空モータに送られる電力を選択的に調整するように構成されたコントローラと、を備え、前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的負荷が前記閾値よりも大きい場合に所定の上電力レベルへ増加させ、あるいは、前記電気的負荷が前記閾値より小さい場合に所定の下電力レベルへ減少させるように構成され、前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を前記上電力レベルまたは前記下電力レベルまで漸次的に調整するように構成されていることを特徴とする真空掃除機。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記コントローラ」が「前記真空モータに送られる電力を前記上電力レベルまたは前記下電力レベルまで漸次的に調整する」場合について、「前記電気的負荷が前記閾値を超えて上昇するとき」あるいは「前記電気的負荷が前記閾値を超えて下降するとき」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
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ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-226287号公報(平成25年11月7日公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付した。以下同様。)。
(ア)「【0003】図6において、従来の電気掃除機の掃除機本体1は、吸引風を発生する電動送風機2を内蔵している。同電気掃除機は、電動送風機2の異なった入力(供給電力)での動作モードを操作する操作部4を有したホース3と、延長管5と、被清掃面に接して塵埃等を吸い込む床用吸込具8を備え、ホース3と吸引した塵埃を蓄積しておく集塵室6は、掃除機本体1に設けた吸気口7を介して接続され、集塵室6と吸気口7とホース3と延長管5と床用吸込具8で連通通路22を形成している。床用吸込具8には、床面に対向して、床面上の塵埃を掻き上げる回転ブラシ9と、回転ブラシ9を回転駆動するための電動機10が内蔵されている。」
(イ)「【発明を実施するための形態】【0011】第1の発明は、吸引風を発生させる電動送風機を内蔵する掃除機本体と、被清掃面の塵埃を吸引する床用吸込具と、前記床用吸込具と前記掃除機本体とを連通する連通通路と、前記床用吸込具に内蔵され、被清掃面の塵埃を掻き上げる回転ブラシと、前記床用吸込具に内蔵され、前記回転ブラシを回転駆動する電動機と、前記電動機に流れる電流値を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段の出力に基づき、被清掃面の種類を識別する被清掃面識別手段と、使用者の操作により前記電流検出手段の出力値を閾値として記憶する記憶操作手段とを備え、前記被清掃面識別手段は、前記記憶操作手段に記憶された閾値と前記電流検出手段で検出された電流値に基づき、被清掃面の種類を識別するもので、使用者自身が識別させたい被清掃面を掃除する際に、記憶操作手段を操作することで、使用者の意図通りに被清掃面を識別できるよう閾値を記憶することができ、使用者の使用環境にあわせて自在に被清掃面を識別できるようになり、より使用性が向上した電気掃除機を提供することができる。【0012】第2の発明は、特に、第1の発明の掃除機本体から電動機に交流の電力を供給する2本の電力線と、電動送風機および前記電動機の運転動作を制御する制御手段と、複数のスイッチからなり前記制御手段に2本の信号線を介して操作信号を送るための操作手段とを備え、前記2本の信号線の内の片側の線と前記2本の電力線の内の片側とを1本の共通線とすると共に、電流検出手段は、前記共通線のインピーダンスで構成されているもので、上記インピーダンスを利用して電動機の電流値を検出することができるため、電動機の電流値を検出する専用の回路を設けることなく簡単で安価な構成で電動機の電流値を検出することができる。【0013】第3の発明は、特に、第1または第2の発明の識別された被清掃面の種類情報に基づき電動送風機の吸い込み能力の制御を行うもので、清掃を行う被清掃面に対して、必要な吸引力を確保しながら、必要最低限の供給電力で清掃を行うことができ、省エネルギーを実現した効率的な電気掃除機を提供することができる。これにより、簡単で安価な構成にて、使用者自身が識別させたい被清掃面を掃除する際に、記憶操作手段を操作することで、使用者の意図通りに被清掃面を識別できるよう閾値を記憶することができ、使用者の使用環境にあわせて自在に被清掃面を識別できるようになり、さらには省エネルギーを実現した、より使用性が向上する電気掃除機を提供することができる。」
(ウ)「【0015】(実施の形態1)図1は、本発明の実施の形態1における電気掃除機の制御のブロック図、図2は、同電気掃除機の回路構成図、図3は、同電気掃除機の床用吸込具のイメージ図、図4は、同電気掃除機の電動機の電流検出説明図、図5は、同電気掃除機の床面識別方法の説明図である。なお、上記従来の電気掃除機と同一構成の部品については同一符号を付して、その説明を省略する。」
(エ)「【0016】図1において、本実施の形態における電気掃除機は、電動送風機2と、回転ブラシ9を回転駆動するための電動機10と、電動送風機2の供給電力を制御する素子である第1の双方向性サイリスタ11と、電動機10の供給電力を制御する素子である第2の双方向性サイリスタ12と、電動送風機2と電動機10への供給電力を制御する制御手段13と、電動機10に流れる電流を検出する電流検出手段14と、電流検出手段14で検出される電流値と、被清掃面を清掃した際に、使用者が操作することで被清掃面を識別する閾値を記憶する記憶操作手段17により記憶された閾値とから被清掃面の種類を識別する被清掃面識別手段15を備えている。【0017】制御手段13と被清掃面識別手段15は、マイクロコンピュータ16で構成される(以下、まとめて、マイクロコンピュータ16として説明する)。マイクロコンピュータ16は、商用電源のゼロクロスを検出しており、制御手段13の動作として、ゼロクロスに同期して第1の双方向性サイリスタ11と第2の双方向性サイリスタ12を位相制御することにより、電動送風機2と電動機10への供給電力を制御している。」
(オ)「【0019】操作部4は、3つのスイッチSW1、SW2、SW3を有しており、スイッチSW1は、電動送風機2と電動機10への電力供給を停止する「停止モード」へ移行させる「停止スイッチ」、スイッチSW3は、最大の吸引力と掻き上げ力を発揮するために電動送風機2と電動機10への電力供給を最大とするよう制御する「強モード」と、静かさを優先したい時に使用する供給電力を低くした「弱モード」とを、操作する毎に切り替える「強/弱スイッチ」、スイッチSW2は、被清掃面識別手段15としての識別結果によって、電動送風機2と電動機10への供給電力を自動で切り替える「自動モード」へ移行させる「自動スイッチ」として設定している。」
(カ)「【0021】図3に、床用吸込具8に設けた回転ブラシ9の構成図を示すが、図3において、床用吸込具8に設けられ被清掃面に対して開口して被清掃面の塵埃を吸引するための開口部20のスペースに回転ブラシ9が配設され、電動機10に電力が供給されると、回転ブラシ9が、図3中の矢印に示す方向に回転して動作する。」
(キ)「【0031】この時、第2の双方向性サイリスタ12は、電動機10へ電力を供給している状態であり、電力供給線18には、数百mA~数Aの電流Iが流れ、例えば、Vdd=5[V]、r=2Ω、I=0.5Aとした時、r×I=1[V]となり、コモンライン側のホース抵抗rの両端の電圧(r×I)に関しては、信号電圧の大きさに対して無視できないレベルとなっており、電動機10がトリガオンした後のV1電圧は、マイクロコンピュータ16のGNDを基準とすると、操作部4を操作していない状態ではV1= (Vdd-r×I)×R/(R+r0+r1+r2+r3+r4) (式4)となるが、電流Iが流れるのは、コモンライン側であり、信号経路のV1がマイクロコンピュータ16に入力される経路には流れないので、r0は前述のようにr0=0Ωとすることができ、続きを表示(全12行)V1= (Vdd-r×I)×R/(R+r1+r2+r3+r4) (式5)となり、操作部4を操作していない状態では、V1には、AC電流Iに応じた電圧が、(式3)で示される信号に重畳した形で、図4に示すような波形があらわれる。電流Iは、AC電流であるので、電流IによるV1の変化成分としては、V1= (r×I)×R/(R+r1+r2+r3+r4) (式6)となって、V1は、電流Iの関数として表される関係となり、ホース3の抵抗成分を利用して、操作部4が操作されていない時のV1をゼロクロスに対するタイミングT3で判断することにより、マイクロコンピュータ16は、電動機10に流れる電流を検出することができる。【0032】電動機10に電力が供給され、回転ブラシ9が回転すると、清掃体21が、被清掃面に接触し、被清掃面の塵埃を掻き上げる。このとき、図4に示すようにフローリングのような硬質の被清掃面であれば、清掃体21の接触時に、清掃体21が被清掃面から受ける機械的な負荷抵抗は、比較的小さく、絨毯のような毛足があり、床用吸込具8が毛足に沈みがちになり、清掃体21との接触面積が増えるような被清掃面では、負荷抵抗は大きくなる。【0033】そのため電動機10に流れる電流Iは、フローリングでは小さく、絨毯では大きくなる。検出されるV1の電圧に対しあらかじめ識別閾値電圧VSを定めておき、検出されるV1の電圧値がVSより小さければフローリングと識別し、VSより大きければ絨毯と識別するように設定し、自動的に被清掃面を識別することができる。」
(ク)「【0037】さらに、フローリングか絨毯かの識別情報に基づき、フローリングであれば電動送風機2の吸引力が低くても十分な清掃効果が得られるため電動送風機2への供給電力を低くし、逆に絨毯であれば、高い吸引力がなければ十分な清掃効果が得られないため、電動送風機2への供給電力を多くし、必要な吸引力を確保しながら、必要最低限の供給電力で清掃を行うことができ、使用者も被清掃面を識別することをより実感することができる。」
(ケ)引用文献1には、以下の図が示されている。
「【図1】[図:0001413777000001.jpg]【図2】[図:0001413777000002.jpg]続きを表示(全11行)【図3】[図:0001413777000003.jpg]【図4】[図:0001413777000004.jpg]【図6】[図:0001413777000005.jpg]」
イ 引用文献1の記載から把握できる事項
引用文献1の記載から、以下の事項が把握できる。
(ア)床用吸込具8に設けられ被清掃面に対して開口して被清掃面の塵埃を吸引するための開口部20のスペースに、回転ブラシ9が配設され(段落【0021】)、回転ブラシ9は、電動機10によって回転駆動される(段落【0016】)。また、図3からは、床用吸込具8は、開口部20のスペースを画成していることが看取される。よって、床用吸込具8は、開口部20のスペースを画成しかつ電動機10によって回転されるように構成された回転ブラシ9を有するものと認められる。
(イ)集塵室6は、電動送風機2によって発生した吸引風で吸引した塵埃を蓄積しておくものである(段落【0003】)。また、段落【0003】、【0021】の記載を踏まえ、図3を参照すると、開口部20のスペースと集塵室6とが流体的に連通していることが看取される。よって、電動送風機2は、空気を開口部20のスペース内へそして集塵室6内へ引き込むように構成されていることは明らかである。
(ウ)電動送風機2への供給電力を制御する制御手段13と、電動機10に流れる電流を検出する電流検出手段14で検出される電流値と、被清掃面を清掃した際に、使用者が操作することで被清掃面を識別する閾値を記憶する記憶操作手段17により記憶された閾値とから被清掃面の種類を識別する被清掃面識別手段15は、マイクロコンピュータ16で構成される(段落【0016】、【0017】)。マイクロコンピュータ16は、電動機10に流れる電流Iの関数として表されるV1の電圧値を検出することにより、電動機10に流れる電流を検出することができる(段落【0031】)。
フローリングのような硬質の被清掃面であれば、清掃体21の接触時に清掃体21が被清掃面から受ける機械的な負荷抵抗は比較的小さく、絨毯のような毛足があり床用吸込具8が毛足に沈みがちになり清掃体21との接触面積が増えるような被清掃面では、負荷抵抗は大きくなる(段落【0032】)。そのため、電動機10に流れる電流Iは、フローリングでは小さく、絨毯では大きくなる(段落【0033】)。そして、検出されるV1の電圧は、電動機10に流れる電流Iの関数として表されるものであり(段落【0031】)、検出されるV1の電圧に対しあらかじめ識別閾値電圧VSを定めておき、検出されるV1の電圧値がVSより小さければフローリングと識別し、VSより大きければ絨毯と識別するように設定し、自動的に被清掃面を識別することができる(段落【0033】)。フローリングか絨毯かの識別情報に基づき、フローリングであれば電動送風機2への供給電力を低くし、絨毯であれば、電動送風機2への供給電力を多くするように、電動送風機2への供給電力を自動で切り替えることができる(段落【0019】、【0037】)。
以上を踏まえると、マイクロコンピュータ16は、電動機10に流れる電流Iの関数として表されるV1の電圧値を検出し、V1の電圧値の大きさを識別閾値電圧VSと比較し、電動送風機2への供給電力を自動で切り替えるように構成され、かつ、マイクロコンピュータ16は、電動送風機2への供給電力を、V1の電圧値が識別閾値電圧VSより大きければ多くし、V1の電圧値が識別閾値電圧VSより小さければ低くするように構成されているといえる。
ウ 引用文献1に記載された発明
前記ア、イから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「開口部20のスペースを画成しかつ電動機10によって回転されるように構成された回転ブラシ9を有する床用吸込具8と、集塵室6と、空気を前記開口部20のスペース内へそして集塵室6内へ引き込むように構成された電動送風機2と、電動機10に流れる電流Iの関数として表されるV1の電圧値を検出し、V1の電圧値の大きさを識別閾値電圧VSと比較し、電動送風機2への供給電力を自動で切り替えるように構成されたマイクロコンピュータ16と、を備え、マイクロコンピュータ16が、電動送風機2への供給電力を、V1の電圧値が識別閾値電圧VSより大きければ多くし、V1の電圧値が識別閾値電圧VSより小さければ低くするように構成されている電気掃除機。」
(3)引用文献2の記載事項及び引用文献2に記載された発明
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ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2017/0000305号明細書(平成29年1月5日公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある(日本語訳は当審で作成した。以下、同様。)。
(ア)「[0026] With continued reference to FIG. 1, a canister 38 is supported on the handle assembly 18 and includes a separator 42 and a dirt cup 46. The separator 42 removes dirt particles from an airflow drawn into the vacuum cleaner 10 which are then collected by the dirt cup 46. The separator 42 may be a cyclonic separator, filter bag, or other separator as desired. In the illustrated embodiment, the canister 38 including the dirt cup 46 is removable from the handle assembly 18 to facilitate emptying the dirt particles from the dirt cup 46.[0027] The vacuum cleaner 10 further includes a suction motor (not shown) contained within a motor housing 54 (FIG. 1) and a suction source (not shown), such as an impeller fan assembly, driven by the suction motor. The suction motor selectively receives power from a power source (e.g., a cord for plugging into a source of utility power, a battery, etc.) to generate the suction airflow through the vacuum cleaner 10.[0028] Now referring to FIGS. 2-4, the base assembly 14 includes a suction nozzle or floor nozzle 58 having a suction chamber 70 (FIG. 3). In the illustrated embodiment, the suction chamber 70 is formed between an upper portion 62 and a lower portion 66 of the floor nozzle 58 (FIG. 2). Air and debris may be drawn into the suction chamber 70 through an elongate inlet opening 74 in the lower portion 66 (FIG. 3). In the illustrated embodiment, a plurality of cross bars 78 are positioned across the opening 74 inhibiting ingress of electrical cords and other objects into the opening 74. In other embodiments, the cross bars 78 may be omitted. After entering the suction chamber 70, air and debris pass through a nozzle outlet 82 that fluidly communicates with the separator 42.」
(日本語訳:[0026] 図1を引き続き参照すると、キャニスタ38は、ハンドルアセンブリ18に支持され、分離器42及び塵埃カップ46を含む。分離器42は、真空掃除機10に吸い込まれる気流から塵埃粒子を除去し、この塵埃粒子は塵埃カップ46によって収集される。分離器42は、サイクロン式分離器、フィルタバッグ、または所望に応じて他の分離器であってもよい。図示の実施形態では、塵埃カップ46を含むキャニスタ38は、ハンドルアセンブリ18から取り外し可能であり、塵埃カップ46から塵埃粒子を空にすることを容易にする。
[0027] 真空掃除機10は、モータハウジング54(図1)内に収容された吸引モータ(図示せず)と、吸引モータによって駆動されるインペラファンアセンブリなどの吸引源(図示せず)とをさらに含む。吸引モータは、真空掃除機10を通る吸引気流を発生させるために、電源(例えば、商用電源源に差し込むためのコード、バッテリなど)から選択的に電力を受ける。
[0028] ここで図2~4を参照すると、ベースアセンブリ14は、吸引チャンバ70(図3)を有する、吸引ノズルまたはフロアノズル58を含む。図示された実施形態では、吸引チャンバ70は、フロアノズル58(図2)の上側部分62と下側部分66との間に形成されている。空気およびゴミは、下側部分66(図3)の細長い入口開口部74を通って吸引チャンバ70に引き込まれ得る。図示の実施形態では、複数のクロスバー78が開口部74を横切って配置され、開口部74への電気コードや他の物体の侵入を抑制する。他の実施形態では、クロスバー78は省略されてもよい。吸引チャンバ70に入った後、空気とゴミは、分離器42と流体連通するノズル出口82を通過する。)
(イ)「[0030] With reference to FIG. 3, an agitator or brushroll 94 is rotatably supported at its ends within the nozzle suction chamber 70. The brushroll 94 includes an array of bristle tufts 98 or other protrusions that may extend through the opening 74 to agitate the surface to be cleaned. The agitator 94 is rotatably driven by a drive belt 106 (FIG. 4) that receives power from a brushroll motor 108. In the illustrated embodiment, the brushroll motor 108 drives the brushroll 94, while the suction motor drives the suction source. In other embodiments, a single motor may be provided to drive the suction source and the brushroll 94.」
(日本語訳:[0030] 図3を参照すると、撹拌器又はブラシロール94が、ノズル吸引チャンバ70内でその端部において回転可能に支持されている。ブラシロール94は、開口部74を通って延びて被洗浄面を撹拌し得る毛束98又は他の突起のアレイを含む。撹拌器94は、ブラシロールモータ108から動力を受ける駆動ベルト106(図4)によって回転駆動される。図示の実施形態では、ブラシロールモータ108がブラシロール94を駆動し、吸引モータが吸引源を駆動する。他の実施形態では、吸引源とブラシロール94を駆動するために単一のモータを設けてもよい。)
(ウ)「[0036] With reference to FIG. 11, the vacuum cleaner 10 further includes a brushroll motor sensor 133 and a controller 116 in communication with the sensors 110, 133. The brushroll motor sensor 133 can be configured to sense a torque output or current draw of the brushroll motor 108. The controller 116 can receive and analyze data from the pressure sensor 110 and the brushroll motor sensor 133 and use some or all of that data as feedback to control the rotational speed of the brushroll motor 108.」
(日本語訳:[0036] 図11を参照すると、真空掃除機10は、ブラシロールモータセンサ133と、センサ110、133と通信するコントローラ116とをさらに含む。ブラシロールモータセンサ133は、ブラシロールモータ108のトルク出力又は電流引き込みを感知するように構成され得る。コントローラ116は、圧力センサ110およびブラシロールモータセンサ133からデータを受信して分析し、そのデータの一部または全部をフィードバックとして使用して、ブラシロールモータ108の回転速度を制御することができる。)
(エ)「[0038] With reference to FIG. 11, during operation, the controller 116 receives the data from the sensors 110, 133 and compares the sensed pressure from the pressure sensor 110 and the sensed current and/or torque values from the brushroll motor sensor 133 with one or more corresponding predetermined thresholds. The predetermined thresholds (i.e., pressure, torque, and/or current) are associated with different floor types to represent a distinction between floor surfaces (e.g., carpet and hard floor). The controller 116 determines the floor surface by comparing the sensed pressure and the sensed motor current and/or torque values with the predetermined thresholds, and automatically operates the brushroll motor 108, and optionally the suction motor, in a manner optimized for the type of floor surface. For example, high-pile carpet will generally cause high suction (i.e., low pressure) within the suction chamber 70 and force the brushroll motor 108 to work harder (i.e., generate higher torque and draw more current), while a hard floor surface will lead to lower suction (i.e., higher pressure that is closer to atmospheric pressure) within the suction chamber 70 and will allow the brushroll motor 108 to work more easily (i.e., generate lower torque and draw less current).」
(日本語訳:[0038] 図11を参照すると、動作中、コントローラ116は、センサ110、133からデータを受信し、圧力センサ110からの感知された圧力、およびブラシロールモータセンサ133からの感知された電流値および/またはトルク値を、1つまたは複数の対応する所定の閾値と比較する。所定の閾値(すなわち、圧力、トルク、および/または電流)は、床面(例えば、カーペットと硬質フロア)の区別を表すために、異なる床タイプに関連付けられている。コントローラ116は、感知された圧力および感知されたモータ電流値および/またはトルク値を所定の閾値と比較することによって床面を決定し、床面のタイプに最適化された方法でブラシロールモータ108、および任意に吸引モータを自動的に動作させる。例えば、毛足の長いカーペットは、一般に、吸引チャンバ70内に高い吸引力(すなわち、低圧)をもたらし、ブラシロールモータ108をより高負荷の状態にする(すなわち、より高いトルクを発生させ、より多くの電流を流す)一方、硬質フロア面は、吸引チャンバ70内に低い吸引力(すなわち、大気圧に近い高圧)をもたらし、ブラシロールモータ108をより低負荷の状態にする(すなわち、より低いトルクを発生させ、より少ない電流を流す)。)
(オ)「[0040] The controller 116 may also or alternatively operate the suction motor based on floor type. For example, the controller 116 may operate the suction motor at a lower power on a hard floor surface to conserve energy or a higher power on a hard floor surface to increase debris pick-up. In some embodiments, the suction motor may be operated at a lower power on certain height carpets to reduce the clamp-down of the nozzle 58 to the carpet so that the vacuum cleaner 10 is easier to push.」
(日本語訳:[0040] コントローラ116は、床の種類に基づいて吸引モータを動作させることもできる。例えば、コントローラ116は、エネルギーを節約するために硬質フロア面では吸引モータを低出力で動作させ、またはゴミの捕捉を増加させるために硬質フロア面では高出力で動作させることができる。幾つかの実施形態では、吸引モータは、真空掃除機10が押しやすくなるように、カーペットに対するノズル58のクランプダウンを低減するために、ある高さのカーペットでは低出力で動作させることができる。)
(カ)引用文献2には、以下の図が示されている。
「[図:0001413777000006.jpg][図:0001413777000007.jpg][図:0001413777000008.jpg][図:0001413777000009.jpg]」
イ 引用文献2の記載から把握できる事項
引用文献2の記載から、以下の事項が把握できる。
(ア)吸引チャンバ70は、フロアノズル58の上側部分62と下側部分66との間に形成されている(段落[0028])ことから、フロアノズル58は、吸引チャンバ70を画成しているといえる。撹拌器94は、ノズル吸引チャンバ70内で回転可能に支持され、ブラシロールモータ108から動力を受ける駆動ベルト106によって回転駆動される(段落[0030])。よって、フロアノズル58は、吸引チャンバ70を画成しかつブラシロールモータ108によって回転されるように構成された撹拌器94を有するものと認められる。
(イ)分離器42は、真空掃除機10に吸い込まれる気流から塵埃粒子を除去し、この塵埃粒子は塵埃カップ46によって収集される(段落[0026])。真空掃除機10は、モータハウジング54内に収容された吸引モータと、吸引モータによって駆動されるインペラファンアセンブリなどの吸引源とを含み、吸引モータは、真空掃除機10を通る吸引気流を発生させる(段落[0027])。空気は、吸引チャンバ70に引き込まれ、吸引チャンバ70に入った後、分離器42に流体連通するノズル出口82を通過する(段落[0028])ため、吸引チャンバ70と分離器42とは流体的に連通している。よって、吸引モータは、空気を吸引チャンバ70内へそして分離器42内へ引き込むように構成されていることは明らかである。
(ウ)ブラシロールモータセンサ133は、ブラシロールモータ108の電流引き込みを感知するように構成され、コントローラ116は、ブラシロールモータセンサ133からデータを受信して分析し、そのデータをフィードバックとして使用する(段落[0036]、図11)。コントローラ116は、ブラシロールモータセンサ133からの感知された電流値を所定の閾値と比較することによって床面を決定し、床面のタイプに最適化された方法で吸引モータを自動的に動作させる(段落[0038])。
毛足の長いカーペットは、ブラシロールモータ108をより多くの電流が流れる状態とする一方、硬質フロア面は、ブラシロールモータ108をより少ない電流が流れる状態とする(段落[0038])。コントローラ116は、床の種類に基づいて吸引モータを動作させることができ、硬質フロア面では吸引モータを低出力で動作させることができる(段落[0040])。
以上を踏まえると、コントローラ116は、ブラシロールモータ108の電流を観測し、該電流の大きさを所定の閾値と比較し、吸引モータに送られる電力を自動的に調整するように構成され、かつ、コントローラ116は、吸引モータに送られる電力を、該電流が所定の閾値を超えて下降するときに減少させるように構成されているといえる。
ウ 引用文献2に記載された発明
前記ア、イから、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「吸引チャンバ70を画成しかつブラシロールモータ108によって回転されるように構成されたブラシロール94を有するフロアノズル58と、分離器42と、空気を吸引チャンバ70内へそして分離器42内へ引き込むように構成された吸引モータと、ブラシロールモータ108の電流を観測し、該電流の大きさを所定の閾値と比較し、吸引モータに送られる電力を自動的に調整するように構成されたコントローラ116と、を備え、コントローラ116が、吸引モータに送られる電力を、該電流が所定の閾値を超えて下降するときに減少させるように構成されている真空掃除機10。」
(4)引用文献5の記載事項及び引用文献5に記載された発明
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ア 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献5として引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-075612号公報(平成22年4月8日公開。以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0018】図2において、掃除機本体(以下、「本体」と称す)1は吸引風を発する電動送風機2を内蔵し、当該吸引風に含まれる塵埃を捕集する集塵室3を設けてある。本体1には着脱自在に接続したホース4があり、このホース4の手元には操作手段5があり、各種の動作モード(例えば「強」・「中」・「弱」・「切」等の吸込み力)を選択できるようになっている。操作手段5があるホース4の先端部には、着脱自在に接続した延長管6があり、更に延長管6の先端には被掃除面に接触して塵埃を吸引可能な吸込み具7が同じく着脱自在に接続されている。吸込み具7は、電動機10と、電動機10の回転力をベルト11を介して回転駆動されて被掃除面の塵埃をかきあげる効果を奏する回転ブラシ12を内蔵している。また、ホース4には、赤外発光ダイオード20(以下、発光部と称す)とフォトトランジスタ21(以下、受光部と称す)で構成された塵埃検知手段22が収納されている。ホース4内(吸引経路内)の発光部20と受光部21の間を塵埃が通過することで受光部21の受光量が変化するので、塵埃を検知できるのである。【0019】図1は、この電気掃除機の制御ブロック図で、31は電動送風機2を駆動するための双方向性サイリスタなどで構成された駆動手段である。32は回転ブラシ12をベルト11を介して回転駆動する電動機10を位相制御するための電動機駆動手段である。13は吸込み具7が、被掃除面に接地しているか否かを検知する接地検知手段である。30はマイクロコンピュータなどで構成される制御手段である。制御手段30は、操作手段5のスイッチ操作情報を取り込み、その情報を基に、電動機駆動手段32および駆動手段31へ位相制御ための点弧パルスを出力し制御を行っている。40は、電気掃除機に電力を供給する商用電源である。」
(イ)「【0027】そこで、本発明の電気掃除機の制御を、図3(b)の制御のタイミングチャートを用いて説明する。【0028】使用者により吸込み具7が被掃除面から離された状態で、電動送風機2と電動機10への電力供給を強制停止するよう制御する(Tb1、Tb2)までは、前述の従来制御(Ta1、Ta2)と同じである。【0029】この後、吸込み具7が再び被掃除面に接地された場合、制御手段30は、接地検知手段13より接地有りの情報を得る(Tb3)。この時すぐに、制御手段30は、電動送風機2と電動機10への電力供給を行う。例えば、制御手段30は、駆動手段31に電動送風機2を弱モード(例えば約200W)で運転するように駆動信号を送る。同時に電動駆動手段32には、回転ブラシ12を低回転で回すように電動機10を運転するための駆動信号を送る(Tb3)。【0030】これにより、電動送風機2が回転を開始し、吸引力が発生するとともに、電動機10も回転を開始し、被掃除面の塵埃をかきあげる効果も発揮する。このかきあげ力と吸引力によって、制御手段30は、着床と判断する間(Tb3-Tb4間)でも塵埃を検知できる状態なのである。この着床と判断する間に塵埃が無ければ、Tb4時点で、電動送風機2と電動機10への電力供給を、強制停止する前の制御で再開するといった制御を行う。」
(ウ)「【0034】つまり、接地させてすぐに、強制停止していた、電動送風機2と電動機10を、塵埃検知手段22が、最低限作動するのに必要な吸引力を発生する運転状態(ここでは、弱モードと低回転)で運転することにより、省電力および静音化が図れると共に、使用者が接地させてすぐに掃除動作を行っても、掃除が出来ていない箇所を作らない使用者の実感にあった使い勝手の良い電気掃除機を提供できる。【0035】また、本実施の形態では、使用者により吸込み具7が被掃除面から離された状態から、再び被掃除面に接地して、制御手段30が、低電力の運転モードで、電動送風機2と電動機10への電力供給を行う制御から、着床を検知するか、塵埃検知手段22の情報より塵埃を検知した場合、電動送風機2と電動機10への電力供給を、強制停止する前の制御で再開することを説明したが、電力供給を急に再開するのではなく、図3(d)のように段階的(Td4-Td5間のよう)に戻すことによって、省電力および静音化が更に図ることができ、使用者の実感にあった停止状態から運転状態への復帰ができる使い勝手の良い電気掃除機を提供できる。」
(エ)引用文献5には、以下の図が示されている。
「【図1】[図:0001413777000010.jpg]【図2】[図:0001413777000011.jpg]【図3】[図:0001413777000012.jpg]」
イ 引用文献5の記載から把握できる事項
図3(b)から、駆動手段31に、Tb3において、停止している電動送風機2を弱モードで運転するように駆動信号を送り、Tb4において、弱モードで運転している電動送風機2を強モードで運転するように駆動信号を送っていることが看取される。また、図3(d)から、駆動手段31に、Td3において、停止している電動送風機2を弱モードで運転するように駆動信号を送り、Td4-Td5間において、弱モードで運転している電動送風機2を強モードで運転するように段階的に駆動信号を送っていることが看取される。
ウ 引用文献5に記載された発明
前記ア、イから、引用文献5には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
「電動機10によって回転されるように構成された回転ブラシ12を有する吸込み具7と、集塵室3と、空気を前記集塵室3内へ引き込むように構成された電動送風機2と、前記電動送風機2に送られる電力を選択的に調整するように構成された制御手段30と、を備え、前記制御手段30が、前記電動送風機2に送られる電力を、接地検知手段13より接地有りの情報を得たときに強モードへTb3からTb4の期間またはTd3からTd5の期間にわたって増加させるように構成されている電気掃除機。」
(5)引用文献7の記載事項及び引用文献7に記載された技術事項
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ア 引用文献7の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献7として引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-136906号公報(平成22年6月24日公開。以下、「引用文献7」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0019】図1、図2において、電動送風機1は塵埃を吸引するための吸込力を発生させるものである。ホース11は電気掃除機本体8と、入力設定手段4とを着脱自在に接続している。入力設定手段4には延長管6と、その延長管6には吸込み具7が同じく着脱自在に接続され構成されている。入力設定手段4は、使用者が電動送風機1を動作する運転モード(例えば強:入力900W、中:入力600W、弱:入力200W、切等の吸込み力)を選択し、制御手段3に信号を伝達する。ホース11は、発光素子13と受光素子14で構成された塵埃検知手段15を内蔵しており、ホース11内(吸引経路内)の発光素子13と受光素子14の間を塵埃が通過することで受光素子14の受光量が変化することとなり、塵埃を検知する。吸込み具7には被掃除面と吸込み具7との接地を検出する接地検知手段16が備えられており、制御手段3と電気的に接続されている。」
(イ)「【0023】ここで使用者が電話に出るなど、強運転モードのまま電気掃除機を放置したとする。すると接地検知手段16は制御手段3に接地していないことを表す信号を発信し、制御手段3はタイマー19に動作信号を送る(ステップ2)。タイマー19は所定時間(例えば5秒)をカウントし5秒経過後に、制御手段3に信号を発信する。その信号を受信した制御手段3は電動送風機駆動手段17に電動送風機1の入力を600Wに低下させるように信号を発信する(ステップ3)。【0024】タイマー19は制御手段から動作信号を受けている間、5秒毎に制御手段3に信号を発信するため、ステップ3の時点でも、接地検知手段16から接地していないことを表す信号が発信されている場合、制御手段3はタイマー19への動作信号を継続して送り、タイマー19はステップ3から5秒後に、再度制御手段3に信号を発信し、制御手段3は電動送風機駆動手段17に電動送風機1の入力を300Wに低下させるように信号を発信する(ステップ4)。【0025】同様にステップ4の時点でも、接地検知手段16から接地していないことを表す信号が発信されている場合、制御手段3はタイマー19への動作信号を継続して送り、タイマー19はステップ4から5秒後、再度制御手段3に信号を発信し、制御手段3は電動送風機駆動手段17に電動送風機1を停止させるように信号を発信する(ステップ5)。」
(ウ)「【0027】以上のように本実施の形態においては、運転中に放置された場合等の吸込み具7が被掃除面から浮いている場合には、段階的に電動送風機1の入力を低下させて停止させることで、不要な電力を消費せず静音化が期待できる。また、仮に被掃除面に凹凸がある場合などに吸込み具7の接地状態を「接地していない」と誤検知しても、時間をかけて段階的に入力を下げることにより、運転状態から強制停止状態への急激な入力の変化を無くすことができ、使用者にストレスを与えない使用性の良い電気掃除機を提供することができる。」
(エ)引用文献7には、以下の図が示されている。
「【図1】[図:0001413777000013.jpg]【図3】[図:0001413777000014.jpg]」
イ 引用文献7に記載された技術事項
前記アから、引用文献7には次の技術事項が記載されていると認められる。
「静音化のために、制御手段3が、電動送風機1の入力を時間をかけて段階的に低下させるように構成されている、電気掃除機。」
(6)引用文献8の記載事項及び引用文献8に記載された技術事項
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ア 引用文献8の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献8として引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった中国特許出願公開第1672622号明細書(平成17年9月28日公開。以下、「引用文献8」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)第24頁第21~26行
「[図:0001413777000015.jpg]」
(日本語訳:さらに、電動送風機6に供給される電力が変動すると、その変動によって電動送風機6に振動や騒音が発生する。この振動は、特に使用者がハンドル8を手に持って掃除しているときに、使用者にとって不快なものとなる。しかし、電動送風機6に入力される電力は、非昇圧モードから昇圧モードへの移行シーケンスによって段階的に増加される。このようにすることで、昇圧モード開始時の電動送風機6への投入電力の変化の度合いを緩和することができ、電動送風機6からの振動や騒音を低減することができる。)
(イ)引用文献8には、以下の図が示されている。
「[図:0001413777000016.jpg]」
イ 引用文献8に記載された技術事項
前記アから、引用文献8には次の技術事項が記載されていると認められる。
「電動送風機6からの振動や騒音を低減するために、電動送風機6に入力される電力が段階的に増加され、電動送風機6への投入電力の変化の度合いを緩和することができる掃除機。」
(7)対比・判断
ア 引用発明1を主引用発明とする場合
(ア)対比
a 引用発明1の「開口部20のスペース」は本件補正発明の「吸引チャンバ」に相当し、以下同様に、「電動機10」は「撹拌器モータ」に、「回転ブラシ9」は「撹拌器」に、「床用吸込具8」は「掃除機ヘッド」に、それぞれ相当する。
b 引用発明1の「集塵室6」は、吸引した塵埃を蓄積しておく(前記(2)ア(ア))ものであり、それにより塵埃を含んだ空気から塵埃を分離し得るといえるから、本件補正発明の「塵埃分離器」に相当する。
c 引用発明1の「電動送風機2」は、吸引風を発生する(前記(2)ア(ア))という機能に照らせば、本件補正発明の「真空モータ」に相当する。
d また、本願明細書の段落【0074】に「この場合において、コントローラは、撹拌器モータ54の電流引込に関して電気的負荷を観測し、これを電流閾値と比較する。この実施形態における電流閾値は、1.5Aから2Aの範囲である。」と記載されていることから、本件補正発明の「前記撹拌器モータの電気的負荷」は、撹拌器モータに流れる電流に関して観測される電気的な量と解される。加えて、引用発明1の「電動送風機2への供給電力を自動で切り替える」は、本件補正発明の「前記真空モータに送られる電力を選択的に調整する」に相当すると認められる。そうすると、引用発明1の「電動機10に流れる電流Iの関数として表されるV1の電圧値を検出し、V1の電圧値の大きさを識別閾値電圧VSと比較し、電動送風機2への供給電力を自動で切り替えるように構成されたマイクロコンピュータ16」と本件補正発明の「前記撹拌器モータの電気的負荷を観測し、前記電気的負荷の大きさを閾値と比較し、前記真空モータに送られる電力を選択的に調整するように構成されたコントローラ」とは、「前記撹拌器モータの電気的な量を観測し、前記電気的な量の大きさを閾値と比較し、前記真空モータに送られる電力を選択的に調整するように構成されたコントローラ」である点で共通する。
e そして、引用発明1において電動送風機2への供給電力を増減するにあたり所定の目標値を設定し得ることは、技術常識から明らかであることを勘案すると、引用発明1の「マイクロコンピュータ16が、電動送風機2への供給電力を、V1の電圧値が識別閾値電圧VSより大きければ多くし、V1の電圧値が識別閾値電圧VSより小さければ低くするように構成されている」と本件補正発明の「前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的負荷が前記閾値を超えて上昇するときに所定の上電力レベルへ漸次的に増加させ、あるいは、前記電気的負荷が前記閾値を超えて下降するときに所定の下電力レベルへ漸次的に減少させるように構成されている」とは、「前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的な量が前記閾値を超えて上昇するときに所定の上電力レベルへ増加させ、あるいは、前記電気的な量が前記閾値を超えて下降するときに所定の下電力レベルへ減少させるように構成されている」点で共通する。
(イ)一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「吸引チャンバを画成しかつ撹拌器モータによって回転されるように構成された撹拌器を有する掃除機ヘッドと、塵埃分離器と、空気を前記吸引チャンバ内へそして前記塵埃分離器内へ引き込むように構成された真空モータと、前記撹拌器モータの電気的な量を観測し、前記電気的な量の大きさを閾値と比較し、前記真空モータに送られる電力を選択的に調整するように構成されたコントローラと、を備え、前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的な量が前記閾値を超えて上昇するときに所定の上電力レベルへ増加させ、あるいは、前記電気的な量が前記閾値を超えて下降するときに所定の下電力レベルへ減少させるように構成されている真空掃除機」
(相違点1)
コントローラが観測し、その大きさを閾値と比較する電気的な量が、本件補正発明では、撹拌器モータの「電気的負荷」であるのに対し、引用発明1では、電動機10に流れる電流Iの関数として表されるV1の電圧値である点。
(相違点2)
コントローラが、真空モータに送られる電力を、所定の上電力レベルへ増加させ、あるいは、所定の下電力レベルへ減少させる点について、本件補正発明は、当該電力を「漸次的に」増加あるいは減少させるのに対し、引用発明1は、そのように増加あるいは減少させているか明らかでない点。
(ウ)判断
a 相違点1について
前記(ア)dで述べたとおり、本願明細書の段落【0074】の記載を参酌すると、本件補正発明の「前記撹拌器モータの電気的負荷」は、撹拌器モータに流れる電流に関して観測されるものと認められる。そして、引用発明1の「V1の電圧値」も、電動機10に流れる電流Iの関数として表されるものであるから、前記相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。
また、仮に実質的な相違点であるとしても、引用発明1は、前記(2)イ(ウ)で示したとおり、電動機10に流れる電流Iが、フローリングでは小さく、絨毯では大きくなることに基づいて被清掃面を識別するものであり、また、電圧値V1は、電流Iの関数として表されるものであるから、V1の電圧値の代わりに電流Iを電気的負荷として観測して閾値と比較することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
b 相違点2について
本願明細書の段落【0033】に「真空モータに送られる電力を漸次的に調整する場合において、コントローラは、真空モータに送られる電力を少なくとも0.1秒または少なくとも0.2秒の期間にわたって上電力レベルまたは下電力レベルへ調整するように構成され得る。例えば、コントローラは、真空モータに送られる電力を少なくとも0.5秒の期間にわたって上電力レベルまたは下電力レベルへ調整するように構成され得る。」と記載され、同段落【0077】に「そして、検出した電流引込が電流閾値よりも大きい場合、コントローラ50は、真空モータ52に送られる電力を初期電力レベルから上電力レベルまで増加させる(ブロックD)。この場合において、上電力でベルは、180Wである。」(当審注:「上電力でベル」は「上電力レベル」の誤記と認められる。)と記載され、同段落【0078】に「そして、そうである場合には、コントローラ50は、真空モータ52に送られる電力を初期電力レベルから下電力レベルまで減少させる(ブロックF)。この実施形態において、下電力レベルは、80Wである。」と記載され、同段落【0082】に「注目すべきことは、この実施形態において、コントローラが真空モータ52に供給する電力レベルの調整をなし、この調整が電力レベルへのステップ状変化をなすよりも漸次的であること、である。より詳しくは、コントローラは、約2秒の期間にわたって電力レベルを調整する。これにより、(供給される電力の急変によって引き起こされる)ユーザを混乱させ得る真空モータ52の速度の急変を回避する。」と記載されていることを考慮すると、本件補正発明の「所定の上電力レベルへ漸次的に増加」及び「所定の下電力レベルへ漸次的に減少」は、それぞれ、少なくとも一定の期間にわたって急変させることなく電力を所定の目標値まで増加ないし減少させることを意味すると解される。
引用文献5には、前記(4)ウで示したように、「電動機10によって回転されるように構成された回転ブラシ12を有する吸込み具7と、集塵室3と、空気を前記集塵室3内へ引き込むように構成された電動送風機2と、前記電動送風機2に送られる電力を選択的に調整するように構成された制御手段30と、を備え、前記制御手段30が、前記電動送風機2に送られる電力を、接地検知手段13より接地有りの情報を得たときに強モードへTb3からTb4の期間またはTd3からTd5の期間にわたって増加させるように構成されている電気掃除機。」(引用発明3)が記載されている。
また、引用文献5の段落【0034】には、接地させてすぐに、強制停止していた電動送風機2を弱モードで運転することにより、静音化が図れることが記載され、同段落【0035】には、使用者により吸込み具7が被掃除面から離された状態から、再び被掃除面に接地して、制御手段30が、低電力の運転モードで、電動送風機2と電動機10への電力供給を行う制御から、着床を検知した場合、電動送風機2と電動機10への電力供給を、Td4-Td5間のように段階的に戻すことによって、静音化が図れることが記載されている(前記(4)ア(ウ))。
よって、引用発明3は、制御手段30が、電動送風機2に送られる電力を、Tb3からTb4の期間またはTd3からTd5の期間、すなわち、一定の期間にわたって段階的に増加させることで、電動送風機2の静音化が図れるものといえる。
そして、掃除機の技術分野において、電動送風機を静音化するという課題は、引用文献5にもみられるように一般的な課題であることに鑑みると、引用発明1においても、そのような課題を内在しているといえる。そうすると、引用発明1において、引用発明3に倣って、マイクロコンピュータ16が、電動送風機2への供給電力を一定の期間にわたって増加または減少させるように構成し、本件補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、そもそも静音化を図るために吸引風を発生するモータへの供給電力を一定の期間にわたって段階的に変化させることは、当業者にとって従来周知の技術的事項(例えば、引用文献7(前記(5)イ)、引用文献8(前記(6)イ)を参照。以下、「周知技術」という。)である。してみれば、引用発明1において静音化のために、周知技術に倣って、マイクロコンピュータ16が、電動送風機2への供給電力を一定の期間にわたって増加または減少させるように構成し、本件補正発明の相違点2に係る構成とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。
上記において、仮に本件補正発明の「漸次的」という用語が一定の期間にわたって連続的に上昇又は下降することを意味しているとしても、引用発明1に引用発明3又は周知技術を適用するにあたり、電動送風機2への供給電力を変化させるステップを何段階とするかは当業者が任意に定め得るものであり、該ステップの段階を多くし、連続的とすることにも格別の困難性はない。
イ 引用発明2を主引用発明とする場合
(ア)対比
a 引用発明2の「吸引チャンバ70」は本件補正発明の「吸引チャンバ」に相当し、以下同様に、「ブラシロールモータ108」は「撹拌器モータ」に、「ブラシロール94」は「撹拌器」に、「フロアノズル58」は「掃除機ヘッド」に、「分離器42」は「塵埃分離器」に、「コントローラ116」は「コントローラ」に、それぞれ相当する。
b 引用発明2の「吸引モータ」は、吸引気流を発生させる(前記(3)ア(ア)の段落[0027])という機能に照らせば、本件補正発明の「真空モータ」に相当する。
c また、前記ア(ア)dで示した本願明細書の段落【0074】の記載から、本件補正発明の「前記撹拌器モータの電気的負荷」は、撹拌器モータに流れる電流に関して観測されるものと解される。してみると、引用発明2の「電流」は本件補正発明の「電気的負荷」に相当し、引用発明2の「所定の閾値」は本件補正発明の「閾値」に相当すると認められる。加えて、引用発明2の「吸引モータに送られる電力を自動的に調整する」は、本件補正発明の「前記真空モータに送られる電力を選択的に調整する」に相当すると認められる。
d 引用発明2において吸引モータに送られる電力を減少させるにあたり所定の目標値を設定し得ることは技術常識から明らかであることからして、引用発明2の「コントローラ116が、吸引モータに送られる電力を、該電流が所定の閾値を超えて下降するときに減少させるように構成されている」と本件補正発明の「前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的負荷が前記閾値を超えて上昇するときに所定の上電力レベルへ漸次的に増加させ、あるいは、前記電気的負荷が前記閾値を超えて下降するときに所定の下電力レベルへ漸次的に減少させるように構成されている」とは、「前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的負荷が前記閾値を超えて下降するときに所定の下電力レベルへ減少させるように構成されている」点で共通する。
(イ)一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「吸引チャンバを画成しかつ撹拌器モータによって回転されるように構成された撹拌器を有する掃除機ヘッドと、塵埃分離器と、空気を前記吸引チャンバ内へそして前記塵埃分離器内へ引き込むように構成された真空モータと、前記撹拌器モータの電気的負荷を観測し、前記電気的負荷の大きさを閾値と比較し、前記真空モータに送られる電力を選択的に調整するように構成されたコントローラと、を備え、前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的負荷が前記閾値を超えて下降するときに所定の下電力レベルへ減少させるように構成されている真空掃除機」
(相違点3)
コントローラが、真空モータに送られる電力を、電気的負荷が閾値を超えて下降するときに所定の下電力レベルへ減少させる点について、本件補正発明は、当該電力を「漸次的に」減少させるのに対し、引用発明2は、そのように減少させているか明らかでない点。
(ウ)判断
相違点3は、本件補正発明と引用発明1との相違点である相違点2と同様の相違点であり、前記ア(ウ)bで検討したのと同様に、引用発明2において、引用発明3又は周知技術に倣って、コントローラ116が、吸引モータに送られる電力を一定の期間にわたって減少させるように構成し、本件補正発明の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(8)請求人の主張に対して
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請求人は審判請求書で、『しかしながら、引用文献5の図3(d)には、下図に示しましたとおり、Td4-Td5間において、電力モードが「低」から「強」に漸次的に変化することが示されていますが、これは、電気的負荷の変化がない状態です。すなわち、引用文献5の図3(d)では、電気的負荷の変化がない状態で、電力モードが「低」から「強」に漸次的に変化することを示すに留まります。一方で、図3(d)は、Td3において、掃除機のヘッドが接地して電気的負荷が変化した際には、電力モードが「切」から「弱(低)」に急激に変化することが示されています。(下図参照。)』(第6頁第26行~第7頁第4行)と主張している。
しかしながら、前記(7)ア(ウ)bで述べたとおり、本願明細書の記載から、本件補正発明の「所定の上電力レベルへ漸次的に増加」及び「所定の下電力レベルへ漸次的に減少」は、それぞれ、少なくとも一定の期間にわたって急変させることなく電力を所定の目標値まで増加ないし減少させることを意味すると解される。そうしてみると、引用文献5の図3(b)ではTb3からTb4の期間にわたって、同図3(d)ではTd3からTd5の期間にわたって、電力モードが「切」から「強」に変化しており(前記(4)イを参照)、当該いずれの変化も一定の期間にわたっている点で漸次的であるといえる。よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
また、請求人は審判請求書で、「また、新たに引用された引用文献7及び8にも、上述した本願発明の特徴は、記載も示唆もされていません。具体的には、引用文献7の段落[0027]には、吸込み具7が被掃除面から浮いている場合に段階的に電動送風機1の入力を低下させて停止させることが開示されていますが、引用文献7には吸込み具7が被掃除面から浮いているか否かを判定に用いられる接地検知手段の詳細が開示されていません。このため、引用文献7は、入力の段階的な調整が、電気的負荷と閾値との比較に基づいてトリガーされていることを開示していません。また、引用文献8の24頁21-26行には、ノンブースト運転モードからブースト運転モードに移行するシーケンスの実行に伴い、電動送風機6に入力される電力が段階的に大きくなることが開示されていますが、引用文献8は、図15及び図16に示されるように、ボタンが押下されたタイミングで、電力の段階的な調整がトリガーされることを開示するのみです。このため、引用文献8もまた、電力の段階的な調整が、電気的負荷と閾値との比較に基づいてトリガーされていることを開示していません。」「したがいまして、本願発明は、引用文献1又は2に、引用文献5、7、8を組み合わせても、直ちに、当業者が容易に想到し得るものでもありません。」(第7頁第10行~第8頁第8行(行数は図の部分を含まないものとする。以下同様。))と主張し、上申書で、「しかしながら、文献1及び2は、電気的負荷が閾値を超えて上昇/下降するときに真空モータに送られる電力を変化させることを開示するに留まり、以前に提出した意見書で述べましたように、本願明細書の段落0031に記載されるような、攪拌機モータの負荷が変化するたびに真空モータの出力が急激に変化することで、真空モータの可聴音が繰り返し変化することで、ユーザが掃除機に障害があると解釈させ得るという課題については、教示も示唆もしていません。」「そのため、当業者は文献1又は2から上記の課題を認識することはなく、ましてや、当業者には、上記の課題を解決するために、文献1又は2に文献3-5を組み合わせる動機付けがなかったと思料致します。したがいまして、文献1又は2に文献3-5を組み合わせることは、本願に記載された課題を知った上での後知恵であると思料致します。」(第3頁第11~20行)との主張もしている。
しかし、前記(7)ア(ウ)及び(7)イ(ウ)で検討したとおり、掃除機において静音化が求められることは一般的な課題であって、引用文献1に記載された引用発明1又は引用文献2に記載された引用発明2においても当然内在する課題であるから、引用発明1又は2において、当該課題を解決すべく、引用文献5に記載された引用発明3又は引用文献7及び8に記載された周知技術を適用する動機付けはあるといえ、それにより「真空モータに送られる電力」を「漸次的に」変化させることは、当業者が容易に想到し得たことである。よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
(9)作用効果について
前記相違点1ないし3を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1又は2並びに引用発明3又は周知技術が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(10)まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明1又は2並びに引用発明3又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年12月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~14に係る発明は、令和4年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1、5、7及び8、又は、引用文献2、5、7及び8に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献の記載、引用発明及び技術事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2、5、7及び8の記載、引用発明1、2及び3並びに引用文献7~8に記載された技術事項は、前記第2[理由]2(2)~(6)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的負荷が前記閾値を超えて上昇するときに所定の上電力レベルへ漸次的に増加させ、あるいは、前記電気的負荷が前記閾値を超えて下降するときに所定の下電力レベルへ漸次的に減少させるように構成されている」という限定的事項を「前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を、前記電気的負荷が前記閾値よりも大きい場合に所定の上電力レベルへ増加させ、あるいは、前記電気的負荷が前記閾値より小さい場合に所定の下電力レベルへ減少させるように構成され、前記コントローラが、前記真空モータに送られる電力を前記上電力レベルまたは前記下電力レベルまで漸次的に調整するように構成されている」に拡張したものである。
そうすると、本件補正発明が、前記第2[理由]2(7)に記載したとおり、引用発明1又は2並びに引用発明3又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1又は2並びに引用発明3又は周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020897