特許拒絶査定不服審判
2022-015009
測定システムおよび測定システム用プログラム
- 審判番号
- 2022-015009
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-211985
- 請求日
- 2022年09月22日
- 審決日
- 2023年09月13日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日置電機株式会社
- 【請求人代理人】酒井 伸司
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 田邉 英治
- 審判官 九鬼 一慶
- 分類
- P18 .121-Z (G01R) / P18 .575-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-211985「測定システムおよび測定システム用プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年3月18日出願公開、特開2021-43229〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成28年10月24日(優先権主張 平成28年4月27日)に出願した特願2016-207496号の一部を令和2年12月22日に新たな特許出願としたものであって、本願の出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 1月20日 :上申書、手続補正書の提出
令和3年12月15日付け:拒絶理由通知書
令和4年 2月28日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月28日 :原査定の謄本の送達)
同年 9月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年9月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月22日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年9月22日にされた特許請求の範囲の請求項1についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正するものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和4年2月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
開始スイッチおよび終了スイッチを有する操作部と、導電路を介して負荷に供給されている電力量を演算する演算部と、当該演算部によって演算された前記電力量に基づいて積算電力量を演算すると共に予め規定されたデータ生成条件が満たされたときに測定結果データを生成する処理部とを備えた測定システムであって、
前記積算電力量を表示可能な表示部を備え、
前記処理部は、前記開始スイッチが操作されたときに、前記演算部によって演算された前記電力量に基づく積算電力量の演算を開始し、前記終了スイッチが操作されたときに、前記積算電力量の演算を終了し、前記データ生成条件が満たされたときに、演算した前記積算電力量と、前記開始スイッチが操作されてから前記終了スイッチが操作されるまでの間に演算されるべき基準積算電力量とを含ませて前記測定結果データを生成すると共に、前記終了スイッチが操作されるまで前記積算電力量を前記表示部に表示させずに、当該終了スイッチが操作されたときに当該積算電力量を当該表示部に表示させる測定システム。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
開始スイッチおよび終了スイッチを有する操作部と、電力量計が設置された導電路を介して負荷に供給されている電力量を当該電力量計とは別個に演算する演算部と、当該演算部によって演算された前記電力量に基づいて積算電力量を演算すると共に予め規定されたデータ生成条件が満たされたときに測定結果データを生成する処理部とを備えた測定システムであって、
前記積算電力量を表示可能な表示部を備え、
前記処理部は、前記開始スイッチが操作されたときに、前記演算部によって演算された前記電力量に基づく積算電力量の演算を開始し、前記終了スイッチが操作されたときに、前記積算電力量の演算を終了し、前記データ生成条件が満たされたときに、演算した前記積算電力量と、前記開始スイッチが操作されてから前記終了スイッチが操作されるまでの間に演算されるべき基準積算電力量とを含ませて前記測定結果データを生成すると共に、前記終了スイッチが操作されるまで前記積算電力量を前記表示部に表示させずに、当該終了スイッチが操作されたときに当該積算電力量を当該表示部に表示させる測定システム。」
2 本件補正の目的
前記のとおり、本件補正による請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1の「導電路」について「電力量計が設置された導電路」と限定するとともに、「負荷に供給されている電力量を演算する演算部」について「負荷に供給されている電力量を当該電力量計とは別個に演算する演算部」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件
前記のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開平10-10218号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した(以下同様)。
【0001】-【0005】、【図2】、【図3】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、計量器用多能標準器を用いて電力量計の誤差測定を実施する場合に、電力量計の円板回転数を自動的に検出して標準器へ入力するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】需要家に新規に電力量計を設置する場合や、既に設置されている電力量計の点検のために、電力量計の測定誤差を検査しようとすると、従来は、計量器用多能標準器を用いることにより電力量計の測定値と標準器の測定値を比較して測定誤差を求めていた。図2は、従来における電力量計と計量器用多能標準器の接続例を示す図であり、計器試験用開閉器(コネクタ)1に測定対象の電力量計2の端子部3を接続するとともに、開閉器1に実負荷試験プラグ(リード線)4を介して計量器用多能標準器5を接続する。さらにこの標準器5には、スナップスイッチ6を接続しておく。
【0003】図3は、計量器用多能標準器5の構成を示すブロック図であり、図示されように、PT・CT7から出力された電圧・電流がそれぞれ、電源8、電力・無効電力A/D変換部9、電圧・電流A/D変換部10へ送られる。次いで、電力・無効電力A/D変換部9からは、電力パルス、無効電力パルスが出力されて演算部・表示部11へ送られる。同じく、電圧・電流A/D変換部10からは、電圧パルス、電流パルスが出力されて演算部・表示部11へ送られる。演算部・表示部11は、入力された各パルスをスナップスイッチ6からの入力タイミングにもとづいて計数するとともに、その計数値から電力量を算出して表示する。
【0004】また、これらの計量器用多能標準器5を用いた具体的な測定手順は、以下のように行われる。先ず、負荷1s,1lに装着されているPTまたはCTを、開閉器1に接続することにより、被測定電圧・電流を、開閉器1を介して電力量計2と標準器5へ入力させる。ここでは、全く同一の値の被測定電圧・電流が電力量計2と標準器5とへ入力される。次に、測定者が電力量計2のガラスカバー内の円板(図示せず)の回転をみながら、円板の試験票(図示せず、黒色のマーカー)の通過を確認したときに、スナップスイッチ6を操作して、測定開始信号を標準器5へ送る。引き続き、測定者は試験票の通過の回数を数え、通過の回数が所定回数に達した時点で、再度スナップスイッチ6を操作して測定終了信号を標準器5へ送る。
【0005】標準器5は、測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力する。また、このときの電力量計2による計量値は、電力量計の1kWh当たりの円板の回転数すなわち計器定数が既知であることから、カウントした円板の回転数をその計器定数で除算することにより算出される。次に、それぞれ求められた計量値を比較して、電力量計2の計量誤差を算出し、その誤差が許容範囲以内である場合は、測定された電力量計は良品と判定される。なお、電力量計2についての計量値の算出は、標準器5に備えられたキー入力手段により、回転数と計器定数を入力して設定することにより、標準器5により自動的に算出され、誤差とともに表示される。」
「【図2】
[図:0001404329000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001404329000002.jpg]
」
イ 引用発明の認定
前記アにおいて摘記した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「電力量計の測定誤差を検査するための構成として、(【0002】)
計器試験用開閉器(コネクタ)1に測定対象の電力量計2の端子部3を接続するとともに、開閉器1に実負荷試験プラグ(リード線)4を介して計量器用多能標準器5を接続し、(【0002】)
計量器用多能標準器5にはスナップスイッチ6を接続しておき、(【0002】)
計量器用多能標準器5の構成として、PT・CT7から出力された電圧・電流がそれぞれ、電力・無効電力A/D変換部9、電圧・電流A/D変換部10へ送られ、電力・無効電力A/D変換部9からは、電力パルス、無効電力パルスが出力されて演算部・表示部11へ送られ、電圧・電流A/D変換部10からは、電圧パルス、電流パルスが出力されて演算部・表示部11へ送られ、演算部・表示部11は、入力された各パルスをスナップスイッチ6からの入力タイミングにもとづいて計数するとともに、その計数値から電力量を算出して表示するものであり、(【0003】)
計量器用多能標準器5を用いた測定手順として、負荷1s,1lに装着されているPTまたはCTを、開閉器1に接続することにより、被測定電圧・電流を、開閉器1を介して電力量計2と標準器5へ入力させ、測定者が電力量計2のガラスカバー内の円板の回転をみながら、円板の試験票(黒色のマーカー)の通過を確認したときに、スナップスイッチ6を操作して、測定開始信号を標準器5へ送り、測定者は試験票の通過の回数を数え、通過の回数が所定回数に達した時点で、再度スナップスイッチ6を操作して測定終了信号を標準器5へ送り、標準器5は、測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力し、このときの電力量計2による計量値は、カウントした円板の回転数を既知の計器定数で除算することにより算出され、それぞれ求められた計量値を比較して、電力量計2の計量誤差を算出し、電力量計2についての計量値の算出は、回転数と計器定数を入力して設定することにより、標準器5により自動的に算出され、誤差とともに表示されることが行われる、(【0004】~【0005】)
電力量計の測定誤差を検査するための構成。(【0002】)」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「スナップスイッチ6」は、「スナップスイッチ6を操作して、測定開始信号を標準器5へ送」るとともに、「スナップスイッチ6を操作して測定終了信号を標準器5へ送」るものであり、測定開始のためのスイッチ及び測定終了のためのスイッチとして機能するものであるから、本件補正発明の「開始スイッチおよび終了スイッチを有する操作部」に相当する。
b 引用発明では、「負荷1s,1lに装着されているPTまたはCTを、開閉器1に接続することにより、被測定電圧・電流を、開閉器1を介して電力量計2」「へ入力させ」るから、負荷1s,1lに電力が供給されている「導電路」に、電力量計2へ被測定電圧・電流を入力させるPTまたはCTが設置されており、電力量計2が設置された「導電路」を介して負荷1s,1lに電力が供給されていることは明らかである。
そして、引用発明における「計量器用多能標準器5」は、「PT・CT7から出力された電圧・電流がそれぞれ、電力・無効電力A/D変換部9、電圧・電流A/D変換部10へ送られ、電力・無効電力A/D変換部9からは、電力パルス、無効電力パルスが出力されて演算部・表示部11へ送られ、電圧・電流A/D変換部10からは、電圧パルス、電流パルスが出力されて演算部・表示部11へ送られ、演算部・表示部11は、入力された各パルスをスナップスイッチ6からの入力タイミングにもとづいて計数するとともに、その計数値から電力量を算出」するものであるから、電力量を電力量計2とは別個に算出するものである。また、「負荷1s,1lに装着されているPTまたはCTを、開閉器1に接続することにより、被測定電圧・電流を、開閉器1を介して」「標準器5へ入力させ」ているから、引用発明における「計量器用多能標準器5」は、電力量計2が設置された導電路を介して負荷1s,1lに供給されている電力量を、算出するものである。
そうすると、引用発明の「計量器用多能標準器5」において「電力量を算出」する構成である「演算部・表示部11」は、本件補正発明の「電力量計が設置された導電路を介して負荷に供給されている電力量を当該電力量計とは別個に演算する演算部」に相当する。
c(a) 引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」は、「入力された各パルスをスナップスイッチ6からの入力タイミングにもとづいて計数するとともに、その計数値から電力量を算出」すると共に、「測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力」するものでもあるから、本件補正発明の「当該演算部によって演算された前記電力量に基づいて積算電力量を演算する」「処理部」にも相当する。
(b) 引用発明は、「再度スナップスイッチ6を操作して測定終了信号を標準器5へ送り、標準器5は、測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力し」、「誤差とともに表示されることが行われる」ものである。
ここで、本件補正発明の「予め規定されたデータ生成条件が満たされたときに測定結果データを生成する処理部」に関し、本件明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0182】
したがって、負荷に対する電力供給が継続していることで計量用円板が回転している電力量計Mの像を含む測定対象像53cを見ながら、計量用円板のマーク付与部(例えば、赤色の着色が施された部位)が電力量計Mの真正面に位置したときに、測定対象像53cの表示部位に対するタッチ操作を行う(「終了スイッチが操作されたとき」の一例)。この際に、処理部26は、「終了スイッチ」の操作が行なわれたと判別し(ステップ94)、積算電力量の演算を終了させる旨を示す制御データD21を通信部22aから電力計1に送信させる(ステップ95)。
【0183】
一方、電力計1では、処理部16が、上記の制御データD21が通信部12によって受信されたときに、処理部16が、積算電力量の演算処理の終了を指示する制御データD21が携帯情報端末2から送信されたと判別する(ステップ83)。この際に、処理部16は、電力量(電力量データDwの値)に基づく積算電力量の演算(積算電力量データDtの更新)を終了すると共に、積算電力量の演算を終了した旨を報知するブザー音をスピーカ15から出力させ、かつ、最新の積算電力量データDtを通信部12から携帯情報端末2に送信させる(ステップ84)。この後、処理部16は、携帯情報端末2に送信した積算電力量データDtの値を表示部14に表示させて測定処理80を終了する。」
「【0185】
次いで、処理部26は、電力計1から積算電力量データDtが送信されたか否かを監視する(ステップ97)。この際に、電力計1から送信された上記の積算電力量データDtが通信部22aによって受信されたときに(「予め規定されたデータ生成条件が満たされたとき」の一例)、処理部26は、その積算電力量データDtを記憶部27に記憶させ、図9に示す測定結果表示50Aを「測定結果」として表示部24に表示させると共に(ステップ98)、報告書データDr(「測定結果データ」の一例)を生成する(ステップ99)。なお、本例の測定システム100(携帯情報端末2)では、一例として、測定結果表示50Aのデータ(測定結果表示50Aを表示させるためのデータ)を報告書データDrとして生成する構成が採用されている。」
これらの記載からすると、本件補正発明の「予め規定されたデータ生成条件が満たされたとき」とは、終了スイッチの操作に従い、積算電力量の演算が終了されたことに応じて、電力計1から積算電力量データDtが送信されたこと、すなわち、終了スイッチの操作に従い、電力計1が、積算電力量データDtを出力することを含むものである。
そして、引用発明は、測定終了信号を標準器5へ送るためのスナップスイッチ6の操作に応じて、「測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力」するものであるから、引用発明において「測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力」するときは、本件補正発明の「予め規定されたデータ生成条件が満たされたとき」に相当する。
(c) 引用発明の標準器5が算出する「電力量」は、「測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算」することで、算出されるものであるから、本件補正発明の「測定結果データ」に相当する。
(d) 前記(a)~(c)を踏まえると、引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」と、本件補正発明の「処理部」とは、「当該演算部によって演算された前記電力量に基づいて積算電力量を演算すると共に予め規定されたデータ生成条件が満たされたときに測定結果データを生成する」ものである点で一致する。
d 引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」は、「入力された各パルスをスナップスイッチ6からの入力タイミングにもとづいて計数するとともに、その計数値から電力量を算出して表示する」ものであり、「標準器5は、測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力」するものであるから、この積算された電力量が、演算部・表示部11に表示されると解するのが自然である。
そうすると、引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」は、本件補正発明の「前記積算電力量を表示可能な表示部」に相当する。
e(a) 引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」は、「入力された各パルスをスナップスイッチ6からの入力タイミングにもとづいて計数する」ものであり、「標準器5は、測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力」するものである。
そうすると、引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」と、本件補正発明の「処理部」とは、「前記開始スイッチが操作されたときに、前記演算部によって演算された前記電力量に基づく積算電力量の演算を開始し、前記終了スイッチが操作されたときに、前記積算電力量の演算を終了」するものである点で一致する。
(b) 引用発明における、「測定開始信号の入力から測定終了信号の入力まで」とは、「測定者が電力量計2のガラスカバー内の円板の回転をみながら、円板の試験票(黒色のマーカー)の通過を確認したときに、スナップスイッチ6を操作して、測定開始信号を標準器5へ送り、測定者は試験票の通過の回数を数え、通過の回数が所定回数に達した時点で、再度スナップスイッチ6を操作して測定終了信号を標準器5へ送」ることにより定められる、スナップスイッチ6が操作されてから、再度スナップスイッチ6が操作されるまでの期間である。そして、引用発明において、「標準器5は、測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力」するときに、「このときの電力量計2による計量値は、カウントした円板の回転数を既知の計器定数で除算することにより算出され」るものであることから、「このときの電力量計2による計量値」は、スナップスイッチ6が操作されてから、再度スナップスイッチ6が操作されるまでの期間において、円板の回転の所定回数と、既知の計器定数に基づいて得られる、所定回数の設定に応じて決定される積算電力量となる。そうすると、引用発明の「このときの電力量計2による計量値」は、本件補正発明の「前記開始スイッチが操作されてから前記終了スイッチが操作されるまでの間に演算されるべき基準積算電力量」に相当する。
(c) 引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」は、「入力された各パルスをスナップスイッチ6からの入力タイミングにもとづいて計数するとともに、その計数値から電力量を算出して表示する」ものであり、「標準器5は、測定開始信号の入力から測定終了信号の入力までの被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力」するのであるから、この積算した電力量を算出することは、測定終了信号が入力された入力タイミングに応じて算出されると解するのが自然である。そうすると、引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」で表示される積算した電力量については、測定終了信号が入力された入力タイミングで初めて表示されるものであり、測定終了信号が入力されるまでは電力量が算出されておらず、表示することができないのであって、このことは、本件補正発明において「前記終了スイッチが操作されるまで前記積算電力量を前記表示部に表示させずに、当該終了スイッチが操作されたときに当該積算電力量を当該表示部に表示させる」ことに相当する。
(d) 前記(a)~(c)を踏まえると、引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」は、本件補正発明の「処理部」と、「前記処理部は、前記開始スイッチが操作されたときに、前記演算部によって演算された前記電力量に基づく積算電力量の演算を開始し、前記終了スイッチが操作されたときに、前記積算電力量の演算を終了し、前記データ生成条件が満たされたときに、前記開始スイッチが操作されてから前記終了スイッチが操作されるまでの間に演算されるべき基準積算電力量を生成すると共に、前記終了スイッチが操作されるまで前記積算電力量を前記表示部に表示させずに、当該終了スイッチが操作されたときに当該積算電力量を当該表示部に表示させる」点で共通する。
f 引用発明の「電力量計の測定誤差を検査するための構成」は、「被測定電圧・電流を積算して電力量を算出して出力」する「標準器5」を含むものであるから、本件補正発明の「測定システム」に相当する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
a 一致点
「開始スイッチおよび終了スイッチを有する操作部と、電力量計が設置された導電路を介して負荷に供給されている電力量を当該電力量計とは別個に演算する演算部と、当該演算部によって演算された前記電力量に基づいて積算電力量を演算すると共に予め規定されたデータ生成条件が満たされたときに測定結果データを生成する処理部とを備えた測定システムであって、
前記積算電力量を表示可能な表示部を備え、
前記処理部は、前記開始スイッチが操作されたときに、前記演算部によって演算された前記電力量に基づく積算電力量の演算を開始し、前記終了スイッチが操作されたときに、前記積算電力量の演算を終了し、前記データ生成条件が満たされたときに、前記開始スイッチが操作されてから前記終了スイッチが操作されるまでの間に演算されるべき基準積算電力量を生成すると共に、前記終了スイッチが操作されるまで前記積算電力量を前記表示部に表示させずに、当該終了スイッチが操作されたときに当該積算電力量を当該表示部に表示させる測定システム。」
b 相違点
相違点:本件補正発明は、「演算した前記積算電力量と、前記開始スイッチが操作されてから前記終了スイッチが操作されるまでの間に演算されるべき基準積算電力量とを含ませて前記測定結果データを生成」するものであるのに対し、引用発明では、標準器5が算出する「電力量」と、「このときの電力量計2による計量値」とを含ませたデータとして生成されるのか明らかでない点。
イ 判断
前記相違点について検討する。
前記ア(ア)dで示したとおり、引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」は、標準器5が算出した「電力量」を表示するものである。
また、引用発明は、「電力量計2についての計量値の算出は、回転数と計器定数を入力して設定することにより、標準器5により自動的に算出され、誤差とともに表示されることが行われる」ものであり、「電力量計2についての計量値」も表示されるものである。
これらの表示される値である「電力量」と「電力量計2についての計量値」を、併せて表示しようとすることは、当業者であれば適宜になし得た程度のことである。
してみれば、上記のような表示のためには、引用発明において、「電力量計2の計量値」と「電力量」とを含むデータの生成が必要であることは自明であるから、前記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得た範囲内のことである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、引用発明から当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
(ア) 審判請求書の主張内容
請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
a 引用文献1に開示される「電力量計2についての計量値」は、標準器自身が被測定電圧・電流を積算した計量値(積算電力量)との誤差を算出するための基準となる値(電力量計2が正常に動作している状態において計測されるべき電力量:理想値:架空の値)であり、本願発明に係る測定システムにおいて表示される積算電力量(演算部により演算される「負荷に供給されている電力量」を積層した値:実測値)に対応するものではない。
b 引用文献1に開示の標準器では、測定開始を指示するための最初のスナップスイッチの操作後に、測定終了を指示するための2回目のスナップスイッチの操作が行われるまで「本来測定されるべき値」や「誤差」が演算されず、単に「積算電力量を特定可能な値を算出した時点で、その結果(積算電力量)を表示する」という極く一般的な構成が採用されており、このような構成は、「終了スイッチが操作されるまで積算電力量を表示部に表示させない(表示をせずに電力量を積算する処理を行う)」ことを前提とし、そのうえで、「終了スイッチが操作されたときに積算電力量を表示部に表示させる」との処理を行う請求項1記載の本願発明の構成とは異なる。
c 引用文献1には、演算部・表示部11がどのようなタイミングで電力量の算出および表示を行うかについては明示されておらず、「開始スイッチが操作されたときに、演算部によって演算された電力量に基づく積算電力量の演算を開始し」および「終了スイッチが操作されるまで積算電力量を表示部に表示させずに、終了スイッチが操作されたときに積算電力量を表示部に表示させる」との構成に関する開示や示唆が存在しない。
(イ) 請求人の主張に対する当審の判断
前記請求人の主張は、下記のとおり、いずれも採用できない。
a 前記ア(ア)e(b)で示したとおり、引用発明の「このときの電力量計2による計量値」は、本件補正発明の「前記開始スイッチが操作されてから前記終了スイッチが操作されるまでの間に演算されるべき基準積算電力量」に相当するものであり、請求人の主張はこれに反するものではない。なお、本件補正発明においては、電力量計は積算電力量を算出、表示するものではないし、前記ア(ア)e(a)で示したとおり、引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」が、本件補正発明の積算電力量の演算を行う処理部に相当するものであるから、請求人の前記主張aは、本件補正発明の構成に基づくものではなく、前記の認定、判断を左右するものではない。
b 前記ア(ア)e(a)で示したとおり、引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」は、「入力された各パルスをスナップスイッチ6からの入力タイミングにもとづいて計数する」ものであるから、この計数が測定開始信号の入力から行われていることは自明であり、この計数に基づいて積算した電力量の算出が行われるのであるから、積算した電力量の演算の開始は、スナップスイッチ6の操作による測定開始信号の入力の時点であることは明らかであり、請求人が主張するような「測定終了を指示するための2回目のスナップスイッチの操作が行われるまで『本来測定されるべき値』や『誤差』が演算され」ないものではなく、請求人の主張bは採用できない。
c 前記bで述べたように、前記ア(ア)e(a)で示したとおり、引用発明の「計量器用多能標準器5」における「演算部・表示部11」は、「入力された各パルスをスナップスイッチ6からの入力タイミングにもとづいて計数する」ものであるから、この計数が測定開始信号の入力から行われていることは自明であり、この計数に基づいて積算した電力量の算出が行われるのであるから、積算した電力量の演算の開始は、スナップスイッチ6の操作による測定開始信号の入力の時点であることは明らかである。
また、引用発明は、電力量計の測定誤差を検査するために、電力量計の測定値と計量器用多能標準器の測定値を比較するものであって、引用発明において積算した電力量は、再度スナップスイッチ6を操作して測定終了信号を標準器5へ送った後に電力量計2の計量誤差を算出するために用いられるものである。
引用文献1においては、再度スナップスイッチ6を操作する前に、積算した電力量を表示することは記載も示唆もされておらず、また、そのようなことを行う技術的意義も示されていないのであるから、引用発明においてそのような動作をする理由もない。また仮にそうでないとしても、積算電力量の表示をどのようなタイミングで行うかは、システムの使用状況などに応じて適宜選択されるべき設計事項にすぎない。
そうすると、請求人の主張cも採用することはできない。
エ 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~10に係る発明は、令和4年2月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由2(進歩性)のうち、請求項1に係るものは、概略次のとおりである。
理由2(進歩性)
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開平10-10218号公報
3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、前記第2の3(2)イにおいて認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
4 対比・判断
(1) 本願発明は、本件補正発明における、「導電路」について「電力量計が設置された導電路」とする限定、及び、「負荷に供給されている電力量を演算する演算部」について「負荷に供給されている電力量を当該電力量計とは別個に演算する演算部」とする限定を省いたものである(前記第2の2参照)。
(2) そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-015009