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特許拒絶査定不服審判

2024-011237

電流検出装置および電流測定装置

審判番号
2024-011237
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-202849
請求日
2024年07月08日
審決日
2026年03月11日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日置電機株式会社
  • 【請求人代理人】酒井 伸司
審判長/審判官
  • 審判長 道祖土 新吾
  • 審判官 濱野 隆
  • 審判官 柳 重幸
分類
P18 .121-Z (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-202849号「電流検出装置および電流測定装置」拒絶査定不服審判事件〔令和5年2月16日出願公開、特開2023-24575号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、平成30年4月3日に出願した特願2018-71395号の一部を令和4年12月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和4年12月26日 :上申書、手続補正書の提出 令和5年11月 7日付け:拒絶理由通知書 令和6年 3月12日 :意見書、手続補正書の提出 同年 4月 5日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月 9日 :原査定の謄本の送達) 同年 7月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出 2 本願発明について (1) 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年7月8日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 「ロゴスキーコイルを用いて構成されて測定対象に流れる電流を検出して当該電流の電流値に対応する検出信号を出力する電流センサと、分布定数線路で構成されて前記検出信号を伝送する伝送線路と、前記電流センサおよび前記伝送線路の間に積分器を介さずに設けられたインピーダンス変換回路と、前記伝送線路を介して入力した前記検出信号を積分して前記電流の電流値を示す出力信号を出力する積分回路とを備えた電流検出装置であって、 前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい抵抗値を有し当該伝送線路と前記積分回路との間に設けられた抵抗回路を備え、 前記インピーダンス変換回路は、前記伝送線路を出力端に接続して入力端から見たときに前記電流センサの特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい入力インピーダンスを有し、かつ前記電流センサを前記入力端に接続して前記出力端から見たときに前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい出力インピーダンスを有している電流検出装置。」 (2) 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Fまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】及び【図3】を符号の説明とともに掲載する。 <本願発明の分説> A ロゴスキーコイルを用いて構成されて測定対象に流れる電流を検出して当該電流の電流値に対応する検出信号を出力する電流センサと、 B 分布定数線路で構成されて前記検出信号を伝送する伝送線路と、 C 前記電流センサおよび前記伝送線路の間に積分器を介さずに設けられたインピーダンス変換回路と、 D 前記伝送線路を介して入力した前記検出信号を積分して前記電流の電流値を示す出力信号を出力する積分回路とを備えた X 電流検出装置であって、 E 前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい抵抗値を有し当該伝送線路と前記積分回路との間に設けられた抵抗回路を備え、 F 前記インピーダンス変換回路は、前記伝送線路を出力端に接続して入力端から見たときに前記電流センサの特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい入力インピーダンスを有し、かつ前記電流センサを前記入力端に接続して前記出力端から見たときに前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい出力インピーダンスを有している X 電流検出装置。 <参考図> 【図1】 [図:0001434697000001.jpg] 【図3】 [図:0001434697000002.jpg] 【符号の説明】 1 電流測定装置 2 電流センサ 3 インピーダンス変換回路 4 接続ケーブル 5 抵抗回路 6 積分回路 7 測定回路 4a 一端部 50 電線 I 電流 Iv 電流値 S1 検出信号 (3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところが、出願人が開示している上記の測定装置には、改善すべき以下の課題がある。具体的には、この測定装置では、上記したように、ロゴスキーコイルにダンピング抵抗を接続して周波数特性におけるピークの発生を抑制して使用可能帯域を広げ、この使用可能帯域において測定電流の電流波形に対応した電圧波形の電圧信号を出力することを可能としている。しかしながら、上記の測定装置では、ロゴスキーコイルの特性インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの不整合による反射の影響や、伝送線路の特性インピーダンスと積分器の入力インピーダンスとの不整合による反射の影響に起因して、高い周波数領域における周波数特性の平坦性が損なわれることがある。また、このような反射の影響は、伝送線路が長いほど顕著となる。このため、上記の測定装置には、伝送線路の長さによっては、高周波電流の電流値を正確に測定することが困難なことがあり、その改善が望まれている。 【0005】 本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、伝送線路の長さに拘わらず測定対象に流れる高い周波数の電流の電流値を正確に測定し得る電流センサおよび電流測定装置を提供することを主目的とする。」 「【0011】 請求項1記載の電流検出装置、および請求項3記載の電流測定装置によれば、伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい抵抗値を有し伝送線路と積分回路との間に設けられた抵抗回路を備えたことにより、抵抗回路の抵抗値が伝送線路の特性インピーダンスと異なることによる反射の影響を伝送線路の長さに拘わらず十分に低減することができる。このため、この電流検出装置および電流測定装置によれば、伝送線路の長さに拘わらず高い周波数領域における周波数特性の平坦性を確保することができる結果、伝送線路の長さに拘わらず測定対象に流れる高い周波数の電流の電流値を正確に測定することができる。」 3 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由1(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.米国特許第6614218号明細書(主たる引用文献) 引用文献2.特開2013-76569号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3.中国特許出願公開第101871975号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献4.中国実用新案第202453415号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献5.中国特許出願公開第104459276号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献6.中国特許出願公開第1731194号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献7.国際公開第2010/095086号(周知技術を示す文献) 引用文献8.安本勝ほか7名,今後に求められる測候所接地線の落雷電流観測と雷対策,日本,富士山測候所を活用する会第10回成果報告会,2017年03月05日(周知技術を示す文献) 4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (1) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である米国特許第6614218号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 なお、翻訳文は当合議体によるものであり、下線は当合議体により付したものである。以下同様である。 ア 6欄7~67行、FIG.6、FIG.3、FIG.4 「FIG. 6 is a circuit diagram of a current measuring system that comprises four parts-a Rogowski coil 30, a coaxial connecting cable 32, a passive integrator hereinafter referred to as the terminating network of which the first part 34 is at the coil end of the coaxial cable and the second part 36 is at the other end, and a non-inverting electronic integrator 38 hereinafter referred to as the integrator. Typically, the first part 34 of the terminating network is contained within a hollow space in the end of the coil former or within the plastic ferrule 20 to which the fixed end 16 of the Rogowski coil 10 is attached. The cable 24 connects the first part 34 of the terminating network to the second part 36 of the terminating network which is situated at the input of the electronic integrator 38. The Rogowski coil 30 is represented by its equivalent circuit comprising an induced voltage source E proportional to the rate of change of the current to be measured, an inductance L and a capacitance C. The terminal 40 of the equivalent circuit corresponds to the aforesaid fixed end 16 of the coil and the terminal 42 corresponds to the connection via the axial return conductor 14 from the free end 12 of the coil. The terminal 40 is connected to the screen of the coaxial cable and the terminal 44 is connected to the inner conductor of the coaxial cable 32. At the other end of the cable 32, the cable screen is connected to the common terminal 46 of the integrator and the cable 32 inner conductor is connected to the non-inverting input 48 of the operational amplifier. The operational amplifier is powered from positive and negative voltage sources +VS and -VS with respect to the common terminal 46 of the integrator. The coaxial cable 32 has a distributed capacitance CC that is shown as a single capacitor. A capacitor CA may be connected across the coil end of the cable and a capacitor CB in parallel with a variable capacitor CV across the integrator end of the cable such that in combination these add to give a total equivalent capacitance C0=CA+CC+CB+CV. The terminating network comprises a damping resistor RD connected across the ends of the Rogowski coil 30 and, in parallel with RD, a resistor R0 in series with the combined capacitance C0. It is preferable that the total capacitance C0 for the terminating network other than CC is at the integrator end of the cable (ie CA=0). The Rogowski coil has a natural frequency wB=1/√(LC) radians/second which represents the upper bandwidth limit for the overall transducer. In order to avoid oscillations at or around this frequency, whilst maintaining the bandwidth, it is necessary that the combined value of the resistors RD and R0 in parallel is approximately equal to √(L/C) ohms. There is some flexibility of choice of the values of RD and R0. It is generally preferable to make R0 substantially larger than RD in which case RD is set to be approximately equal to √(L/C). However in some cases, for example for transducers for measuring relatively small currents for which a relatively high sensitivity in mV/A is required, it may be desirable to minimise the value of R0 and in this case the resistor RD may be omitted and the value of R0 set to be approximately equal to √(L/C). With the Rogowski coil 30 terminated with the appropriate resistance value and for frequencies up to the bandwidth limit, the output voltage E from the coil is substantially the same as the voltage E induced in the coil by the current to be measured.」 (図6は、ロゴスキーコイル30、同軸接続ケーブル32、第1の部分34が同軸ケーブルのコイル端部にあり、第2の部分36が他端部にある受動積分器(以下「終端回路網」という。)、及び、非反転電子積分器38(以下「積分器」という。)の四つの部分を備える電流測定システムの回路図である。典型的には、終端回路網の第1の部分34は、ロゴスキーコイル10の固定端16が取り付けられるコイル巻型の端部の中空空間内又はプラスチックフェルール20内に収容される。ケーブル24(当合議体注:同軸ケーブルは、図4においては符号24として示されているが、図6においては符号32として示されているため、この段落における「ケーブル24」は「同軸ケーブル32」の誤記であると認められる。)は、終端回路網の第1の部分34を、電子積分器38の入力に位置する終端回路網の第2の部分36に接続する。 ロゴスキーコイル30は、測定される電流の変化率に比例する誘導電圧源Eと、インダクタンスLと、容量Cを含む、その等価回路によって表される。等価回路の端子40はコイルの前述の固定端16に対応し、端子42はコイルの自由端12から軸方向の戻り導体14を介した接続に対応する。端子40は同軸ケーブルのスクリーンに接続され、端子44は同軸ケーブル32の内部導体に接続されている。ケーブル32の他端では、ケーブルスクリーンは積分器の共通端子46に接続され、ケーブル32の内部導体は演算増幅器の非反転入力48に接続される。演算増幅器は、積分器の共通端子46に対して正及び負の電圧源+VS及び-VSから給電される。 同軸ケーブル32は、単一の容量として示される分布容量CCを有する。容量CAは、ケーブルのコイル端部にわたって接続されてもよく、容量CBは、ケーブルの積分器端部にわたって可変容量CVと並列に接続されてもよく、組み合わせて、これらは合計等価容量C0=CA+CC+CB+CVを与える。終端回路網は、ロゴスキーコイル30の両端間に接続された減衰抵抗器RDと、RDと並列の、合成容量C0と直列の抵抗器R0を備える。CCを除く終端回路網の全キャパシタンスC0は、ケーブルの積分器端にあること(すなわち、CA=0)が好ましい。 ロゴスキーコイルは、変換器全体の帯域幅の上限を表す固有周波数wB=1/√(LC)ラジアン/秒を有する。帯域幅を維持しながら、この周波数又はその付近の周波数での発振を避けるために、並列の抵抗器RD及びR0の合成値が√(L/C)オームにほぼ等しいことが必要である。 RD及びR0の値の選択には、いくらか融通がきく。一般に、R0をRDよりも実質的に大きくすることが好ましく、その場合、RDは√(L/C)にほぼ等しくなるように設定される。しかしながら、場合によっては、例えば、mV/A単位の比較的高い感度が必要とされる比較的小さい電流を測定するための変換器では、R0の値を最小限に抑えることが望ましい場合があり、この場合、抵抗器RDを省略して、R0の値を√(L/C)にほぼ等しくなるように設定することができる。 ロゴスキーコイル30が適切な抵抗値で終端され、帯域幅限界までの周波数に対して、コイルからの出力電圧Eは、測定される電流によってコイルに誘導される電圧Eと実質的に同じである。) 「 [図:0001434697000003.jpg] 」 「 [図:0001434697000004.jpg] 」 イ 9欄19~47行、FIG.8 「A further modification of the circuit of FIG. 6 is shown in FIG. 8. It is standard practice with a communication cable to terminate it with its characteristic impedance by connecting a resistance of this value directly across the receiving end of the cable. This avoids the possibility of high frequency oscillations due to signal reflections from the receiving end. However, to apply this technique to the circuit of FIG. 6 would significantly attenuate the signal due to the series resistance R0 which is likely to be significantly greater than the characteristic impedance (typically 50 ohms) of the cable. In order to avoid this attenuation whilst still terminating the connecting cable 32 with an impedance which matches the characteristic impedance of the cable an additional resistor R3 is inserted between the connecting cable and the passive integration capacitors CB, CV in the second part 36 of the terminating network. At high frequencies the capacitors CB and CV have an impedance substantially lower than the resistance R3 and therefore at high frequencies R3 is effectively connected across the receiving end of the cable thereby providing the desired terminating impedance. The value of R3 is arranged to be substantially the same as the characteristic impedance of the connecting cable, typically 50 ohms or 75 ohms. The value of R0 (see FIG. 6) is preferably arranged to be substantially greater than R3 such that, in comparison with R0, R3 has an insignificant effect on the time constant of the passive integrator, T0=C0R0, as given by equation (3). The additional presence of R3 therefore does not undermine the desired passive integration of the terminating network 34, 36 of FIG. 6.」 (図6の回路の更なる変形例が図8に示される。通信ケーブルにおいては、通信ケーブルの特性インピーダンスの値の抵抗をケーブルの受信端に直接接続することによって終端することが標準的に行われている。これにより、受信端からの信号反射による高周波振動の可能性が回避される。しかしながら、この技術を図6の回路に適用することは、ケーブルの特性インピーダンス(典型的には50オーム)よりも著しく大きい可能性が高い直列抵抗R0に起因して信号を著しく減衰させることになる。ケーブルの特性インピーダンスに整合するインピーダンスで接続ケーブル32を終端しながらこの減衰を回避するために、追加の抵抗器R3が、接続ケーブルと終端回路網の第2の部分36内の受動集積容量CB、CVとの間に挿入される。高周波数では、容量CB及びCVは、抵抗R3よりも実質的に低いインピーダンスを有し、したがって、高周波数では、R3は、ケーブルの受信端にわたって効果的に接続され、それによって所望の終端インピーダンスを提供する。 R3の値は、典型的には50オーム又は75オームである接続ケーブルの特性インピーダンスと実質的に同じになるように構成される。R0(図6参照)の値は、式(3)のように、R0と比較してR3が受動積分器の時定数T0=C0R0にわずかな影響しか与えないように、R3よりも実質的に大きく構成されることが好ましい。したがって、R3の追加の存在は、図6の終端回路網34、36の所望の受動積分器を損なうことはない。) 「 [図:0001434697000005.jpg] 」 (2) 引用発明の認定 前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献1には、図8に示された変形例に係る発明として、次の引用発明が記載されていると認められる。認定に際して「同軸接続ケーブル」「同軸ケーブル」「接続ケーブル」などの表記乱れを「同軸ケーブル」に統一している。 なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「ロゴスキーコイル30、同軸ケーブル32、第1の部分34が同軸ケーブルのコイル端部にあり、第2の部分36が他端部にある受動積分器(以下「終端回路網」という。)、及び、非反転電子積分器38(以下「積分器」という。)の四つの部分を備える電流測定システムであって、(6欄7~67行) 終端回路網の第1の部分34は、ロゴスキーコイル10の固定端16が取り付けられるコイル巻型の端部の中空空間内又はプラスチックフェルール20内に収容され、(6欄7~67行) 同軸ケーブル32は、終端回路網の第1の部分34を、電子積分器38の入力に位置する終端回路網の第2の部分36に接続し、(6欄7~67行) ロゴスキーコイル30は、測定される電流の変化率に比例する誘導電圧源Eと、インダクタンスLと、容量Cを含む、その等価回路によって表され、(6欄7~67行) 同軸ケーブル32は、単一の容量として示される分布容量CCを有し、容量CAは、同軸ケーブルのコイル端部にわたって接続されてもよく、容量CBは、同軸ケーブルの積分器端部にわたって可変容量CVと並列に接続されてもよく、組み合わせて、これらは合計等価容量C0=CA+CC+CB+CVを与え、終端回路網は、ロゴスキーコイル30の両端間に接続された減衰抵抗器RDと、RDと並列の、合成容量C0と直列の抵抗器R0を備え、CCを除く終端回路網の全キャパシタンスC0は、同軸ケーブルの積分器端にあり(すなわち、CA=0)、(6欄7~67行) 追加の抵抗器R3が、同軸ケーブルと終端回路網の第2の部分36内の受動集積容量CB、CVとの間に挿入され、R3の値は、同軸ケーブルの特性インピーダンスと実質的に同じになるように構成される、(9欄19~47行) 電流測定システム。」 5 引用文献8の記載事項及び周知技術の認定 (1) 引用文献8に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である「今後に求められる測候所接地線の落雷電流観測と雷対策」安本勝ほか7名、富士山測候所を活用する会第10回成果報告会、2017年3月5日、オーラルセッションO-05(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。 「2-2 実施した工夫 2016年度測定は,昨年度の直撃雷測定を受けて直撃雷のより正確な雷現象が観測可能にするための工夫をした. 一つは○1(当合議体注:○の中に符号1があることを示す。)直撃雷全電流を測定可能にし,山麓に繋がる接地線の測定電流の校正を可能にすることである.山麓に繋がる接地線は複数であり,また測候所から直接富士山体に流れる電流もあり,山麓に繋がる1線の接地線電流を測定するだけでは測候所被雷電流を知ることはできない.被雷電流の内どの程度被測定高圧ケーブル内接地線に流れるのか知る必要がある.そのため,図2に示すように接地線電流測定と同時に被雷電流も測定することで接地線電流測定値は測候所被雷電流に校正可能である.被雷電流を測定可能にする方法として,被雷頻度が高いと考えられる観測塔にさら仮設避雷針を設けることで被雷個所を一つにでき,校正可能機会を高めることができる. 被雷電流検出用ロゴウスキーコイルと電流増幅器との間は長距離になるため,インピーダンス整合していないとケーブル両端で反射が生じ正確な信号伝達ができなくなる.そのため,ケーブル両端でインピーダンス整合が必要になる.この実現に図3(a)に示すように反射が生じないようにするためロゴウスキーコイル出力インピーダンスと増幅器入力インピーダンスは伝送路ケーブルの特性インピーダンスに合わせるようにした.」 「 [図:0001434697000006.jpg] 当合議体注:図3(a)の「赤点線」とは図中右側の外形が矩形状の点線のことであり、図3(b)の「赤部品」とは、図中の「低浮遊容量低電圧作動避雷器」なる文言から延びる矢印が示す部品と、2つのダイオードを並列かつ互いに異なる向きに接続して成された部品を示す。」 (2) 周知技術の認定 前記(1)に摘記した引用文献8の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知であったと認められる。(以下「周知技術1」という。) <周知技術1> 「電流センサにおいて、電流センサと同軸ケーブルの間のインピーダンス整合をとること。」 6 引用文献9の記載事項及び技術常識の認定 (1) 引用文献9に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開昭62-179125号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。 (3頁左欄2行~右欄10行) 「本実施例の以上のような構成において、検査対象集積回路のある特定の信号出力端子と、それに係わる測定装置側の信号入力端子との間に、例えばインピーダンス整合を実現したい場合には、探針部を形成する同軸ケーブル5に集積回路側の出力インピーダンスZoに等しい特性インピーダンスを有する同軸ケーブルを用い、インターフェイス回路6を、入力インピーダンスがZoで、出力インピーダンスが測定装置側の入力インピーダンスZiに等しいインピーダンス変換回路として構成し、その出力とケーブル・コネクタ8を結ぶ線路(図示せず)に特性インピーダンスZiの同軸ケーブルを用いればよい。この場合ケーブル・コネクタ8と測定装置入力端子を結ぶフレキシブルな同軸ケーブルの特性インピーダンスもZiとすべきは勿論である。 その他本発明は、測定条件に応じて上記インターフェイス回路を、増幅回路、信号減衰回路、あるいは周波数変換回路など、任意の回路に構成して実施できるのは勿論である。 〈発明の効果〉 以上の説明からわかるように、本発明によれば、検査対象集積回路と測定装置を結ぶ回路系の入出力インピーダンスを必要に応じて任意に変換することができ、同回路系における信号の反射を事実上完全に防止することが可能となるだけでなく、インターフェイス回路を適当に構成することによって、プローブ・カード上で信号の増幅および減衰を行うこともできる。」 (第1図) 「 [図:0001434697000007.jpg] 」 (2) 技術常識の認定 前記(1)に摘記した引用文献9の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。) <技術常識1> 「検査対象側と測定装置側の間に、入力インピーダンスが検査対象側の出力インピーダンスと等しく、出力インピーダンスが測定装置側の入力インピーダンスと等しいインピーダンス変換回路を設けることで、インピーダンス整合を実現して、同回路系における信号の反射を事実上完全に防止すること。」 7 本願発明と引用発明の対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点(電流検出装置について) (ア) 引用発明の「電流測定システム」は、本願発明の「電流検出装置」に相当する。 (イ) よって、本願発明と引用発明は、「電流検出装置」の発明である点において一致する。 イ 構成Aの観点(電流センサについて) (ア) 引用発明の「ロゴスキーコイル30」は、測定される電流の変化率に比例する誘導電圧源Eと、インダクタンスLと、容量Cを含む、その等価回路によって表されるところ、引用発明の「測定される電流」は、本願発明の「検出」される「測定対象に流れる電流」に相当し、引用発明の「測定される電流の変化率に比例する誘導電圧源E」に由来する「ロゴスキーコイル30」から出力される電圧信号は、本願発明の「当該電流の電流値に対応する検出信号」に相当する。 そして、引用発明においては、「ロゴスキーコイル30」から出力される電圧信号を積分することにより「電流測定」を行っていることは、明らかであるから、引用発明の「ロゴスキーコイル30」は、本願発明の「ロゴスキーコイルを用いて構成されて測定対象に流れる電流を検出して当該電流の電流値に対応する検出信号を出力する電流センサ」に相当する。 (イ) よって、本願発明と引用発明は、「ロゴスキーコイルを用いて構成されて測定対象に流れる電流を検出して当該電流の電流値に対応する検出信号を出力する電流センサ」を備える点において一致する。 ウ 構成Bの観点(伝送線路について) (ア) 引用発明の「同軸ケーブル32」は、「単一の容量として示される分布容量CCを有し」ているから、分布定数回路で構成されているといえる。 また、引用発明の「同軸ケーブル32」が、「ロゴスキーコイル30」からの出力信号を伝送するものであることは明らかである。 そうすると、引用発明の「同軸ケーブル32」は、本願発明の「分布定数線路で構成されて前記検出信号を伝送する伝送線路」に相当する。 (イ) よって、本願発明と引用発明は、「分布定数線路で構成されて前記検出信号を伝送する伝送線路」を備える点において一致する。 エ 構成Dの観点(積分回路について) (ア) 引用発明の「非反転電子積分器38」は、測定される電流の変化率に比例する誘導電圧源Eに由来する、ロゴスキーコイル30の出力が同軸ケーブル32を介して入力されるものであるから、当該「非反転電子積分器38」の出力は、測定される電流値を示すものといえる。 そうすると、引用発明の「非反転電子積分器38」は、本願発明の「前記伝送線路を介して入力した前記検出信号を積分して前記電流の電流値を示す出力信号を出力する積分回路」に相当する。 (イ) よって、本願発明と引用発明は、「前記伝送線路を介して入力した前記検出信号を積分して前記電流の電流値を示す出力信号を出力する積分回路」を備える点において一致する。 オ 構成Eの観点(抵抗回路について) (ア) 引用発明の「追加の抵抗器R3」は、「同軸ケーブルと終端回路網の第2の部分36内の受動集積容量CB、CVとの間に挿入され」、「終端回路網の第2の部分36は」、「電子積分器38の入力に位置する」から、同軸ケーブル32と非反転電子積分器38との間に設けられた抵抗回路であるといえる。 そうすると、引用発明の「追加の抵抗器R3」は、本願発明の「伝送線路と前記積分回路との間に設けられた抵抗回路」に相当する。 (イ) また、引用発明の「追加の抵抗器R3」は、「R3の値」が、「同軸ケーブルの特性インピーダンスと実質的に同じになるように構成される」から、本願発明の「伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい抵抗値を有[する]」「抵抗回路」に相当する。 (ウ) よって、本願発明と引用発明は、「伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい抵抗値を有し当該伝送線路と前記積分回路との間に設けられた抵抗回路」を備える点において一致する。 カ 構成C、Fの観点(インピーダンス変換回路について) (ア) 本願発明は、 「前記電流センサおよび前記伝送線路の間に積分器を介さずに設けられたインピーダンス変換回路」 を備えており、また、 「前記インピーダンス変換回路は、前記伝送線路を出力端に接続して入力端から見たときに前記電流センサの特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい入力インピーダンスを有し、かつ前記電流センサを前記入力端に接続して前記出力端から見たときに前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい出力インピーダンスを有している」 と特定されている。 (イ) 一方、引用発明においては、「ロゴスキーコイル30」及び「同軸ケーブル32」の間に、インピーダンス変換回路は設けられていない。 (ウ) よって、本願発明と引用発明は、 本願発明が「前記伝送線路を出力端に接続して入力端から見たときに前記電流センサの特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい入力インピーダンスを有し、かつ前記電流センサを前記入力端に接続して前記出力端から見たときに前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい出力インピーダンスを有し」ており、「前記電流センサおよび前記伝送線路の間に積分器を介さずに設けられたインピーダンス変換回路」を備えるのに対し、 引用発明においては、「ロゴスキーコイル30」及び「同軸ケーブル32」の間に、インピーダンス変換回路は設けられていない点で相違する。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。 ア 一致点 ロゴスキーコイルを用いて構成されて測定対象に流れる電流を検出して当該電流の電流値に対応する検出信号を出力する電流センサと、分布定数線路で構成されて前記検出信号を伝送する伝送線路と、前記伝送線路を介して入力した前記検出信号を積分して前記電流の電流値を示す出力信号を出力する積分回路とを備えた電流検出装置であって、 前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい抵抗値を有し当該伝送線路と前記積分回路との間に直列に接続された抵抗回路を備えている、 電流検出装置、である点。 イ 相違点 本願発明においては、「前記伝送線路を出力端に接続して入力端から見たときに前記電流センサの特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい入力インピーダンスを有し、かつ前記電流センサを前記入力端に接続して前記出力端から見たときに前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい出力インピーダンスを有し」ており、「前記電流センサおよび前記伝送線路の間に積分器を介さずに設けられたインピーダンス変換回路」を備えるのに対して、 引用発明においては、ロゴスキーコイル30及び同軸ケーブル32の間に、インピーダンス変換回路が設けられていない点。 8 判断 前記相違点について検討する。 (1)ア 前記5(2)において周知技術1として示したとおり、電流センサにおいて、電流センサと同軸ケーブルの間のインピーダンス整合をとることは、本願出願前に周知である。 イ また、前記6(2)において技術常識1として認定したとおり、検査対象側と測定装置側の間に、入力インピーダンスが検査対象側の出力インピーダンスと等しく、出力インピーダンスが測定装置側の入力インピーダンスと等しいインピーダンス変換回路を設けることで、インピーダンス整合を実現して、同回路系における信号の反射を事実上完全に防止することは、当業者にとって技術常識である。 ウ 引用発明は、電流センサを構成するロゴスキーコイル30と同軸ケーブル32が接続される構成を備える電流測定システムであるところ、これに前記周知技術1を適用して、ロゴスキーコイル30と同軸ケーブル32の間のインピーダンス整合を行うことは、当業者が容易になし得たものである。その際に、インピーダンス整合のための具体的な構成として、技術常識1の「入力インピーダンスが検査対象側の出力インピーダンスと等しく、出力インピーダンスが測定装置側の入力インピーダンスと等しいインピーダンス変換回路」を採用することは、設計事項の範囲内のものといえる。 エ ここで、引用発明は、同軸ケーブルの分布容量CCを除く終端回路網、すなわち、第1の部分34及び第2の部分36の全キャパシタンスC0は、ケーブルの積分器端にあり、第1の部分34の容量CAについては、CA=0であるから、第1の部分34は、容量成分を有さず、第1の部分34単独では積分回路を構成しないから、前記ウのとおり、ロゴスキーコイル30と同軸ケーブル32の間の第1の部分34に、技術常識1のインピーダンス変換回路を設けた場合、「インピーダンス変換回路」が「前記電流センサおよび前記伝送線路の間に積分器を介さずに設けられ[る]」ことになることは明らかであるといえる。 オ なお、引用発明の「受動積分器」は、そもそも「第1の部分34が同軸ケーブルのコイル端部にあり、第2の部分36が他端部にある」「終端回路網」として構成されているから、「第1の部分34」と「第2の部分36」が組み合わされてはじめて「積分器」としての役割を果たすのであって、「第1の部分34」単独では「積分器」としての役割を果たしていないと見ることも可能である。 そのような立場からみれば、引用発明において、「ロゴスキーコイル30」と「同軸ケーブル32」の間に「第1の部分34」が存在していても、「第1の部分34」単独では「積分器」としての役割を果たしていないのであるから、前記相違点に係る「積分器を介さずに」という構成は、引用発明において充足されているともいえる。 カ 前記エ、オを踏まえれば、「入力インピーダンスが検査対象側の出力インピーダンスと等しく、出力インピーダンスが測定装置側の入力インピーダンスと等しいインピーダンス変換回路」を引用発明の「ロゴスキーコイル30」と「同軸ケーブル32」の間に設けることにより、前記相違点に係る「前記伝送線路を出力端に接続して入力端から見たときに前記電流センサの特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい入力インピーダンスを有し、かつ前記電流センサを前記入力端に接続して前記出力端から見たときに前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい出力インピーダンスを有し」ており、「前記電流センサおよび前記伝送線路の間に積分器を介さずに設けられたインピーダンス変換回路」に相当する構成が実現されることは明らかといえる。 キ よって、引用発明において前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2) 総合評価 前記(1)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 9 請求人の主張について (1) 請求人の主張内容 請求人は、審判請求の理由「3.本願発明が特許されるべき理由」「(d)本願発明と引用発明との対比」において、概略次のように主張している。 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明には、本願発明の発明特定事項である「前記電流センサを前記入力端に接続して前記出力端から見たときに前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい出力インピーダンスを有しているインピーダンス変換回路」が開示されておらず、示唆もない。 また、引用文献3~7のいずれにおいても、前記の点は開示も示唆もなく、電流センサおよび伝送線路の間に設けられたインピーダンス変換回路すら開示されていない。 また、引用文献8の図3(a)には、ロゴスキーコイルと、同軸ケーブルとの間に設けられた抵抗Rsおよび抵抗Rzoからなる抵抗回路が記載されているが、この抵抗回路は、本願発明の「前記伝送線路を出力端に接続して入力端から見たときに前記電流センサの特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい入力インピーダンスを有しているインピーダンス変換回路」とは、似て非なるものである。 したがって、引用発明が有する「前記伝送線路を出力端に接続して入力端から見たときに前記電流センサの特性インピーダンスと等しいかまたはほぼ等しい入力インピーダンスを有しているインピーダンス変換回路」に相当する構成に引用文献8に開示の抵抗回路を適用することはあり得ないことであり、阻害要因があるといえる。 このため、たとえ、各引用文献1~8に基づいても、また各引用文献1~8と本願出願時における周知技術とを組み合わせたとしても、本願発明の構成には想到し得ないものと思料する。 (2) 請求人の主張についての検討 請求人の主張は、要するに、引用発明は前記相違点に係る本願発明の構成を備えていないというものであるが、前記8において示したとおり、電流センサと同軸ケーブルの間のインピーダンス整合をとることが周知技術であり、検査対象側と測定装置側の間に、入力インピーダンスが検査対象側の出力インピーダンスと等しく、出力インピーダンスが測定装置側の入力インピーダンスと等しいインピーダンス変換回路を設けることが技術常識であることを踏まえると、引用発明において前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 よって、請求人の主張は採用できない。 10 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-011237

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