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特許拒絶査定不服審判

2024-016748

寿命診断装置、半導体装置、寿命診断方法、

審判番号
2024-016748
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-188202
請求日
2024年10月21日
審決日
2026年04月09日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】富士電機株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人ITOH
審判長/審判官
  • 審判長 後藤 亮治
  • 審判官 道祖土 新吾
  • 審判官 柳 重幸
分類
P18 .575-Z (G01R) / P18 .113-Z (G01R) / P18 .121-Z (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-188202「寿命診断装置、半導体装置、寿命診断方法、」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月23日出願公開、特開2022- 77373〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年11月11日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和6年 6月13日付け:拒絶理由通知書 同年 8月14日 :意見書、手続補正書の提出 同月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月27日 :原査定の謄本の送達) 同年 10月21日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年10月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年10月21日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年10月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年8月14日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項9の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項9の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「 【請求項9】 寿命診断装置により実行される寿命診断方法であって、 半導体装置に搭載されるパワー半導体素子の内部の温度を取得する温度取得ステップと、 前記温度取得ステップで取得される温度の変化に基づき、前記パワー半導体素子の動作に伴う前記温度の上昇及び下降で構成される温度サイクルを検出する温度サイクル検出ステップと、 前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係を示す特性データ、及び前記温度サイクル検出ステップで検出される前記温度サイクルごとの前記温度差に基づき、前記パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う寿命診断ステップと、を含み、 前記特性データは、所定の曲線に相当する、前記温度差と前記寿命との対応関係を表す数式を規定するデータを含む、 寿命診断方法。」 (2) 本件補正後 「 【請求項9】 寿命診断装置により実行される寿命診断方法であって、 半導体装置に搭載されるパワー半導体素子の内部の温度を取得する温度取得ステップと、 前記温度取得ステップで取得される温度の変化に基づき、前記パワー半導体素子の動作に伴う前記温度の上昇及び下降で構成される温度サイクルを検出する温度サイクル検出ステップと、 前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係を示す特性データ、及び前記温度サイクル検出ステップで検出される前記温度サイクルごとの前記温度差に基づき、前記パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う寿命診断ステップと、を含み、 前記特性データは、所定の曲線に相当する、前記温度差から前記寿命を表す指標値を算出する数式を規定するデータを含む、 寿命診断方法。」 2 補正の目的 本件補正のうち請求項9についてする補正は、本件補正前の請求項9に記載された「特性データ」について、「所定の曲線に相当する、前記温度差と前記寿命との対応関係を表す数式を規定するデータを含む」ものから「所定の曲線に相当する、前記温度差から前記寿命を表す指標値を算出する数式を規定するデータを含む」ものへと限定するものである。 そして、本件補正前の請求項9に記載された発明と本件補正後の請求項9に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正により請求項9についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項19に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 ア 本件補正発明の認定と分説 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項9に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図3】を掲載する。 <本件補正発明の分説> X 寿命診断装置により実行される寿命診断方法であって、 A 半導体装置に搭載されるパワー半導体素子の内部の温度を取得する温度取得ステップと、 B 前記温度取得ステップで取得される温度の変化に基づき、前記パワー半導体素子の動作に伴う前記温度の上昇及び下降で構成される温度サイクルを検出する温度サイクル検出ステップと、 C 前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係を示す特性データ、及び前記温度サイクル検出ステップで検出される前記温度サイクルごとの前記温度差に基づき、前記パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う寿命診断ステップと、を含み、 D 前記特性データは、所定の曲線に相当する、前記温度差から前記寿命を表す指標値を算出する数式を規定するデータを含む、 X 寿命診断方法。 <参考図> 【図3】 [図:0001435738000001.jpg] (審決注:「波形計数部804」は「温度サイクル検出部」の一例(段落【0057】)であり、「寿命積算部807」は「寿命診断部」の一例(段落【0063】)である。) イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本開示は、寿命診断装置等に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、パワー半導体素子の温度の上昇及び下降のサイクル(以下、「温度サイクル」)を計数(検出)し、温度サイクルごとの温度差と、パワー半導体素子の寿命特性データとに基づき、パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う技術が知られている。 【0003】 例えば、特許文献1では、複数の直線で近似されるパワーサイクル寿命カーブ(寿命特性データ)に基づき、パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う技術が開示されている。これにより、複数の領域ごとに直線の傾き及び切片のデータだけを保持すればよく、パワーサイクル試験によって得られる実特性のデータを用いる場合等よりも、寿命特性データのデータ量を相対的に小さくすることができる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献2】2011-196703号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、半導体装置には、複数の種類のパワー半導体素子が搭載される場合がある。また、同装置内の同じ種類のパワー半導体素子であっても、使用条件が異なる場合がある。そのため、半導体装置には、パワー半導体素子の種類や使用条件等に応じた複数の寿命特性データが格納される場合がある。よって、対象のパワー半導体素子の寿命を予測するための寿命特性データのデータ量が増大し、予め準備される記憶領域に収容できない可能性がある。 【0006】 そこで、上記課題に鑑み、パワー半導体素子の寿命に関する診断のために必要なデータのデータ量をより削減することが可能な技術を提供することを目的とする。」 【発明の効果】 【0010】 上述の実施形態によれば、パワー半導体素子の寿命に関する診断のために必要なデータのデータ量をより削減することができる。」 「 【0119】 これに対して、本実施形態では、制御回路80は、所定の曲線に相当する数式によって表されるパワーサイクル特性データを使用する。そのため、制御回路80は、例えば、プログラムに数式の形式が規定されることで、パワーサイクル特性データとして、その数式の係数の値を表すデータを保持するだけでよく、パワーサイクル特性データのデータ量を相対的に小さく抑制することができる。」 (2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開平10-038960号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記イの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 (ア) 特許請求の範囲 「【請求項1】 電流制御を行うパワー半導体素子おいて(「において」の誤記と認める。)、前記電流制御による電流変化に基づくパワー半導体素子の温度変化を一サイクルとし、パワー半導体素子の温度情報を求める工程と、前記温度変化の温度差を一定とする動作における温度差に対する動作可能サイクル数の関係に基づいて、前記求めた温度情報に対応した温度差からパワー半導体素子の動作可能サイクル数を求める工程とを備え、前記求めた動作可能サイクル数によってパワー半導体素子の故障を推定することを特徴とするパワー半導体素子の熱的ストレスによる故障予測方法。」 (イ) 【0001】~【0010】 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、モータ駆動装置等に使用するパワー半導体素子に関し、特にパワー半導体素子の電気的接続部分の熱的ストレスによる故障を予測する方法に関する。 …(中略)… 【0008】 そこで、本発明は前記した従来のパワー半導体素子の持つ問題点を解決して、熱的ストレスによるパワー半導体素子の故障を予測することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明のパワー半導体素子の熱的ストレスによる故障の予測方法は、パワー半導体素子により電流制御による電流変化に基づく温度変化において、該温度変化の温度差とパワー半導体素子の動作可能サイクル数との間にある所定の関係を利用するものである。該所定の関係は、電流制御による電流変化に基づくパワー半導体素子の温度変化を一サイクルとしたとき、パワー半導体素子の温度差の対数表示とパワー半導体素子の動作可能サイクル数の対数表示との間の比例関係である。この比例関係に基づいて、温度差から動作可能サイクル数を求めることができ、動作中のパワー半導体素子において、動作したサイクル数の積算数を求めることによって、該パワー半導体素子の寿命を推定し、故障時期を予測することができる。 【0010】本発明の方法は、電流制御を行うパワー半導体素子おいて(「において」の誤記と認める。)、電流制御による電流変化に基づくパワー半導体素子の温度変化を一サイクルとし、パワー半導体素子の温度情報を求め、温度変化の温度差を一定とする動作における温度差に対する動作可能サイクル数の関係に基づいて、求めた温度情報に対応した温度差からパワー半導体素子の動作可能サイクル数を求める、求めた動作可能サイクル数によってパワー半導体素子の故障を推定する(請求項1対応)。」 (ウ) 【0019】~【0030】、図1~4 「【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の方法を実施するための一構成例を説明するための概略ブロック図である。なお、図1に示すブロック図は、本発明の方法を数値制御装置に適用する場合について示し、数値制御装置によってパワー半導体素子を制御してサーボモータの制御を行う場合において、該パワー半導体素子の熱的ストレスによる故障予測を行う。 【0020】図1に示す構成は、通常の数値制御装置とほぼ同様の構成であり、バス7を介してCPU1と接続される軸制御回路5によって、サーボアンプ6を制御してサーボモータの駆動を行う。」 「【図1】 [図:0001435738000002.jpg] 」 「【0021】CPU1は数値制御装置を全体的に制御するプロセッサであり、バス7を介して、ROM2に格納されたシステムプログラムを読み出し、このシステムプログラムに従って数値制御装置を全体的に制御する。共有RAM3には一時的な計算データや表示データ,および図示しないCRT/MDIユニットを介してオペレータが入力した各種データ等が格納される。CMOSメモリ等の不揮発性メモリ4は図示しないバッテリでバックアップされ、数値制御装置の電源がオフの状態であっても記憶状態を保存する記憶手段であり、図示しないインターフェイスやCRT/MDIユニットを介して読み込まれたNC加工プログラムや、工作機械の駆動制御に必要とされるパラメータの値等を記憶する。また、ROM2には、NC加工プログラムの作成および編集等のために必要とされるデータ入力モードの処理や自動運転のための再生モードの処理等を実施するための各種のシステムプログラムが予め書き込まれている。また、このROM2には、本発明のパワー半導体素子の故障予測を行うためのプログラムが書き込まれている。 【0022】なお、前記図示しないインターフェイスは、数値制御装置に接続可能な外部機器のためのインターフェイスであって、データ入力手段や外部記憶装置等の外部機器が接続される。外部機器からは、NC加工プログラム等が読み込まれ、また、数値制御装置内で編集されたNC加工プログラムを外部機器に出力することができる。 【0023】軸制御回路5はサーボアンプ6を制御してサーボモータを駆動するための回路であり、軸制御CPU5-1によって制御を行う。サーボアンプ6は、前記図15に示したようなパワー半導体素子によって構成したインバータ回路を備え、該パワー半導体素子は軸制御CPU5-1からの制御信号によって、オンオフ制御される。また、サーボアンプ6側には温度センサ6-1が設けられ、パワー半導体素子の温度情報を得ることができ、該温度情報は軸制御回路5中のインターフェース5-2を介してバス7に送られる。 【0024】パワー半導体素子の温度情報を得る温度センサは、パワー半導体素子の近傍やパワー半導体素子を取り付けたケースに設置した温度センサとすることができ、パワー半導体素子をケース側に設置した場合には、パワー半導体素子とケースとの間の熱抵抗を用いてパワー半導体素子における温度を得ることができる。また、パワー半導体素子の一サイクルの温度変化における電流変化から温度を得ることもできる。軸制御回路5のインターフェース5-2は、温度センサ6-1からの温度情報をバス7を介してCPU1に送る。 【0025】軸制御回路5はCPU1から各軸の移動指令を受け、各軸の指令をサーボアンプ6に出力する。サーボアンプ6はこの指令を受けて、各軸のサーボモータを駆動する。各軸のサーボモータには位置検出用のパルスコーダが内蔵さており、このパルスコーダからの位置信号がパルス列としてフィードバックされる。場合によっては、位置検出器としてリニアスケールが使用される。 【0026】不揮発性メモリ4は、温度変化の温度差とパワー半導体素子の動作可能サイクル数との間にある関係を記憶しておき、本発明の故障予測の処理において、温度差をパラメータとしてパワー半導体素子の動作可能サイクル数を読みだすことができる。 【0027】なお、ここでは、数値制御装置による通常の軸制御は周知であるため、説明を省略する。 【0028】次に、本発明の故障予測方法に使用する、パワー半導体素子による電流制御を行った場合において、パワー半導体素子の温度差と動作可能サイクル数との間の関係について、図2および図3を用いて説明する。図2はパワー半導体素子の温度差と動作可能サイクル数とを両対数表示した図であり、図3はパワー半導体素子の温度差と動作可能サイクル数との関係を示す図である。電流制御における電流変化によって、パワー半導体素子に生じる温度変化を一サイクルとしたとき、そのパワー半導体素子の最高温度と最低温度との温度差を一定として電流制御を繰り返すと、パワー半導体素子の配線を接合している接合部において熱的ストレスが生じる。この熱的ストレスは、該接合を不十分なものとして接触不良を起こし、最終的には断線することになる。本発明の出願人は、このような状態に至るサイクル数と、各サイクルにおける温度差との間に、図2のグラフに示すような関係があることを見いだした。該関係は、一定の温度差ΔTjとなるような動作モードで動作させたときのパワー半導体素子の動作可能サイクル数Njと該温度差ΔTjとの間には、両者を対数表示したとき比例関係で表されるものであり、以下の式(1)で表される。なお、a、Naは比例定数であり、グラフから求めることができる。なお、図2は比例関係があることを示すものであって、対数表示の目盛りは省略しており、また、傾きaは正確に表示するものではない。 logNj=-a×logΔTj+logNa …(1) この関係は、図3において、例えば温度差がΔT1となるような動作モードでパワー半導体素子を駆動すると、この温度差ΔT1によって熱的ストレスが生じ、パワー半導体素子の温度変化を一サイクルとしたときサイクル数N1の後に故障が発生することを表し、また、温度差がΔT1より大きなΔT2となるような動作モードでパワー半導体素子を駆動すると、サイクル数N1より少ないサイクル数N2の後に故障が発生することを表しており、該サイクル数N1,N2は温度差ΔT1,ΔT2で駆動したときの、パワー半導体素子の動作可能サイクル数であって、パワー半導体素子の寿命を表す指標として用いることができるものである。 「【図2】 [図:0001435738000003.jpg] 」 「【図3】 [図:0001435738000004.jpg] 」 「【0029】本発明の熱的ストレスによるパワー半導体素子の故障予測方法は、上記した温度差とパワー半導体素子の動作可能サイクル数との関係を用いて、使用中のパワー半導体素子の残りの動作可能サイクル数を求めて、故障を予測する方法である。以下、図4を用いて故障を予測する方法の概略について説明する。図4(b)において、パワー半導体素子を温度差ΔTとするような動作モードで使用し、現時点t0における積算したサイクル数をnとする。温度差ΔTとする動作モードにおける動作可能サイクル数Nは、図4(a)の対数関係から、以下の式(2)で表れる。 N=Na×(ΔT)-a ・・・(2) 従って、この動作可能サイクル数Nから現時点での積算サイクル数nを減じた値(N-n)は、パワー半導体素子が以後において動作可能なサイクル数となり、故障が発生する可能性のある時点を表している。」 「【図4】 [図:0001435738000005.jpg] 」 「【0030】動作モード等が異なることによって、温度差ΔTが異なる場合には、該温度差ΔTに対応した動作可能サイクル数Nに基づいて故障の予測を行うことになる。」 (エ) 【0032】~【0038】、図5~6 「【0032】はじめに、本発明の方法の第1の実施の形態例について説明する。図5は第1の実施の形態例の機能ブロック図であり、図6は該機能を実施するフローチャートである。なお、この機能ブロック図中の各機能ブ ロックは、説明を容易にするためのものであって、本発明の方法を実施する際に該ブロックに対応する素子や回路構成を要するものではなく、ソフトウェアによって実施することができる。」 「【図5】 [図:0001435738000006.jpg] 」 「【図6】 [図:0001435738000007.jpg] 」 「【0033】温度検出ブロック11は、パワー半導体素子10から温度情報を受け取り、この温度情報からパワー半導体素子の温度を検出する(ステップS1)。この温度情報は、例えば、パワー半導体素子が出力する信号中の温度信号を用いることができ、この温度信号に所定の演算を施すことによってパワー半導体素子の温度を求めることができ、その最高温度と最低温度の差から温度差を求めることができる。また、温度情報をパワー半導体素子の一サイクルの温度変化における電流変化とし、この電流変化から温度上昇を求め、休止時間から温度下降を求めることによってパワー半導体素子の温度を求めることができ、その最高温度と最低温度の差から温度差を求めることができる。 【0034】パワー半導体素子の近傍あるいはパワー半導体素子を設置するケースに温度センサを取付け、該温度センサからの検出温度を温度情報とすることができ、ケースに温度センサを取り付けた場合は、パワー半導体素子を設置するケースの温度と、パワー半導体素子とケース間の熱抵抗に基づいてパワー半導体素子の温度および温度差を推定することができる。 【0035】ブロック12で、検出したパワー半導体素子の温度から、パワー半導体素子の電流変化に基づく一温度変化サイクル中の最高温度Tmaxと最低温度Tminを求める(ステップS2)。最高,最低温度検出のブロック13で、その最高温度Tmax と最低温度Tminの差から温度差ΔT(=Tmax-Tmin)を求める(ステップS3)。 【0036】温度差ΔTに対する動作可能サイクル数Nが既に知られているか否かを判定し(ステップS4)、知られていない場合には、温度差-寿命特性のブロック14は、ステップS3で求めた温度差ΔTに対して、温度差と動作可能サイクル数との関係を表す特性(図2,図4)に基づいて、動作可能サイクル数Nを読み出す。この動作可能サイクル数Nの読み出しは、例えば、不揮発性メモリ中に格納したデータを温度差をパラメータとして読み出すことにより行うことができる(ステップS5)。 【0037】また、計数ブロック13は、最高温度Tmax あるいは最低温度Tmin の発生回数を計数して、積算サイクル数nを求める。この積算サイクル数nは不揮発性メモリ中に格納し、計数毎に更新することができる(ステップS6)。 【0038】比較ブロック15は、ステップS5で読み出した動作可能サイクル数N、あるいはステップS4の判定で温度差ΔTに対する動作可能サイクル数Nが既に知られている場合には、該動作可能サイクル数Nと、ステップS6で求めた積算サイクル数nと比較し、その差が許容範囲を越えている場合には、パワー半導体素子の故障が近いと判定し(ステップS7)、警告等の表示を行う(ステップS8)。」 イ 引用発明の認定 前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第1の実施の形態例(【図5】、【図6】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 また、段落【0029】に記載された「温度差ΔTj」及び「動作可能サイクル数Nj」における「j」の添え字は、温度差ΔTが複数ある場合を想定したもの(j=1、2、・・・)であるところ、技術的な概念としては、「温度差ΔTj」及び「動作可能サイクル数Nj」はそれぞれ段落【0036】における「温度差ΔT」及び「動作可能サイクル数N」と同じものを表すものであることは明らかである。そこで便宜のため、引用発明の認定にあたっては、「温度差ΔTj」及び「動作可能サイクル数Nj」はそれぞれ「温度差ΔT」及び「動作可能サイクル数N」と認定した。 <引用発明> 「パワー半導体素子を制御してサーボモータの制御を行う数値制御装置において、該パワー半導体素子の熱的ストレスによる故障予測を行う(【0019】)故障予測方法であって、(【0001】、【請求項1】) 電流制御における電流変化によって、パワー半導体素子に生じる温度変化を一サイクルとしたとき、そのパワー半導体素子の最高温度と最低温度との温度差を一定として電流制御を繰り返すことによって、パワー半導体素子の配線を接合している接合部において生じる熱的ストレスが、断線状態を起こすことに起因して、このような状態に至るサイクル数と、各サイクルにおける温度差との間に、図2のグラフに示す関係があることを見いだしたものであって、一定の温度差ΔTとなるような動作モードで動作させたときのパワー半導体素子の動作可能サイクル数Nと該温度差ΔTとの間には、両者を対数表示したとき比例関係で表されるものであり、グラフから求めることができるa、Naを比例定数として、以下の式(1)で表され、 logN=-a×logΔT+logNa・・・(1) サイクル数Nは、温度差ΔTで駆動したときの、パワー半導体素子の動作可能サイクル数であって、パワー半導体素子の寿命を表す指標として用いることができるものであり、(【0028】) 温度検出ブロック11は、パワー半導体素子10から温度情報を受け取り、この温度情報からパワー半導体素子の温度を検出し(ステップS1)、(【0033】) ブロック12で、検出したパワー半導体素子の温度から、パワー半導体素子の電流変化に基づく一温度変化サイクル中の最高温度Tmaxと最低温度Tminを求め(ステップS2)、最高,最低温度検出のブロック13で、その最高温度Tmaxと最低温度Tminの差から温度差ΔT(=Tmax-Tmin)を求め(ステップS3)、(【0035】) 温度差ΔTに対する動作可能サイクル数Nが既に知られているか否かを判定し(ステップS4)、知られていない場合には、温度差-寿命特性のブロック14は、ステップS3で求めた温度差ΔTに対して、温度差と動作可能サイクル数との関係を表す特性(図2,図4)に基づいて、動作可能サイクル数Nを読み出し(ステップS5)、(【0036】) 図4を用いて故障を予測する方法の概略は、パワー半導体素子を温度差ΔTとするような動作モードで使用し、現時点t0 における積算したサイクル数をnとした場合に、温度差ΔTとする動作モードにおける動作可能サイクル数Nが、以下の式(2)で表され、 N=Na×(ΔT)-a ・・・(2) この動作可能サイクル数Nから現時点での積算サイクル数nを減じた値(N-n)を、パワー半導体素子が以後において動作可能なサイクル数とするものであり、(【0029】) 計数ブロック13は、最高温度Tmax あるいは最低温度Tmin の発生回数を計数して、積算サイクル数nを求め(ステップS6)、(【0037】) 比較ブロック15は、動作可能サイクル数Nと積算サイクル数nと比較し、その差が許容範囲を超えている場合には、パワー半導体素子の故障が近いと判定し(ステップS7)、警告等の表示を行う(ステップS8)、(【0038】) 故障予測方法。」 (3) 引用文献4に記載された事項及び技術常識の認定 ア 引用文献4に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2007-214947号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 「【技術分野】 【0001】 本発明は増幅器(以下パワーアンプという。)の歪を補償する、デジタル前置歪補償回路に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来、デジタル前置歪補償回路では、一般的にルックアップテーブル(LUT)方式もしくは多項式近似方式が用いられている。多項式近似方式は、非線形素子であるパワーアンプの入力レベル-Gain特性、入力レベル- 位相特性を一つの多項式で近似し、その係数をメモリに書き込んでおき、入力レベルに応じて、多項式から近似解を導き、その逆特性を出力することでパワーアンプの歪を補償するものである。また、LUT方式は、非線形素子であるパワーアンプの入力レベル-Gain特性、入力レベル-位相特性を各入力レベルごとに対応した離散的値として、テーブルを作成し、メモリにこれを書き込んでおき、入力レベルに応じて、テーブルを読み出し、その逆特性を出力し、前置歪を作成することでパワーアンプの歪を補償するものである(特許文献1参照)。 【0003】 図3は、従来の多項式近似方式のデジタル歪補償の構成を示しており、メモリ1と、D/Aコンバータ2と、パワーアンプ3と、分配器4と、A/Dコンバータ5と、多項式近似部6とから構成されている。パワーアンプ3で歪んだ信号が、分配器4で分配後、A/Dコンバータ5でデジタル信号に変換され、多項式近似部6に入力される。多項式近似部6には無歪の送信変調信号も入力され、多項式近似部6では、この2つの入力信号の差分が最小になるように、非線形素子であるパワーアンプの入力レベル-Gain特性、入力レベル-位相特性を一つの多項式で近似し、その係数をメモリ1に書き込んでおき、入力レベルに応じて、多項式から近似解を導き、その逆特性を出力することでパワーアンプ3の歪を補償する。」 「【図3】 [図:0001435738000008.jpg] 」 「図5は従来の多項式近似方式での動作特性とメモリ使用について示す。 ここでは、パワーアンプ出力の入力レベル対Gain特性を例に示した。多項式に近似する方法は、適当な想定式とパワーアンプ出力の入力レベル-Gain特性、入力レベル-位相特性を比較し、その差分をもっとも小さくなるように係数を追い込んでいくという、最小2乗法が一般的である。これによって、パワーアンプ出力の入力レベル-Gain特性、入力レベル-位相特性が多項式近似出来る。期待する補償後の特性は図5に示す単なる直線であるので、前述のパワーアンプ出力の入力レベル-Gain特性、入力レベル-位相特性さえ多項式近似できれば、図5に示すアンプ逆特性は多項式により容易に算出できる。ここでは7次の多項式Y=aX7+bX5+cX3+dX(当審注:「Y=aX7+bX5+cX3+dX」の誤記と認める。)を用いた例を示した。この場合、メモリ量はa,b,c,dの4ポイントで済む。次数を増やすほど正確なアンプ特性の表現が可能になり、歪補償量も改善していくが、大きすぎると計算時間が増えてしまうので、通常は実験などにより、何次までの次数が必要かを検証して、次数を決定している。パワーアンプがこのような非線形性を示すのは、デバイスの入力容量が入力レベルで変化してしまうというのが、一般的に知られた理由である。また、デバイスの飽和出力に近づくにつれ、入力レベル-Gain特性、入力レベル-位相特性の変化も大きくなる(非線形性=歪が増加する)が、同時に、効率は良くなっていく。パワーアンプでは、効率が重要視されるため、出来る限り飽和出力付近で使用することが望まれる。すなわち、非線形性の大きいところで使用されるために、なんらかの歪補償が必須となるのである。」 「【図5】 [図:0001435738000009.jpg] 」 「図4は、従来のLUT式のデジタル歪補償の構成を示しており、メモリ1と、D/Aコンバータ2と、パワーアンプ3と、分配器4とA/Dコンバータ5とLUT作成部7とから構成されている。パワーアンプ3で歪んだ信号が、分配器4で分配した後、A/Dコンバータ5でデジタル信号に変換され、LUT作成部7に入力される。LUT作成部7には無歪の送信変調信号も入力され、LUT作成部7では、上記2つの入力信号の差分が最小になるように、非線形素子であるパワーアンプの入力レベル-Gain特性、入力レベル-位相特性を各入力レベルごとに対応した離散的値として、テーブルを作成し、メモリにこれを書き込んでおき、入力レベルに応じてテーブルを読み出し、その逆特性を出力し、前置歪を作成することでパワーアンプの歪を補償する。」 「【図4】 [図:0001435738000010.jpg] 」 「図6に従来のLUT方式での動作特性とメモリ使用について示す。 パワーアンプ出力の入力レベル対Gain特性を例に示した。多段アンプでは、各アンプを飽和付近で使用したいということから、図5のような特性を、直列に何段も重ねていく。これによって、図6のように非線形の強い(歪の大きい)アンプになってしまう。各入力レベル(Pin1~Pin128)に対する補償値をa1~a128とする。多項式近似方式に比べ、逆特性の算出は容易であり、例えば、ある入力レベルPin1のときのアンプのGainが、補償後の期待値より2dB低いとしたら、その入力レベルに対応したテーブルに、+2dBと書き込むだけである。 次に、Pin1の入力信号が来た際には、+2dBという値をテーブルから読み出し、その分だけ入力信号を変化させることで、補償後の期待する特性(歪無し)=補償値-アンプという式で得られる歪(ずれ)が+2dB-2dB=0dB(期待値)となり、歪を除去した信号が得られる。ここでは、一般的な128ポイントで説明したが、ポイント数が多いほど、より正確な歪補償が可能である。」 「【図6】 [図:0001435738000011.jpg] 」 イ 技術常識1の認定 前記アに摘記した引用文献4の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。) <技術常識1> 「入力xに対する出力yが、y=f(x;a,b)(出力y、入力x、パラメータa、b)のような関数で表現される場合に、コンピュータを用いて実際の入力xに対する出力yを導くにあたり、yとxの関係とをルックアップテーブルとして保存するのでなく、関数のパラメータa、bのみを保存することとすれば、正確な表現が可能となり、計算時間が増えるものの、メモリを節約できること。」 (4) 本件補正発明と引用発明の対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア) 構成Xの観点(寿命診断方法) 引用発明の「故障予測方法」は、「パワー半導体素子の故障が近い」こと、すなわち「寿命」を予測するものであるから、本件補正発明の「寿命診断方法」に相当する。また、引用発明における「数値制御装置」にて「故障予測」が行われるものであるところ、引用発明の「数値制御装置」は本件補正発明における「寿命診断装置」に相当するものといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「寿命診断装置により実行される寿命診断方法」である点で一致する。 (イ) 構成Aの観点(温度取得ステップ) a 構成Aは「半導体装置に搭載されるパワー半導体素子の内部の温度を取得する温度取得ステップ」を含むことである。 b 引用発明における「サーボモータ」及び「パワー半導体素子10」は、本件補正発明における「半導体装置」及び「パワー半導体素子」に相当する。そして、本件補正発明における「パワー半導体素子」と引用発明における「パワー半導体素子10」は、いずれも「半導体装置に搭載される」点で一致する。 c 引用発明においては、「温度検出ブロック11は、パワー半導体素子10から温度情報を受け取り、この温度情報からパワー半導体素子の温度を検出[する]」(ステップS1)のであるから、前記bもふまえると、本件補正発明と引用発明とは「半導体装置に搭載されるパワー半導体素子の内部の温度を取得する温度取得ステップ」を含む点で一致する。 d したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「半導体装置に搭載されるパワー半導体素子の内部の温度を取得する温度取得ステップ」を含む点。 (ウ) 構成Bの観点(温度サイクル検出ステップ) a 構成Bは「前記温度取得ステップで取得される温度の変化に基づき、前記パワー半導体素子の動作に伴う前記温度の上昇及び下降で構成される温度サイクルを検出する温度サイクル検出ステップ」を含むことである。 b 引用発明における、パワー半導体素子に対する「電流制御における電流変化」は、本件補正発明における「パワー半導体素子の動作」に相当し、当該電流変化に伴って、一サイクル中で「最高温度」となること及び「最低温度」になることは、それぞれ本件補正発明における「温度の上昇」及び「温度」の「下降」に相当する。また、引用発明における「温度変化サイクル」は、本件補正発明における「温度サイクル」に相当する。 c 引用発明においては、パワー半導体素子の温度を検出するステップ1の後に、検出したパワー半導体素子の温度から、パワー半導体素子の電流変化に基づく一温度変化サイクル中の最高温度Tmaxと最低温度Tminを求め(ステップS2)、最高,最低温度検出のブロック13で、その最高温度Tmaxと最低温度Tminの差から温度差ΔT(=Tmax-Tmin)を求め(ステップS3)ていることから、取得される温度の変化に基づいて「温度変化サイクル」中での「最高温度」及び「最低温度」を求め、かつ、「ブロック13」で「最高温度」と「最低温度」の差である「温度差ΔT」を求めている(ステップS3)。このことは、温度変化サイクルの特性を「温度差ΔT」として特定するものといえることから、当該ステップS3は、本件補正発明における「温度サイクルを検出する温度サイクル検出ステップ」に相当する。 d 前記b、cの検討をふまえると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。 「前記温度取得ステップで取得される温度の変化に基づき、前記パワー半導体素子の動作に伴う前記温度の上昇及び下降で構成される温度サイクルを検出する温度サイクル検出ステップ」を含む点。 (エ) 構成C、Dの観点(寿命診断ステップ) a 構成Cは「前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係を示す特性データ、及び前記温度サイクル検出ステップで検出される前記温度サイクルごとの前記温度差に基づき、前記パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う寿命診断ステップ」を含むことであり、構成Dは「前記特性データは、所定の曲線に相当する、前記温度差から前記寿命を表す指標値を算出する数式を規定するデータを含む」ことである。 b 引用発明における「一温度変化サイクル」での「最高温度」と「最低温度」との「温度差」は、本件補正発明における、「前記温度サイクルで生じる温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差」に相当し、引用発明における「動作可能サイクル数」は本件補正発明における「寿命を表す指標値」に相当する。また、引用発明における、「このような状態に至るサイクル数」(動作可能サイクル数N)と、「各サイクルにおける温度差」(温度差ΔT)との間にある、「図2のグラフに示す関係」は、本件補正発明における「前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係」に相当し、引用発明における、グラフから求めることができる比例定数「a」及び「Na」は、本件補正発明における「前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係を示す特性データ」に相当する。 c 引用発明における、「logN=-a×logΔT+logNa」との式及び「N=Na×(ΔT)-a」との式は、いずれも本件補正発明における「所定の曲線に相当する、前記温度差から前記寿命を表す指標値を算出する数式」に相当し、引用発明における比例定数「a」及び「Na」は、本件補正発明における「数式を規定するデータ」にも相当する。 d 引用発明における、「比較ブロック15」で行われる「パワー半導体素子の故障が近いと判定し(ステップS7)、警告等の表示を行[う]」(ステップS8)ことは、本件補正発明における「前記パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う寿命診断ステップ」に相当する。 e 引用発明においては、「温度差ΔTに対する動作可能サイクル数Nが既に知られているか否かを判定し(ステップS4)、知られていない場合には、温度差-寿命特性のブロック14は、ステップS3で求めた温度差ΔTに対して、温度差と動作可能サイクル数との関係を表す特性(図2,図4)に基づいて、動作可能サイクル数Nを読み出し(ステップS5)、計数ブロック13は、最高温度Tmaxあるいは最低温度Tminの発生回数を計数して、積算サイクル数nを求め(ステップS6)、比較ブロック15は、動作可能サイクル数Nと積算サイクル数nと比較し、その差が許容範囲を超えている場合には、パワー半導体素子の故障が近いと判定し(ステップS7)、警告等の表示を行[う]」(ステップS8)ものである。すなわち、温度差と動作可能サイクル数との関係を表す特性(図2,図4)及び「温度差ΔT」に基づいて「動作可能サイクル数N」を読み出し、この「動作可能サイクル数N」を利用して故障に関する判定(ステップS7)や警告等の表示(ステップS8)を行うのであるから、引用発明は、温度差と動作可能サイクル数との関係を表す特性(図2,図4)及び「温度差ΔT」に基づいて故障に関する判定(ステップS7)や警告等の表示(ステップS8)を行っているものと認められる。そして、温度差と動作可能サイクル数との関係を表す特性(図2,図4)は、「このような状態に至るサイクル数」(動作可能サイクル数N)と、「各サイクルにおける温度差」(温度差ΔT)との間にある、「図2のグラフに示す関係」にほかならない。 そうすると、前記b及びdの検討もふまえると、本件補正発明と引用発明とは「前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係、及び前記温度サイクル検出ステップで検出される前記温度サイクルごとの前記温度差に基づき、前記パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う寿命診断ステップ」を含む点で一致するものといえる。 f 以上の検討結果をふまえると、本件補正発明と引用発明の構成C及びDの観点における一致点及び一応の相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。 (a) 一致点 「前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係、及び前記温度サイクル検出ステップで検出される前記温度サイクルごとの前記温度差に基づき、前記パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う寿命診断ステップ」を含む点 (b) 一応の相違点 対応関係に関し、 本件補正発明では、 「対応関係を示す特性データ」であって、「特性データは、所定の曲線に相当する、前記温度差から前記寿命を表す指標値を算出する数式を規定するデータを含む」のに対し、 引用発明では、 温度差と動作可能サイクル数との関係を表す特性(図2,図4)に基づいて、動作可能サイクル数Nを読み出すものの、動作可能サイクル数Nを読み出す際に用いられるデータの具体的態様が不明である点。 イ 一致点及び一応の相違点 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び一応の相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。 (ア) 一致点 「寿命診断装置により実行される寿命診断方法であって、 半導体装置に搭載されるパワー半導体素子の内部の温度を取得する温度取得ステップと、 前記温度取得ステップで取得される温度の変化に基づき、前記パワー半導体素子の動作に伴う前記温度の上昇及び下降で構成される温度サイクルを検出する温度サイクル検出ステップと、 前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係、及び前記温度サイクル検出ステップで検出される前記温度サイクルごとの前記温度差に基づき、前記パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う寿命診断ステップと、を含む、 寿命診断方法」である点。 (イ) 一応の相違点 対応関係に関し、 本件補正発明では、 「対応関係を示す特性データ」であって、「特性データは、所定の曲線に相当する、前記温度差から前記寿命を表す指標値を算出する数式を規定するデータを含む」のに対し、 引用発明では、 温度差と動作可能サイクル数との関係を表す特性(図2,図4)に基づいて、動作可能サイクル数Nを読み出すものの、動作可能サイクル数Nを読み出す際に用いられるデータの具体的態様が不明である点。 (5) 判断 ア 一応の相違点について (ア) 引用文献1の図6には、寿命(サイクル数N)が既知であるか否かに応じたフローにおける、未知の場合のフローとして、S5「温度差-寿命特性(サイクル数N)を求める」と記載されている。 (イ) 引用文献1の段落【0029】には、「上記した温度差とパワー半導体素子の動作可能サイクル数との関係を用いて、使用中のパワー半導体素子の残りの動作可能サイクル数を求めて、故障を予測する」と記載されているところ、「上記した温度差とパワー半導体素子の動作可能サイクル数との関係」は、段落【0028】に記載された動作可能サイクル数Njと温度差ΔTjの間の図2のグラフに示すような関係(式(1)で表される関係)であり、そして、その概略として、ΔTを導入してNを導出する式(2)が記載されている。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)を併せて検討するに、動作可能サイクル数Nが未知であった場合に、式(1)で表される関係を用いて未知のサイクル数Njを求める(導出する)こと、又は式(2)にΔTを導入してNを導出する処理により行うことは、引用文献1に記載されているに等しい事項である。そして、かかる導出を行うためには、式(1)又は式(2)で使用されるデータである比例定数a、Naを含めて記憶されているものといえる。 (エ)a 仮に、この点が記載されているに等しい事項でなかったとしても、離散的なデータしか導出できないルックアップテーブル(LUT)に代えて、より連続的なデータの導出が行える関数、すなわち式(1)又は式(2)により動作可能サイクル数の導出を行うことは、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。このことは、前記(3)イで認定したように、「入力xに対する出力yがy=f(x;a,b)(出力y、入力x、パラメータa、b)のような関数となっている場合に、実際の入力xに対する出力yを導くにあたり、yとxの関係とをルックアップテーブルとして保存するのでなく、パラメータa、bのみを保存することとすれば、正確な表現が可能となり、計算時間が増えるものの、メモリを節約できること。」(技術常識1)が当業者にとって技術常識であることからみても首肯できる。 b なお、この技術常識1が本件補正発明のようなパワー半導体素子の寿命に関する診断においても用いることができることは、本願明細書における段落【0003】の記載からも明らかである。以下、段落【0003】の記載を再掲する。 「【0003】 例えば、特許文献1では、複数の直線で近似されるパワーサイクル寿命カーブ(寿命特性データ)に基づき、パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う技術が開示されている。これにより、複数の領域ごとに直線の傾き及び切片のデータだけを保持すればよく、パワーサイクル試験によって得られる実特性のデータを用いる場合等よりも、寿命特性データのデータ量を相対的に小さくすることができる。」 イ 総合評価(本件補正発明が奏する効果の検討) 本件補正発明は引用発明と構成が同一であるから、本件補正発明の構成が奏する効果は、引用発明の構成もまた奏するものと認められる。 また仮に本件補正発明と引用発明が同一でないとしても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明と同一であるか、または引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 請求人の主張について (ア) 請求人の主張内容 本件補正発明は、「寿命診断装置」について、「半導体装置に搭載されるパワー半導体素子の内部の温度を取得する温度取得部」と、「前記温度取得部により取得される温度の変化に基づき、前記パワー半導体素子の動作に伴う前記温度の上昇及び下降で構成される温度サイクルを検出する温度サイクル検出部」と、「前記温度サイクルで生じる前記温度の上昇及び下降の変化幅に相当する温度差と前記パワー半導体素子の寿命との対応関係を示す特性データ、及び前記温度サイクル検出部により検出される前記温度サイクルごとの前記温度差に基づき、前記パワー半導体素子の寿命に関する診断を行う寿命診断部」と、を前提として、「前記特性データは、所定の曲線に相当する、前記温度差から前記寿命を表す指標値を算出する数式を規定するデータを含む」点と、を特徴としている。 しかし、前記特徴は、引用文献1~3に全く開示されておらず、示唆もされていない。 (イ) 請求人の主張についての検討 前記(5)アで検討したように、本件補正発明は引用発明と同一であると認められる。すなわち、請求人が本件補正発明の特徴点であると主張する「前記特性データは、所定の曲線に相当する、前記温度差から前記寿命を表す指標値を算出する数式を規定するデータを含む」との点は、引用文献1に記載されているか、又は記載されているに等しいものと認められる。また仮に、引用文献1には前記特徴点が記載されたものとは認められず、この点が実質的にみて相違点であるとしても、当該相違点に係る本件補正発明の構成に至ることが当業者によって想到容易であることは、前記(5)ア(エ)において検討したとおりである。 したがって、前記請求人の主張は採用できない。 エ 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明であるか、又は、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号に該当するため、又は、同条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項9についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記3(5)エのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項9(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由である理由1(新規性の欠如)及び理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由1(新規性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 <主たる引用文献> 引用文献1.特開平10-038960号公報 3 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等 引用文献1に記載された事項及び引用発明は、前記第2の3(2)ア及びイにおいて示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2に示した限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明に対して新規性が無い又は引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明に対して新規性が無い又は引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当するため、又は、同条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-016748

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