2022-014796
回転光検出および測距(ライダ)デバイスの電力変調
- 審判番号
- 2022-014796
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-206530外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月20日
- 審決日
- 2023年08月23日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ウェイモ エルエルシー
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】佐藤 睦
- 分類
- P18 .575-Z (G01S) / P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、平成29年12月13日を国際出願日とする外国語特許出願である特願2019-531163号の一部を令和2年12月14日に新たな外国語特許出願としたものであって(パリ条約による優先権主張2016年12月13日(以下「優先日」という。)、米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 7月30日付け:拒絶理由通知書
同年11月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月11日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月26日 :原査定の謄本の送達)
同年 9月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年9月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月20日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年9月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正する補正事項を含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】車両に取り付けられた光検出および測距(ライダ)・デバイスの指す方向を変更することであって、前記ライダ・デバイスは、光パルスを放ち、前記ライダ・デバイスの指す方向に基づいて前記放たれた光パルスの反射を検出し、前記ライダ・デバイスの前記指す方向は、前記放たれた光パルスがそこから反射される環境の領域を前記ライダ・デバイスがスキャンするように変化する、ライダ・デバイスの指す方向を変更することと、前記環境のターゲット領域に関連する前記ライダ・デバイスの指す方向の範囲を識別することと、前記ライダ・デバイスの現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲内であるかどうかを判定することと、前記現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲内であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することと、前記現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第2の変調方式に従って変調することであって、前記第2の変調方式は、前記放たれた光パルスのパルス・レートに関して、かつ、前記放たれた光パルスの電力レベルまたはエネルギ量の少なくとも1つに関して、前記第1の変調方式とは異なる、変調することと、前記光パルスを放つために前記ライダ・デバイスに供給されるエネルギの量を監視することと、所定の時間窓中に供給されるエネルギの前記量が所定の範囲内に留まるように、前記第2の変調方式を変更することとを含む方法。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】車両に取り付けられた光検出および測距(ライダ)・デバイスの指す方向を変更することであって、前記ライダ・デバイスは、光パルスを放ち、前記ライダ・デバイスの指す方向に基づいて前記放たれた光パルスの反射を検出し、前記ライダ・デバイスの前記指す方向は、前記放たれた光パルスがそこから反射される環境の領域を前記ライダ・デバイスがスキャンするように変化する、ライダ・デバイスの指す方向を変更することと、前記環境のターゲット領域に関連する前記ライダ・デバイスの指す方向の範囲を識別することと、前記ライダ・デバイスの現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲内であるかどうかを判定することと、前記現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲内であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することと、前記現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第2の変調方式に従って変調することであって、前記第2の変調方式は、前記放たれた光パルスのパルス・レートに関して、かつ、前記放たれた光パルスの電力レベルまたはエネルギ量の少なくとも1つに関して、前記第1の変調方式とは異なる、変調することと、前記光パルスを放つために前記ライダ・デバイスに供給されるエネルギの量を監視することと、所定の時間窓中に供給されるエネルギの前記量が所定の範囲内に留まるように、前記第1の変調方式を変更せずに、前記第2の変調方式を変更することとを含む方法。」
2 本件補正の目的
(1) 本件補正による請求項1の補正は、以下の補正事項からなる。
所定の時間窓中に供給されるエネルギの前記量が所定の範囲内に留まるようにする方法として、「前記第1の変調方式を変更せずに」行うものに限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) よって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された発明の認定等
ア 引用文献2に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2016-205962号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。以下同様である。
a 段落【0001】~【0009】
「【技術分野】【0001】本発明は、物標により反射される反射光に基づいて物標までの距離を検出する技術に関する。【背景技術】続きを表示(全25行)【0002】従来、物標により反射される反射光に基づいて物標までの距離を検出するレーザレーダ装置が知られている。特許文献1では、物標の検出精度を向上させるため、車両に搭載された複数のレーザレーダ装置のうち、隣接するレーザレーダ装置間において重複する探索範囲については、隣接する両方のレーザレーダ装置の測定結果に基づいて物標を検出する技術が提案されている。【先行技術文献】【特許文献】【0003】【特許文献1】特開2014-52274号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら、特許文献1に記載の技術では、探索範囲が重複する範囲については複数のレーザレーダ装置によって物標の検出精度を向上させることができるが、探索範囲が重複しない範囲については物標の検出精度を向上させることができない。なぜならば、前述の技術では、各レーザレーダ装置は、探索範囲における全ての範囲で同様の感度で物標が検出されるように構成されているためである。【0005】車両の周囲状況に応じて適切に物標を検出するためには、車両に搭載された複数のレーザレーダ装置のそれぞれについて、探索範囲に含まれる任意の範囲において物標の検出精度を向上させる技術が望まれる。【0006】そこで、本発明は、車両に搭載された測距装置であって、複数の探索範囲ごとに該探索範囲における任意の範囲での物標の検出精度を向上させる技術を提供することを目的としている。【課題を解決するための手段】【0007】本発明の一側面は、車両に搭載され、複数の測距部を備え、測距部ごとに予め定められた角度範囲である探索範囲に存在する物標をそれぞれの測距部によって検出する測距装置であって、測距部は、送信部と、受信部と、距離検出部と、設定部と、を備える。【0008】送信部は電磁波を送信し、受信部は電磁波を反射した物標からの反射波を受信する。距離検出部は、受信部によって受信した反射波に基づいて物標までの距離を検出する。設定部は、探索範囲のうちの測距部ごとに予め定められた範囲を第1探索範囲とし、他の範囲を第2探索範囲として、第1探索範囲と第2探索範囲とについて、送信部による送信態様及び受信部による受信態様のうちの少なくとも一方が異なるように設定を行う。【0009】これによれば、測距部ごとに、第1探索範囲及び第2探索範囲についての送信態様及び受信態様を設定することにより、第1探索範囲及び第2探索範囲について物標を検出する際の感度を任意に設定可能となる。この結果、探索範囲のうちの任意の範囲における物標の検出精度を向上させることができる。」
b 段落【0012】~【0013】
「【0012】以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。[1.構成][1-1.全体構成]図1に示す車両制御システム1は、車両に搭載されるシステムであって、第1測距部11、第2測距部12、第3測距部13、制御対象部20、車両制御部30を備える。【0013】第1測距部11~第3測距部13は、それぞれ、後述する車両における所定の位置に搭載される。第1測距部11~第3測距部13は、予め定められた角度範囲である探索範囲に存在する対象物に向けてレーザ光を照射し、この反射光を受光するタイミングに基づいて、車両から対象物までの距離を少なくとも検出する。第1測距部11~第3測距部13は、対象物との距離を少なくとも含んだ情報を生成して、車両制御部30に出力する。対象物には、例えば、先行車両、先行歩行者、先行物、静止車両、静止歩行者、静止物、対向車両、対向歩行者、対向物、車線、道路標識、交通信号等が含まれる。但し、これら全ての対象物を検出する必要はなく、車両制御部30が実行する車両制御処理(後述する)に必要な対象物を少なくとも検出できればよい。」
c 段落【0019】~【0034】、【図2】~【図4】
「【0019】[1-2.測距部]次に、第1測距部11~第3測距部13の構成について詳細に説明する。図2に示すように、第1測距部11は車両前方左側に設置され、第2測距部12は車両前方右側に設置され、第3測距部13は車両後方中央部に設置される。第1測距部11~第3測距部13のそれぞれは、予め定められた角度範囲を探索範囲とする。そして、これらの探索範囲のうちの予め定められた範囲が第1探索範囲として設定され、残りの範囲が第2探索範囲として設定される。第1探索範囲は、第2探索範囲よりも、対象物を検出する際の感度が高く設定される範囲をいう。【0020】続きを表示(全34行)具体的には、第1測距部11では、探索範囲ALのうち、図2にて矢印で示される車両進行方向に近い側の所定範囲が第1探索範囲Af1として設定され、残りの範囲が第2探索範囲As1として設定される。第2測距部12では、探索範囲ARのうち、車両進行方向に近い側の所定範囲が第1探索範囲Af2として設定され、残りの範囲が第2探索範囲As2として設定される。第3測距部13では、探索範囲ABのうち、車両の真後ろ方向を含む所定範囲が第1探索範囲Af3として設定され、残りの範囲が第2探索範囲As3として設定される。【0021】すなわち、図3(a)に示すように第1測距部11では第1測距部11に向かって左側が第1探索範囲Af1として設定され、図3(b)に示すように第2測距部12では第2測距部12に向かって右側が第1探索範囲Af2として設定される、という具合に、測距部ごとに探索範囲における任意の範囲が第1探索範囲として設定される。【0022】なお、第1測距部11~第3測距部13は、探索範囲における第1探索範囲の設定が異なる他は同様の構成であるため、以下では、第1測距部11の構成を中心に説明する。第1測距部11は、図4に示すように、発光部40と、受光部50と、スキャナ駆動部60と、スキャナ機構部70と、照射制御部80と、距離測定部90と、を備える。第1測距部11は、CPU、ROM、RAM等を有する周知のマイクロコンピュータ(マイコン)であり、照射制御部80及び距離測定部90は、このマイコンが実行する処理によって実現される。【0023】ここで、発光部40は、発光素子41とLD駆動部42とを備える。発光素子41は、レーザ光を発生させるレーザダイオード(LD)である。LD駆動部42は、発光指令CLに従って、強度制御指令CPに基づく大きさの制御電圧を発光素子41へ出力し、制御電圧に応じた光量のレーザ光を発光素子41に出力させる。【0024】スキャナ機構部70は、反射ミラー71と、ポリゴンミラー72と、受光レンズ73と、回転位置センサ74とを備える。ここで、発光素子41から出力されたレーザ光は、ポリゴンミラー72で反射され探索範囲ALに向けて出射される。ポリゴンミラー72は、図示しないモータによって、水平方向に回転可能に構成されるとともに、垂直方向に揺動可能に構成される。【0025】スキャナ駆動部60は、スキャン制御指令CSに従って、ポリゴンミラー72の水平方向の回転角度を変化させることにより、且つ、垂直方向の揺動角度を一例として4段階に変化させることにより、図5に示すように、レーザ光によるビームスキャンを実現する。【0026】ところで、ポリゴンミラー72の回転及び揺動によってレーザ光を走査させた場合には、ポリゴンミラー72の回転方向(ここでは水平方向とする)に対して垂直な方向の投影角を拡大すると、ポリゴンミラー72の回転位置によっては投影像が回転してしまうという問題が生じ得る。一例として投影像が長方形である場合について説明する。図5の例では投影像はいずれも長方形のように示されているが、実際には、図6に示すように、探索範囲の中心付近での投影像に対して、中心付近から離れた左端や右端での投影像は水平方向に傾くように回転している。これにより、探索範囲の左端や右端では、垂直軸方向において投影像と投影像との間に隙間が生じる。つまり、探索範囲の中心付近が第1探索範囲に設定される場合は、ポリゴンミラー72の垂直方向の揺動により投影像が隙間無く配列されるため、第1探索範囲において対象物をもれなく検出することができるが、探索範囲の左端や右端が第1探索範囲に設定される場合は、投影像と投影像との間に隙間が生じるため、第1探索範囲においてこの隙間に存在する対象物の検出もれが生じるおそれがある。【0027】そこで、本実施形態では、発光素子41は、ポリゴンミラー72へ投影されるレーザ光の投影像を、レーザ光の光軸まわりに回転させることが可能なように構成される。具体的には、ポリゴンミラー72へレーザ光を照射する光源である発光素子41は、ポリゴンミラー72がレーザ光を第1探索範囲へ導く回転位置にある場合に、該ポリゴンミラー72へ投影される投影像を、ポリゴンミラー72がレーザ光を第2探索範囲へ導く回転位置にある場合よりも、垂直方向に傾けて回転させることが可能なように構成されている。【0028】ここで、発光素子41は、一例として、レーザ光の光軸まわりに回転可能に構成されている。つまり、発光素子41が光軸まわりに回転することで、レーザ光のポリゴンミラー72への投影像が回転するようになっている。【0029】本実施形態では図7に示すように、第1測距部11の場合は、第1測距部11に向かって左端、すなわちレーザ光が第1探索範囲へ導かれる範囲では、第1測距部11に向かって中心付近及び右端、すなわちレーザ光が第2探索範囲へ導かれる範囲よりも、レーザ光のポリゴンミラー72への投影像が垂直方向により傾くように、発光素子41を光軸まわりに回転させている。これにより、第1測距部11に向かって左端の探索範囲(第1探索範囲Af1)ではポリゴンミラー72への投影像が垂直方向に隙間無く配列されるようになる。この結果、第1探索範囲Af1ではレーザ光の投影像が隙間無く配列されるため、該範囲において対象物をもれなく検出することができるようになる。【0030】図4に戻り説明を続ける。発光素子41から照射され対象物で反射されたレーザ光(反射光)は、ポリゴンミラー72で反射され反射ミラー71によって受光レンズ73へ導かれる。受光レンズ73は、反射光を集光し受光部50へ出力する。回転位置センサ74は、ポリゴンミラー72の水平方向の回転位置を検出し、回転位置を表す回転位置信号POを照射制御部80へ出力する。【0031】受光部50は、フォトダイオード(PD)51と、PD増幅器52と、AD変換器53とを備える。PD51は、受光レンズ73により集光された反射光を受光し、その強度(光量)に応じた電圧値を有する受光信号を出力する。本実施形態では、アバランシェフォトダイオード(APD)がPD51として用いられる。PD増幅器52は、増幅率制御指令CGに従って、受光信号を増幅してAD変換器53へ出力する。AD変換器53は、PD増幅器52から入力された信号をAD変換して距離測定部90へ出力する。【0032】照射制御部80は、予め設定された動作タイミングに従って、発光部40への発光指令CL及びスキャナ駆動部60へのスキャン制御指令CSを生成すると共に、発光指令CLを生成したタイミングを表す照射タイミングTSを距離測定部90に出力する照射処理を実行する。【0033】図8は、照射制御部80の動作タイミングの一例を説明する図である。照射制御部80は、図8に示すように、予め定められた測定周期Tc毎に、予め定められた4×N個のパルス信号を発生させ、このパルス信号のそれぞれを発光指令CLとして出力する。照射制御部80は、後述する照射処理において、発光指令CLが出力されるタイミングに従って、出射されるレーザ出力の強度を調整する強度制御指令CPと、受光信号の強度を調整する増幅率制御指令CGとを出力する。【0034】図4に戻り説明を続ける。距離測定部90は、AD変換された受光信号(反射光)から、該受光信号(反射光)の波形のピークを受光タイミングTRとして抽出する。そして、距離測定部90は、照射制御部80から供給される照射タイミングTSから受光タイミングTRまでの時間を求める。即ち、レーザ光を反射した対象物との間をレーザ光が往復するのに要する時間を求める。更に、距離測定部90は、その求めた往復時間から、レーザ光を反射した対象物までの距離を算出し、算出した距離を少なくとも含む情報を、車両制御部30に出力する。」
「【図2】[図:0001406293000001.jpg]」
「【図3】[図:0001406293000002.jpg]」
「【図4】[図:0001406293000003.jpg]」
d 段落【0041】~【0045】、【0052】、【0055】、【図11】、【図12】
「【0041】続くS120では、回転位置信号POを取得する。次にS125では、S120にて取得した回転位置信号POが表す回転位置に対応する発光設定を取得する。発光設定は、照射制御部80として機能するマイコンが備えるROMに記録されている。一例として図11に示すテーブルのようにして、ポリゴンミラー72の位相に応じた強度制御指令CPの値と増幅率制御指令CGの値とが発光設定として記録されている。【0042】続きを表示(全12行)強度制御指令CPの値は、一例として図12(a)の実線に示すような特性のレーザ出力を実現するように設定される。すなわち、強度制御指令CPの値は、第1探索範囲Af1へのレーザ出力が第2探索範囲As1へのレーザ出力よりも大きくなるように設定される。【0043】増幅率制御指令CGの値は、一例として図12(a)の点線に示すような特性の増幅率を実現するように設定される。すなわち、増幅率制御指令CGの値は、第1探索範囲Af1についての受光信号に対する増幅率が第2探索範囲As1についての受光信号に対する増幅率よりも大きくなるように設定される。【0044】なお、第2測距部12についての強度制御指令CPの値及び増幅率制御指令CGの値については一例として図11(b)に示すように、第3測距部13についての強度制御指令CPの値及び増幅率制御指令CGの値については一例として図11(c)に示すように、設定される。【0045】図10に戻り、説明を続ける。続くS130では、S125にて取得した発光設定に従って、強度制御指令CPを出力する。次にS135では、S125にて取得した発光設定に従って、増幅率制御指令CGを出力する。」
「【0052】[3C]第1測距部11において、距離測定部90は、第1探索範囲Af1へ送信されるレーザ光の送信強度が、第2探索範囲As1へ送信されるレーザ光よりも大きくなるように、発光部40から送信されるレーザ光の送信強度を変化させてもよい(S130)。これによれば、第1探索範囲として設定した任意の範囲において対象物を検出する際の感度を向上させることができ、結果として対象物の検出精度を向上させることができる。なお、第2測距部12及び第3測距部13についても同様の効果が奏される。」
「【0055】なお、上記実施形態では、車両制御システム1が測距装置としての一例に相当し、第1測距部11、第2測距部12、第3測距部13が測距部としての一例に相当し、発光部40が送信部としての一例に相当し、受光部50が受信部としての一例に相当する。また、距離測定部90が距離検出部及び設定部としての一例に相当し、車両制御部30が車両制御手段としての一例に相当し、発光素子41が光源としての一例に相当し、ポリゴンミラー72がミラーとしての一例に相当する。また、S130、S135が設定部としての処理の一例に相当する。また、レーザ光が電磁波としての一例に相当する。」
「【図11】[図:0001406293000004.jpg]」
「【図12】[図:0001406293000005.jpg]」
(イ) 引用文献2に記載された事項から認定した事項
引用文献2の段落【0030】、【0041】~【0042】及び【図11】において、ポリゴンミラー72の回転位置を表す回転位置信号POに基づいて、第1探索範囲と第2探索範囲における強度制御指令CPの値を変えていることから、当該回転位置信号POに従って、第1探索範囲又は第2探索範囲であることを判定していることが読み取れる。
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項及び前記(イ)において認定した事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「車両に搭載された測距装置による測距方法であって、(【0006】)測距装置は複数の測距部を備え、測距部は、送信部と、受信部と、距離検出部と、設定部と、を備え、(【0007】)送信部は電磁波を送信し、受信部は電磁波を反射した物標からの反射波を受信し、距離検出部は、受信部によって受信した反射波に基づいて物標までの距離を検出し、設定部は、探索範囲のうちの測距部ごとに予め定められた範囲を第1探索範囲とし、他の範囲を第2探索範囲として、第1探索範囲と第2探索範囲とについて、送信部による送信態様及び受信部による受信態様のうちの少なくとも一方が異なるように設定を行い、(【0008】)測距装置としての一例である車両制御システム1は、車両に搭載されるシステムであって、第1測距部11、第2測距部12、第3測距部13、制御対象部20、車両制御部30を備え、(【0012】、【0055】)続きを表示(全19行)第1測距部11~第3測距部13は、予め定められた角度範囲である探索範囲に存在する対象物に向けてレーザ光を照射し、この反射光を受光するタイミングに基づいて、車両から対象物までの距離を少なくとも検出し、対象物には、例えば、先行車両、先行歩行者、先行物、静止車両、静止歩行者、静止物、対向車両、対向歩行者、対向物、車線、道路標識、交通信号等が含まれ、(【0013】)第1測距部11~第3測距部13のそれぞれは、予め定められた角度範囲を探索範囲とし、これらの探索範囲のうちの予め定められた範囲が第1探索範囲として設定され、残りの範囲が第2探索範囲として設定され、第1探索範囲は、第2探索範囲よりも、対象物を検出する際の感度が高く設定される範囲であり、(【0019】)第1測距部11では、探索範囲ALのうち、車両進行方向に近い側の所定範囲が第1探索範囲Af1として設定され、残りの範囲が第2探索範囲As1として設定され、(【0020】)第1測距部11は、発光部40と、受光部50と、スキャナ駆動部60と、スキャナ機構部70と、照射制御部80と、距離測定部90と、を備え、(【0022】)発光部40は、発光素子41を備え、スキャナ機構部70は、反射ミラー71と、ポリゴンミラー72と、受光レンズ73と、回転位置センサ74とを備え、発光素子41から出力されたレーザ光は、ポリゴンミラー72で反射され探索範囲ALに向けて出射され、ポリゴンミラー72は、モータによって、水平方向に回転可能に構成され、(【0023】、【0024】)スキャナ駆動部60は、スキャン制御指令CSに従って、ポリゴンミラー72の水平方向の回転角度を変化させることにより、レーザ光によるビームスキャンを実現し、(【0025】)発光素子41から照射され対象物で反射されたレーザ光(反射光)を集光し受光部50へ出力し、(【0030】)回転位置センサ74は、ポリゴンミラー72の水平方向の回転位置を検出し、回転位置を表す回転位置信号POを照射制御部80へ出力し、(【0030】)照射制御部80は、予め設定された動作タイミングに従って、発光部40への発光指令CL及びスキャナ駆動部60へのスキャン制御指令CSを生成すると共に、発光指令CLを生成したタイミングを表す照射タイミングTSを距離測定部90に出力する照射処理を実行し、(【0032】)照射制御部80は、予め定められた測定周期Tc毎に、予め定められた4×N個のパルス信号を発生させ、このパルス信号のそれぞれを発光指令CLとして出力し、照射制御部80は、発光指令CLが出力されるタイミングに従って、出射されるレーザ出力の強度を調整する強度制御指令CPと、受光信号の強度を調整する増幅率制御指令CGとを出力し、(【0033】)回転位置信号POに従って、第1探索範囲又は第2探索範囲であることを判定し、(前記(イ)の認定事項)回転位置信号POが表す回転位置に対応する発光設定の一例として、ポリゴンミラー72の位相に応じた強度制御指令CPの値と増幅率制御指令CGの値とが記録され、強度制御指令CPの値は、第1探索範囲Af1へのレーザ出力が第2探索範囲As1へのレーザ出力よりも大きくなるように設定され、(【0041】、【0042】)第1探索範囲として設定した任意の範囲において対象物を検出する際の感度を向上させることができ、結果として対象物の検出精度を向上させることができる、(【0052】)測距方法。」
イ 引用文献3に記載された事項及び引用文献3技術事項の認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2015-135273号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
a 段落【0037】、【0038】、【0074】
「【0037】レーザレーダ装置11は、例えば、車両に設けられ、その車両の前方の監視を行う。なお、以下、レーザレーダ装置11により物体の検出が可能な領域を監視領域と称する。また、以下、レーザレーダ装置11が設けられている車両を他の車両と区別する必要がある場合、自車両と称する。さらに、以下、自車両の左右方向(車幅方向)と平行な方向を水平方向と称する。【0038】レーザレーダ装置11は、制御部21、測定光投光部22、検査光発光部23、受光部24、測定部25、及び、演算部26を含むように構成される。」
「【0074】演算部26は、積算部301、検出部302、通知部303、カーブ検出部304、交差点検出部305、及び、感度制御部306を含むように構成される。また、検出部302は、ピーク検出部311及び物体検出部312を含むように構成される。」
b 段落【0142】~【0149】、【0158】
「【0142】図9に戻り、一方、ステップS1において、感度制御部306は、自車両の減速度が所定の閾値以上である場合、減速中であると判定し、処理はステップS7に進む。これは、例えば、自車両が交差点、横断歩道、信号等で停止しようとしている場合、交差点やカーブを曲がったり、道路沿いの店舗等に入ったりするために減速している場合等が想定される。【0143】また、ステップS2において、感度制御部306は、センサ部15により検出された自車両の速度が所定の閾値未満である場合、徐行中であると判定し、処理はステップS7に進む。これは、例えば、自車両が人通りの多い市街地、路地裏、駐車場等において徐行している場合が想定される。続きを表示(全16行)【0144】さらに、ステップS3において、感度制御部306は、自車両が低速でカーブを曲がったと判定した時点からまだ所定の時間が経過していない場合、低速でカーブを曲がった直後であると判定し、処理はステップS7に進む。すなわち、自車両が所定の速度以下でカーブを曲がった後、所定の時間が経過するまでの間、低速でカーブを曲がった直後であると判定される。これは、例えば、市街地、路地裏、交差点のカーブや見通しの悪いカーブを曲がった直後等が想定される。【0145】ステップS4において、感度制御部306は、交差点検出部305からの情報に基づいて、自車両が交差点を中心とする所定の距離の範囲内にいることを検出した場合、交差点付近(交差点内を含む)であると判定し、処理はステップS7に進む。【0146】なお、ステップS1乃至S4の判定処理の結果、ステップS7に進む場合は、いずれも自車両の周囲に歩行者又は軽車両がいる可能性が高い場合である。従って、監視領域の外から自車両の前方に歩行者又は軽車両が飛び出してくる可能性が高いと想定される。【0147】ステップS7において、感度制御部306は、監視領域の両端の感度を上げるよう指示する。すなわち、感度制御部306は、制御部21に、検出領域A1及びA16(両端検出領域群)に対する感度を上げるように指示する。【0148】ステップS8において、ステップS6の処理と同様に、物体検出処理が実行され、その後、処理はステップS9に進む。なお、ここでの物体検出処理(以下、両端優先物体検出処理と称する)は、ステップS6の通常物体検出処理とは異なり、監視領域の両端の両端検出領域群の監視を優先して行い、物体の検出を行う処理である。【0149】なお、両端優先物体検出処理は、通常物体検出処理と比較して、1回の検出期間内の各測定期間に選択される受光素子202の組み合わせ、並びに、TIA262及びPGA263のゲインの設定値が異なる。」
「【0158】図9に戻り、ステップS9において、演算部26は、検出結果を通知する。具体的には、物体検出部312は、物体の有無、物体の位置、距離、大きさ、衝突又は接触の危険性の有無等の検出結果を通知部303、制御部21、及び、カーブ検出部304に供給する。通知部303は、必要に応じて、検出結果を車両制御装置12に供給する。」
c 段落【0163】、【0164】、【0170】
「【0163】<2.変形例>以下、上述した本発明の実施の形態の変形例について説明する。【0164】{両端優先物体検出処理における検出感度の制御方法等に関する変形例}両端優先物体検出処理における検出感度の制御方法は、上述した例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。」
「【0170】さらに、例えば、両端優先物体検出処理において、測定光投光部22が測定光を投光する間隔を短くし、1サイクルの測定期間内に測定光を投光する回数を増やし、その結果、1回の検出期間内に測定光を投光する回数を増やすことにより、全ての検出領域に対する検出感度を上げるようにしてもよい。この場合、測定光の投光間隔が短くなるため、受光信号をサンプリングする時間を短縮する必要が生じる。一方、遠距離に存在する物体からの反射光を受光するまでの時間は長いため、受光信号のサンプリング以降の処理が間に合わない場合もある。そのため、遠距離に存在する物体を検出できなくなる。しかし、両端優先物体検出処理が実行される場合には、通常自車両の速度が遅い状態であり、かつ、近距離の歩行者や軽車両の検出精度の向上が優先されるため、特に問題にならない。」
(イ) 引用文献3技術事項の認定
前記(ア)に摘記した事項から、引用文献3には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献3技術事項」という。)。
[引用文献3技術事項]
「車両に設けられるレーザレーダ装置11において、(【0037】)レーザレーダ装置11は演算部26を含み、また演算部26は検出部302を含むように構成され、検出部302は物体検出部312を含み、(【0038】、【0074】)物体検出部312は、物体の距離の検出結果を通知部303、制御部21、及び、カーブ検出部304に供給し、(【0158】)監視領域の外から自車両の前方に歩行者又は軽車両が飛び出してくる可能性が高い場合に、感度制御部306は、監視領域の両端の感度を上げるようにし、ここでの物体検出処理(両端優先物体検出処理)において、監視領域の両端の両端検出領域群の監視を優先して行い、物体の検出を行う処理を実行しており、(【0146】~【0148】)両端優先物体検出処理における検出感度の制御方法として、測定光投光部22が測定光を投光する間隔を短くし、1サイクルの測定期間内に測定光を投光する回数を増やし、その結果、1回の検出期間内に測定光を投光する回数を増やすことにより、全ての検出領域に対する検出感度を上げるようにすること。(【0164】、【0170】)」
ウ 引用文献6に記載された事項及び周知技術1の認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された本願の優先日前に発行された文献である特開2000-241546号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、レーザパルスを送出するレーザが設けられている車内の物体または乗員の捕捉装置に関する。【0002】【従来の技術】助手席のいわゆるリボード(Reboard)チャイルドシートにいる子供なども含めて、計器盤方向に向かってかなり前にずれている乗員は、エアバッグの設けられた自動車の車両走行動作中、事故発生時にエアバッグが勢いよく膨らむことでけがをする危険に晒されている。乗員保護のための最新のコントロールシステムによれば、乗員がけがをするリスクを避けるため、そのような状況ではエアバッグの作動を停止したり、あるいは勢いを弱めて膨らませたりする努力が払われている。車内の乗員位置を検出するためには、非接触の光学センサを用いるとよい。」
「【0006】【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の課題は、車両内部の物体または乗員を捕捉する公知の方法および装置から出発して、自動車乗員の健康状態を損なうことなく捕捉装置内でレーザを適用できるようにした安全措置をとることである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明によればこの課題は、レーザの送出エネルギーに関する特性量を捕捉する捕捉装置と、捕捉された前記特性量に依存して送出エネルギーを低減するかまたはレーザパルスの送出を阻止する制御装置が設けられていることにより解決される。【0008】【発明の実施の形態】本発明によれば、レーザの送出エネルギーの基準となる特性量が適切な装置によって捕捉され、この特性量の評価に基づき送出エネルギーが、あとから照射されるレーザパルスが低減されたエネルギー内容をもつよう抑えられる。これに対する代案として、レーザパルスの送出が全面的に阻止される。後続のレーザパルスのエネルギー内容を低減するため、有利にはその出力および/またはパルス持続時間が小さくされる。【0009】本発明により得られる利点とは、レーザの放射領域内に位置する車両乗員がいかなる時点であっても過剰量のレーザビームエネルギーに晒されないことである。本発明によれば、レーザ適用時の人員の放射負荷に関する規格全般たとえばIEC規格などを遵守できる。【0010】乗員は、レーザを駆動する制御ユニットの誤動作からも保護される。通常はマイクロプロセッサとして構成されるこの種の制御ユニットがレーザを駆動し、これによって個々のレーザパルスのパルス幅や出力が決められる。このような制御ユニットの誤動作に起因して、たとえばパルス幅が制御ユニットのソフトウェアまたはハードウェアにおいて無限にセットされてしまう可能性がある。このためレーザの連続光が照射される。制御ユニットにより制御可能な電気的出力段を介してレーザがエネルギー源と接続されている場合、本発明によれば、出力段が故障して持続的に導通状態になったにもかかわらず、乗員を過度に高まった放射負荷から保護することができる。【0011】本発明による装置はこの種の連続放射を、レーザ送出エネルギーの基準となる特性量たとえばレーザパルスのエネルギー内容、送出出力または送出レベルを捕捉装置が受け取ることで検出する。制御装置は、捕捉された特性量を以下のようにして評価する。レーザのエネルギー送出が高められたこと、つまりそれに付随して乗員に対する放射が強くなったことを検出すると、送出エネルギーを低減するかまたはレーザエネルギー送出を全面的に阻止する。」
「【0020】図3には、本発明による装置の第1の回路図が示されている。これによればレーザ2がレーザダイオードとして電流回路内に配置されており、この電流回路には、電流源として構成されたエネルギー源6,スイッチングトランジスタとして構成された出力段7、ならびに電流測定抵抗31として構成された捕捉装置が設けられている。出力段7は制御ユニット5により交互に導通されたり阻止されたりし、これによってレーザ2はパルス化されたレーザ光を送出することになる。マイクロプロセッサ41として構成された制御装置は、電流測定抵抗31を流れレーザ2を駆動する電流Iの尺度として、その抵抗における電圧降下UR を受け取る。つまりレーザ2の送出エネルギーの基準となる捕捉特性量としてレーザのための駆動電流Iが用いられ、これがレーザ送出エネルギーの尺度を成す。この駆動電流Iから、有利には特性曲線に基づきレーザ2の送出出力が導出される。さらに、レーザパルスのパルス持続時間も制御装置41により捕捉される。求められた出力とパルス持続時間の積からレーザパルスのエネルギー内容が得られ、これが限界値と比較される。レーザの出力送出が一定であると予期できる場合には、パルス開始からの出力の積分によってレーザパルスのエネルギー内容を求めることができる。求められたエネルギー内容が限界値を超えていれば、制御装置41は出力段7の制御に介在して補正操作する。その際、制御装置41の制御信号には制御ユニット5の制御信号よりも大きい重みが付与されるので、たとえ制御ユニット5が出力段7を引き続き導通状態にさせようとしても、制御装置41の対応する信号に基づき出力段7は阻止される。」
(イ) 周知技術1の認定
前記(ア)に摘記した引用文献6の記載に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)
[周知技術1]
「人に対する安全性を確保するため、レーザパルスのパルス持続時間におけるレーザの送出出力と当該持続時間の積からなるエネルギー量を取得し、当該エネルギー量が所定の限界値を超える場合にその出力を低減させること。」
エ 引用文献7、引用文献8に記載された事項及び技術常識1の認定
(ア) 引用文献7に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開平7-134178号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、レーザ光を用いた車載用距離測定装置に関し、特にレーザ光が人体に与える悪影響を防止する構造に関する。」
「【0006】またレーザ光は、光量や照射時間によって、目や皮膚など人体に対し悪影響を及ぼすことがある。自動車100からのレーザ光L1が、測定対象車101のバックミラーで反射し、測定対象車101の乗員や歩行者の目など、人体に害を与えるという問題もある。特に、自動車100と測定対象との距離が短い場合や、測定対象へのレーザ光L1の照射時間が長い場合は、その危険性が高い。さらに、レーザ光L1のエネルギー密度が一定のレベルであるので、レーザダイオードの劣化が激しく、製品寿命が短くなる。」
(イ) 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開平7-260937号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、距離測定装置に関するものである。更に詳しくはレーザレーダを用いた主として車両等の走行体に載置された距離測定装置に関するものである。【0002】【従来の技術】従来の車両用等の走行体に載置された距離測定装置は、レーザレーダを用いて測定距離から一定距離範囲内にある対象物、例えば車などの対象物の存在を検知し、且つ対象物までの距離を測定していた。車両用等の対象物検知にレーザレーダを用いる場合、対象物の検知が可能な反射光パワーを確保するには、遠距離にある対象物ほど大きな送信光パワーが必要であり、一方、人間の目にレーザ光が当たると危険なので、障害を及ぼさないように必要以上の送信光パワーを出力しないようにしなければならない。このため、従来の装置では搭載車両の走行速度を検出して、走行速度がある一定値以下ではレーザ光の出力を下げるか、又は距離測定装置の給電を停止してレーザ光を送信しないようにするなどして目の安全性の確保を図っていた。」
(ウ) 技術常識1の認定
前記(ア)及び(イ)に摘記した引用文献7及び引用文献8の記載に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)
[技術常識1]
「レーザ光を用いた車載用距離測定装置において、レーザ光が歩行者等の人体に悪影響を与え得るという問題があること。」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明は、「車両に搭載された測距装置による測距方法」の発明であって、本件補正発明と引用発明は、「方法」の発明である点で一致する。
b(a) 引用発明において、「測距装置としての一例である車両制御システム1は、車両に搭載されるシステムであって、第1測距部11、第2測距部12、第3測距部13、制御対象部20、車両制御部30を備え」、「第1測距部11は、発光部40と、受光部50と、スキャナ駆動部60と、スキャナ機構部70と、照射制御部80と、距離測定部90と、を備え」、「発光部40は、発光素子41を備え、スキャナ機構部70は、反射ミラー71と、ポリゴンミラー72と、受光レンズ73と、回転位置センサ74とを備え、発光素子41から出力されたレーザ光は、ポリゴンミラー72で反射され探索範囲ALに向けて出射され、ポリゴンミラー72は、モータによって、水平方向に回転可能に構成され」ている。
(b) 前記(a)に示したとおり、引用発明は「車両に搭載された測距装置による測距方法」であって、「測距装置としての一例である車両制御システム1」の「第1測距部」に「受光部50」を備えるものであるから、本件補正発明の「車両に取り付けられた光検出および測距(ライダ)・デバイス」に相当する構成を備えると認められる。
(c) また、本件補正発明の(ライダ)・デバイスの「指す方向」は、本願の明細書の段落【0004】に「一例では、方法は、センサであって、光パルスを放ち、センサの指す方向に基づいて放たれた光パルスの反射を検出するセンサを回転することを含む。」と記載されるように、「光パルスを放つ方向」を意味すると認められる。そして、「センサを回転すること」は「センサの指す方向」を変更する一例であると認められる。
ここで、引用発明において、「第1測距部11」の「発光素子41から出力されたレーザ光は、ポリゴンミラー72で反射され探索範囲ALに向けて出射され、ポリゴンミラー72は、モータによって、水平方向に回転可能に構成され」ており、「発光素子」からの光を放つ方向が「ポリゴンミラー72」によって変更されていると認められる。そして、「照射制御部80は、予め定められた測定周期Tc毎に、予め定められた4×N個のパルス信号を発生させ」ていることから、発光素子はパルス光を生成していると認められる。
(d) したがって、前記(b)及び(c)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「車両に取り付けられた光検出および測距(ライダ)・デバイスの指す方向を変更する」ことを含む点で一致する。
c(a) 前記b(c)において説示したとおり、引用発明において、「発光素子41」はパルス光を生成しており、本件補正発明の「前記ライダ・デバイスは、光パルスを放[つ]」構成を備えるものと認められる。
(b) また、引用発明において、「発光素子41から照射され対象物で反射されたレーザ光(反射光)を集光し受光部50へ出力し」ており、前記b(c)を踏まえると、引用発明は本件補正発明の「前記ライダ・デバイスの指す方向に基づいて前記放たれた光パルスの反射を検出」する構成に相当する構成を備えるものと認められる。
(c) さらに、引用発明の「第1測距部11」において、「スキャナ駆動部60は、スキャン制御指令CSに従って、ポリゴンミラー72の水平方向の回転角度を変化させることにより、レーザ光によるビームスキャンを実現し」ており、これは本件補正発明の「前記ライダ・デバイスの前記指す方向は、前記放たれた光パルスがそこから反射される環境の領域を前記ライダ・デバイスがスキャンするように変化する」構成に相当する。
(d) したがって、前記(a)から(c)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記ライダ・デバイスは、光パルスを放ち、前記ライダ・デバイスの指す方向に基づいて前記放たれた光パルスの反射を検出し、前記ライダ・デバイスの前記指す方向は、前記放たれた光パルスがそこから反射される環境の領域を前記ライダ・デバイスがスキャンするように変化する、ライダ・デバイスの指す方向を変更すること」を含む点で一致する。
d(a) 本件補正発明の「前記環境のターゲット領域に関連する前記ライダ・デバイスの指す方向の範囲を識別すること」は必ずしもその意味するところが明確でないが、本願の明細書の段落【0088】に、「ブロック504では、方法500は、環境のターゲット領域に関連するセンサの指す方向の範囲を識別することを含む。センサが車両に取り付けられる第1の例では、ターゲット領域は、車両が移動している道路内のまたはこれに近接する位置とすることができる。・・・」と記載されていることを踏まえると、「ライダ・デバイスの指す方向の範囲」のうちの特定の領域である「環境のターゲット領域」を設定することを指すものと認められる。
(b) 引用発明において、「第1測距部11~第3測距部13のそれぞれは、予め定められた角度範囲を探索範囲とし、これらの探索範囲のうちの予め定められた範囲が第1探索範囲として設定され、残りの範囲が第2探索範囲として設定され、第1探索範囲は、第2探索範囲よりも、対象物を検出する際の感度が高く設定される範囲」としており、このうち「第1探索範囲」が、本件補正発明の「環境のターゲット領域」に相当する。
(c) したがって、前記(a)及び(b)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は「前記環境のターゲット領域に関連する前記ライダ・デバイスの指す方向の範囲を識別すること」を含む点で一致する。
e 引用発明において、「第1測距部」の「発光部40」は「回転位置センサ74」を備え、「回転位置センサ74は、ポリゴンミラー72の水平方向の回転位置を検出し、回転位置を表す回転位置信号POを照射制御部80へ出力し」、「回転位置信号POに従って、第1探索範囲又は第2探索範囲であることを判定し」ているから、本件補正発明と引用発明は、「前記ライダ・デバイスの現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲内であるかどうかを判定すること」を含む点で一致する。
f(a) 引用発明において、「回転位置信号POが表す回転位置に対応する発光設定の一例として、ポリゴンミラー72の位相に応じた強度制御指令CPの値と増幅率制御指令CGの値とが記録され、強度制御指令CPの値は、第1探索範囲Af1へのレーザ出力が第2探索範囲As1へのレーザ出力よりも大きくなるように設定され」ている。
(b) ここで、引用発明の「第1探索範囲Af1」は、前記dを踏まえると、本件補正発明の「識別された指す方向の範囲内」に相当する。
そうすると、引用発明の「発光設定」及び「第2探索範囲As1」は、本件補正発明の「変調方式」及び「識別された指す方向の範囲外」に相当する。
(c) また、前記(a)に説示したとおり、引用発明において、予め記録されたポリゴンミラー72の位相に応じた強度制御指令CPの値に従って、「第1探索範囲Af1へのレーザ出力が第2探索範囲As1へのレーザ出力よりも大きくなるように設定され」ており、それぞれの探索範囲に応じて異なる出力となるように定められた変調方式に従ってその出力が変調されていると認められる。
(d) したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲内であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することと、前記現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第2の変調方式に従って変調すること」を含む点で一致する。
g(a) 前記fに説示したとおり、引用発明において、「強度制御指令CPの値は、第1探索範囲Af1へのレーザ出力が第2探索範囲As1へのレーザ出力よりも大きくなるように設定され」ている。
(b) ここで、引用発明の「レーザ出力」は、その定義及び単位について明示はないが、技術常識から、電力(W)又はエネルギー(J)を意味することは自明であって、本件補正発明の「電力レベルまたはエネルギ量」に相当する。
(c) したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記第2の変調方式は、前記放たれた光パルスの電力レベルまたはエネルギ量の少なくとも1つに関して、前記第1の変調方式とは異なる、変調すること」を含む点で共通する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。
a 一致点
「 車両に取り付けられた光検出および測距(ライダ)・デバイスの指す方向を変更することであって、前記ライダ・デバイスは、光パルスを放ち、前記ライダ・デバイスの指す方向に基づいて前記放たれた光パルスの反射を検出し、前記ライダ・デバイスの前記指す方向は、前記放たれた光パルスがそこから反射される環境の領域を前記ライダ・デバイスがスキャンするように変化する、ライダ・デバイスの指す方向を変更することと、前記環境のターゲット領域に関連する前記ライダ・デバイスの指す方向の範囲を識別することと、前記ライダ・デバイスの現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲内であるかどうかを判定することと、前記現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲内であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することと、前記現在の指す方向が前記識別された指す方向の範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第2の変調方式に従って変調することであって、前記第2の変調方式は、前記放たれた光パルスの電力レベルまたはエネルギ量の少なくとも1つに関して、前記第1の変調方式とは異なる、変調することを含む方法。」である点。
b 相違点
(a) 相違点1
本件補正発明においては、「第2の変調方式」は「第1の変調方式」と「放たれた光パルスの電力レベルまたはエネルギ量の少なくとも1つに関して」だけでなく、「放たれた光パルスのパルス・レートに関して」も異なるように変調しているのに対し、
引用発明は、第1探索範囲Af1と第2探索範囲As1とでレーザの光パルスのパルス・レートを異なるように変調するものではない点。
(b) 相違点2
本件補正発明においては、「前記光パルスを放つために前記ライダ・デバイスに供給されるエネルギの量を監視することと、所定の時間窓中に供給されるエネルギの前記量が所定の範囲内に留まるように、前記第1の変調方式を変更せずに、前記第2の変調方式を変更する」ものであるのに対し、
引用発明においては、このような構成を備えてはいない点。
イ 判断
前記相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
a 引用文献3には、「車両に設けられたレーザレーダ装置11」において、「レーザレーダ装置11は演算部26を含み、また演算部26は検出部302を含むように構成され、検出部302は物体検出部312を含み」、「物体検出部312は、物体の距離の検出結果を通知部303、制御部21、及び、カーブ検出部304に供給し」、「測定光投光部22が測定光を投光する間隔を短くし、1サイクルの測定期間内に測定光を投光する回数を増やし、その結果、1回の検出期間内に測定光を投光する回数を増やすことにより、全ての検出領域に対する検出感度を上げるようにすること」が記載されている(前記「引用文献3技術事項」を参照)。
そして、引用文献3技術事項の「測定光を投光する間隔を短くし、1サイクルの測定期間内に測定光を投光する回数を増やし、その結果、1回の検出期間内に測定光を投光する回数を増やすこと」は、本件補正発明の「放たれた光パルスのパルス・レートに関して」、「変調すること」に相当する。
b ここで、引用発明及び引用文献3技術事項はいずれもレーザ測距に関するものである。
また、引用発明は、「第1探索範囲として設定した任意の範囲において対象物を検出する際の感度を向上させることができ、結果として対象物の検出精度を向上させることができる」ことから、前記bを踏まえると、引用発明及び引用文献3技術事項は、検出する際の感度を向上させるという点で課題も共通している。
c したがって、引用発明において、第1探索範囲と第2探索範囲とで「レーザ出力」を異ならせるだけでなく、これに併せて引用文献3技術事項を採用して、「1回の検出期間内に測定光を投光する回数を増や[し]」、相違点1に係る構成を備えるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(イ) 相違点2について
a ライダ・デバイスに供給されるエネルギの量を監視し、所定の時間窓中に供給されるエネルギの前記量が所定の範囲内に留まるようにすることについて
(a) 引用発明において、距離の検出の「対象物」には、「先行歩行者」、「静止歩行者」、「対向歩行者」等の歩行者を含み、こうした距離の検出においては、「レーザ光を用いた車載用距離測定装置において、レーザ光が歩行者等の人体に悪影響を与え得るという問題があること」は技術常識であるから(前記「技術常識1」を参照)、歩行者等の人体への影響に配慮することは当業者にとっては自明の課題である。
(b) そして、「人に対する安全性を確保するため、レーザパルスのパルス持続時間におけるレーザの送出出力と当該持続時間の積からなるエネルギー量を取得し、当該エネルギー量が所定の限界値を超える場合にその出力を低減させること。」は本願の優先日前において、当業者にとって周知技術であって(前記「周知技術1」を参照)、前記(a)の自明な課題を解決するために、引用発明において当該周知技術1を採用することは当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。この場合、レーザの送出出力に関する値を監視していることは自明である。
b 第1の変調方式を変更せずに、第2の変調方式を変更することについて
引用発明において、「第1測距部11では、探索範囲ALのうち、車両進行方向に近い側の所定範囲が第1探索範囲Af1として設定され、残りの範囲が第2探索範囲As1として設定され」、対象物として想定される「歩行者」は通常であれば車両進行方向である道路上よりも歩道、すなわち「第2探索範囲As1」として設定されるエリアに居ることが多いことを鑑みると、「第2探索範囲As1」において、人体への影響に配慮を行うことが自然である。
したがって、引用発明において、「第1探索範囲Af1」においては特段の人体に対する配慮は行わず、「第2探索範囲As1」においてのみ配慮を行い、それに伴ってレーザの出力を制御するようにすることは当業者であれば容易に想到し得たものにすぎない。
仮にそうでないとしても、想定される歩行者などの配置を考慮して、レーザーの出力の調整を実施する探索範囲を選択する程度のことは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
c 前記a及びbを踏まえると、引用発明において、周知技術1及び技術常識1を考慮して、相違点2に係る構成を備えるようにすることは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)において検討したとおり、引用発明において相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献3技術事項、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張等について
(ア) 審判請求書の主張内容
審判請求書において請求人は、概略次の主張をしている。
引用文献から得られる構成は、「第1探索範囲へのエネルギー送出」及び「第2探索範囲へのエネルギー送出」の両方が低減される構成にすぎない。
すなわち、引用文献からは、本件補正発明における「所定の時間窓中に供給されるエネルギの前記量が所定の範囲内に留まるように、前記第1の変調方式を変更せずに、前記第2の変調方式を変更すること」という構成に想到することはできない。
本件補正発明は、「第1の変調方式」を変更しないことによって「前記識別された指す方向の範囲内」における検出精度を維持しつつ、「第2の変調方式」を変更することによって「ライダ・デバイスの他の構成要素に影響する可能性がある過剰な熱をライダ・デバイス(および/またはファイバ・レーザ)がそこで生成する」ことを抑制することが可能になるという(本願段落[0100])、特別の作用効果を有する。
(イ) 請求人の主張についての検討
折りたたみ中(クリックで表示)
前記イ(イ)において説示したとおり、本件補正発明における「所定の時間窓中に供給されるエネルギの前記量が所定の範囲内に留まるように、前記第1の変調方式を変更せずに、前記第2の変調方式を変更すること」という構成を備えるようにすることは、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて、当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。
また、請求人の主張する効果について、「「前記識別された指す方向の範囲内」における検出精度を維持」することは、「第1の変調方式」を変更しないことによって得られる自明の効果にすぎない。
さらに、「「ライダ・デバイスの他の構成要素に影響する可能性がある過剰な熱をライダ・デバイス(および/またはファイバ・レーザ)がそこで生成する」ことを抑制することが可能になる」という効果についても、レーザの出力を抑えることで光学素子の劣化が抑制されることは当然に奏される効果にすぎず、「第2の変調方式」を変更することによって得られる請求人の主張する効果は当業者が予測し得る程度の効果にすぎない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(4) 独立特許要件の判断についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否のまとめ
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~20に係る発明は、令和4年4月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものであると認める。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由は、次のとおりである。
理由1(進歩性の欠如)
本願発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献2、3、5、6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
3 引用文献に記載された事項
前記引用文献2には、前記第2の3(2)ア(ウ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、引用文献3技術事項、周知技術1及び技術常識1は、それぞれ、前記第2の3(2)イ(イ)、ウ(イ)、エ(ウ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
(1) 本願発明は、本件補正発明のうち、下記の限定を省いたものである(前記第2の2参照)。
所定の時間窓中に供給されるエネルギの前記量が所定の範囲内に留まるようにする方法として、「前記第1の変調方式を変更せずに」行うものに限定すること。
(2) そうすると、前記第2の3(3)アにおける検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の相違点A及び相違点Bにおいて相違すると認められる。
ア 相違点A
本願発明においては、「第2の変調方式」は「第1の変調方式」と「放たれた光パルスの電力レベルまたはエネルギ量の少なくとも1つに関して」だけでなく、「放たれた光パルスのパルス・レートに関して」も異なるように変調しているのに対し、
引用発明においては、第1探索範囲Af1と第2探索範囲As1とでレーザの光パルスのパルス・レートを異なるように変調するものではない点。
イ 相違点B
本願発明においては、「前記光パルスを放つために前記ライダ・デバイスに供給されるエネルギの量を監視することと、所定の時間窓中に供給されるエネルギの前記量が所定の範囲内に留まるように、前記第2の変調方式を変更する」ものであるのに対し、
引用発明においては、このような構成を備えてはいない点。
(3)ア 相違点Aは前記第2の3(3)ア(イ)b(a)の相違点1と同等の構成であるところ、前記第2の3(3)イ(ア)において検討したのと同様に、相違点Aに係る構成とすることは、引用発明及び引用文献3技術事項に基づいて、当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。
イ 相違点Bは前記第2の3(3)ア(イ)b(b)の相違点2に包含される構成であるところ、前記第2の3(3)イ(イ)において検討したのと同様に、相違点Bは、引用発明、周知技術1及び技術常識1から当業者が容易に想到し得たものである。
ウ そして、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
エ したがって、本願発明は、引用発明、引用文献3技術事項、周知技術1及び技術常識1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-014796