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特許拒絶査定不服審判

2023-021081

車両レーダ調整及び干渉低減のための方法及びシステム

審判番号
2023-021081
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-009202
請求日
2023年12月12日
審決日
2025年10月16日
公報発行日
2026年04月24日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ウェイモ エルエルシー
  • 【請求人代理人】稲葉 良幸
  • 【請求人代理人】佐藤 睦
審判長/審判官
  • 審判長 濱野 隆
  • 審判官 喜々津 徳胤
  • 審判官 道祖土 新吾
分類
P18 .121-WZ (G01S)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022- 9202「車両レーダ調整及び干渉低減のための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 4月19日出願公開、特開2022- 62107〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)8月15日を国際出願日とする外国語特許出願(特願2017-509028号)の一部を、平成30年9月19日に新たな外国語書面出願とした特願2018-174466号の一部を、令和4年1月25日に新たな外国語書面出願としたものであって(パリ条約による優先権主張、2014年8月28日及び2014年9月23日、いずれも米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。ここで、2014年8月28日を以下「優先日」という。 令和4年 2月16日 :翻訳文、手続補正書の提出 令和5年 3月17日付け:拒絶理由通知書 同年 6月13日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月15日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月20日 :原査定の謄本の送達) 同年12月12日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和7年 3月28日付け:拒絶理由通知書 同年 6月26日 :意見書の提出 2 本願発明について (1) 本願発明の認定と構成の分説 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年12月12日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。また、参考図として、本願の【図3】、【図5】を掲載する。 <本願発明の分説> (構成X) システムであって、 (構成A) 通信システムを有し、かつ、第1の車両及び第2の車両から遠隔に位置する、コンピューティングデバイスを含み、 (構成B) 前記コンピューティングデバイスは、 前記通信システムを介して、前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示す、前記第1の車両からのデータを受け取り、前記第1の車両からの前記データは、さらに、前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示し、 (構成C) 前記第1の車両に対する前記第2の車両の前記速度及び前記向きに基づいて、前記第1の車両に結合された第1のセンサと前記第2の車両に結合された少なくとも第2のセンサとの間の干渉の見込みが限界見込みを超えることを判断し、 (構成D) 前記通信システムを介して、前記干渉の見込みを前記限界見込みより低減させる、前記第1のセンサの動作に対応する1つ以上の調節を実行するために、前記第1の車両に命令を提供するよう構成され、前記1つ以上の調節は、前記第1の車両の方向又は速度に基づく、前記第1のセンサの出力レベルに対する調節を含む、 (構成X) システム。 <参考図> 【図3】 [図:0001433449000001.jpg] 【図5】 [図:0001433449000002.jpg] (2) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体による。 「【0003】 [0003] 電波探知(RADAR)システムは、無線信号を放出し、返ってくる反射信号を検出することにより、環境上の特徴に対する範囲、角度、及び/又はドップラ周波数偏移を能動的に推定するために使用することができる。無線反射性の特徴までの距離は、送信と受信との間の時間遅延に応じて決定することができる。レーダシステムは、時間で変動する周波数ランプを備えた信号など、時間の経過につれて周波数が変動する信号を放出し、次に放出信号と反射信号との周波数の差を範囲推定値に関連付けることができる。システムによっては、受信した反射信号内のドップラ周波数偏移に基づいて、反射性物体の相対運動も推定することができる。 …(中略)… 【発明の概要】 【0006】 [0006] 一例では、センサによって送信された電磁(EM:electromagnetic)放射と車両の環境内の1つ以上の物体からのEM放射の反射との比較に基づいて車両の環境を検出するように構成されたセンサを含む車両が提供される。また、この車両は、車両の環境内の少なくとも1台の他の車両を示す外部コンピューティングデバイスからのデータを受信するように構成されたコントローラを含むこともできる。少なくとも1台の他の車両は少なくとも1つのセンサを含むことができる。また、このコントローラは、少なくとも1台の他の車両の少なくとも1つのセンサと当該車両のセンサとの干渉の見込み(likelihood of interference)をデータに基づいて判断するように構成することもできる。また、このコントローラは、応答的にセンサの調節を開始して、当該車両のセンサと少なくとも1台の他の車両の少なくとも1つのセンサとの干渉の見込みを低減するように構成することもできる。 …(中略)… 【0010】 [0010] 更に他の例では、1つ以上のプロセッサを含むコンピューティングデバイスによって複数の車両からのデータを受信するための手段を含むシステムが提供される。このデータは複数の車両内のセンサの構成パラメータを示す可能性がある。また、このデータは複数の車両の位置も示す可能性がある。所与の車両の所与のセンサは、所与のセンサによって送信された電磁(EM)放射と所与の車両の環境内の1つ以上の物体からのEM放射の反射との比較に基づいて所与の車両の環境を検出するように構成することができる。このシステムは、所与の車両が少なくとも1台の他の車両までの限界距離内にあることをデータに基づいて判断するための手段を更に含む。このシステムは、少なくとも1台の他の車両の少なくとも1つのセンサと所与の車両の所与のセンサとの干渉の見込みを構成パラメータに基づいて応答的に判断するための手段を更に含む。このシステムは、所与のセンサの所与の構成パラメータを調節して、所与の車両の所与のセンサと少なくとも1台の他の車両の少なくとも1つのセンサとの干渉の見込みを低減するための要求をコンピューティングデバイスが所与の車両に提供するための手段を更に含む。この要求の提供は、当該見込みが限界見込みより大きいことに基づくことができる。」 「【0014】 [0023] 事故を回避する能力を有する可能性のある事故防止システムを装備した自律型車両の開発を含み、車両の安全性を改善するための努力が絶えず続けられている。自律型車両の環境内の障害物及び/又は他の車両を検出し、それにより事故防止を容易にするために、数ある可能性の中で、電波探知(RADAR)センサ及び光検知測距(LIDAR)センサなどの様々なセンサが自律型車両に含まれる可能性がある。しかしながら、より多くの車両がこのような事故防止システムを採用し、センサ装備車両の密度が高まるにつれて、センサ間の干渉が事故防止に使用するためのセンサの正確度及び有効性を低減する場合がある。 【0015】 [0024] 例の範囲内で、本明細書のシステム及び方法は、車両のセンサを調節して、そのセンサと他の車両の他のセンサとの干渉の見込みを低減するように構成することができる。一例として、本明細書の車両は、車両の環境を検出するように構成されたセンサを含むことができる。この車両は、車両の環境内の少なくとも1台の他の車両を示す外部コンピューティングデバイスからのデータを受信するように構成されたコントローラを更に含むことができる。外部コンピューティングデバイスは、例えば、当該車両及び環境内の他の車両と無線通信するサーバにすることができる。1つの事例では、コントローラは、少なくとも1台の他の車両の少なくとも1つのセンサが当該車両のセンサの方に向けられていることをデータに基づいて判断するように構成することもできる。他の事例では、コントローラは、当該車両及び少なくとも1台の他の車両が互いに対して限界距離内にあり、その結果、干渉の見込みを増加することを判断するように構成することができる。従って、例えば、このデータは少なくとも1台の他の車両の位置及び/又は少なくとも1つのセンサの方向を含むことができる。また、コントローラは、応答的にセンサの調節を開始して、当該車両のセンサと少なくとも1台の他の車両の少なくとも1つのセンサとの干渉の見込みを低減するように構成することもできる。 …(中略)… 【0017】 [0026] 代替的に、幾つかの例では、外部コンピューティングデバイスは、車両のセンサ及び当該車両の付近にいる他の車両の他のセンサの構成パラメータを受信することができる。これらの例では、外部コンピューティングデバイスは、様々なセンサ間の干渉を低減するために、対応するセンサに関する適切な調節により車両及び/又は他の車両に命令を提供することができる。従って、幾つかの実施形態では、車両に関する上記の機能の幾つかは、外部コンピューティングデバイスと車両とのネットワーク遅延時間などの様々な条件又はその他の安全性の考慮事項に応じて、代替的に外部コンピューティングデバイスによって実行することができる。」 「【0063】 [0072] 図3は実施形態の一例によるシステム300の簡略ブロック図である。システム300は、(例えば、有線及び/又は無線インターフェースを介して)外部コンピューティングデバイス304に通信可能にリンクされた車両302a~302dを含む。車両302a~302d及びコンピューティングデバイス304はネットワーク内で通信することができる。代替的に、車両302a~302d及びコンピューティングデバイス304はそれぞれ、それぞれのネットワーク内に常駐することができる。 【0064】 [0073] 車両302a~302dは車両100~200と同様のものにすることができる。例えば、車両302a~302dは、それぞれが車両302a~302dの環境を検出するためにセンサ(例えば、RADARなど)を含む、部分的又は完全自律型車両にすることができる。車両302a~302dは、ユーザインターフェース、通信インターフェース、プロセッサ、及びコンピューティングデバイス304に送信されたデータ又はコンピューティングデバイス304によって受信されたデータに関する1つ以上の機能を実行するためにプロセッサによって実行可能な命令を含むデータ記憶装置など、図3に示されていないコンポーネントを含むことができる。更に、これらの機能は、車両302a~302d又はセンサなどのそのコンポーネントの制御にも関連する可能性がある。そのために、これらの機能は本明細書に記載されている方法及びシステムも含むことができる。 【0065】 [0074] コンピューティングデバイス304は、本明細書に記載されている機能を実行するように配置されたサーバ又は任意の他のエンティティとして構成することができる。更に、コンピューティングデバイス304は、車両302a~302dへのデータ/要求の送信及び/又は車両302a~302dからのデータの受信を実行するように構成することができる。例えば、コンピューティングデバイス304は、車両302a~302dからの位置情報並びにセンサ構成(例えば、方向、変調パターンなど)を受信することができ、応答的に対応するセンサ間の干渉を低減するように対応するセンサ構成を調節するための要求を近接車両に提供することができる。追加的に又は代替的に、例えば、コンピューティングデバイス304は、車両302a~302d間でデータ(例えば、センサ構成、位置など)を共有するための媒体として機能することができる。図3は車両302a~302dがコンピューティングデバイス304を介して通信することを示しているが、幾つかの例では、車両302a~302dは、追加的に又は代替的に、互いに直接通信することもできる。 【0066】 [0075] コンピューティングデバイス304は、通信システム306と、プロセッサ308と、データ記憶装置310とを含む。通信システム306は、直接的に又は無線通信ネットワークなどの通信ネットワークを介して、車両302a~302d又は他のエンティティと通信するように構成された任意のシステムにすることができる。例えば、通信システム306は、直接的に又は無線通信ネットワークを介して、車両302a~302d、サーバ、又は他のエンティティと無線通信するためのアンテナ及びチップセットを含むことができる。代替的に、幾つかの例では、通信システム306は、車両302a~302dと無線通信するサーバ又は他のエンティティへの有線接続を含むこともできる。従って、チップセット又は通信システム306は、一般に、数ある可能性の中で、Bluetooth、IEEE802.11(任意のIEEE802.11改訂版を含む)に記載されている通信プロトコル、セルラー技術(GSM、CDMA、UMTS、EV-DO、WiMAX、又はLTEなど)、Zigbee、専用狭域通信(DSRC)、及び無線認証(RFID)通信などの1つ以上のタイプの無線通信(例えば、プロトコル)或いはローカルエリアネットワーク(LAN)などの1つ以上のタイプの有線通信に応じて通信するように配置することもできる。通信システム306はその他の形も取ることができる。」 「【図3】 [図:0001433449000003.jpg] 」 「【0085】 [0094] 図5は実施形態の一例による他の方法500のブロック図である。図5に示されている方法500は、例えば、車両100、200、302a~302d又はコンピューティングデバイス304とともに使用できる方法の一実施形態を提示するものである。方法500は、ブロック502~508のうちの1つ以上によって示されている1つ以上の動作、機能、又はアクションを含むことができる。これらのブロックは順番に示されているが、事例によっては並列に及び/又は本明細書に記載されているものとは異なる順序で実行することもできる。また、所望の実現例に基づいて、この様々なブロックをより少ないブロックに結合するか、追加のブロックに分割するか、及び/又除去することもできる。 【0086】 [0095] ブロック502では、方法500は、複数の車両内のセンサの構成パラメータを示す複数の車両からのデータを受信することを含む。このデータは、例えば、1つ以上の有線/無線媒体を介して複数の車両に結合されるコンピューティングデバイス304と同様で、1つ以上のプロセッサを含むコンピューティングデバイスによって受信することができる。一例として、コンピューティングデバイスは、複数の車両から無線信号を受信するように構成された放送塔を含むネットワーク内に常駐することができる。複数の車両(例えば、自動車、トラック、列車、船舶など)は、複数の車両の環境を検出するように構成されたRADARなどのセンサを含むことができる。1つのシナリオ例では、所与の車両は都市(例えば、環境)の道路に沿って走行している可能性があり、所与の車両の所与のセンサは所与の車両の付近にある物体又は他の車両を受信することができる。このシナリオ例では、所与のセンサは、所与のセンサによって送信されたEM放射と当該車両の環境内の1つ以上の物体からのEM放射の反射との比較に基づいて環境を検出することができる。更に、データは、センサ及び/又はそのEM放射の方向、出力、変調パターンなどのセンサの構成パラメータを示すことができる。幾つかの例では、このデータは複数の車両の位置を示すこともできる。 【0087】 [0096] ブロック504では、方法500は、所与の車両が少なくとも1台の他の車両までの限界距離内にあることをデータに基づいて判断することを含む。一例として、所与の車両と少なくとも1台の他の車両は互いの後を追って走行している場合もあれば、交差点に向かっている場合もあり、コンピューティングデバイスによって受信されたデータは、この2台の車両が互いまでの限界距離内にあり、それにより2台の車両のそれぞれのセンサ間の干渉を引き起こす可能性があることを示すことができる。 【0088】 [0097] ブロック506では、方法500は、少なくとも1台の他の車両の少なくとも1つのセンサと所与の車両の所与のセンサとの干渉の見込みを構成パラメータに基づいて判断することを含む。例えば、所与の車両内の第1のRADAR(例えば、所与のセンサ)は、少なくとも1台の他の車両内の第2のRADARの方に向けられている可能性がある。この例では、第2のRADARからの信号は第1のRADARによって受信され、干渉を引き起こす可能性がある(例えば、第1のRADARは、第2のRADAR信号が第1のRADARからのEM放射の反射であると間違って推論する可能性がある)。従って、方法500のコンピューティングデバイスは、センサの構成パラメータ及び/又は複数の車両の位置などの複数の車両からの情報を使用して干渉の見込みを判断することができる。 【0089】 [0098] ブロック508では、方法500は、所与のセンサの所与の構成パラメータを調節して所与の車両の所与のセンサと少なくとも1台の他の車両の少なくとも1つのセンサとの干渉を低減するための要求を所与の車両に提供することを含む。この要求の提供は、干渉の見込みが限界見込みより大きいことに基づくことができる。方法400のブロック406での調節と同様に、所与のセンサの所与の構成パラメータに対する様々な調節が可能である。例えば、ブロック508での要求により、方向、出力、変調パターン、帯域幅、又は任意のその他の調節を示すことができる。更に、幾つかの例では、方法500は、干渉の見込みを更に低減するための同様の要求を少なくとも1台の他の車両に提供することも含むことができる。」 「【図5】 [図:0001433449000004.jpg] 」 3 当審において通知した拒絶の理由の概要 当審において令和7年3月28日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、本願発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 (進歩性の欠如) 本願発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献2.特開2007-263915号公報(主たる引用文献) 引用文献4.特開2008-26095号公報(技術常識を示す文献) 4 引用文献2の記載事項、引用発明の認定 (1) 引用文献2に記載された事項 当審拒絶理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である引用文献2(特開2007-263915号公報)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に用いる記載に下線を付した。)。 ア 【請求項6】 「【請求項6】 複数の車載レーダ装置と,管制センタとを有する車載レーダ管制システムにおいて, 前記車載レーダ装置は,所定の周波数帯域の観測信号を送信する所定の長さの送信期間と,観測信号を送信しない所定の長さの休止期間を交互に繰り返す送受信部と,自装置の位置を取得する位置情報取得部と,前記管制センタとの通信を行う通信部とを備え,自装置の位置情報及び優先順位を前記管制センタへ送信し, 前記管制センタは,前記車載レーダ装置から受信した前記位置情報に基づき車載レーダ装置間の距離を求め,所定距離範囲内に複数の車載レーダ装置が存在する場合には,当該車載レーダ装置の優先順位に基づき前記送信期間または前記観測信号の周波数帯域をずらす指示を送信し, 前記車載レーダ装置は,前記管制センタから受信した指示に従い,前記送信期間または前記観測信号の周波数帯域をずらすことを特徴とする車載レーダ管制システム。」 イ 段落【0001】~【0006】 「【技術分野】 【0001】 本発明は,車載レーダ装置及び車載レーダ管制システムに関し,特に,観測信号の周波数帯域や送信時間をずらすことにより他のレーダ装置との干渉を回避する車載レーダ装置及び車載レーダ管制システムに関する。 【背景技術】 【0002】 車両の予防安全システムとして,先行車両との距離や相対速度を検知する車載レーダ装置が種々提案されている。これらレーダ装置が普及するにつれ,共にレーダ装置を搭載した車両が接近すると,レーダ装置間で干渉が生じるおそれがある。そこで,こうした車載レーダ装置同士の干渉を回避する方法が必要となる。 【0003】 例えば,特許文献1には観測信号の周波数を変調させるFM-CWレーダ装置において,送信信号と受信信号をミキサで混合し,そのミキサ出力信号の周波数を測定することにより干渉を検知する方法が記載されている。そして,干渉が検知されると,干渉を避けるように送信信号の周波数帯域や周波数の変調周期を変化させる方法が記載されている。 【特許文献1】特開2002-168947号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら,従来の技術では次のような問題がある。すなわち,複数の同機種のレーダ装置が相手との干渉を回避するために周波数帯域や周波数の変調周期を変化させたとしても,それぞれが無秩序に動作を行えば結局干渉が再発してしまう。つまり,変化させた後の送信信号の周波数帯域や変調周期が個々に異なるものでなくては,干渉を確実に回避することができない。 【0005】 また,たしかに個々のレーダ装置に個別に周波数帯域を割り振ることができれば干渉は確実に回避できるが,商用の周波数帯域である76.0GHz~77.0GHzにおいて,無数に存在するレーダ装置すべてに異なる帯域を割当てるのは現実的ではない。 【0006】 そこで,本発明の目的は,レーダ用途として設定可能な占有帯域内で他のレーダ装置との干渉を確実に回避できるように観測信号の送信制御を行う車載レーダ装置等を提供することにある。」 ウ 段落【0015】~【0022】、【図1】 「【0015】 図1は,本実施の形態における車載レーダ装置の構成図である。この車載レーダ装置は送信信号の周波数変調を行うFM-CWレーダ装置であり,制御部10,発振器12,方向性結合器14,送信アンプ16,送信アンテナ18,受信アンテナ20,受信アンプ22,ミキサ24,符号検出部26,及び観測信号検出部28により構成される。」 「【図1】 [図:0001433449000005.jpg] 」 「【0016】 上記構成の車載レーダ装置は,予め定めた規則に従って,一定の変調幅で周波数変調した観測信号を送受信する動作と,前記観測信号の帯域内に設定した適切な周波数で優先順位情報の送受信を行う動作とを交互に繰り返す。そして,他車両に搭載された同じ構成の車載レーダ装置から受信したその装置の優先順位と,自装置の優先順位とに基づいて,観測信号の干渉を回避するための送信制御を行うことを特徴とする。 【0017】 まず,上記構成における送信動作について説明する。周波数変調した観測信号を送信する場合は,制御部10は変調信号を発生させて発振器12に入力する。すると,発振器12は,変調入力に応じた帯域を持つ高周波信号を発生させる。この信号は方向性結合器14によって,送信アンプ16を経て観測信号として用いられる成分と,ミキサ24に入力されて復調用信号として用いられる成分とに分岐される。送信アンプ16は,入力された送信信号を増幅し,送信アンテナ18は増幅された送信信号S1を電磁波として放射する。 【0018】 また,優先順位信号を送信する場合は,制御部10は発振器12からの無変調出力信号を適切な固定周波数に設定する為の信号(例えば12が電圧制御発信器である場合はDCオフセット)を発生させて発振器12に入力し,設定された周波数を持つ高周波信号を発生させる。そして,制御部10は,制御部10内に備えられた不図示の記憶装置内から自装置の優先順位を読み出し,その優先順位符号に応じた所定周波数の符号化信号S3によって,送信アンプ16のバイアス電圧をオン/オフする。そうすることにより,送信アンプ16は優先順位符号に対応した所定周波数のASK変調信号(あるいはPSK変調信号)を出力し,送信アンテナ16がその信号を放射する。なお,優先順位とは,例えば車載レーダ装置のシリアル番号等,一定の規則に基づき装置間の序列が決定される情報である。 【0019】 次に,受信動作について説明する。放射された電磁波は先行車両などの対象物で反射され,その反射波は受信アンテナ20で受信される。受信信号S2は受信アンプ22で増幅されてミキサ24に入力される。ミキサ24は,送信信号の一部と受信信号とを混合し,送信信号の周波数と受信信号の周波数との差を周波数とするビート信号を発生させ,観測信号検出部28に入力する。観測信号検出部28では,ビート信号の周波数を計測して,対象物との距離及び相対速度を算出する。また,観測信号検出部28は,ビート信号の周波数や振幅などを所定の閾値と比較することにより,干渉検出も行う。 【0020】 上記車載レーダ装置においては,送受信動作を行う際には制御部10,発振器12,方向性結合器14,送信アンプ16,送信アンテナ18,受信アンテナ20,受信アンプ22,及びミキサ24が送受信部に対応し,同じ構成において優先順位信号を送信する際には,これらの構成が優先順位送信部に対応する。 【0021】 制御部10では,観測信号検出部28が干渉を検知すると,干渉発生時間を特定することによって,干渉が生じた時点での自装置の観測信号の瞬時周波数を特定する。例えば,図3(B)に示すように,周波数変調した自装置の観測用信号を表す三角波W1が多装置の優先順位信号RS30と時間t31,t32,t33で干渉した場合は,各時点における干渉波の周波数f30を特定する。そして,周波数変調を停止させると共に(直線M32),その特定された周波数f30をミキサ24のローカル周波数に設定する。そうすることにより,ミキサ24では干渉波の受信信号と設定されたローカル周波数による送信信号からベースバンド信号を生成し,符号検出部26ではそのベースバンド信号からASK変調された他装置の優先順位符号を抽出する。 【0022】 このように他装置の優先順位信号と自装置の観測信号とが干渉した場合は,その他装置の観測信号の周波数帯域と自装置の観測信号の周波数帯域とが重複していることを意味する。そこで制御部10は,後述するような手順で他装置の優先順位と自装置の優先順位とを比較し,自装置の優先順位の方が低ければ,自装置の観測信号用の周波数帯域を低い方へずらすような変調信号を発振器12に入力する。」 エ 段落【0039】 「【0039】 上記車載レーダ装置は,図1で説明した構成により実現されるが,送信する信号の変調方式は周波数変調,振幅変調,位相変調などいずれの方式でもよく,制御部10が変調方式に応じた変調信号を生成する。…(後略)」 オ 段落【0064】~【0068】、【図9】 「【0064】 次に,本発明の更に別の側面として,管制センタからの指示に従って,近傍車両の他の装置との干渉の再発を回避する送信制御を行う車載レーダ装置について説明する。 【0065】 図9は,車載レーダ装置と管制センタとで構成される車載レーダ管制システムの構成図である。図1で示した構成の車載レーダ装置に,自装置の位置を取得する位置情報取得部としてGPS信号を受信する位置信号受信部30を設け,また,自車の情報を管制センタに送信し,管制センタからの指示を受信する通信部40とを設けて管制センタ100との通信を可能にしている。また,制御部10では,所定の周波数帯域内での観測信号を送受信するよう制御を行う。そして,管制センタに送信する情報は,GPS信号に基づき算出される自装置の位置情報,及び自装置の優先順位である。」 「【図9】 [図:0001433449000006.jpg] 」 「【0066】 管制センタ100は,車載レーダ装置との送受信を行う送受信部110と,制御プログラム114に従って,送受信部110の動作を制御する制御部112とを有している。管制センタ100では,複数の車載レーダ装置からの位置情報と優先順位を受信し,干渉が予測されるような距離範囲内に複数の車載レーダ装置が存在する場合は,それぞれの装置の優先順位に応じて,周波数帯域を割当てて指示する。 【0067】 例えば,管制センタ100で半径500m以内に2機の車載レーダ装置が存在することを検知したとする。すると,管制センタは,優先順位の低い車載レーダ装置には周波数帯域76.2~76.4GHzを,優先順位の高い車載レーダ装置にはこれより高い周波数帯域76.4~76.6GHzを用いるように指示する。よって,各装置は,指示された周波数帯域の観測信号を送信することにより,互いに接近した場合でも干渉を回避することができる。 【0068】 更に,上記の車載レーダ装置管制システムでは,各レーダ装置に電波時計台やGPS衛星からの絶対時刻を受信する絶対時刻取得手段を設け,管制センタ100は,周波数帯域に加えて送信期間の開始時刻を指示するようにしてもよい。すなわち,各レーダ装置は管制センタ100の指示に従って,他のレーダ装置が信号を送信していない時間に信号を送信することにより,干渉を回避することができる。」 (2) 引用発明の認定 前記(1)に摘記した引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には、【図9】に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「車載レーダ装置と管制センタとで構成される車載レーダ管制システムであって、(【0065】) 車載レーダ装置は、自装置の位置を取得する位置情報取得部としてGPS信号を受信する位置信号受信部30が設けられ、(【0065】) 車載レーダ装置は、自車の情報を管制センタに送信し、管制センタからの指示を受信する通信部40が設けられ、管制センタ100との通信を可能にしており、(【0065】) 管制センタに送信する情報は、GPS信号に基づき算出される自装置の位置情報、及び自装置の優先順位であり、(【0065】) 管制センタ100は、車載レーダ装置との送受信を行う送受信部110と、制御プログラム114に従って、送受信部110の動作を制御する制御部112とを有しており、(【0066】) 管制センタ100では、複数の車載レーダ装置からの位置情報と優先順位を受信し、車載レーダ装置から受信した位置情報に基づき車載レーダ装置間の距離を求め、(【0066】、【請求項6】) 管制センタ100は、干渉が予測されるような距離範囲内に複数の車載レーダ装置が存在する場合は、それぞれの装置の優先順位に応じて周波数帯域を割当てて指示し、(【0066】) 例えば、管制センタ100で半径500m以内に2機の車載レーダ装置が存在することを検知したとすると、管制センタは、優先順位の低い車載レーダ装置には周波数帯域76.2~76.4GHzを、優先順位の高い車載レーダ装置にはこれより高い周波数帯域76.4~76.6GHzを用いるように指示し、(【0067】) 各装置は、指示された周波数帯域の観測信号を送信することにより、互いに接近した場合でも干渉を回避する、(【0067】) 車載レーダ管制システム。」 5 引用文献4の記載事項及び技術常識1の認定 (1) 引用文献4に記載された事項 当審拒絶理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である引用文献4(特開2008-26095号公報)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。 ア 段落【0001】~【0003】 「【0001】 本発明は、アンテナから前方に放射された電波とその反射波に基づいて前方の物体との相対距離または相対速度を検出する車載レーダの動作を一時停止する車載レーダ制御方法及び車載レーダ制御装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、高速走行や長距離走行時のドライバの負担を軽減するオートクルーズコントロールユニットを搭載した車両が多く見受けられる。前記オートクルーズコントロールとは、高速道路など一定のスロットル開度で長時間走行するような場合に、アクセルを踏まなくとも設定した速度を保持して走行する機能であり、車載したレーダにより放射する電波と前記電波が前方の物体にあたって反射した反射波のドップラー効果を利用して前走車との相対的な車間距離や速度を検知し、前記車間距離がつまると自動的に速度を落として一定の車間距離を保つようなものが実用化されている。 【0003】 ここで、前記レーダを備える対向車が自車に近接し、夫々の電波の放射範囲が重なるときには、対向車から放射される電波と自車から放射される電波に対する反射波とが干渉し合い、自車と前走車との相対的な車間距離や速度を正確に検知することができない虞がある。」 イ 段落【0016】~【0021】、【図1】、【図2】 「【0016】 車載レーダ制御装置1は、図2に示すように、アンテナ103から前方に放射された電波とその反射波に基づいて前方の物体との相対距離または相対速度を検出する車載レーダ10と、自車及び対向車の走行情報に基づいて電波干渉の発生を予測する電波干渉予測手段11と、前記電波干渉予測手段11により電波干渉が予測されるときに前記車載レーダ10の動作を一時停止するレーダ駆動制御手段12を備えて構成され、詳述しないが、各部を制御する単一または複数のCPUと、前記CPUの作業領域となるRAMと、前記CPUの動作プログラムが格納されるROMと、周辺回路等により構成される。」 「【図2】 [図:0001433449000007.jpg] 」 「【0017】 前記車載レーダ制御装置1の出力情報である前記相対距離または前記相対速度は、当該車載レーダ制御装置1が搭載された車両のオートクルーズコントロールユニットや衝突予測検知装置への入力データ等に使用される。 【0018】 図1に示すように、前記車載レーダ制御装置1が搭載された車両9には、GPS(全地球測位システム:Global Positioning System)2により取得した自車の位置情報とDVDやハードディスク等の記憶媒体30に記憶した道路情報等からなる地図情報に基づき走行案内を行うナビゲーションシステム3と、道路に設けられた固定通信手段40との間で路車間通信を行う車載通信手段41とが設けられている。」 「【図1】 [図:0001433449000008.jpg] 」 「【0019】 また、当該車両9のエンジン等を電子制御する走行制御装置には、検出したエンジン回転数等に基づいて当該車両9の走行速度を演算導出する速度検出ユニット5が設けられ、検出された速度情報は、夫々所定の演算処理に使用可能なように、前記ナビゲーションシステム3や前記車載レーダ制御装置1、さらには前記車載通信手段41を介して外部に出力される。 【0020】 前記固定通信手段40と前記車載通信手段41とは送受信アンテナ及び信号送信部や信号受信部等からなる無線通信機で構成される。前記固定通信手段40は中央監視装置に通信可能に接続された通信端末で、図3に示すように、道路近傍に設置された柱400や中央分離帯401や路面402の何れかに所定間隔を空けて設置され、走行車両の車載通信手段41との間でデータの送受信を行ない、渋滞や事故等の道路情報を中央監視装置に送信するとともに、前記中央監視装置からの道路情報や他車両の情報、例えば対向車の位置情報や速度情報等を走行車両に供給するように構成されている。 【0021】 つまり、前記固定通信手段40と前記車載通信手段41により路車間通信手段4が構成され、本発明では、前記車載通信手段41が前記固定通信手段40に自車の走行速度、GPSで取得した位置情報、自車にレーダが搭載されているか否かのレーダ搭載情報、搭載されているレーダの型式情報等を送信するように構成されている。尚、前記固定通信手段40と前記車載通信手段41とは無線通信機に限定するものではなく、互いに光学式の通信機で構成されるものであっても良い。」 ウ 段落【0028】~【0031】 「【0028】 前記電波干渉予測手段11は、自車及び対向車の走行情報、つまり、前記速度検出ユニット5から出力される自車の速度と、前記GPS2による自車の位置情報と、前記ナビゲーションシステム3による走行地域周辺の道路情報と、前記路車間通信手段4により取得する対向車の速度情報と位置情報、及び、対向車のレーダ搭載情報、つまり、レーダの搭載の有無及び搭載時のレーダの型式情報等に基づき、電波干渉の発生を予測する。 【0029】 つまり、対向車に搭載された車載レーダと自車の車載レーダの夫々のレーダ検知範囲が重なり、前記車両9の前方を走行する他の車両等の物体からの反射波と対向車から放射される電波が干渉して正確な測定ができないと予測されるときに電波干渉が発生すると予測する。 【0030】 前記電波干渉予測手段11が、前記レーダ駆動制御手段12に前記電波干渉の発生は生じない旨の予測信号を出力すると、前記レーダ駆動制御手段12は前記車載レーダ10から電波を放射するように制御し、前記レーダ駆動制御手段12に前記電波干渉の発生が生じる旨の予測信号を出力すると、前記レーダ駆動制御手段12は前記車載レーダ10から電波の放射を停止するように制御する。 【0031】 前記電波干渉予測手段11は、図6に示すように、前記車両9の速度情報と前記GPS2から取得する自車の位置情報と前記ナビゲーションシステム3から取得する道路情報とに基づいて、現時刻t0から前記所定時間t1後に到達していると予測される自車位置を、長さが自車の速度の大きさを示し、方向が自車の走行方向を示す自車走行予測ベクトルとして演算導出する自車走行ベクトル演算部110と、自車の備える前記ナビゲーションシステム3から得られる前記道路情報と前記車載通信手段41が取得する対向車の速度情報と位置情報とに基づいて、現時刻t0から前記所定時間t1後に到達していると予測される対向車位置を、長さが対向車の速度の大きさを示し、方向が対向車の走行方向を示す対向車走行予測ベクトルとして演算導出する対向車走行ベクトル演算部111と、自車の備える前記ナビゲーションシステム3から得られる前記道路情報と前記自車走行予測ベクトル及び前記対向車走行予測ベクトルに基づいて電波干渉の発生を判定する干渉判定部112とを備えている。」 エ 段落【0038】~【0041】、【図8】 「【0038】 前記干渉判定部112は、対向車のレーダ搭載情報に基づいて自車の車載レーダと干渉する虞がないと判断するときには、前記レーダ駆動制御手段12に前記電波干渉の発生が生じない旨の予測信号を出力し、干渉する虞が有ると判断するときには、前記自車走行ベクトル演算部110と前記対向車走行ベクトル演算部111に演算を行うように指示し、前記自車走行ベクトル演算部110と前記対向車走行ベクトル演算部111とが演算導出した自車走行予測ベクトル及び対向車走行予測ベクトルの夫々の先端を始点として、図8(a)、8(b)、8(c)、図10(b)、図10(c)、図10(d)に示すように、前記所定時間t1後の自車及び対向車のレーダ検知範囲を予測範囲として求め、求めたレーダ検知範囲と前記ナビゲーションシステム3から取得した自車と対向車の走行する車線間の距離情報や路面の高低差情報等の道路情報に基づき、前記電波干渉の発生が生じるか否かを判定する。 …(中略)… 【0040】 前記干渉判定部112は、自車のレーダ検知範囲に対向車の送信アンテナ103がなく、且つ対向車のレーダ検知範囲に自車の受信アンテナ104がない、つまり現時刻t0において前記電波干渉が発生しておらず、図8(a)、8(b)に示すように、所定時間t1後の自車のレーダ検知範囲に対向車の送信アンテナ103がなく、且つ対向車のレーダ検知範囲に自車の受信アンテナ104がないときには、前記電波干渉の発生はないと予測して、前記レーダ駆動制御手段12に前記電波干渉の発生が生じない旨の予測信号を出力する。 【0041】 前記干渉判定部112は、自車のレーダ検知範囲に対向車の送信アンテナ103がなく、且つ対向車のレーダ検知範囲に自車受信アンテナ104がない、つまり現時刻t0において前記電波干渉が発生しておらず、図8(c)に示すように、所定時間t1後の自車のレーダ検知範囲に対向車の送信アンテナ103があり、且つ対向車のレーダ検知範囲に自車の受信アンテナ104があるときには、自車と対向車の相対速度に基づいて得られる電波干渉が発生するタイミングの直前に前記電波干渉が発生する旨の予測信号を出力する。」 「【図8】 [図:0001433449000009.jpg] 」 (2) 技術常識1の認定 前記(1)に摘記した引用文献4の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。 <技術常識1> 「車載レーダ装置間で生じる干渉を回避するにあたって、車両間の相対的な速度の大きさ、向きも考慮して、干渉の見込みを評価すること。」 6 本願発明と引用発明の対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点(システム) (ア) 構成Xは、「システム」の発明であることを特定するものである。 (イ) 引用発明の「車載レーダ管制システム」は、本願発明の「システム」に相当する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は「システム」の発明である点において一致する。 イ 構成Aの観点(コンピューティングデバイス) (ア) 構成Aは、「通信システムを有し、かつ、第1の車両及び第2の車両から遠隔に位置する、コンピューティングデバイスを含[む]」ことである。 (イ) コンピューティングデバイスが通信システムを有する観点 a 引用発明においては、「管制センタ100」が「車載レーダ装置との送受信を行う送受信部110と、制御プログラム114に従って、送受信部110の動作を制御する制御部112とを有して」いるところ、上記「制御プログラム114」はコンピュータにより実行されることは明らかであるから、引用発明における「管制センタ100」は、本願発明における「コンピューティングデバイス」に相当する。 b また、引用発明においては、「管制センタ100」の「送受信部110」が「車載レーダ装置との送受信を行[い]」、「車載レーダ装置」の「通信部40」が「管制センタからの指示を受信する」ことにより、「管制センタ100」と「車載レーダ装置」の「通信」が行われている。 c そして、引用発明において、「管制センタ100」が上記「通信」を行うための通信システムを有していることは明らかであり、このことは本願発明において、「コンピューティングデバイス」が「通信システムを有[する]」ことに相当する。 (ウ) コンピューティングデバイスが車両から遠隔に位置する観点 a 引用発明においては、「管制センタ100」が「干渉が予測されるような距離範囲内に複数の車載レーダ装置が存在する場合」に「それぞれの装置の優先順位に応じて周波数帯域を割当てて指示し」、また、「各装置は、指示された周波数帯域の観測信号を送信することにより、互いに接近した場合でも干渉を回避」している。 b そして、引用発明においては、少なくとも2つの車両(以下「車両1」、「車両2」という。)が存在することが前提であるところ、「車両1」、「車両2」の「各装置」が「互いに接近した場合でも干渉を回避」するために、「車両1」、「車両2」それぞれに対して「車載レーダ装置」が設けられていることは明らかである。 c また、「管制センタ」という用語の一般的な理解に基づけば、引用発明において「管制センタ100」が「車両1」、「車両2」から一定の距離を隔てた位置に設置されていることは当然であるところ、このことは、本願発明において「コンピューティングデバイス」が「第1の車両及び第2の車両から遠隔に位置する」ことに相当する。 (エ) 小括 a 前記(イ)、(ウ)を踏まえると、引用発明の「管制センタ100」は、本願発明の「通信システムを有し、かつ、第1の車両及び第2の車両から遠隔に位置する、コンピューティングデバイス」に相当する。 b したがって、本願発明と引用発明は、「通信システムを有し、かつ、第1の車両及び第2の車両から遠隔に位置する、コンピューティングデバイスを含[む]」点において一致する。 ウ 構成Bの観点(車両からのデータ) (ア) 構成Bは、「前記コンピューティングデバイスは、前記通信システムを介して、前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示す、前記第1の車両からのデータを受け取り、前記第1の車両からの前記データは、さらに、前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示[す]」ことである。 (イ) 引用発明においては、「車載レーダ装置」が「GPS信号に基づき算出される自装置の位置情報」を「管制センタに送信し」、「管制センタ100」が「複数の車載レーダ装置」から「受信した位置情報に基づき車載レーダ装置間の距離を求め」ている。 (ウ) そして、前記イ(イ)において検討したとおり、引用発明において、「管制センタ100」は、その通信システムを介して「車両1」と「通信」を行っている。 (エ) そうすると、引用発明において、「管制センタ100」が「車両1」の「車載レーダ装置」から「GPS信号に基づき算出される自装置の位置情報」を「受信」することは、本願発明において、「コンピューティングデバイス」が「前記通信システムを介して」「第1の車両からのデータを受け取[る]」ことに相当する。 (オ) さらに、引用発明における「車両1」の「車載レーダ装置」から「受信」する「GPS信号に基づき算出される自装置の位置情報」と、本願発明における「第1の車両からのデータ」とは、「第1の車両の位置を示す」点において共通する。 (カ) したがって、前記(イ)~(オ)の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明の構成Bの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成Bの観点における一致点 「前記コンピューティングデバイスは、前記通信システムを介して、前記第1の車両の位置を示す、前記第1の車両からのデータを受け取[る]」点。 b 構成Bの観点における相違点 第1の車両からのデータが、 本願発明においては、 「前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示[し]」、「さらに、前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示[す]」ものであるのに対して、 引用発明においては、 「車両1」が「車両2」から「限界距離内に位置していることを示す」ものであるかが明らかでなく、「車両1」に対する「車両2」の「速度及び向きを示[す]」ものである点が特定されていない点。 エ 構成Cの観点(干渉の見込みの判断) (ア) 構成Cは、「前記コンピューティングデバイス」が「前記第1の車両に対する前記第2の車両の前記速度及び前記向きに基づいて、前記第1の車両に結合された第1のセンサと前記第2の車両に結合された少なくとも第2のセンサとの間の干渉の見込みが限界見込みを超えることを判断[する]」ことを特定するものである。 (イ) 引用発明においては、「管制センタ100」が、「干渉が予測されるような距離範囲内に複数の車載レーダ装置が存在する場合は、それぞれの装置の優先順位に応じて周波数帯域を割当てて指示し」、「各装置」は、「指示された周波数帯域の観測信号を送信することにより、互いに接近した場合でも干渉を回避」している。 (ウ) ここで、引用発明においては、前記ウ(イ)において述べたとおり、「管制センタ100」が「複数の車載レーダ装置」から「受信した位置情報に基づき車載レーダ装置間の距離を求め」ていることから、「管制センタ100」は当該「車載レーダ装置間の距離」に基づいて、「干渉が予測されるような距離範囲内に複数の車載レーダ装置が存在する」か否かを判断していると解するのが相当である。 (エ) そして、引用発明において「管制センタ100」が、「複数の車載レーダ装置」が「干渉が予測されるような距離範囲内」に「存在する」か否かを判断することは、本願発明において「コンピューティングデバイス」が、「干渉の見込みが限界見込みを超えることを判断[する]」ことに相当する。 (オ) さらに、引用発明において「車両1」、「車両2」に着目すると、「車両1」の「車載レーダ装置」と「車両2」の「車載レーダ装置」が「干渉が予測されるような距離範囲内」に「存在する」か否かを判断することは、本願発明において、「前記第1の車両に結合された第1のセンサと前記第2の車両に結合された少なくとも第2のセンサとの間の干渉の見込み」を「判断[する]」ことに相当する。 (カ) 前記(イ)~(オ)を踏まえると、引用発明において「管制センタ100」が、「車両1」と「車両2」の「車載レーダ装置」が「干渉が予測されるような距離範囲内」に「存在する」か否かを判断することは、本願発明において「コンピューティングデバイス」が、「前記第1の車両に結合された第1のセンサと前記第2の車両に結合された少なくとも第2のセンサとの間の干渉の見込みが限界見込みを超えることを判断[する]」ことに相当する。 (キ) したがって、本願発明と引用発明の構成Cの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成Cの観点における一致点 「前記コンピューティングデバイス」が「前記第1の車両に結合された第1のセンサと前記第2の車両に結合された少なくとも第2のセンサとの間の干渉の見込みが限界見込みを超えることを判断[する]」点。 b 構成Cの観点における相違点 第1の車両に結合された第1のセンサと第2の車両に結合された第2のセンサとの間の干渉の見込みが限界見込みを超えることについての判断が、 本願発明においては、 「前記第1の車両からの前記データ」が示す「第1の車両に対する前記第2の車両の前記速度及び前記向き」に基づくものであるのに対して、 引用発明においては、 「複数の車載レーダ装置からの位置情報」に基づくものであり、「車両1」に対する「車両2」の速度及び向きに基づくものである点が特定されていない点。 オ 構成Dの観点(干渉の見込みを低減させる調節) (ア) 構成Dは、「前記コンピューティングデバイス」が「前記通信システムを介して、前記干渉の見込みを前記限界見込みより低減させる、前記第1のセンサの動作に対応する1つ以上の調節を実行するために、前記第1の車両に命令を提供するよう構成され、前記1つ以上の調節は、前記第1の車両の方向又は速度に基づく、前記第1のセンサの出力レベルに対する調節を含む」ことである。 (イ) 前記エ(イ)を踏まえつつ、「車両1」に着目すると、引用発明においては、「管制センタ100」は「車両1」に対して「干渉が予測されるような距離範囲内に複数の車載レーダ装置が存在する場合」に「車両1」の「優先順位に応じて周波数帯域を割当てて指示し」、「車両1」は「指示された周波数帯域の観測信号を送信することにより、互いに接近した場合でも干渉を回避」している。 (ウ) この際、「車両1」が「指示された周波数帯域の観測信号を送信することにより」「干渉を回避」しているのであるから、引用発明において「車両1」の「周波数帯域」を「指示」により設定することは、本願発明において「干渉の見込みを前記限界見込みより低減させる、前記第1のセンサの動作に対応する1つ以上の調節を実行する」ことに相当する。 (エ) また、前記イ(イ)において検討したとおり、引用発明において、「管制センタ100」は、その通信システムを介して「車両1」と「通信」を行っているから、「車両1」への「指示」も当該通信システムにより行われているといえる。 (オ) 以上を踏まえると、引用発明において「管制センタ100」が「車両1」に「周波数帯域を割当てて指示[する]」よう構成されていることは、本願発明において「前記コンピューティングデバイス」が「前記通信システムを介して、前記干渉の見込みを前記限界見込みより低減させる、前記第1のセンサの動作に対応する1つ以上の調節を実行するために、前記第1の車両に命令を提供するよう構成され[る]」ことに相当する。 (カ) したがって、本願発明と引用発明の構成Dの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成Dの観点における一致点 「前記コンピューティングデバイス」が「前記通信システムを介して、前記干渉の見込みを前記限界見込みより低減させる、前記第1のセンサの動作に対応する1つ以上の調節を実行するために、前記第1の車両に命令を提供するよう構成され[る]」点。 b 構成Dの観点における相違点 干渉の見込みを限界見込みより低減させる調節が、 本願発明においては、 「第1の車両の方向又は速度に基づく、前記第1のセンサの出力レベルに対する調節を含む」のに対して、 引用発明においては、 「複数の車載レーダ装置からの位置情報」に基づく、「装置の優先順位に応じ[た]周波数帯域」の「割当て」である点。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。 ア 一致点 「システムであって、 通信システムを有し、かつ、第1の車両及び第2の車両から遠隔に位置する、コンピューティングデバイスを含み、前記コンピューティングデバイスは、 前記通信システムを介して、前記第1の車両の位置を示す、前記第1の車両からのデータを受け取り、 前記第1の車両に結合された第1のセンサと前記第2の車両に結合された少なくとも第2のセンサとの間の干渉の見込みが限界見込みを超えることを判断し、 前記通信システムを介して、前記干渉の見込みを前記限界見込みより低減させる、前記第1のセンサの動作に対応する1つ以上の調節を実行するために、前記第1の車両に命令を提供するよう構成される、システム。」である点。 イ 相違点 (ア) 相違点1(車両からの位置に関するデータ) 第1の車両からのデータが、 本願発明においては、 「前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示す」ものであるのに対して、 引用発明においては、 「車両1」が「車両2」から「限界距離内に位置していることを示す」ものであるかが明らかでない点。 (イ) 相違点2(速度及び向きに基づく干渉の見込みの判断) a 第1の車両からのデータが、 本願発明においては、 「さらに、前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示[す]」ものであるのに対して、 引用発明においては、 「車両1」に対する「車両2」の「速度及び向きを示[す]」ものである点が特定されておらず、 b 第1の車両に結合された第1のセンサと第2の車両に結合された第2のセンサとの間の干渉の見込みが限界見込みを超えることについての判断が、 本願発明においては、 「前記第1の車両からの前記データ」が示す「第1の車両に対する前記第2の車両の前記速度及び前記向き」に基づくものであるのに対して、 引用発明においては、 「複数の車載レーダ装置からの位置情報」に基づくものであり、「車両1」に対する「車両2」の速度及び向きに基づくものである点が特定されていない点。 (ウ) 相違点3(干渉の見込みを低減させる調節) 干渉の見込みを限界見込みより低減させる調節が、 本願発明においては、 「第1の車両の方向又は速度に基づく、前記第1のセンサの出力レベルに対する調節を含む」のに対して、 引用発明においては、 「複数の車載レーダ装置からの位置情報」に基づく、「装置の優先順位に応じ[た]周波数帯域」の「割当て」である点。 7 判断 (1) 相違点1(車両からの位置に関するデータ)について ア 本願発明の「位置」に係る「第1の車両からのデータ」の解釈 (ア) 本願発明は、「コンピューティングデバイス」が、「第1の車両からのデータ」を受け取り、「干渉の見込み」を「判断し」、「第1の車両に命令を提供する」ものである。 (イ) ここで、上記「第1の車両からのデータ」は、「前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示す」と規定されているから、上記「第1の車両からのデータ」は、「第1の車両」と「第2の車両」との間の相対的な位置関係を記述したものであるといえる。 (ウ) 他方、本願発明は、「コンピューティングデバイス」が「第2の車両」からのデータを受け取ることを特定していないことを踏まえると、「第1の車両」は、「第2の車両」との間の相対的位置関係を自ら計算した上で、「コンピューティングデバイス」に「第1の車両からのデータ」として送信しているとも考えられる。 (エ) そこで、「第1の車両からのデータ」が「前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示す」ことの技術的意味を把握するために、本願明細書を参照すると次の記載がある。 「【0065】 [0074] コンピューティングデバイス304は、本明細書に記載されている機能を実行するように配置されたサーバ又は任意の他のエンティティとして構成することができる。更に、コンピューティングデバイス304は、車両302a~302dへのデータ/要求の送信及び/又は車両302a~302dからのデータの受信を実行するように構成することができる。例えば、コンピューティングデバイス304は、車両302a~302dからの位置情報並びにセンサ構成(例えば、方向、変調パターンなど)を受信することができ、応答的に対応するセンサ間の干渉を低減するように対応するセンサ構成を調節するための要求を近接車両に提供することができる。…(後略)」 「【0086】 [0095] ブロック502では、方法500は、複数の車両内のセンサの構成パラメータを示す複数の車両からのデータを受信することを含む。このデータは、例えば、1つ以上の有線/無線媒体を介して複数の車両に結合されるコンピューティングデバイス304と同様で、1つ以上のプロセッサを含むコンピューティングデバイスによって受信することができる。…(中略)…更に、データは、センサ及び/又はそのEM放射の方向、出力、変調パターンなどのセンサの構成パラメータを示すことができる。幾つかの例では、このデータは複数の車両の位置を示すこともできる。 【0087】 [0096] ブロック504では、方法500は、所与の車両が少なくとも1台の他の車両までの限界距離内にあることをデータに基づいて判断することを含む。…(後略)」 (オ) 上記(エ)において摘記した記載から、本願発明においては、「コンピューティングデバイス」が、「第1の車両」、「第2の車両」から各車両の位置情報を受け取ったうえで、「第1の車両」と「第2の車両」との間の相対的な位置関係を計算することを想定としているといえるから、「第1の車両」が「第2の車両」から「限界距離内に位置している」か否かを判断する主体は、「コンピューティングデバイス」であることは明らかである。 (カ) また、本願明細書及び図面のその他の記載を参照しても、「第1の車両からのデータ」自体が「前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示す」態様が開示されているとは認められない。 (キ) そうすると、本願発明における「第1の車両からのデータ」が「前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示す」とは、「コンピューティングデバイス」が、「第1の車両」及び「第2の車両」のそれぞれから位置情報を別々に受け取ることを前提として、「コンピューティングデバイス」による判断の結果として、「前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示す」という意味であって、「第1の車両からのデータ」自体には「第1の車両」と「第2の車両」の相対的位置情報が含まれていないと解釈するのが相当である。 イ 相違点1の検討 (ア) 前記アにおいて検討した「位置」に係る「第1の車両からのデータ」の解釈を踏まえて、前記相違点1について検討する。 (イ) 引用発明においては、「管制センタ100」が、「車両1」の「車載レーダ装置」から「GPS信号に基づき算出される自装置の位置情報」を「受信」した上で、「車両1」、「車両2」の「車載レーダ装置」が「干渉が予測されるような距離範囲内」に「存在する」か否かを判断していることから(前記6(1)ウ、エを参照)、引用発明においても、「管制センタ100」(「コンピューティングデバイス」に相当)が、「車両1」及び「車両2」のそれぞれから位置情報を別々に受け取ることを前提として、「管制センタ100」が、「車両1」が「車両2」から限界距離内に位置していることを判断して、その結果を示すようにしている。 そうすると、相違点1は実質的な相違点であるとは認められない。 (ウ) また、前記アの「位置」に係る「第1の車両からのデータ」の解釈から離れて、仮に本願発明において「第1の車両からのデータ」自体が「前記第1の車両が前記第2の車両から限界距離内に位置していることを示す」ものであると解釈したとしても、引用発明において、「車両1」が「車両2」との間の相対的位置関係を計算するように構成することは、計算負担を「管制センタ100」が全て負うのではなく車両にも一部負担させるように設計変更したものであって、作業負担の適切な分配を考慮した設計的事項にすぎないから、そのような立場から検討しても格別のものではない。 ウ 相違点1の検討のまとめ したがって、引用発明において相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2) 相違点2(速度及び向きに基づく干渉の見込みの判断)について ア 本願発明の「速度及び向き」に係る「第1の車両からのデータ」の解釈 (ア) 本願発明においては、上記「第1の車両からの前記データ」は、「さらに、前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示[す]」と規定されているから、上記「第1の車両からの前記データ」は、「第1の車両」と「第2の車両」との間の相対的速度関係(「向き」を含む。以下同様。)を記述したものであるといえる。 (イ) 他方、本願発明は、「コンピューティングデバイス」が「第2の車両」からのデータを受け取ることを特定していないことを踏まえると、「第1の車両」は、「第2の車両」との間の相対的速度関係を自ら計算した上で、「コンピューティングデバイス」に「第1の車両からのデータ」として送信しているとも考えられる。 (ウ) しかしながら、前記(1)アにおいて検討した事項と同様に、本願発明における「第1の車両からの前記データ」が「さらに、前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示[す]」とは、「コンピューティングデバイス」が、「第1の車両」及び「第2の車両」のそれぞれから速度情報を別々に受け取ることを前提として、「コンピューティングデバイス」による判断の結果として、「前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示[す]」という意味であって、「第1の車両からのデータ」自体には「第1の車両」と「第2の車両」の相対的速度情報が含まれていないと解釈するのが相当である。 イ 相違点2の検討 (ア) 前記アにおいて検討した「速度及び向き」に係る「第1の車両からのデータ」の解釈を踏まえて、前記相違点2について検討する。 (イ) 前記5(2)において認定したとおり、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。 <技術常識1> 「車載レーダ装置間で生じる干渉を回避するにあたって、車両間の相対的な速度の大きさ、向きも考慮して、干渉の見込みを評価すること。」 (ウ) また、通常の車両がその速度、向きを取得する速度計、慣性計測装置(IMU)等を備えることを踏まえれば、引用発明においても、干渉が予測されるような距離範囲内に複数の車載レーダ装置が存在するか否かを判断する際に、車両間の相対的な速度の大きさ、向きを算出して、それを判断材料にする余地があるといえる。 (エ) そうすると、干渉防止効果の向上等のため、引用発明において、上記技術常識1を踏まえて、車両間の相対的位置関係だけでなく、車両間の相対的速度関係にも基づいて、「管制センタ100」が「干渉の見込みが限界見込みを超えることについての判断」を行うよう構成することは当業者が適宜なし得たことである。 ウ 相違点2の検討のまとめ したがって、引用発明において相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3) 相違点3(干渉の見込みを低減させる調節)について ア 引用発明においては、「複数の車載レーダ装置からの位置情報」に基づき干渉の見込みを判断しており、これに基づき「装置の優先順位に応じ[た]周波数帯域」の「割当て」を行っている。 イ そして、前記(2)において検討したとおり、引用発明において車両間の相対的速度関係も考慮して干渉の見込みを判断するように構成した場合、干渉の見込みの程度に基づく上記「割当て」についても、車両間の相対的速度関係を考慮して行われるようにすることは、自然な発想である。 ウ ここで、本願の請求項3には「調節」が「送信周波数」の「修正」である点が特定されていることから、本願発明の「調節」には「送信周波数」の「修正」が含まれると理解される。 エ そして、引用発明の「装置の優先順位に応じ[た]周波数帯域」の「割当て」は、それまでに設定されていた周波数におけるセンサの出力レベルをゼロとし、他の周波数におけるセンサの出力レベルを上げることを意味することから、本願発明の「第1のセンサの出力レベルに対する調節」に相当する。 オ また、仮に本願発明の「調節」が、「送信周波数」の「修正」を含まず、単に出力レベルの強弱の調節を意味するものであるとしても、干渉の見込み等に応じてセンサの出力レベルの強弱を適宜調節することは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない(必要であれば、例えば引用文献4の【0030】を参照)。 カ さらに、引用発明において、「車両の予防安全」のため「先行車両との距離」等を監視していることは明らかであるところ(引用文献2の【0002】等)、例えば、消費電力の節約のため車両間の衝突の可能性が低い場合にセンサの出力を抑えることは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎず、このような観点からも、相違点3に係る構成は自明な事項である。 キ したがって、引用発明において相違点3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (4) 総合評価 前記(1)~(3)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、前記相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8 請求人の主張について (1) 請求人の主張1について ア 請求人の主張1の内容 請求人は、令和7年6月26日に提出された意見書において、以下のように主張している。 (ア) 引用発明においては、管制センタは、各車載レーダ装置から、自装置の位置を受信しており、引用文献2には、本願発明における「前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示(す)」データを「前記第1の車両」から受信することについて、何ら開示も示唆もない。 (イ) 仮に、「センサ間で生じる干渉を回避するにあたって、当該干渉の見込みが車両間の相対的な速度、向きにも依存すること」や「通常の車両がその速度、向きを取得する速度計、慣性計測装置(IMU)等を備えること」が技術常識であるとしても、引用発明において、本願発明における「前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示(す)」データを「前記第1の車両」から受け取るという構成を採用することには飛躍がある。 (ウ) 実際、当審拒絶理由においても、「それを判断材料にする余地があるといえる」と指摘しているにすぎず、引用発明において上記技術常識を採用するための具体的な根拠は示されていない。 (エ) したがって、引用発明において、上記相違点2に係る構成を採用することは当業者にとって容易ではない。 イ 請求人の主張1についての検討 (ア) 請求人の主張は、前記相違点2に係る構成についてのものであるところ、前記相違点2が、技術常識1を備える当業者にとって自明であることは、前記7(2)において説示したとおりである。 (イ) ここで、請求人は「本願発明における『前記第1の車両に対する前記第2の車両の速度及び向きを示(す)』データを『前記第1の車両』から受け取るという構成を採用することには飛躍がある」旨を主張しているところ、当該主張が当審拒絶理由及び前記7(2)における説示事項からみて当を得ないことは明らかであるが、以下念のため、当該説示事項を補足しつつ詳細に説明する。 (ウ) まず、車載レーダ装置間で生じる干渉の予測及び回避を行う引用発明において、干渉の予測を精度良く行おうとすることは自明な課題である。 (エ) そして、「車載レーダ装置間で生じる干渉を回避するにあたって、車両間の相対的な速度の大きさ、向きも考慮して、干渉の見込みを評価すること」は技術常識であり(前記5(2)の技術常識1を参照)、また、このことは車載レーダ装置が、近接し、かつ、対向する位置関係にあることによって干渉が生じることからして、当業者にとって極めて自明な事項であるといえる。 (オ) そうすると、このような技術常識を備える当業者にとっては、車両間の相対的速度関係を干渉の予測の判断材料とすることは設計上当然考慮されるべき選択肢であり、引用発明において、車両間の距離だけでなく、車両間の相対的速度関係に基づいて干渉の予測を行う構成を採用することの動機付けは十分あるというべきである。 (カ) さらに、車両間の相対的速度関係を干渉予測の判断材料とすることは、通常の車両がその速度の大きさ、向きを取得する速度計、慣性計測装置(IMU)等を備えていることから、引用発明において容易に着想し得るものであり、かつ、技術的に採用可能な構成であるといえる。当審拒絶理由において、「それを判断材料にする余地があるといえる」と指摘したのはこのような趣旨であり、請求人は審判合議体が説示した内容を正解していない。 (キ) したがって、請求人の主張1を採用することができない。 (2) 請求人の主張2について ア 請求人の主張2の内容 請求人は、令和7年6月26日に提出された意見書において、以下のように主張している。 (ア) 引用文献2には、「本発明の目的は,レーダ用途として設定可能な占有帯域内で他のレーダ装置との干渉を確実に回避できるように観測信号の送信制御を行う車載レーダ装置等を提供することにある。」([0006])という「周波数帯域」を前提とした課題のもと、書類全体にわたって、「周波数帯域」の調整によって当該課題を解決することしか開示されていない。 (イ) 当審拒絶理由では、「仮に本願発明の『調節』が『送信周波数』の『修正』を含まないとしても、干渉の見込み等に応じてセンサの出力レベルの強弱を適宜調節することは、当業者が適宜なし得る設計変更に過ぎない。」や「例えば、消費電力の節約のため車両間の衝突の可能性が低い場合にセンサの出力を抑えることは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない」と指摘しているが、引用発明における上記課題を前提とすると、本願発明における「前記1つ以上の調節は、前記第1の車両の方向又は速度に基づく、前記第1のセンサの出力レベルに対する調節を含む」という構成を採用する動機はない。 (ウ) したがって、引用発明において、上記相違点3に係る構成を採用することは当業者にとって容易ではない。 イ 請求人の主張2についての検討 (ア) 当審拒絶理由では、まず、引用発明の「装置の優先順位に応じ[た]周波数帯域」の「割当て」が、本願発明の「第1のセンサの出力レベルに対する調節」に相当することに基づき、本願発明が進歩性を有さない旨を判断し(前記7(3)ア~エに対応)、その上で、仮に本願発明の「調節」が「送信周波数」の「修正」を含まないとしても、本願発明に進歩性が認められないことを、予備的判断として示している(前記7(3)オ、カに対応)。 (イ) 請求人の主張2は、上記予備的判断に対するものであり、前記(ア)の主意的判断に対しては特段の主張がないため、そもそも前記7(4)の判断を左右するものではないが、念のため以下検討を行う。 (ウ) 請求人は、引用文献2について「書類全体にわたって、『周波数帯域』の調整によって当該課題を解決することしか開示されていない」と主張しているが、引用文献2には「周波数帯域」の調整以外に「送信期間」の調整により干渉を防ぐことも開示されていることから(例えば、【請求項6】、【0001】、【0068】を参照)、当該主張が妥当であるとはいえない。 (エ) また、レーダ装置間の干渉を防ぐ手段として、周波数帯域を調整すること以外にも、送信タイミング、アンテナの向き、出力の大きさ、識別符号といったレーダ装置の他の要素を調整することは広く知られており、引用発明において、センサの出力レベルを調節することにより干渉を防止することは設計的事項にすぎない。 (オ) したがって、請求人の主張2を採用することができない。 9 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-021081

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