特許拒絶査定不服審判
2023-014283
自動運転車両カメラのセンサクランプ設計
- 審判番号
- 2023-014283
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-532302
- 請求日
- 2023年08月24日
- 審決日
- 2024年10月21日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ウェイモ エルエルシー
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】佐藤 睦
- 審判長/審判官
- 審判長 藤田 年彦
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 波多江 進
- 分類
- P18 .121-Z (G03B) / P18 .575-Z (G03B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-532302「自動運転車両カメラのセンサクランプ設計」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月25日国際公開、WO2020/132488、令和 4年 1月31日国内公表、特表2022-511552〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2018年12月21日、米国)の出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 4年 7月28日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 1月10日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月27日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年8月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年8月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「光学システムであって、
少なくとも1つのレンズを備えるレンズアセンブリであって、光軸、焦点距離、および対応する焦点面を画定するレンズアセンブリと、
第1の面を有する基板と、
前記基板の前記第1の面に取り付けられた画像センサと、
前記基板の前記第1の面に取り付けられたセンサホルダであって、前記画像センサを前記光軸に沿って実質的に前記焦点面に配置するセンサホルダと、を備え、
前記センサホルダが、熱サイクルによって引き起こされるデボウイングまたはデストレッシングによる前記レンズアセンブリに対する前記基板および前記画像センサの移動を防止するように構成され、
前記センサホルダは、少なくとも可視および/または赤外波長範囲における光反射を減衰するように構成された反射防止材料によってコーティングされる、光学システム。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「光学システムであって、
少なくとも1つのレンズを備えるレンズアセンブリであって、光軸、焦点距離、および対応する焦点面を画定するレンズアセンブリと、
第1の面を有する基板と、
前記基板の前記第1の面に取り付けられた画像センサと、
前記基板の前記第1の面に取り付けられたセンサホルダであって、前記画像センサを前記光軸に沿って実質的に前記焦点面に配置するセンサホルダと、を備え、
前記センサホルダが、熱サイクルによって引き起こされるデボウイングまたはデストレッシングによる前記レンズアセンブリに対する前記基板および前記画像センサの移動を防止するように構成される、光学システム。」
2 本件補正の適否
本件補正のうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「センサホルダ」について「少なくとも可視および/または赤外波長範囲における光反射を減衰するように構成された反射防止材料によってコーティングされる」との限定を含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に発行された国際公開第2009/119260号(以下「引用文献1」という。原査定の引用文献2。)には、次の記載がある(下線は、当合議体が付した。以下同じ。)。
「発明が解決しようとする課題
[0006] 前述した撮像基板とホルダとの固定において、ネジを締めた際には、撮像基板が主面と平行な方向に延びて広がる応力が発生するものである。一方で、ホルダには、ネジで締められないので、このような応力が発生しない。このため、撮像基板が延びて広がる応力はネジ締めによる固定部から反力を受けて、撮像基板に対する圧縮応力が発生し、撮像基板に反りが発生するという問題点があった。この状態で撮像素子とレンズとの距離を調整すると、撮像基板に圧縮応力が残留していることから、撮像モジュールを長期的に使用している際に、周囲の温度変化等によるホルダの熱膨張等によって圧縮応力の残留が無くなると、撮像基板の反りが小さくなるので、撮像素子とレンズとの距離が変化してしまうという問題点があった。
[0007] このように、従来の撮像モジュールは、長期的な使用に際してレンズと撮像素子との距離が変化しやすいものであり、被写体光の焦点が合わなくなって高精度な画像を取得しにくいというものであった。
[0008] 本発明は以上のような従来の技術における問題点を解決すべく案出されたものであり、その目的は、撮像素子が搭載されている撮像基板の変形を少なくして高精度な画像の取得を可能にした撮像モジュールを提供することにある。」
「[0017] 図1は本発明の撮像モジュールの実施の形態の一例であるカメラモジュールを被写体側から見た外観斜視図であり、図2は図1に示すカメラモジュールの分解斜視図であり、図3は図1のA-A線断面図である。これらの図に示すカメラモジュール10は、基本的な構成として、レンズ支持用筒部3、ホルダ4、基板保持用板材5、撮像基板6等を具備するものである。」(当審注:「レンズ保持用筒部3」は、「レンズ支持用筒部3」の誤記であることは、明らかであるので、誤記を正して摘記した。)
「[0032] 撮像素子7に被写体光を集光するレンズユニット1は、通常は、被写体光を広角度で集光するために被写体側を凸形状とした第1レンズ1aと、第1レンズ1aを通過した光を光線として平行に近づけるための第2レンズ1bおよび第3レンズ1cからなる複数のレンズ群として構成されている。レンズユニット1が上述の3枚のレンズからなる場合は、例えば、被写体側から撮像素子7に向かって、第1レンズ1a、第2レンズ1b、第3レンズ1cの順で光軸上に重なるように配置される。
[0033] レンズユニット1は、押え治具としてのリテーナ2bにより被写体側から鏡筒2aの内部空間の内壁に設けられた段差に押し当てられて固定されている。リテーナ2bおよび鏡筒2aは、例えば、アルマイト処理したアルミニウムの板材を加熱しながら金型を用いて加工されたものである。
[0034] また、鏡筒2aは、外壁にネジ溝が設けられ、このネジ溝がレンズ支持用筒部3の内部の内壁に設けられたネジ溝と嵌め合わされており、レンズ支持用筒部3に対して光軸上の位置を自在に移動可能になっている。このように、本例のカメラモジュール10においては、レンズユニット1は鏡筒2aを介して間接的にレンズ支持用筒部3の内部に支持されている。
[0035] レンズ支持用筒部3の背面側には、ホルダ4がレンズ支持用筒部3に一体的に設けられている。ホルダ4は、後述する基板保持用板材5を介して撮像基板6を保持するものであり、例えば、レンズ支持用筒部3と一体的に設けられた形状に合わせて作製した鋳型に溶融したアルミニウムを注入することによって、鋳物として作製することができる。レンズ支持用筒部3およびホルダ4の材料としては、アルミニウム以外に、ステンレススチール等の金属材料を用いることもできる。
[0036] 図4は図1のカメラモジュール10をホルダ4を取り除いて被写体側から平面視した透視図である。図4に示すように、基板保持用板材5は、長方形状の板材からなるものであり、一方の主面が撮像基板6の撮像素子7が搭載されている側の主面に対向して配置されており、撮像基板6の4隅に対向する位置に撮像基板6を固定する基板固定部5bがそれぞれ設けられている。本例のカメラモジュール10は、撮像基板6の4隅に貫通孔が設けられ、基板保持用板材5の基板固定部5bのそれぞれにネジ止め穴が設けられており、撮像基板6と基板保持用板材5とがネジ11によるネジ締めにより固定されている。具体的には、ネジ11を、撮像基板6の4隅の貫通孔のそれぞれに背面側から挿入して、続けて基板保持用板材5の基板固定部5bのネジ止め穴に差し込み、基板保持用板材5とネジ11の頭部とで撮像基板6を挟んで締め付けることにより、撮像基板6を基板保持用板材5に固定した構成となっている。基板保持用板材5は、例えば、ホルダ4と同様に、アルミニウム等の金属材料を用いて鋳物として作製することができる。ネジ11は、ネジ締めの際に受ける応力に耐えるとともに、錆等が発生しにくいものが好ましく、材料としては、例えば、ステンレススチール等の金属材料が用いられる。
[0037] また、基板保持用板材5には、4箇所の基板固定部5bに囲まれた領域M(図4中に右上から左下への斜線を引いた領域で示す。)が開口している開口部5aが設けられている。撮像基板6を基板保持用板材5に固定した際、撮像素子7およびIC8は、この4箇所の基板固定部5bに囲まれた領域M内に配置されることとなる。」
「[0041] レンズユニット1と撮像素子7との位置合わせは、基板保持用板材5をホルダ4に固定する際に行なう。具体的には、まず、ネジ12を基板保持用板材5のホルダ固定部5cの貫通孔に挿入してホルダ4の板材固定部4aのネジ止め穴に差し込んだときに仮止めし、レンズ支持用筒部3の内部にレンズユニット1を支持した鏡筒2aを挿入しておく。次いで、基板保持用板材5の被写体側の主面をホルダ4の背面側の主面に当接させて固定する際には、被写体側に画像調整用の被写体を配置してコネクタ9に調整用配線ケーブルを接続し、この調整用配線ケーブルを画像分析装置に接続しておいて、撮像素子7により得られる電気信号を確認しながら、撮像素子7に対してホルダ4を移動させてレンズユニット1の位置を合わせる。そして、ネジ12を増し締めした後に、撮像素子7に対して鏡筒2aを移動させてレンズユニット1との距離を合わせる。なお、基板保持用板材5のホルダ固定部5cの貫通孔の内径を、撮像素子7を搭載した際の位置ズレ等を鑑みて大きめに設定しておくと位置合わせの幅が広がり位置合わせしやすくなる。また、このような方法を用いてホルダ4、基板保持用板材5および撮像基板6の接続を行なった後、調整用配線ケーブルとコネクタ9との接続を解除する。
[0042] 本例のカメラモジュール10は、撮像基板6の4隅に対向する位置に撮像基板6を固定する基板固定部5Bがそれぞれ設けられ、4箇所の基板固定部5Bに囲まれた領域Mが開口している開口部5Aが設けられている基板保持用板材5を用いたことから、撮像基板6を基板保持用板材5に固定する際にそれぞれの基板固定部5B付近にネジ締めによる応力が加えられて撮像基板6が延びて広がろうとすれば、開口部5Aが設けられている分、撮像基板6の延びに合わせて基板保持用板材5が延びることとなるので、撮像基板6が基板固定部5Bから受ける反力が少なくなって圧縮応力が少ないものとなっている。
[0043] 特に、基板保持用板材5および撮像基板6における、撮像基板6の長手方向に対向する4隅間の領域Mの長手方向に垂直な面の断面積をそれぞれX[m2](基板保持用板材5の断面積),Y[m2](撮像基板6の断面積)とし、ヤング率をA[Pa],B[Pa]としたとき、X×A<Y×Bを満たすときには、撮像基板6の長手方向の伸びに対して基板保持用板材5の剛性が弱いことから、基板保持用板材5が撮像基板6の長手方向に延びるので、撮像基板6に残留する圧縮応力を効果的に少なくすることができる。
[0044] そして、基板保持用板材5に設けられた、レンズ支持用筒部3に一体的に設けられたホルダ4を固定するホルダ固定部5cは、4箇所の基板固定部5bに対して長手方向の外側に位置していることから、基板保持用板材5をホルダ4に固定することにより、ネジ12によるネジ締めの際に、撮像基板6の延びに伴う残留応力を緩和するように基板保持用板材5が延びて広がるので、撮像基板6に残留する圧縮応力を低減したものとなっている。
[0045] すなわち、本例のカメラモジュール10によれば、撮像基板6に残留する圧縮応力が少ないことから、周囲の温度変化等によりホルダ4が熱膨張しても撮像素子7が搭載されている撮像基板6の変形が少なくなり、レンズユニット1と撮像素子7との距離、およびレンズユニット1が集光する方向と撮像素子7との角度の変化が少なくなるので、高精度な画像の取得が可能となる。」
図1-4は、以下のとおりである。
「
[図:0001420920000001.jpg]
[図:0001420920000002.jpg]
」
イ 引用発明の認定
前記アで摘記した引用文献1の記載事項から、引用文献1には、図1等で示される発明の実施の形態のカメラモジュールとして、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
<引用発明>
「カメラモジュール10は、基本的な構成として、レンズ支持用筒部3、ホルダ4、基板保持用板材5、撮像基板6等を具備し、([0017])
撮像素子7に被写体光を集光するレンズユニット1は、第1レンズ1aと、第2レンズ1bおよび第3レンズ1cからなる複数のレンズ群として構成され、被写体側から撮像素子7に向かって、第1レンズ1a、第2レンズ1b、第3レンズ1cの順で光軸上に重なるように配置され、([0032])
レンズユニット1は鏡筒2aを介して間接的にレンズ支持用筒部3の内部に支持され、([0034])
基板保持用板材5は、長方形状の板材からなるものであり、一方の主面が撮像基板6の撮像素子7が搭載されている側の主面に対向して配置されており、撮像基板6の4隅に対向する位置に撮像基板6を固定する基板固定部5bがそれぞれ設けられ、カメラモジュール10は、撮像基板6の4隅に貫通孔が設けられ、基板保持用板材5の基板固定部5bのそれぞれにネジ止め穴が設けられており、撮像基板6と基板保持用板材5とがネジ11によるネジ締めにより固定され、([0036])
基板保持用板材5には、4箇所の基板固定部5bに囲まれた領域Mが開口している開口部5aが設けられ、撮像基板6を基板保持用板材5に固定した際、撮像素子7およびIC8は、この4箇所の基板固定部5bに囲まれた領域M内に配置され、([0037])
基板保持用板材5の被写体側の主面をホルダ4の背面側の主面に当接させて固定する際には、被写体側に画像調整用の被写体を配置してコネクタ9に調整用配線ケーブルを接続し、この調整用配線ケーブルを画像分析装置に接続しておいて、撮像素子7により得られる電気信号を確認しながら、撮像素子7に対してホルダ4を移動させてレンズユニット1の位置を合わせ、そして、ネジ12を増し締めした後に、撮像素子7に対して鏡筒2aを移動させてレンズユニット1との距離を合わせ、([0041])
カメラモジュール10は、撮像基板6の4隅に対向する位置に撮像基板6を固定する基板固定部5bがそれぞれ設けられ、4箇所の基板固定部5bに囲まれた領域Mが開口している開口部5aが設けられている基板保持用板材5を用いたことから、撮像基板6を基板保持用板材5に固定する際にそれぞれの基板固定部5b付近にネジ締めによる応力が加えられて撮像基板6が延びて広がろうとすれば、開口部5aが設けられている分、撮像基板6の延びに合わせて基板保持用板材5が延びることとなるので、撮像基板6が基板固定部5bから受ける反力が少なくなって圧縮応力が少ないものとなっており、([0042])
基板保持用板材5および撮像基板6における、撮像基板6の長手方向に対向する4隅間の領域Mの長手方向に垂直な面の断面積をそれぞれX[m2](基板保持用板材5の断面積),Y[m2](撮像基板6の断面積)とし、ヤング率をA[Pa],B[Pa]としたとき、X×A<Y×Bを満たすときには、撮像基板6の長手方向の伸びに対して基板保持用板材5の剛性が弱いことから、基板保持用板材5が撮像基板6の長手方向に延びるので、撮像基板6に残留する圧縮応力を効果的に少なくすることができ、([0043])
基板保持用板材5に設けられた、レンズ支持用筒部3に一体的に設けられたホルダ4を固定するホルダ固定部5cは、4箇所の基板固定部5bに対して長手方向の外側に位置していることから、基板保持用板材5をホルダ4に固定することにより、ネジによるネジ締めの際に、撮像基板6の延びに伴う残留応力を緩和するように基板保持用板材5が延びて広がるので、撮像基板6に残留する圧縮応力を低減したものとなり、([0044])
撮像基板6に残留する圧縮応力が少ないことから、周囲の温度変化等によりホルダ4が熱膨張しても撮像素子7が搭載されている撮像基板6の変形が少なくなり、レンズユニット1と撮像素子7との距離、およびレンズユニット1が集光する方向と撮像素子7との角度の変化が少なくなるので、高精度な画像の取得が可能となる([0045])
カメラモジュール10。」
(3) 本件補正発明と引用発明との対比・判断
ア 対比分析
(ア) 本件補正発明の「光学システム」の発明特定事項について
引用発明の「カメラモジュール10」は、本件補正発明の「光学システム」に相当する。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。
(イ) 本件補正発明の「少なくとも1つのレンズを備えるレンズアセンブリであって、光軸、焦点距離、および対応する焦点面を画定するレンズアセンブリ」の発明特定事項について
引用発明の「第1レンズ1aと、第2レンズ1bおよび第3レンズ1c」は、本件補正発明の「少なくとも1つのレンズ」に、
引用発明の「レンズユニット1」は、本件補正発明の「レンズアセンブリ」に、
それぞれ相当する。
そして、引用発明は、「被写体側から撮像素子7に向かって、第1レンズ1a、第2レンズ1b、第3レンズ1cの順で光軸上に重なるように配置され」るものであるから、「第1レンズ1aと、第2レンズ1bおよび第3レンズ1cからなる複数のレンズ群として構成され」る「レンズユニット1」は、光軸を画定しているものであり、また、「レンズユニット1」は、「撮像素子7に被写体光を集光する」ものであるから、焦点距離及び対応する焦点面を画定していることは明らかである。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。
(ウ) 本件補正発明の「第1の面を有する基板」の発明特定事項について
引用発明の「撮像素子7が搭載されている側の主面」を有する「撮像基板6」は、本件補正発明の「第1の面を有する基板」に相当する。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。
(エ) 本件補正発明の「前記基板の前記第1の面に取り付けられた画像センサ」の発明特定事項について
引用発明の「撮像基板6」に「撮像素子7が搭載されている側の主面」に「搭載されている」「撮像素子7」は、本件補正発明の「前記基板の前記第1の面に取り付けられた画像センサ」に相当する。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。
(オ) 本件補正発明の「前記基板の前記第1の面に取り付けられたセンサホルダであって、前記画像センサを前記光軸に沿って実質的に前記焦点面に配置するセンサホルダ」の発明特定事項について
引用発明の「基板保持用板材5」は、本件補正発明の「センサホルダ」に相当する。
そして、引用発明は、「基板保持用板材5」が、「一方の主面が撮像基板6の撮像素子7が搭載されている側の主面に対向して配置され」、「撮像基板6と基板保持用板材5とがネジ11によるネジ締めにより固定され」ていることから、引用発明の「基板保持用板材5」は、撮像基板6の撮像素子7が搭載されている側の主面に取り付けられているといえ、本件補正発明でいう「基板の前記第1の面に取り付けられた」ものである。
したがって、本件補正発明の「センサホルダ」と引用発明の「基板保持用板材」とは、「前記基板の前記第1の面に取り付けられたセンサホルダ」である点で共通する。
しかしながら、引用発明は、「基板保持用板材5の被写体側の主面をホルダ4の背面側の主面に当接させて固定する際には、被写体側に画像調整用の被写体を配置してコネクタ9に調整用配線ケーブルを接続し、この調整用配線ケーブルを画像分析装置に接続しておいて、撮像素子7により得られる電気信号を確認しながら、撮像素子7に対してホルダ4を移動させてレンズユニット1の位置を合わせ、そして、ネジ12を増し締めした後に、撮像素子7に対して鏡筒2aを移動させてレンズユニット1との距離を合わせ」しているものの、前記画像センサを前記光軸に沿って実質的に前記焦点面に配置するものなのか明らかではない。
(カ) 本件補正発明の「前記センサホルダが、熱サイクルによって引き起こされるデボウイングまたはデストレッシングによる前記レンズアセンブリに対する前記基板および前記画像センサの移動を防止するように構成され」の発明特定事項について
引用発明の「カメラモジュール10」は、「撮像基板6を基板保持用板材5に固定する際にそれぞれの基板固定部5b付近にネジ締めによる応力が加えられて撮像基板6が延びて広がろうとすれば、開口部5aが設けられている分、撮像基板6の延びに合わせて基板保持用板材5が延びることとなるので、撮像基板6が基板固定部5bから受ける反力が少なくなって圧縮応力が少ないもの」であり、「撮像基板6の長手方向の伸びに対して基板保持用板材5の剛性が弱いことから、基板保持用板材5が撮像基板6の長手方向に延びるので、撮像基板6に残留する圧縮応力を効果的に少なくすることができ」るものであるから、撮像基板6を固定し撮像基板6の長手方向の伸びに対して剛性が弱い基板保持用板材5が、撮像基板6の長手方向に延びることによって、撮像基板6に残留する圧縮応力を少なくするようにしたものといえる。
そして、引用発明の「基板保持用板材5」は、「撮像基板6の延びに伴う残留応力を緩和するように」「延びて広がるので、撮像基板6に残留する圧縮応力を低減」させるものであり、この結果、引用発明は、「撮像基板6に残留する圧縮応力が少ないことから、周囲の温度変化等によりホルダ4が熱膨張しても撮像素子7が搭載されている撮像基板6の変形が少なくなり、レンズユニット1と撮像素子7との距離、およびレンズユニット1が集光する方向と撮像素子7との角度の変化が少なくなるので、高精度な画像の取得が可能となる」(以下「基板保持用板材作用」という。)ものである。
ところで、引用文献1の[0006]には、「撮像基板に圧縮応力が残留していることから、撮像モジュールを長期的に使用している際に、周囲の温度変化等によるホルダの熱膨張等によって圧縮応力の残留が無くなると、撮像基板の反りが小さくなるので、撮像素子とレンズとの距離が変化してしまうという問題点があった。」と記載されており、つまり、周囲の温度変化等によるホルダの熱膨張等によって、圧縮応力の残留が無くなるというデストレッシング及び撮像基板の反りが小さくなるというデボウイングの問題を認識しており、発明を実施する形態のカメラモジュール10を基に認定した引用発明も、当該問題を解決しているものといえる。
そうすると、引用発明の前記基板保持用板材作用は、周囲の温度変化等によるデボウイング及びデストレッシングによるレンズユニットに対する撮像基板及び撮像素子の移動を防止しているものといえ、このことは、本件補正発明の「前記センサホルダが、熱サイクルによって引き起こされるデボウイングまたはデストレッシングによる前記レンズアセンブリに対する前記基板および前記画像センサの移動を防止するように構成され」ることに相当するものといえる。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。
(キ) 本件補正発明の「前記センサホルダは、少なくとも可視および/または赤外波長範囲における光反射を減衰するように構成された反射防止材料によってコーティングされる」の発明特定事項について
引用発明の「基板保持用板材」は、少なくとも可視および/または赤外波長範囲における光反射を減衰するように構成された反射防止材料によってコーティングされるものなのか明らかではない。
イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア) 一致点
「光学システムであって、
少なくとも1つのレンズを備えるレンズアセンブリであって、光軸、焦点距離、および対応する焦点面を画定するレンズアセンブリと、
第1の面を有する基板と、
前記基板の前記第1の面に取り付けられた画像センサと、
前記基板の前記第1の面に取り付けられたセンサホルダと、を備え、
前記センサホルダが、熱サイクルによって引き起こされるデボウイングまたはデストレッシングによる前記レンズアセンブリに対する前記基板および前記画像センサの移動を防止するように構成される、光学システム。」
(イ) 相違点
【相違点1】
センサホルダにつき、本件補正発明では、「前記画像センサを前記光軸に沿って実質的に前記焦点面に配置する」ものであるのに対し、引用発明では、「基板保持用板材5の被写体側の主面をホルダ4の背面側の主面に当接させて固定する際には、被写体側に画像調整用の被写体を配置してコネクタ9に調整用配線ケーブルを接続し、この調整用配線ケーブルを画像分析装置に接続しておいて、撮像素子7により得られる電気信号を確認しながら、撮像素子7に対してホルダ4を移動させてレンズユニット1の位置を合わせ、そして、ネジ12を増し締めした後に、撮像素子7に対して鏡筒2aを移動させてレンズユニット1との距離を合わせ」るものの、撮像素子が焦点面に配置されるか明らかでない点
【相違点2】
センサホルダにつき、本件補正発明では、「少なくとも可視および/または赤外波長範囲における光反射を減衰するように構成された反射防止材料によってコーティングされ」るものであるのに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。
ウ 相違点に対する判断
以下、上記相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
引用発明は、「基板保持用板材5の被写体側の主面をホルダ4の背面側の主面に当接させて固定する際には、被写体側に画像調整用の被写体を配置してコネクタ9に調整用配線ケーブルを接続し、この調整用配線ケーブルを画像分析装置に接続しておいて、撮像素子7により得られる電気信号を確認しながら、撮像素子7に対してホルダ4を移動させてレンズユニット1の位置を合わせ、そして、ネジ12を増し締めした後に、撮像素子7に対して鏡筒2aを移動させてレンズユニット1との距離を合わせ」している。
そして、画像センサを光軸に沿って焦点面に配置することは技術常識(必要ならば、米国特許出願公開第2012/0019940号明細書(原査定の引用文献3、特に、特許請求の範囲の記載、[0034]-[0036]、[0064]、図1、図2及び図11)を参照されたい。)であるから、引用発明において、「基板保持用板材5の被写体側の主面をホルダ4の背面側の主面に当接させて固定する際には、」「撮像素子7により得られる電気信号を確認しながら、撮像素子7に対してホルダ4を移動させてレンズユニット1の位置を合わせ、」「撮像素子7に対して鏡筒2aを移動させてレンズユニット1との距離を合わせ」するに際し、撮像素子7を光軸に沿って焦点面に配置することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
以上からすれば、当業者は、相違点1に係る本件補正発明の構成に容易に至るというべきである。
(イ) 相違点2について
a 引用発明の「撮像モジュール」において、画像センサに入射する不要な反射光を防止することは、当業者が、一般に認識する課題である。
b ところで、撮像素子が不要な反射光を取り込むことを防止するために、光の入射する方向から見て撮像素子の周囲に配置されている部材に、光の反射を防止する黒色表面処理を施すことは、周知技術(必要ならば、特開2002-112955号公報(特に、【0018】「CCD保持部材18は・・・CCD16での撮像に影響を及ぼすことをできるだけ低減するために黒色となる(反射防止)膜を設けた黒色表面処理が施される。」)、特開2007-158184号公報(特に、【0021】「放熱板13は、光の反射を防止し、不要光が受光面21に入射することのないように、黒色または表面が黒色にコーティングされたものである」及び図2)及び特開2014-216695号公報(特に、【0056】「本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、本実施の形態では、リジッドプリント基板32の開口部32aの端面に凹凸部は設けられておらず、その端面に反射防止コーティング81が施されている・・・反射防止コーティング81としては、例えば、つや消し黒塗装などを用いる」及び図8)を参照されたい。)である。
c そして、上記aの課題を認識した当業者は、引用発明において、画像センサが不要な反射光を取り込むことを防止するために、前記周知技術を適用して、光の入射する方向から見て画像センサの周囲に配置されている基板保持用板材に、光の反射を防止する黒色表面処理を施すことを容易に想到できるといえる。ここで、光の反射を防止する黒色表面処理したものは、黒色であるから、可視波長範囲における光反射を減衰するものであることは自明である。
d 上記cのように引用発明に周知技術を適用した構成は、相違点2に係る本件補正発明でいう「前記センサホルダは、少なくとも可視」「波長範囲における光反射を減衰するように構成された反射防止材料によってコーティングされる」ものであるといえる。
e 以上からすれば、当業者は、引用発明に前記周知技術を適用することにより、相違点2に係る本件補正発明の構成に容易に至るというべきである。
(ウ) 総合検討
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の作用効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 審判請求人の主張について
(ア) 審判請求人の主張内容
審判請求人は、以下の旨を主張している。
引用文献1には、「前記センサホルダは、少なくとも可視および/または赤外波長範囲における光反射を減衰するように構成された反射防止材料によってコーティングされる」ことは記載されていない旨主張する。
(イ) 審判請求人の主張についての検討
上記ウ(イ)で説示したとおり、引用発明に周知技術を適用した構成は、少なくとも可視範囲における光反射を減衰するように構成された反射防止材料によってコーティングされるものといえる。
よって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。
オ 小括
以上によれば、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正の却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~19に係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、当該請求項1の記載は前記第2の[理由]1(2)に示したとおりである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の本願発明に対する拒絶の理由の概略は、以下の理由を含むものである。
理由1.(進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献2(前記第2[理由]2(2)の引用文献1)に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献2.国際公開第2009/119260号
引用文献3.米国特許出願公開第2012/0019940号明細書
3 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)で記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2(1)で認定した本件補正発明から、「センサホルダ」について「少なくとも可視および/または赤外波長範囲における光反射を減衰するように構成された反射防止材料によってコーティングされる」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-014283