審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-014501

ネブライザ及びカートリッジ

審判番号
2022-014501
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-531296外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年09月14日
審決日
2023年03月16日
公報発行日
2023年09月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61M) / P18 .575-Z (A61M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-531296「ネブライザ及びカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日国際公開、WO2018/115306、令和 2年 1月23日国内公表、特表2020-501665〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2017年(平成29年)12月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年12月21日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は以下のとおりである。

令和 3年 8月 5日付け:拒絶理由通知書
令和 3年10月27日提出:意見書及び手続補正書
令和 4年 2月16日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 5月17日提出:意見書及び手続補正書
令和 4年 5月26日付け:拒絶査定
令和 4年 9月14日提出:審判請求書及び手続補正書
令和 4年12月 5日提出:上申書

第2 令和 4年 9月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和 4年 9月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、次のとおり補正することを含むものである(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
ネブライザ(1)のためのカートリッジ(3)であって、
噴霧化される流体(2)を含有する容器(4)と、
前記容器(4)をネブライザ(1)又はその送出機構(10)に流体的及び/又は密封的に接続するための接続ポート(9)を有する閉鎖部(7)と、
前記容器(4)から前記流体(2)を搬送するためのチューブ(25)と、
を含み、
前記閉鎖部(7)又は接続ポート(9)は、フィルムヒンジ(31D)と厚みの薄い円周部分(31B)とを有する膜又は密封壁(31)を含み、そのために該膜又は密封壁(31)は、前記ネブライザ(1)の接続要素(14)の挿入時に該円周部分に沿って破断して脇へ傾き、
前記カートリッジは、前記チューブ(25)を前記閉鎖部(7)又は前記接続ポート(9)に接続するアダプタ(26)を含み、
前記アダプタ(26)は、前記膜又は密封壁(31)が脇へ傾いた時に前記膜又は密封壁(31)を受け入れるためのポケット(9A)を含む又は形成する、ことを特徴とするカートリッジ(3)。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の、令和 4年 5月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
ネブライザ(1)のためのカートリッジ(3)であって、
噴霧化される流体(2)を含有する容器(4)と、
前記容器(4)をネブライザ(1)又はその送出機構(10)に流体的及び/又は密封的に接続するための接続ポート(9)を有する閉鎖部(7)と、
前記容器(4)から前記流体(2)を搬送するためのチューブ(25)と、
を含み、
前記閉鎖部(7)又は接続ポート(9)は、フィルムヒンジ(31D)と厚みの薄い円周部分(31B)とを有する膜又は密封壁(31)を含み、そのために該膜又は密封壁(31)は、前記ネブライザ(1)の接続要素(14)の挿入時に該円周部分に沿って破断して脇へ傾き、
前記カートリッジは、前記チューブ(25)を前記閉鎖部(7)又は前記接続ポート(9)に接続するアダプタ(26)を含み、
前記閉鎖部(7)、接続ポート(9)、及び/又はアダプタ(26)は、前記膜又は密封壁(31)が脇へ傾いた時に前記膜又は密封壁(31)を受け入れるためのポケット(9A)を含む又は形成する、ことを特徴とするカートリッジ(3)。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ポケット(9A)」について、当該ポケット(9A)を含む又は形成するものが、補正前の「閉鎖部(7)、接続ポート(9)、及び/又はアダプタ(26)」から、「アダプタ(26)」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献1の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2006/136426号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与したものであり、また、和訳は引用文献1の日本語ファミリ文献である特表2008-543684号公報の記載に基づいて当審で付与したものである。以下同様。)。

(ア)「Figs. 1 and 2 show a known nebuliser 1 for atomising a fluid 2, in particular a highly active medicament or the like, in a diagrammatic representation in the non-tensioned state (Fig. 1) and tensioned state (Fig. 2). The nebuliser is designed in particular as a portable inhaler and preferably operates without propellant gas.
On atomisation of the fluid 2, preferably a liquid, in particular a medicament, an aerosol is formed that can be breathed in or inhaled by a user (not shown). Normally inhalation is performed least once a day, in particular several times a day, preferably at predetermined time intervals, depending on the patient's medical condition.
The known nebuliser 1 comprises an insertable and preferably replaceable container 3 with the fluid 2. The container 3 thus forms a reservoir for the fluid 2 to be atomised. The container 3 preferably contains a sufficient amount of fluid 2 or active substance in order for example to be able to provide up to 200 dose units, i.e. to permit for example up to 200 atomisations or uses. A typical container 3, as disclosed in WO 96/06011 A2, accommodates a volume of ca. 2 to 10 ml.
The container 3 is designed substantially cylindrically or like a cartridge and, after the opening of the nebuliser 1, can be inserted into the latter and optionally replaced. The container is of rigid construction, the fluid 2 being accommodated in the container 3 in a fluid space 4 formed by a deflatable bag.
The nebuliser 1 furthermore comprises a pressure generator 5 for delivering and atomising the fluid 2, in particular in each case in a predetermined and optionally adjustable dose amount. The pressure generator 5 has a holder 6 for the container 3, an associated and only partly-shown drive spring 7 with a manually actuatable locking element 8 for unlocking purposes, a delivery tube 9 with a non-return valve 10, a pressure chamber 11 and a delivery nozzle 12 in the region of a mouthpiece 13. The container 3 is fixed via the holder 6, in particular in a notched manner, in the nebuliser 1 so that the delivery tube 9 dips into the container 3. The holder 6 may in this connection be designed so that the container 3 can be released and exchanged.」(第5ページ第18行~第6ページ第16行)

(当審訳)

「図1及び図2は、流体2、特に、活性の高い薬剤等を噴霧化する公知のネブライザ1を示しており、このネブライザは、非引張り操作状態(図1)及び引張り操作(始動又はプライミング)状態(図2)で概略的に示されている。ネブライザは、特に、携帯可能な吸入器として設計され、好ましくは、推進ガス無しに動作する。
流体2、好ましくは液体、特に薬剤を噴霧化する際、ユーザ(図示せず)により吸息され又は吸入できるエーロゾルが形成される。通常、吸入は、患者の医学的条件に応じて1日に少なくとも1回、特に1日に数回、好ましくは、設定された時間間隔で行われる。
公知のネブライザ1は、流体2を収容した挿入可能な、且つ、好ましくは、交換可能な容器3を有する。かくして、この容器は、噴霧化されるべき流体2のリザーバを形成している。好ましくは、容器3は、最高200回の投与分をもたらし、即ち、最高200回の噴霧又は使用を可能にするのに十分な量の流体2又は活性物質を収容している。国際公開第96/06011号パンフレットに開示されているような典型的な容器3は、約2ml(ミリリットル)から約10ml(ミリリットル)の量を収容する。
容器3は、実質的に円筒形に又はカートリッジのように設計されており、ネブライザ1の開放後、容器3をネブライザ内に挿入することができ、又オプションとして交換できる。容器は、剛性構造のものであり、流体2は、デフレート可能な袋により形成された流体空間4内の容器3内に収容される。
ネブライザ1は、流体2を特にあらかじめ設定され、任意に調節可能な投与量の状態で運搬して噴霧化する圧力発生器5を更に有している。圧力発生器5は、容器3のホルダ6と、ロック解除目的で手動で操作できるロック要素8を備えた関連の駆動ばね7(一部しか示さず)と、逆止弁10を備えた送出し管9と、圧力チャンバ11と、マウスピース13の付近に設けられた送出しノズル12とを有している。容器3は、ホルダ6により特にノッチ付き方式でネブライザ1内に固定されていて、送出し管9が、容器3内に入り込むようになっている。ホルダ6は、容器3を解除して交換することができるよう設計されたものであるのが良い。」
(イ)「Fig. 3 shows in a diagrammatic sectional view the proposed container 3 according to a first embodiment in the closed state without the associated nebuliser 1.
The container 3 comprises a rigid, gas-tight outer case 23. The term "gas- tight" is understood in the context of the present invention to mean that a diffusion of the fluid 2 or at least of an essential constituent of the fluid 2, such as a solvent, for example water or ethanol, is not possible or is prevented. The outer case 23 is in this respect therefore at least substantially impermeable. Furthermore the term "gas-tight" is basically understood to mean that air or other gas cannot penetrate through the outer case 23 for the purposes of pressure compensation.」(第7ページ第27行~第8ページ第2行)

(当審訳)

「図3は、関連のネブライザ1が省かれた状態で第1の実施形態としての本発明の容器3を閉鎖状態で示す概略断面図である。
容器3は、剛性でガス密の外側ケース23を有している。「ガス密(ガスタイト)」という用語は、本発明の関連では、流体2、又は、少なくとも流体2の本質的な成分、例えば溶剤、例えば、水、又は、エタノールの拡散が、可能ではなく、又は、阻止されるということを意味すると理解されたい。したがって、外側ケース23は、この点に関し、少なくとも実質的に不透過性である。さらに、「ガス密」という用語は、基本的には空気、又は、他のガスが圧力補償の目的で外側ケース23を通過することができないことを意味するものと理解されたい。」

(ウ)「The container 3 does not have a deflatable bag or the like. Instead, the fluid 2 is filled directly into the outer case 23 and is in contact therewith. The outer case 23 forms the fluid space 4 for the fluid 2, the said space consequently being rigid.」(第8ページ第10~13行)

(当審訳)

「容器3は、デフレート可能な袋等を備えていない。その代わり、流体2は、外側ケース23内に直接的に注ぎ込まれ、これと接触関係をなす。外側容器23は、流体2のための流体空間4を形成し、その結果、この流体空間は、変形しない。」

(エ)「The container 3 comprises a closure 24 that seals the container 3 in a gas-tight manner, preferably after the latter has been filled with the fluid 2. The closure 24 is preferably mounted on the front or top of the container 3 or on its outer case 23.
The seal 24 preferably comprises an outer cover or seal 25 and a cap or insert 26 arranged thereunder. In order to achieve the desired hermeticity, which is essential for a long storage life, particularly when the container 3 is sealed, the cover or seal 25, in particular of metal foil, is formed so as to be gas tight. Preferably the insert 26 inserted into the container 3 together with the metal film is hot-sealed, in order to achieve the desired hermeticity. In addition or alternatively, the insert 26 and optionally the seal 25 may be secured and fastened by crimping a metal ring or the like on the top of the container.」(第8ページ第20~32行)

(当審訳)

「容器3は、好ましくは、容器3を流体2で充填した後、容器3をガス密状態に密閉するクロージャ24を有している。クロージャ24は、好ましくは、容器3の前部若しくは頂部、又は、その外側ケース23に取り付けられる。
シール24は、好ましくは、外側カバー、又は、シール25、及び、その下に配置されたキャップ、又は、インサート26を有している。特に容器3を密閉する場合、貯蔵寿命を長くする上で不要不可欠な所望の気密性を達成するため、特に金属箔で作られたカバー又はシール25は、ガス密であるように形成される。好ましくは、金属フィルムと一緒に容器3内に挿入されるインサート26は、所望の気密性を達成するためにホットシールされる。追加的に、又は、代替的に、インサート26及びオプションとしてシール25が、金属リング等を容器の頂部に圧着することにより固定されて取り付けられるのが良い。」
(オ)「The container 3 furthermore comprises a sealing element 27 arranged in the interior, such as a septum, a membrane or the like, shown only partly in the figures. The sealing element 27 is preferably formed by the closure 24 or insert 26 and serves in particular to seal radially an inserted delivery element, in particular the delivery tube 9 or the like, which is not shown in Fig. 3.
In order to extract fluid 2 the container 3 is inserted into the nebuliser 1 and in particular is opened by connecting or introducing the delivery element, i.e. in this case the delivery tube 9. In particular the delivery tube 9 pierces the seal 25 and is introduced into the sealing element 27 or is possibly even forced through the latter, in order to produce a fluid connection to the fluid 2 in the container 3. The introduction of the delivery tube 9 thus preferably leads to an opening of the container 3, in particular of the seal 25 and of the closure 24. However, the opening may alternatively also take place independently of the removal of fluid and/or independently of the delivery element, in particular by means of a separate part or the like (not shown).」(第9ページ第3~18行)

(当審訳)

「容器3は、内部に配置されていて、図には一部しか示されていない密封要素27、例えば隔膜、メンブレン等を更に有している。密封要素27は、好ましくは、クロージャ24又はインサート26で形成され、かかる密封要素は、特に、図3には示されていない挿入状態の送出し要素、特に送出し管9等を半径方向に密封するのに役立つ。
流体2を抜き出すため、容器3をネブライザ1内に挿入し、特に、送出し要素、即ち、この場合送出し管9を連結し、又は、導入することにより、この容器を開く。特に、送出し管9は、シール25を穿刺し、この送出し管を密封要素27内に導入し、又は、場合によっては、密封要素を突き破って容器3内の流体2への流体結合をもたらすようにする。かくして、送出し管9の導入により、好ましくは、容器3、特にシール25及びクロージャ24の開放が行われる。しかしながら、この開放は、変形例として、流体の取出しとは無関係に、且つ(或いは)、送出し要素とは無関係に、特に、別個の部品等(図示せず)を用いて行っても良い。」
(カ)「In the first embodiment the insert or cap 26 adjoins a dip tube 35, which for example is slipped on and preferably extends at least substantially as far as the container base 21 in the interior of the container 3. The dip tube 35 is formed for example by a flexible silicone tube.
To open the container 3 the delivery tube 9 is inserted into the container 3, whereby the seal 25 is opened and an at least substantially tight connection is formed between the delivery tube 9 and the sealing element 27 of the closure 24. Figs. 1 and 2 show diagrammatically the state when the delivery tube 9 is inserted into the container 3, and accordingly additional explanation is unnecessary. In the fully inserted state the delivery tube 9 pierces or opens a seal, for example at the end or on the base of the sealing element 27, whereby the fluid connection to the interior of the container 3, i.e. to the fluid 2, is formed. The dip tube 35 forms an extension in order to enable the fluid 2 to be withdrawn substantially completely from the container 3 and fluid space 4 in the illustrated, upright position of the container 3.」(第13ページ第2~17行)

(当審訳)

「第1の実施形態では、インサート又はキャップ26は、浸漬管35に隣接して位置し、この浸漬管は、例えば、スリップオンされ、好ましくは、容器3の内部で少なくとも実質的に容器ベース21まで延びる。浸漬管35は、例えば、可撓性シリコーン管により形成される。
容器3を開くため、送出し管9を容器3内に挿入し、それによりシール25を開き、少なくとも実質的にしっかりとした連結部を送出し管9とクロージャ24の密封要素27との間に形成する。図1及び図2は、送出し管9が容器3内に挿入された状態を概略的に示しており、したがって、追加の説明は不要であろう。完全挿入状態では、送出し管9は、シールを、例えば、密封要素27の端部又はベースのところで穿刺し、又は、開き、それにより、容器3の内部、即ち流体2への流体結合が形成される。浸漬管35は、容器3の図示の直立位置において、流体2を容器3及び流体空間4から実質的に完全に抜き出すことができるようにするために延長部を形成している。」

(キ)図1

[図:0001401347000001.jpg]

(ク)図3

[図:0001401347000002.jpg]

イ 上記アの記載及び図示内容から、引用文献1には次の事項が記載されている。

(ア)上記アの(ア)には、噴霧化されるべき流体2が容器3に収容されることが記載され、同(イ)には、容器3が外側ケース23を有することが記載され、同(ウ)には、流体2が外側ケース23に直接的に注ぎ込まれることが記載されていることから、外側ケース23は、噴霧化される流体2を含有するものである。

(イ)上記アの(オ)には、密封要素27がクロージャ24で形成されることが記載されているので、クロージャ24は密封要素27を有するものである。また同(オ)には、該密封要素27は送出し管9を半径方向に密封すること、及び、送出し管9が密封要素27を突き破って容器3内の流体2への流体結合をもたらすことが記載されており、上記(ア)のとおり、流体2は外側ケース23に含有されるものであり、上記アの(ア)から、送出し管9は、ネブライザ1が有する圧力発生器5の一部であるので、密封要素27は、外側ケース23をネブライザ1の圧力発生器5に流体的及び密封的に接続するためのものである。

(ウ)上記アの(カ)には、浸漬管35が、容器3及び流体空間4から流体2を抜き出すためのものであることが記載されており、上記アの(ウ)には、流体空間4は外側ケース23に形成されることが記載されていることから、浸漬管35は、外側ケース23から流体2を抜き出すためのものである。

(エ)上記アの(オ)及び(カ)には、送出し管9を密封要素27内に導入し、該送出し管9は密封要素27の端部を開くことが記載されており、また、図3から、密封要素27の浸漬管35側(図3における下側)の端部が、膜状に形成されていること、及び、中央部分に比べ、その周囲が薄肉に形成されていることが見て取れる。さらに、上記アの(ア)の記載によれば、送出し管9はネブライザ1に含まれるものであるので、密封要素27は、膜状の端部を含み、該膜状の端部は、中央部分に比べ、その周囲が薄肉に形成され、前記ネブライザ1の送出し管9の導入時に開かれるものである。

(オ)図3から、浸漬管35と密封要素27とは、該浸漬管35の径が拡大する部分において接続されていることが見て取れる。また、上記アの(イ)には、図3が容器3を示す概略断面図であることが記載されており、さらに、図3において、容器3を示す符号3が、当該図に図示されるもの全体を指していることから、浸漬管35の径が拡大する部分は、容器3に含まれるものである。

ウ 上記アの記載事項及びイの事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ネブライザ1に挿入される容器3であって、
噴霧化される流体2を含有する外側ケース23と、
前記外側ケース23をネブライザ1の圧力発生器5に流体的及び密封的に接続するための密封要素27を有するクロージャ24と、
前記外側ケース23から前記流体2を抜き出すための浸漬管35と、
を含み、
前記密封要素27は、膜状の端部を含み、該膜状の端部は、中央部分に比べ、その周囲が薄肉に形成され、前記ネブライザ1の送出し管9の導入時に開かれ、
前記容器3は、前記浸漬管35を前記密封要素27に接続する浸漬管35の径が拡大する部分を含む、
容器3。」

(3)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「ネブライザ1」は、その機能、構造から本件補正発明の「ネブライザ」に相当し、以下同様に、「流体2」は「流体」に、「外側ケース23」は「容器」に、「ネブライザ1の圧力発生器5」は「ネブライザ」「の送出機構」に、「流体的及び密封的に接続するための密封要素27」は「流体的及び密封的に接続するための接続ポート」に、「クロージャ24」は「閉鎖部」に、「流体2を抜き出すための浸漬管35」は「流体を搬送するためのチューブ」に、「前記浸漬管35を前記密封要素27に接続する」は「前記チューブを前記接続ポートに接続する」に、「浸漬管35の径が拡大する部分」は「アダプタ」に、それぞれ相当する。

(イ)引用発明の「容器3」は、引用文献1の「容器3は、実質的に円筒形に又はカートリッジのように設計されており」(上記(2)アの(ア))との記載を踏まえると、本件補正発明の「カートリッジ」に相当する。そして、引用発明の「ネブライザ1に挿入される容器3」は、本願発明の「ネブライザのためのカートリッジ」に相当する。

(ウ)引用発明の「送出し管9」及び「導入」は、本件補正発明の「接続要素」及び「挿入」に相当する。そして、引用発明の「前記密封要素27は、膜状の端部を含み、該膜状の端部は、中央部分に比べ、その周囲が薄肉に形成され、前記ネブライザ1の送出し管9の導入時に開かれ」と、本件補正発明の「前記閉鎖部又は接続ポートは、フィルムヒンジと厚みの薄い円周部分とを有する膜又は密封壁を含み、そのために該膜又は密封壁は、前記ネブライザの接続要素の挿入時に該円周部分に沿って破断して脇へ傾き」とは、「前記閉鎖部又は接続ポートは、膜又は密封壁を含み、そのために該膜又は密封壁は、前記ネブライザの接続要素の挿入時に開き」の限りで一致する。

イ したがって、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]

「ネブライザのためのカートリッジであって、
噴霧化される流体を含有する容器と、
前記容器をネブライザの送出機構に流体的及び密封的に接続するための接続ポートを有する閉鎖部と、
前記容器から前記流体を搬送するためのチューブと、
を含み、
前記閉鎖部又は接続ポートは、膜又は密封壁を含み、そのために該膜又は密封壁は、前記ネブライザの接続要素の挿入時に開き、
前記カートリッジは、前記チューブを前記接続ポートに接続するアダプタを含む、
カートリッジ。」

[相違点]

閉鎖部又は接続ポートは、膜又は密封壁を含み、そのために該膜又は密封壁は、前記ネブライザの接続要素の挿入時に開くことに関し、本件補正発明は、膜又は密封壁が「フィルムヒンジ(31D)と厚みの薄い円周部分(31B)とを有」し、「前記ネブライザ(1)の接続要素(14)の挿入時に該円周部分に沿って破断して脇へ傾き」、アダプタが「前記膜又は密封壁(31)が脇へ傾いた時に前記膜又は密封壁(31)を受け入れるためのポケット(9A)を含む/又は形成する」のに対し、引用発明は、膜状の端部がネブライザ1の送出し管9の導入時に開かれる構成である点。

(4)判断

上記相違点について以下検討する。

容器の容器口部に冠着するキャップに形成された簡易開口部に対し、ストローで押圧することで、該ストローを通じて容器内の流体を容器外に送り出す、流体を含有する容器において、前記簡易開口部をヒンジ部と円周状の薄肉ラインとを有する構成とし、ストローを下方に強く押圧することにより該薄肉ラインに沿って破断して、該簡易開口部が脇へ傾くようにすることは、本願の優先日前において慣用の技術である(例えば、原査定で引用した特開2005-212864号公報の段落【0001】、【0002】、【0010】~【0016】及び図1~4を参照。特に、薄肉ラインが円周状である点は図2を、簡易開口部が脇へ傾く点は図3及び4をそれぞれ参照。)。

そして、上記(2)ウで認定したとおり、引用発明の「膜状の端部」は、中央部分に比べ、その周囲が薄肉に形成されているものであり、このような膜状の端部を含む引用発明において、より簡便に該膜状の端部を開くようにするため、また、該端部が開いた際に分離された膜状部分が動いて送出し管9や浸漬管35を塞いでしまう等の不具合を防止するために、上記慣用の技術を参酌し、ネブライザ1の送出し管9の導入時に開かれる密封要素27の膜状の端部を、ヒンジ部と円周状の薄肉ラインとを有し、送出し管9の導入時に該薄肉ラインに沿って破断して脇へ傾くようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。そのように構成する場合、脇へ傾いた膜状の端部が、密封要素27を開く際に送出し管9の邪魔にならないようにすることは当然のことであり、また、引用文献1の図3に示された浸漬管35の密封要素27との接続部分の形状からみて、脇へ傾いた膜状の端部は浸漬管35の径が拡大する部分に位置することは明らかであるので、浸漬管35の径が拡大する部分に、膜状の端部を受け入れるためのポケットを形成することは、当然のことである。

したがって、引用発明において、慣用の技術を参酌して、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び慣用の技術から当業者が予測し得る程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

よって、本件補正発明は、引用発明及び慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和 4年 9月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、令和 4年 5月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~53に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。

本願発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に例示される周知の技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.国際公開第2006/136426号

引用文献2.特開2005-212864号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明に対し、ポケット(9A)を含む又は形成するものが「アダプタ(26)」のほかに、「閉鎖部(7)」及び「接続ポート(9)」を選択的事項として付加したものである。

そうすると、本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明の全ての構成が(実質的に)選択事項の一つとなっている本願発明も、引用発明及び慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-014501

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決47件(ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング)
  • 2024-002329拒絶査定不服審判 / 2026-07-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)ガンの処置のための結合分子
    同じ当事者: ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 2023-019833拒絶査定不服審判 / 2026-02-24 / 請求不成立組合せ抗癌療法のためのRNAワクチン及び免疫チェックポイント阻害剤
    同じ当事者: ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 2024-000183拒絶査定不服審判 / 2026-02-17 / 請求不成立ループス腎炎の処置のための抗CD40抗体の使用
    同じ当事者: ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 2024-002339拒絶査定不服審判 / 2025-06-24 / 請求不成立新規の、無駄のない、環境に配慮した造粒方法
    同じ当事者: ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 2023-004747拒絶査定不服審判 / 2025-06-20 / 請求不成立心臓保護及び腎臓保護の抗糖尿病治療におけるリナグリプチンの使用
    同じ当事者: ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2024-014874拒絶査定不服審判 / 2025-11-17 / 請求不成立喉頭内視鏡と内視鏡ガイドコアを組み合わせた二重可視、二重位置決め気管挿管セット
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-015685拒絶査定不服審判 / 2025-10-20 / 請求不成立ガス放出装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-007597拒絶査定不服審判 / 2025-09-16 / 請求不成立血栓凝血塊の液圧変位および除去、ならびに液圧変位を実施するためのカテーテル
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-004888拒絶査定不服審判 / 2025-07-17 / 請求不成立セルフ・フラッシング・コネクタ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-003318拒絶査定不服審判 / 2025-06-04 / 請求不成立バルーンカテーテル
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,374件(121・A61M、575・A61M)
  • 2024-008833拒絶査定不服審判 / 2026-01-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)カテーテルアセンブリ
    共通の審決分類: 121・A61M、575・A61M
  • 2024-010262拒絶査定不服審判 / 2025-12-10 / 請求不成立セグメント化された湾曲可能セクションを備える医用装置
    共通の審決分類: 121・A61M、575・A61M
  • 2024-014874拒絶査定不服審判 / 2025-11-17 / 請求不成立喉頭内視鏡と内視鏡ガイドコアを組み合わせた二重可視、二重位置決め気管挿管セット
    共通の審決分類: 121・A61M、575・A61M
  • 2024-015685拒絶査定不服審判 / 2025-10-20 / 請求不成立ガス放出装置
    共通の審決分類: 121・A61M、575・A61M
  • 2024-007597拒絶査定不服審判 / 2025-09-16 / 請求不成立血栓凝血塊の液圧変位および除去、ならびに液圧変位を実施するためのカテーテル
    共通の審決分類: 121・A61M、575・A61M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存