特許拒絶査定不服審判
2024-010262
セグメント化された湾曲可能セクションを備える医用装置
- 審判番号
- 2024-010262
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-524277
- 請求日
- 2024年06月20日
- 審決日
- 2025年12月10日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】國分 孝悦
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 栗山 卓也
- 審判官 佐々木 佳祐
- 分類
- P18 .121-Z (A61M) / P18 .55 -Z (A61M) / P18 .575-Z (A61M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-524277「セグメント化された湾曲可能セクションを備える医用装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月29日国際公開、WO2021/081184、令和 4年12月20日国内公表、特表2022-552900〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和 2年)10月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年10月23日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 4年 8月25日 :手続補正書の提出
令和 5年 7月20日付け:拒絶理由通知書
令和 5年12月 5日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 6年 2月20日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 6年 6月20日 :審判請求書及び同時に手続補正書の提出
第2 令和 6年 6月20日提出の手続補正書によりされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 6年 6月20日提出の手続補正書によりされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「【請求項1】
湾曲可能体であって、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体、
を備える医用装置であって、
前記湾曲可能体は、
遠位湾曲可能セクションと、
近位湾曲可能セクションと、
前記遠位湾曲可能セクションに設けられるとともに、空洞を形成するように互いに離隔された少なくとも2つのガイドリングと、
前記少なくとも2つのガイドリングの各々に設けられた少なくとも2つのガイド穴と、
前記少なくとも2つのガイド穴のうちの少なくとも1つの中に摺動可能に配置されるとともに、前記湾曲可能体の遠位端に取り付けられる、少なくとも1つの駆動ワイヤと、
前記湾曲可能体の端から端まで延びる可撓性の壁と、
を有し、
前記近位湾曲可能セクションの材料の少なくとも一部は、前記遠位湾曲可能セクションの材料の剛性よりも低い剛性を有し、
前記少なくとも1つの駆動ワイヤは、前記近位湾曲可能セクションの剛性又は前記遠位湾曲可能セクションの剛性には寄与せず、
前記近位湾曲可能セクションは、少なくとも2つのセグメントから成り、各セグメントは異なる剛性を有する、
装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和 5年12月 5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
湾曲可能体であって、当該湾曲可能体の端から端まで延びる中空チャンバを有する湾曲可能体、
を備える医用装置であって、
前記湾曲可能体は、
遠位湾曲可能セクションと、
近位湾曲可能セクションと、
前記遠位湾曲可能セクションに設けられるとともに、空洞を形成するように互いに離隔された少なくとも2つのガイドリングと、
前記少なくとも2つのガイドリングの各々に設けられた少なくとも2つのガイド穴と、
前記少なくとも2つのガイド穴のうちの少なくとも1つの中に摺動可能に配置されるとともに、前記湾曲可能体の遠位端に取り付けられる、少なくとも1つの駆動ワイヤと、
を有し、
前記近位湾曲可能セクションの材料の少なくとも一部は、前記遠位湾曲可能セクションの材料の剛性とは異なる剛性を有し、
前記少なくとも1つの駆動ワイヤは、前記近位湾曲可能セクションの剛性又は前記遠位湾曲可能セクションの剛性には寄与しない、
装置。」
2 新規事項の追加について
(1)本件補正について
本件補正後の請求項1には「前記近位湾曲可能セクションの材料の少なくとも一部は、前記遠位湾曲可能セクションの材料の剛性よりも低い剛性を有し」と記載されている。
しかし、上記の事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には記載されていない。むしろ、当初明細書等の段落【0073】には、「スケルトン構造を用いる代わりに、チュービングセクションの変形を用いることができる。剛性の低い異なる材料を用いて、チュービングセクションの40Dセクションに溶接することができる。或いは、異なる材料を一緒に溶接する代わりに、追加のインナー材料/アウター材料/中間材料を追加して、複合材料を作製し、近位方向に沿って剛性を高めることができる。剛性を調節する別の方法は、湾曲可能医療機器の直径を徐々に、或いは別個に、大きくできるようにすることである。これを実現するひとつの方法は、バンプ押出しを用いることである。或いは、追加の支持ワイヤ(上記の様々な代替手段を伴う)を、チュービングセクションの長さに沿った様々なポイントに配置することができる。」と記載されており、近位湾曲可能セクションの材料は、遠位湾曲可能セクションの材料の剛性よりも高い剛性を有すること、及び、近位湾曲可能セクションの材料は、第1の湾曲可能セクションの材料の剛性よりも高い剛性を有することが記載されており、近位湾曲可能セクションの材料の少なくとも一部は、遠位湾曲可能セクションの材料の剛性よりも低い剛性を有すること、及び、近位湾曲可能セクションの材料の少なくとも一部は、第1の湾曲可能セクションの材料の剛性よりも低い剛性を有することは、当初明細書等の記載と矛盾するものである。
よって、本件補正に係る事項は、当初明細書等に記載されたものではない。
(2)請求人の主張について
請求人は、令和 6年 6月20日提出の審判請求書(2-2)において本件補正の根拠を説明しているが、補正後の請求項1の上記記載は、上記審判請求書の記載のように補正前の請求項2及び3の特徴を請求項1に追加したものでない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
3 小括
よって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和 5年12月 5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~25に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項18に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項18に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項18】
第1の湾曲可能セクションと、
第2の湾曲可能セクションであって、前記第1の湾曲可能セクション及び前記第2の湾曲可能セクションの作動ユニットに対して前記第1の湾曲可能セクションよりも近位にある、第2の湾曲可能セクションと、
を備える連続体ロボットであって、
前記第1の湾曲可能セクションは、
少なくとも1つの第1のワイヤが通る少なくとも2つの第1のガイドリング、
を有し、前記第1のワイヤは、前記第1の湾曲可能セクションの先端に固定され、
前記第2の湾曲可能セクションは、
前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び少なくとも1つの第2のワイヤが通る少なくとも2つの第2のガイドリングを含む第1のセグメントと、
途切れのない管状形を有する第2のセグメントと、
を有し、前記第2のワイヤは、前記第2の湾曲可能セクションの先端に固定され、前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び前記少なくとも1つの第2のワイヤは、前記第2のセグメントの端から端まで通り、
前記第2の湾曲可能セクションの前記第2のセグメントの材料は剛性を有し、前記第2のセグメントの遠位部分の材料の剛性は、前記第2のセグメントの近位部分の材料の剛性よりも低く、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第2のセグメントの前記遠位部分の剛性又は前記第2のセグメントの前記近位部分の剛性には寄与しない、
連続体ロボット。」
第4 原査定
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献4~6に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
1.特開2019-93119号公報
4.特表2009-515657号公報
5.特表2017-535376号公報
6.特開2018-86267号公報
第5 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1
上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様である。)。
ア「【0001】
本開示は、一般的に医療応用のための装置および方法に関する。より具体的には、本開示は、中空空隙を有する連接型医療デバイス(articulated medical device)であって、患者の内部で操作することが可能であって、医療処置のために、内視鏡、カメラ、およびカテーテルを含む医療ツールを、中空空隙を通って導くことを可能にする、デバイスを対象とする。」
イ「【0027】
図1は、連続体ロボットシステムの例示的実施形態を示す。連続体ロボットシステム1は、駆動ユニット2、シース3、位置決めカート4、操作コンソール5、およびナビゲーションソフトウェア6を含む。また、システム1は、臨床ユーザおよび外部システム(例えば、CTスキャナ、蛍光透視装置、患者、生検ツール)と相互作用する。」
ウ「【0031】
駆動ユニット2は、アクチュエータと制御回路とを含む。制御回路は、操作コンソール5と通信可能に結合されている。また、駆動ユニット2は、駆動ユニット2内のアクチュエータが単一シース3を操作するように、単一シース3と接続されている。したがって、臨床ユーザは、駆動ユニット2を介して単一シース3を制御することができる。
【0032】
また、駆動ユニット2は、位置決めカート4に物理的に接続されている。位置決めカート4は、位置決めアームを含むとともに、位置決めカート4は、患者に対して意図する位置に、駆動ユニット2および単一シース3を設置する。臨床ユーザは、患者の気道において、生検を実施するために、シース3を挿入および後退させることができる。」
エ「【0035】
シース3は、また、ロボット化部7、近位フレキシブル部8、および接続ハブ9を通る、ツールチャネルを含む。ツールチャネルは、実質的に円筒形の構成を有する。臨床ユーザは、接続ハブ9からロボット化部7の遠位端へとツールチャネルを通過して、生検ツールを挿入および後退させることができる。」
オ「【0037】
ロボット化部7は、複数のガイドリング10と、複数の駆動ワイヤ11とを含む。ガイドリング10は、同一間隔で配列されるとともに、ガイドリング10は、ロボット化部7の長手方向に沿ってスライド可能な、駆動ワイヤ11を保持する。駆動ワイヤ11はまた、一部の実施形態(異なる駆動ワイヤ11は異なるリングガイド10で終端してもよい)においては、リングガイド10で終端しており、駆動ワイヤ11は、3つの異なるセグメントにおいて、ロボット化部7を湾曲させることができる。すなわち、ロボット化部7は、図2Cに示されるように、第1の湾曲可能セグメント12、第2の湾曲可能セグメント13、および第3の湾曲可能セグメント14を形成する。
【0038】
近位フレキシブル部8は、ロボット化部7から接続ハブ9までの駆動ワイヤ11を含み、駆動ユニット2内のアクチュエータからロボット化部7へ、駆動力を伝達する。
【0039】
ロボット化部7および近位フレキシブル部8は、同一の外径(例えば、3mm)および同一の内径(例えば、1.8mm)を有してもよい。内径は、ツールチャネルを形成する。一部の実施形態においては、ロボット化部7およびフレキシブル部8の長さは、それぞれ、200mmおよび600mmである。」
カ「【0042】
一方で、駆動ワイヤ11aおよび11bは、第1の湾曲可能セグメント12の遠位端におけるガイドリング10上に終端しているが、他の4つのガイドリング10上には終端していない。」
キ「【0046】
第2および第3の湾曲可能セグメント13および14は、ガイドリング10、駆動ワイヤ11および第1の固定ワイヤ16の類似の終端構造も含む。シースの例示的実施形態のガイドリングおよび駆動ワイヤを示す図3Bは、第2の湾曲可能セグメント13における終端構造を示す。第2の湾曲可能セグメント13は、別の2つの駆動ワイヤと第2の固定ワイヤ17を含む。これらの2つの駆動ワイヤは、第2の湾曲可能セグメント13の遠位端で終端している。また、第2の固定ワイヤ17は、第2の湾曲可能セグメントにある、すべてのガイドリング10において終端しており、第2の固定ワイヤ17は、例えば、2mm間隔の、ガイドリング10の等距離配列を形成する。第2の湾曲可能セグメント13におけるガイドリング10は、駆動ワイヤ11a~11b、および第1の湾曲可能セグメント12の第1の固定ワイヤ16のためのガイド穴も含む。」
ク「【0051】
図7は、本開示の1つまたは複数の実施形態による、主題の連続体ロボットシステム1の第2の湾曲可能セグメント13および第1の湾曲可能セグメント12の切開図を提供する。
【0052】
この特定の実施形態において、湾曲可能セグメント12および13は、外径が3mmで、内径が2mmである。また、ロボット化部7の尖端は、前進させられるときの損傷を防止するために、丸みをつけてもよい。
【0053】
第1の固定ワイヤ16は、ガイドリング10を通過してスライド可能に導かれ、最後のガイドリング10へ固定するために端部にあるアンカー15を用いて、第1の固定ワイヤ16は、ロボット化部7によって拘束される。したがって、第1の固定ワイヤ16は、第1の湾曲可能セグメント12を作動させるために、押出し、引張りの力およびトルクをロボット化部7に伝達することができる。同様にして、第2の固定ワイヤ17は、第2の湾曲可能セグメント13を湾曲させることができる。第1および第2の湾曲可能セグメント12および13は、また、それぞれ、円筒形の内壁および外壁40および41を含む。」
ケ「
[図:0001434676000001.jpg]
」
コ「
[図:0001434676000002.jpg]
」
サ「
[図:0001434676000003.jpg]
」
2 引用発明
上記1ア~サを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「患者の内部で操作されるシース3と、シース3を操作するようにシース3と接続されている駆動ユニット2とを含み、
シース3は、ロボット化部7、近位フレキシブル部8、及び接続ハブ9を通る、ツールチャネルを含み、
ロボット化部7は、第1の湾曲可能セグメント12、第2の湾曲可能セグメント13、及び第3の湾曲可能セグメント14を形成し、複数のガイドリング10と、複数の駆動ワイヤ11a及び11bとを含み、
ガイドリング10は、ロボット化部7の長手方向に沿ってスライド可能な、複数の駆動ワイヤ11a及び11bを保持しており、
近位フレキシブル部8は、ロボット化部7から接続ハブ9までの複数の駆動ワイヤ11a及び11bを含み、
複数の駆動ワイヤ11a及び11bは、第1の湾曲可能セグメント12の遠位端におけるガイドリング10上に終端しており、
第2の湾曲可能セグメント13は、別の2つの駆動ワイヤを含み、これらの2つの駆動ワイヤは、第2の湾曲可能セグメント13の遠位端で終端しており、
第2の湾曲可能セグメント13におけるガイドリング10は、複数の駆動ワイヤ11a及び11bのためのガイド穴を含み、
ロボット化部7及び近位フレキシブル部8は、同一の外径及び同一の内径を有し、内径は、ツールチャネルを形成し、
第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13は、それぞれ、円筒形の内壁40及び外壁41を含む、
連続体ロボットシステム1。」
3 引用文献4
上記引用文献4には、次の事項が記載されている。
ア「【0019】
図2A~図2Dは、能動的カニューレ102と、それを構成する可撓性チューブとを示す。図2Aは、例示的外部可撓性チューブ110を示す。外部可撓性チューブ110は、外部チューブ直線区分210、外部チューブ湾曲区分212、及び外部チューブ直線区分210と外部チューブ湾曲区分212との境界を画定する外部チューブ移行点211を有することができる。外部可撓性チューブ110は、中間可撓性チューブ115と内部可撓性チューブ120が外部可撓性チューブ110の内部表面内で独立して摺動することを可能にするのに十分な広さの内径を有することができる。外部可撓性チューブ110の厚さは、チューブに所望の可撓性の関数とすることができる。これについては後述で更に説明する。従って、外部可撓性チューブ110の厚さは、指定の可撓性をもたらすように調整することができる。外部可撓性チューブ110の、図示された円形の湾曲は例示的なものであり、チューブの材料、厚さ、及び能動的カニューレ102の使用目的に応じて、異なる湾曲形状が可能である。
外部可撓性チューブ110は、ニチノール等の形状記憶合金を用いて作製できるが、外科的使用に適し、例えば材料特性によって、又はチューブ壁の厚さを指定することによって予め定めることの可能な可撓性を有するものであれば、他の材料を使用することもできる。
【0020】
図2Bは、例示的な中間可撓性チューブ115を示す。中間可撓性チューブ115は、中間チューブ直線区分215、中間チューブ湾曲区分217、及び中間チューブ直線区分215と中間チューブ湾曲区分217との境界を画定する中間チューブ移行点216を有することができる。中間可撓性チューブ115は、内部可撓性チューブ120が中間可撓性チューブ115の内部表面内で独立して摺動することを可能にするのに十分な広さの内径を有することができる。中間可撓性チューブ115の厚さは、チューブに所望の可撓性の関数とすることができる。これについては後述で更に説明する。従って、中間可撓性チューブ115の厚さは、指定の可撓性をもたらすように調整することができる。中間可撓性チューブ115の、図示された湾曲は例示的なものであり、チューブの材料、厚さ、及び能動的カニューレ102の使用目的に応じて、異なる湾曲が可能である。
外部可撓性チューブ110の場合と同様に、中間可撓性チューブ115は、ニチノール等の形状記憶合金を用いて作製できるが、外科的使用に適し、例えばチューブに特定の厚さを指定することによって予め定めることの可能な可撓性を有するものであれば、他の材料を試用することもできる。更に、中間可撓性チューブ115には、能動的カニューレ102に意図された形状、厚さ、及び全体的可撓性に応じて、外部可撓性チューブ110と同じ材料を用いても用いなくてもよい。
【0021】
図2Cは、例示的な内部可撓性チューブ120を示す。内部可撓性チューブ120は、内部チューブ直線区分220、内部チューブ湾曲区分222、及び内部チューブ直線区分220と内部チューブ湾曲区分222との境界を画定する内部チューブ移行点221を有することができる。内部可撓性チューブ120は、流体等を通すためのカニューレとして機能するのに十分な広さの内径を有することができる。更に、この内径は、ワイヤ、針、弾性のプッシュロッド、又は光ファイバケーブルのようなケーブルがエンドエフェクタ125まで運ばれるのを可能にするのに十分に大きくすることができる。内部可撓性チューブ120の厚さは、チューブに所望の可撓性の関数とすることができる。これについては後述で更に説明する。従って、内部可撓性チューブ120の厚さは、指定の可撓性をもたらすように調整することができる。内部可撓性チューブ120の、図示された湾曲は例示的なものであり、チューブの材料、厚さ、能動的カニューレ102の使用目的に応じて異なる湾曲が可能である。
外部可撓性チューブ110の場合と同様に、内部可撓性チューブ120は、ニチノール等の形状記憶合金を用いて作製できるが、外科的使用に適し、例えばチューブに特定の厚さを指定することによって予め定めることの可能な可撓性を有するものであれば、他の材料を用いることもできる。更に、内部可撓性チューブ120には、外部可撓性チューブ110及び中間可撓性チューブ115と同じ材料を用いても用いなくてもよい。」
イ「【0041】
図8は、ひずみが可撓性チューブの側長にどのように関係するかを示す。この可撓性チューブは、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120のいずれでもよい。ステップ615及びステップ620で最終及び中間構成を計算する際に、ソフトウェアは、可撓性チューブに塑性変形を生じさせない範囲の限界となる最大湾曲度又は最小半径を決定することができる。塑性変形とは、材料がもはや本来の形状に復帰しなくなる形状記憶材料の曲げ度合いを指す。これは、可撓性チューブの許容湾曲の限度に対応する。ソフトウェアは、次の関係式により最大湾曲度を計算することができる。
ここで、dは可撓性チューブの直径であり、εは可撓性チューブの材料の、復元可能な最大ひずみである。ニチノールのεは、0.08~0.1である。上記の関係式から推測できるように、可撓性チューブが細いほど最大湾曲度は大きく(又は最小曲率半径が小さく)なる。従って、ステップ610で医師により決定された経路によっては、チューブは細い方が望ましい。ソフトウェアは、ステップ610において決定された経路に応じて医師が可撓性チューブの好ましい太さを選択するのを援助する。
能動的カニューレ102、システム100、及びプロセス600の変形例が可能であり、且つ本発明の範囲に含まれる。例えば、能動的カニューレ102内の可撓性チューブの一部又は全部は、ほぼ同じ度合いの可撓性を有してもよく、又は異なる度合いの可撓性を有してもよい。可撓性チューブのすべてが同様の可撓性を有する場合、能動的カニューレ102の動きは機敏となり、複雑な経路内を容易に導くことができる。別の構成では、外部可撓性チューブ110を中間可撓性チューブ115より堅くし、中間可撓性チューブ115を内部可撓性チューブ120より堅くすることができる。この場合、能動的カニューレ102の機敏さは前記実施例(全ての可撓性チューブが同じ可撓性を有する)より低下する。しかしながら、後者の場合、能動的カニューレ102の経路は計算し易く、例えば図5に示した手動2軸作動器505を用いることにより、手動操作能が向上する。」
ウ「
[図:0001434676000004.jpg]
」
4 引用文献5
上記引用文献5には、次の事項が記載されている。
ア「【0023】
1つの実施態様では、力がプルワイヤ108に適用されるときに、カテーテルの遠位先端が、より低い剛性の故に、近位区画よりもずっと大きな程度まで偏向するよう、カテーテル本体102は、カテーテル本体102の長さに沿って異なる剛性の幾つかのセグメントを含む。故に、半円形のような弧形状が達成される。異なる剛性のセグメントは、異なる厚さ、異なる材料のセグメント、入れ子セグメント、カテーテル本体102の材料マトリクス内のインサート等を含んでよい。」
5 引用文献6
上記引用文献6には、次の事項が記載されている。
ア「【0161】
図48は、異なる管状部分200、201、202、203、204が異なる材料でできている、従来の図を示している。これらの部分は、段階的な材料剛性プロファイル(徐々に増加する弾性率/シェア硬度)を生成するために使用される。」
イ「
[図:0001434676000005.jpg]
」
6 周知技術
上記3~5から、以下の事項は周知技術である。
「湾曲可能体において、材料の剛性を異ならせることにより遠位側の剛性を近位側の剛性よりも低くすること。」
第6 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「第1の湾曲可能セグメント12」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「第1の湾曲可能セクション」に相当する。
そして、引用発明の「第2の湾曲可能セグメント13」、「第3の湾曲可能セグメント14」及び「近位フレキシブル部8」は、前記第5の1ケの記載から、第1の湾曲可能セグメント12よりも近位にあるから、本願発明の「第2の湾曲可能セクションであって、」「前記第1の湾曲可能セクションよりも近位にある、第2の湾曲可能セクション」に相当する。
イ 引用発明の「第1の湾曲可能セグメント12、第2の湾曲可能セグメント13、及び第3の湾曲可能セグメント14を形成」する「ロボット化部7」を含む「シース3を操作するようにシース3と接続されている駆動ユニット2」は、本願発明の「前記第1の湾曲可能セクション及び前記第2の湾曲可能セクションの作動ユニット」に相当する。
そして、引用発明の連続体ロボットシステム1は、「駆動ユニット2」を、「患者の内部で操作されるシース3」の近位側に有するから、引用発明の「第2の湾曲可能セグメント13」、「第3の湾曲可能セグメント14」及び「近位フレキシブル部8」は、本願発明の「第2の湾曲可能セクションであって、前記第1の湾曲可能セクション及び前記第2の湾曲可能セクションの作動ユニットに対して前記第1の湾曲可能セクションよりも近位にある、第2の湾曲可能セクション」に相当する。
ウ 引用発明の「第1の湾曲可能セグメント12」を形成する「ロボット化部7」が「複数のガイドリング10と、複数の駆動ワイヤ11a及び11bを含み」、「ガイドリング10は、ロボット化部7の長手方向に沿ってスライド可能な、複数の駆動ワイヤ11a及び11bを保持しており、」「複数の駆動ワイヤ11a及び11bは、第1の湾曲可能セグメント12の遠位端におけるガイドリング10上に終端して」いる構造は、前記第5の1コの記載を踏まえれば、本願発明の「前記第1の湾曲可能セクションは、少なくとも1つの第1のワイヤが通る少なくとも2つの第1のガイドリング、を有し、前記第1のワイヤは、前記第1の湾曲可能セクションの先端に固定され」る構造に相当する。
エ 引用発明の「複数のガイドリング10と、複数の駆動ワイヤ11a及び11bを含み」、駆動ワイヤ11a及び11bの他に「別の2つの駆動ワイヤを含み」、「ガイドリング10は、駆動ワイヤ11a及び11bのためのガイド穴も含」む、「ロボット化部7」の「第2の湾曲可能セグメント13」は、本願発明の「前記第2の湾曲可能セクション」の、「前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び少なくとも1つの第2のワイヤが通る少なくとも2つの第2のガイドリングを含む第1のセグメント」に相当する。
また、引用発明の「近位フレキシブル部8」は、複数のガイドリング10を含む構造であるロボット化部7とは別異の構造であって、前記第5の1ケの記載も踏まえれば、本願発明の「途切れのない管状形を有する第2のセグメント」に相当する。
そして、引用発明の上記「別の2つの駆動ワイヤ」が「第2の湾曲可能セグメント13の遠位端で終端して」いる構造は、前記第5の1の記載を踏まえれば、本願発明の「前記第2のワイヤは、前記第2の湾曲可能セクションの先端に固定され」る構造に相当する。
オ 引用発明の「近位フレキシブル部8」が、「ロボット化部7から接続ハブ9までの複数の駆動ワイヤ11a及び11bを含」む構造は、「複数の駆動ワイヤ11a及び11b」のほか、第2の湾曲可能セグメント13に接続された「別の2つの駆動ワイヤ」を含むから、本願発明の「前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び前記少なくとも1つの第2のワイヤは、前記第2のセグメントの端から端まで通」る構造に相当する。
カ 本願発明の「前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第2のセグメントの前記遠位部分の剛性又は前記第2のセグメントの前記近位部分の剛性には寄与しない」との発明特定事項における「寄与しない」との語は、令和 5年12月 5日提出の意見書の「補正後の請求項1に係る発明は、…です。他の独立請求項12、19も同様に補正しました(補正後の請求項11、18)。」及び「請求項1の補正により、補正後の本願発明における湾曲可能セクション間の剛性の変化は、駆動ワイヤによるものではなく、湾曲可能セクションの材料の違いによるものであることが明確になりました。」との記載を踏まえれば、駆動ワイヤが、湾曲可能セクションの端から端まで延在することで、当該湾曲可能セクションの剛性の変化に関係しないことを意味していると解される。
このことを踏まえると、引用発明の近位フレキシブル部8の端から端まで通る(上記オ参照)「複数の駆動ワイヤ11a及び11b」及び「別の2つの駆動ワイヤ」が、「近位フレキシブル部8」の遠位部分の剛性と近位部分の剛性との間の剛性の変化に関係しないことは明らかであって、加えて、引用発明の「近位フレキシブル部8」を構成する材料が一定の剛性を有することは明らかであるから、引用発明の「近位フレキシブル部8」の材料が剛性を有し、「複数の駆動ワイヤ11a及び11b」及び「別の2つの駆動ワイヤ」が「近位フレキシブル部8」の遠位部分の剛性と近位部分の剛性の間の剛性の変化に関係しない点は、本願発明の「前記第2の湾曲可能セクションの前記第2のセグメントの材料は剛性を有し」、「前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第2のセグメントの前記遠位部分の剛性又は前記第2のセグメントの前記近位部分の剛性には寄与しない」点に相当する。
キ 引用発明の「連続体ロボットシステム1」は、本願発明の「連続体ロボット」に相当する。
そうすると、両者は、
「第1の湾曲可能セクションと、
第2の湾曲可能セクションであって、前記第1の湾曲可能セクション及び前記第2の湾曲可能セクションの作動ユニットに対して前記第1の湾曲可能セクションよりも近位にある、第2の湾曲可能セクションと、
を備える連続体ロボットであって、
前記第1の湾曲可能セクションは、
少なくとも1つの第1のワイヤが通る少なくとも2つの第1のガイドリング、
を有し、前記第1のワイヤは、前記第1の湾曲可能セクションの先端に固定され、
前記第2の湾曲可能セクションは、
前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び少なくとも1つの第2のワイヤが通る少なくとも2つの第2のガイドリングを含む第1のセグメントと、
途切れのない管状形を有する第2のセグメントと、
を有し、前記第2のワイヤは、前記第2の湾曲可能セクションの先端に固定され、前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び前記少なくとも1つの第2のワイヤは、前記第2のセグメントの端から端まで通り、
前記第2の湾曲可能セクションの前記第2のセグメントの材料は剛性を有し、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第2のセグメントの前記遠位部分の剛性又は前記第2のセグメントの前記近位部分の剛性には寄与しない、
連続体ロボット。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本願発明は、「前記第2のセグメントの遠位部分の材料の剛性は、前記第2のセグメントの近位部分の材料の剛性よりも低」いのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
2 判断
上記相違点について検討する。
前記第5の6のとおり、湾曲可能体において、材料の剛性を異ならせることにより遠位側の剛性を近位側の剛性よりも低くすることは本願の優先日前の周知技術であるから、引用発明に上記周知技術を適用し、患者の内部で操作されるシース3の近位フレキシブル部8の遠位部分の材料の剛性を近位部分の材料の剛性よりも低くするよう構成して、上記相違点に係る本願発明の事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものではない。
3 小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
第7 本件補正が認められるとした場合について(予備的検討)
前記第2のとおり、本件補正は、特許法第17の2第3項の規定に違反するものであって、却下されるべきものである。
しかし、仮に、本件補正が、請求項1及び9について「前記近位湾曲可能セクションの材料の少なくとも一部は、前記遠位湾曲可能セクションの材料の剛性よりも高い剛性を有し」と特定すべきところを「・・よりも低い剛性を有し」と特定した単なる誤記によるものであって、特許法第17条の2第4項及び第5項の規定に違反しない場合について、予備的に以下検討する。
1 本件補正発明
本願の請求項1~22に係る発明は、令和 6年 6月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項15に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項15】
第1の湾曲可能セクションと、
第2の湾曲可能セクションであって、前記第1の湾曲可能セクション及び前記第2の湾曲可能セクションの作動ユニットに対して前記第1の湾曲可能セクションよりも近位にある、第2の湾曲可能セクションと、
前記第1の湾曲可能セクション及び前記第2の湾曲可能セクションの端から端まで延びる可撓性の壁と、
を備える連続体ロボットであって、
前記第1の湾曲可能セクションは、
少なくとも1つの第1のワイヤが通る少なくとも2つの第1のガイドリング、
を有し、前記第1のワイヤは、前記第1の湾曲可能セクションの先端に固定され、
前記第2の湾曲可能セクションは、
前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び少なくとも1つの第2のワイヤが通る少なくとも2つの第2のガイドリングを含む第1のセグメントと、
途切れのない管状形を有する第2のセグメントと、
を有し、前記第2のワイヤは、前記第2の湾曲可能セクションの先端に固定され、前記少なくとも1つの第1のワイヤ及び前記少なくとも1つの第2のワイヤは、前記第2のセグメントの端から端まで通り、
前記第2の湾曲可能セクションの前記第2のセグメントの材料は剛性を有し、前記第2のセグメントの遠位部分の材料の剛性は、前記第2のセグメントの近位部分の材料の剛性よりも低く、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第2のセグメントの前記遠位部分の剛性又は前記第2のセグメントの前記近位部分の剛性には寄与しない、
連続体ロボット。」
2 本件補正発明の特許性について
本件補正発明は、前記第4~6で検討した本件補正前の請求項18に記載された発明を特定するために必要な事項である「連続体ロボット」について、「前記第1の湾曲可能セクション及び前記第2の湾曲可能セクションの端から端まで延びる可撓性の壁」を有する点を限定したものであるところ、引用発明の「ロボット化部7及び近位フレキシブル部8は、同一の外径及び同一の内径を有し、内径は、ツールチャネルを形成し、第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13は、それぞれ、円筒形の内壁40及び外壁41を含む」ことは、上記点に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、前記第6の1で示した相違点で相違し、その余の点で一致する。そして、本件補正発明は、前記第6の2と同じ理由で、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 小括
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-010262