特許拒絶査定不服審判
2024-015685
ガス放出装置
- 審判番号
- 2024-015685
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-178474
- 請求日
- 2024年10月01日
- 審決日
- 2025年10月20日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社フラックス
- 【請求人代理人】堀越 総明
- 【請求人代理人】堀越 真弓
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 米倉 明日香
- 審判官 坂庭 剛史
- 分類
- P18 .121-Z (A61M) / P18 .575-Z (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-178474「ガス放出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 5月16日出願公開、特開2023- 67341〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年11月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 6年 1月17日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 3月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和 6年 6月19日付け:拒絶査定
令和 6年10月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年10月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年10月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「一端に開口が設けられた容器と、前記容器の内部にガス吐出口を介して水素ガスを供給するガス供給手段と、前記容器の内部に空気吐出口を介して空気を、整流された空気流として供給するブロワファンとを備えており、前記容器は前記ガス吐出口を介して内部に供給された水素ガスを、前記空気吐出口を介して内部に供給され前記ブロワファンによって整流された空気流によって付勢し、該付勢された水素ガスと前記供給された空気とを前記開口から外部に放出するように構成されており、前記ガス吐出口が、前記空気吐出口より前記開口側に配置されていると共に、前記容器の内部に供給された空気の整流された空気流の中央部に配置されており、水素ガスを前記整流された空気流内に直線に近い流れで放出するように構成されていることを特徴とするガス放出装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年3月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「一端に開口が設けられた容器と、前記容器の内部にガス吐出口を介してガスを供給するガス供給手段と、前記容器の内部に空気を空気吐出口を介し整流された空気流として供給する空気供給手段とを備えており、前記容器は前記ガス吐出口を介して内部に供給されたガスを、前記空気吐出口を介して前記内部に供給された空気の整流された空気流によって付勢し、該付勢されたガスと前記供給された空気とを前記開口から外部に放出するように構成されており、前記ガス吐出口が、前記空気吐出口より前記開口側に配置されていると共に、前記容器の内部に供給された空気の整流された空気流の中央部に配置されており、ガスを前記整流された空気流内に直線に近い流れで放出するように構成されていることを特徴とするガス放出装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「空気供給手段」、「ガス」について、それぞれ「ブロワファン」、「水素ガス」とするものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
1 引用文献1
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である特開2019-58640号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0002】
近年、水素を含ませた水の飲用に加え、水素ガスを体内に吸入する医療技術に注目が集まっている。例えば、非特許文献1の先進医療Bの項目には、「水素ガス吸入療法」の概要が記載されている。」
「【0043】
図1に示す通り、水素供給装置1aは、風路4と、ファン6と、第一配管30と、流量調整装置8とを備えている。風路4は、室外に接した入口3及び室内に接した出口2を有する。ファン6は、風路4に配置され、入口3から出口2への空気の流れを生じさせる。第一配管30は、端部31を有する。端部31は、風路4に水素ガスを供給するための第一供給口32をなす。流量調整装置8は、第一配管30に取り付けられており、風路4に供給される水素ガスの流量を調整する。
【0044】
水素供給装置1aにおいて、第一配管30の端部31は、例えば、風路4に配置されている。一方、端部31は風路4の外側に配置されていてもよい。この場合、例えば第一配管30の内部と風路4との間にフィルターが介在した状態で、第一配管30の内部と風路4とがつながっていてもよい。
【0045】
水素供給装置1aにおいて、ファン6が作動すると、室外の空気が入口3から風路4に取り込まれ、入口3から出口2に向かって空気の流れが生じる。第一供給口32を通って風路4に供給された水素ガスは風路4を流れる空気と混合され、室外の空気とともに水素ガスが出口2を通って室内に供給される。風路4における水素ガスの濃度は、流量調整装置8によって、空気中における水素ガスの爆発下限界を踏まえた所望の範囲に調整される。このため、水素供給装置1aは高い安全性を確保するために有利である。」
「【0048】
図1に示す通り、水素供給装置1aは、例えば、水素ガス供給源9をさらに備えている。水素ガス供給源9から第一配管30に水素ガスが供給される。図1において、水素ガス供給源9が流量調整装置8を介して第一配管30と接続されているが、これに限定されない。例えば、水素ガス供給源9と第一配管30との間にフィルターなどの部材が介在して、水素ガス供給源9と第一配管30とが接続されていてもよい。また、第一配管30が水素ガス供給源9と直接接続されていてもよい。水素ガス供給源9は、特に限定されないが、例えば、高圧の水素が貯蔵された耐圧容器である。水素ガス供給源9は、水を電気分解して水素ガスを発生させる電解装置を備えたものであってもよい。水素ガス供給源9は、燃料電池発電設備に水素を供給するための水素ガス供給源であってもよい。なお、水素ガス供給源9において、水素に対して不活性な成分が水素とともに含まれていてもよい。」
「【0052】
端部31は、例えば、風路4の軸線上又は風路4の軸線の近くである風路4の中央に配置されている。風路4の中央では空気の流速が大きいので、端部31が風路4の中央に配置されていれば、大きな流速の空気の流れに向かって水素ガスが供給され、水素ガスと空気とが良好に撹拌される。第一供給口32は、例えば、上向きに開口している。これにより、風路4において水素ガスが拡散しやすく、水素ガスと空気とが良好に撹拌される。」
「【0065】
図1に示す通り、水素供給装置1aは、例えば混合器20をさらに備えている。混合器20は、風路4に接する第二供給口5を有する。加えて、第一配管30から水素ガスが混合器20に供給される。混合器20は、水素ガスを希釈ガスによって希釈する。混合器20は、典型的には、流量調整装置8と第二供給口5との間に配置される。この場合、混合器20において希釈された水素ガスが第二供給口5を通って風路4に供給される。このため、混合器20において希釈された水素ガスが風路4に供給されて空気と接触する。これにより、水素は必ず希釈された後に酸素と接触するので、水素が爆発又は燃焼することなく、水素ガスを風路4により安全に供給できる。その結果、水素供給装置1aがより高い安全性を有する。」
「【0088】
水素供給装置1aは、風路4の軸線方向において出口2よりも入口3に近い位置にファン6が配置されているように変更されてもよい。ファン6が作動すると、空気の流れ方向においてファン6の下流が正圧になる。このため、ファン6が、風路4の軸線方向において出口2よりも入口3に近い位置に配置されていれば、風路4の広い範囲において風路4を定める構成部品の隙間から外部の空気が流入しにくい。これにより、風路4には異物が入り込みにくく、水素供給装置の安全性を高めることができる。」
【図7】「
[図:0001430771000001.jpg]
」
イ 上記アから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「水素供給装置1aは、風路4と、ファン6と、第一配管30とを備え、風路4は、室外に接した入口3及び室内に接した出口2を有し、ファン6は、風路4に配置され、入口3から出口2への空気の流れを生じさせ、第一配管30は、端部31を有し、端部31は、風路4に水素ガスを供給するための第一供給口32をなし、水素供給装置1aにおいて、第一配管30の端部31は、風路4に配置され、水素供給装置1aにおいて、ファン6が作動すると、空気が入口3から風路4に取り込まれ、入口3から出口2に向かって空気の流れが生じ、第一供給口32を通って風路4に供給された水素ガスは風路4を流れる空気と混合され、空気とともに水素ガスが出口2を通って供給され、水素供給装置1aは、水素ガス供給源9をさらに備え、水素ガス供給源9から第一配管30に水素ガスが供給され、端部31は、風路4の軸線上又は風路4の軸線の近くである風路4の中央に配置され、水素供給装置1aは、混合器20をさらに備え、混合器20は、風路4に接する第二供給口5を有し、第一配管30から水素ガスが混合器20に供給され、水素供給装置1aは、風路4の軸線方向において出口2よりも入口3に近い位置にファン6が配置されているように変更されてもよい水素供給装置1a。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「風路4」は、「入口3」および「出口2」を有するから、一端に開口が設けられたものであり、引用発明の「出口2」は、本件補正発明の「開口」に相当する。また、「風路4」が容器により構成されることは明らかである。よって、引用発明の「風路4」を構成する容器は、本件補正発明の「容器」であるといえる。
(イ)引用発明の「端部31」は、「風路4に水素ガスを提供するための第一供給口32をなし」、「風路4」に配置されるものである。よって、引用発明の「端部31」および「第一供給口32」は、本件補正発明の「ガス吐出口」に相当する。
(ウ)引用発明の「水素ガス供給源9」は、「水素ガスを供給」するものであるから、本件補正発明の「ガス供給手段」に相当する。
(エ)引用発明の「ファン6」は、「空気」を「入口3から風路4に取り込」み、「入口3から出口2への空気の流れを生じさせ」るものである。よって、引用発明の「入口3」は、本件補正発明の「空気吐出口」であるといえる。
(オ)上記(エ)から、引用発明の「ファン6」は、本件補正発明の「ブロワファン」と、「容器の内部に空気吐出口を介して空気を空気流として供給する」ファンという点で一致する。
(カ)引用発明の「第一供給口32を通って風路4に供給された水素ガスは」、「風路4を流れる空気と混合され、空気とともに水素ガスが出口2を通って供給され」るから、本件補正発明の「前記容器は前記ガス吐出口を介して内部に供給された水素ガスを、前記空気吐出口を介して内部に供給された空気流によって付勢し、該付勢された水素ガスと前記供給された空気とを前記開口から外部に放出する」ものであるといえる。
(キ)引用文献1の図7を参照すると、「第一供給口32」は、「入口3」よりも「出口2」側に配置されているといえる。よって、上記(ア)、(イ)および(エ)を踏まえれば、引用発明と本件補正発明は、「ガス吐出口が」、「空気吐出口よりも「開口側に配置される」点で一致する。
(ク)引用発明の「端部31は」、「風路4の軸線上又は風路4の軸線の近くである風路4の中央に配置され」るものであるから、上記(ア)および(イ)を踏まえれば、引用発明と本件補正発明は、「ガス吐出口が」、「容器の内部に供給された空気の空気流の中央部に配置され」る点で、一致する。
(ケ)引用発明において、図7を参照すると、「水素ガス供給源9」から供給された水素ガスは、「ファン6」によって生じた空気の流れに対して、直線に近い流れで放出されているといえる。よって、上記(ア)および(イ)を踏まえれば、引用発明と本件補正発明は、「ガス吐出口」が、「水素ガスを空気流内に直線に近い流れで放出する」点で、一致する。
(コ)引用発明の「水素供給装置1a」は、水素ガスを供給する装置であるから、本件補発明の「ガス放出装置」であるといえる。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「一端に開口が設けられた容器と、前記容器の内部にガス吐出口を介して水素ガスを供給するガス供給手段と、前記容器の内部に空気吐出口を介して空気を、空気流として供給するファンとを備えており、前記容器は前記ガス吐出口を介して内部に供給された水素ガスを、前記空気吐出口を介して内部に供給され前記ファンによって空気に付勢し、該付勢された水素ガスと前記供給された空気とを前記開口から外部に放出するように構成されており、前記ガス吐出口が、前記空気吐出口より前記開口側に配置されていると共に、前記容器の内部に供給された空気流の中央部に配置されており、水素ガスを前記空気流内に直線に近い流れで放出するように構成されているガス放出装置。」
【相違点】
本件補正発明は、整流された空気流を供給するブロワファンを備えるのに対して、引用発明は、ファンによって空気流が供給されるファンを備えるものの、整流された空気流が供給されるブロワファンを備えることが特定されない点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点について
ファンの種類として、ブロワファンは一般的に知られているものであり、ブロワファンが、整流された空気流を供給することは、当業者における技術常識であるから、引用発明のファンとして、ブロワファンを用いるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、その際、ブロワファンから供給される空気流は整流されたものとなる。
イ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
ウ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2第項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求の理由において、「本願発明においては、ブロワファンにより整流された空気流によって水素ガスを付勢すること、及びガス吐出口から供給された水素ガスを、整流された空気流内に直線に近い流れで放出することという特別の構成を有することによって、ブロワファンから出力された、「整流されて渦が少なく静圧特性が高い空気流」に「直線に近い流れで放出された軽量な水素が乗せられて搬送される」ため、所定距離離れた利用者に充分な量及び充分な濃度の水素ガスを、鼻腔カニューラ等の吸引器具を用いることなく、供給することができるという、予期し得ない格段の効果が得られるのである。」旨を主張している。しかしながら、本件補正発明は、ブロワファンで整流された空気流が容器に供給されたとしても、開口から放出されるまでの間に、整流された状態を維持するための手段が存在しない。すなわち、本件補正発明の「容器」や「空気吐出口」には、ブロワファンによって整流された空気流を乱さずに開口へ放出するような工夫はなく、容器内に供給された空気流は、整流された空気流を維持して開口から放出されることはなく、主張のような予測しない格別の効果は得られない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年10月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし2に係る発明は、令和6年3月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[補正の却下の決定の理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明は、下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2019-58640号公報
引用文献2:特開平2-102105号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の[補正の却下の決定の理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[補正の却下の決定の理由]2で検討した本件補正発明の「ブロワファン」、「水素ガス」について、それぞれ「空気供給手段」、「ガス」として上位概念化したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[補正の却下の決定の理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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