特許拒絶査定不服審判
2024-004888
セルフ・フラッシング・コネクタ
- 審判番号
- 2024-004888
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-559372
- 請求日
- 2024年03月21日
- 審決日
- 2025年07月17日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ケアフュージョン 303、インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人浅村特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 平瀬 知明
- 審判官 栗山 卓也
- 分類
- P18 .121-Z (A61M) / P18 .572-Z (A61M) / P18 .575-Z (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-559372「セルフ・フラッシング・コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月31日国際公開、WO2019/210000、令和 3年 8月30日国内公表、特表2021-521967〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年4月24日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 2月 6日付け:拒絶理由通知書
同年 8月 8日 :意見書及び手続補正書の提出
同年11月16日付け:拒絶査定(送達日:令和5年11月21日)
令和 6年 3月21日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
同年 8月16日 :上申書の提出
第2 令和6年3月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年3月21日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
令和6年3月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、本件補正により、請求項14は、次のとおり補正された。
(1)本件補正後の請求項14
「 【請求項14】
ハウジングであって、前記ハウジングの下端部分から前記ハウジングの上端部分まで長手方向に延びている内腔を含む、ハウジングと、
前記ハウジングの前記内腔内に配置された、折りたたみ可能なバルブであって、前記折りたたみ可能なバルブは、ヘッドと、前記ヘッドから延びている本体と、を含む、折りたたみ可能なバルブと、
前記ハウジングの上端部分における側壁から延びている、第1の入口ポート、及び前記ハウジングの前記上端部分における反対側の側壁から延びている、出口ポートであって、前記第1の入口ポート及び前記出口ポートが、前記第1の入口ポートと前記出口ポートとの間の流れ経路を画定している、第1の入口ポート及び出口ポートと、
前記ハウジングの前記上端部分から、前記ハウジングの前記内腔内へ延びている、第2の入口ポートと、を備え、
前記折りたたみ可能なバルブが、閉じた状態にあるとき、前記折りたたみ可能なバルブの前記ヘッドは、前記第2の入口ポートから前記流れ経路内への、流体の流れを遮断し、
前記折りたたみ可能なバルブが前記閉じた状態から前記開いた状態に移行すると、前記折りたたみ可能なバルブの前記ヘッドが、前記第1の入口ポート、前記第2の入口ポート、及び前記出口ポートから離れる方向に移動することにより、前記第2の入口ポートは、前記流れ経路に、流体的に接続される、
セルフ・フラッシング・コネクタ。 」(下線部は、補正箇所を示す。)
(2)本件補正前の請求項14
「 【請求項14】
ハウジングであって、前記ハウジング内に長手方向に延びている内腔を含む、ハウジングと、
前記ハウジングの前記内腔内に配置された、折りたたみ可能なバルブであって、前記折りたたみ可能なバルブは、ヘッドと、前記ヘッドから延びている本体と、を含む、折りたたみ可能なバルブと、
前記ハウジングの上部分における側壁から延びている、第1の入口ポート、及び前記ハウジングの前記上部分における反対側の側壁から延びている、出口ポートであって、前記第1の入口ポートは、前記出口ポートと一列に並べられ、前記第1の入口ポートと前記出口ポートとの間の流れ経路を画定している、第1の入口ポート及び出口ポートと、
前記ハウジングの前記上部分から、前記ハウジングの前記内腔内へ延びている、第2の入口ポートと、を備え、
前記折りたたみ可能なバルブが、閉じた状態にあるとき、前記折りたたみ可能なバルブの前記ヘッドは、前記第2の入口ポートから前記流れ経路内への、流体の流れを遮断し、前記流れ流路は継続して開いており、
前記折りたたみ可能なバルブが、開いた状態にあるとき、前記流れ流路は継続して開いており、前記第2の入口ポートは、前記流れ経路に、流体的に接続されている、
セルフ・フラッシング・コネクタ。 」
2 補正の適否
(1)補正の目的要件
本件補正は、本件補正前の請求項14については、次の補正事項を含むものである。
ア 本件補正前の「前記ハウジング内に長手方向に延びている内腔」を、本件補正後の「前記ハウジングの下端部分から前記ハウジングの上端部分まで長手方向に延びている内腔」に補正する(以下「補正事項1」という。)。
イ 本件補正前のハウジングの「上部分」を、本件補正後の「上端部分」に補正する(2箇所。以下「補正事項2」という。)。
ウ 本件補正前の「前記第1の入口ポートは、前記出口ポートと一列に並べられ、前記第1の入口ポートと前記出口ポートとの間の流れ経路を画定している」を、本件補正後の「前記第1の入口ポート及び前記出口ポートが、前記第1の入口ポートと前記出口ポートとの間の流れ経路を画定している」に補正する(以下「補正事項3」という。)。
エ 本件補正前の「前記流れ流路は継続して開いており、」を削除する(以下「補正事項4」という。)。
オ 本件補正前の「前記折りたたみ可能なバルブが、開いた状態にあるとき、前記流れ流路は継続して開いており、」を、本件補正後の「前記折りたたみ可能なバルブが前記閉じた状態から前記開いた状態に移行すると、前記折りたたみ可能なバルブの前記ヘッドが、前記第1の入口ポート、前記第2の入口ポート、及び前記出口ポートから離れる方向に移動することにより、」に補正する(以下「補正事項5」という。)
カ 本件補正前の「流体的に接続されている、」を、本件補正後の「流体的に接続される、」に補正する(以下「補正事項6」という。)
上記補正事項1~6のうち、補正事項1については、「内腔」が「長手方向に延び」る態様について、「前記ハウジングの下端部分から前記ハウジングの上端部分まで」と限定する補正であり、補正事項2については、ハウジングの「上部分」を「上端部分」と限定する補正である。
しかしながら、補正事項6については、表現上の形式的な修正であって、本件補正前の請求項14の発明特定事項を実質的に限定するものではない。
また、補正事項3については、「第1の入口ポート」及び「出口ポート」の配置態様について、「一列に並べられ」との事項を、補正事項4及び5については、「折りたたみ可能なバルブ」の開閉状態における「流れ流路」の態様について、「前記流れ流路は継続して開いており、」との事項を、それぞれ削除するものである。
そうすると、補正事項3~6は、本件補正前の請求項14の発明特定事項を限定的に減縮するものとはいえず、むしろ、補正事項3~5については、当該発明特定事項の一部を削除することによって、前記の配置態様及び流れ流路の態様につき特定される範囲を拡張するものである。
よって、本件補正前の請求項14について、補正事項3~6は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない。
また、補正事項3~6は、同項第1号の請求項の削除、同項第3号の誤記の訂正、及び同項第4号の明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことは、明らかである。
したがって、補正事項3~6を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(2)独立特許要件
前記(1)で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、一応、本件補正が認められる場合について、本件補正後の請求項14に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)についても、以下、検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項及び引用発明
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平3-173575号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線部は、当審で付与したものである(以下同様)。
a 引用文献1の記載事項
(a)1ページ左欄6行~2ページ左上欄11行
「2.特許請求の範囲
(1) 第2の流体供給源の配管を主要IV注射配管に連結して流体接続を行なう逆止弁組立体にして、
流体通路を形成し、この流体通路に流体連絡している弁キャビティを備え、弁キャビティが底およびこの底から間隔をおいて開口部を持ち、この開口部が縁に沿つて弁座を備えているような弁本体と、
前記底と開口部との間の前記弁キャビティ内に配置され、前記弁座に流体密封接触して前記開口部を閉じる第1の形状、および前記弁座から離れて開口部を通じ前記通路に流体経路を形成する第2の形状に変形可能な可撓性のある弁エレメントと、
前記弁キャビティの底から突出し、前記弁エレメントに係合してこの弁エレメントを弁チャンバ内部のほぼ中央に位置決めすることのできる手段とを有している逆止弁組立体。
(2) ・・・
(3) ・・・
(4) 請求項3に記載された第2の流体供給源の配管を主要IV注射配管に連結して流体接続を行なう逆止弁組立体にして、前記弁本体は上部プレートとベース部分とを有し、前記開口部は上部プレートに形成され、この上部プレートは、前記弁座および開口部の周囲を取り囲み前記第2の流体供給源からの前記配管を受け入れるアクセスポートを備えている逆止弁組立体。
(5) 請求項4に記載された第2の流体供給源の配管を主要IV注射配管に連結して流体接続を行なう逆止弁組立体にして、前記弁エレメントには前記弁座にシール接触可能な肩部が形成され、前記弁エレメントは、さらに、前記スカートとは反対向きに前記肩部から突き出していて前記アクセスポート内に挿入可能な延長部が形成されている逆止弁組立体。」
(b)5ページ右上欄3~16行
「実施例
先ず第1図を参照する。配管14を通じて主要流体供給源12と静脈注射ポンプ20をシステム流体接続したマルチ配管・弁組立体10が図示されている。さらに詳しく説明すると、装着部材16と18を用いて弁組立体10と配管14を恒久的にまたは着脱可能に連結している。本発明の目的を達成するために、マルチ配管・弁組立体10から下流側の配管14に適当な静脈注射ポンプ20を連結し、マルチ配管・弁組立体10を通じて、患者21に流体を注射することができる。また同図に示すように、複数の第2の流体供給源22、24および26も組立体10に連結されている。」
(c)5ページ左下欄4行~右下欄3行
「第2図および第3図を参照すれば、弁組立体10の全体構造を理解することができる。第2図に示すように、弁組立体10は細長い弁本体39を備えている。この弁本体39は、溶媒接着、超音波シーリング、またはRFシーリングなど既知の方法を用い、ベース40と上部プレート41を接合して形成されている。図示のように、弁本体39に沿って一連の弁キャビティ42a、42bおよび42cが形成され、流体流路44が弁本体39内を縦方向に延びている。弁組立体10を通じて流体を流すため、流体流路44は弁キャビティ42a、42bおよび42cの各々と流体連絡している。
第4図から明らかなように、弁組立体10の各弁キャビティ42内には、中央突起46が形成されている。第4図並びに第5図あるいは第6図を参照すれば明らかなように、各突起46は弁キャビティ42の底48から立ち上がつており、中央突起46から突き出た放射状の突出部50、52、54および56を備えている。」
(d)6ページ左上欄14~17行
「第3図および第5図に示すように、個々の弁エレメント78a、78bおよび78cには、中空のスカート部80と延長部82が形成されている。」
(e)6ページ左下欄8~18行
「また、第2図および第3図に示す弁本体39は一体構造に製作しておくこともできるが、上部プレート41とベース40はそれぞれをマルチ配管・弁組立体10用の組立部品として製作しておく方が好ましい。弁組立体10用の組立部品として製作しておく場合、上部プレート41は、接着、溶剤接合または超音波溶接等の適当な方法を用いてベース40に取り付けられ、弁本体39内を通る流路44を覆うことができる。いずれの方法を取る場合にも、上部プレート41には複数の開口部94が形成されている。」
(f)6ページ右下欄20行~7ページ左上欄8行
「第2図は、各開口部94から突き出ていて第1図に示す付属の装着部材34、36または38を受け入れるアクセスポート98a、98bおよび98cを示している。装着部材34、36または38がアクセスポート98a、98bまたは98cに適切に係合すれば、付属する第2の流体供給源22、24または26と流体流路44との間に流体連絡流路92が形成される。この連絡状態は第6図に詳しく示されている。」
(g)7ページ左上欄16行~左下欄16行
「操作
新規なマルチ配管・弁組立体10の操作について、先ず第1図および第2図を参照しながら説明する。図中では、マルチ配管・弁組立体10は装着部材16および18を介して配管14に連結されている。この状態では、主要流体供給源12とポンプ20との間は、流路44を通じてのみ連絡されている。また第5図に示すように、アクセスポート98a、98bまたは98cに第2の流体供給源が接続されていない場合、弁エレメント78a、78bまたは78cは、変形前の状態すなわち弁座に接触した状態に偏倚されている。第5図から明らかなように、弁エレメント78がこうした着座形状のままであれば、その肩部84と上部プレート41の弁座96とで流体を封じ、開口部94を通して流体流路44に流体が流れていくのを妨げることができる。これに対し、カバー104が除去され、第2の流体供給源(例えば、流体供給源24)がマルチ配管・弁組立体10につながれると、第6図に示すように、対応する補助装着部材(例えば、装着部材36)がアクセスポート98b内に入り、弁エレメント78bの延長部82を押圧する。このように押圧することによつて、装着部材36が弁エレメント78bを非すわりまたは変形形状に変形し、開口部94を通る流体流路92が形成され、第2の流体供給源22と流体流路44とが流体連絡するように連結される。また、流体供給源22からの流体の圧力が弾性をもつ弁エレメント78bの延長部82や肩部84に作用した場合、必要に応じて、弾性弁エレメント78bが変形するように構成してもよい。いずれの場合も、弁エレメント78bがそのように変形すれば、突条58、60、62および64のうち、一つ以上の突条が、弁エレメント78のスカート部80と接触し、弁エレメント78が入口68または出ロ70をふさぐのを妨げる。こうして、流体流路44はふさがれないまま、主要流体供給源12とポンプ20との間を流体が連絡し、弁エレメント78bは変形形状にあり、第2の流体供給源24とポンプ20との間を同時に連絡することができる。」
(h)第1図
「
[図:0001429520000001.jpg]
」
(i)第2図
「
[図:0001429520000002.jpg]
」
(j)第4図
「
[図:0001429520000003.jpg]
」
(k)第5図
「
[図:0001429520000004.jpg]
」
(l)第6図
「
[図:0001429520000005.jpg]
」
(m)前記(b)の「装着部材16」及び「装着部材18」は、前記(h)の図示内容に照らせば、それぞれ、弁組立体10から上流側の配管14、弁組立体10から下流側の配管14に連結するものであり、前記(c)の「流体流路44が弁本体39内を縦方向に延びている」の記載及び前記(j)の図示内容に照らせば、その各々が、弁本体39内を縦方向に延びる流体通路44と流体連結されているものである。
また、当該装着部材16及び18は、前記(e)の「上部プレート41は・・・ベース40に取り付けられ、弁本体39内を通る流路44を覆う」の記載並びに前記(i)及び(j)の図示内容に照らせば、ベース40(ベース部分)に備えられたものである。
b 引用文献1に記載された発明
前記aの記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「第2の流体供給源22の配管を主要IV注射配管14に連結して流体接続を行なう逆止弁組立体10にして、
流体通路44を形成し、この流体通路44に流体連絡している弁キャビティ42を備え、弁キャビティ42が底48及びこの底48から間隔をおいて開口部94を持ち、この開口部94が縁に沿って弁座96を備えているような弁本体39と、
前記底48と開口部94との間の前記弁キャビティ42内に配置され、前記弁座96に流体密封接触して前記開口部94を閉じる第1の形状、及び前記弁座96から離れて開口部94を通じ流体経路92を形成し、第2の流体供給源22と流体通路44を流体連絡する第2の形状に変形可能な可撓性のある弁エレメント78と、を有し、
前記弁本体39は上部プレート41とベース部分40とを有し、前記開口部94は上部プレート41に形成され、この上部プレート41は、前記弁座96及び開口部94の周囲を取り囲み前記第2の流体供給源からの前記配管を受け入れる、開口部94から突き出たアクセスポート98を備えており、
前記ベース部分40は、前記配管14の上流側に連結する装着部材16と、前記配管14の下流側に連結する装着部材18を備え、装着部材16及び18の各々は、弁本体39内を縦方向に延びる流体通路44と流体連結されており、
前記弁エレメント78は、中空のスカート部80と前記アクセスポート98内に挿入可能な延長部82が形成されており、
弁エレメント78が着座形状であれば、開口部94を通して流体通路44に流体が流れていくのを妨げることができ、
補助装着部材36が延長部82を押圧することによって弁エレメント78が変形すれば、流体経路92が形成されて、第2の流体供給源22と流体通路44とが流体連絡され、流体通路44はふさがれないまま、主要流体供給源12とポンプ20との間、及び第2の流体供給源22とポンプ20との間を同時に流体が連絡することができる、
逆止弁組立体10。」
(イ)引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2014/049819号(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
a 引用文献3の記載事項
(a)段落【0026】
「輸液セット14のチューブ12は、可撓性を有する管体であり、輸液剤の流路を構成する。コネクタ10は、上記のような輸液セット14に適用される場合、例えば、クレンメ18とエアベントフィルター20の間に配置される。すなわち、コネクタ10は、点滴筒16から下流に延在する第1チューブ12aと、エアベントフィルター20の上流に延在する第2チューブ12bとの間を流通可能に接続する。また、コネクタ10は、第1チューブ12aと第2チューブ12bによって構成されるメインラインに対し、別ラインとして構成される第3チューブ12cが接続可能な3ポートコネクタとなっている。」
(b)段落【0028】
「以下、本実施形態に係るコネクタ10の具体的な構成について詳述していく。図2に示すように、コネクタ10は、メインラインを構成する第1チューブ12aが接続される第1ポート24と、同じくメインラインを構成する第2チューブ12bが接続される第2ポート26と、別ラインを構成する第3チューブ12cが接続される第3ポート28とを有する。第1及び第2ポート24、26は、輸液剤の流路を内部に有するハウジング30(筐体)に設けられている。第3ポート28は、ハウジング30と別の部材からなるキャップ32(蓋体)、支持体34(図4参照)及び弁体36によって構成され、各部材がハウジング30に組み付けられることで構築される。」
(c)段落【0031】
「図2及び図3に示すように、ハウジング30は、有底筒状のコネクタ基部42を中央部に有し、第1ポート24及び第2ポート26はこのコネクタ基部42の側周面に連結されている。第1ポート24は、略円筒状に形成され、コネクタ基部42からメインラインの上流に向かって直線状に延出している。この第1ポート24の内部には、輸液剤を流通可能な第1ポート流路44が軸方向に沿って延設されている。」
(d)図2
「
[図:0001429520000006.jpg]
」
(e)図4
「
[図:0001429520000007.jpg]
」
b 引用文献3から認定される周知技術
前記aの記載事項によれば、輸液セットに適用されるコネクタに関する、次の周知技術を認定できる。
「輸液セットに適用されるコネクタにおいて、ハウジングの側周面の上側寄りに、上流側の第1ポート及び下流側の第2ポートを連結すること。」(以下「本件周知技術」という。)
ウ 対比
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の各構成は、それぞれ、次の本件補正発明の構成に相当する。
<引用発明> <本件補正発明>
弁本体39 ハウジング
ベース部分40 ハウジングの側壁
弁キャビティ42 内腔
延長部82 ヘッド
中空のスカート部80 ヘッドから延びている本体
装着部材16 第1の入口ポート
装着部材18 出口ポート
流体通路44 流れ経路
アクセスポート98 第2の入口ポート
(イ)引用発明の「弁本体39」の「底48及びこの底48から間隔をおいて開口部94を持」つ「弁キャビティ42」は、底48が弁本体39の「下端」に位置し、上部プレート41に形成された開口部94が弁本体39の「上端」に位置するから、本件補正発明の「前記ハウジングの下端部分から前記ハウジングの上端部分まで長手方向に延びている内腔」に相当する。
そうすると、引用発明の「上部プレート41とベース部分40とを有し」「弁キャビティ42を備え、弁キャビティ42が底48及びこの底48から間隔をおいて開口部94を持ち、この開口部94が縁に沿って弁座96を備えているような弁本体39」は、本件補正発明の「ハウジングであって、前記ハウジングの下端部分から前記ハウジングの上端部分まで長手方向に延びている内腔を含む、ハウジング」に相当する。
(ウ)引用発明の「前記底48と開口部94との間の前記弁キャビティ42内に配置され」「中空のスカート部80と前記アクセスポート98内に挿入可能な延長部82が形成されて」いる「弁エレメント78」と、本件補正発明の「前記ハウジングの前記内腔内に配置された、折りたたみ可能なバルブであって、前記折りたたみ可能なバルブは、ヘッドと、前記ヘッドから延びている本体と、を含む、折りたたみ可能なバルブ」とは、「前記ハウジングの前記内腔内に配置された、変形可能なバルブであって、前記変形可能なバルブは、ヘッドと、前記ヘッドから延びている本体と、を含む、変形可能なバルブ」の点に限り一致する。
(エ)引用発明の「弁本体39」の「ベース部分40」が備える「前記配管14の上流側に連結する装着部材16と、前記配管14の下流側に連結する装着部材18」と、本件補正発明の「前記ハウジングの上端部分における側壁から延びている、第1の入口ポート、及び前記ハウジングの前記上端部分における反対側の側壁から延びている、出口ポート」とは、「前記ハウジングの側壁から延びている、第1の入口ポート、及び前記ハウジングの反対側の側壁から延びている、出口ポート」の点に限り一致する。
(オ)引用発明の「装着部材16及び18の各々は、弁本体39内を縦方向に延びる流体通路44と流体連結されて」いる「装着部材16及び18」は、本件補正発明の「前記第1の入口ポート及び前記出口ポートが、前記第1の入口ポートと前記出口ポートとの間の流れ経路を画定している、第1の入口ポート及び出口ポート」に相当する。
(カ)引用発明の「上部プレート41に形成され」た「開口部94から突き出たアクセスポート98」であって「弁キャビティ42」が持つ「開口部94を通じ流体経路92を形成し、第2の流体供給源22と流体通路44を流体連絡する」「弁エレメント78」の「延長部82」が「挿入可能な」「アクセスポート98」は、本件補正発明の「前記ハウジングの前記上端部分から、前記ハウジングの前記内腔内へ延びている、第2の入口ポート」に相当する。
(キ)引用発明の「弁エレメント78」が「前記弁座96に流体密封接触して前記開口部94を閉じる第1の形状」の「着座形状であれば」と、本件補正発明の「前記折りたたみ可能なバルブが、閉じた状態にあるとき」とは、「前記変形可能なバルブが、閉じた状態にあるとき」の点に限り一致する。
そうすると、引用発明の「弁エレメント78」の「延長部82」が「アクセスポート98」に「挿入」され「弁エレメント78が着座形状であれば、開口部94を通して流体通路44に流体が流れていくのを妨げることができ」と、本件補正発明の「前記折りたたみ可能なバルブが、閉じた状態にあるとき、前記折りたたみ可能なバルブの前記ヘッドは、前記第2の入口ポートから前記流れ経路内への、流体の流れを遮断し」とは、「前記変形可能なバルブが、閉じた状態にあるとき、前記変形可能なバルブの前記ヘッドは、前記第2の入口ポートから前記流れ経路内への、流体の流れを遮断し」の点に限り一致する。
(ク)引用発明の「弁エレメント78」が「前記弁座96から離れて開口部94を通じ前記通路44に流体経路92を形成する第2の形状」に変形し「補助装着部材36が延長部82を押圧することによって弁エレメント78が変形すれば」と、本件補正発明の「前記折りたたみ可能なバルブが前記閉じた状態から前記開いた状態に移行すると」とは、「前記変形可能なバルブが前記閉じた状態から前記開いた状態に移行すると」の点に限り一致する。
そうすると、引用発明の「補助装着部材36が延長部82を押圧することによって弁エレメント78が変形すれば、流体経路92が形成されて、第2の流体供給源22と流体通路44とが流体連絡され」は、開口部94を通じ第2の流体供給源22と流体通路44との間に流体経路92を形成するアクセスポート98の作用に照らせば、引用発明の当該事項と、本件補正発明の「前記折りたたみ可能なバルブが前記閉じた状態から前記開いた状態に移行すると、」「前記第2の入口ポートは、前記流れ経路に、流体的に接続される」とは、「前記変形可能なバルブが前記閉じた状態から前記開いた状態に移行すると、」「前記第2の入口ポートは、前記流れ経路に、流体的に接続される」限り一致する。
(ケ)引用発明の「第2の流体供給源22の配管を主要IV注射配管14に連結して流体接続を行なう逆止弁組立体10」は、「流体流路44はふさがれないまま、主要流体供給源12とポンプ20との間、及び第2の流体供給源22とポンプ20との間を同時に流体が連絡することができる」という作用に照らせば、本件補正発明の「セルフ・フラッシング・コネクタ」に相当する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点1)
「ハウジングであって、前記ハウジングの下端部分から前記ハウジングの上端部分まで長手方向に延びている内腔を含む、ハウジングと、
前記ハウジングの前記内腔内に配置された、変形可能なバルブであって、前記変形可能なバルブは、ヘッドと、前記ヘッドから延びている本体と、を含む、変形可能なバルブと、
前記ハウジングの側壁から延びている、第1の入口ポート、及び前記ハウジングの反対側の側壁から延びている、出口ポートであって、前記第1の入口ポート及び前記出口ポートが、前記第1の入口ポートと前記出口ポートとの間の流れ経路を画定している、第1の入口ポート及び出口ポートと、
前記ハウジングの前記上端部分から、前記ハウジングの前記内腔内へ延びている、第2の入口ポートと、を備え、
前記変形可能なバルブが、閉じた状態にあるとき、前記変形可能なバルブの前記ヘッドは、前記第2の入口ポートから前記流れ経路内への、流体の流れを遮断し、
前記変形可能なバルブが前記閉じた状態から前記開いた状態に移行すると、前記第2の入口ポートは、前記流れ経路に、流体的に接続される、
セルフ・フラッシング・コネクタ。」
(相違点1)
本件補正発明の第1の入口ポート及び出口ポートは、それぞれ、前記ハウジングの「上端部分における」側壁から延びているのに対して、
引用発明の装着部材16及び18は、ベース部分40の「上端部分」から延びていない点。
(相違点2)
変形可能なバルブについて、本件補正発明は、「折りたたみ可能なバルブ」であって、「前記折りたたみ可能なバルブの前記ヘッドが、前記第1の入口ポート、前記第2の入口ポート、及び前記出口ポートから離れる方向に移動する」のに対して、
引用発明は、「変形可能な可撓性のある弁エレメント78」であって、弁エレメント78が「前記弁座96から離れて開口部94を通じ前記通路44に流体経路92を形成する第2の形状に変形」する点。
エ 相違点について
(ア)相違点1
引用発明に本件周知技術を適用して、装着部材16及び18をベース部分40の側周面の上側寄りに連結するようにし、弁本体39の側周面のうち、装着部材16及び18を連結した上側寄りの部分を「ハウジングの上端部分」、連結していない下側寄りの部分を「ハウジングの下端部分」とし、もって、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
(イ)相違点2
まず、引用発明の「変形可能な可撓性のある弁エレメント78」について、その形状を適宜設計変更することによって、「折りたたみ可能」な構成とすることは、当業者にとって容易である。
また、引用発明において、弁エレメント78が、着座形状たる第1の形状から、弁座96から離れて開口部94を通じ流体通路44に流体経路92を形成する第2の形状へ変形する場合、弁エレメント78の延長部82は、弁キャビティ42の底48へ向かって移動する(前記2(2)イ(ア)a(k)及び(l)の第5図及び第6図参照)。
そして、かかる延長部82の底48の方向への移動は、アクセスポート98から離れる方向に移動することを意味するのは明らかであるとともに、底48の方向とは異なる方向に位置する「装着部材16及び18から離れる方向に移動する」と表現し得る。
そうすると、引用発明における、弁エレメント78の第1の形状から第2の形状への変形について、本件補正発明の「前記折りたたみ可能なバルブの前記ヘッドが、前記第1の入口ポート、前記第2の入口ポート、及び前記出口ポートから離れる方向に移動する」ようにすることは、当業者にとって容易である。
したがって、相違点2は、容易想到である。
(ウ)効果
また、本件補正発明の効果は、引用発明及び本件周知技術から当業者が予測できる範囲のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。
オ 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び本件周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定におけるむすび
以上のことから、本件補正は、前記2(1)のとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、本件補正を認めたとしても、前記2(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~19に係る発明は、令和5年8月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項14に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。
(進歩性)本願の請求項14に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び3の記載事項、引用発明並びに本件周知技術は、前記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、概ね、本件補正発明と引用発明との対比における説示(前記第2の[理由]2(2)ウ)のとおりである。
このほか、引用発明の「底48及びこの底48から間隔をおいて開口部94を持」つ「弁キャビティ42」は、本願発明の「前記ハウジング内に長手方向に延びている内腔」に相当し、以下同様に、「装着部材16及び18の各々は、弁本体39内を縦方向に延びる流体通路44と流体連結されて」いるとの態様は「前記第1の入口ポートは、前記出口ポートと一列に並べられ」ている態様に、「流体通路44はふさがれないまま、主要流体供給源12とポンプ20との間、及び第2の流体供給源22とポンプ20との間を同時に流体が連絡することができる」態様は「閉じた状態にあるとき」と「開いた状態にあるとき、前記流れ流路は継続して開いて」いる態様に、それぞれ相当する。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
(一致点2)
「ハウジングであって、前記ハウジング内に長手方向に延びている内腔を含む、ハウジングと、
前記ハウジングの前記内腔内に配置された、変形可能なバルブであって、前記変形可能なバルブは、ヘッドと、前記ヘッドから延びている本体と、を含む、変形可能なバルブと、
前記ハウジングの側壁から延びている、第1の入口ポート、及び前記ハウジングの反対側の側壁から延びている、出口ポートであって、前記第1の入口ポートは、前記出口ポートと一列に並べられ、前記第1の入口ポートと前記出口ポートとの間の流れ経路を画定している、第1の入口ポート及び出口ポートと、
前記ハウジングの前記上部分から、前記ハウジングの前記内腔内へ延びている、第2の入口ポートと、を備え、
前記変形可能なバルブが、閉じた状態にあるとき、前記変形可能なバルブの前記ヘッドは、前記第2の入口ポートから前記流れ経路内への、流体の流れを遮断し、前記流れ流路は継続して開いており、
前記変形可能なバルブが、開いた状態にあるとき、前記流れ流路は継続して開いており、前記第2の入口ポートは、前記流れ経路に、流体的に接続されている、
セルフ・フラッシング・コネクタ。」
(相違点3)
本願発明の第1の入口ポート及び出口ポートは、それぞれ、前記ハウジングの「上部分における」側壁から延びているのに対して、
引用発明の装着部材16及び18は、ベース部分40の「上部分」から延びていない点。
(相違点4)
変形可能なバルブについて、本願発明は、「折りたたみ可能なバルブ」であるのに対して、引用発明は、「変形可能な可撓性のある弁エレメント78」である点。
そして、相違点1と相違点3は、実質的には、同じであり、相違点4は相違点2に包含される関係にあるから、本願発明は、前記第2の[理由]2に示したとおり、引用発明及び本件周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
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2024-004888