2022-014012
積層体及び二次電池
- 審判番号
- 2022-014012
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-036799外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月07日
- 審決日
- 2023年10月18日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社東芝
- 【請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 令和4年9月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】表面及び裏面を有する第1の集電体と、前記第1の集電体から第1方向に延出した第1の集電タブと、表面及び裏面を有し、前記裏面が前記第1の集電体の前記表面及び前記裏面のうちの少なくとも一部に担持され、前記第1の集電タブと隣接する第1端面と前記第1方向において前記第1端面と向き合う第2端面とを含む第1の活物質含有層と、続きを表示(全11行)無機材料を含む第1の膜とを含み、前記第1の活物質含有層の前記第1端面で規定される厚さは、前記第1の活物質含有層の前記第2端面で規定される厚さよりも小さく、前記第1の膜が、少なくとも、前記第1の活物質含有層の表面全体と、前記第1の活物質含有層の前記第1端面と、前記第1の集電タブの前記表面及び前記裏面のうちの前記第1端面と隣接する部分とを被覆しており、前記第1の活物質含有層と対向する第2の活物質含有層と、前記第1の活物質含有層と前記第2の活物質含有層の間に配置された、有機繊維を含む第2の膜としてのナノファイバ層とをさらに含み、前記第1の膜と前記第2の膜とでセパレータを構成している、積層体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年3月10日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1及び請求項1を引用する請求項4の記載は次のとおりである。
「【請求項1】表面及び裏面を有する第1の集電体と、前記第1の集電体から第1方向に延出した第1の集電タブと、表面及び裏面を有し、前記裏面が前記第1の集電体の前記表面及び前記裏面のうちの少なくとも一部に担持され、前記第1の集電タブと隣接する第1端面と前記第1方向において前記第1端面と向き合う第2端面とを含む第1の活物質含有層と、無機材料を含む第1の膜とを含み、前記第1の活物質含有層の前記第1端面で規定される厚さは、前記第1の活物質含有層の前記第2端面で規定される厚さよりも小さく、前記第1の膜が、少なくとも、前記第1の活物質含有層の表面全体と、前記第1の活物質含有層の前記第1端面と、前記第1の集電タブの前記表面及び前記裏面のうちの前記第1端面と隣接する部分とを被覆している、積層体。」
「【請求項4】前記第1の活物質含有層と対向する第2の活物質含有層と、前記第1の活物質含有層と前記第2の活物質含有層の間に配置された、有機繊維を含む第2の膜とをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。」
2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1を引用する請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の膜」及び「第2の膜」について、「第2の膜としてのナノファイバ層」を含み、「前記第1の膜と前記第2の膜とでセパレータを構成している」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1を引用する請求項4に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)補正後の本願発明
本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
折りたたみ中(クリックで表示)
ア.引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2012-74359号公報(平成24年4月12日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審にて付与した。)。
「【0003】正極および負極には、金属箔のみからなるもの(例えばリチウム電池における負極)、金属箔からなる集電体上に活物質層を形成したもの、発泡金属からなる集電体に活物質を充填したものなどがある。活物質を有する電極であっても、電気を取り出すための集電タブを接続するために、あるいは直接集電端子に接続するために、通常その端部には、活物質が塗工されず金属製の集電体が露出する部分を有する。この露出した金属部分と、他方の電極の露出した金属部分または活物質層とが短絡した場合には、大きな電流が流れ、発熱によって電池が破損に至る可能性がある。隣り合う二つの電極はセパレータを介して対向しているが、巻回時の巻きずれや、運搬・使用時の落下・振動によって電極から剥離した粉末がセパレータを貫通するなどにより、短絡が起こる場合がある。【0004】これを防止するために、特許文献1には、集電体箔上の活物質非塗工部に、活物質層に隣接して短絡防止層を設ける発明が開示されている。また、現状の非水電解質二次電池においては、充電時に正極活物質から放出されたリチウムイオンを負極活物質に円滑に吸蔵させるために、負極活物質層は正極活物質層よりも大きく、正極活物質層全体に対向するように設計される。そのため、正極集電体箔の活物質非塗工部と負極の活物質塗工部がセパレータを介して対向する部分が必ず存在する。特許文献2および3には、正極活物質非塗工部であって、負極活物質塗工部とセパレータを介して対向している部分に絶縁層を形成する発明が開示されている。また、特許文献4には、短絡防止層を非絶縁性とする発明が開示されている。」
「【0012】本発明の第1の実施形態として、集電体箔上に正極用の活物質層を有する正極と、集電体箔上に負極用の活物質層を有する負極とがセパレータを介して積層巻回された電極体を備え、アルミナ含有層が正極集電体箔上に正極活物質層と隣接して形成された巻回型リチウムイオン二次電池について説明する。本実施形態において、アルミナ含有層は短絡防止層として機能する。【0013】図2に、本実施形態に係る電池の巻回電極体1の構造を示す。帯状の正極10と帯状の負極20とが、帯状のセパレータ30を介して積層・巻回されている。正極10は、正極集電体箔11の両面に正極活物質層12とアルミナ含有層40を有しており、負極20は負極集電体箔21の両面に負極活物質層22を有している。【0014】図3に、図2のI-I断面における正極、負極およびセパレータの構造を示す。本実施形態においては、アルミナ含有層40が形成されている部材は、金属製の正極集電体箔11と正極活物質層12を有する正極10である。アルミナ含有層40は、集電体箔11上に直接接して、かつ活物質層12に隣接して形成され、セパレータ30を介して隣り合う負極20の活物質層22および集電体箔21の端縁と、セパレータ30を介して対面している。【0015】図1に、図3の正極集電体箔11の側端に近い部分を拡大して示す。図1は集電体箔11の片面のみを表し、全体に縮尺は正確ではない。本実施形態では、正極活物質層12は、ほぼ一定の厚さを有するバルク領域121と、端部において厚さが漸次減少するテーパー領域122を有している。そして、その端部テーパー領域122に重なるように、アルミナ含有層40が正極集電体箔11上に塗工されている。」
「【0025】正極活物質層12は、正極活物質を主成分とし、必要に応じて、さらに導電剤、結着剤、フィラー等の添加成分を含んでいる。」
「【0035】電池のセパレータには、周知の材料を用いることができる。例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリイミド系、フッ素樹脂系の微孔膜や不織布を用いることができる。セパレータの濡れ性が悪い場合には、界面活性剤等の処理を施すことができる。」
「【0038】正極活物質に必要に応じて導電剤、結着剤、フィラー等を添加して正極合剤が調製され、正極合剤に適量の溶媒を加えることによって、塗工用の正極ペーストが調製される。」
「【0041】帯状の正極集電体箔の両面に、正極ペーストを塗工する。・・・【0042】正極ペーストを帯状に塗工した両側端には、上記ほぼ一定の厚さを有するバルク領域(図1の121)から集電体箔が剥き出しの非塗工部へと、正極合剤層の厚さが漸次変化するテーパー領域(図1の122)が存在する。・・・続きを表示(全12行)・・・【0048】次いで、正極ペーストとアルミナペーストが塗工された正極は、120~180℃で乾燥される。乾燥方法には、周知の方法を用いることができる。【0049】さらに、乾燥された正極は、プレス加工される。本実施形態では、正極が帯状であるため、ロールプレスが好適に用いられる。プレス加工によって正極活物質層は、典型的には、プレス前の片面で40~130μm厚から、25~80μm厚に圧縮される。・・・【0051】プレス工程を経た帯状の正極は、両側端部の集電体箔が露出している。この正極は、幅方向の中央を長さ方向に沿って切断され、さらに必要な長さに切断されて、電池製造の後の工程に供される。」
「【0068】また、第1の実施形態では、負極活物質層の端縁とセパレータを介して対面する位置の正極上にアルミナ含有層を設けたが、負極活物質層の端縁と対面する位置のみならず、正極活物質層表面全体を覆うようにアルミナ含有層を設けてもよい。正極活物質層を覆うようにアルミナ含有層を設けることによって、電池内に導電性微粒子等が混入し、セパレータを突き破った場合にも、正極と負極との短絡による異常な発熱を防止することができる。また、セパレータ表面全体又は負極活物質層表面全体を覆うようにアルミナ含有層を設けてもよい。」
「【図1】[図:0001405390000001.jpg]」
「【図3】[図:0001405390000002.jpg]」
(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 段落【0012】の「集電体箔上に正極用の活物質層を有する正極と、集電体箔上に負極用の活物質層を有する負極とがセパレータを介して積層巻回された電極体を備え」「形成された巻回型リチウムイオン二次電池」との記載、及び段落【0013】の「帯状の正極10と帯状の負極20とが、帯状のセパレータ30を介して積層・巻回され」、「正極10は、正極集電体箔11の両面に正極活物質層12」「を有しており、負極20は負極集電体箔21の両面に負極活物質層22を有している」との記載によれば、正極集電体箔11上に正極活物質層12を有する正極10と、負極集電体箔21上に負極活物質層12を有する負極20とがセパレータ30を介して積層巻回された巻回型リチウムイオン二次電池の巻回電極体が記載されているといえる。
b 段落【0013】、【0041】によれば、「正極集電体箔」は「両面」を有する。
c 段落【0003】には「活物質を有する電極であっても、電気を取り出すための集電タブを接続するために、あるいは直接集電端子に接続するために、通常その端部には、活物質が塗工されず金属製の集電体が露出する部分を有する」ことが記載されている。当該記載を考慮した上で、図3を参照すると、「正極集電体箔11」は、その端部に、正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分を有することは明らかである。
d 段落【0025】には「正極活物質層12は、正極活物質を主成分とし、必要に応じて、さらに導電剤、結着剤、フィラー等の添加成分を含」むことが記載され、段落【0038】、【0041】には「正極活物質に必要に応じて導電剤、結着剤、フィラー等を添加して正極合剤が調製され、正極合剤に適量の溶媒を加えることによって、塗工用の正極ペーストが調製され」、「正極集電体箔の両面に、正極ペーストを塗工する」ことが記載されている。これらの記載から、「正極活物質層12」は「正極ペースト」により構成されることは明らかである。
e そして、段落【0041】、【0048】ないし【0049】によれば、正極ペーストは、「正極集電体箔の両面に」「塗工」され、「乾燥され」、「プレス加工される」から、正極集電体箔の両面に保持されていることは明らかであって、上記d及び図3に正極集電体箔11の両面にそれぞれ正極活物質層12が示されていることを考慮すると、正極ペーストにより構成される「正極活物質層12」は、正極集電体箔11の両面にそれぞれ保持されている。
f また、段落【0042】、【0051】によれば、正極ペーストは、「両側端には、上記ほぼ一定の厚さを有するバルク領域」「から集電体箔が剥き出しの非塗工部へと、正極合剤層の厚さが漸次変化するテーパー領域」「が存在」し、「プレス工程を経た帯状の正極は、両側端部の集電体箔が露出し」、「幅方向の中央を長さ方向に沿って切断され」、「電池製造の後の工程に供される」ものである。ここで、「幅方向の中央を長さ方向に沿って切断され」る領域は「ほぼ一定の厚さを有するバルク領域」であり、段落【0015】によれば、「テーパー領域」は「端部において厚さが漸次減少する」領域である。
そうすると、上記c、dを合わせ考慮すれば、「正極活物質層12」は、一の「側端には、」「ほぼ一定の厚さを有するバルク領域」から「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」へと、「端部において厚さが漸次減少する」「テーパー領域」「が存在」し、他の側端は「ほぼ一定の厚さを有するバルク領域」が「切断されて」なるものである。
g 段落【0068】によれば、「正極活物質層表面全体を覆うようにアルミナ含有層を設け」、「正極活物質層を覆うようにアルミナ含有層を設けることによって、電池内に導電性微粒子等が混入し、セパレータを突き破った場合にも、正極と負極との短絡による異常な発熱を防止することができる」。
h 段落【0014】の「集電体箔11」、「活物質層12」が「正極集電体箔11」、「正極活物質層12」であることは明らかであるから、段落【0014】によれば、「アルミナ含有層40は、」「正極集電体箔11」「上に直接接して、かつ」「正極活物質層12」「に隣接して形成され」、段落【0015】によれば「アルミナ含有層40」は「テーパー領域122に重なるように」「正極集電体箔11上に塗工されている」。
i 段落【0004】には「負極活物質層は」「正極活物質層全体に対向するように設計される」ことが記載されている。当該記載を考慮した上で、図3を参照すると、「負極活物質層22」は、正極活物質層12に対向していることは明らかである。
j 上記aによれば、正極集電体箔11上に正極活物質層12を有する正極10と、負極集電体箔21上に負極活物質層12を有する負極20とがセパレータ30を介して積層されているから、セパレータ30は、正極活物質層12と負極活物質層22の間に積層されていることは明らかである。
k 段落【0035】によれば、セパレータは、「ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリイミド系、フッ素樹脂系の微孔膜や不織布」である。
(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「正極集電体箔11上に正極活物質層12を有する正極10と、負極集電体箔21上に負極活物質層12を有する負極20とがセパレータ30を介して積層巻回された巻回型リチウムイオン二次電池の巻回電極体であって、(上記a)正極集電体箔11は両面を有し、(上記b)正極集電体箔11は、その端部に、正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分を有し、(上記c)正極活物質層12は、正極集電体箔11の両面にそれぞれ保持され、(上記e)続きを表示(全11行)正極活物質層12は、一の側端には、ほぼ一定の厚さを有するバルク領域から正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分へと、端部において厚さが漸次減少するテーパー領域が存在し、他の側端はほぼ一定の厚さを有するバルク領域が切断されてなるものであり、(上記f)正極活物質層表面全体を覆うようにアルミナ含有層を設け、正極活物質層を覆うようにアルミナ含有層を設けることによって、電池内に導電性微粒子等が混入し、セパレータを突き破った場合にも、正極と負極との短絡による異常な発熱を防止することができ、(上記g)アルミナ含有層40は、正極集電体箔11上に直接接して、かつ正極活物質層12に隣接して形成され、テーパー領域122に重なるように正極集電体箔11上に塗工され、(上記h)負極活物質層22は、正極活物質層12に対向し、(上記i)セパレータ30は、正極活物質層12と負極活物質層22の間に積層され、(上記j)セパレータ30は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリイミド系、フッ素樹脂系の微孔膜や不織布である、(上記k)巻回型リチウムイオン二次電池の巻回積層体。」
イ.引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-41817号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。(下線は、当審にて付与した。)
「【0012】図1は、一実施形態にかかる二次電池に含まれる電極構造体における電池セルの一例の構成を示す断面図である。図示する電池セル24は、絶縁体22を介して設けられた正極18および負極20を含み、絶縁体22は、有機繊維の層を含む。図2に示されるように、有機繊維の層23は自立した膜ではなく、負極20上に支持され、この負極20の表面に固定されている。図2に示されるような負極20と有機繊維の層23とを合わせて、有機繊維層被覆電極と称することができる。本実施形態における有機繊維の層23は、負極20の表面に原料を供給して直接形成されたものであり、これについては追って詳細に説明する。【0013】図示するように、負極20は、負極集電体20a表面に負極活物質層(負極活物質含有層)20bを設けて構成され、正極18は、正極集電体18a表面に正極活物質層(正極活物質含有層)18bを設けて構成される。負極集電体20aおよび正極集電体18aとしては、アルミニウム等の金属の箔が用いられる。負極活物質層は、負極活物質、負極導電剤および結着剤を含有するスラリーを用いて形成され、正極活物質層は、正極活物質、正極導電剤および結着剤を含有するスラリーを用いて形成される。」
「【0019】有機繊維の層23は、電子を通さずにリチウムイオンを通すセパレーターとして作用する。」
「【0021】図4には、電極セル24の他の例を示す。図4(a)に示す電極セル24においては、有機繊維の層23は、負極20の両面に加えてエッジも覆っている。図4(b)に示す電極セル24においては、有機繊維の層23は、負極18の片面およびエッジ、正極20の片面およびエッジを覆っている。図4(c)に示す電極セル24においては、有機繊維の層23は、正極18の両面に加えてエッジも覆っている。こうした構成とすることによって、電極面のあわせのズレ、および電極や集電体の切り子による短絡の発生は抑制される。しかも、電極のエッジが有機繊維の層23を含む絶縁体で覆われた構造であるので、エッジにおけるショートの発生は回避され、電池としての安全性を高めることができる。有機繊維の層23を含む絶縁体で電極のエッジを覆うことによって、自己放電特性の向上にもつながる。」
「【0025】イオン透過性および含電解液性の確保が必要であることから、有機繊維の層23を形成している繊維全体の体積の30%以上は、太さ1μm以下の有機繊維であることが好ましい。太さのより好ましい範囲は、350nm以下であり、さらに好ましい範囲は50nm以下である。また、太さ1μm以下(より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは50nm以下)の有機繊維の体積は、有機繊維の層23を形成している繊維全体の体積の80%以上を占めることがより好ましい。こうした状態は、有機繊維の層23のSEM観察によって確認することができる。太さ40nm以下の有機繊維が、有機繊維の層23を形成している繊維全体の体積の40%以上を占めることがより好ましい。有機繊維の径が小さいことは、リチウムイオンの移動を妨害する影響が小さいことになる。」
「【0045】実施形態に係る、有機繊維の層を含むセパレータは、有機繊維同士が交差した複数の接点を持ち、連続気孔又は独立気孔を有することが望ましい。接点を構成する有機繊維同士が結合されていないため、セパレータに引張り応力が加わると、有機繊維が交差している形態が変化して接点がほぐれる。その結果、有機繊維が引張応力が加わった方向に揃う。つまり、セパレータに引張り応力が加わると、セパレータの内部構造が変化して応力を緩和するため、実施形態のセパレータは、引張り応力に対する破断強度が高く、延性に優れている。セパレータに引張応力が加わった際のメカニズムを図14に示す。図14では、左側から時系列順に状態(I)、(II)、(III)が並んでいる。図14の一番左側の状態(I)に示すように、セパレータ51をAで示す方向に引っ張ると、状態(II)に示すように、有機繊維52の接点Bがほぐれる。次いで、状態(III)に示すように、大部分の有機繊維52の方向がA方向に揃う。このような一連の内部構造変化により、セパレータ51に加わる応力を緩和することができるため、セパレータ51の延性を改善することができる。その結果、セパレータの厚さを薄くした際、製造工程でのハンドリングや二次電池に振動が加わった際にセパレータが破断するのを回避することができるため、セパレータの厚さを薄くすることができる。その結果、電池体積に占めるセパレータの体積比率を小さくすることができるため、電池のエネルギー密度を向上することができる。また、正極と負極の電極間距離を短くすることができるため、電池のインピーダンスを低く抑えることができる。」
「【0065】本実施形態に係る二次電池は、積層型および捲回型のいずれであってもよい。」
(イ)上記記載から、以下のことがいえる。
a 段落【0012】の「二次電池に含まれる電極構造体における電池セル」、「電池セル24は、絶縁体22を介して設けられた正極18および負極20を含み、絶縁体22は、有機繊維の層を含む」の記載より、引用文献2には、正極および負極が有機繊維の層を介して設けられた二次電池に含まれる電極構造体における電池セルが記載されているといえる。
b 段落【0013】には、「負極集電体」「表面に負極活物質層」「を設けて構成され」る「負極」、「正極集電体」「表面に正極活物質層」「を設けて構成され」る「正極」が記載されている。
c 段落【0019】には、「セパレーターとして作用する」「有機繊維の層」が記載されている。
d 段落【0065】によれば、「二次電池」は「捲回型」である。
e 上記aないしdによれば、引用文献2には、正極集電体表面に正極活物質層を設けて構成される正極、及び負極集電体表面に負極活物質層を設けて構成される負極が、セパレーターとして作用する有機繊維の層を介して設けられた、捲回型の二次電池に含まれる電極構造体における電池セルが記載されていると言える。
f 段落【0025】には、「太さ1μm以下(より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは50nm以下)の有機繊維の体積は、有機繊維の層23を形成している繊維全体の体積の80%以上を占める」ことが記載されている。
g 段落【0045】には、「有機繊維の層を含むセパレータは」、「引張り応力に対する破断強度が高く、延性に優れ」、「セパレータの厚さを薄くすることができ」、「電池体積に占めるセパレータの体積比率を小さくすることができるため、電池のエネルギー密度を向上することができる」ことが記載されている。
(ウ)上記(イ)から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。
「正極集電体表面に正極活物質層を設けて構成される正極、及び負極集電体表面に負極活物質層を設けて構成される負極が、セパレーターとして作用する有機繊維の層を介して設けられた、捲回型の二次電池に含まれる電極構造体における電池セルにおいて、(上記e)太さ1μm以下(より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは50nm以下)の有機繊維の体積は、有機繊維の層を形成している繊維全体の体積の80%以上を占め、(上記f)有機繊維の層を含むセパレータは、引張り応力に対する破断強度が高く、延性に優れ、セパレータの厚さを薄くすることができ、電池体積に占めるセパレータの体積比率を小さくすることができるため、電池のエネルギー密度を向上することができる(上記g)」技術。
(3)引用発明との対比
ア.本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は、「正極活物質層12は、正極集電体箔11の両面にそれぞれ保持され」るとともに、「正極集電体箔11は、その端部に、正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分を有」するものであるから、引用発明の「正極集電体箔11」の正極活物質層12が保持される部分は、本件補正発明の「表面及び裏面を有する第1の集電体」に相当する。
(イ)引用発明は、「正極活物質層12は、正極集電体箔11の両面にそれぞれ保持され」るとともに、「正極集電体箔11は、その端部に、正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分を有」するものであるから、「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」は、正極集電体箔11において正極活物質層12が保持される部分から「その端部」方向に延長した部分に存在するといえる。そうすると、引用発明の「正極集電体箔11」の「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」は、正極集電体箔からその端部方向に延長した部分であり、本件補正発明の「第1の集電体から第1方向に延出した第1の集電タブ」とは、「第1の集電体から第1方向に延出した部分」である点で一致する。
ただし、第1の集電体から第1方向に延出した部分が、本件補正発明は「第1の集電タブ」であるのに対し、引用発明は「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」であるものの、集電タブであるとは特定されていない点で相違する。
(ウ)引用発明の「正極活物質層12は、正極集電体箔11の両面にそれぞれ保持され」ることは、本件補正発明の「第1の活物質含有層」が「表面及び裏面を有し、前記裏面が前記第1の集電体の前記表面及び前記裏面のうちの少なくとも一部に担持され」ることに相当する。
(エ)引用発明の「正極活物質層12」における「テーパー領域」は、「ほぼ一定の厚さを有するバルク領域から正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分へと、端部において厚さが漸次減少する」領域であって、「テーパー領域」と「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」とは隣接しているといえる。そして、上記(イ)を合わせ考慮すると、引用発明の「正極活物質層12」における「テーパー領域」の面は、本件補正発明の「第1の活物質含有層」における「第1の集電タブと隣接する第1端面」とは、第1の集電体から第1方向に延出した部分と隣接する第1端面である点で一致する。
ただし、第1の集電体から第1方向に延出した部分が、本件補正発明は「第1の集電タブ」であるのに対し、引用発明は「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」であるものの、集電タブであるとは特定されていない点で相違する。
(オ)引用発明の「正極活物質層12」は、「ほぼ一定の厚さを有するバルク領域から正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分へと、端部において厚さが漸次減少するテーパー領域が存在」する「一の側端」に対して、「ほぼ一定の厚さを有するバルク領域が切断されてなる」「他の側端」が存在する。また、両側端が向き合う方向は、上記(イ)において「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」が存在するとした方向と同じである。
そうすると、引用発明の正極活物質層12における「他の側端」の面は、本件補正発明の第1の活物質含有層における「前記第1方向において前記第1端面と向き合う第2端面」に相当する。
(カ)上記(ウ)ないし(オ)の対比によれば、引用発明の「正極活物質層12」は、本件補正発明の「表面及び裏面を有し、前記裏面が前記第1の集電体の前記表面及び前記裏面のうちの少なくとも一部に担持され、前記第1の集電タブと隣接する第1端面と前記第1方向において前記第1端面と向き合う第2端面とを含む第1の活物質含有層」とは、「表面及び裏面を有し、前記裏面が前記第1の集電体の前記表面及び前記裏面のうちの少なくとも一部に担持され、」第1の集電体から第1方向に延出した部分「と隣接する第1端面と前記第1方向において前記第1端面と向き合う第2端面とを含む第1の活物質含有層」である点で一致する。
ただし、第1の集電体から第1方向に延出した部分が、本件補正発明は「第1の集電タブ」であるのに対し、引用発明は「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」であるものの、集電タブであるとは特定されていない点で相違する。
(キ)アルミナが無機材料であることは明らかであるから、引用発明の「アルミナ含有層」は、本件補正発明の「無機材料を含む第1の膜」に相当する。
(ク)引用発明の「正極活物質層12」は「一の側端には、ほぼ一定の厚さを有するバルク領域から正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分へと、端部において厚さが漸次減少するテーパー領域が存在し、他の側端はほぼ一定の厚さを有するバルク領域が切断されてなるものであ」るから、正極活物質層12の一の側端における厚さは、他の側端における厚さよりも小さいことは明らかである。このことは、本件補正発明の「前記第1の活物質含有層の前記第1端面で規定される厚さは、前記第1の活物質含有層の前記第2端面で規定される厚さよりも小さ」いことに相当する。
(ケ)引用発明の「アルミナ含有層」は「正極活物質層表面全体を覆うように」「設け」られ、また「正極集電体箔11上に直接接して、かつ正極活物質層12に隣接して形成され、テーパー領域122に重なるように正極集電体箔11上に塗工され」ている。このことは、上記(エ)の対比を合わせ考慮すると、本件補正発明の「前記第1の膜が、少なくとも、前記第1の活物質含有層の表面全体と、前記第1の活物質含有層の前記第1端面と、前記第1の集電タブの前記表面及び前記裏面のうちの前記第1端面と隣接する部分とを被覆して」いることとは、「前記第1の膜が、少なくとも、前記第1の活物質含有層の表面全体と、前記第1の活物質含有層の前記第1端面と、」第1の集電体から第1方向に延出した部分「の前記表面及び前記裏面のうちの前記第1端面と隣接する部分とを被覆して」いる点で一致する。
ただし、第1の集電体から第1方向に延出した部分が、本件補正発明は「第1の集電タブ」であるのに対し、引用発明は「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」であるものの、集電タブであるとは特定されていない点で相違する。
(コ)引用発明の「負極活物質層22」は、「正極活物質層12に対向し」ており、本件補正発明の「前記第1の活物質含有層と対向する第2の活物質含有層」に相当する。
(サ)引用発明の「セパレータ30」は、「正極活物質層12と負極活物質層22の間に積層され」ており、「ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリイミド系、フッ素樹脂系の微孔膜や不織布」であるから、引用発明の「セパレータ30」は、正極活物質含有層と負極活物質含有層の間に配置され、有機繊維を含む膜である不織布といえ、本件補正発明の「前記第1の活物質含有層と前記第2の活物質含有層の間に配置された、有機繊維を含む第2の膜」である点で一致する。
ただし、第2の膜が、本件補正発明は「ナノファイバ層」であるのに対し、引用発明はナノファイバ層であると特定されていない点で相違する。
(シ)本件補正発明は「前記第1の膜と前記第2の膜とでセパレータを構成している」のに対し、引用発明は「セパレータ30」のほかに「アルミナ含有層」もセパレータとして機能していることは特定されていない点で一応相違する。
(ス)引用発明の「巻回型リチウムイオン二次電池の巻回積層体」は、「正極集電体箔11上に正極活物質層12を有する正極10と、負極集電体箔21上に負極活物質層12を有する負極20とがセパレータ30を介して積層巻回された」ものであって、本件補正発明の「積層体」に相当する。
イ.以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、
「表面及び裏面を有する第1の集電体と、前記第1の集電体から第1方向に延出した部分と、表面及び裏面を有し、前記裏面が前記第1の集電体の前記表面及び前記裏面のうちの少なくとも一部に担持され、第1の集電体から第1方向に延出した部分と隣接する第1端面と前記第1方向において前記第1端面と向き合う第2端面とを含む第1の活物質含有層と、無機材料を含む第1の膜とを含み、前記第1の活物質含有層の前記第1端面で規定される厚さは、前記第1の活物質含有層の前記第2端面で規定される厚さよりも小さく、前記第1の膜が、少なくとも、前記第1の活物質含有層の表面全体と、前記第1の活物質含有層の前記第1端面と、第1の集電体から第1方向に延出した部分の前記表面及び前記裏面のうちの前記第1端面と隣接する部分とを被覆しており、前記第1の活物質含有層と対向する第2の活物質含有層と、前記第1の活物質含有層と前記第2の活物質含有層の間に配置された、有機繊維を含む第2の膜とをさらに含む、積層体。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
第1の集電体から第1方向に延出した部分が、本件補正発明は「第1の集電タブ」であるのに対し、引用発明は「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」であるものの、集電タブであるとは特定されていない点。
(相違点2)
第2の膜が、本件補正発明は「ナノファイバ層」であるのに対し、引用発明はナノファイバ層であると特定されていない点。
(相違点3)
本件補正発明は「前記第1の膜と前記第2の膜とでセパレータを構成している」のに対し、引用発明は「セパレータ30」のほかに「アルミナ含有層」もセパレータとして機能していることは特定されていない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア.相違点1について
引用文献1の段落【0003】には、「活物質を有する電極であっても、電気を取り出すための集電タブを接続するために、あるいは直接集電端子に接続するために、通常その端部には、活物質が塗工されず金属製の集電体が露出する部分を有する」ことが記載されており、引用発明の「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」は、「電気を取り出すための集電タブを接続するため」又は「直接集電端子に接続するため」に用いる部分であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」を、「直接集電端子に接続するため」に用いる部分とする、すなわち当該「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」を集電タブとし、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ.相違点2について
引用発明と引用文献2に記載された技術とは、ともに正極集電体に正極活物質層を有する正極と、負極集電体に負極活物質層を有する負極とがセパレータを介して積層された巻回型の二次電池の電極構造体に関するものである点で技術分野が共通する。
また、引用発明は「巻回型リチウムイオン二次電池」に係るものであるところ、このような二次電池の技術分野において、二次電池のエネルギー密度を向上することは、二次電池の性能向上を図るための一般的な課題である。そして、引用文献2に記載された技術は「正極集電体表面に正極活物質層を設けて構成される正極、及び負極集電体表面に負極活物質層を設けて構成される負極が、セパレーターとして作用する有機繊維の層を介して設けられた、捲回型の二次電池に含まれる電極構造体における電池セルにおいて、太さ1μm以下(より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは50nm以下)の有機繊維の体積は、有機繊維の層を形成している繊維全体の体積の80%以上を占め、有機繊維の層を含むセパレータは、引張り応力に対する破断強度が高く、延性に優れ、セパレータの厚さを薄くすることができ、電池体積に占めるセパレータの体積比率を小さくすることができるため、電池のエネルギー密度を向上することができる」技術である。
そうすると、引用発明において、二次電池のエネルギー密度を向上するという一般的な課題に対応するために引用文献2に記載された技術を採用し、セパレータを平均直径1μm以下(より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは50nm以下)の有機繊維を繊維全体の80%以上占める有機繊維の層により形成することは当業者が容易になし得たことである。
そして、本願明細書の段落【0057】~【0058】には、「平均直径1μm以下(より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは50nm以下)の有機繊維」が「繊維全体の体積の80%以上を占め」る「第2の膜」が記載されていることを考慮すれば、引用文献2に記載された技術における、「太さ1μm以下(より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは50nm以下)の有機繊維」が「繊維全体の体積の80%以上を占め」る「有機繊維の層」は、ナノファイバ層といえる。
したがって、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ.相違点3について
引用発明では、「正極活物質層表面全体を覆うようにアルミナ含有層を設け」ているから、「アルミナ含有層」は正極と負極の間に配置されている。
また、引用発明の「アルミナ含有層」は「電池内に導電性微粒子等が混入し、セパレータを突き破った場合にも、正極と負極との短絡による異常な発熱を防止することができ」るものであり、正極と負極が接触することや、短絡により異常に発熱することを防ぐ機能を有しているものであり、セパレータとして機能しているといい得るものである。
そうすると、引用発明において、「セパレータ30」と「アルミナ含有層」とは二次電池におけるセパレータを構成していると言うことができる。
したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。
エ.そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ.したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
カ.請求人の主張について
(ア)請求人は、審判請求書の「(D)本願発明と引用文献との対比」において、引用文献1の段落【0068】、【0046】、【0052】の記載及び全図(図1~図10)の記載について指摘し、「引用文献1の記載に接した当業者は、正極ペースト層のバルク領域121にアルミナ含有層40を被覆した場合、電池内への導電性微粒子等の混入という限定された状況に対応して異常発熱の防止という効果が得られる可能性を認識しつつ、引用文献1が目的とする効果に影響を与えないか又は引用文献1が目的とする効果とは別に不利益が生じうると判断したはずです。このため、電池内への導電性微粒子等の混入を避けられる技術を有する当業者であれば、正極ペースト層のバルク領域121にアルミナ含有層40を被覆した構造を採用しなかった可能性の方が高いと考えられます。」(第8ページ)と主張している。
しかしながら、段落【0068】には、アルミナ含有層が正極活物質層表面全面を覆う態様が記載され、この場合に「正極活物質層を覆うようにアルミナ含有層を設けることによって、電池内に導電性微粒子等が混入し、セパレータを突き破った場合にも、正極と負極との短絡による異常な発熱を防止することができる」との効果も記載されている。一方で、引用文献1の段落【0046】、【0052】は、アルミナペーストをテーパー領域に対して部分的に被覆する態様、又はアルミナ含有層がテーパー領域に対して部分的に重なる態様について記載したものである。
そうすると、これらの態様は採用し得るか否かというものではなく、いずれも実施の態様として引用文献1に記載されたものである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
(イ)また、請求人は、「引用文献1及び引用文献2のいずれからも、…、無機化合物を含む第1の膜及びエレクトロスピニング法によって堆積された有機繊維を含むナノファイバ層である第2の膜をセパレータとして用いた実施例1の積層体は、…、正極及び負極を捲回して電極群コイルを作製した際に、捲回数が増加しても内部短絡の発生率が低くなるという効果は示唆されません。」(第8~9ページ)と主張している。
しかしながら、本件補正発明において、ナノファイバ層がエレクトロスピニング法によって堆積されることも、正極及び負極を捲回して電極群コイルを作製することも特定されていない。そして、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであることは上述のとおりである。
また、引用文献1の段落【0012】に「アルミナ含有層は短絡防止層として機能する」こと、段落【0068】に「正極と負極との短絡による異常な発熱を防止する」ことが記載され、引用文献2の段落【0021】に「有機繊維の層23」により「電極面のあわせのズレ、および電極や集電体の切り子による短絡の発生は抑制される」ことが記載されており、アルミナ含有層及び有機繊維の層を備えることによって内部短絡の発生は抑制されることとなる。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
令和4年9月7日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明のうち請求項1に係る発明は、令和4年3月10日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、前記第2の[理由]1.(2)に記載のとおりのものであると認められる。
2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2012-074359号公報
3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。
4.対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2.で検討した本件補正発明から、「前記第1の活物質含有層と対向する第2の活物質含有層と、前記第1の活物質含有層と前記第2の活物質含有層の間に配置された、有機繊維を含む第2の膜としてのナノファイバ層とをさらに含み、前記第1の膜と前記第2の膜とでセパレータを構成している」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明と引用発明との一致点・相違点は、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおりであり、本願発明と引用発明とを対比すると両者は上記相違点1を有し、その他の点で一致する。
しかしながら、前記第2の[理由]2(4)アに記載したとおり、引用発明において、「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」を「直接集電端子に接続するため」に用いる部分とする、すなわち当該「正極活物質層12を有さず正極集電体箔11が露出する部分」を集電タブとし、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
上記のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-014012