2022-012762
チャネル病を引き起こす薬物に対するDMPC、DMPG、DMPC/DMPG、LYSOPG及びLYSOPCの防御効果
- 審判番号
- 2022-012762
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-519676外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月15日
- 審決日
- 2024年01月24日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、2018年10月19日(パリ条約による優先権主張 2017年10月19日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
同年 8月15日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年 9月 7日付け :前置報告書
第2 令和4年8月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年8月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、令和3年11月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1(下記(1)に示す。以下「補正前の請求項1」という。)を、令和4年8月15日提出の手続補正書に記載される特許請求の範囲の請求項1(下記(2)に示す。以下「補正後の請求項1」という。)のように補正する事項(以下「補正事項1」という。)を含むものである。
(1)補正前の請求項1
「【請求項1】ヒト又は動物対象において活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態の予防における使用のための液体組成物であって、前記活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効な、経口投与用に適合された量のホスファチジルグリセロールと、1又は2以上の官能剤、及び1又は2以上のチキソトロピー剤を含み、前記組成物が液体であり、前記チキソトロピー剤が、チキソトロピーマトリックスを形成し、多糖類、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム、キサンタンガム、コラーゲン、ゼラチン、エーロゲル、ポリアクリルアミド、アルキド樹脂、又はシリカ-脂質の少なくとも1つから選択される、前記組成物。」
(2)補正後の請求項1(下線部は補正箇所である。)
「【請求項1】ヒト又は動物対象において活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態の予防における使用のための液体組成物であって、前記活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効な、経口投与用に適合された量のリゾホスファチジルグリセロールと、1又は2以上の官能剤、及び1又は2以上のチキソトロピー剤を含み、前記組成物が液体であり、前記チキソトロピー剤が、チキソトロピーマトリックスを形成し、多糖類、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム、キサンタンガム、コラーゲン、ゼラチン、エーロゲル、ポリアクリルアミド、アルキド樹脂、又はシリカ-脂質の少なくとも1つから選択され、前記リゾホスファチジルグリセロールが、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つを含み、前記薬物が、アルブテロール(サルブタモール)、アルフゾシン、アマンタジン、アミオダロン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモキサピン、アンフェタミン、アナグレリド、アポモルヒネ、アルフォルモテロール、アリピプラゾール、三酸化ヒ素、アステミゾール、アタザナビル、アトモキセチン、アジスロマイシン、ベダキリン、ベプリジル、ボルテゾミブ、ボスチニブ、抱水クロラール、クロロキン、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デシプラミン、デクスメデトミジン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン(d-アンフェタミン)、ジヒドロアルテミシニン+ピペラキン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドブタミン、ドフェチリド、ドラセトロン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキセピン、ドロネダロン、ドロペリドール、エフェドリン、エピネフリン(アドレナリン)、エリブリン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェルバメート、フェンフルラミン、フィンゴリモド、フレカイニド、フルコナゾール、フルオキセチン、ホルモテロール、ホスカルネット、ホスフェニトイン、フロセミド(フルセミド)、ガランタミン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、ゲラニセトロン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、イブチリド、イロペリドン、イミプラミン(メリプラミン)、インダパミド、イソプロテレノール、イスラジピン、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ラパチニブ、レブアルブテロール(レブサルブタモール)、レボフロキサシン、レボメタジル、リスデキサンフェタミン、リチウム、メソリダジン、メタプロテレノール、メサドン、メタンフェタミン(Methamphetamine)(メタンフェタミン(methamfetamine))、メチルフェニデート、ミドドリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル/HCTZ、モキシフロキサシン、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランザピン、オンダンセトロン、オキシトシン、パリペリドン、パロキセチン、パシレオチド、パゾパニブ、ペンタミジン、パーフルトレン脂質ミクロスフェア、フェンテルミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピモジド、ポサコナゾール、プロブコール、プロカインアミド、プロメタジン、プロトリプチリン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、キニジン、硫酸キニーネ、ラノラジン、リルピビリン、リスペリドン、リトドリン、リトナビル、ロキシスロマイシン、サルメテロール、サキナビル、セルチンドール、セルトラリン、セボフルラン、シブトラミン、ソリフェナシン、ソラフェニブ、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラプレビル、テラバンシン、テリスロマイシン、テルブタリン、テルフェナジン、テトラベナジン、チオリダジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラゾドン、トリメトプリム-サルファ、トリミプラミン、バンデタニブ、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボリノスタット、又はジプラシドンから選択される、前記組成物。」
2 補正の適否
補正事項1は、補正前の請求項1に記載された「ホスファチジルグリセロール」を、補正前の請求項2に記載された「リゾホスファチジルコリン・・・又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つを含む」「リゾホスファチジルコリン」に限定するとともに、補正前の請求項1に記載された「薬物」を、補正前の請求項9に記載された「アルブテロール(サルブタモール)、アルフゾシン、アマンタジン・・・又はジプラシドンから選択される」薬物に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
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引用文献に記載された事項を示す。原文が外国語の引用文献は日本語訳で記載する。なお、当審合議体により、必要な箇所に下線を付した。
ア 引用文献1(原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された「米国特許出願公開第2015/0343063号明細書」)
(1a)「1. 1又は2以上の活性剤がヒト又は動物対象へ投与される場合に前記1又は2以上の活性剤により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を予防又は治療するための組成物であって、
前記活性剤により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効な量のリゾホスファチジル化合物を含む、前記組成物。」(請求項1)
(1b)「26. 1又は2以上の活性剤が、アルブテロール(サルブタモール)、アルフゾシン、アマンタジン、アミオダロン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモキサピン、アンフェタミン、アナグレリド、アポモルヒネ、アルフォルモテロール、アリピプラゾール、三酸化ヒ素、アステミゾール、アタザナビル、アトモキセチン、アジスロマイシン、ベダキリン、ベプリジル、ボルテゾミブ、ボスチニブ、抱水クロラール、クロロキン、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デシプラミン、デクスメデトミジン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン(d-アンフェタミン)、ジヒドロアルテミシニン及びピペラキン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドブタミン、ドフェチリド、ドラセトロン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキセピン、ドロネダロン、ドロペリドール、エフェドリン、エピネフリン(アドレナリン)、エリブリン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェルバメート、フェンフルラミン、フィンゴリモド、フレカイニド、フルコナゾール、フルオキセチン、ホルモテロール、ホスカルネット、ホスフェニトイン、フロセミド(フルセミド)、ガランタミン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、ゲラニセトロン、グリパフロキサシン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、イブチリド、イロペリドン、イミプラミン(メリプラミン)、インダパミド、イソプロテレノール、イスラジピン、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ラパチニブ、レブアルブテロール(レブサルブタモール)、レボフロキサシン、レボメタジル、リドフラジン、リスデキサンフェタミン、リチウム、メソリダジン、メタプロテレノール、メサドン、メタンフェタミン(Methamphetamine)(メタンフェタミン(methamfetamine))、メチルフェニデート、ミドドリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル/HCTZ、モキシフロキサシン、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランザピン、オンダンセトロン、オキシトシン、パリペリドン、パロキセチン、パシレオチド、パゾパニブ、ペンタミジン、パーフルトレン脂質ミクロスフェア、フェンテルミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピモジド、ポサコナゾール、プロブコール、プロカインアミド、プロメタジン、プロトリプチリン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、キニジン、硫酸キニーネ、ラノラジン、リルピビリン、リスペリドン、リトドリン、リトナビル、ロキシスロマイシン、サルメテロール、サキナビル、セルチンドール、セルトラリン、セボフルラン、シブトラミン、ソリフェナシン、ソラフェニブ、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラプレビル、テラバンシン、テリスロマイシン、テルブタリン、テルフェナジン、テロジレン、テトラベナジン、チオリダジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラゾドン、トリメトプリム-サルファ、トリミプラミン、バンデタニブ、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボリノスタット、又はジプラシドンから選択される、請求項1に記載の組成物。」(請求項26)
(1c) 「3. さらに、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、12-ミステロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(グリセリン)](DMPG)、一般式II(当審注:構造式略)のモノグリセリド、一般式III(当審注:構造式略)の遊離脂肪酸、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。」(請求項3)
「16. 組成物は、経口、経腸、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、鼻腔内、肺内投与のために適合されていることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。」(請求項16)
「23. 心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する心臓チャネル病又は状態が、心臓内の遅延整流性K+電流に関与するイオンチャネルの阻害、多形性心室性頻拍、QTc、LQT2、LQTSの延長、又はトルサード・ド・ポアンツである、請求項1に記載の組成物。」(請求項23)
「24. 心臓、アレルギー又はがん関連疾患の治療に使用される活性剤又は薬物の投与により誘導されるIKrチャネル阻害の延長又はQT延長の治療又は予防に使用される、請求項1に記載の組成物。」(請求項24)
(1d)「[0044] 上述の組成物の一態様では、リゾホスファチジル化合物は、一般式(I)を有する。
[図:0001411708000001.jpg]
[0045] ここで、
[0046] R1は、飽和または不飽和の炭素鎖である。
・・・
[0055] ここで、R1及びR2は上記に定義されたとおりであり、nは1~20、1~10又は1~6である。特定の態様では、nは1~6である。・・・
[0058] 別の態様では、リゾホスファチジル化合物は、リゾホスファチジルコリンである。別の態様では、リゾホスファチジルコリンは、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。代表的なリゾホスファチジルコリン化合物として、以下で示される化合物IF~IH(式中、R1及びnは、上記で定義されたとおりである)が挙げられる。
[図:0001411708000002.jpg]
」([0044] ~[0058])
(1e)「[0059] 特定の実施形態では、R1は、13個の炭素長の飽和炭素鎖であり、化合物は、構造IK
[図:0001411708000003.jpg]
を有する。」([0059])
(当審注:この構造IKは、リゾホスファチジルコリン(LysoPC)の一種である「1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン」である。)
(1f)「28. 1又は2以上の活性剤により引き起こされるヒト又は動物対象における1又は2以上の心臓チャネル病、心臓パターンにおける不規則性若しくは変化、IKrチャネル阻害又はQT延長を予防又は治療する方法であって、前記活性剤はヒト又は動物対象における疾患を治療するのに使用され、
前記1又は2以上の活性剤により引き起こされる心臓チャネル病、心臓パターンにおける不規則性若しくは変化、IKrチャネル阻害、又はQT延長のうちの1つを低減又は予防するのに有効な量の、経口投与用に適合されたリゾホスファチジル化合物、及び、前記疾患を治療するのに十分な有効量の前記1又は2以上の活性剤を前記ヒト又は動物対象へ投与するステップ
を含み、ここで、経口供給されるリゾホスファチジル化合物が、少なくとも1つの心臓チャネル病、心臓パターンにおける不規則性若しくは変化、IKrチャネル阻害又はQT延長を低減又は排除する、前記方法。」(請求項28)
「[0083] 1つの実施形態では、本開示の組成物は、経口投与用に適合されている。」([0083])
(1g)「[0084] ある特定の実施形態では、組成物は、下記略記、化学名及び構造を有する。
・・・
一般用語-ホスファチジルコリン
[図:0001411708000004.jpg]
一般用語-ホスファチジルグリセロール
[図:0001411708000005.jpg]
[0090] 14:0 LysoPG、14:0 LPG、14:0リゾホスファチジルグリセロール、ミリストイルリゾホスファチジルグリセロール:1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(478)(MW)
[図:0001411708000006.jpg]
」([0084]~[0090])
(当審注:上記「14:0 LysoPG」の構造式中、
[図:0001411708000007.jpg]
上記構造の中心部分の原子が炭素(C)である記載は誤記であり、正しくは、下記のように、中心部分の原子はリン(P)である。
[図:0001411708000008.jpg]
)
「[0133] 被検試料:・・・[0137] 4-14:0 LysoPC・・・[0142] 9-14:0 LysoPC+ニロチニブ(0.1μM)」([0133]~[0142])
(1h)「[0144] 試験系:hERG発現HEK293トランスフェクト細胞株。実施した試験:ホールセルパッチ-クランプ電流獲得及び分析。実験温度:35±2℃。
・・・
[0169]
・・・
[図:0001411708000009.jpg]
[0170] 図4は、トランスフェクトしたHEK293細胞由来のhERG電流密度に対するLysoPC、LysoPC+ニロチニブ及びニロチニブの効果を示すグラフである。
[図:0001411708000010.jpg]
[0171] 図5は、トランスフェクトしたHEK293細胞由来のhERG電流密度に対するLysoPG、LysoPG+ニロチニブ及びニロチニブの効果を示すグラフである。
[0172] この研究は、ニロチニブにより引き起こされる安定にトランスフェクトしたヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞において正常酸素圧条件下で発生させた迅速に活性化する遅延整流性カリウム選択電流(IKr)の阻害に対するDMPC、DMPG、DMPC/DMPG、LysoPG及びLysoPCの防御効果を定量化することを目的とした。
・・・
[0174] DMPC、DMPG、DMPC/DMPG及びLysoPG単独は、hERGテール電流密度のいかなる阻害も引き起こさなかった(n=3)。LysoPC単独は、hERGテール電流密度の16%の阻害を引き起こした(n=4)。
[0175] 0.1μMでDMSO中に配合したニロチニブ単独は、hERGテール電流の54.1%の阻害を引き起こした(n=3)。観察された阻害は、同一条件で作成されたこれまでのデータと合致して、この化合物に関する報告された阻害値に一致する。
[0176] ニロチニブは、DMPC、DMPG、DMPC/DMPC、LysoPG又はLysoPCを含有する水溶液中で配合されると(比1:9)、hERGテール電流のいかなる阻害も引き起こさなかった。
[0177] これらのデータは、ニロチニブをDMPC、DMPG、DMPC/DMPC、LysoPG及びLysoPCと同時配合することが、ニロチニブにより引き起こされるhERG阻害を防御することを示唆する。」
「[図:0001411708000011.jpg]」(図4)
(1i)「[0186] リポソーム分解産物の経口製剤は、in vivoで静脈内モキシフロキサシン誘導性QTc延長を緩和する。
[0187] 構造的に多様な抗がん薬は、ether-a-go-go遺伝子(hERG)によりコードされる心臓遅延整流性K+チャネル(IKr)を遮断して、後天性QT延長症候群(LQTS)をもたらす。重篤な心不整脈及び突然死の蓋然性は、LQTS誘導性抗がん薬を投薬した患者において増加する。このリスクは、薬物開発の障害であり、薬物は、市場から取り下げられたか、又は黒枠警告を割り当てられた。抗がん薬としてのクルクミンの開発中に、クルクミンが、IC504.9μMで、濃度依存的様式でhERGチャネルを遮断したことを、本発明者らは確認した。この効果は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)及び1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホリック-1-グリセロール)]-ナトリウム塩(DMPG)から構成される可溶化リポソーム製剤により抑止された。本明細書中で上記に示したように、この効果は、クリゾチニブ、ニロチニブ及びメタンスルホンアミド抗不整脈誘導剤E4031などの他のLQTS誘導薬を用いた場合に見られた。個々のリポソーム構成成分DMPC及びDMPG並びにそれらの分解産物は、ウサギ及びラットに静脈内投与されると、in vitroでhERGチャネルに対するニロチニブの効果を抑止した。本研究では、本発明者らは、モキシフロキサシンにより誘導されるLQTSに対する分解産物のうちの1つの経口製剤の効果を試験した。モキシフロキサシンは、気管支炎、肺炎、及び静脈洞、皮膚、又は胃の感染を含むある特定の細菌感染を治療するのに使用される抗生物質である。モキシフロキサシンは、錠剤及び静脈内注射フロキサシン静脈内注射として利用可能であり、病院向けのみである。
[0188] 方法。本発明者らは、経口LQTS誘導薬で治療されているがん患者における薬物送達を促進するために、経口用途として複合体混合物中に生成物を配合した。経口用途の前臨床評価は、機器を装着したスプラーグドーリー雄(250~300g)ラットで行った。皮膚ECGリードを使用して、T波検出を最大にした。3匹のラットのグループの動物を、少量のイソフルランで一時的に麻酔して、前処置ECGを獲得して、明確なT波を確立して、既存の不整脈素因を除外した。前処置ECGプロフィールは正常であった。
[0189] 9:1のモキシフロキサシンの比での単回用量の経口複合体を連続して5分間ボルテックスして、エマルジョンを得て、経管栄養により即座に投与した。立証されたLQTS活性を有する広域抗生物質であるモキシフロキサシンをDMSO中に配合して、2時間後、開始用量2.8mg/kgで20分かけて、静脈内に(大腿カニューレ)注入した。注入の5分前から注入の20分の間、ECGを記録した。次に、動物に20分かけて、6.1mg/kgで、続いて20分かけて20mg/kgで投薬した。正の対照群では、モキシフロキサシンを単独で注入した。ラットの第2の群では、モキシフロキサシンの最初の用量の2時間前に、複合体を経口投与した。ラットの第3の群では、モキシフロキサシンの各用量レベルの5分前に、複合体を静脈内に投与した。
[0190] 6.1mg/kg及び20mg/kgでのモキシフロキサシンは、それぞれ、30及び48msのQtc延長を引き起こした。FDAでの認容性に関する閾値は30msであり、その時点で、薬物は、黒枠警告QT延長ラベルを獲得する。20mg/kgのモキシフロキサシンは、55msの生命に関わるQT延長を引き起こす。経口複合体による前処置により、QT延長を、20mg/kgのモキシフロキサシン用量に関しては11ms未満へと著しく下げた。
[0191] これらの見解により、経口複合体をLQTS誘導薬と組み合わせることは、がん患者で使用されるモキシフロキサシン及び他のLQTS延長薬の臨床的脅威及び黒枠警告ラベルを除去し得ることがさらに実証される。
[0192] 図8は、55msの生死に関わるQT延長を引き起こす最高用量のモキシフロキサシン(20mg/kg)で(FDAでの認容性に関する閾値は30msであり、その時点で、薬物は、黒QTラベルを依然として獲得している)、本発明は、QTc延長を排除したことを示すグラフである。」([0186]~[0192])
「[図:0001411708000012.jpg]」(図8)
(1j)
「[0193] 次に、本発明者らは、ニロチニブによるhERG阻害に対する10:0 LysoPG、12:0 LysoPG、14:0 LysoPG、16:0 LysoPG、18:0 LysoPG及び14:0 EGPGの防御効果を評価した。[0194] この研究の目的は、安定にトランスフェクトしたヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293細胞)において正常酸素圧条件下で発生させた迅速に活性化する遅延整流性カリウム選択電流(IKr)に対する10:0 LysoPG、12:0 LysoPG、14:0 LysoPG、16:0 LysoPG、18:0 LysoPG及び14:0 EGPGの防御効果をin vitroで評価することである。・・・[0215] 図10は、様々なリン脂質(PL)によるIKr阻害の除去を示す。DMPC、DMPG、DMPC/DMPG、LysoPC及びLysoPGを用いて作製されたリポソームは、hERGテール電流のいかなる阻害も引き起こさなかった。0.1μMでのニロチニブ単独は、hERG電流の54%の阻害を引き起こした。DMPC、DMPG、DMPC/DMPG、LysoPC又はLysoPGと同時配合したニロチニブ(PL/Nilo比:9:1)は、hERGテール電流をもはや阻害しなかった。」([0193] ~[0215])
「[図:0001411708000013.jpg]」(図10)
イ 引用文献4(原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用された「米国特許出願公開第2012/0308643号明細書」)
(4a)「1. ヒト又は動物対象において心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を予防するための組成物であって、
β-ブロッカー、ナトリウムチャネルブロッカー、カリウム補給剤、カリウムチャネル開口薬、hERG電流増強剤、カルシウムチャネルブロッカー、輸送血管修正用薬剤、ギャップ結合連結増強剤、又はその組合せを含む1又は2以上の薬剤クラスの中から選択される1又は2以上の薬理学的活性剤、
空のリポソームであって、前記薬理学的活性剤の投与前、同時又は投与後に投与される1又は2以上のリポソーム、及び、
前記活性剤、リポソーム、あるいはその両方が溶解、分散又は懸濁される、任意の薬学的に許容される分散媒、溶媒又は賦形剤、
を含む、前記組成物。」(請求項1)
(4b)「7. 前記組成物は、非経口又は経口投与に適している、請求項1に記載の組成物。」(請求項7)
「12. ヒト又は動物対象における治療活性剤又は薬物の投与から生じる1つ又は2以上の副作用を予防又は治療するための組成物であって、治療活性剤又は薬物の投与前、同時、又は投与後に投与される、1つ以上のリポソームであって、リポソームは空のリポソーム、及び、活性剤、リポソーム、又はその両方が媒質、溶媒、又はビヒクル中に溶解、分散、又は懸濁されている任意の薬学的に許容される分散媒、溶媒、又はビヒクルを含む、組成物。」(請求項12)
(4c)「1つの態様において、組成物は、希釈剤、保存剤、潤滑剤、乳化剤、着色剤、増粘剤、香味剤、充填剤、増量剤、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、任意の薬学的に許容される添加剤を含む。」([0014]の最終文)
ウ 引用文献6(原査定の拒絶の理由で引用文献6として引用された「特開2010-275242号公報」)
(6a)「【請求項1】
脂質で形成された小胞と該小胞内に存在する内水相とを備えたリポソームを含み、当該リポソームの内水相のpHが3以下であり、かつ当該リポソームが酸性で安定な薬物を担持している、経口投与用リポソーム製剤。」
(6b)「【0029】
安定化剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、またはシュクロースのような糖類が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、尿酸、トコフェロール同族体(例えば、ビタミンE)が挙げられる。なお、トコフェロールには、α、β、γ、δの4個の異性体が存在するが本発明においてはいずれも使用できる。
添加物としては、水、生理食塩水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、PBS、生体内分解性ポリマー、無血清培地、医薬添加物として許容される界面活性剤、前述した生体内で許容し得る生理的pHの緩衝液などが挙げられる。
安定化剤、酸化防止剤、および/または添加物は、上記の中から適宜選択され、あるいはそれらを組合せて使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
上記経口投与用組成物の味や物性等は、患者に応じて調整することが好ましい。本発明の経口投与用リポソーム製剤は、それ自体で薬物の苦み等の不快な味をマスキングすることができるが、例えば乳児や小児など患者に対しては、さらに飲みやすくするために、当該経口投与用組成物に甘味料等を添加して提供することもできる。あるいは、嚥下障害のある患者に対しては、物性を調整して嚥下に適したとろみを当該経口投与用組成物に付与した上で、提供することができる。」
「【0033】本発明のリポソームの製造方法は、pH3以下である酸性溶液下で、脂質と酸性で安定な薬物とを懸濁することを含むものである。酸性溶液のpHはpH3以下、好ましくはpH2以下、より好ましくはpH1以下であり、かつpH-1以上、好ましくはpH0以上、より好ましくはpH0.1以上である。pH3以下である酸性溶液の組成は、酸性であれば種類は特に限定されず、塩酸、硫酸などが例示されるが、好ましくは塩酸を含むものである。さらに好ましくは、当該酸性溶液は、0.001 M以上、好ましくは0.01 M以上、より好ましくは0.1 M以上であり、5 M以下、好ましくは1 M以下、より好ましくは1 M以下の塩酸溶液である。」
エ 引用文献7(原査定の拒絶の理由で引用文献7として引用された「国際公開第2008/093848号」)
(7a)「[1]大豆由来のホスファチジルコリンを含有する炎症マーカー低減用組成物。
・・・
[7]さらに、ω3系不飽和脂肪酸を含有する請求項1から6のいずれかに記載する組成物。
・・・
[9]ω3系不飽和脂肪酸がホスファチジルコリンのリポソーム又はリピッドマイクロスフェアに内包されたものである請求項7又は8に記載の組成物。
[10]経口および/又は口腔用である請求項1から9のいずれかに記載の組成物。」(請求の範囲)
(7b) 「[0044] ・・・液剤は、前記摂取量を適宜調節し、一日一本を目安にして飲用することに設定すると容易に必要量服用できることとなる。・・・ホスファチジルコリン及びω3系不飽和脂肪酸は長期間空気と接触すると酸化しやすいので、飲みきりタイプの飲料、たとえばビン、缶、ペットボトル、アンプルなどにするのが好ましい。」([0044])
「[0045] 以上のようなTLR4を介したシグナル伝達を抑制し、そして、炎症マーカーを低減させるための組成物、あるいはTLR4関連疾患を予防ないし治療するための医薬組成物ないし医薬製剤は、経口用組成物および/又は口腔用組成物として利用でき、具体的には、医薬品、食品、機能性食品、口腔用外用剤とすることができる。医薬品、機能性食品として摂取する際には、通常、経口用の医薬品、機能性食品として配合できる担体を適宜添加することができる。このような担体として、・・・、ブドウ糖液、単シロップ、デンプン液、ゼラチン溶液、ゼラチン、アルギン酸、キサンタンガム、セルロース、・・・結晶セルロース、粉末セルロース、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、プルラン、デキストリン、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、キサンタンガム、・・・等の増粘剤、・・・、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、グリシルリチン等の甘味料、ミント、メントール、ステビア等の香料、などが例示される。」([0045])
(3)引用発明
上記(2)アの摘記(1a)~摘記(1f)を踏まえると、引用文献1には、図8又は図10において示された実験(摘記(1i)及び(1j))において使用されたニロチニブなどの薬剤が、心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する心臓チャネル病又は状態をもたらし、この心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する心臓チャネル病又は状態の予防又は治療に対して、LysoPCを含む経口投与用に適合された液体組成物が有効であることが記載されているといえる。
そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ニロチニブがヒト又は動物対象へ投与される場合にニロチニブにより引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するための液体組成物であって、前記活性剤により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効な量の、経口投与用に適合されたLysoPCを含み、前記組成物が液体である、前記液体組成物。」
(4)本件補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「ニロチニブ」は、本件補正発明の薬剤の選択肢に含まれるものであるから、本件補正発明の「アルブテロール(サルブタモール)、アルフゾシン、アマンタジン、アミオダロン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモキサピン、アンフェタミン、アナグレリド、アポモルヒネ、アルフォルモテロール、アリピプラゾール、三酸化ヒ素、アステミゾール、アタザナビル、アトモキセチン、アジスロマイシン、ベダキリン、ベプリジル、ボルテゾミブ、ボスチニブ、抱水クロラール、クロロキン、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デシプラミン、デクスメデトミジン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン(d-アンフェタミン)、ジヒドロアルテミシニン+ピペラキン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドブタミン、ドフェチリド、ドラセトロン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキセピン、ドロネダロン、ドロペリドール、エフェドリン、エピネフリン(アドレナリン)、エリブリン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェルバメート、フェンフルラミン、フィンゴリモド、フレカイニド、フルコナゾール、フルオキセチン、ホルモテロール、ホスカルネット、ホスフェニトイン、フロセミド(フルセミド)、ガランタミン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、ゲラニセトロン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、イブチリド、イロペリドン、イミプラミン(メリプラミン)、インダパミド、イソプロテレノール、イスラジピン、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ラパチニブ、レブアルブテロール(レブサルブタモール)、レボフロキサシン、レボメタジル、リスデキサンフェタミン、リチウム、メソリダジン、メタプロテレノール、メサドン、メタンフェタミン(Methamphetamine)(メタンフェタミン(methamfetamine))、メチルフェニデート、ミドドリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル/HCTZ、モキシフロキサシン、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランザピン、オンダンセトロン、オキシトシン、パリペリドン、パロキセチン、パシレオチド、パゾパニブ、ペンタミジン、パーフルトレン脂質ミクロスフェア、フェンテルミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピモジド、ポサコナゾール、プロブコール、プロカインアミド、プロメタジン、プロトリプチリン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、キニジン、硫酸キニーネ、ラノラジン、リルピビリン、リスペリドン、リトドリン、リトナビル、ロキシスロマイシン、サルメテロール、サキナビル、セルチンドール、セルトラリン、セボフルラン、シブトラミン、ソリフェナシン、ソラフェニブ、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラプレビル、テラバンシン、テリスロマイシン、テルブタリン、テルフェナジン、テトラベナジン、チオリダジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラゾドン、トリメトプリム-サルファ、トリミプラミン、バンデタニブ、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボリノスタット、又はジプラシドンから選択される」から選択される「活性剤又は薬物」に相当する。
イ 引用発明の「LysoPC」は、摘記(1g)の「DMPC:1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン」、「DMPG:1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホリック-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)」及び「14:0LysoPG・・・1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)」という記載を考慮すると、「LysoPG」のホスホ-rac-(1-グリセロール)(PG)部分がホスファチジルコリン(PC)である化合物、すなわち、以下の構造(摘記(1e))の1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンを意味するものと解される。
[図:0001411708000014.jpg]
そうすると、引用文献1に記載された1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは、本件補正発明の「ミリストイル-リゾホスファチジルコリン」に相当する。
したがって、引用発明の「LysoPC」は、本件補正発明のリゾホスファチジルグリセロールの選択肢に含まれるものであるから、本件補正発明の「リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つ」である「リゾホスファチジルグリセロール」に相当する。
ウ 本件補正発明における「前記活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効な、経口投与用に適合された量の」リゾホスファチジルグリセロールとは、
(i)前記活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効になるように調整された量であり、かつ、経口投与用に適合されたリゾホスファチジルグリセロールという意味、又は、
(ii)前記活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効であり、かつ、経口投与用に適合するように調整された量のリゾホスファチジルグリセロールという意味、のいずれの意味にも解されるが、上記(i)と(ii)とは、結局、「前記活性剤又は薬物により引き起こされる・・・を低減又は予防するのに有効」であるとともに「経口投与用」に適合するように調整された量のリゾホスファチジルグリセロールである点で、同義であると解される。
他方、引用発明の「前記活性剤により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効な量の、経口投与用に適合されたLysoPC」は、「・・・を低減又は予防するのに有効になるように調整された量であり、かつ、経口投与用に適合されたLysoPC」、すなわち「前記活性剤又は薬物により引き起こされる・・・を低減又は予防するのに有効」であるとともに「経口投与用」に適合するように調整された量のLysoPCという意味であると解される。
そうすると、引用発明の「前記活性剤により引き起こされる・・・を低減又は予防するのに有効な量の、経口投与用に適合された」LysoPCは、本件補正発明の「前記活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効な、経口投与用に適合された量の」リゾホスファチジルグリセロールに相当するといえる。
エ 上記ア~ウから、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「ヒト又は動物対象において活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態の予防における使用のための液体組成物であって、前記活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効な、経口投与用に適合された量のリゾホスファチジルグリセロールを含み、前記組成物が液体であり、前記リゾホスファチジルグリセロールが、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つを含み、前記薬物が、アルブテロール(サルブタモール)、アルフゾシン、アマンタジン、アミオダロン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモキサピン、アンフェタミン、アナグレリド、アポモルヒネ、アルフォルモテロール、アリピプラゾール、三酸化ヒ素、アステミゾール、アタザナビル、アトモキセチン、アジスロマイシン、ベダキリン、ベプリジル、ボルテゾミブ、ボスチニブ、抱水クロラール、クロロキン、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デシプラミン、デクスメデトミジン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン(d-アンフェタミン)、ジヒドロアルテミシニン+ピペラキン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドブタミン、ドフェチリド、ドラセトロン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキセピン、ドロネダロン、ドロペリドール、エフェドリン、エピネフリン(アドレナリン)、エリブリン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェルバメート、フェンフルラミン、フィンゴリモド、フレカイニド、フルコナゾール、フルオキセチン、ホルモテロール、ホスカルネット、ホスフェニトイン、フロセミド(フルセミド)、ガランタミン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、ゲラニセトロン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、イブチリド、イロペリドン、イミプラミン(メリプラミン)、インダパミド、イソプロテレノール、イスラジピン、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ラパチニブ、レブアルブテロール(レブサルブタモール)、レボフロキサシン、レボメタジル、リスデキサンフェタミン、リチウム、メソリダジン、メタプロテレノール、メサドン、メタンフェタミン(Methamphetamine)(メタンフェタミン(methamfetamine))、メチルフェニデート、ミドドリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル/HCTZ、モキシフロキサシン、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランザピン、オンダンセトロン、オキシトシン、パリペリドン、パロキセチン、パシレオチド、パゾパニブ、ペンタミジン、パーフルトレン脂質ミクロスフェア、フェンテルミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピモジド、ポサコナゾール、プロブコール、プロカインアミド、プロメタジン、プロトリプチリン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、キニジン、硫酸キニーネ、ラノラジン、リルピビリン、リスペリドン、リトドリン、リトナビル、ロキシスロマイシン、サルメテロール、サキナビル、セルチンドール、セルトラリン、セボフルラン、シブトラミン、ソリフェナシン、ソラフェニブ、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラプレビル、テラバンシン、テリスロマイシン、テルブタリン、テルフェナジン、テトラベナジン、チオリダジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラゾドン、トリメトプリム-サルファ、トリミプラミン、バンデタニブ、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボリノスタット、又はジプラシドンから選択される、前記組成物。」
(相違点1)本件補正発明では、「1又は2以上の官能剤」、及び、「チキソトロピーマトリックスを形成し、多糖類、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム、キサンタンガム、コラーゲン、ゼラチン、エーロゲル、ポリアクリルアミド、アルキド樹脂、又はシリカ-脂質の少なくとも1つから選択され」る「1又は2以上のチキソトロピー剤」を含むことが特定されているのに対して、引用発明では、そのような特定がなされていない点。
(5)相違点1についての判断
ア 官能剤について
本件補正発明の「官能剤」は、経口組成物の感覚的性状を有する、香味料、甘味料、冷却剤、色素等を意味するものである(【0013】【0014】【0018】【0019】【0022】【0027】)。
他方、引用文献4には、ヒト又は動物対象において心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を予防するための、分散媒、溶媒、またはビヒクルを含む、経口投与に適している組成物において、着色剤、香味剤等を含有させることが記載され(摘記(4a)~ (4c))、引用文献6、7には、飲用可能な経口投与用組成物に、甘味料やミント等の香料を添加することが記載されている(摘記(6a)~(6b)、摘記(7a)~(7b))。
そうすると、飲用可能な経口投与用の液体組成物に、着色剤、香味剤、甘味料、香料等の「官能剤」を必要に応じて含有させることは、本願優先日当時の周知技術であったといえる。
イ チキソトロピー剤について
本件補正発明の「チキソトロピー剤」は、本願明細書によれば、「例えば、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)又はガム(例えば、キサンタン)などの多糖類、コラーゲン、ゼラチン、エーロゲル、ポリアクリルアミド、アルキド樹脂、及びシリカ-脂質を形成する」「チキソトロピーマトリックス」である(【0013】【0018】【0019】【0022】)。
他方、医薬組成物にチキソトロピー性を付与するために、キサンタンガムなどのガム、デンプンやセルロースなどの多糖類、カルボキシメチルセルロース等を「チキソトロピー剤」として配合することは、本願優先日当時の周知技術であったものと認められる(必要であれば、特表2015-510514号公報の【0157】~【0161】、特公平6-43304号公報の3頁左欄2行~右欄1行、特表平8-503482号公報の53頁21行~63頁12行、特表2005-500363号公報の【0022】~【0026】参照。)。
ウ そうすると、引用発明の経口投与用の液体組成物を調製する際に、上記ア及びイの周知技術を適用し、引用発明の経口投与用の液体組成物に、甘味料、香味剤、着色剤等の「官能剤」及び「チキソトロピーマトリックスを形成」する「多糖類、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム、キサンタンガム、コラーゲン、ゼラチン、エーロゲル、ポリアクリルアミド、アルキド樹脂、又はシリカ-脂質の少なくとも1つから選択される」「チキソトロピー剤」を配合することは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
したがって、引用発明を、相違点1に係る構成を備えたものとすることは、引用発明、引用文献1、引用文献4、引用文献6及び引用文献7に記載された事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たといえる。
(6)効果について
ア 本件明細書の記載
本件明細書には以下の記載がある。
(ア)
「【0054】試験系:hERG発現HEK293トランスフェクト細胞株。実施した試験:ホールセルパッチ-クランプ電流獲得及び分析。実験温度:35±2℃。・・・【0073】続きを表示(全16行)【表4】[図:0001411708000015.jpg]【0074】図4は、トランスフェクトしたHEK293細胞由来のhERG電流密度に対するLysoPC、LysoPC+ニロチニブ及びニロチニブの効果を示すグラフである。・・・【0077】この研究は、ニロチニブにより引き起こされる安定にトランスフェクトしたヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞において正常酸素圧条件下で発生させた迅速に活性化する遅延整流性カリウム選択電流(IKr)の阻害に対するDMPC、DMPG、DMPC/DMPG、LysoPG及びLysoPCの防御効果を定量化することを目的とした。・・・【0081】ニロチニブは、DMPC、DMPG、DMPC/DMPG、LysoPG又はLysoPCを含有する水溶液中で配合されると(比1:9)、hERGテール電流のいかなる阻害も引き起こさなかった。【0082】これらのデータは、ニロチニブをDMPC、DMPG、DMPC/DMPC、LysoPG及びLysoPCと同時配合することが、ニロチニブにより引き起こされるhERG阻害を防御することを示唆する。」
(イ)
「[図:0001411708000016.jpg]」
(ウ)
「【0093】活性剤-空リポソーム懸濁液。ある用量の活性剤、空リポソーム(例えば、DMPG、DMPC、又はDMPG及びDMPCの両方)並びに官能剤を有して配合された懸濁液は、懸濁液中に形成され得、さらにキサンタンガム(Rhodia社)を懸濁化剤として含み得、いくつかの他の成分、例えば、顔料、香料、パラベン(例えば、メチルパラベン及びプロピルパラベン)(防腐剤)、高果糖コーンシロップ(粘度上昇剤及び甘味料)、プロピレングリコール(溶媒及び分散剤)、並びにアスコルビン酸(懸濁液のpH調節のため)を、安定な懸濁液を達成するために使用した。・・・異なる量のチキソトロピー剤(必要があれば塩)を3つの懸濁液に添加し、例えば、0.1、0.3、及び0.5重量パーセントの様々なチキソトロピー剤を有する懸濁液を得ることができる。懸濁液を混合し24時間保持して、平衡を達成することができる。」(【0093】)
イ 効果についての当審の判断
(ア)上記ア(ア)及びア(イ)によれば、本願明細書には、ニロチニブをLysoPCと同時配合することによって、ニロチニブにより引き起こされるhERG阻害を防御することができるという効果が記載されているといえる。
しかしながら、本願明細書に記載されたニロチニブにより引き起こされるhERG阻害を防御することができるという効果は、摘記(1h)に示すように、引用文献1に記載された効果にほかならないものであるから、当業者が予測し得たものであるといえる。
(イ)上記ア(ウ)によれば、本願明細書には、空リポソームと官能剤、そしてキサンタンガム、顔料、香料、パラベン、高果糖コーンシロップ、プロピレングリコール、アスコルビン酸などを使用して安定な「活性剤-空リポソーム懸濁液」を得たことが記載されている。
しかしながら、上記「活性剤-空リポソーム懸濁液」に用いられた成分が具体的に特定されていないため、上記「活性剤-空リポソーム懸濁液」が本願発明に係る組成物であるか否かが不明であるし、本件補正発明所定の「1又は2以上の官能剤」及び「1又は2以上のチキソトロピー剤」を用いたことで、当業者が予測できない効果を奏することが示されているともいえない。
したがって、本件補正発明による効果は、引用発明、引用文献1、引用文献4、引用文献6及び引用文献7に記載された事項並びに周知技術から、当業者が予測できるものであり、格別顕著なものとはいえない。
(7)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、概略、以下(i)、(ii)を主張している。
(i)本願明細書の段落0073~0076及び0079~0082の記載は、薬物がDMSOと結合していてもいなくても、配合される薬物(ニロチニブ)が特定のリゾホスファチジルグリセロールと共に用いられる場合には、薬物がリポソームによりカプセル化されている必要がなかったことを教示しているといえるから、本件補正発明は、特定のリゾホスファチジルグリセロールを含む液体組成物を用いることにより、特別な技術的効果を奏するものである(審判請求書18頁)。
(ii)上記(i)の特別な技術的効果は、驚くべき効果であり、リゾホスファチジルグリセロールが、予測(参考文献参照)に反して、消化管内で代謝されることなく、薬物に対する特別な効果に寄与するということを示しており、本件補正発明に係る効果が長時間に及ぶものであることを到底予測できることではない(審判請求書18~19頁)。
そこで、上記(i)、(ii)の主張について検討する。
[上記(i)について]
本願明細書の段落0073~0082の記載は、上記(6)イ(ア)で説示したように、引用文献1の段落0169~0177の記載(摘記(1h)参照)と同じである。
そうすると、審判請求人が本願明細書に開示されていると主張する「薬物がDMSOと結合していてもいなくても、配合される薬物(ニロチニブ)が特定のリゾホスファチジルグリセロールと共に用いられる場合には、薬物がリポソームによりカプセル化されている必要がなかった」という効果は、引用文献1にも開示されているといえるから、本件補正発明の奏する効果は、引用文献1に開示された効果であり、当業者が予測できない優れた効果であるとはいえない。
よって、上記(i)の主張は採用できない。
[上記(ii)について]
本件明細書の段落0073~0076及び0079~0082に示された実験データは、全てin vitroの実験データであるし、本件補正発明のホスファチジルコリン等を生体に経口投与した実験やその結果得られたデータは本件明細書に記載されていない。したがって、審判請求人の主張する「消化管内で代謝されることなく、薬物に対する特別な効果に寄与する」、「本件補正発明に係る効果が長時間に及ぶものである」という本件補正発明の効果は、本件明細書に記載されているとはいえないし、本件明細書の記載及び本願優先日当時の技術常識に照らして推認できるものでもない。
また、請求人は、本件補正発明の効果が長時間に及ぶという請求人の主張の根拠として段落0073~0076及び0079~0082の記載を示しているが、上記(6)イ(ア)で説示したように、引用文献1には、全く同じ記載がされている(摘記(1h))のであるから、仮に、本件補正発明の効果が段落0073~0076及び0079~0082の記載に示されているとしても、当業者は、引用文献1の記載から、本件補正発明の上記効果を予測できたといえる。
よって、上記(ii)の主張も採用できない。
以上のとおりであるから、審判請求人による上記(i)、(ii)の主張は、いずれも採用できない。
(8) 上記(1)~(7)に説示したとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献1、引用文献4、引用文献6及び引用文献7に記載された事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年8月15日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲に係る発明は、令和3年11月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】ヒト又は動物対象において活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態の予防における使用のための液体組成物であって、前記活性剤又は薬物により引き起こされる心臓パターンにおける不規則性又は変化に起因する1又は2以上の心臓チャネル病又は状態を低減又は予防するのに有効な、経口投与用に適合された量のホスファチジルグリセロールと、1又は2以上の官能剤、及び1又は2以上のチキソトロピー剤を含み、前記組成物が液体であり、前記チキソトロピー剤が、チキソトロピーマトリックスを形成し、多糖類、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム、キサンタンガム、コラーゲン、ゼラチン、エーロゲル、ポリアクリルアミド、アルキド樹脂、又はシリカ-脂質の少なくとも1つから選択される、前記組成物。」
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は、令和4年4月11日付け拒絶査定に記載のように、本願発明は下記の引用文献1~7に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、という理由1(進歩性)を含むものである。
引用文献1.米国特許出願公開第2015/0343063号明細書
引用文献2. Anticancer Research,2014年,Vol.34,p.4733-4740
引用文献3. 新・薬剤学総論,株式会社南山堂,1987年,改訂第3版,p.414-416(周知技術を示す文献)
引用文献4. 米国特許出願公開第2012/0308643号明細書(周知技術を示す文献)
引用文献5. 特開2012-140395号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6. 特開2010-275242号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7. 国際公開第2008/093848号(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、4、6及び7、並びにそれぞれに記載された事項は、上記第2の3(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
上記第2の3で検討した本件補正発明は、本願発明の「活性剤又は薬物」及び「ホスファチジルグリセロール」を、上記第2の1で示した補正事項1のとおりにそれぞれ限定したものであるから、本願発明は本件補正発明を包含するものである。
したがって、本件補正発明を包含する本願発明は、上記第2の3において本件補正発明について説示したのと同様の理由により、引用発明、引用文献1、引用文献4、引用文献6及び引用文献7に記載された事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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