2022-012003
切削装置およびこれを用いたフィルム積層体の面取方法
- 審判番号
- 2022-012003
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-545512外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月03日
- 審決日
- 2024年07月10日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エルジー・ケム・リミテッド
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】渡部 崇
- 分類
- P18 .121-WZ (B23C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、2019年(平成31年)3月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年3月7日 大韓民国)を国際出願日とする出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
第2 令和6年3月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年3月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(以下「本件補正後の請求項1」という。また、下線部は、補正箇所について請求人が付したものである。)。
「【請求項1】フィルム積層体の面取工程に使用される切削装置であって、前記フィルム積層体の積層方向に平行な中心軸を有する本体および前記本体の回転に応じて前記フィルム積層体の面取を行うように、前記本体の外周面上に該本体の前記中心軸に沿って螺旋状に設けられた切削ブレードを含む切削バイトと、前記中心軸を基準に前記本体を回転させるための第1駆動部と、前記本体を移動させるための第2駆動部と、を含み、前記切削ブレードは、前記本体の前記中心軸に対して45°ないし55°の角度範囲内の所定の角度で傾くように設けられており、前記本体は、シリンダー形状を有し、前記第2駆動部は、前記本体の前記中心軸に直交すると共に前記フィルム積層体の前記積層方向に直交する方向に沿って前記本体を移動させるように設けられて、前記第2駆動部は、少なくとも一部の区間で曲線の経路に沿って前記切削バイトを移動させるように設けられた切削装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲(令和5年8月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲)の請求項1の記載は次のとおりである(以下「本件補正前の請求項1」という。)。
「【請求項1】フィルム積層体の面取工程に使用される切削装置であって、前記フィルム積層体の積層方向に平行な中心軸を有する本体および前記本体の回転に応じて前記フィルム積層体の面取を行うように、前記本体の外周面上に該本体の前記中心軸に沿って螺旋状に設けられた切削ブレードを含む切削バイトと、前記中心軸を基準に前記本体を回転させるための第1駆動部と、前記本体を移動させるための第2駆動部と、を含み、前記切削ブレードは、前記本体の前記中心軸に対して30°ないし60°の角度範囲内の所定の角度で傾くように設けられており、前記本体は、シリンダー形状を有し、前記第2駆動部は、前記本体の前記中心軸に直交すると共に前記フィルム積層体の前記積層方向に直交する方向に沿って前記本体を移動させるように設けられて、前記第2駆動部は、少なくとも一部の区間で曲線の経路に沿って前記切削バイトを移動させるように設けられた切削装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「切削ブレード」の角度について、「30°ないし60°の角度範囲内の所定の角度」と特定されていたのを、「45°ないし55°の角度範囲内の所定の角度」と限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
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ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2018-22140号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同様。)
「【0001】本発明は、異形偏光板の製造方法およびその製造装置に関する。より詳細には、凹R部および/または穴部を有する異形偏光板の製造方法およびその製造装置に関する。また本発明は、当該異形偏光板を用いた光学フィルムに関する。さらには当該異形偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。・・・【0006】続きを表示(全46行)本発明は、このような事情に照らし、特に小径の凹R部および/または穴部を有する異形偏光板の製造方法であって、加工の際に異形偏光板に生じるクラックや折れの発生や変色を抑制した異形偏光板の製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。・・・【0032】本発明の異形偏光板の製造方法は、切削面に対して横方向から刃が当接し切削する切削手段を用いて上記凹R部および/または穴部を形成する工程を含むことを特徴とする。特に偏光板の切削面に対して横方向から刃が当接する手段を用いることで、これまでは抑制困難であった、偏光板の加工の際に生じるクラックや折れの発生や変色を抑制し、特に小径の凹R部および/または穴部を有する異形偏光板の製造が可能となる。また、切削面に対して横方向から刃が当接し切削する切削手段とは、たとえば、カンナ加工(加工面に対して平行な回転軸を有する突設した刃物によって加工面を平行に削り取る加工)、エンドミル加工等を用いて行う方法があげられる。本発明の異形偏光板の製造方法において、上記切削手段がエンドミルであることが、小径凹R加工や小径穴加工をする場合に特に好ましい。また、特に穴部を有する異形偏光板の製造方法においては、上記切削手段としてエンドミルを用いる。【0033】なお、エンドミルとは、切削工具の一種で、軸方向に加工するだけ(穴あけのみ専用)のドリルとは異なり、回転軸と直交した方向にも加工が可能である。【0034】以下、図2を用いてエンドミル加工を用いた実施形態を例として説明する。凹R部および/または穴部を形成しようとする対象の偏光板に対し、この場合における刃にあたるエンドミルの刃部を回転させながら、偏光板の切削面に対して横方向から刃が当接し切削する。そしてエンドミルの刃部の回転を行うと共に加工方向に移動させながら、偏光板の切削加工を続け、所定の異形偏光板に加工する。【0035】上記エンドミルの場合、切削を行う刃部の回転は、たとえば、図2のように、切削面に対して平行となる回転軸(たとえば、さらに、回転軸が偏光板表面に対して垂直方向である)で回転させ、当該回転を連続的、段階的、または断続的に行いながら、加工方向にエンドミルによる偏光板の切削を行うことができる。この場合、エンドミルの刃部は、切削面に対して横方向から当接した状態で切削が行われる。なお、従来の刃型で打抜く打抜き加工等では、偏光板の面上部(図2における、切削面と並行となる方向、偏光板表面に対して垂直方向)から刃が当たり切断加工されることとなる。・・・【0042】なお、本発明において、切削角度とは、切削手段による加工方向と上記刃の刃面とがなす切削角度をいい、エンドミルで加工する場合の例を図3に示す。エンドミルの回転軸方向と刃とのなす角をねじれ角というが、図3のようにエンドミルの回転軸方向が加工方向と垂直方向になるように加工する場合、90°からエンドミルの刃のねじれ角を差し引いた角度が切削角度となる。・・・【0055】また、エンドミルの刃部のねじれ角が-75°~75°であることが好ましく、-65°~65°としてもよい。上記ねじれ角が上記範囲を超えてしまう場合、削りカスの排出不良になり易くなってしまう。・・・【0059】本発明において用いられる偏光板は、特に限定されず、公知の偏光板を適宜用いることができる。上記偏光板としては、たとえば、延伸成形で製造された偏光板や、塗布成形で製造された偏光板などをあげることができる。【0060】偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。【0061】偏光子に適用されるポリビニルアルコール系フィルムの材料には、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等があげられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものがあげられる。ポリビニルアルコールの重合度は、1000~10000程度、ケン化度は80~100モル%程度のものが一般に用いられる。【0062】上記ポリビニルアルコール系フィルム(未延伸フィルム)は、常法に従って、一軸延伸処理、ヨウ素染色処理が少なくとも施される。さらには、ホウ酸処理、ヨウ素イオン処理を施すことができる。また上記処理の施されたポリビニルアルコール系フィルム(延伸フィルム)は、常法に従って乾燥されて偏光子となる。【0063】本発明において用いられる偏光板は、偏光子の少なくとも片面側に接着剤を介して保護フィルムが貼り合わされたものであってもよい。保護フィルムは偏光子の片面側又は両面側に貼り合わされていてもよい。保護フィルムは、同時に他の光学的機能を有していてもよく、更に他の層が積層して形成されていてもよい。【0064】上記偏光板が、偏光子の両面に保護フィルムを有する場合、片方の面の保護フィルムと他方の面の保護フィルムは同一のものであっても、異なるものであってもよい。また、片面当たり少なくとも1層の保護フィルムを用いてもよく、2層以上の積層物を用いることもできる。・・・【0085】〔実施例、比較例〕実施例1~2、比較例1~3における加工の実施は、下記表1に示す条件および図6に示す加工形状に加工することで行った。また、日東電工社製 偏光板(NPF-CWQ1463VDUAG380-ACJ)に、日東電工社製 表面保護用フィルム(PPF-100T)を積層した積層体を被加工体として用いた。なお、図6中の単位はmmである。【表1】[図:0001416924000001.jpg]・・・【0092】また、実施例3~5、比較例4~5における加工の実施は、下記表3に示す条件および図7に示す加工形状に加工することで行った。また、日東電工社製 偏光板(APCFU4MS)に、日東電工社製 表面保護用フィルム(RP296C)を積層した積層体を被加工体として用いた。また、比較例5におけるトムソン型による加工条件は、比較例1と同様である。なお、図7中の凹部のRは3mmである。・・・【表3】[図:0001416924000002.jpg]」
図1
「[図:0001416924000003.jpg]」
図2
「[図:0001416924000004.jpg]」
図3
「[図:0001416924000005.jpg]」
図4
「[図:0001416924000006.jpg]」
図5
「[図:0001416924000007.jpg]」
(イ)引用文献1から理解できる技術的事項
上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 段落【0060】、【0063】~【0064】に記載された「偏光板」は、フィルム状のものであって、【表1】の実施例1及び【表3】の実施例4~5に示すように、70枚程度に重ねた状態でエンドミルにより加工されるから、70枚程重ねた偏光板を「フィルム積層体」ということができる。
b 段落【0032】の記載等から、引用文献1には、エンドミルを用いて、偏光板に凹R部を形成し、面取する工程が記載されているといえる。
c 図4、5の図示からみて、引用文献1のエンドミルは本体(図4の「心厚」に相当する部分)を備えるものであり、当該本体の外周面上に、本体の回転軸に沿って螺旋状に設けられた刃部が形成されていることが理解できる。
d 段落【0055】に、エンドミルの刃部のねじれ角が-75°~75°であることが好ましいとの記載がある上に、図5には、ねじれ角が大である場合について、エンドミルの刃部のねじれ角を略45°とする実施態様が記載されている。
e 段落【0035】には、図2について、エンドミルの回転軸が偏光板表面に対して垂直方向であることが記載されている。また、上記aに示すように、偏光板は70枚程度を重ねた状態で加工されるから、図2の立方体は、偏光板が70枚程度積層された状態を示すものと解される。そして、図2の立方体の上面がエンドミルの回転軸に対して垂直であるから、当該立方体の上面が偏光板表面であり、当該立方体の上下方向(エンドミルの回転軸の軸方向)が、偏光板の積層方向となることは明らかである。そして、段落【0032】~【0035】の記載及び図2、3等から、引用文献1のエンドミルは、刃部を回転させながら、偏光板の切削面に対して横方向(エンドミルの回転軸及び偏光板の積層方向に直交する方向。)から刃が当接して、凹R部を切削するものであるから(図2に凹R部は図示されていないが、段落【0034】に、図2を用いてエンドミル加工を用いた実施形態について、「凹R部および/または穴部を形成しようとする対象の偏光板に対し、この場合における刃にあたるエンドミルの刃部を回転させながら、偏光板の切削面に対して横方向から刃が当接し切削する。」と記載されているから、図2が凹R部を切削する加工を表していることは明らかである。なお、凹R部の図示については図1を参照。)、引用文献1のエンドミルの回転軸は、偏光板の積層方向に平行であり、エンドミルの本体の回転に応じて偏光板の凹R部の形成を行うものである。
さらに、引用文献1の切削手段は、エンドミルの回転軸を基準に本体を回転させるための第1駆動部と、前記本体を移動させるための第2駆動部と、を含むことは明らかであり、当該第2駆動部は、エンドミルの本体の回転軸に直交すると共に偏光板の積層方向に直交する方向に沿って当該本体を移動させるように設けられており、かつ、凹R部に沿ってエンドミルを移動させるように設けられているといえる。
(ウ)引用発明
上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「積層した偏光板の凹R部を形成し面取りする工程に使用される切削手段であって、前記積層した偏光板の積層方向に平行な回転軸を有する本体および前記本体の回転に応じて前記積層した偏光板の凹R部の形成を行うように、前記本体の外周面上に該本体の前記回転軸に沿って螺旋状に設けられた刃部を含むエンドミルと、前記回転軸を基準に前記本体を回転させるための第1駆動部と、前記本体を移動させるための第2駆動部と、を含み、前記刃部は、前記本体の前記回転軸に対して略45°で傾くように設けられており、前記第2駆動部は、前記本体の前記回転軸に直交すると共に前記積層した偏光板の前記積層方向に直交する方向に沿って前記本体を移動させるように設けられて、前記第2駆動部は、凹R部に沿って前記エンドミルを移動させるように設けられた切削手段。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載事項
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった中国特許出願公開第101104246号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「本発明が述べるローラービット3は「研削ローラー」とも呼ばれ、既存の技術ではスクレーパーに使用され、被削材の表面を平らにならすことに使用されている。そのため「ブレード」とも呼ばれる。ローラービットの一般的な構造は図5が示すように、ローラーの表面に螺旋形の切れ刃が固定されており、切れ刃の表面にまんべんなく砥粒(通常ダイヤモンドパウダー)が吹き付けられている。」(引用文献2の3ページ8~11行の記載を当審で翻訳したもの)
図5
「[図:0001416924000008.jpg]」
(イ)引用文献2に記載された技術的事項
上記図5より研削ローラーの本体が外観上シリンダー形状であることが看取できるから、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「螺旋形の切れ刃が固定された研削ローラーの本体を、外観上シリンダー形状とすること。」(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「積層した偏光板」は上記(2)ア(イ)aに示すとおり本件補正発明の「フィルム積層体」に相当し、以下同様に、「凹R部を形成し面取りする工程」は「面取工程」に、「切削手段」は「切削装置」に、「凹R部の形成」は「面取」に、「回転軸」は「中心軸」に、「刃部」は「切削ブレード」に、「エンドミル」は「切削バイト」に、「凹R部に沿って」は「少なくとも一部の区間で曲線の経路に沿って」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「略45°」は本件補正発明の「45°ないし55°の角度範囲内の所定の角度」に相当するから、引用発明の「刃部は、前記本体の前記回転軸に対して略45°で傾くように設けられ」ることは、本件補正発明の「切削ブレードは、前記本体の前記中心軸に対して45°ないし55°の角度範囲内の所定の角度で傾くように設けられ」ることに相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「フィルム積層体の面取工程に使用される切削装置であって、前記フィルム積層体の積層方向に平行な中心軸を有する本体および前記本体の回転に応じて前記フィルム積層体の面取を行うように、前記本体の外周面上に該本体の前記中心軸に沿って螺旋状に設けられた切削ブレードを含む切削バイトと、前記中心軸を基準に前記本体を回転させるための第1駆動部と、前記本体を移動させるための第2駆動部と、を含み、前記切削ブレードは、前記本体の前記中心軸に対して45°ないし55°の角度範囲内の所定の角度で傾くように設けられており、前記第2駆動部は、前記本体の前記中心軸に直交すると共に前記フィルム積層体の前記積層方向に直交する方向に沿って前記本体を移動させるように設けられて、前記第2駆動部は、少なくとも一部の区間で曲線の経路に沿って前記切削バイトを移動させるように設けられた切削装置。」
【相違点】
切削バイト(エンドミル)の本体について、本件補正発明では、「前記本体は、シリンダー形状を有」すると特定されているのに対し、引用発明では、エンドミルの本体がシリンダー形状であるか不明な点。
(4)判断
ア 以下、相違点について検討する。
エンドミルにおいて、本体上の刃部と刃部との間の溝の形状及び深さをどの程度とするかは、切削する対象物の材質や形状に応じて、適宜設計されるものであることから、引用発明において、本体上の螺旋状に設けられた刃部と刃部との溝を浅い平底とするなどして、エンドミルの本体が、外観上、シリンダー形状と見做せるようにすることは、当業者にとっての設計事項の範ちゅうにすぎない。
イ さらに、引用文献2に示されているように、螺旋形の切れ刃が固定された研削ローラーの本体を、外観上シリンダー形状とすることは公知の技術的事項(上記(2)イ(イ))であるから、螺旋状の切れ刃が設けられた回転工具により面取りを行うとの技術分野が共通する引用発明のエンドミルに当該引用文献2に記載された技術的事項を適用して、螺旋状に設けられた刃部を含むエンドミルの本体を、研削ローラーの如き外観上シリンダー形状とすることは当業者が容易になし得るともいえる。
ウ そして、引用文献1のエンドミルによる加工は、加工の際に異形偏光板に生じるクラックや折れの発生や変色を抑制した異形偏光板の製造方法およびその製造装置を提供することを目的とするものであるから(段落【0006】等を参照。)、実質的に加工時に偏光板に加えられるストレスを低減することを目的としていると認められる。さらに、引用文献1の刃部は、本体の回転軸に対して略45°で傾くように設けられるもの(上記2(2)ア(イ)d)であって、本件補正発明と同様に最大ストレスが低減されると推認できるから、本件補正発明が引用発明に比して格別顕著な作用効果を奏すると認めることはできない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、又は引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、本件補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正発明についての請求人の主張
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(1)主張の概要
引用文献2に開示のhobbing cutter3はエッジ研磨装置に用いられており、刃先の表面は切削粒子(通常はダイヤモンドダスト)で覆われている一方、引用文献1及び本願発明は「切削装置」に関するものであり、実際に曲面の面取りなどの表面加工を行うためのものであり、引用文献1に開示の発明及び本願発明と引用文献2に開示の発明とは分野が大きく異なるから、引用文献1及び引用文献2を組み合わせるのは容易ではない(令和6年3月1日付け意見書3ページ)。
(2)検討
上記(1)について検討する。
引用文献2には、ローラービット3が研削ローラーであることや、ローラービット3の表面に螺旋形の切れ刃が固定されていることが記載されているところ(上記2(2)イ(ア)を参照。)、引用発明のエンドミルと同様に、螺旋状の切れ刃が設けられた回転工具により面取りを行うものであるから、技術分野は共通であり、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することに格別の困難性は認められない。
4 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正(令和6年3月1日にされた手続補正)は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和5年8月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1(本件補正前の請求項1)に記載された事項により特定される、前記第2の1(2)に記載のとおりのものである。
2 令和5年11月30日付け拒絶理由(最後の拒絶理由通知)
令和5年11月30日付け拒絶理由(以下「先の拒絶理由」という。)は、概ね、請求項1~5に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
3 引用文献
先の拒絶理由で引用された引用文献1に記載された発明(引用発明)、及び引用文献2に記載された技術的事項については、前記第2の2(2)ア(ウ)及びイ(イ)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2で検討した本件補正発明から、「切削ブレード」の角度について、「45°ないし55°の角度範囲内の所定の角度」との構成を、「30°ないし60°の角度範囲内の所定の角度」と拡張するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記の事項についての限定を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、又は引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、又は引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-012003