特許拒絶査定不服審判
2024-013752
ヒートポンプ
- 審判番号
- 2024-013752
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-078992
- 請求日
- 2024年08月27日
- 審決日
- 2026年07月15日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人あーく事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 川口 真一
- 審判官 長馬 望
- 審判官 芝井 隆
- 分類
- P18 .121-Z (F25B) / P18 .561-Z (F25B) / P18 .572-Z (F25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 78992「ヒートポンプ」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 6月29日出願公開、特開2023- 91020〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年3月25日に出願された特願2020-53961号の一部を、令和5年5月12日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概ね、以下のとおりである。
令和6年1月22日付け:拒絶理由通知書
令和6年3月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年6月21日付け:拒絶査定
令和6年8月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年8月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
室内熱交換器と、前記室内熱交換器と接続された室外熱交換器とを備え、冷媒を循環させて冷却および加熱するヒートポンプであって、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機と接続された四方弁とを備え、
前記四方弁と前記圧縮機との間の吸入経路には、蒸発用熱交換器が設けられ、
暖房運転時における前記蒸発用熱交換器を流れる冷媒の流量は、冷媒の温度と外気温度とに基づいて決定されること
を特徴とするヒートポンプ。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の令和6年3月15日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
室内熱交換器と、前記室内熱交換器と接続された室外熱交換器とを備え、冷媒を循環させて冷却および加熱するヒートポンプであって、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機と接続された四方弁とを備え、
前記四方弁と前記圧縮機との間の吸入経路には、蒸発用熱交換器が設けられ、
前記室内熱交換器と前記室外熱交換器とを繋ぐ経路から分岐したバイパス回路が、前記四方弁と前記蒸発用熱交換器との接続経路に接続されていること
を特徴とするヒートポンプ。」
2 補正の適否
(1) 本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載されていた発明を特定するために必要な事項である「前記室内熱交換器と前記室外熱交換器とを繋ぐ経路から分岐したバイパス回路が、前記四方弁と前記蒸発用熱交換器との接続経路に接続されている」との事項を削除し、新たに、本件補正前の請求項1に記載されていなかった発明を特定するために必要な事項である「暖房運転時における前記蒸発用熱交換器を流れる冷媒の流量は、冷媒の温度と外気温度とに基づいて決定されること」との事項を付加するものである。
そうすると、請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項に記載されていた発明を特定するために必要な事項を削除するとともに、本件補正前の請求項に記載されていなかった発明を特定するために必要な事項を付加するものであるから、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。
以上のとおりであるから、本件補正の目的は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当するとは認められない。
その他、特許法第17条の2第5項各号のいずれかを目的とするものとも認められない。
(2) 新規事項の追加について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、前記1(1)のとおり補正された。
これに対し、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、「前記蒸発用熱交換器を流れる冷媒の流量」に関して、以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付与した。以下同様。)。
・「【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るヒートポンプの簡略化した冷媒回路図である。」
・「【0018】
暖房運転の場合、室内熱交換器6を介して、冷媒から室内空気に熱が移動し、冷媒は、低温・高圧の液状態にされる。その後、冷媒は、室内膨張弁12および室外膨張弁11を介して、室外熱交換器5に送られる。室内膨張弁12および室外膨張弁11は、制御装置などによって、開度が適宜制御される。」
・「【0023】
ヒートポンプ1には、暖房運転時に、室内熱交換器6から流出し、室外熱交換器5に流入する冷媒を分配して、蒸発用熱交換器8に流入させるバイパス回路61が設けられている。具体的に、バイパス回路61は、室内熱交換器6(室内膨張弁12)と室外熱交換器5(室外膨張弁11)とを繋ぐ経路(接続経路60)から分岐し、冷媒の流通方向において、蒸発用熱交換器8の上流(四方弁4と蒸発用熱交換器8との間)に接続されている。バイパス回路61には、バイパス膨張弁62(弁の一例)が設けられており、バイパス膨張弁62の開度によって、バイパス回路61を通る冷媒の流量が制御される。」
・「【0031】
ヒートポンプ1では、冷媒回路の各所に適宜センサ等が設けられていてもよく、センサからの出力に基づいて、冷媒、外気、および冷却水の温度や流量や圧力などを検出する構成とされている。また、センサ等で取得した情報に基づいて、各種弁などを制御する制御装置が設けられていてもよい。」
・「【図1】
[図:0001438738000001.jpg]
」
・「【0037】
図3は、バイパス制御を開始するかどうかを判定する開始判定の処理フローを示すフロー図である。
【0038】
本実施の形態において、バイパス制御は、暖房運転時に行われる。そのため、図3の処理フローでは、初期状態において、暖房運転中とされている。
【0039】
ステップS01では、室外機条件を満たしているかどうかが判定される。室外機条件は、室外機の稼動状況に関して設定されている。具体的に、室外膨張弁11の開度が80%以上であり、蒸発用熱交換器8の下流での冷媒過熱度が、目標温度より25℃以上高い場合に、室外機条件を満たしていると判定される。なお、冷媒過熱度とは、冷媒の飽和温度から上昇した温度差を示し、冷媒過熱度に対する目標温度は、予め設定された値とされている。また、室外機能力が80%以上である場合にも、室外機条件を満たしていると判定してもよい。室外機能力は、圧縮機2の理論冷媒吐出量(圧縮機2の排除容積×コンプレッサ回転数)の定格比に基づいて算出される。冷媒については、圧力から温度に換算することができる。上述した室外機条件を満たしている場合(ステップS01:Yes)、ステップS02に進む。一方、室外機条件を満たしていない場合(ステップS01:No)、条件を満たすまで待機する。
【0040】
ステップS02では、外気温条件を満たしているかどうかが判定される。ここでは、外気温度が所定の温度範囲であるかどうかを判定している。具体的に、外気温度が5℃以上か、外気温度が-5℃以下である場合に、外気温条件を満たしていると判定される。その結果、外気温条件を満たしている場合(ステップS02:Yes)、ステップS03に進む。一方、外気温条件を満たしていない場合(ステップS02:No)、ステップS01に戻る。
【0041】
ステップS03では、冷却水条件を満たしているかどうかが判定される。ここでは、蒸発用熱交換器8を流れる冷却水の温度が59℃以上である場合に、冷却水条件を満たしていると判定される。その結果、冷却水条件を満たしている場合(ステップS03:Yes)、ステップS04に進む。一方、冷却水条件を満たしていない場合(ステップS03:No)、ステップS01に戻る。
【0042】
ステップS04では、バイパス制御を開始させる。なお、バイパス制御における詳しい動作については、図4を参照して説明する。
【0043】
上述したように、開始判定では、ステップS01からステップS03までの3つの条件を全て満たす場合に、バイパス制御を開始させており、満たしていない条件が1つでも存在すると、開始判定をやり直す。開始判定をやり直す際には、所定の時間経過するまで待機してもよい。また、センサ等で検出するタイミングに合わせて開始判定を行ってもよく、センサ等では、所定の時間間隔で周期的に情報を取得するようにしてもよい。」
・「【図3】
[図:0001438738000002.jpg]
」
・「【0044】
図4は、バイパス制御での動作に関する処理フローを示すフロー図である。
【0045】
図4では、図3に示す開始判定の結果、バイパス制御を開始した直後を初期状態としている。
【0046】
ステップS11では、バイパス膨張弁62を初期開度にする。ここで、初期開度は、予め設定された値であって、例えば、ヒートポンプ1の機種別に、それぞれ定められていてもよい。
【0047】
ステップS12では、バイパス膨張弁62を徐々に開く。ここでは、バイパス膨張弁62の弁開度を開き方向に制御している。本実施の形態では、バイパス膨張弁62の弁開度を、60秒周期で所定量開くように制御している。
【0048】
ステップS13では、バイパス膨張弁62が上限開度になったかどうかが判定される。上限開度については、予め設定しておけばよい。その結果、バイパス膨張弁62が上限開度になった場合(ステップS13:Yes)、ステップS14に進む。一方、バイパス膨張弁62が上限開度になっていない場合(ステップS13:No)、ステップS12に戻る。
【0049】
ステップS14では、バイパス膨張弁62を室外膨張弁11に追従させる。具体的に、バイパス膨張弁62の上限開度を、室外膨張弁11の開度と同じ値に設定し、バイパス膨張弁62と室外膨張弁11とを同じ開度にする。
【0050】
バイパス制御を維持する場合は、ステップS14での動作を継続すればよい。なお、バイパス制御の最中に、開始判定を行ってもよく、室外機条件、外気温条件、および冷却水条件のうち、いずれか1つでも満たしていない場合には、バイパス制御を停止させてもよい。」
・「【図4】
[図:0001438738000003.jpg]
」
・「【0051】
室外熱交換器5の能力は、外気温度に影響されるので、それに応じて蒸発用熱交換器8に送る冷媒を制御することで、最適な熱交換を行うことができる。また、室外機条件を設定することで、必要に応じてバイパス制御を行うことができる。さらに、冷却水条件を設定することで、蒸発用熱交換器8での熱交換が充分に実施できる場合に、バイパス制御を行うことができる。」
このように、当初明細書等には、バイパス回路61に、バイパス膨張弁62(弁の一例)が設けられ、バイパス膨張弁62の開度によって、バイパス回路61を通る冷媒の流量が制御されることが記載され(【0023】)、冷媒回路の各所に適宜センサ等が設けられ、冷媒、外気、冷却水の温度、流量、圧力などを検出し、センサ等で取得した情報に基づいて、各種弁などを制御する旨の記載(【0031】)もあるが、バイパス回路61を通る冷媒の流量の制御の詳細は明らかにされてはいない。
バイパス制御を開始するかどうかを判定する開始判定の処理フローにおいて、室外機条件、外気温条件、冷却水条件を満たしている場合にバイパス制御を開始させることが記載されており(【0037】~【0043】、図3)、室外機条件として蒸発用熱交換器8の下流での冷媒過熱度が記載され、この冷媒過熱度が蒸発用熱交換器8の下流の冷媒の温度に基づいているとしても、あくまでもバイパス制御を開始するかどうかの条件であって、蒸発用熱交換器8の下流の冷媒の温度に基づいて、蒸発用熱交換器8を流れる冷媒の流量が決定されるものではない。外気温条件も同様に、バイパス制御を開始する条件であって、外気温度に基づいて、蒸発用熱交換器8を流れる冷媒の流量が決定されるものではない。
そして、実際のバイパス制御での動作では(【0042】~【0050】、図4)、冷媒の温度及び外気温度に基づいて、蒸発用熱交換器8を流れる冷媒の流量が決定されるものではない。ステップS14で、バイパス膨張弁62を室外膨張弁11に追従させる、具体的には、バイパス膨張弁62と室外膨張弁11とを同じ開度にすることが分かるにとどまる。室外熱交換器5の能力が外気温度に影響されるので、外気温度に応じて蒸発用熱交換器8に送る冷媒を制御する旨(【0051】)、室外膨張弁11の開度が制御装置などによって適宜制御される旨(【0018】)、冷媒、外気、冷却水の温度、流量、圧力などを検出し、センサ等で取得した情報に基づいて、各種弁などを制御する旨(【0031】)等の記載を踏まえても、室外膨張弁11の開度がどのような情報に基づいて決定されているかは不明で、これらの記載から、当然に、「暖房運転時における前記蒸発用熱交換器を流れる冷媒の流量は、冷媒の温度と外気温度とに基づいて決定されること」が記載されていることにならない。
以上のとおり、当初明細書等には、本件補正により追加された「暖房運転時における前記蒸発用熱交換器を流れる冷媒の流量は、冷媒の温度と外気温度とに基づいて決定されること」について記載も示唆もなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
3 まとめ
本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、また、同法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~4に係る発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、令和6年3月15日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたとおりのものであると認められるところ、そのうち請求項1の記載は前記第2・1(2)に記載のとおりである。以下、請求項1に係る発明について、「本願発明」という。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち理由2は、本願発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
(引用文献)
引用文献1:特開2009-79813号公報
引用文献4:特開昭59-195061号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開昭56-105280号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献に記載された事項及び引用発明
(1) 引用文献1
引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。
・「【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機をエンジンにより駆動する空気調和装置の熱源側ユニットにおいて、
外部から供給される熱源と前記冷媒とを熱交換させる熱源側熱交換器と、
前記エンジンの排熱と前記冷媒とを熱交換させる補助熱交換器と、
前記熱源側熱交換器を通さず前記補助熱交換器に前記冷媒を流すバイパス管と、を設け、
暖房運転時に前記熱源が低温である場合に、前記バイパス管を通して前記補助熱交換器に前記冷媒を流すよう制御を行う制御部を備えたこと、
を特徴とする熱源側ユニット。」
・「【0001】
本発明は、空気調和装置の熱源側ユニット、空気調和装置、および、この空気調和装置を含む空気調和システムに関する。」
・「【0002】
ヒートポンプ式の空気調和装置は、水や空気など様々な熱源を利用して被調和室の冷房や暖房を行う。例えば、空気を熱源として利用する空気熱交換器を備え、冷房運転時には空気熱交換器に散水することで冷媒凝縮温度を低下させる空気調和機の室外ユニットが知られている…。」
・「【0003】
ところで、ヒートポンプ式の空気調和装置において暖房運転を行わせる場合に、熱源の温度が低温である場合には、蒸発器として機能すべき熱源側熱交換器において冷媒の蒸発が不十分になる可能性がある。また、低温の熱源から冷媒が熱を奪うことで、熱源がさらに低温となるため、熱源側熱交換器における凍結や着霜等が懸念される。
そこで本発明は、空気調和装置において熱源が低温である場合も十分な暖房能力を発揮できるようにし、熱交換器における凍結等の発生を防止することを目的とする。」
・「【0004】
上記課題を解決するため、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機をエンジンにより駆動する空気調和装置の熱源側ユニットにおいて、外部から供給される熱源と前記冷媒とを熱交換させる熱源側熱交換器と、前記エンジンの排熱と前記冷媒とを熱交換させる補助熱交換器と、前記熱源側熱交換器を通さず前記補助熱交換器に前記冷媒を流すバイパス管とを設け、暖房運転時に前記熱源が低温である場合に、前記バイパス管を通して前記補助熱交換器に前記冷媒を流すよう制御を行う制御部を備えたこと、を特徴とする。
この構成によれば、冷媒を圧縮する圧縮機をエンジンにより駆動する空気調和装置の熱源側ユニットにおいて、暖房運転時に熱源が低温である場合に、冷媒を、熱源側熱交換器を通さずにバイパス管を通して補助熱交換器に流して、冷媒とエンジンの排熱とを熱交換させる。これにより、冷媒を十分に蒸発させて暖房運転を行うことが可能であり、かつ、低温の熱源から熱を奪わないので熱源側熱交換器における凍結や着霜等を防止できる。」
・「【0010】
本発明によれば、暖房運転時に熱源側ユニットの熱源が低温であっても、暖房運転を行うことができ、熱源側熱交換器における凍結や着霜等を防止できる。」
・「【0019】
図3は、空気調和装置10の構成を示す図である。この図3には、参考のため、冷却塔2を図示する。また、図3の冷媒流通経路における実線は暖房時の冷媒の流れを示し、破線は冷房時の冷媒の流れを示す。
室外機4は、冷媒を圧縮する圧縮機41と、圧縮機41を駆動するガスエンジン42とを備え、ガスエンジン42と圧縮機41とはクラッチ43を介して連結されている。
圧縮機41の吸込管および吐出管は四方弁50に連結され、四方弁50には、冷媒配管12を介して室内機7が備える室内熱交換器71の一端が接続されている。また、室内熱交換器71の他端は、冷媒配管11を介して、レシーバタンク53に接続され、レシーバタンク53は、熱源側熱交換器としての室外熱交換器51、52の一端に接続され、室外熱交換器51、52の他端は四方弁50に接続される。
【0020】
室外熱交換器51、52の両端につながる冷媒管には、室外熱交換器51、52をバイパスするバイパス管60が設けられている。バイパス管60の一端は、レシーバタンク53と室外熱交換器51とをつなぐ冷媒管上の分岐部60Aに接続され、バイパス管60の他端は、室外熱交換器52と四方弁50とをつなぐ冷媒管上の分岐部60Bに接続される。バイパス管60には弁61が配設され、分岐部60Aと室外熱交換器51との間には弁62が配設されている。このため、弁61と弁62の開度を調整することで、バイパス管60へ流れる冷媒の量と室外熱交換器51、52へ流れる冷媒の量とを調整できる。この冷媒の量の調整では、冷媒の流量の比が0:100~100:0の範囲、すなわち、冷媒の全量をバイパス管60に流す状態と、全量を室外熱交換器51、52に流す状態との間で、任意に調整できる。
【0021】
室外熱交換器51、52は直列に接続された2個の熱交換器であり、レシーバタンク53から室外熱交換器51に流入した冷媒は室外熱交換器52を通って四方弁50に流れ、室外熱交換器52に流入した冷媒は室外熱交換器51を通ってレシーバタンク53に流れる。室外熱交換器51、52は循環水供給管63に並列に接続されており、循環水供給管63から供給される循環水と、冷媒との熱交換を行わせる水熱交換器であって、例えばプレート式熱交換器として構成される。」
・「【0023】
レシーバタンク53と分岐部60Aとの間には、冷媒を減圧する膨張弁56が配設され、四方弁50と室外熱交換器51の吸込管との間には、ガス冷媒と液冷媒とを分離して液バックを防止するアキュムレータ54が接続されている。
そして、空気調和装置10の冷房運転時には、図3中に破線で示すように、圧縮機41から吐出された冷媒は四方弁50を介して室外熱交換器52に流れ、室外熱交換器51、52が凝縮器として機能することで、液冷媒となって膨張弁56を通り、冷媒配管11を介して室内熱交換器71に流れる。ここで、室内熱交換器71は蒸発器として機能し、室内熱交換器71において気化した冷媒は冷媒配管12を通って室外機4に戻り、四方弁50からアキュムレータ54を経て圧縮機41に吸い込まれる。
【0024】
一方、空気調和装置10の暖房運転時には、図3中に実線で示すように、圧縮機41から吐出された冷媒は四方弁50を介して冷媒配管12から室内熱交換器71へ流れて、室内熱交換器71で凝縮され、冷媒配管11を通って室外機4に戻る。室外機4に戻った冷媒は膨張弁56により減圧されて、室外熱交換器51、52に流れ、室外熱交換器51、52が蒸発器として機能することでガス冷媒となって、四方弁50からアキュムレータ54を経て圧縮機41に吸い込まれる。
圧縮機41の吐出管と吸込管には、それぞれ圧力センサ41A、41Bが配設されている。圧力センサ41Aは空気調和装置10の冷媒回路における高圧側の冷媒圧力を検出し、圧力センサ41Bは低圧側の冷媒圧力を検出する。これら圧力センサ41A、41Bが検出した圧力の検出値は、後述する電装ユニット40のマイコン40Aにより取得される。
【0025】
また、室外機4は、ガスエンジン42をエンジン冷却水により冷却するエンジン冷却水回路44を備えている。エンジン冷却水回路44には、エンジン冷却水をガスエンジン42に送出する冷却水ポンプ45と、循環水供給管64を流れる循環水とエンジン冷却水とを熱交換させるラジエータ48と、エンジン冷却水と冷媒とを熱交換させる補助熱交換器49と、エンジン冷却水をラジエータ48、補助熱交換器49に分配する比例三方弁46、47とを備えている。
また、エンジン冷却水回路44には、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ(図示略)が設けられている。」
・「【0027】
補助熱交換器49は、冷媒回路において圧縮機41の吸込管に戻る冷媒に、エンジン冷却水の熱を与える熱交換器である。補助熱交換器49は、室外熱交換器51、52と同様に冷媒と水とを熱交換させる水熱交換器であり、例えばプレート式熱交換器として構成される。
【0028】
エンジン冷却水回路44には、ガスエンジン42から出たエンジン冷却水を、補助熱交換器49を通るよう循環させる管路と、ラジエータ48を通るように循環させる管路と、冷却水ポンプ45に戻す管路とが設けられており、これらの管路へのエンジン冷却水の循環量を制御すべく、2つの比例三方弁46、47が配設されている。比例三方弁46、47は、一方から流入するエンジン冷却水を他の2方向に分配する弁であり、その分配比は0:100~100:0の範囲で変更可能である。」
・「【0030】
比例三方弁46は、比例三方弁47により分配されたエンジン冷却水を、ラジエータ48に向かう管路と補助熱交換器49に向かう管路とに分配する。例えば空気調和装置10が冷房運転中である場合、補助熱交換器49において冷媒に熱を与える必要はないので、比例三方弁46は、比例三方弁47から送出されたエンジン冷却水の全部をラジエータ48に分配する。また、比例三方弁46は、空気調和装置10の暖房運転時に冷媒に熱を与えるため、暖房負荷や冷媒の高圧側と低圧側との圧力差、循環水供給管63を流れる循環水の温度等に基づいて、必要量のエンジン冷却水を補助熱交換器49に分配する。」
・「【0035】
以上のように構成される空気調和装置10において、暖房運転を行う場合、マイコン40Aの制御により、上述したように圧縮機41により圧縮された冷媒が冷媒配管12を介して室内熱交換器71に流れ、室内熱交換器71において凝縮されることで、室内機7が設置された被調和室を暖房する。そして、室内熱交換器71で凝縮された冷媒は膨張弁56によって減圧されて、蒸発器として機能する室外熱交換器51、52で蒸発する。
ここで、冷却塔2から供給される循環水の温度が低いと、室外熱交換器51、52で冷媒が循環水の熱を奪うために、循環水の温度が非常に低くなり、室外機4の内部で凍結する可能性が否定できない。また、室外熱交換器51、52における冷媒の蒸発が不十分になるおそれもある。
そこでマイコン40Aは、水温センサ68により検出された循環水の水温が予め設定された設定温度(例えば、摂氏3度、或いは摂氏3~5度等)を下回っている場合には、弁61を開くとともに弁62を閉じて、冷媒をバイパス管60に流す。すなわち、室外熱交換器51、52がバイパスされ、循環水の熱が奪われなくなる。ここで、設定温度は、空気調和装置10の出荷時や設置時に設定され、或いは、リモコン装置70の操作により適宜設定され、マイコン40Aが記憶している。
【0036】
さらに、マイコン40Aは比例三方弁46、47を制御して、エンジン冷却水を補助熱交換器49に循環させる。これにより、バイパス管60を通った冷媒に、補助熱交換器49においてエンジン冷却水から熱が与えられ、冷媒が蒸発するので、液バックや、圧縮機41の吸込圧が制限値を超えて低くなる現象を防止できる。
以上の制御によって、暖房運転時に循環水が所定の温度よりも低温になった場合に、暖房運転を継続しながら、室外機4の内部における循環水の凍結を防止できる。」
・「【図3】
[図:0001438738000004.jpg]
」
・「【0040】
以上のように、本発明を適用した実施形態に係る空気調和システム1によれば、冷却塔2から循環水を各々の空気調和装置10に供給し、空気調和装置10が、冷却塔2から供給される循環水と冷媒とを熱交換させる室外熱交換器51、52を備え、さらに、ガスエンジン42のエンジン冷却水と冷媒とを熱交換させる補助熱交換器49を備えている。そして、暖房運転時に循環水が低温である場合に、マイコン40Aの制御によって、冷媒を、室外熱交換器51、52を通さずにバイパス管60を通して補助熱交換器49に流し、冷媒にガスエンジン42の排熱による熱を与えるので、冷媒を十分に蒸発させて暖房運転を行うことが可能であり、かつ、低温の循環水から熱を奪わないので室外熱交換器51、52における凍結を確実に防止できる。」
・「【0042】
さらに、室外機4は、マイコン40Aの制御によって開度調整可能な弁61および弁62を備え、これら弁61、62を、バイパス管60と室外熱交換器51、52とに冷媒を調整可能な比率で分配する比例弁として機能させるので、室外熱交換器51、52と補助熱交換器49とにおける熱交換をきめ細かく制御できる。
従って、マイコン40Aによって、暖房運転時に循環水が低温である場合に、室外熱交換器51、52において凍結や着霜等を発生させず、かつ、暖房能力への影響が最小限に留まるように制御を行うことが可能となる。」
(2) 引用発明
引用文献1に記載された空気調和装置10は、室内熱交換器71と、室内熱交換器71と接続された室外熱交換器51、52とを備え(【0019】、図3)、空気調和装置10は、ヒートポンプ式の空気調和装置であって(【0002】、【0003】)、ヒートポンプであるから冷媒を循環させて冷却及び加熱するものである。
また、空気調和装置10は、冷媒を圧縮する圧縮機41と、圧縮機41の吸込管及び吐出管に連結された四方弁50を備え(【0019】、図3)、四方弁50と圧縮機41の吸込管との間の冷媒管には、補助熱交換器49が設けられている(【0025】、【0027】、図3)。
そして、室内熱交換器71と室外熱交換器51、52とをつなぐ冷媒管から分岐したバイパス管60が、室外熱交換器51、52と四方弁50とをつなぐ冷媒管に接続されている(【0020】、図3)。
以上のとおりであるから、引用文献1の記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「室内熱交換器71と、前記室内熱交換器71と接続された室外熱交換器51、52とを備え、冷媒を循環させて冷却及び加熱するヒートポンプ式の空気調和装置10であって、
冷媒を圧縮する圧縮機41と、
前記圧縮機41と接続された四方弁50とを備え、
前記四方弁50と前記圧縮機41の吸込管との間の冷媒管には、補助熱交換器49が設けられ、
前記室内熱交換器71と前記室外熱交換器51、52とをつなぐ冷媒管から分岐したバイパス管60が、前記室外熱交換器51、52と前記四方弁50とをつなぐ冷媒管に接続されている
ヒートポンプ式の空気調和装置10。」
4 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを、その有する機能に照らして対比すると、引用発明における、「室内熱交換器71」、「前記室内熱交換器71と接続された室外熱交換器51、52」、「冷媒を循環させて冷却及び加熱するヒートポンプ式の空気調和装置10」は、それぞれ、本願発明の「室内熱交換器」、「前記室内熱交換器と接続された室外熱交換器」、「冷媒を循環させて冷却および加熱するヒートポンプ」に相当する。
また、引用発明の「冷媒を圧縮する圧縮機41」、「前記圧縮機41と接続された四方弁50」は、それぞれ、本願発明の「冷媒を圧縮する圧縮機」、「前記圧縮機に接続された四方弁」に相当する。
そして、引用発明は「前記四方弁50と前記圧縮機41の吸込管との間の冷媒管には、補助熱交換器49が設けられ」るところ、「前記四方弁50と前記圧縮機41の吸込管との間の冷媒管」は、その部位に照らして、本願発明の「前記四方弁と前記圧縮機との間の吸入経路」に相当し、「バイパス管60を通った冷媒に、補助熱交換器49においてエンジン冷却水から熱が与えられ、冷媒が蒸発する」(前記3(1)(【0036】)ことから、「補助熱交換器49」は、本願発明の「蒸発用熱交換器」に相当する。
さらに、引用発明は「前記室内熱交換器71と前記室外熱交換器51、52とをつなぐ冷媒管から分岐したバイパス管60が、前記室外熱交換器51、52と前記四方弁50とをつなぐ冷媒管に接続されている」ところ、「前記室内熱交換器71と前記室外熱交換器51、52とをつなぐ冷媒管」は、その部位に照らして、本願発明の「前記室内熱交換器と前記室外熱交換器とを繋ぐ経路」に相当し、そのような「冷媒管から分岐したバイパス管60」は、本願発明の「前記室内熱交換器と前記室外熱交換器とを繋ぐ経路から分岐したバイパス回路」に相当する。
加えて、引用発明の「バイパス管60」は、本願発明の「バイパス回路」と、「蒸発用熱交換器」の「上流に接続されている」点で共通する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。
(一致点)
「室内熱交換器と、前記室内熱交換器と接続された室外熱交換器とを備え、冷媒を循環させて冷却および加熱するヒートポンプであって、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機と接続された四方弁とを備え、
前記四方弁と前記圧縮機との間の吸入経路には、蒸発用熱交換器が設けられ、
前記室内熱交換器と前記室外熱交換器とを繋ぐ経路から分岐したバイパス回路が、前記蒸発用熱交換器の上流に接続されている
ヒートポンプ。」
(相違点)
バイパス回路が、前記蒸発用熱交換器の上流に接続されていることに関し、本願発明は、バイパス回路が「前記四方弁と前記蒸発用熱交換器との接続経路」に接続されているのに対し、引用発明は、バイパス管60が「前記室外熱交換器51、52と前記四方弁50とをつなぐ冷媒管」に接続されている点。
(2) 判断
ア 前記相違点について検討する。
低温時の室外熱交換器の能力を考慮し、四方弁と圧縮機との間の吸入経路に蒸発用機器が設けられたヒートポンプ式の空気調和装置において、室内熱交換器と室外熱交換器とを繋ぐ経路から分岐したバイパス回路を、四方弁と蒸発用機器との接続経路に接続することは、周知の技術である。
例えば、原査定において周知の技術を示す文献として例示された引用文献4には、ヒートポンプ装置に関し、立上がり性能の良好なヒートポンプ装置を提供するために、四方弁2とコンプレッサ1との間の冷媒吸入管9にPTCヒータ冷媒加熱器10(又は、ニクロム線ヒータ、蒸気加熱器等)を設けるとともに、室内熱交換器3と室外熱交換器5とを接続する配管から分岐したバイパス管11を、四方弁2と冷媒加熱器10とを接続する冷媒吸入管9に接続し、始動時低外気温でも、短時間で暖房能力が十分出せるようにしたものが記載されている(2頁左上欄下から3行~3頁左上欄16行、第2図)。
同様に例示された引用文献5には、低外気温時の暖房能力を向上させる冷媒加熱器を具備したヒートポンプ式冷凍サイクルからなる空気調和機に関し、安定した冷凍サイクルで効果的な暖房運転が早急に得られるようにするために、四方切換弁2と圧縮機1との間のもどり管に冷媒加熱器9を設けるとともに、室内熱交換器3と室外熱交換器6とを連結する回路から分岐したバイパス回路を、四方切換弁2と冷媒加熱器9とを連結するもどり管に連結し、安定した効果的な暖房運転が行えるようにしたものが記載されている(1頁左欄8行~3頁右上欄1行、第1図)。
また、当審において新たに例示する特開2005-283025号公報(なお、原査定において付記された文献である。)には、少なくとも暖房運転を行う空気調和機に関し(【0001】)、室内暖房運転時に外気温度が低いときにおいて、室外熱交換器の冷媒から外気への放熱を抑え、蒸発器として本来機能する室外熱交換器が凝縮器として機能することを抑制し、外気温度が低いときにおいても暖房能力の低下を抑制するために(【0010】)、四方弁62とコンプレッサ13との間の冷媒循環通路1に蒸発用熱交換器67を設けるとともに、室内熱交換器17と室外熱交換器14と接続する冷媒循環通路1から分岐したバイパス通路19を、四方弁62と蒸発用熱交換器67とを接続する冷媒循環通路1に接続し、外気の温度が低いときにおいて室外熱交換器14の冷媒の熱が低温の外気に奪われることが抑えられ、ひいては暖房能力の低下が確実に抑えられるようにしたものが記載されている(【0021】~【0037】、図1)。
そして、引用発明においては、暖房運転時に熱源が低温である場合にバイパス管60を通して補助熱交換器49に冷媒を流すことが重要であって、補助熱交換器49の上流側であれば、バイパス管60を適宜の部位に接続することができることは技術的に明らかである。当業者は、実際の空気調和装置10の室外機4内の具体的な構成、例えば、室外熱交換器51、52、四方弁50、補助熱交換器49、圧縮機41、冷媒管等の配置や、冷房運転、暖房運転の際の冷媒の流れる方向、圧力等を考慮し、特徴を理解した上で、最適、好適な箇所を決定し得るものであって、当業者が通常の創作能力の発揮の範囲内でなし得る事項である。
そうすると、引用発明に、周知の技術を適用し、バイパス管60を、四方弁50と補助熱交換器49とをつなぐ冷媒管に接続し、前記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができた事項である。
本願発明の奏する効果をみても、引用発明、周知の技術から当業者が予測可能な範囲内であって格別ではない。
イ これに対し、請求人は、概ね、以下のように主張している(令和6年3月15日付け意見書)。
・本願発明は、「本発明によると、冷房・暖房時ともに低圧側の吸入経路に配置されるので、冷房・暖房時での経路切換に必要な弁や配管が不要となり、信頼性向上、コスト低減が図れる。」(本願明細書【0011】)という本願発明特有の作用効果を奏する。
・引用文献4、5に記載された装置では、室内熱交換機から室外熱交換器に流入する冷媒を分配するものではない。
・これに対し、本願発明では、暖房運転時に、室内熱交換器6から流出し、室外熱交換器5に流入する冷媒を分配して、蒸発用熱交換器8に流入させるように、バイパス回路61が設けられており、これにより、室外熱交換器に過剰に冷媒が流入することを抑制している。
・引用文献4、5では、室外熱交換器に流入する冷媒を分配することについて、何ら言及されていないため、引用発明に引用文献4、5の技術を組み合わせたとしても、本願と同様の効果を得ることはできない。
・引用文献には、本願特有の発明特定事項(特に、(d)前記室内熱交換器と前記室外熱交換器とを繋ぐ経路から分岐したバイパス回路が、前記四方弁と前記蒸発用熱交換器との接続経路に接続されていること)について、記載も示唆もされていない。
しかしながら、既に述べたとおり、周知の技術を踏まえれば、引用発明において、前記相違点に係る構成とすることが、当業者にとって格別困難なこととは認められない。
引用発明においても、補助熱交換器49が、冷房・暖房時ともに低圧側の吸入経路に配置されるものであるから、この点において、本願発明が格別の作用効果を奏するものとは解されない。分岐したバイパス回路の接続された位置に関しても、その作用効果は、周知の技術の構成から当業者が容易に理解できるものであって、格別ではない。
また、本願発明は、「前記室内熱交換器と前記室外熱交換器とを繋ぐ経路から分岐したバイパス回路が、前記四方弁と前記蒸発用熱交換器との接続経路に接続されていること」というように、当該バイパス回路を設けることが特定されているのみで、必ずしも、暖房運転時に、室内熱交換器6から流出し、室外熱交換器5に流入する冷媒を分配して、蒸発用熱交換器8に流入させるように構成されているものではないから、請求人の主張は、請求項1の記載に基づくものとは認められない。
仮に、本願発明が、暖房運転時に、室内熱交換器6から流出し、室外熱交換器5に流入する冷媒を分配して、蒸発用熱交換器8に流入させ得るようなものであるとしても、引用文献1には、バイパス管60に設けられた弁61と、分岐部60Aと室外熱交換器51との間に設けられた弁62の開度を調整することで、バイパス管60へ流れる冷媒の量と室外熱交換器51、52へ流れる冷媒の量とを調整する点が記載されており(前記3(1)(【0020】、【0042】))、引用発明も、室内熱交換器71から流出し、室外熱交換器51、52に流入する冷媒を分配して、補助熱交換器49に流入させることが可能なものである。
そして、例示した引用文献4、5に記載されているものが室外熱交換器に流入する冷媒を分配するものでないとしても、構成や課題の類似性に鑑みれば、引用発明において、前記相違点に係る構成とする上での格別の事情とも解されない。
よって、請求人の主張は採用することができない。
ウ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、その余の点を検討するまでもなく、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第4 むすび
第3のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-013752