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特許拒絶査定不服審判

2022-009143

がんに対する免疫療法で使用されるペプチドおよびペプチドの組み合わせ

審判番号
2022-009143
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-548713外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月14日
審決日
2024年07月31日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C12N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-548713「がんに対する免疫療法で使用されるペプチドおよびペプチドの組み合わせ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日国際公開、WO2017/157928、令和 1年 6月13日国内公表、特表2019-515653〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続きの経緯

本願は、2017年(平成29年)3月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年3月16日、(US)アメリカ合衆国及び(GB)イギリス国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。

令和2年 3月11日 手続補正書の提出

令和3年 4月14日付け 拒絶理由通知書

同年10月19日 意見書及び手続補正書の受付

令和4年 2月 4日付け 拒絶査定

同年 6月14日 審判請求書の提出

同年 7月22日 手続補正書(方式)の受付

令和5年11月29日付け 拒絶理由通知書(当審)

令和6年 5月31日 意見書及び手続補正書の受付

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年5月31日受付の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。なお、下線は補正された箇所を示す。

「【請求項1】
MHCクラスIに結合する能力を有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、がんの診断または治療用の薬剤であり、
前記がんが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの過剰提示を示すものであって、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、薬剤。」

第3 当審拒絶理由

当審が、令和5年11月29日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、令和6年5月31日受付の手続補正書による補正前の請求項1に係る発明(以下「補正前発明」という。)に対する拒絶理由の概要は、補正前発明は、以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された事項並びに周知技術(引用文献4、周知技術文献5及び6)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献2:特表2013-511958号公報
引用文献4:国際公開第2015/063302号
周知技術文献5:Seminars in Cancer Biology、2014年、Vol.29、p.3-12
周知技術文献6:Adv.Anat.Pathol.、2014年、Vol.21、No.3、p.191-200

第4 引用文献に記載された事項及び引用発明

(1)引用文献2に記載された事項及び引用発明

当審拒絶理由において引用された、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体において付したものである。

(摘記2A)

「【請求項1】
SEQ ID NO:1、3、5、および6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたオリゴペプチド。
【請求項21】
がんの治療および/もしくは予防のためならびに/またはその術後再発の予防のための薬剤であって、薬学的に許容される担体と以下からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分とを含む薬剤:
(a)請求項1~3のいずれか一項記載の1種もしくは複数種のオリゴペプチドまたはその免疫学的活性断片;
(b)請求項1~3のいずれか一項記載の少なくとも1種のオリゴペプチドまたはその免疫学的活性断片をコードする1種または複数種のポリヌクレオチド;
(c)請求項1~3のいずれか一項記載のオリゴペプチドとHLA抗原との複合体をその表面上に提示する1種または複数種の抗原提示細胞;および
(d)細胞表面上の請求項1~3のいずれか一項記載のオリゴペプチドとHLA抗原との複合体と結合することができる、1種または複数種のCTL。
【請求項23】
HLA-A2陽性である対象への投与のために製剤化される、請求項21または22記載の薬剤。」(特許請求の範囲、【請求項1】、【請求項21】及び【請求項23】)

(摘記2B)

「【技術分野】
【0001】
本発明は、生物科学の分野、より具体的にはがん治療の分野に関する。特に、本発明は、がんワクチンとして極めて有効な新規オリゴペプチド、ならびに腫瘍を治療および予防するための薬物に関する。」(【0001】)

(摘記2C)

「【背景技術】
【0002】
CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子上に見いだされる腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープペプチドを認識し、続いて腫瘍細胞を死滅させることが実証されている。TAAの最初の例としてのメラノーマ抗原(MAGE)ファミリーの発見以来、他の多くのTAAが、主に免疫学的アプローチによって発見されている・・・現在までに、これらの腫瘍関連抗原由来ペプチドを用いた臨床試験がいくつか報告されている。残念ながら、これまでのところ、これらのがんワクチン治験では低い客観的奏効率しか観察されていない(・・・)。このため、免疫療法の標的として有用な新規TAAの同定の必要性は依然として存在する。
【0004】
その目的に向けて、23,040個の遺伝子を含むゲノムワイドcDNAマイクロアレイを用いる遺伝子発現プロファイル解析を通じて、IMP-3(インスリン様成長因子II mRNA結合タンパク質3)が、肺がんおよび食道がんにおいて上方制御される遺伝子として同定された(非特許文献14:T. Kikuchi et al., Oncogene. 2003 Apr 10; 22(14): 2192-205、特許文献1:WO2004/031413号、特許文献2:WO2007/013665号、特許文献3:WO2007/013671号)。IMP-3の発現は、がん患者の90%超において腫瘍細胞で特異的に上方制御されることが観察されているが、精巣および胎盤を除く他の正常な重要器官では発現されない。さらに、RNA干渉法によるIMP-3発現の下方制御により、IMP-3を発現するがん細胞株における細胞増殖が抑制されることが示されている。・・・」(【0002】~【0004】)

(摘記2D)

「【0028】
II.ペプチド
IMP-3由来のペプチドが細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識される抗原として機能することを実証するために、IMP-3(SEQID NO:22)由来のペプチドを分析して、それらが、通常見られるHLAアリルであるHLA-A2(例えばA*0201およびA*0206)によって拘束される抗原エピトープであるかどうかを判定した(・・・)。
IMP-3由来のHLA-A2結合ペプチドの候補を、HLA-A2に対するそれらの結合親和性に基づいて同定した。これらのペプチドを負荷した樹状細胞(DC)によるT細胞のインビトロでの刺激後、特にSEQ ID NO:1、3、5、および6のペプチドの各々を用いてCTLの樹立に成功した。
【0029】
これらの樹立されたCTLは、各々のペプチドでパルス刺激した標的細胞に加え、HLA-A*0201およびIMP-3を発現する細胞に対しても強い特異的CTL活性を示す。本明細書におけるこれらの結果は、IMP-3がCTLによって認識される抗原であること、およびそれらのペプチドがHLA-A2(例えば、A*0201およびA*0206)によって拘束されるIMP-3のエピトープペプチドであり得ることを実証している。
IMP-3遺伝子は肺がんおよび食道がんなどのほとんどのがん組織で過剰発現されるため、これは免疫療法の優れた標的である。」(【0028】~【0029】)

(摘記2E)

「【0077】
本発明の薬学的な剤または組成物によって治療されるがんまたは腫瘍は限定されるものではなく、例えば肺がんおよび食道がんを含めてIMP-3が関与するあらゆる種類のがんまたは腫瘍が含まれる。特に、本発明の薬学的な剤または組成物は、好ましくは膵がんに対して適用される。」(【0077】)

(摘記2F)

「【0100】
本発明との関連において、IMP-3を過剰発現するがんを、これらの有効成分によって治療することができる。そのようながんの例には、肺がんおよび食道がんが非限定的に含まれる。したがって、有効成分を含むワクチンまたは薬学的組成物の投与の前に、治療しようとするがん細胞または組織におけるIMP-3の発現レベルが同じ器官の正常細胞と比較して増大しているか否かを確かめることが好ましい。
・・・
【0102】
本発明によれば、対象から採取されたがん細胞または組織中のIMP-3の発現レベルが測定される。発現レベルは、当技術分野で公知の方法を用いて、転写産物レベルで測定することができる。例えば、IMP-3のmRNAを、ハイブリダイゼーション法(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション)によってプローブを用いて定量することができる。検出は、チップまたはアレイにおいて行うことができる。
・・・
【0105】
IMP-3遺伝子の発現レベルをその翻訳産物に基づいて検出する別の方法として、IMP-3タンパク質に対する抗体を用いる免疫組織化学的解析により、染色の強度を測定してもよい。すなわちこの測定では、強力な染色により、該タンパク質の存在/レベルの増加が示され、それと同時にIMP-3遺伝子の高発現レベルが示される。」(【0100】~【0105】)

(摘記2G)

「【0125】
結果
IMP-3由来のHLA-A2結合ペプチドの予測
表1は、IMP-3のHLA-A2(A*0201)結合ペプチドを結合親和性の高い順に示している(表1)。HLA-A2(A*0201)結合能を有する可能性のある合計20種のペプチドを選択した。
【0126】
(表1)IMP-3由来のHLA-A2(A*0201)結合ペプチド
[図:0001418404000001.jpg]
【0127】
HLA-A2トランスジェニックマウスを用いたIMP-3反応性およびHLA-A2拘束性のCTLの誘導
どのペプチドがペプチド反応性の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導し得るかを検討するために、9merペプチドによる免疫処置を2回行ったHLA-A2(A*0201)トランスジェニック(Tg)マウス由来のCD4-脾細胞を、材料および方法の項に記載した通りにインビトロで刺激した。IMP-3-552-560(SEQ ID NO:3)、IMP-3-26-34(SEQ IDNO:5)およびIMP-3-515-523(SEQID NO:6)ペプチドで刺激したCD4-脾細胞は、コグネイトペプチドでパルス刺激した同系BM-DCに対して応答してIFN-γを産生することが発見された。BM-DCのみに対するIFN-γ産生と比較して、これらのCD4-脾細胞は抗原提示細胞を認識し、IFN-γを産生した(P<0.05)(図1)。これらの結果により、IMP-3-552-560(SEQ ID NO:3)、IMP-3-26-34(SEQ IDNO:5)およびIMP-3-515-523(SEQID NO:6)ペプチドが、HLA-A2 Tgマウスにおいて強力なIFN-γ産生活性を有するCTLを誘導し得ることが示された。」(【0125】~【0127】)

(摘記2H)

「【図1】図1は、HLA-A2トランスジェニックマウスにおいて誘導されたCTLに対するIFN-γ ELISPOTアッセイの結果を図示している。ペプチド(SEQID NO:3、5および6)で刺激したCTLは、対照と比較して強いIFN-γ産生応答を示した(上のパネル)。エラーバーは標準偏差(SD)を表している。統計学的な有意差は星印によって示す(*P<0.05)。・・・」(【0015】の【図1】の説明)

(摘記2I)

「
[図:0001418404000002.jpg]
」(図1)

(摘記2J)

「【0128】
IMP-3反応性およびHLA-A2拘束性のヒトCTLの誘導
IMP-3反応性CTLを、HLA-A2(A*0201)陽性健常ドナー1のPBMCから、IMP-3-199-207(SEQID NO:1)、IMP-3-552-560(SEQ ID NO:3)、IMP-3-26-34(SEQID NO:5)およびIMP-3-515-523(SEQ ID NO:6)ペプチドによるPBMCの刺激によって生成させた。ペプチドパルス刺激したT2細胞に対するIFN-γの産生を、IFN-γ ELISPOTアッセイによって調べた。これらのCTLは、コグネイトIMP-3ペプチドでパルス刺激したT2細胞に対して、無関係なHIVペプチドパルスで刺激したT2細胞と比較して有意差を伴う(P<0.05)、強いIFN-γ産生を示した(図2)。これらの結果は、IMP-3-199-207(SEQID NO:1)、IMP-3-552-560(SEQ ID NO:3)、IMP-3-26-34(SEQID NO:5)およびIMP-3-515-523(SEQ ID NO:6)ペプチドが、これらのペプチドに対して特異的なヒトCTLを誘導することができたことを示している。さらに、IMP-3-199-207(SEQID NO:1)、IMP-3-552-560(SEQ ID NO:3)およびIMP-3-515-523(SEQID NO:6)ペプチド特異的なCTLの細胞表面上のCD107aの表出を、細胞溶解活性を調べるために分析した。・・・」(【0128】)

(摘記2K)

「【図2】図2は、健常ドナー1のヒトCTLに対するIFN-γ ELISPOTアッセイの結果を図示した一連の棒グラフで構成される。SEQ ID NO:1、3、5、および6のペプチドで刺激したヒトCTLは、無関係なHIVペプチドでパルス刺激したものと比較して、コグネイトペプチドでパルス刺激したT2細胞に対する強いIFN-γ産生応答を示した(P<0.05)。エラーバーはSDを表している。」(【0015】の【図2】の説明)

(摘記2L)

「
[図:0001418404000003.jpg]
」(図2)

(摘記2M)

「【0130】
IMP-3およびHLA-A2陽性のがん細胞株に対するCTLの細胞傷害活性
IMP-3およびHLA-A2(A*0201)の両方を発現するヒトがん細胞株を死滅させる能力を、51Cr放出アッセイによって調べた。図5Aに示されているように、IMP-3-552-560(SEQ ID NO:3)ペプチド、IMP-3-26-34(SEQ IDNO:5)ペプチド、IMP-3-515-523(SEQID NO:6)ペプチドおよびIMP-3-199-207(SEQ ID NO:1)による刺激によって健常ドナー2のPBMCから誘導されたCTLは、IMP-3およびHLA-A2(A*0201)の両方を発現するPANC-1に対する細胞傷害活性を示した。一方、それらは、HLA-A2(A*0201)を発現するがIMP-3は発現しないMCF7、またはIMP-3を発現するがHLA-A2(A*0201)は発現しないA549に対しては細胞傷害活性を示さなかった。さらに、患者14および患者4と指定された肺がん患者のPBMCから、IMP-3-552-560(SEQ ID NO:3)ペプチド、IMP-3-26-34(SEQ IDNO:5)ペプチド、IMP-3-515-523(SEQID NO:6)ペプチドを有するペプチドによる刺激によって誘導されたCTLも、PANC-1(IMP-3+、HLA-A2+)に対する細胞傷害活性を示したが、MCF7(IMP-3-、HLA-A2+)およびA549(IMP-3+、HLA-A2-)に対する細胞傷害性は示さなかった(図5B)。IMP-3-199-207(SEQID NO:1)またはIMP-3-515-523(SEQ ID NO:6)ペプチドによる刺激によって健常ドナーから生じたCTL株は、MCF7/IMP-3(IMP-3遺伝子をトランスフェクトしたMCF7細胞;HLA-A2+、IMP-3+)に対して細胞傷害性を示したが、MCF7細胞(HLA-A2+、IMP-3-)に対しては示さなかった(図5C)。IMP-3-199-207(SEQID NO:1)またはIMP-3-515-523(SEQ ID NO:6)のいずれかによる刺激によって健常ドナーから生じたCTL株は、SW620、SKHep1に対する細胞傷害活性を示したが、A549(HLA-A2-、IMP-3+)またはMCF7細胞(HLA-A2+、IMP-3-)に対しては示さなかった(図5D)。」(【0130】)

(摘記2N)

「【図5B】パート(B)は、SEQ ID NO:3および5のペプチドによる刺激によって肺がん患者14のPBMCから誘導されたCTL、ならびにSEQID NO:6のペプチドによって患者4のPBMCから誘導されたCTLの細胞傷害活性が、51Cr放出アッセイによって検出されたことを提示している。これらのCTLは、PANC-1(IMP-3+、HLA-A2+)に対する細胞傷害活性を示したが、MCF7(IMP-3-、HLA-A2+)およびA549(IMP-3+、HLA-A2-)に対する細胞傷害活性は示さなかった。」(【0015】の【図5B】の説明)

(摘記2O)

「

[図:0001418404000004.jpg]

(摘記2P)

「【0133】
結論として、IMP-3-199-207(SEQID NO:1)、IMP-3-552-560(SEQ ID NO:3)、IMP-3-26-34(SEQID NO:5)およびIMP-3-515-523(SEQ ID NO:6)ペプチドが、IMP-3に由来する新規なHLA-A2(A*0201)拘束性エピトープペプチドとして同定され、IMP-3を発現する腫瘍を有するHLA-A2(A*0201)陽性患者に対するがんワクチンとして適用可能であることが実証された。」(【0133】)

イ 引用文献2に記載された発明

引用文献2には、「がんの治療および/もしくは予防のためならびに/またはその術後再発の予防のための薬剤であって、薬学的に許容される担体と以下からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分とを含む薬剤:

(a)SEQ ID NO:3(KIQEILTQV)のアミノ酸配列からなり、単離されたオリゴペプチドまたはその免疫学的活性断片;

(b)SEQ ID NO:3(KIQEILTQV)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドまたはその免疫学的活性断片をコードする1種または複数種のポリヌクレオチド;

(c)SEQ ID NO:3(KIQEILTQV)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドとHLA抗原との複合体をその表面上に提示する1種または複数種の抗原提示細胞;および

(d)細胞表面上のSEQID NO:3(KIQEILTQV)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドとHLA抗原との複合体と結合することができる、1種または複数種のCTL。」に関し、「IMP-3(インスリン様成長因子IImRNA結合タンパク質3)」遺伝子は、「がん患者の90%超において腫瘍細胞で特異的に上方制御され」、「肺がん、食道がんなどのほとんどのがん組織において過剰発現される」が、「精巣および胎盤を除く他の正常な重要器官では発現されない」遺伝子であること(上記ア(摘記2C)及び(摘記2D))、IMP-3由来のペプチドからHLA-A2(A*0201)拘束性の細胞障害性Tリンパ球(以下「CTL」という。)を誘導し得るペプチドの一つとして同定されたIMP-3-552-560(SEQID NO:3)ペプチドは、「KIQEILTQV」のアミノ酸配列からなること(上記ア(摘記2D)、(摘記2G)~(摘記2I))が記載されている。

そしてこのペプチドが健常者及び癌患者由来のPBMC(当審合議体注:「末梢血単核細胞」の略)からCTLを誘導し、IMP-3及びHLA-A2(A*0201)の両方を発現するヒトがん細胞株を死滅させることができること(上記ア(摘記2J)~(摘記2O))が実験的な裏付けをもって記載されるとともに、「IMP-3-552-560(SEQID NO:3)ペプチドがIMP-3を発現する腫瘍を有するHLA-A2(A*0201)陽性患者に対するがんワクチンとして適用可能であることが実証されたと結論づけられている(上記ア(摘記2P))。

そうすると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「がんの治療および/もしくは予防のためならびに/またはその術後再発の予防のための薬剤であって、薬学的に許容される担体と以下からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分とを含む薬剤:
(a)SEQ ID NO:3(KIQEILTQV)のアミノ酸配列からなり、単離されたオリゴペプチドまたはその免疫学的活性断片;
(b)SEQ ID NO:3(KIQEILTQV)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドまたはその免疫学的活性断片をコードする1種または複数種のポリヌクレオチド;
(c)SEQ ID NO:3(KIQEILTQV)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドとHLA抗原との複合体をその表面上に提示する1種または複数種の抗原提示細胞;および
(d)細胞表面上のSEQ ID NO:3(KIQEILTQV)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドとHLA抗原との複合体と結合することができる、1種または複数種のCTL。」

(2)引用文献4に記載された事項

当審拒絶理由で引用された、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4には、以下の事項が記載されている。なお、引用文献4は外国語の文献であるため、図表を除き、引用文献4に対応する日本語出願の公表公報である特表2017-502076号公報の記載を翻訳文として摘記し、その段落番号も便宜上そのまま記載した。記載箇所については、引用文献4を記載する。また、下線は当審合議体によって付したものである。

(摘記4A)

「【請求項1】
配列番号1~配列番号49、配列番号71、および配列番号74~129の群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチド、および配列番号1~配列番号49、配列番号71、および配列番号74~129と少なくとも90%相同的なそれらの変異配列および薬学的に許容可能な(pharmaceutical acceptable)それらの塩であって、前記変異体がT細胞と前記変異体ペプチドとの交差反応を誘発し、前記ペプチドが完全長ポリペプチドでない、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドまたはそれらの変異体が、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を維持し、前記ペプチドにCD4および/またはCD8T細胞を刺激する能力がある、請求項1に記載のペプチドまたはそれらの変異体。
・・・
【請求項16】
がんを治療するための、またはがんに対する薬剤の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載の発現ベクター、請求項10に記載の細胞、請求項13に記載の活性化細胞傷害性Tリンパ球、または(ot)請求項15に記載の抗体の使用であって、前記薬剤が好ましくはワクチンである、使用。
【請求項17】
前記がんが、PTPRZ1、BCAN、および/またはFABP7のおよび/または配列番号1~配列番号49、配列番号71、および配列番号74~129のペプチドがそれに由来する別のタンパク質の過剰発現を示す、星細胞腫、毛様細胞性星細胞腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、乏突起膠腫、上衣細胞腫、多形性神経膠芽細胞腫、混合神経膠腫、乏突起星細胞腫、髄芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、胚細胞腫、奇形腫、神経節膠腫、神経節細胞腫、中枢神経節細胞腫、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET、例えば、髄芽細胞腫、髄上皮腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、脳室上衣芽細胞腫)、松果体実質腫瘍(例えば、松果体細胞腫、松果体芽細胞腫)、上衣細胞腫、脈絡叢腫瘍、起源不明神経上皮腫瘍(例えば、大脳神経膠腫症、星状芽細胞腫)、神経膠芽腫(、)前立腺腫瘍、乳がん、食道がん、結腸直腸がん、明細胞腎細胞がん、肺がん、CNS、卵巣、メラノーマ膵臓がん、扁平上皮がん、白血病髄芽細胞腫、結腸、直腸、胃、腎臓、肺、膵臓、前立腺、皮膚、およびその他の腫瘍から選択される、請求項16に記載の使用。」(CLAIMS)

(摘記4B)

「【0012】
続く表は、本発明によるペプチド、それらの各配列番号、およびそれらのペプチドの予期される原料タンパク質を示す。表1a、1b、および1cの全てのペプチドは、HLA A*02対立遺伝子に結合し、表1dおよび1eのペプチドはHLA-DR対立遺伝子に結合する。」(4頁1~3行)

(摘記4C)

「
[図:0001418404000005.jpg]
」(6頁表1c)

(摘記4D)

「【0043】
本発明は、記載される任意のペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、本発明による抗体、または本発明による活性化細胞傷害性Tリンパ球の、薬剤としての、または薬剤の製造における使用にさらに関する。
【0044】
本発明は、前記薬剤がワクチンである、本発明による使用にさらに関する。本発明は、薬剤ががんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
続きを表示(全22行)
【0045】
本発明は、神経膠芽腫の診断および/または予後診断で使用し得る、本発明によるペプチドベースの特定の標識タンパク質および生物マーカーにさらに関する。
・・・
【0061】
本発明のペプチドを使用して、本発明のMHC/ペプチド複合体(すなわち配列番号1~配列番号49、配列番号71、および配列番号74~129から選択される少なくとも1つの配列を含んでなる)に対する特異的抗体を作成、製造、および開発し得る。これらの抗体は、例えば腫瘍などの患部組織へ、毒素または放射性物質を標的化する治療法のために使用し得る。これらの抗体の別の用途は、PETなどのイメージング目的の放射性核種の患部組織への標的化であり得る。
・・・
【0050】
本発明は、配列番号1~配列番号49、配列番号71、および配列番号74~129から選択される配列に記載のペプチドを標的化する、特に特異的に標的化する、T細胞受容体(TCR)、特に可溶性TCR(sTCR)、および/または本発明による前記ペプチドとMHCとの複合体、およびこれらのTCRを生成する方法にさらに関する。
・・・
【0061】
本発明のペプチドを使用して、本発明のMHC/ペプチド複合体(すなわち配列番号1~配列番号49、配列番号71、および配列番号74~129から選択される少なくとも1つの配列を含んでなる)に対する特異的抗体を作成、製造、および開発し得る。これらの抗体は、例えば腫瘍などの患部組織へ、毒素または放射性物質を標的化する治療法のために使用し得る。これらの抗体の別の用途は、PETなどのイメージング目的の放射性核種の患部組織への標的化であり得る。
【0062】
したがって、HLA拘束性抗原と複合体化したヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する組換え抗体(すなわち、配列番号1~配列番号49、配列番号71、および配列番号74~129から選択される少なくとも1つの配列を含んでなる)を生成する方法を提供することが、本発明のさらなる態様であり、方法は、前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIを発現する細胞を含んでなる、遺伝子操作された非ヒト哺乳類を、前記HLA拘束性抗原と複合体化した可溶性形態のMHCクラスIまたはII分子によって免疫化するステップと;前記非ヒト哺乳類の抗体産生細胞から、mRNA分子を単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示する、ファージディスプレイライブラリーを作成するステップと;前記ファージディスプレイライブラリーから、少なくとも1つのファージを単離するステップとを含んでなり、前記少なくとも1つのファージは、前記HLA拘束性抗原と複合体化した前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、前記抗体を提示する。
・・・
【0067】
細胞性免疫応答の特定の要素は、腫瘍細胞を特異的に認識して破壊する能力がある。腫瘍浸潤性細胞集団からの、または末梢血からの細胞傷害性T細胞(CTL)の単離は、がんに対する自然免疫防御において、このような細胞が重要な役割を果たすことを示唆する。特に、細胞質ゾル内に位置するタンパク質または欠陥リボソーム産物(DRIPS)に由来する、通常は8~10のアミノ酸残基の主要組織適合性複合体(MHC)保有ペプチドのクラスI分子を認識するCD8陽性T細胞が、この応答において重要な役割を果たす。ヒトのMHC分子はまた、ヒト白血球抗原(HLA)とも称される。
【0068】
MHC分子には、2つのクラスがある:核を有するほとんどの細胞に見られる、MHCクラスI分子。MHC分子は、それぞれ、重鎖と、β-2-ミクログロブリン(MHCクラスI受容体)またはαおよびaβ鎖(MHCクラスII受容体)とから、構成される。それらの三次元立体構造は結合溝をもたらし、それはペプチドとの非共有結合相互作用のために使用される。MHCクラスIは、大部分が内在性タンパク質である、DRIPおよびより大型のペプチドのタンパク質分解的切断から得られる、ペプチドを提示する。MHCクラスII分子は、大部分はプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に見られ、エンドサイトーシス過程でAPCに取り込まれて引き続きプロセシングされる、外来性または膜貫通タンパク質のペプチドを主に提示する。ペプチドおよびMHCクラスI分子複合体が、適切なTCR(T細胞受容体)を有するCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球によって認識される一方で、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。その結果、TCR、ペプチド、およびMHCは、化学量論的に1:1:1の量で存在することが良く知られている。」(14頁6行~18頁14行)

(摘記4E)

「【0149】
インスリン様成長因子2 mRNA結合タンパク質3(IGF2BP3)
IGF2BP3は、mRNA局在化、交代、および翻訳制御に関与するとされるインスリン様成長因子II mRNA結合タンパク質ファミリーのメンバーである。タンパク質は、いくつかのKH(K相同的)ドメインを含有し、これらはRNA結合において重要であり、RNA合成および代謝に関与することが知られている。発現は、主に胚発生中に起こり、いくつかの腫瘍で記載されている。したがってIGF2BP3は、がん胎児性タンパク質であると見なされる(Liaoet al.,2005)。IGF2BP3は、IGF-IIタンパク質合成を増強することによって、およびCD44mRNAの安定化を通じて細胞接着と浸潤を誘導することによって、腫瘍細胞の増殖を促進してもよい(Findeis-Hoseyand Xu,2012)。さらにIGF2BP3発現は、多数のヒト新生物中で調査されており、それが、遊走、浸潤、細胞生存、および腫瘍転移を媒介するという証拠が上がってきており(Jenget al.,2009;Kabbarah et al.,2010;Liet al.,2011a;Liao et al.,2011;Luet al.,2011;Hwang et al.,2012;Samantaet al.,2012)それは、血管新生にもまた関与しているかもしれない(Suvasiniet al.,2011;Chen et al.,2012b)。肺腺がんにおいては、中等度分化型または低分化型腺がんで、より高頻度のIGF2BP3発現が検出され得て、それは侵襲性の生物学的挙動と関係することもある(Findeis-Hoseyet al.,2010;Beljan et al.,2012;Findeis-Hoseyand Xu,2012)。」(47頁24行~48頁7行)

(摘記4F)

「【0514】
実施例3
神経膠芽腫MHCクラスI提示ペプチドの生体外免疫原性
本発明のTUMAPの免疫原性に関する情報を得るために、本発明者らは、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体を負荷した人工抗原提示細胞(aAPC)によるCD8+T細胞の反復刺激に基づく、生体外T細胞プライミングアッセイを用いて調査を実施した。このようにして、本発明者らは、これまでに、本発明の69個のHLA-A*0201および58HLA-A*24限定TUMAPについて、免疫原性を示し得て、これらのペプチドが、それに対するCD8+前駆T細胞がヒト中に存在するT細胞エピトープであることを実証した。
続きを表示(全14行)
・・・
【0519】
神経膠芽腫ペプチドの生体外免疫原性
HLAクラスIペプチドを試験するために、ペプチド特異的T細胞系の作成によって生体外免疫原性を実証し得る。本発明の2種のペプチドの、TUMAP(当審合議体注:tumor-associated peptides(腫瘍関連ペプチド)の略)特異的多量体染色後の代表的フローサイトメトリー結果は、対応する陰性対照と共に図4に示される。本発明からの69HLA-A*0201及び58HLA-A*24ペプチドに関する結果は、表5a及びbに要約される。
【0520】
【表5a】
表5a:本発明のHLA-A*02クラスIペプチドの生体外免疫原性出願人によって実施された本発明のペプチドの生体外免疫原性実験の代表的結果。
<20%=+;20%~49%=++;50%~70%=+++;>70%=++++
[図:0001418404000006.jpg]
」(139頁29行~142頁)

(3)周知技術文献5に記載された事項

当審拒絶理由で引用された、本願優先日前に頒布された引用文献5は、「癌における癌胎児性IGF2 mRNA結合蛋白質3(IGF2BP3)の役割」と題する総説であって、以下の事項が記載されている。なお、引用文献5は外国語の文献であるため、本文については当審合議体による翻訳文を示し、表については原文のまま記載する。

(摘記5A)

「RNA結合タンパク質(RBP)、長鎖非コードRNA(lncRNA)及びmiRNAを介した遺伝子発現の転写後制御は、腫瘍細胞の運命を決定するために不可欠であり、したがって癌化における主要な決定因子である。IGF2 mRNA結合タンパク質ファミリー(IGF2BPs)は3つのRBPから構成されている。ファミリーの2つのメンバーであるIGF2BP1とIGF2BP3は、真正な癌胎児性タンパク質であり、様々なヒト癌において新規合成される。In vitroの研究から、IGF2BPは腫瘍細胞の増殖、生存、化学療法抵抗性、転移の制御に関与する遺伝子の発現を調節する転写後の微妙な調節因子として機能することが明らかになった。一貫して、IGF2BPファミリーの両メンバーの発現は、様々なヒト癌における全体的な予後不良や転移と相関することが報告されている。・・・」(3頁要約)

(摘記5B)

「

[図:0001418404000007.jpg]

(当審合議体注:表中「Brest」は「乳がん」、「cervical carcinoma」は「子宮頸部がん」、「endomeetrial carcinomas」は「子宮内膜がん」、「bile duct carcinomas」は「胆管がん」、「pancreatic ductal adenocarcinoma」は「膵管腺がん」、「Prostate cancer」は「前立腺がん」、「Oral squamous cell carcinoma」は「口腔扁平上皮がん」、「Squamous cell carcinoma」は「扁平上皮がん」、「Merkel cell carcinoma」は「メルケル細胞がん」、「papillary thyroid carcinomas」は「乳頭状甲状腺がん」、「ALL/AML」は「急性リンパ芽球性白血病/急性骨髄性白血病」、「Sarcoma」は「肉腫」である。)(7頁 表2:「ヒトがんにおけるIGF2BP発現」)

(4)周知技術文献6

当審拒絶理由で引用された、本願優先日前に頒布された引用文献6は、「癌胎児性タンパク質IMP3、新しい癌バイオマーカー」と題する総説であって、以下の事項が記載されている。なお、引用文献6は外国語の文献であるため、本文については当審合議体による翻訳文を示し、表については原文のまま記載する。

(摘記6A)

「要約: IMP3は、IMP1、IMP2、IMP3からなるRNA結合タンパク質ファミリーのメンバーである。これらのタンパク質は2つのRNA認識モチーフと4つのKホモロジードメインを持ち、RNAと強く特異的に結合する。IMP3は胚形成に関与する癌胎児性タンパク質であり、その発現は多くの悪性新生物と関連している。IMP3は侵攻性の進行がんと関連しており、悪性腫瘍では特異的に発現するが、隣接する良性組織では見られない。さらに、in vitroの研究では、IMP3が腫瘍細胞の増殖、接着、浸潤を促進することが示されている。本総説では、様々な癌におけるIMP3発現の研究に焦点を当て、日常的な外科病理診療におけるIMP3の潜在的有用性を強調する。また、がん患者の予後のバイオマーカーとしてのIMP3についても論じている。」(191頁 要約)

(摘記6B)

「
[図:0001418404000008.jpg]
(当審合議体注:表中 「Intraductal pancreatic papillary mucinous neoplasm」は「膵管内乳頭粘液性腫瘍」、「Cholangiocarcinoma」は「膵管腺がん」、「Endometrial carcinoma」は「子宮内膜がん」、「Endocervical adenocarcinoma」は「子宮頸部腺がん」、「FV-PTC」は「濾胞性異型乳頭状甲状腺がん」である。)」(195頁 表1:「異なる腫瘍におけるIMF3発現」)

(5)参考文献7

本願優先日前に頒布され、本願優先日当時における技術常識を示す、ゲノム医学、2005年、Vol.5、No.1、p.69-74(以下「参考文献7」という。)は、「HLAと癌」と題する総説であって、以下の事項が記載されている。

(摘記7A)

「癌に対する免疫応答
癌に対する生体防御機構は,時間軸の視点から,自然免疫,早期誘導免疫と適応免疫に大別される(図1).・・・局所に放出された癌抗原を未熟樹状細胞(dendritic cell;DC)が取り込み,その後局所リンパ節に移動する.未熟DCが,細胞内で断片化した癌抗原ペプチドを自己の主要組織適合抗原(major histocompatibility complex;MHC)クラスII分子とともに癌抗原特異的CD4陽性ヘルパーT細胞に抗原提示すると,活性化したCD4陽性T細胞が発現するCD40リガンドがDC上のCD40分子に結合することにより,逆にDCが活性化される.DCは,この段階になってようやく癌抗原特異的CTL前駆細胞に有効に抗原提示できるようになる3~5).CD4陽性ヘルパーT細胞から供給されるサイトカインにより癌抗原特異的CTLは増殖し,リンパ節から血流に乗って癌局所へ移動する.癌局所において再び癌細胞上のMHCクラスI分子に提示されている癌抗原ペプチドを認識し,活性化され,癌細胞を傷害する.」(69頁右欄7行~70頁中央欄4行)

(摘記7B)

「MHC分子による癌抗原由来ペプチドの提示
癌特異的CTLは,自己のMHCクラスI分子上に提示された癌抗原由来ペプチドを認識する.図2に示すように,癌細胞内に産生された内因性癌抗原は,プロテアソームにより断片化され,粗面小胞体膜に存在するTAPトランスポーターを介して粗面小胞体内に入り,MHCクラスI分子と結合後,細胞表面に提示される.」(71頁中央欄6行~右欄2行)

第4 対比・判断

(1)対比

ア 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「SEQID NO:3(KIQEILTQV)」のアミノ酸配列は、本願発明の「配列番号1に示されるアミノ酸配列」と完全に一致するものであるから、引用発明における「SEQID NO:3(KIQEILTQV)のアミノ酸配列からなり、単離されたオリゴペプチド」は、本願発明における「配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(以下「本願発明のペプチド」ともいう。)またはその薬学的に許容可能な塩」に相当する。

また、引用発明における上記ペプチドは、引用文献2に示されるとおり、HLA-A2(当審合議体注:ヒトのMHCクラスI分子に相当する。必要であれば、上記第3(2)(摘記4D)【0067】及び(摘記4F)を参照。)に結合するものであるから(上記第3(1)ア(摘記2D)及び(摘記2G))、本願発明と「MHCクラスIに結合する能力を有する」ものである点で共通する。

また、引用発明における「がんの治療および/もしくは予防のためならびに/またはその術後再発の予防のための薬剤」は、本願発明における「がんの診断または治療用の薬剤」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。

<一致点>

「MHCクラスIに結合する能力を有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、がんの診断または治療用の薬剤」

<相違点>

本願発明における「がん」は、「配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの過剰提示を示すもの」であって、

「口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される」ものであるのに対し、引用発明ではそのような特定がされていない点。

(2)判断

ア 「配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの過剰提示を示すもの」の解釈について

本願発明における「配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの過剰提示を示すもの」との発明特定事項は、令和6年5月31日提出の手続補正書による補正によって追加された事項であるが、何との比較において「過剰提示を示すもの」であるのかについて、特許請求の範囲の文言から直ちには明らかでない。

そこで、本願明細書及び図面の記載を参照すると、発明の詳細な説明にも、「過剰提示」の明確な定義はなされていない。

しかしながら、発明の詳細な説明には、本願発明が、「がん細胞を標的とするための腫瘍関連抗原(TAA)に結合する特異的T細胞受容体(TCR)を生成するための」ペプチドの使用に関し(【0002】)、「癌細胞を特異的に標的化しながら副作用を最小化する」べくなされた発明であって(【0014】)、「過剰発現TAA」については、「過剰発現TAA:広範に発現されるTAAをエンコードする遺伝子は、組織学的に異なる型の腫瘍において検出され、多数の正常組織においても概してより低い発現レベルで検出されている。」に分類されるとの認識のもと(【0015】)、「タンパク質がTリンパ球によって腫瘍特異的または腫瘍関連抗原として認識され、治療で利用されるためには、特定の必要条件が満たされなくてはならない。抗原は、主に腫瘍細胞によって発現され、健常組織によって発現されず、または比較的少量発現されるべきである。好ましい実施形態では、ペプチドは、健常組織と比較して、腫瘍細胞によって過剰提示されるべきである。」(【0027】)との説明がされている。

そうすると、本願明細書及び図面における記載を併せ踏まえれば、本願発明における「配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの過剰提示」とは、健常組織との比較において、「過剰提示」しているものを意味するものと解される。

そしてこの解釈は、令和6年5月31日提出の意見書において、審判請求人が補正の根拠であると説明した表4、表5及び図2にも、正常細胞ではペプチドの提示が検出されないのに対し、本願発明で特定する「cIPC(浸潤性乳頭がん)」、「pPC(原発性腹膜がん)」、「UEC(子宮がん)」及び「BRCA(乳がん)」では、検出強度に差があるとしても、少なくとも一部の患者において、ペプチドの提示が検出されることが示されていることとも符合する。

以下、この解釈に基づき、上記相違点について検討する。

イ 相違点について

引用発明は、引用文献2の(摘記2C)及び(摘記2D)に記載されるように、「CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子上に見いだされる腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープペプチドを認識し、続いて腫瘍細胞を死滅させることが実証されている。」が、「免疫療法の標的として有用な新規TAAの同定の必要性は依然として存在する」という背景技術のもと、「IMP-3の発現は、がん患者の90%超において腫瘍細胞で特異的に上方制御されることが観察されているが、精巣および胎盤を除く他の正常な重要器官では発現され」ず、「ほとんどのがん組織で過剰発現されるため、これは免疫療法の優れた標的である」ことに鑑みなされた発明であって、この点、上記アに示したように、本願発明1が、健常組織との比較において「配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの過剰提示を示す」がんを対象とすることと軌を一にするものである。

そして、引用文献2の(摘記2E)及び(摘記2F)に示されるとおり、IMP-3を過剰発現するがんであれば、「あらゆる種類のがんまたは腫瘍」を治療対象とすることができ、「有効成分を含むワクチンまたは薬学的組成物の投与の前に、治療しようとするがん細胞または組織におけるIMP-3の発現レベルが同じ器官の正常細胞と比較して増大しているか否かを確かめることが好ましい」ことが記載されている。

引用発明に係る「IMP-3-552-560(SEQID NO:3)ペプチド」、すなわち「本願発明のペプチド」は、引用文献2の(摘記2G)~(摘記2I)のとおり、MHCクラスI分子である「HLA-A2」に「結合」し、「CTLを誘導し得る」ペプチドとして単離、同定されたものであって、引用文献2の(摘記2M)~(摘記2O)には、「IMP-3-552-560(SEQID NO:3)ペプチド」「による刺激によって健常ドナー2のPBMCから誘導されたCTLは、IMP-3およびHLA-A2(A*0201)の両方を発現するPANC-1に対する細胞傷害活性を示した」が、「それらは、HLA-A2(A*0201)を発現するがIMP-3は発現しないMCF7、またはIMP-3を発現するがHLA-A2(A*0201)は発現しないA549に対しては細胞傷害活性を示さ」ず、「さらに、患者14および患者4と指定された肺がん患者のPBMCから、IMP-3-552-560(SEQID NO:3)ペプチド」「による刺激によって誘導されたCTLも、PANC-1(IMP-3+、HLA-A2+)に対する細胞傷害活性を示したが、MCF7(IMP-3-、HLA-A2+)およびA549(IMP-3+、HLA-A2-)に対する細胞傷害性は示さなかった」という実験結果の裏付けをもって示されている。

ここで、CTLとMHCクラスI分子上に見いだされる腫瘍関連抗原(TAA)との関係につき、「癌細胞内に産生された内因性癌抗原」が、「プロテアソームにより断片化され」、「MHCクラスI分子と結合後,細胞表面に提示される」こと、及び「癌抗原特異的CTL」は、この「癌細胞上のMHCクラスI分子に提示されている癌抗原ペプチドを認識し,活性化され,癌細胞を傷害する」ことは、がんの免疫療法の技術分野における当業者の技術常識である(必要であれば、上記第3(5)及び(2)(摘記4D)を参照。)

このような技術常識を踏まえると、引用文献2に示された「IMP-3-552-560(SEQID NO:3)ペプチド」、すなわち「本願発明のペプチド」「による刺激によって」「PBMCから誘導されたCTL」が、「IMP-3およびHLA-A2(A*0201)の両方を発現するPANC-1」に対して細胞傷害活性を示し、「HLA-A2(A*0201)を発現するがIMP-3は発現しないMCF7、またはIMP-3を発現するがHLA-A2(A*0201)は発現しないA549」に対しては細胞傷害活性を示さなかったという実験結果は、内因性癌抗原である「IMP-3」由来の「本願発明のペプチド」が、がん細胞表面上のMHCクラスI分子である「HLA-A2(A*0201)」と結合して提示された場合に、当該ペプチドを特異的に認識するCTLによって傷害されることを示したものといえるところ、引用文献2の上記記載に接した当業者であれば、引用発明に係る薬剤を、「本願発明のペプチド」を抗原提示し得る「IMP-3を発現する腫瘍を有するHLA-A2(A*0201)陽性患者に対」して投与することを強く動機づけられるものであるといえる(上記第3(1)ア(摘記2A)の請求項23、(摘記2P))。

さらに、引用文献2には、「有効成分を含むワクチンまたは薬学的組成物の投与の前に、治療しようとするがん細胞または組織におけるIMP-3の発現レベルが同じ器官の正常細胞と比較して増大しているか否かを確かめることが好ましい」ことが記載され(上記第3(1)ア(摘記2F))、IMP-3の発現レベルを確認する手段として、引用文献4には、「HLA拘束性抗原と複合体化したヒト腫瘍組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する組換え抗体」を作製し、患部組織のイメージング等、細胞表面上に提示されたMHC/ペプチド複合体を検出することも記載されている(上記第3(2)(摘記4D)【0061】、【0062】)。

そして、IMP-3が、腫瘍特異的に発現するがん胎児性タンパク質であり、本願発明で特定される頭頸部がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、子宮内膜がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん等を含む、様々な種類のがんにおいて過剰発現することは、本願優先日前にがん治療の分野において周知の技術的事項であったところ(必要であれば、上記第3(1)ア(摘記2C)、(2)(摘記4E)、(3)及び(4)を参照。)、引用発明において、治療対象とするがんを決定するにあたり、これらの様々な種類のがんについて、引用文献2の記載に基づき、薬剤の投与前に患者のIMP-3の発現レベル及びHLAタイプを確認する、或いは、引用文献4の記載に基づき、抗体を用いてがん細胞上の抗原提示レベルを直接確認する等して、本願発明において特定される種類のがんにおいて、引用発明の薬剤の治療効果が期待できる、「本願発明のペプチドが、がん細胞表面上のMHCクラスI分子である「HLA-A2(A*0201)」と結合して提示された」がん、すなわち、健常組織と比較して、「本願発明のペプチドの過剰提示を示す」がんを投与対象として選択することは、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ 本願発明の効果について

本願明細書及び図面には、本願発明における特定の種類のがんのほとんどについて、実際に「本願発明のペプチド」が過剰提示されることすら示されておらず、一部の種類のがんについて、「本願発明のペプチド」が健常組織サンプルと比較して過剰提示される検体が存在したことが示されるにとどまるものである(本願明細書の表4、表5及び図1~3)。

そして、過剰提示することが具体的に示された一部のがんについてさえ、「本願発明のペプチド」を投与したことによる治療効果を確認した実験結果は全く示されていない。

そうすると、本願発明において、上記相違点に係る特定の種類のがんを治療対象として選択することで、その他のがんを治療対象とした場合とは異質の効果、あるいは当業者の予測を超える顕著な効果を奏するものとは認められない。

したがって、本願発明の構成により奏される効果が、引用発明、引用文献2及び4の記載事項並びに本願優先日当時の周知技術から予測し得ない格別なものであるとは認められない。

エ 審判請求人の主張について

令和6年5月31日受付の意見書((3)本願発明と引用文献に記載の発明との対比)において、審判請求人は、以下の点を述べ、本願発明の進歩性を主張している。

(ア)さまざまな種類のがんにおけるソースタンパク質の発現と特定のペプチドの過剰提示とは異なり、特定の種類のがんに対するペプチドの(過剰)提示を確認する作業は、日常的な実験を超えた、細心の注意が必要なものである。

(イ)本願明細書の表4及び表5のデータ、並びに図1及び令和4年7月22日提出の手続補正書(方式)に添付された追加のデータ(以下「本願明細書等に開示されたデータ」という。)は、本願において初めて言及され、本願発明で特定されているがんの適応症における症状を裏付けるものである。

(ウ)表4では、配列番号1のペプチドが試験したA*02陽性ドナーの大部分(69%)において免疫原性であることが記載されており、本願発明のペプチドの免疫原性の可能性を裏付けるものである。

上記主張について検討する。

(エ)主張(ア)について

無数のペプチド候補の中から、本願発明のペプチドを初めて同定するためには、単なる日常的な実験を超えた細心の注意が必要であったとしても、上記イにおいて説示したとおり、当該ペプチドががんにおいて抗原提示されることは、引用文献2において既に公知になっているものである。

そして、一度同定されたペプチドであれば、異なるがん種において過剰提示されることを確認するためには、同定された特定のペプチドを検出さえできればよく、無数のペプチド候補の中から再度同じペプチドを同定する作業を繰り返す必要はないから、出願人の主張は失当である。

(オ)主張(イ)及び(ウ)について

本願明細書等に開示されたデータについて検討すると、表4には、CRC、GC、HCC、NSCLC、OC、OSCAR、PC、RCCにおいて、その腫瘍サンプル中に一定割合で、「本願発明のペプチド」が、「過剰発現」することが記載されているものの、これらのがんは、本願発明において特定される種類のがんではない。

次に、表5についてみると、これは、種々のがん及び正常組織のサンプルにおける「本願発明のペプチド」の提示の頻度を示すものであり、表5に挙げられるがんのうち、「cIPC(浸潤性乳頭がん)」、「pPC(原発性腹膜がん)」は、本願発明において特定されるがん種であるものの、表5に示されたデータからは、特にこの2種のがんにおいて、その他のがんに比べて、「本願発明のペプチド」の発現頻度が特に高い、或いは発現強度が特に強いといったものであるとは読み取れない。

また、図1に記載される「BRCA(乳がん)」及び「UEC(子宮内膜がん)」は、本願発明において特定されるがん種であるが、「BRCA」についてはシグナルとして検出できなかったことが示され(図中:「0/17」と表記されている。)、「UEC」については15例中1例で検出され、その他のがん、例えば「HCC」、「NHL」等よりもシグナル強度が低かったことが示されている。すなわち、図1に示されたデータからも、本願発明において特定する上記2種のがんにおいて、その他のがんと比べて、発現頻度が特に高い、或いは発現強度が特に強いというものであるとは読み取れない。

さらに、令和4年7月22日提出の手続補正書(方式)に添付された追加のデータについて、当初明細書の記載及び本願優先日当時の技術常識から推論できる効果について参酌すると、これに記載される「HNSCC(口腔がん、頭頸部扁上皮がん、咽頭上皮がん、口腔がん、頭頸部がん)」、「BRCA(乳がん)」、「PACA(膵管腺がん)」、「UEC(子宮内膜がん又は子宮がん)」、「CCC(胆管がん)」及び「PRCA(前立腺がん)」は、本願発明において特定されるがん種であるにしても、このデータも、本願発明において特定する種類のがんでは、その他のがんに比べて、「本願発明のペプチド」の発現頻度が特に高い、或いは発現強度が特に強いことを示すものではない。

そして、本願発明において特定される「H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、喉頭の上皮がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、メルケル細胞がん」における「本願発明のペプチド」の過剰提示については、本願明細書及び図面、並びに追加のデータのいずれにも記載されていない。

以上を総合すると、本願明細書等に開示されたデータは、せいぜい、「本願発明のペプチド」が、正常組織と比較して過剰発現しているがん種が複数種存在することを示すものにすぎず、本願発明において特定されるがんを選択した場合に、特に、その他のがんと比べて、本願発明のペプチドの発現頻度が特に高い、或いは発現強度が特に強いといったことを示すものではなく、まして、治療効果については何らデータが示されていないのであるから、治療対象として本願発明における特定の種類のがんを選択することによって、他のがんに比べて何らかの有利な効果が得られることを示すものでもない。

一方、上記イにおいて説示したとおり、本願発明において特定される、頭頸部がん、乳癌、膵管腺がん、子宮内膜がん、胆管腺がん及び前立腺がんを含め、様々ながんにおいてIMP-3が過剰発現することは周知の技術的事項であり(上記第3(1)ア(摘記2C)、(3)及び(4))、これらのIMP-3を過剰発現するがん患者がHLA-A2陽性患者である場合には、IMP-3由来の「本願発明のペプチド」が、HLA-A2に結合してがん細胞表面に提示されるであろうことは、引用文献2の記載及び周知技術から予測し得るものといえる。

そして、上述のとおり、表4は本願発明の特定のがんに関する記載とは認められないものの、表4に記載される「配列番号1のペプチドが試験したA*02陽性ドナーの大部分(69%)において免疫原性である」ことについても、引用文献2の記載事項(上記第3(1)ア(摘記2M)~(摘記2P))から予測されるとおりのものである。

そうすると、本願明細書等に開示されたデータは、本願発明において特定するがん種の一部において、本願発明のペプチドが過剰提示されることを確認した初めてのデータであるとしても、この過剰提示の確認によって、本願発明が引用発明、引用文献2及び4の記載事項、並びに周知技術から予測し得ない効果を奏するものと認めることはできない。

(カ)以上のとおりであるから、審判請求人の主張はいずれも採用することはできず、本願発明の進歩性は認められない。

第5 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用文献2及び4の記載事項並びに本願優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-009143

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