特許拒絶査定不服審判
2024-001907
ミトコンドリアタンパク質における発現および送達を最適化する方法
- 審判番号
- 2024-001907
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-556805
- 請求日
- 2024年02月02日
- 審決日
- 2026年03月17日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 長井 啓子
- 審判官 戸来 幸男
- 審判官 田中 晴絵
- 分類
- P18 .572-Z (C12N) / P18 .575-Z (C12N) / P18 .56 -Z (C12N) / P18 .121-Z (C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-556805「ミトコンドリアタンパク質における発現および送達を最適化する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日国際公開、WO2020/188228、令和 4年 8月 1日国内公表、特表2022-534466〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月21日を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 2月20日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 8月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 9月22日付け:拒絶査定
令和 6年 2月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年2月2日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年2月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正することを含むものである(下線部は補正箇所である。)。
補正前:
「【請求項1】
2つ以上のタンパク質の同時発現およびミトコンドリアへの送達のための核酸分子であって、前記核酸分子は、第1のミトコンドリア局在化シグナルおよび第1のタンパク質をコードする第1の核酸配列と、 第2のミトコンドリア局在化シグナルおよび第2のタンパク質をコードする第2の核酸配列とを含み、前記第1および第2の核酸配列は、少なくとも1つのリボソームスキッピング配列によって分離され、前記第1および第2の核酸配列は、調節配列に作動可能に連結されており、前記第1の核酸配列および第2の核酸配列は発現すると、前記第2のミトコンドリア局在化シグナルの配列が前記第1のミトコンドリア局在化シグナルの配列と異なる、核酸分子。」
補正後:
「【請求項1】
2つ以上のタンパク質の同時発現およびミトコンドリアへの送達のための核酸分子であって、前記核酸分子は、第1のミトコンドリア局在化シグナルおよび第1のタンパク質をコードする第1の核酸配列と、 第2のミトコンドリア局在化シグナルおよび第2のタンパク質をコードする第2の核酸配列とを含み、前記第1および第2の核酸配列は、少なくとも1つのリボソームスキッピング配列によって分離され、前記第1および第2の核酸配列は、調節配列に作動可能に連結されており、
前記第1の核酸配列および第2の核酸配列は発現すると、前記第2のミトコンドリア局在化シグナルの配列が前記第1のミトコンドリア局在化シグナルの配列と異なり、前記第2のミトコンドリア局在化シグナルは、前記ミトコンドリア局在化シグナルをマスクする追加のN末端プロリンを含む、核酸分子。」
2.本件補正の目的
本件補正により、補正前の請求項1に記載されていた「第2のミトコンドリア局在化シグナル」が、「前記ミトコンドリア局在化シグナルをマスクする追加のN末端プロリンを含む、」と限定されたから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものと認められる。
そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)(以下、「独立特許要件」という。)について、以下で検討する。
3.独立特許要件の検討
(1)引用例1の記載事項
令和5年2月20日付け拒絶理由通知書及び令和5年9月22日付け拒絶査定で引用文献1として引用されている、本願の出願日前に頒布された文献である、EMBO Mol. Med.,2014年,6(4),pp.458-466(以下では、「引用例1」という。)は、「大規模欠失又は点変異を有する病原性ミトコンドリアゲノムを選択的に分解するためのミトコンドリア標的型ZFNs」と題する学術文献であって、以下の事項が記載されている。なお、引用例1は英語で記載されているため、当審による訳文で示す。下線は当審で付したものである(以下、同様。)。
ア.「私たちは、病原性ヒトミトコンドリア DNA(mtDNA)を部位特異的に除去するために、ミトコンドリアに標的化した義務的ヘテロ二量体型ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(mtZFNs)を設計・構築した。私たちは、神経障害・運動失調・網膜色素変性(NARP)に関連する m.8993T>G 点変異を有する mtDNA、およびコモン欠失(CD)―成人発症の慢性進行性外眼筋麻痺に関連し、よりまれには Kearns-Sayre 症候群および Pearson 髄外造血膵症候群に関連する、4977 塩基対の反復配列に挟まれた欠失―を有する mtDNAを標的として切断するために、mtZFN を用いた。mtZFN の発現は、変異 mtDNA のハプロタイプ負荷の減少をもたらし、その後に起こる野生型 mtDNA の再増殖によって、CD サイブリッド細胞モデルにおいてミトコンドリアの呼吸機能が回復した。本研究は、ヘテロプラスミーの操作を通じて、ミトコンドリアに部位特異的ヌクレアーゼ活性を送達することにより、欠失 mtDNA に起因する一次性ミトコンドリア疾患における重篤な生化学的表現型を緩和し得ることを示す概念実証を成すものである。」(要約)
イ.「結果
mtZFN の改良設計
私たちの以前の研究により、ZFNsをヒトのミトコンドリアへ効率的にターゲティングするには、ミトコンドリア標的化シグナル(MTS)に加えて、核移行シグナル(NES)が必要であることがわかった(Minczuk ら,2006)。先に報告された mtZFN モノマーの構造(図1A)(Minczuk ら,2008;Minczuk,2010)は、MTS-エピトープタグ-NES を N 末端に配置することで改変された。従来設計とは対照的に、モノマーの一方の Myc タグは FLAG タグに置き換えられた。さらに、ヘテロ二量体として対になった場合にのみ DNA を切断するよう改変された FokI ドメインも組み込んだ(ELD/KKR)。これらの FokI 変異体は、野生型構造に匹敵する効率を示す一方で、ホモ二量体活性が 40 倍を超えて低減している(Miller ら,2007;Szczepek ら,2007;Doyon ら,2011)(図1B)。
新規構造の mtZFNs がミトコンドリアに容易に取り込まれるかどうかを実験的に検証するため、私たちはヒト骨肉腫(HOS)143B 細胞における一過的発現に基づき、それらの細胞内局在を調べた。免疫蛍光解析により、mtZFNs はミトコンドリアと共局在し、核からは検出可能な mtZFN 特異的シグナルが認められないことが明らかになった(図1C)。」(459頁右欄1行~460頁左欄6行)
ウ.「
[図:0001437683000001.jpg]
」
(459頁図1)
エ.「m.8993T>G NARP 点変異の選択的分解による改良 mtZFN 設計の検証
改良した mtZFN 設計の有効性を検証するために、私たちは、m.8993T>G 置換に特異性を持つことが報告されている(Minczuk ら,2008)既存の組み立て済みかつ最適化されたジンクフィンガーペプチド(ZFPs)を使用した。この変異は、2つのミトコンドリア疾患──神経原性筋力低下・運動失調・網膜色素変性(NARP)および母系遺伝性 Leigh 症候群(MILS)(Holt ら,1990)──に関連している。私たちの戦略(図2A)によれば、変異特異的 mtZFN モノマー[図2A, NARPd(+)]と、上流の野生型配列に結合する mtZFN モノマー[図2A, COMPa(-)]は、変異部位でのみ二量体化し、mtDNA の複製を阻害する DNA 二本鎖切断を導入する。
私たちは、93%の m.8993T>G mtDNA を保持するサイブリッド細胞に NARPd(+) と COMPa(-) を発現させ、両方の構成要素を発現している細胞のバルク集団を選択した(図2B)。ウエスタンブロットによって確認されたように、NARPd(+) と COMPa(-) を18日間同時に発現させると、m.8993T>G mtDNA 分子の選択的分解が生じ、それに伴って、RFLP により評価したところ、サイブリッド細胞のヘテロプラスミーにおいて約7% の野生型から約17% の野生型へと変化した(図2Cおよび 2D、補足図1)。」(460頁左欄18行~右欄17行)
オ.「
[図:0001437683000002.jpg]
」(460頁図2)
カ.「ごく最近、変異ミトコンドリアゲノムを特異的に除去するための代替手法として、ミトコンドリアに標的化された TAL エフェクター・ヌクレアーゼ(mitoTALENs)を利用する方法が報告された(Bacman ら,2013)。mtZFNs による私たちの経験と同様に、mitoTALENs の発現は欠失および点変異 mtDNA の減少をもたらした。Bacman らは CDも標的としたが、彼らの研究では別の点変異(m.14459G>A)が除去された。両手法の開発の現段階では、どちらの手法が、あるいはどちらもが、ミトコンドリア・ヘテロプラスミーの治療的操作という現在の問題に対する解決策を提供し得るのかは明らかではない。生体内での使用リスクを最小化することを目的としたエンジニアード・ヌクレアーゼ技術分野の進展、さらには初期臨床試験への移行(Palpant & Dudzinski, 2013)に伴い、私たちの研究および mitoTALENs によって得られた結果は、安全性と有効性を確認するための動物モデルでのさらなる実験を促すはずである。しかしその前に、いくつかの重要な問題と課題に対処する必要がある。すなわち、各デザイナー・ヌクレアーゼ・プラットフォームの相対的な特異性を理解すること、そしてこれらのヌクレアーゼを生体内に送達するための効率的な方法を活用することである(Gaj ら,2013)。TALEN アセンブリの相当なサイズは、リコンビナントアデノ随伴ウイルス(AAV)のようなサイズ制限のあるベクターにコンストラクトをパッケージングする際に、特に重要となる可能性があり、AAV はすでに ZFN コンストラクトを搭載して送達できることが示されている(Ellis ら,2013)。この問題は、将来の研究において mitoTALEN の送達のための新たなシステムの開発が、乗り越えるべき重大なハードルとなることを示唆している可能性がある。」(464頁左欄10行~34行)
キ.「NARPd(+)、COMPa(-) R8-n(+) または R13-n(-) を含むプラスミド、ならびに空ベクターは、線状化したうえで、製造元の指示に従い Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて培養中の細胞に導入した。ベクターおよびトランスジーンが安定的に組み込まれ発現した細胞は、標準培地に 1 mg/ml のネオマイシンおよび 4 μg/ml のブラスチシジンをそれぞれ 18 日間ずつ添加することにより、段階的に選択した。」(464頁左欄48行~最終行)
ク.「Ellis BL, Hirsch ML, Porter SN, Samulski RJ, Porteus MH (2013) Zinc-finger nuclease-mediated gene correction using single AAV vector transduction and enhancement by Food and Drug Administration-approved drugs.Gene Ther 20: 35 -42」(465頁右欄46行~49行)。
(2)引用例3の記載事項
令和5年2月20日付け拒絶理由通知書及び令和5年9月22日付け拒絶査定で引用文献3として引用されている、本願の出願日前に頒布された文献である、Gene Ther.,2013年,20(1),pp.35-42(以下では、「引用例3」という。)は、「単一AAVベクター導入と食品医薬品局承認薬による強化を用いたジンクフィンガーヌクレアーゼ介在遺伝子修正」と題する学術文献であって、以下の事項が記載されている。なお、引用例3は英語で記載されているため、当審による訳文で示す。下線は当審で付したものである(以下、同様。)。
ア.「単一遺伝子疾患の治療に向けた新たに登場しつつある戦略は、ゲノムレベルで変異を正確に修正するために遺伝子工学を用いるものである。この技術の最近の進展により、外来性 DNA ドナー基質と組み合わせたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)による DNA 二本鎖切断を利用して、治療レベルの遺伝子修復が可能であることが示されている。この戦略には効率的な核酸デリバリーが必要であり、ウイルスベクターの中では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が病理を伴うことなく臨床的成功を示している。しかし、rAAV の大きな制約は DNA 収容能力が小さいことであり、これまでのところ、ZFN 遺伝子デリバリーに rAAV を使用した報告は存在しない。理論的には、rAAV の共導入戦略に伴う非効率な遺伝子ターゲティングや望まれない突然変異発生といった問題を回避するために、ZFNs と修復基質の双方を単一ベクターで送達することが理想である。そこで、リボソームスキッピング 2A ペプチドおよびフーリン切断配列によって連結された ZFN モノマーを単一のポリペプチドとしてコードする rAAV フォーマットが作製された。この構成に基づき、750 塩基長の DNA 修復基質も同じベクターに組み込まれた。この単一ポリペプチドが個別の ZFN へと効率的にプロセシングされること、そしてこの単一ベクターフォーマットがヒト細胞株およびマウスモデル由来線維芽細胞において効率的な遺伝子ターゲティングを促進できることが示された。さらに、AAV ベクターの細胞導入レベルで作用する米国 FDA 承認薬の組み合わせを用いることで、rAAV による遺伝子修復を最大 6 倍まで増強した。総合すると、これらの実験は、単一の AAV ベクターによって ZFN と修復基質を送達できることを示すとともに、薬物療法を組み合わせた rAAV 介在遺伝子修復の最適化に関する知見を提供するものである。」(要約)
イ.「結果
当初、rAAV ベクターによる ZFN 誘導型遺伝子ターゲティングを調査するこれらの実験のために、2 種類の AAV プラスミドを作製した(図 1a および 1b)。1 つ目のプラスミドである「ZFN2/1/donor」には、ヒトユビキチン C プロモーター(UBC)により駆動される、緑色蛍光タンパク質(GFP)-ZFN1 および GFP-ZFN2(文献20, 34)の発現カセットが含まれており、この 2 つの ZFN は 2A ペプチド配列およびフーリン切断部位により連結されている。さらに、このベクターには、~750 塩基対の eGFP DNA 断片(eGFP ヌクレオチド 37 まで欠失した形;図 1 の “donor”)がBgH ポリアデニル化配列の 5′ 側に含まれており、これは、以前に報告した欠損型 GFP レポーターシステムを修復するために相同組換え機構が利用するドナーテンプレートとして機能する。最終的なベクターのサイズは~4.7 kb であり、これは野生型 AAV ゲノムのサイズとほぼ同等である。この ZFN2/1-donor ベクターに加えて、修復基質のみを含む AAV コンストラクトも作製した(donor;図 1b)。ZFN の共合成ペプチド切断システムは、単一ポリペプチドから 2 つの ZFN を産生できるはずであり、そのため個別の ZFN へのポリペプチド切断をウエスタンブロッティングにより解析した(図 1c)。ZFN 発現カセットを含む 2 種類のウイルスベクタープラスミドをトランスフェクションしたところ、ZFN が効率的にモノマー単位へとプロセシングされ、未処理の分子は観察されなかった(図 1b)。」(36頁右欄14行~37頁左欄2行)
ウ.「ヒトゲノムにおける相同組換えによる治療上意味のある頻度の遺伝子ターゲティングを達成するためには、少なくとも 2 つの異なる構成要素を細胞に導入する必要がある。(1)相同組換え機構の修復テンプレートとして機能するドナー DNA 分子そして(2)その部位(またはその近傍)において相同組換えを刺激するために、部位特異的ゲノム DNA 二本鎖切断(DSB)を作り出すヌクレアーゼである。本研究では、これらすべての遺伝要素に加え、プロモーターおよびポリアデニル化シグナルを単一の AAV ベクターに搭載可能な、一般的に適用し得る枠組みを提示する。一貫して、ZFN2/Furin/T2A/ZFN1 発現カセットが効率的にモノマー型 ZFN へとプロセシングされ、提供された修復基質を用いた遺伝子ターゲティングに機能することを示した。この方法論は、ZFN を受け取るすべての細胞が所望の修復分子も同時に受け取ることを保証し、とりわけ効率的な遺伝子ターゲティングに比較的多くの粒子数が必要となる場合に問題となる、複数粒子のトランスダクションに伴う懸念を回避する。」(39頁左欄15行~31行)
エ.「要約すると、私たちは、ヒト細胞およびマウス細胞の両方において、rAAV トランスダクションを用いた ZFN 介在型遺伝子ターゲティングを初めて示した。これを達成するために、私たちは 2A ペプチド配列を利用することで、必要なすべての構成要素を単一ベクターに含める普遍的なベクターフォーマットを設計した。これは重要であり、というのも、内部リボソーム進入部位(IRES)配列や複数のプロモーターを用いた場合、AAV カプシドのパッケージング制限サイズを超えてしまうためである。このフォーマットに基づく AAV ベクターは、多重トランスダクション戦略に関連する安全性の懸念を排除し、in vitro および in vivo の両方の応用に適用可能である。」(40頁左欄43行~52行)
オ.「
[図:0001437683000003.jpg]
図1 AAV6 ZFN2/1/D および AAV6 donor のゲノム内容の模式図。
(a) AAV6 ウイルスベクター ZFN2/1/D のゲノムは、ユビキチン C プロモーターにより駆動され、2A ペプチドによって分離された 2 つの GFP ZFN をコードする DNA を含み、相同組換えによる遺伝子ターゲティングにおけるドナー基質として、ヌクレオチド37で切断されたeGFP 遺伝子を含んでいる。
(b) AAV6 ウイルスベクター donor のゲノムは、(a) と同じ、切断された機能不全の eGFP 形態を含み、サイトメガロウイルスプロモーターにより駆動されている。
(c) AAV バックボーンにおける ZFN2/1/D コンストラクトのリン酸カルシウム法によるトランスフェクションのウエスタンブロット(レーン 1)、レンチウイルスバックボーンにおける ZFN2/1/donor コンストラクト(レーン 2)、レンチウイルスバックボーンにおける ZFN2 コンストラクト(レーン 3)、およびレンチウイルスバックボーンにおける ZFN1 コンストラクト(レーン 4)。レーン 1 のタンパク質の大部分がモノマーの分子量(37 kD マーカー)に存在している点に注意されたい。」(36頁図1)
(3)引用発明の認定
引用例1は、DNAに変異を有する病原性ミトコンドリアを有する細胞において、ヘテロ二量体型ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を発現させ、変異を有するDNAに二本鎖切断を導入したことを報告する学術論文であって(摘記事項(1)ア、エ)、以前の研究で用いられていたミトコンドリアを標的とするヘテロ二量体型ZFN(mtZFNs)(図1A)を改良した、ヘテロ二量体型ZFN(図1B)が記載されており(摘記事項(1)ア~ウ)、その具体的態様として、変異特異的mtZFN モノマー(図2A, NARPd(+))と、上流の野生型配列に結合するmtZFN モノマー(図2A, COMPa(-))の組み合わせからなるヘテロ二量体型ZFNが、m.8993T>G 変異を保持する病原性ミトコンドリアを有するサイブリッド細胞において病原性ミトコンドリアDNAの変異部位でのみ二量体化し、当該 DNA に二本鎖切断を導入することが記載されている(摘記事項(1)エ、オ)。当該ヘテロ二量体型ZFNを構成する2つの異なるモノマーであるNARPd(+)及びCOMPa(-)は、それぞれ図1Bに mtZFN(+)及びmtZFN(-)として記載されたとおり、N末から順に、ミトコンドリア標的化シグナル(MTS)、HA又はFとして記載されるエピトープタグ、核移行シグナル(NES)、ZFP、及びFokIを含むものであって(摘記事項(1)ウ、オ)、ZFPは、COMPa(-)においては野生型配列に結合するZFP、NARPd(+)においては変異特異的なZFPである(摘記事項(1)エ)。そして、その実験プロトコルとしては、当該2つのmtZFN モノマーは、それぞれ別のプラスミドとして細胞に導入したことが記載されている(摘記事項(1)キ)。
そうすると、引用例1には、以下のとおりの発明が記載されていると認められる。
「DNAにm.8993T>G変異を保持する病原性ミトコンドリアを有するサイブリッド細胞において当該DNAに二本鎖切断を導入するヘテロ二量体型ZFNを発現するための2つのプラスミドの組み合わせであって、
それぞれ1つのプラスミドは、当該ヘテロ二量体型ZFNを構成する1つのZFNモノマーをコードする配列を有し、
1つのZFNモノマー(COMPa(-))は、N末から順に、ミトコンドリア標的化シグナル(MTS)、エピトープタグ、核移行シグナル(NES)、野生型配列に結合するZFP、及びFokIを含み、
もう1つのZFNモノマー(NARPd(+))は、N末から順に、ミトコンドリア標的化シグナル(MTS)、エピトープタグ、核移行シグナル(NES)、変異特異的なZFP、及びFokIを含む、
2つのプラスミドの組み合わせ。」(以下、「引用発明」という。)
(4)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「1つのZFNモノマー(COMPa(-))」に含まれる「ミトコンドリア標的化シグナル(MTS)」及び「エピトープタグ、核移行シグナル(NES)、野生型配列に結合するZFP、及びFokI」は、補正発明の「第1のミトコンドリア局在化シグナル」及び「第1のタンパク質」にそれぞれ相当し、引用発明の「もう1つのZFNモノマー(NARPd(+))」に含まれる「ミトコンドリア標的化シグナル(MTS)」及び「エピトープタグ、核移行シグナル(NES)、変異特異的なZFP、及びFokI」は、補正発明の「第2のミトコンドリア局在化シグナル」及び「第2のタンパク質」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明の「N末から順に、ミトコンドリア標的化シグナル(MTS)、エピトープタグ、核移行シグナル(NES)、野生型配列に結合するZFP、及びFokIを含」む「1つのZFNモノマー(COMPa(-))」「をコードする配列」は、補正発明の「第1のミトコンドリア局在化シグナルおよび第1のタンパク質をコードする第1の核酸配列」に相当し、引用発明の「N末から順に、ミトコンドリア標的化シグナル(MTS)、エピトープタグ、核移行シグナル(NES)、変異特異的なZFP、及びFokIを含む」「もう1つのZFNモノマー(NARPd(+))」「をコードする配列」は、補正発明の「第2のミトコンドリア局在化シグナルおよび第2のタンパク質をコードする第2の核酸配列」に相当する。引用発明の「ヘテロ二量体型ZFNを構成する1つのZFNモノマー」それぞれは、補正発明の「第1のミトコンドリア局在化シグナルおよび第1のタンパク質」及び「第2のミトコンドリア局在化シグナルおよび第2のタンパク質」に相当し、引用発明の「プラスミド」は、補正発明の「核酸分子」に相当する。
さらに、引用発明の「DNAにm.8993T>G変異を保持する病原性ミトコンドリアを有するサイブリッド細胞において当該DNAに二本鎖切断を導入するヘテロ二量体型ZFNを発現するため」という事項は、ヘテロ二量体型ZFNを構成する2つのZFNモノマーを同時に発現して、病原性ミトコンドリアに含まれるDNAの標的部位m.8993T>G変異位置に送達させることにあたるから、補正発明の「2つ以上のタンパク質の同時発現およびミトコンドリアへの送達のため」という事項に相当する。
そうすると、補正発明と引用発明の一致点と相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「2つ以上のタンパク質の同時発現およびミトコンドリアへの送達のための核酸分子であって、前記核酸分子は、第1のミトコンドリア局在化シグナルおよび第1のタンパク質をコードする第1の核酸配列と、第2のミトコンドリア局在化シグナルおよび第2のタンパク質をコードする第2の核酸配列とを含む、核酸分子」という点。
<相違点>
補正発明は、「前記第1および第2の核酸配列は、少なくとも1つのリボソームスキッピング配列によって分離され、前記第1および第2の核酸配列は、調節配列に作動可能に連結されており、
前記第1の核酸配列および第2の核酸配列は発現すると、前記第2のミトコンドリア局在化シグナルの配列が前記第1のミトコンドリア局在化シグナルの配列と異なり、前記第2のミトコンドリア局在化シグナルは、前記ミトコンドリア局在化シグナルをマスクする追加のN末端プロリンを含む、」という構成を備えているのに対し、引用発明は、第1及び第2の核酸配列に該当する2つのモノマーをコードする配列が別々のプラスミドに含まれている点。
(5)相違点についての判断
引用例1には、引用発明の認定の基礎とした、従来のmtZFNを改良したものである新規の義務的ヘテロ二量体型 mtZFN(図1B)が、サイブリッド細胞のミトコンドリアに局在し(図1C)(摘記事項(1)イ、ウ)、m.8993T>G 点変異を有する病原性 mtDNA を選択的に除去することが実証された(図2D)ことが記載され(摘記事項(1)オ)、引用例1の著者らによる研究によって得られたこれらの結果は、安全性と有効性を確認するための動物モデルでのさらなる実験を促すはずであり、その前の対処すべき問題と課題として、ヌクレアーゼを生体内に送達するための効率的な方法を活用することが記載されている(摘記事項(1)カ)。そして、引用例1には、生体内に送達するための効率的な方法を活用する点が対処すべき課題である旨の記載の直後に、「AAV はすでに ZFN コンストラクトを搭載して送達できることが示されている(Ellis ら,2013)」と、Ellis らによる文献、すなわち引用例3を引用しながらZFN コンストラクトの送達にAAVが使用できることが記載されている(摘記事項(1)カ、ク)。
引用発明は、サイブリッド細胞(細胞核と細胞質が別々の細胞に由来するハイブリッド細胞を意味することは、本願優先日当時の技術常識である。)という培養細胞において用いられるプラスミドであるところ、上述のとおり、病原性ミトコンドリアのDNAを選択的に除去する効果が実証されたものであって、安全性と有効性を確認するための動物モデルでのさらなる実験に先立ち、生体内に送達するための効率的な方法を活用することが明記され、しかも、ZFNコンストラクトの送達にAAVを用いることを記載した参考文献として引用例3が引用されているのだから、引用発明に引用例3記載のAAVによる送達方法を適用することには、強い動機付けが存在する。
そこで、引用例3について検討すると、引用例3は、DNA二本鎖切断を利用した治療レベルの遺伝子修復を行うためのZFNをコードするDNAの送達に関する文献であって、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターはDNA送達において臨床的成功を収めているものの、DNA収容能力が小さいという課題を有するところ、2つのZFNモノマーをリボソームスキッピング2Aペプチド及びフーリン切断配列によって連結した単一ポリペプチドとしてコードすることで、AAVベクターに搭載可能になったこと、当該単一ポリペプチドをコードする配列を有するAAVベクターは、ヒト細胞及びマウス細胞の両方において機能的なZFNを発現できたことを実証している(摘記事項(2)ア~オ)。具体的に実験で用いられたAAVベクターは、GFP-ZFN2という1つのZFNとGFP-ZFN1というもう1つのZFNが2Aというリボソームスキッピングペプチドによって連結した単一ポリペプチドをコードする配列がユビキチンCプロモーターという調節配列に作動可能に連結されたゲノムを有するAAV6ベクターである(摘記事項(2)オ)。
したがって、上述のとおりの強い動機付けにしたがって、引用発明に引用例3記載のAAVベクターによる送達方法を組み合わせることにより、上記相違点に係る補正発明の構成のうち「前記第1および第2の核酸配列は、少なくとも1つのリボソームスキッピング配列によって分離され、前記第1および第2の核酸配列は、調節配列に作動可能に連結されており」という構成(以下、「相違点に係る構成1」ということもある。)に至ることは明らかである。
そして、2Aのようなリボソームスキッピング配列で連結された2つのタンパク質のうち下流のタンパク質は、プロセシング後にN末端にプロリンを含むことは、例示するまでもなく本願優先日当時の技術常識であり、本願明細書の「一実施形態では、MLS配列は、追加のアミノ酸残基、好ましくはMLSを「マスクする」N末端の追加のアミノ酸を含む-すなわち、ミトコンドリアへの標的配列の取込み速度を遅くする(この追加のアミノ酸を欠いている配列と比較すると)。好ましい実施形態では、追加のアミノ酸残基はプロリン残基である。」(【0051】)、「「リボソームスキッピング配列」は、新生ペプチド鎖で翻訳されると、リボソームが次のプロリンとのペプチド結合を作成するのを妨げる配列である。その結果、翻訳が停止され、発生期のポリペプチドが放出され、翻訳が再開されて第2のポリペプチドが生成される。このメカニズムは、ポリタンパク質の明らかな同時翻訳切断をもたらす。このように、リボソームスキッピング配列は、2つのタンパク質が単一のmRNA分子からの個々のタンパク質として発現されることを可能にする。」(【0069】)という記載、リボソームスキッピング配列がコードするものとして連挙される2A様ペプチドのいずれもが、C末端に2アミノ酸配列「GP」を有すること(【0070】)、「P2Aペプチドの使用は、第1のポリペプチド鎖(すなわち、第1の核酸配列によってコードされるタンパク質)にC末端リボソームスキッピング配列(またはそのような配列の大部分)が追加され、次のポリペプチド(すなわち、第2の核酸配列によってコードされるタンパク質)にN末端プロリンが追加されることをもたらす。上で説明したように、第2のMLSのN末端プロリンがシグナル配列をマスクし、第2のタンパク質におけるミトコンドリアへの輸送率を遅くすることを発見した。」(【0072】)という記載を踏まえても、上記相違点に係る補正発明の構成のうち、「前記第1の核酸配列および第2の核酸配列は発現すると、前記第2のミトコンドリア局在化シグナルの配列が前記第1のミトコンドリア局在化シグナルの配列と異なり、前記第2のミトコンドリア局在化シグナルは、前記ミトコンドリア局在化シグナルをマスクする追加のN末端プロリンを含む」という構成は、相違点に係る構成1により自ずと生じるものにすぎないといえる。
次に、補正発明の効果について検討する。
本願明細書の段落【0072】、【0112】、【0120】等に、第2のMLSのN末端プロリンがシグナル配列をマスクし、第2のタンパク質におけるミトコンドリアへの輸送率を相対的に遅くするという結果が記載されている。
しかし、当該結果は、実施例で用いられた特定のアミノ酸配列からなる「第1のミトコンドリア局在化シグナル」のN末端にP(プロリン)が付加したものである「第2のミトコンドリア局在化シグナル」によってもたらされることは認められるものの、本願明細書にはその作用機序について実験的あるいは理論的な説明はされていない。ミトコンドリアへの輸送率はミトコンドリア局在シグナルの種類に応じて異なるものであることが本願優先日当時の技術常識であり、そのN末端にP(プロリン)が付加することによる輸送率への影響も、ミトコンドリア局在シグナルの種類に応じて異なることが予測されるところ、補正発明で規定される如く「前記第2のミトコンドリア局在化シグナルの配列が前記第1のミトコンドリア局在化シグナルの配列と異なり、前記第2のミトコンドリア局在化シグナルは、前記ミトコンドリア局在化シグナルをマスクする追加のN末端プロリンを含む、」という、第1のミトコンドリア局在化シグナルの配列及び第2のミトコンドリア局在化シグナルのアミノ酸配列が任意に異なる多種多様な組み合わせ全般が、第2のタンパク質におけるミトコンドリアへの輸送率を相対的に遅くするとは認められないから、本願明細書に記載される上記の結果を、補正発明全般が有利な効果を奏することを裏付けるものとして参酌することはできない。また他に、補正発明が、引用例1及び引用例3より予測できない有利な効果を奏するとは認められない。
以上のとおりであるから、補正発明に進歩性を認めることはできない。
(6)請求人の主張について
審判請求人は、令和6年2月2日付け審判請求書の【請求の理由】において、主に以下の主張ア.イ.をしている。
ア.効果について
補正発明は、単一の核酸発現コンストラクトにコードされた第1及び第2のタンパク質に異なるMLS配列を付与することによって、より具体的には、第2のMLSをN末端プロリン残基でマスクすることによって、ミトコンドリアへの異なるスピードでの輸送を達成することができるという予想外の発見に基づき(本願明細書の段落[0051])、本願発明者らは、ミトコンドリアを標的とするタンパク質のうちの1つの量を、他方のタンパク質と比較して抑えることによって、変異mtDNAの効率的な標的化を維持しながら、望ましくないオフターゲット効果を低減することができることを見出した。補正発明のこれらの特徴、及び関連する有利な技術的効果は、引用文献から明らかではない。本願は、N末端プロリン残基でマスクされた第2のMLSと組合せた、リボソームスキッピング配列の使用が、ミトコンドリアへの潜在的な治療タンパク質の送達に対してオフターゲット効果を低減する予想外の技術的利点をもたらし、それによって、引用文献と比較して有効性が維持及び増強され、且つ、送達物質の比較的低用量での使用が有利な効果をもたらすことを明確に示している。
イ.容易想到性について
当業者は引用例1の記載を引用例3と組合せることが明らかであるとは考えず、また、たとえ当業者がこれらの記載を組合せたとしても、各ZFNモノマーが1:1化学量論比でミトコンドリアに送達されるようにする。
引用例3は、ミトコンドリアへのZFNの送達に関するものではないので、これらの記載はこの点について無関係であり、MLS配列、及びそのようなMLS配列に対するリボソームスキッピング配列を使用することによる潜在的な影響は予測されない。
補正発明は、2つのミトコンドリア標的化タンパク質のそれぞれのMLSが異なり、且つ第2のMLSがN末端プロリン残基の使用によりマスクされ、それによってミトコンドリアにおける各タンパク質の異なる濃度を達成することを要する。
よって、たとえ当業者がそれぞれのタンパク質をミトコンドリアに送達するための2つのタンパク質コーティング配列を単一の核酸発現カセット内に統合したとしても、補正後の請求項に係る発明を想到することはない。
上記請求人の主張に対する当審の判断は、以下のとおりである。
主張ア.について
審判請求人の主張は、本願実施例で用いられている特定の「第2のミトコンドリア局在化シグナル」が、「第1のミトコンドリア局在化シグナルの配列」のN末端にPを付加してなる配列である、N末端P(プロリン)の有無のみについて異なる特定の局在化配列の組み合わせによる発明が奏する効果と解され、上記(5)で補正発明の効果について検討したとおり、補正発明全般が有する効果とは認められないから、採用することはできない。
主張イ. について
引用例3は引用例1で引用されており、その文脈からみても、引用例1から認定された引用発明に引用例3記載のAAVベクターによる送達を組み合わせるのに強い動機付けが存在すること、それにより、補正発明の構成に至ることは、上記(5)で判断したとおりであって、審判請求人の主張イをみても、上記(5)の判断を覆すに足りる事情は見出せない。
よって、審判請求人の主張は、いずれも採用できない。
(7)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明について
1. 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~22に係る発明は、令和5年8月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載の事項により特定される発明であると認める。
2.原査定の理由
令和5年9月22日付け拒絶査定に記載された理由は、この出願の請求項1~22に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
<引用文献等一覧>
1.EMBO Mol. Med.,2014年,6(4),pp.458-466
3.Gene Ther.,2013年,20(1),pp.35-42
3.当審の判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1.に(補正前)として記載したものである。
本願発明は、補正発明が備えている、「前記第2のミトコンドリア局在化シグナルは、前記ミトコンドリア局在化シグナルをマスクする追加のN末端プロリンを含む、」という限定を有しないものであり、本願発明は、この限定以外の補正発明の発明特定事項を含むものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を含み、さらに上記の限定を付加したものに相当する補正発明が、上記の第2の3(5)(6)に記載したとおり、引用発明、すなわち、引用例1(原査定で引用された引用文献1)に記載された発明及び引用例3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、補正発明と同様の理由により、引用例1及び引用例3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-001907