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特許拒絶査定不服審判

2022-007765

表示パネル、表示装置、表示パネルのシーラント層における亀裂を検知する方法、および表示パネルを製造する方法

審判番号
2022-007765
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-553471
請求日
2022年05月24日
審決日
2023年03月31日
公報発行日
2023年09月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
  • 【請求人代理人】村山 靖彦
  • 【請求人代理人】実広 信哉
  • 【請求人】成都京東方光電科技有限公司
  • 【請求人代理人】村山 靖彦
  • 【請求人代理人】実広 信哉
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 後藤 慎平
  • 審判官 濱野 隆
分類
P18 .575-Z (G09F) / P18 .121-Z (G09F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-553471「表示パネル、表示装置、表示パネルのシーラント層における亀裂を検知する方法、および表示パネルを製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月24日国際公開、WO2019/014825、令和 2年11月19日国内公表、特表2020-533613〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)7月18日を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 平成30年10月11日 :翻訳文の提出 令和 3年 6月 1日付け:拒絶理由通知書 同年 9月 2日 :意見書、手続補正書の提出 令和 4年 1月17日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月24日 :原査定の謄本の送達) 同年 5月24日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 6月23日付け:前置報告書 同年 7月 7日 :上申書の提出 同年 9月30日 :上申書の提出 第2 令和4年5月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年5月24日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容 令和4年5月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項16の記載を、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項15の記載に補正する補正事項を含むものである。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前の請求項16 「 【請求項16】 シーラント層と、 前記シーラント層における亀裂を検知するように構成された、第1連続導電線を含む第1導電線層と、 を備える基板であって、 前記第1導電線層は、前記シーラント層と接触しており、 前記第1導電線層の線材の幅は、前記シーラント層の幅の約1/200~1/50であり、 前記第1導電線層の線材の厚さは、前記シーラント層の厚さの約1/20~1/5である 基板。」 (2) 本件補正後の請求項15 「 【請求項15】 シーラント層と、 前記シーラント層における亀裂を検知するように構成された、第1連続導電線を含む第1導電線層と、 を備える基板であって、 前記第1導電線層は、前記シーラント層と接触しており、 前記第1導電線層の線材の幅は、前記シーラント層の幅の約1/200~1/50であり、 前記第1導電線層の線材の厚さは、前記シーラント層の厚さの約1/20~1/5であり、 前記第1導電線層の線材の幅は、約2.5μm~10μmであり、 前記第1導電線層の線材の厚さは、約0.25μm~1μmである 基板。」 2 本件補正の目的 本件補正のうち本件補正後の請求項15についてする補正は、本件補正前の請求項16の発明特定事項である「第1導電線層」について、「前記第1導電線層の線材の幅は、約2.5μm~10μmであり、前記第1導電線層の線材の厚さは、約0.25μm~1μmである」と限定するものである。 そして、本件補正前の請求項16に記載された発明と、本件補正後の請求項15に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 よって、本件補正のうち本件補正後の請求項15についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件についての当審の判断 本件補正のうち本件補正後の請求項15についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項15に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項15に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された本願出願前に発行された文献である米国特許出願公開第2011/0037744号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付し、日本語訳は合議体において作成した。以下同様である。 (ア) 段落[0008]~[0016] 「[0008] The configuration of a contemporary organic light emitting diode display device may be described as follows. The contemporary organic light emitting diode display device includes a stacked-structure thin film transistor and an organic light emitting diode constituted by a first electrode, an organic emission layer, and a second electrode, which are formed on a first substrate having transparency and insulating properties. The thin film transistor and the organic light emitting diode are electrically connected.」 (従来の有機発光ダイオード表示装置の構成は次のとおりである。従来の有機発光ダイオード表示装置は、積層構造の薄膜トランジスタ、並びに、透明性及び絶縁性を有する第1基板上に形成された第1電極、有機発光層及び第2電極からなる有機発光ダイオードを含む。薄膜トランジスタと有機発光ダイオードとは電気的に接続されている。) 「[0009] As a second substrate is joined to the first substrate having the thin film transistor and the organic light emitting diode formed thereon through a sealing material, the thin film transistor and the organic light emitting diode are sealed.」 (薄膜トランジスタ及び有機発光ダイオードが形成された第1基板に、シール材を介して第2基板を接合することにより、薄膜トランジスタ及び有機発光ダイオードが封止される。) 「[0010] In general, the sealing material is applied along an edge of the first or second substrate, and is cured by applying heat to the sealing material in a state in which the first and second substrates are bonded to each other.」 (一般に、シール材は、第1又は第2の基板の縁部に沿って塗布され、第1及び第2の基板が互いに接合された状態でシール材に熱を加えることによって硬化される。) 「[0011] When a minute crack occurs in the sealing material, the display is not turned off immediately or an error does not occur immediately. But, the display is turned off after a predetermined time passes.」 (シール材に微小なクラックが発生しても、直ちに表示が消えたり、エラーが直ちに発生したりすることはない。しかし、所定の時間が経過した後には、表示が消える。) 「[0012] This is because air, oxygen, moisture and so on permeate into cells through the minute crack little by little to destroy the organic light emitting diode.」 (これは、空気、酸素、水分等が微小クラックを介して少しずつセル内に侵入し、有機発光ダイオードを破壊するためである。) 「[0013] Therefore, it takes time to check why the display device has been out of order. Users may recognize that the display device has been suddenly out of order without any reason.」 (したがって、ディスプレイデバイスがなぜ故障したのかをチェックするのに時間がかかる。ユーザーは、表示装置が何の理由もなく突然故障したと認識するかもしれない。) 「[0014] It is thereof an aspect of the present invention to provide an improved organic light emitting diode display device and a method for driving the organic light emitting diode display device.」 (本発明の一態様は、改善された有機発光ダイオード表示装置及び有機発光ダイオード表示装置を駆動するための方法を提供することである。) 「[0015] It is another object of the present invention to provide an organic light emitting diode display device which can measure a voltage or current at both ends of an interconnection installed inside a sealing material to easily discriminate whether a crack occurred in a sealing material or not, before abnormalities occur.」 (本発明の他の目的は、シール材の内部に設けられた配線の両端の電圧又は電流を測定して、異常が発生する前にシール材にクラックが発生したか否かを容易に判別することができる有機発光ダイオード表示装置を提供することにある。) 「[0016] According to an aspect of the present invention, an organic light emitting diode display device is constructed with a first substrate, a second substrate, a sealing material sealing a space between the first and second substrates and applied along an edge of the second substrate, an interconnection disposed inside the sealing material, and a test unit connected to both ends of the interconnection. The test unit is configured to measure a preset voltage applied to the interconnection and compare the measured voltage with a reference voltage to determine whether or not a crack occurred in the sealing material.」 (本発明の一態様によれば、有機発光ダイオード表示装置は、第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間を封止し、前記第2の基板の縁に沿って塗布されたシール材と、前記シール材の内部に配置された配線と、前記配線の両端に接続された検査部と、を備える。検査部は、配線に印加される予め設定された電圧を測定し、測定された電圧と基準電圧とを比較してシール材にクラックが発生したか否かを判定する。) (イ) 段落[0032]~[0040] 「[0032] Referring to FIGS. 1 to 3, organic light emitting diode display device 10 constructed as the exemplary embodiment according to the principles of the present invention includes a display area DA and a non-display area NA.Display area DA includes a first substrate 100, a second substrate 200, and one or more organic light emitting diodes (not shown) provided between first and second substrates 100 and 200, and displays an image in accordance with an external signal.」 (図1~図3を参照すると、本発明の原理による例示的な実施形態として構成された有機発光ダイオード表示装置10は、表示領域DA及び非表示領域NAを含む。表示領域DAは、第1基板100、第2基板200、及び第1基板100と第2基板200との間に備えられた一つ以上の有機発光ダイオード(図示せず)を含み、外部信号によって画像を表示する。) 「[0033] Organic light emitting diode display device 10 may be provided for the use of small-sized mobile devices such as mobile phones and plasma display panels (PDP) or large-sized display devices such as televisions.」 (有機発光ダイオード表示装置10は、携帯電話及びプラズマディスプレイパネル(PDP)などの小型モバイルデバイス、又はテレビなどの大型ディスプレイデバイスの使用のために提供され得る。) 「[0034] Organic light emitting diode display device 10 may further include one or more thin film transistors (not shown) which are positioned between first and second substrates 100 and 200 and electrically connected to the respective organic light emitting diodes (not shown) to control the emission of light for the respective organic light emitting diodes (not shown).」 (有機発光ダイオード表示装置10は、第1の基板100と第2の基板200との間に配置され、それぞれの有機発光ダイオード(図示せず)のための光の放出を制御するためにそれぞれの有機発光ダイオード(図示せず)に電気的に接続された一つ以上の薄膜トランジスタ(図示せず)を更に含み得る。) 「[0035] Since the present invention can be applied regardless of which structure display area DA has, the detailed descriptions and illustrations of display area DA will be omitted herein.」 (本発明は、表示領域DAがどのような構造であっても適用可能であるため、ここでは表示領域DAの詳細な説明及び図示を省略する。) 「[0036] At this time, a sealing material 300 such as frit is applied along an edge of second substrate 200, and is cured by applying heat to the applied sealing material 300, in order to join first and second substrates 100 and 200. Then, the space between first and second substrates 100 and 200 is sealed to protect the one or more organic light emitting diodes (not shown) from external gases, moisture, and air.」 (このとき、第1の基板100と第2の基板200とを接合するために、フリットなどのシール材300が第2の基板200の縁部に沿って塗布され、塗布されたシール材300に熱を加えることによって硬化される。その後、第1基板100と第2基板200との間の空間が封止されて、外部のガス、水分及び空気から一つ以上の有機発光ダイオード(図示せず)を保護する。) 「[0037] Non-display area NA is a region of first substrate 100 extending beyond second substrate 200, and includes various elements for controlling operations of the organic light emitting diodes (not shown) which display images in accordance with an external signal. The various elements include a pad unit 410 constituted by pads extending from the interconnection of display area DA, a scan driver 430, a data driver 450, an emission control driver 470 and so on.」 (非表示領域NAは、第2の基板200を越えて延在する第1の基板100の領域であり、外部信号に従って画像を表示する有機発光ダイオード(図示せず)の動作を制御するための様々な要素を含む。当該様々な要素は、表示領域DAの配線から延長されたパッドで構成されたパッド部410、走査駆動部430、データ駆動部450、発光制御駆動部470などを含む。) 「[0038] Organic light emitting diode display device 10 includes a test unit 530 serving to check whether or not a crack occurred in sealing material 300. Organic light emitting diode display device 10 further includes interconnection 510 which is disposed inside sealing material 300 and non-display area NA. Test unit 530 is connected to both ends of interconnection 510 to measure a voltage at both ends of interconnection 510, and to compare the measured voltage with a reference voltage to determine whether or not a crack occurred in sealing material 300.」 (有機発光ダイオード表示装置10は、シール材300にクラックが発生したか否かを検査する検査部530を備える。有機発光ダイオード表示装置10は、シール材300の内部に配置された配線510及び非表示領域NAを更に含む。検査部530は、配線510の両端に接続され、配線510の両端の電圧を測定し、測定された電圧と基準電圧とを比較してシール材300にクラックが発生したか否かを判定する。) 「[0039] The thickness, width, and position of interconnection 510 may be selected properly by those skilled in the art depending on the thickness and width of sealing material 300.」 (配線510の厚さ、幅、及び位置は、シール材300の厚さ及び幅に応じて当業者によって適切に選択され得る。) 「[0040] As a method for disposing interconnection 510 inside sealing material 300, sealing material 300 may be applied to cover interconnection 510 in a state in which interconnection 510 is disposed to correspond to a position on first substrate 100 to which sealing material 300 is to be applied. However, the method is not limited thereto.」 (シール材300の内部に配線510を配置する方法として、第1基板100上のシール材300を塗布する位置に対応して配線510を配置した状態で、配線510を覆うようにシール材300を塗布してもよい。しかし、これに限定されるものではない。) (ウ) 第2図及び第3図 「第2図 [図:0001401152000001.jpg] 」 「第3図 [図:0001401152000002.jpg] 」 イ 引用発明の認定 前記アにおいて摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「 有機発光ダイオード表示装置10に含まれる第1基板100であって、([0032]) 前記有機発光ダイオード表示装置10は、シール材300にクラックが発生したか否かを検査する検査部530を備え、([0038]) また、シール材300の内部に配置された配線510を含み、([0038]) 検査部530は、配線510の両端に接続され、配線510の両端の電圧を測定し、測定された電圧と基準電圧とを比較してシール材300にクラックが発生したか否かを判定し、([0038]) 第1基板100上のシール材300を塗布する位置に対応して配線510を配置した状態で、配線510を覆うようにシール材300を塗布することで、シール材300の内部に配線510を配置し、([0040]) 配線510の厚さ、幅、及び位置は、シール材300の厚さ及び幅に応じて当業者によって適切に選択され得る、([0039]) 第1基板100。」 (3) 対比・判断 ア 対比 (ア) 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 a(a) 引用発明の「第1基板100」は、本件補正発明の「基板」に相当する。 (b) 引用発明の「シール材300」は、その「厚さ」があることを前提としているから、層構造を有することは自明であって、本件補正発明の「シーラント層」に相当する。 (c) そして、引用発明の「シール材300」は、「第1基板100上のシール材300を塗布する位置に対応して配線510を配置した状態で、配線510を覆うように」「塗布する」ことによって配置されることから、「第1基板100」に備えられるものと認められる。 したがって、本件補正発明と引用発明は、「シーラント層を備える基板」である点で一致する。 b(a) 引用発明の「配線510」は、その「厚さ」があることを前提としているから、層構造を有することは自明であって、本件補正発明の「第1導電線層」に相当する。 (b) 引用発明の「シール材300」に「発生」する「クラック」は、本件補正発明の「前記シーラント層における亀裂」に相当する。 (c) また、引用発明において、「シール材300にクラックが発生したか否かを検査する」ことは、本件補正発明の「前記シーラント層における亀裂を検知する」ことに相当する。 (d) 引用発明では、「検査部530は、配線510の両端に接続され、配線510の両端の電圧を測定し、測定された電圧と基準電圧とを比較してシール材300にクラックが発生したか否かを判定」していることから、「配線510」は、「検査部530」における「検査」が行われるように構成されたものであるといえる。 (e) 引用発明の「配線510の両端」の間は連続した導電線で構成されていることは明らかであるから、「配線510」は連続導電線を含むといえる。 (f) そして、引用発明の「配線510」は、「第1基板100上のシール材300を塗布する位置に対応して」配線510を配置した状態で、配線510を覆うようにシール材300を塗布することで、シール材300の内部に」「配置[される]」ことから、「第1基板100」に備えられるものと認められる。 (g) したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記シーラント層における亀裂を検知するように構成された、第1連続導電線を含む第1導電線層と、を備える基板」である点で一致する。 c 引用発明において、「第1基板100上のシール材300を塗布する位置に対応して配線510を配置した状態で、配線510を覆うようにシール材300を塗布することで、シール材300の内部に配線510が配置され」ることから、「配線510」と「シール材300」とが接触することは明らかである。 したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記第1導電線層は、前記シーラント層と接触して[いる]」点で一致する。 d 引用発明において、「配線510」が線材によって構成されていることは自明である。 また、「配線510の厚さ、幅、及び位置は、シール材300の厚さ及び幅に応じて当業者によって適切に選択され得る」ことから、本件補正発明と引用発明は、「前記第1導電線層の線材の幅及び厚さは、前記シーラント層の幅及び厚さに応じて選択されている」点で共通する。 (イ) 一致点及び相違点の認定 前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。 a 一致点 「 シーラント層と、 前記シーラント層における亀裂を検知するように構成された、第1連続導電線を含む第1導電線層と、 を備える基板であって、 前記第1導電線層は、前記シーラント層と接触しており、 前記第1導電線層の線材の幅及び厚さは、前記シーラント層の幅及び厚さに応じて選択されている 基板。」 である点。 b 相違点 本件補正発明においては、 「前記第1導電線層の線材の幅は、前記シーラント層の幅の約1/200~1/50であり、 前記第1導電線層の線材の厚さは、前記シーラント層の厚さの約1/20~1/5であり、 前記第1導電線層の線材の幅は、約2.5μm~10μmであり、 前記第1導電線層の線材の厚さは、約0.25μm~1μmである」のに対し、 引用発明においては、 「配線510」の線材の幅及び厚さは、シール材300の幅及び厚さに応じて選択されているものの、シール材300と配線510の幅及び厚さの具体的な比率や、配線510の具体的な幅及び厚さは不明である点。 イ 判断 前記相違点について検討する。 (ア)a まず、本願発明の相違点に係る発明特定事項の技術上の意義について検討すると、発明の詳細な説明の【0040】には、次の記載がある。 「 【0040】 シーラント層3におけるクラックへの高感度検知を図るには、第1導電線層4は所定の寸法とされる。いくつかの実施形態において、第1導電線層4の第1連続導電線の線材の幅は、シーラント層3の幅の約1/200~1/50(例えば、約1/150~1/75、約1/100)である。いくつかの実施形態において、第1導電線層4の第1連続導電線の線材の厚さは、シーラント層3の厚さの約1/20~1/5(例えば、約1/15~1/7.5、約1/10)である。一例としては、シーラント層3は、約500μmの幅と約5μmの厚さを有する。第1導電線層4の第1連続導電線の線材の幅は、約2.5μm~10μm、例えば約3.75μm~7.5μm、約5μmであってもよい。第1導電線層4の第1連続導電線の線材の厚さは、約0.25μm~1μm、例えば約0.375μm~0.75μm、約0.5μmであってもよい。」 b 前記aで摘記した記載によれば、前記相違点に係る「前記第1導電線層の線材の幅は、前記シーラント層の幅の約1/200~1/50であり、前記第1導電線層の線材の厚さは、前記シーラント層の厚さの約1/20~1/5であ[る]」ことの技術上の意義は、シーラント層におけるクラックへの高感度検知を図ることであり、「前記第1導電線層の線材の幅は、約2.5μm~10μmであり、前記第1導電線層の線材の厚さは、約0.25μm~1μmである」ことの技術上の意義は、シーラント層が「約500μmの幅と約5μmの厚さを有する」場合の、「前記シーラント層の幅の約1/200~1/50」の幅と、「前記シーラント層の厚さの約1/20~1/5」の厚さを規定したものと解される。 c なお、発明の詳細な説明の他の記載を参酌しても、「前記第1導電線層の線材の幅は、前記シーラント層の幅の約1/200~1/50であり、前記第1導電線層の線材の厚さは、前記シーラント層の厚さの約1/20~1/5であ[る]」ことと、シーラント層3におけるクラックへの高感度検知を図ることとの関係を具体的に説明する記載はない。 (イ) ところで、一般的に、基板上に積層された微細な二つの層の相対的な比率や具体的な寸法をどの程度にすべきかについては、当該二つの層の材料や機械的特性や電気的特性などの諸特性を考慮して、各層に求められる機能が十分に果たされるように設定されるのが通常である。 (ウ) そこで、引用発明の「配線510」について検討すると、「配線510」はシール材300にクラックが発生したか否かを検査するために設けられるものであるから、「シール材300」に対して、その幅及び厚さが大きくなるほどクラックの発生に起因する断線が生じにくくなるため、「シール材300」のクラックによる測定電圧の変化率が小さくなることは自明である。 (エ) また、引用発明は、引用文献1の[0011]、[0012]等に記載されるような「微小クラック」が発生したか否かを判定することを課題としており、「配線510」の幅及び厚さが「シール材300」に対して小さくなるほど、微小クラックが「シール材300」で発生した際に「配線510」にまで到達しにくくなり、この結果、測定電圧が変化せず、微小クラックが検知できないおそれがあることもまた自明である。 (オ) そして、引用発明においては、「配線510の厚さ、幅、及び位置は、シール材300の厚さ及び幅に応じて当業者によって適切に選択され得る」から、前記(ウ)及び(エ)の観点の下で、「シール材300」に微小クラックが発生したか否かを適切に判定できるように、「シール材300」に対する「配線510」の幅及び厚さの比率に所定の上限及び下限を設定することは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 (カ) また、相違点に係る構成のうち「前記第1導電線層の線材の幅は、約2.5μm~10μmであり、前記第1導電線層の線材の厚さは、約0.25μm~1μmである」ことについて、「前記第1導電線層の線材の幅は、前記シーラント層の幅の約1/200~1/50であり、前記第1導電線層の線材の厚さは、前記シーラント層の厚さの約1/20~1/5であ[る]」ことと前記(ア)で摘記した発明の詳細な説明【0040】の記載を考慮すると、実質的にシーラント層の幅が500μm、厚さが5μmであることを特定するものであると解されるが、第1導電線層やシーラント層の幅及び厚みをこのような値に特定することには発明の詳細な説明の記載を参酌しても格別の技術上の意義は認められず、所望の表示装置の設計仕様に応じて適宜定められるものにすぎないから、引用発明において、「配線510」や「シール材300」の厚さ及び幅を前記範囲とすることは、単なる数値範囲の最適化又は好適化であって、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 したがって、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。そして、相違点に係る本件補正発明の構成のように数値範囲を設定することによる臨界的意義も認められない。 (キ) 総合評価 以上のとおり、相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものであって、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本件補正発明の奏する効果としては、引用発明からは当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 請求人の主張等について (ア) 審判請求書の主張について a 審判請求書の主張内容 審判請求書における請求人の主張は、概略次のとおりである。 (a) クラックの検出について、引用文献1では、配線両端の電圧変化に基づいているが、本件補正発明は、第1連続導電線の抵抗値に着目している。したがって、異なる要因に従って、構造を設計することになるため、引用発明から出発して、当業者が、ありふれた最適化によって本件補正発明における線材の幅及び線材の厚さを得ることはできない。 (b) 本件補正発明は、所定の数値範囲を満たすことによって、破損又は明らかな欠陥によって、元の線抵抗値が明らかに増加し(10倍以上の差または変化)、容易に検出することができ、反対に、処理条件の違いによって引き起こされる導電線層の抵抗値の差や変化は、それほど大きくはならないから、処理条件の逸脱によって引き起こされた抵抗値変化によって生じる検出エラーを防止することができる。 b 請求人の主張についての検討 (a) 主張(a)について 請求人の前記a(a)の主張において、「第1連続導電線の抵抗値に着目している」としているが、本件補正発明では、抵抗値を測定することについて特定されておらず、請求項に基づかない主張であって参酌することはできない。 なお、引用発明においては、電圧を測定しているが、通常であれば電圧の変化を測定する際に、一定の電流の下で測定することは自明である。そして、一定電流下において電圧を測定することは、オームの法則によれば抵抗値を測定することと同等のことであって、請求人の主張する本件補正発明と引用発明の差異が生じるとは認められない。 したがって、請求人の上記主張(a)は採用できず、前記イの結論を左右するものではない。 (b) 主張(b)について 請求人の前記a(b)の主張は、本願の願書に添付した明細書等の記載に基づかない主張であって、明細書等の記載から当業者がその効果を推論できるものでもないから、当該主張を参酌することはできない。 なお、「シール材300」のクラックが発生した否かを適切に判定できるように配線の幅及び厚さのシール材に対する比率を選択することは当業者が容易になし得たことであることは前記イで検討したとおりである。 (イ) 上申書の主張について a 上申書の主張内容 令和4年9月30日に提出された上申書(以下、単に「上申書」という。)における請求人の主張は、概略次のとおりである。 本件補正発明において規定された線材の幅および線材の厚さを有する場合には、導電線層の抵抗を測定することによって、シーラント層における微小クラックと破断または断線とを識別することができ、プロセス変動に起因する様々な抵抗値によって生じる誤検出結果を回避することができるという予測できない技術的効果を奏する。 b 請求人の主張についての検討 まず、導電線層の抵抗を測定することが請求項の記載に基づくものではないこと、及び、電圧を測定するか、抵抗を測定するかという測定内容の違いによる実質的な効果の違いは認められないことは前記(ア)b(a)で検討したとおりである。 また、シーラント層における微小クラックと破断または断線とを識別することができることは明細書等に記載されておらず、明細書等の記載から当業者がその効果を推論できるものでもないから、当該主張を参酌することはできない。また、引用発明においても電圧測定値の違いによって、「微小クラックと破断または断線とを識別する」ことが可能であるといえるから、請求人の主張に沿って検討しても、その効果は格別なものとは認められない。 さらに、プロセス変動に起因する様々な抵抗値によって生じる誤検出結果を回避する旨の主張については前記(ア)b(b)で検討したとおりである。 (ウ) 小括 したがって、請求人の審判請求書及び上申書における主張はいずれも採用することできず、前記イの結論を左右するものではない。 (4) 独立特許要件の判断についてのまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 本件補正の適否のまとめ よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 5 上申書補正案について (1) 請求人は上申書で補正案を提示しており、その補正内容は、本件補正発明に、本件補正前の請求項5~7に記載の特定事項を用いて限定するものである。 (2)ア 上記補正案について検討すると、表示パネルにおける亀裂を検知する導電層をシーラント層の外側に形成する構成は、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(特開2013-11663号公報、段落【0020】、【0038】、【図2】、【図3】を参照)及び引用文献3(特開2012-220792号公報、段落【0021】~【0023】、【図2】を参照)に記載されるように周知技術であって、本件補正前の請求項5、6において特定される事項は、当業者が容易に導き出すことのできたものにすぎない。 イ また、本件補正前の請求項7において特定される事項について、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献4(特開2014-21479号公報、段落【0017】~【0025】、【図3】~【図5】)には、貼り付け部におけるクラック検出用配線(第1の配線)に並列して、ガラス基板101全体の外周部におけるクラック検出用の第2の配線を設けることにより、複数箇所のクラックに対する特定を可能とする構成が記載されており、表示パネルの亀裂を検知する第2導電線層を更に設けるにあたり、第1導電線層と並列に形成しようとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、その際に、2つのリード線により接続させることは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 ウ したがって、上申書補正案のものであっても、引用発明及び引用文献2~4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~19に係る発明は、令和3年9月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項16に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものであると認める。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由は、次のとおりである。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:米国特許出願公開第2011/0037744号明細書 3 引用文献に記載された事項 前記引用文献1には、前記第2の3(2)イにおいて認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明のうち、「前記第1導電線層の線材の幅は、約2.5μm~10μmであり、前記第1導電線層の線材の厚さは、約0.25μm~1μmである」という限定を省いたものである(前記第2の2参照)。 そうすると、前記第2の3(3)アにおいて検討した事項を踏まえると、本願発明と引用発明の相違点は、第2の3(3)ア(イ)bに記載した本件補正発明と引用発明の相違点に包含されるものであると認められる。 そして、本件補正発明と引用発明の相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであることは、前記第2の3(3)イで説示したとおりであるから、本願発明と引用発明の相違点に係る構成もまた、当業者が容易に想到し得たものであり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 また、本願発明の奏する作用効果としては、引用発明からは予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-007765

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