2022-007704
画像投影装置
- 審判番号
- 2022-007704
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-072647外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月23日
- 審決日
- 2023年02月27日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】岡部 博史
- 【請求人代理人】中谷 剣一
- 分類
- P18 .575-Z (G09G) / P18 .121-Z (G09G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
本願は、平成30年4月4日の出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
(同月22日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年5月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年5月23日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和4年5月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】人体上の暖色系の色を有する領域であり、且つ、非可視光を発する第1の領域を検出する検出部と、前記検出部が検出した第1の領域を含む第2の領域に対して可視光画像を投影する投影部と、前記可視光画像を生成する制御部と、を備え、前記制御部は、前記可視光画像の画素の色を、前記第1の領域内の当該画素に対応する位置の非可視光の発光強度が最も高い値から低くなるにしたがい、寒色系の色から暖色系に段階的に変化させる、画像投影装置。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】人体上の暖色系の色を有する領域であり、且つ、所定の発光強度以上の非可視光を発する第1の領域を検出する検出部と、前記検出部が検出した第1の領域を含む第2の領域に対して可視光画像を投影する投影部と、前記可視光画像を生成する制御部と、を備え、前記制御部は、前記可視光画像の画素の色を、前記第1の領域内の当該画素に対応する位置の非可視光の発光強度が最も高い値から低くなるにしたがい、寒色系の色から暖色系に段階的に変化させ、前記第1の領域の内、非可視光の発光強度が最も低い値となる領域に対応する前記画素の色を、暖色系の色に設定し、前記第2の領域の内、前記第1の領域以外の領域に対応する前記画素の色を、白色に設定する、画像投影装置。」
2 補正の目的
本件補正は、
本件補正前の「検出部」が検出する「非可視光を発する第1の領域」を、「所定の発光強度以上の非可視光を発する第1の領域」に限定するとともに、
本件補正前の「制御部」が設定する「可視光画像の画素の色」を、「前記第1の領域の内、非可視光の発光強度が最も低い値となる領域に対応する前記画素の色を、暖色系の色に設定[する]」とともに、「前記第2の領域の内、前記第1の領域以外の領域に対応する前記画素の色を、白色に設定する」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2) 引用文献に記載された発明の認定等
ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に発行された国際公開第2016/157260号(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体において付したものであり、以下同様である。
a [0001]
「[0001] 本開示は、非可視光の発光を検出した領域に対して、可視光を投影する可視光投影装置に関する。」
b [0012]~[0015]、[図1]
「[0012](実施の形態1)<1.手術支援システムの概要>以下では一例として、本開示の投影システムを、病院における手術支援に適用した実施の形態1を説明する。病院における手術支援に適用した投影システムを、手術支援システム100と称する。[0013] 最初に、実施の形態1にかかる手術支援システム100の概要を、図1を用いて説明する。図1は、手術支援システム100の構成を説明する図である。図1に示すように、手術支援システム100は、手術台110に載った患者120の鉛直方向上方に、撮像照射装置200が位置するように配置される。[0014] 手術支援システム100を利用するにあたって、手術を受ける患者120には、光感受性物質が血液中などに投与される。光感受性物質は、励起光を受光して蛍光を発する物質である。実施の形態1では、光感受性物質の一例として、インドシアニングリーン(以下、ICGと称する)を用いた場合を説明する。ICGは、医療承認されており、人体への使用が可能な試薬である。ICGは、血液中に投与されると血液やリンパ液の流れが滞っている患部130に蓄積される。ICGは、800nm前後の赤外励起光が照射されることにより、ピーク波長850nm前後の赤外蛍光を発する。従って、赤外蛍光の発している領域(ICG発光領域)を検出することができれば、患部130の領域を特定することが可能となる。[0015] 手術支援システム100は、ICGの赤外蛍光の発している領域を検出して、患部130の領域を特定するシステムである。手術支援システム100は、特定した患部130の領域が医師に視認可能となるように、特定した患部130の領域に対して可視光を投影する。これにより、手術支援システム100は、患部130への手術を行う際に、医師による患部130の領域特定を支援することができる。」
「[図1][図:0001396958000001.jpg]」
c [0016]~[0021]
「[0016] <2.手術支援システムの構成>続いて、手術支援システム100の構成の詳細について、図1を用いて説明する。手術支援システム100は、病院の手術室内に配置されて使用される。手術支援システム100は、主に、撮像照射装置200、投影制御装置300、メモリ240、赤外励起光光源230を備えている。また、手術支援システム100は、操作者140からの各種の設定操作を受け付けるために、表示制御装置150、ディスプレイ160、マウス170を備えている。更に、図示はしていないが、手術支援システム100は、撮像照射装置200を配置する位置を変更するための機構(撮像照射装置200と機械的に接続された駆動アームや、手術支援システム100の一式を載置する台座のキャスターなど)を備えている。[0017] 撮像照射装置200は、撮像手段や照射手段を一体的に内包した装置である。撮像照射装置200は、赤外カメラ210、ダイクロイックミラー211、プロジェクタ220を備えている。撮像照射装置200は、手術台110に横になっている患者120から発した赤外蛍光223を検出する。そして、プロジェクタ220から射出させた可視照射光222を、検出した赤外蛍光223が示す患部130の領域に対して照射する。赤外蛍光223をより適切に検出し、かつ、可視照射光222をより適切に照射するため、撮像照射装置200は、手術台110に載った患者120の直上に配置するとよい。[0018] 投影制御装置300は、手術支援システム100を構成する各部を統括制御する装置である。投影制御装置300は、赤外カメラ210、プロジェクタ220、赤外励起光光源230、メモリ240を制御可能なように、それらに電気的に接続されている。投影制御装置300は、例えばCPUやMPUで構成され、所定のプログラムを実行することによってその機能を実現する。なお、投影制御装置300の機能は、専用に設計された電子回路により実現されてもよい。[0019] メモリ240は、投影制御装置300が演算を実行するにあたって、適宜アクセスを行う記憶媒体である。[0020] 赤外励起光光源230は、少なくともICGの励起波長800nm前後の赤外励起光231を照射する光源である。赤外励起光光源230は、投影制御装置300からの制御信号に従って、赤外励起光231の照射のON/OFFを切り替えることができる。赤外励起光231の照射ムラを低減させるため、赤外励起光光源230は、手術台110に載った患者120の直上に配置するとよい。[0021] 表示制御装置150は、ディスプレイ160と、マウス170と電気的に接続されている。ディスプレイ160は、投影制御装置300の投影動作にかかる各種の設定を行うためのメニューを表示することができる。操作者140は、ディスプレイ160に表示されたメニューを見ながら、マウス170を把持して操作することにより、投影制御装置300の投影動作にかかる各種の設定を行うことができる。具体的には、ICG発光領域(患部130)に対して投影する投影色及びその階調数の切り替え、並びに、ICG発光領域の周囲(背景)及びその輪郭部に対して投影する投影色の切り替え、の設定を行うことができる。表示制御装置150は、操作者140から設定操作を受け付けると、投影制御装置300に対してその設定を反映させるための通知を行う。これにより、投影制御装置300は、操作者140によって設定された内容の投影動作を行うことができる。ディスプレイ160は、液晶表示方式、有機EL方式など各種方式が適用可能である。また、マウス170は操作手段の一例であり、タッチパネルやキーボードなど他の操作手段を用いてもよい。」
d [0028]~[0051]、[図2]
「[0028] <3.投影制御装置による画像処理>続いて、投影制御装置300による画像処理の詳細について説明する。図2は、投影制御装置300の画像処理にかかる構成を説明する図である。[0029] 図2に示すように、投影制御装置300は、ガウシアンフィルタ310、ゾーベルフィルタ311、2値化処理312、孤立点除去処理313、色変換処理314、遅延処理320、多値化処理321、色変換処理322、重畳処理323の処理機能を有している。これらの処理機能は、ハードウェアで実現してもよいし、ソフトウェアで実現してもよい。また、投影制御装置300は、インターフェイス330を介して、表示制御装置150と接続されている。[0030] 投影制御装置300が有する各処理機能の詳細について説明する。続きを表示(全13行)… (中略) …[0041] 色変換処理314は、ICG発光領域に対する可視光投影の視認性を上げるために、孤立点除去処理313が出力したエッジ成分(ICG発光領域の輪郭部)の色変換を行う。操作者140は、ICG発光領域の輪郭部の色を、選択肢として並んだ色のバリエーションの中から一つ選択することができる。色変換処理314は、操作者140により選択された色へと、エッジ成分(ICG発光領域の輪郭部)の色を変換する。… (中略) …[0043] 多値化処理321は、遅延処理320から出力された赤外画像に対して、多値化処理を行う。例えば、元の赤外画像の階調が256階調であるとする。多値化処理321は、元の赤外画像に対して、2階調、4階調、8階調、256階調のいずれか操作者140が設定した階調への変換処理を行う。[0044] 2階調が設定された場合、多値化処理321は、閾値を127に設定する。そして、赤外画像のうち階調が0~127を示す画素について、その画素の値は0に変換される。一方、赤外画像のうち階調が128~255を示す画素について、その画素の値は255に変換される。これにより、多値化処理321は、2階調の赤外画像を生成する。[0045] 4階調が設定された場合、多値化処理321は、63、127、191の3つの閾値を設定する。そして、赤外画像のうち階調が0~63を示す画素について、その画素の値は0に変換される。また、赤外画像のうち階調が64~127を示す画素について、その画素の値は85に変換される。また、赤外画像のうち階調が128~191を示す画素について、その画素の値は170に変換される。また、赤外画像のうち階調が192~255を示す画素について、その画素の値は255に変換される。これにより、多値化処理321は、4階調の赤外画像を生成する。… (中略) …[0050] 色変換処理322は、ICG発光領域に対する可視光投影の視認性を上げるために、多値化処理321が出力した赤外画像(ICG発光領域の面部及び、面部を囲む背景)の色変換を行う。操作者140は、ICG発光領域の面部の色を、選択肢として並んだ複数の色のバリエーションの中から一つ選択することができる。同様に、操作者140は、ICG発光領域の面部を囲む背景の色を、選択肢として並んだ複数の色のバリエーションの中から一つ選択することができる。本実施の形態では、背景の色として、黒色又は白色のうち一つを選択することができる。特に、背景の色として白色を選択した場合、無影灯を点灯させる必要なく、手術に必要な術野の明るさと、ICG発光領域の視認性を両立することができる。色変換処理322は、操作者140により選択された色へと、赤外画像(ICG発光領域の面部及び、面部を囲む背景)の色を変換する。[0051] 重畳処理323は、色変換処理322から出力された色変換済みの赤外画像(ICG発光領域の面部及び、面部を囲む背景)に対して、色変換処理314から出力された色変換済みのエッジ成分(ICG発光領域の輪郭部)を重畳処理する。この重畳処理の対象となる赤外画像とエッジ成分は、同タイミングで赤外カメラ210により撮像された赤外画像に基づくことは先述したとおりである。重畳処理323は、出力302を介して、重畳処理済みの赤外画像に基づく投影制御データを、プロジェクタ220に供給する。これにより、プロジェクタ220は、ICG発光領域の面部、面部を囲む背景、輪郭部に対して可視光を投影することができる。」
「[図2][図:0001396958000002.jpg]」
e [0053]~[0068]、[図3(B)]
「[0053] <4.投影制御装置による画像処理>続いて、操作者140が各種の設定操作を行う際に、ディスプレイ160に表示される画面について説明する。図3は、操作者140が各種の設定操作を行う際に、表示される画面を説明する図である。[0054] 図3に示すように、ディスプレイ160には、複数のタブにより区分けされたウインドウが表示される。複数のタブのそれぞれは、ICG発光領域の面部を囲む背景の色を示している。図3に示す例では、複数のタブのそれぞれは、黒背景タブ400、白背景タブ500、黄色背景タブ600を示している。操作者140は、いずれかのタブを、マウス170を用いてクリックすることにより、いずれかの背景色を選択する。いずれかのタブが選択されると、ディスプレイ160は、その選択されたタブにかかる選択項目のメニューを、他のタブにかかる選択項目のメニューの前面に表示する。[0055] 図3(A)、(B)に示す各メニューの構成例について説明する。続きを表示(全12行)… (中略) …[0062] 続いて、図3(B)を用いて、ICG発光領域の面部を囲む背景の色として白色が選択された場合を説明する。図3(B)は、ICG発光領域の面部を囲む背景の色として白色が選択されたときのメニューを示している。[0063] 操作者140は、白背景タブ500を、マウス170を用いてクリックすると、ディスプレイ160は、図3(B)に示すように、白背景が選択された場合に、ICG発光領域の面部に対して投影する色(項目510)、ICG発光領域の面部に対する投影の階調数(項目520)、ICG発光領域の輪郭部(面部と背景との境界)に対して投影する色(項目530)、のそれぞれを選択するためのボタンを配置したメニューを表示する。項目510、項目520、項目530について順番に説明する。[0064] まず、項目510について説明する。ICG発光領域の面部に対して投影する色(項目510)を選択するために、青色ボタン511、シアン色ボタン512、緑色ボタン513、赤色ボタン514、OFFボタン515が配置され表示される。操作者140が項目510のいずれかのボタンを選択した場合の投影色の切り替え動作については、黒背景の場合に項目410のいずれかのボタンを選択した場合と同様であるため、詳細説明は省略する。[0065] 次に、項目520について説明する。白背景が選択されたか否かに関わらず、ICG発光領域の面部に対する投影の階調数を選択するために、2階調ボタン521、4階調ボタン522、8階調ボタン523、256階調ボタン524が配置され表示される。操作者140が項目520のいずれかのボタンを選択した場合の階調数の切り替え動作については、黒背景の場合に項目420のいずれかのボタンを選択した場合と同様であるため、詳細説明は省略する。[0066] 最後に、項目530について説明する。ICG発光領域の輪郭部に対して投影する色(項目530)を選択するために、青色ボタン531、シアン色ボタン532、緑色ボタン533、赤色ボタン534、OFFボタン535が配置され表示される。操作者140が項目530のいずれかのボタンを選択した場合の投影色の切り替え動作については、黒背景の場合に項目430のいずれかのボタンを選択した場合と同様であるため、詳細説明は省略する。[0067] 図3(A),(B)に示すように、手術支援システム100は、ICG発光領域の面部を囲む背景の色に応じて、選択できるICG発光領域の色及び、エッジ部分の色を限定させている。換言すると、選択した背景色によって、面部及び輪郭部の色として選択できる色の選択肢を異ならせている。すなわち、黒背景を選択したときに、面部及び輪郭部の色として選択できる色の選択肢(白色、黄色、緑色、シアン色)と、白背景を選択したときに、面部及び輪郭部の色として選択できる色の選択肢(青色、シアン色、緑色、赤色)とを異ならせている。詳細説明は省略するが、黄色背景タブ600がクリックされ、黄色背景が選択された場合も、黒背景及び白背景が選択された場合とは、面部及び輪郭部の色として選択できる色の選択肢を異ならせる。これにより、操作者140は、背景色に対して適切な面部及び輪郭部の色を、迅速に選択することができる。[0068] なお、背景色の色にかかわらず、ICG発光領域の面部に対して投影する色と、輪郭部(面部と背景との境界)に対して投影する色とを同じ色とした場合、ICG発光領域の面部と輪郭部の見分けがつかなくなる。そのため、ICG発光領域の面部と輪郭部とで、同色の投影色の選択はできないようにしてもよい。例えば、面部の色選択にかかる項目410で黄色ボタン412を選択し、ICG発光領域の面部に対する投影色を黄色に切り替えたときは、輪郭部の色選択にかかる項目420では、黄色ボタン432を自動的に押せないようにしてもよい。但し、例外として、OFFボタン415、435については、面部及び輪郭部に対する投影をOFF状態とすることが目的であるため、同時にボタンを押せるようにしてもよい。これにより、プロジェクタ220が投影する全画面を強制的に黒画面にできるようにしてもよい。黒背景の場合で説明したが、白背景の場合もこれらは同様である。」
「[図3(B)][図:0001396958000003.jpg]」
f [0069]~[0072]
「[0069] ここで、ICG発光領域の面部を囲む背景の色に応じて、選択できるICG発光領域の面部及び輪郭部の色を限定させる意義について詳細を説明する。[0070] 投影光の色の差に対する視認性を高めるために、最も重要な色の要素が「明度差」であり、その次に「彩度差」「色相差」の順番になることが一般的に知られている。例えば、明度が最も低い黒色を背景色とした場合に、明度差が一番大きくなる色として、無彩色の中で明度が一番大きい白色、有彩色の中で明度が一番大きい黄色があげられる。つまり、背景色を黒色とした場合に視認性を最も高くするためには、ICG発光領域の面部に対する投影光の色として白色や黄色を選択すればよい。黒色と黄色の組み合わせの例としては、運転手への注意喚起を促す「警戒標識」の交通標識や、「製造物責任法(PL法)」に基づき製品に貼られるラベル等にも採用されている。[0071] 一方、明度が最も高い白色を背景色とした場合に、明度差が一番大きくなる色として、無彩色の中で明度が一番小さい黒色、有彩色の中で明度が一番小さい青色があげられる。つまり、背景色を白色とした場合に視認性を最も高くするためには、ICG発光領域の面部に対する投影色の色として黒色や青色を選択すればよい。但し、背景色が白色で、ICG発光領域の面部への投影色が黒色の組み合わせとした場合、赤外カメラ210より撮像された赤外画像中の黒い部分(ICG発光強度が弱い部分)が白色に投影され、赤外カメラ210より撮像された赤外画像中の白い部分(ICG発光強度が強い部分)が黒色に投影されてしまう。このとき、操作者140が患部130に投影されたICGの発光強度分布を間違って認識してしまう可能性があるため、色の組わせとしては避けるほうが望ましい。従って、背景色を白色とした場合に、操作者140が誤認識することなくかつ視認性を最も高くするためには、ICG発光領域の面部への投影色の色として青色を投影色として選択すればよい。白色と青色の組み合わせの例としては、運転手に対して瞬時に情報を伝えるための「指示標識」や「案内標識」などの交通標識にも採用されている。[0072] 上記では、視認性を高めるために、背景色に応じて異なる投影色を選択可能とした。これは、患部130の色に応じて医師に見やすい投影色を選択可能としてもいいし、眼の負担の少ない投影色を選択可能としてもよい。或いは、手術中に患部130等から生じる体液の色とは異なる投影色を選択可能としてもよいし、投影対象となる患部の表面状態(血管の脈管や切断面の組織状態など)が見やすい投影色を選択可能としてもよい。」
g [0075]~[0077]
「[0075] <5.投影映像>続いて、手術支援システム100による患者120に対する投影映像について説明する。図4は、背景色が黒色で階調数を2階調に限定した場合の投影映像を示すイメージ図である。[0076] 背景色を黒色に選択した場合、図4(A)~(D)に示す背景132のように、ICG発光強度が弱い領域(ICG非発光領域)では、階調が0に変換されるため投影光が投影されない。一方、ICG発光強度が強い領域では投影階調が255に変換され、図4(A)~(D)に示す患部130のように、操作者140に選択された投影色に応じた色の投影光が投影される。さらに、ICG発光領域の輪郭部に対しても、図4(A)~(D)に示す輪郭部131のように、選択された投影色に応じた色の投影光が照射される。[0077] 図5は、背景色が白色で階調数を2階調に限定した場合の投影映像を示すイメージ図である。背景色を白色に選択した場合、図5(A)~(D)に示す背景132のように、ICG発光強度が弱い領域(ICG非発光領域)では、RGBのいずれも階調が255に変換され、白色の投影光が投影される。一方、ICG発光強度が強い領域では、RGBのうち設定された投影色に影響しない要素の階調が0に変換され、図5(A)~(D)に示す患部130のように、操作者140に選択された投影色に応じた色の投影光が投影される。さらに、ICG発光領域の輪郭部に対しても、図5(A)~(D)に示す輪郭部131のように、選択された投影色に応じた色の投影光が照射される。なお、背景色を白色に選択した場合に、ICG発光領域への投影色として青色を選択すると、最も視認性が高くなる。また、シアン色や緑色を選択すると、良好な視認性が得られるとともに、目が疲れにくくなる。また、症例によっては、体液が緑色など他の色と似ている場合がある。このときは、誤認を避けるため、赤色が選択される。」
h [0083]~[0084]、[図6(B)]
「[0083] 一方、背景色が白色である場合は、背景色の明度に比べてICG発光領域の面部に対する投影色の明度は必ず小さい値となる。そして、明度対比の効果により、人間の目には本来の明るさより暗くなったと感じられ、各階調の投影色の差分がより判別しにくくなる。従って、背景色を白色とする場合は、「明度差」で階調表現するのではなく、「明度差」の次に色の視認性において重要な要素である「彩度差」により階調を表現することが望ましい。[0084] 図6(B)は、ICG発光強度に対する彩度差を示す表である。図6(B)に示す例では、ICG発光強度が強くなるほど、彩度(C)が高くなるように階調表現が設定されている。すなわち、ICG発光強度が強い領域から弱い領域に行くに従って、彩度がC4、C3、C2、C1の順で変化するように階調表現が設定されている。そして、図6(A)に示す患部130A~Dのように、4階調の場合、ICG発光強度が弱い順に0,85,170,255の4段階に階調を割り当て、それぞれの階調に対して彩度をC1、C2,C3、C4に設定する。ここでは、ICG発光強度は、患部130A,130B,130C、130Dの順に強くなっているとする。このとき、撮像照射装置200は、患部130Aに対して、彩度C1による投影色(例えば青色)の投影を行う。患部130Bに対して、彩度C2による投影色の投影を行う。また、患部130Cに対して彩度C3による投影色の投影を行う。そして、患部130Dに対して彩度C4による投影色の投影を行う。これにより、背景色を白色とした場合であっても、ICG発光領域の面部に対して、視認性の高い階調表現による映像投影を行うことができる。」
「[図6(B)][図:0001396958000004.jpg]」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「ICGの赤外蛍光の発している領域を検出して、患部130の領域を特定し、特定した患部130の領域が医師に視認可能となるように、特定した患部130の領域に対して可視光を投影する手術支援システム100であって([0015])、手術支援システム100は、撮像照射装置200、投影制御装置300を備え([0016])、撮像照射装置200は、赤外カメラ210、プロジェクタ220を備えており、手術台110に横になっている患者120から発した赤外蛍光223を検出し、プロジェクタ220から射出させた可視照射光222を、検出した赤外蛍光223が示す患部130の領域に対して照射し([0017])、操作者140は、ICG発光領域(患部130)に対して投影する投影色の切り替え、並びに、ICG発光領域の周囲(背景)及びその輪郭部に対して投影する投影色の切り替え、の設定を行うことができ([0021])、続きを表示(全16行)ICG発光領域の輪郭部に対して投影する色(項目530)を選択するために、OFFボタン535が配置され表示され、OFFボタン535については、輪郭部に対する投影をOFF状態とするためのものであり([0066]、[0068])、投影制御装置300は、色変換処理314、多値化処理321、色変換処理322、重畳処理323の処理機能を有しており([0029])、色変換処理314は、操作者140により選択された色へと、エッジ成分(ICG発光領域の輪郭部)の色を変換し([0041])、多値化処理321は、元の赤外画像に対して、2階調、4階調、8階調、256階調のいずれか操作者140が設定した階調への変換処理を行い([0043])、4階調が設定された場合、多値化処理321は、63、127、191の3つの閾値を設定し、赤外画像のうち階調が0~63を示す画素について、その画素の値は0に変換され、赤外画像のうち階調が64~127を示す画素について、その画素の値は85に変換され、赤外画像のうち階調が128~191を示す画素について、その画素の値は170に変換され、赤外画像のうち階調が192~255を示す画素について、その画素の値は255に変換され([0045])、色変換処理322は、操作者140により選択された色へと、赤外画像(ICG発光領域の面部及び、面部を囲む背景)の色を変換し([0050])、重畳処理323は、色変換処理322から出力された色変換済みの赤外画像(ICG発光領域の面部及び、面部を囲む背景)に対して、色変換処理314から出力された色変換済みのエッジ成分(ICG発光領域の輪郭部)を重畳処理し、重畳処理済みの赤外画像に基づく投影制御データを、プロジェクタ220に供給し、プロジェクタ220は、ICG発光領域の面部、面部を囲む背景、輪郭部に対して可視光を投影することができ([0051])、背景色を白色とした場合に、操作者140が誤認識することなくかつ視認性を最も高くするためには、ICG発光領域の面部への投影色の色として青色を投影色として選択すればよく([0071])、視認性を高めるために、投影対象となる患部の表面状態(血管の脈管や切断面の組織状態など)が見やすい投影色を選択可能としてもよく([0072])、ICG発光強度が強くなるほど、彩度(C)が高くなるように階調表現が設定され、4階調の場合、ICG発光強度が弱い順に0、85、170、255の4段階に階調を割り当て、それぞれの階調に対して彩度をC1、C2、C3、C4に設定され([0084])、彩度 C4>C3>C2>C1である([図6(B)])、手術支援システム100。」
イ 引用文献2に記載された事項と周知技術の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に発行された米国特許出願公開第2015/0230715号明細書(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。翻訳文は当合議体によるものである。
a [0084]、FIG.1
「[0084] To view blood flow patterns within the artery 240, the switch 71 on the controller 70 is activated to place the operating microscope 1 in the fluorescent mode. As a result, the controller 70 transmits signals to the various devices of the operating microscope 1 to which the controller 70 is connected to make any desired adjustments to those devices. A fluorescent dye (e.g., ICG) is then intravenously injected into the bloodstream in the artery 240 upstream of the aneurysm 200. The fluorescent dye can, for example, be introduced into the bloodstream over a period of 0.5 second to several seconds (e.g., 0.5 second to two seconds). The lighting system 10, which was automatically adjusted by the controller 70, transmits the light 12 at a wavelength that causes the fluorescent dye within the artery 240 to fluoresce. As a result, those portions of the artery 240 that are supplied with blood (and thus supplied with the fluorescent dye) will generate fluorescent light. The fluorescent light emitted from the fluorescent dye within the artery 240 passes through the main lens 5 and the zoom system 7 and is directed to the camera 41 by the beam dividers 40 and 43. A continuous video of the surgical site 2 is recorded by the camera 41 and transmitted to the signal processing and analysis unit 50. The continuous video of the surgical site 2 can be immediately displayed on the touch screen 52 for the surgeon to view in real time. While recording the continuous video, a series of fluorescent images of the surgical site 2 are also recorded by the camera 41 and transmitted in the form of signals from the camera 41 to the signal processing and analysis unit 50 where they are stored. The signal processing and analysis unit 50 analyzes the images and produces a single image that summarizes the flow pattern within the artery 240. A signal containing the image produced by the signal processing and analysis unit is then transmitted to the touch screen 52 where the image is displayed.」
([0084] 動脈240内の血流パターンを見るために、コントローラ70上のスイッチ71を作動させて、手術用顕微鏡1を蛍光モードにする。これにより、制御部70は、制御部70が接続された手術用顕微鏡1の各種装置に信号を送信し、これらの装置に対して所望の調整を行う。次いで、蛍光色素(例えば、ICG)が、動脈瘤200の上流の動脈240内の血流中に静脈内注射される。蛍光色素は、例えば、0.5秒から数秒(例えば、0.5秒から2秒)の期間にわたって血流中に導入することができる。コントローラ70によって自動的に調節された照明システム10は、動脈240内の蛍光色素に蛍光を発生させる波長で光12を放射する。その結果、血液が供給された(すなわち、蛍光色素が供給された)動脈240の部分が蛍光を発生する。動脈240内の蛍光色素から放出された蛍光は、主レンズ5及びズームシステム7を通過し、ビーム分割器40及び43によってカメラ41に向けられる。手術部位2の連続する映像は、カメラ41によって記録され、信号処理及び分析ユニット50に送信される。手術部位2の連続する映像は、外科医がリアルタイムで見るために、タッチスクリーン52上に直ちに表示することができる。連続する映像を記録している間に、手術部位2の一連の蛍光画像もカメラ41によって記録され、カメラ41から信号処理及び分析ユニット50に信号の形態で送信され、そこに記憶される。信号処理及び分析ユニット50は、画像を分析し、動脈240内の血流パターンを要約する単一の画像を生成する。信号処理及び分析ユニットによって生成された画像を含む信号は、次いで、画像が表示されるタッチスクリーン52に送信される。)
「FIG.1[図:0001396958000005.jpg]」
b [0086]、[0109]、FIG.3
「[0086] FIG. 3 is a screen shot of the touch screen 52. As shown, a Map tab 403 has been selected and the surgeon has opted to view the maximum intensity of the fluorescent light in the imaged region by selecting a Maximum Intensity button 404. As a result of these selections, the signal analysis and processing unit 50 analyzes each point (e.g., each pixel) on the series of images transmitted to it by the fluorescent camera 41 and identifies the maximum fluorescent intensity that occurred at each point over the series of images. The signal analysis and processing unit 50 then produces an image that depicts the surgical site 2 based on the maximum fluorescent intensity that was observed at each point in the surgical site 2. That image is then transmitted in the form of a signal to the touch screen 52 where it is displayed in a display field 401. As indicated on the brightness scale 405, the highest fluorescent intensity recorded at the target site is shown as being brightest, the lowest fluorescent intensity recorded at the target site is shown as being darkest, and intermediate intensities are shown as having varying levels of brightness therebetween depending on their intensities.」
([0086] 図3は、タッチスクリーン52のスクリーンショットである。
図示されるように、マップタブ403が選択され、外科医は、最大強度ボタン404を選択することによって、画像化された領域における蛍光の最大強度を見ることを選択した。これらの選択の結果として、信号分析及び処理ユニット50は、蛍光カメラ41によって送信された一連の画像上の各点(例えば、各画素)を分析し、一連の画像上の各点で発生した最大蛍光強度を識別する。次いで、信号分析及び処理ユニット50は、手術部位2の各点で観察された最大蛍光強度に基づいて手術部位2を示す画像を生成する。次いで、その画像は、信号の形態でタッチスクリーン52に送信され、そこで表示フィールド401に表示される。輝度スケール405に示されるように、標的部位で記録された最も高い蛍光強度は、最も明るいものとして示され、標的部位で記録された最も低い蛍光強度は、最も暗いものとして示され、中間の強度は、それらの強度に依存して、それらの間で変化する輝度レベルを有するものとして示される。)
「[0109] While the maximum fluorescent light intensity has been described as being shown as a particular brightness, the maximum fluorescent light intensity can alternatively or additionally be displayed as a color. The different maximum fluorescent intensities at the surgical site can, for example, be displayed as different colors along a color scale.」
([0109] 最大蛍光強度は、特定の輝度として示されるように説明されたが、最大蛍光強度は、代替的に又は付加的に、色として表示され得る。手術部位における異なる最大蛍光強度は、例えば、カラースケールに沿って異なる色として表示することができる。)
「FIG.3[図:0001396958000006.jpg]」
c [0092]、[0111]、FIG.4
「[0092] Still referring to FIG. 4, the relative time that it takes for each point to reach the threshold intensity value is displayed as a false color image in display field 501. As indicated on the brightness scale 505, the point or points that experienced the shortest time period to reach the threshold intensity value is/are shown in red, the point or points that experienced the longest time period to reach the threshold intensity value is/are shown in blue, and the point or points that experienced intermediate time periods to reach the threshold intensity are shown as a combination of blue and red. Thus, regions of the surgical site that have good blood flow and thus are supplied with blood early will typically be shown nearer the red end of the color scale while regions of the surgical site that have poor blood flow and thus are supplied with blood late will typically be shown nearer the blue end of the color scale. The artery supplying the blood, which includes the unrepaired aneurysm 502, is shown as being nearer the red end of the color scale, thereby indicating that blood is flowing into the aneurysm 502 via this vessel. In contrast, tissue regions surrounding the artery (e.g., abducent vessels in tissue regions surrounding the artery) are shown as being nearer the blue end of the color scale, thereby indicating later blood flow in those regions. This image can help the surgeon to determine the severity of the aneurysm and the blood supply to the aneurysm.」
([0092] さらに図4を参照すると、各点が閾値強度値に達するのにかかる相対時間が、疑似カラー画像として表示フィールド501に表示される。輝度スケール505上に示されるように、閾値強度値に到達するための最短期間を経験した点は赤色で示され、閾値強度値に到達するための最長期間を経験した点は青色で示され、閾値強度に到達するための中間の期間を経験した点は青色と赤色の組み合わせとして示される。したがって、血流良好を有し、早期に血液が供給される手術部位の領域は、典型的には、カラースケールの赤色端部のより近くに示され、一方、血流が乏しく、遅れて血液が供給される手術部位の領域は、典型的には、カラースケールの青色端部のより近くに示される。修復されていない動脈瘤502を含む、血液を供給する動脈は、カラースケールの赤色端部により近いものとして示され、それによって、血液がこの血管を介して動脈瘤502に流入していることを示す。対照的に、動脈を取り囲む組織領域(例えば、動脈を取り囲む組織領域内の外転血管)は、カラースケールの青色端部により近いものとして示され、それによって、それらの領域内の遅れた血流を示す。この画像は、外科医が動脈瘤の重症度及び動脈瘤へ供給される血液を決定するに役立つ。)
「[0111] While color scales described herein for displaying different blood flow patterns range from red to blue, any of various other color scales can alternatively be used. In certain embodiments, for example, the color scale progresses from red to yellow to green to blue. For example, those points that required the shortest periods of time to reach the threshold intensity value can be displayed as blue, those points that required the longest periods of time to reach the threshold intensity value can be displayed as red, and those points that required intermediary periods of time to reach the threshold intensity value can be displayed as various shades of yellow or green.」
([0111] 異なる血流パターンを表示するための、本明細書に説明されるカラースケールは、赤色から青色に及ぶが、種々の他のカラースケールのうちのいずれかが、代替として使用されることができる。特定の実施形態では、例えば、カラースケールは、赤色から黄色、緑色、青色に進む。例えば、閾値強度値に到達するのに最短時間を必要とした点を青色として表示することができ、閾値強度値に到達するのに最長時間を必要とした点を赤色として表示することができ、閾値強度値に到達するのに中間時間を必要とした点を黄色又は緑色の様々な色合いとして表示することができる。)
「FIG.4[図:0001396958000007.jpg]」
(イ) 周知技術の認定
引用文献2の上記(ア)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は周知技術であると認める。
<周知技術>
「カメラで検出した光強度に基づいて画像を生成する際に、当該光強度の大きさに応じて、輝度スケールに沿った異なる輝度として表示したり、カラースケールに沿った異なる色として表示すること。また、このようなカラースケールとして、赤色から青色に進むものが用いられていること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「手術支援システム100」は、ICGの赤外蛍光の発している領域を検出して、患部130の領域を特定し、特定した患部130の領域が医師に視認可能となるように、特定した患部130の領域に対して可視光を投影するものである。
よって、本件補正発明の「画像投影装置」と引用発明の「手術支援システム100」は、「画像投影装置」の発明である点で一致する。
(イ)a 引用発明の「撮像照射装置200」は、手術台110に横になっている患者120から発した赤外蛍光223を検出するものである。
また、引用発明の「投影制御装置300」は、多値化処理321の処理機能を有しており、多値化処理321は、元の赤外画像に対して、操作者140が設定した階調への変換処理を行い、4階調が設定された場合、多値化処理321は、63、127、191の3つの閾値を設定し、赤外画像のうち階調が0~63を示す画素について、その画素の値は0に変換され、赤外画像のうち階調が64~127を示す画素について、その画素の値は85に変換され、赤外画像のうち階調が128~191を示す画素について、その画素の値は170に変換され、赤外画像のうち階調が192~255を示す画素について、その画素の値は255に変換するものである。
b そして、引用発明の「投影制御装置300」が設定した、階調63の閾値に対応する赤外蛍光223の発光強度が、本件補正発明の「所定の発光強度」に相当し、引用発明の「撮像照射装置200」が検出した赤外蛍光223の画像に対して、「投影制御装置300」の多値化処理321で4階調への変換処理を行ったときの、画素値85、170及び255の領域が、本件補正発明の「所定の発光強度以上の非可視光を発する第1の領域」に相当する。
また、前記「画素値85、170及び255の領域」は、投影対象となる血管の脈管や切断面の組織状態などの患部の表面状態であるから、本件補正発明の「人体上の暖色系の色を有する領域」に相当する。
c 引用発明の「撮像照射装置200」及び「投影制御装置300」は、前記「画素値85、170及び255の領域」を検出するものであるから、本件補正発明の「検出部」に相当する。
d よって、本件補正発明と引用発明は、「人体上の暖色系の色を有する領域であり、且つ、所定の発光強度以上の非可視光を発する第1の領域を検出する検出部」を備える点で一致する。
(ウ)a 引用発明の「プロジェクタ220」は、検出した赤外蛍光223が示す患部130の領域に対して可視照射光222を照射するものであり、ICG発光領域の面部、面部を囲む背景、輪郭部に対して可視光を投影することができるものであるから、本件補正発明の「可視光画像を投影する投影部」に相当する。
b 引用発明においては、OFFボタン535が配置され表示され、OFFボタン535については、輪郭部に対する投影をOFF状態とするためのものであるから、輪郭部をOFF状態にしたときは、可視光は、ICG発光領域の面部と、当該面部を囲む背景に投影されることになるところ、この「ICG発光領域の面部」及び「当該面部を囲む背景」は、本件補正発明の「前記検出部が検出した第1の領域を含む第2の領域」に相当する。
c よって、本件補正発明と引用発明は、「前記検出部が検出した第1の領域を含む第2の領域に対して可視光画像を投影する投影部」を備える点で一致する。
(エ) 引用発明の「投影制御装置300」は、操作者140により選択された色へと、赤外画像(ICG発光領域の面部及び、面部を囲む背景)の色を変換し、色変換済みの赤外画像に基づく投影制御データを、可視光を投影するプロジェクタ220に供給するものであるから、本件補正発明の「前記可視光画像を生成する制御部」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記可視光画像を生成する制御部」を備える点で一致する。
(オ)a 引用発明においては、背景色を白色とした場合に、操作者140が誤認識することなくかつ視認性を最も高くするために、ICG発光領域の面部への投影色の色として寒色系の色である青色を投影色として選択し、ICG発光強度が強くなるほど、彩度(C)が高くなるように階調表現が設定されているものであるから、ICG発光強度が強くなるほど、青色の低彩色から、高彩色に変化している、すなわち、ICG発光強度が最も高い値から低くなるにしたがい、寒色系の青色の高彩色から低彩色に変化していることになる。
b よって、本件補正発明と引用発明は、「制御部」は、「前記可視光画像の画素の色を、前記第1の領域内の当該画素に対応する位置の非可視光の発光強度が最も高い値から低くなるにしたがい、寒色系の色から段階的に変化させ」ている点で共通する。
(カ)a 引用発明においては、4階調の場合、ICG発光強度が弱い順に0、85、170、255の4段階に階調を割り当て、それぞれの階調に対して彩度をC1、C2、C3、C4(C4>C3>C2>C1)に設定している。
b 前記(イ)b及び(ウ)bの検討を踏まえると、引用発明における、「画素値0の領域」及び「背景」が、本件補正発明の「前記第2の領域の内、前記第1の領域以外の領域」に相当する。
c また、引用発明においては、「画素値0の領域」は、彩度C1の青色の低彩色に設定され、「背景」は、「白色」に設定されている。
d よって、本件補正発明と引用発明は、「制御部」は、「前記第2の領域の内、背景に対応する前記画素の色を、白色に設定する」点で共通する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
人体上の暖色系の色を有する領域であり、且つ、所定の発光強度以上の非可視光を発する第1の領域を検出する検出部と、
前記検出部が検出した第1の領域を含む第2の領域に対して可視光画像を投影する投影部と、
前記可視光画像を生成する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記可視光画像の画素の色を、前記第1の領域内の当該画素に対応する位置の非可視光の発光強度が最も高い値から低くなるにしたがい、寒色系の色から段階的に変化させ、
前記第2の領域の内、背景に対応する前記画素の色を、白色に設定する、
画像投影装置、である点。
(イ) 相違点
本件補正発明においては、「制御部」は、「前記可視光画像の画素の色を、前記第1の領域内の当該画素に対応する位置の非可視光の発光強度が最も高い値から低くなるにしたがい、寒色系の色から暖色系に段階的に変化させ」、「前記第1の領域の内、非可視光の発光強度が最も低い値となる領域に対応する前記画素の色を、暖色系の色に設定し」、「前記第2の領域の内、前記第1の領域以外の領域に対応する前記画素の色を、白色に設定する」のに対して、
引用発明においては、投影制御装置300は、投影色の色として青色を投影色として選択し、背景に対応する画素の色を白色に設定しているものの、ICG発光強度が強くなるほど、彩度が高くなるように階調表現が設定されており、色相は変えておらず、「画素値85」の領域の画素の色が暖色系の色でなく、彩度C2の青色に設定されており、「画素値0の領域」の画素の色が白色でなく、彩度C1の青色の低彩色に設定されている点。
(4) 当審の判断
ア 相違点について
前記相違点について検討する。
(ア)a 前記(2)イ(イ)で示したとおり、カメラで検出した光強度に基づいて画像を生成する際に、当該光強度の大きさに応じて、輝度スケールに沿った異なる輝度として表示したり、カラースケールに沿った異なる色として表示することや、このようなカラースケールとして、赤色から青色に進むものが用いられていることは、本願出願前において周知技術である。
b また、引用文献1の[0070]には、「投影光の色の差に対する視認性を高めるために、最も重要な色の要素が「明度差」であり、その次に「彩度差」「色相差」の順番になることが一般的に知られている。」と記載されており、「彩度差」よりは重要度は劣るものの、「色相差」も、投影光の色の差に対する視認性を高める要素として知られていることが記載されている。そして、当該記載は、カラースケールを用いて光強度を表現する前記周知技術とも整合するものである。
(イ)a そうすると、引用発明において、投影色の色として青色を投影色として選択し、ICG発光強度が強くなるほど、彩度が高くなるように階調表現が設定されている構成において、「彩度差」でなく「色相差」を用いるようにして、前記周知技術である、赤色から青色となるカラースケールを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用文献1の[0071]に記載の、背景色を白色とした場合に、ICG発光領域の面部への投影色の色として青色を投影色として選択すると、視認性が最も高くなるとの記載に鑑みれば、ICG発光強度が強い領域の視認性を高くするために、ICG発光強度が最も強い領域を青色(寒色系)とし、弱くなるにしたがい、赤色(暖色系)になるようにすることは、ごく自然な設計事項にすぎない。
b また、引用文献1の[0077]には、2階調ではあるが、ICG発光強度が弱い領域(ICG非発光領域)の色を、背景の色と同じ白色にすること(視認性がゼロになることは明らかである)が記載されており、当該記載に倣って、4階調においても、ICG発光強度が最も弱い「画素値0の領域」を、背景と同じ白色にすることに、格別の困難性は認められない。
(ウ) よって、引用発明において前記相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において下記主張をしているところ、当該主張に対する当合議体の見解は下記のとおりである。
(ア) 主張1について
a 請求人の主張
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本願請求項1記載の発明では、人体上の領域が暖色系の色を有する領域であることに着目して、第2の領域の内、第1の領域以外の領域に投影する可視光画像の画素の色を白色に設定することで、この領域を暖色系の色を有する領域として視認することができる。そして、第1の領域内、非可視光の発光強度が最も高い値となる領域に対応する画素の色を、人体の暖色系の色に対して色相の差が大きい寒色系の色に設定することで、非可視光の発光強度が高い値の領域を強調することができる。
無彩色である白は、色相と彩度の属性を有さず、明度の属性しか有しない。このような「無彩色である白」と、「人体上の暖色系の色を有する領域」とを組み合わせて、「色相差」という観点に言及している本願請求項1記載の発明の特徴(着眼点)は引用文献1には開示も示唆もされていない。
b 主張1についての当合議体の見解
前記ア(イ)に説示したとおり、引用発明においても、背景色を白色とした場合に、青色を投影色として選択するものであり、引用文献1の[0071]には、当該構成を採用することで、視認性が最も高くなることが記載されているから、引用発明においても請求人が主張する効果を奏していると認められる。
(イ) 主張2について
a 請求人の主張
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引用文献1から5では、本願請求項1記載の発明に関して、ノイズの影響による信号強度の変動の影響を受けて、第1の領域と、第1の領域以外の領域との境界が変動することにより、投影された可視光画像にちらつきが生じることについては一切開示も示唆もされていない。そのため、第1の領域の内、非可視光の発光強度が最も低い値となる領域に対応する画素の色を暖色系の色に設定し、第1の領域以外の領域に対応する画素の色を白色に設定することにより、ちらつきの影響を軽減するという、本願請求項1記載の発明が有する特徴を、引用文献1から5の開示内容からは容易に想到できるものではない。
b 主張2についての当合議体の見解
前記ア(イ)で説示したとおり、引用発明においては、ICG発光強度が高い領域を、白色の背景色に対して視認性の高い青色とし、ICG発光強度が低い領域を、視認性の低い色としており、その色として、周知技術や引用文献1の記載から、赤色や白色とすることは容易であるところ、ノイズによるちらつきが、通常、ICG発光強度が低い領域において生じることを考慮すれば、当該領域を背景色に対して視認性が低い色とすることによって、ノイズが目立たなくなる効果を奏するようになることは、当然に予測し得るものである。
(ウ) 主張3について
a 請求人の主張
折りたたみ中(クリックで表示)
引用文献1では、ICG発光領域の「面部」と、「背景」と、面部と背景との境界である「輪郭部」との3つの領域に分けて可視光画像を投影することを開示している。この輪郭部に投影される可視光の色に関して、段落0087では、「投影制御装置300は、患部130(ICG発光領域)の輪郭部に対してプロジェクタ220が投影する可視光の色の選択肢の中から、患部130の面部に対してプロジェクタ220が投影する可視光の色として操作者が選択した色は選択できないようにする。これにより、医師は、患部130(ICG発光領域)と輪郭部との見分けることができる。」と記載されている。その他にも段落0067-0068でも同様な開示内容が記載されている。このような引用文献1の記載によれば、引用文献1では、背景及び面部に対して両者の境界である輪郭部をむしろ目立たせるようにしていると言える。引用文献1における輪郭部を目立たせるという特徴は、面部と背景との境界が変動することにより生じるちらつきの影響を軽減するという本願請求項1記載の発明の特徴とは全く逆の特徴である。
b 主張3についての当合議体の見解
前記(3)ア(ウ)で説示したとおり、引用発明は、輪郭部に対する投影をOFF状態とすることが可能であるから、輪郭部を表示しないことが実質的に開示されている。
(エ) 小括
よって、請求人の前記主張1~3は、いずれも採用できず、前記アの結論を左右するものではない。
(5) 独立特許要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年11月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。
本願発明は、下記引用文献1に記載された発明及び下記引用文献2~5に示された周知技術に基づいて、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2016/157260号
引用文献2.米国特許出願公開第2015/0230715号明細書(周知技術を示す文献)
引用文献3.国際公開第2010/029888号(周知技術を示す文献)
引用文献4.国際公開第2005/122906号(周知技術を示す文献)
引用文献5.米国特許出願公開第2008/0004533号明細書(周知技術を示す文献)
3 引用文献1、2に記載された事項、引用発明及び周知技術の認定
引用文献1、2に記載された事項、引用発明及び周知技術の認定は、前記第2の3(2)ア及びイにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、
本件補正発明の「検出部」が検出する「所定の発光強度以上の非可視光を発する第1の領域」の「非可視光」について、「所定の発光強度以上」という限定を省くとともに、
本件補正発明の「制御部」について、「前記第1の領域の内、非可視光の発光強度が最も低い値となる領域に対応する前記画素の色を、暖色系の色に設定」し、「前記第2の領域の内、前記第1の領域以外の領域に対応する前記画素の色を、白色に設定する」ものであるという限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-007704