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特許拒絶査定不服審判

2022-006166

炭化珪素半導体装置

審判番号
2022-006166
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-193856外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年04月25日
審決日
2023年04月18日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-193856「炭化珪素半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月25日出願公開、特開2019- 67982〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成29年10月3日に出願された特願2017-193856号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和 3年 8月24日付け:拒絶理由通知
令和 3年10月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 1月21日付け:拒絶査定(原査定)
令和 4年 4月25日 :審判請求書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出
令和 4年12月13日付け:拒絶理由通知
令和 5年 2月 9日 :意見書、手続補正書の提出

2 本願発明

本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
n型の炭化珪素からなる半導体基板と、
前記半導体基板の表面に設けられた、前記半導体基板よりも不純物濃度の低いn型の炭化珪素結晶層からなる第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の、前記半導体基板側に対して反対側に設けられ、前記第1半導体領域とpn接合を形成するキャリアがアルミニウムであるp型の第2半導体領域と、
を備え、
前記第1半導体領域のn型不純物の不純物濃度は、1×1016/cm3以下であり、
前記第1半導体領域の、前記n型不純物以外の不純物であるボロンの不純物濃度は、前記第1半導体領域の前記n型不純物の不純物濃度よりも低く、かつ1×1014/cm3以下であり、
前記第1半導体領域の、前記n型不純物の不純物濃度が4×1014/cm3以下であり、厚さが150μm以上であることを特徴とする炭化珪素半導体装置。」

3 拒絶の理由

令和4年12月13日付けの当審が通知した拒絶理由の理由1(進歩性)は、次のとおりのものである。

本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-178412号公報

引用文献2:J. Zhang et. al.,“Electrically active defects in n-type 4H-silicon carbide grown in a vertical hot-wall reactor”,[online],[令和4 年11 月28 日検索],インターネット,Journal of Applied Physics,(米), Vol. 93, No. 8,2003年3月28日,p.4708-4714,<URL:https://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.1543240>

4 引用文献の記載等

(1)引用文献1の記載と引用発明

ア 引用文献1の記載

引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

「【技術分野】
【0001】
この発明は、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製されたバイポーラ半導体素子に関する。」
「【0026】
(第1の実施の形態)
図1は、この発明のバイポーラ半導体素子の第1実施形態としてのpn接合ダイオード(pinダイオード)20の断面図である。また、図2は、この第1実施形態の半導体積層構造を模式的に示す斜視図である。この第1実施形態では、第1の導電型としてのn型の4H型SiCで作製した基板21の上に、以下に説明する半導体層を形成する。なお、4H型の「H」は六方晶を表し、4H型の「4」は原子積層が4層周期となる結晶構造を表している。
【0027】
続きを表示(全35行)
上記n型の4H型SiC基板21上に、順次、n型4H-SiC、p型(第2の導電型)4H-SiCをエピタキシャル成長させて、後述するように、エピタキシャルpinダイオード20を作製する。
【0028】
図1に示すn型の4H型SiC基板21は、改良レーリー法によって成長させたインゴットをオフ角θを8度にしてスライスし、鏡面研磨することによって作製した。ホール効果測定法によって求めたSiC基板21のキャリヤ密度は8×1018cm-3、厚さは400μmである。
【0029】
カソードとなる基板21の(0001)シリコン面に、CVD法によって窒素ドープn型SiC層(n型成長層)とアルミニウムドープp型SiC層(p型成長層)を順次エピタキシャル成長で形成する。上記窒素ドープn型SiC層であるn型成長層が、図1に示すn型のバッファ層22とn型のドリフト層23となる。また、バッファ層22はドナー密度7×1017cm-3、膜厚は10μmである。また、ドリフト層23はドナー密度約5×1015cm-3、膜厚は40μmである。
【0030】
一方、上記アルミニウムドープp型SiC層であるp型成長層が、アノードとなるp型接合層24とp+型コンタクト層25となる。このp型接合層24はアクセプタ密度5×1017cm-3、膜厚は1.5μmである。また、p+型コンタクト層25はアクセプタ密度約1×1018cm-3、膜厚は0.5μmである。
【0031】
この実施形態のpinダイオード20は、上記SiC基板21の上に、n型バッファ層22、n型ドリフト層23、p型接合層24およびp+型コンタクト層25を順次形成したものであるが、作製時の処理条件を以下により詳しく説明する。なお、各層の成膜速度は、5μm/時とした。
【0032】
先ず、この実施形態のpinダイオード20は、材料ガスとして、シラン(SiH4)およびプロパン(C3H8)を用いる。ドーパントガスとして窒素(N2)およびトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3) を用いる。また、キャリアガスとして水素(H2)を用いる。各ガスの流量は、sccm(standard cc per minute)または、slm(standard liter minute)で表す。圧力は、kPa(kilo pascal)で表す。また、以下の説明において、各ガスの名称の後に付したかっこ内の数値は流量を表す。また、基板21の温度は1550℃に保たれており、処理チャンバー内の圧力は5.6kPaに保たれている。
【0033】
カソードとなるn型4HSiC基板21のシリコン面にバッファ層22を形成する工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、窒素(10sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は120分である。
【0034】
また、ドリフト層23の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、窒素(0.07sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は480分である。また、P型接合層24の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、トリメチルアルミニウム(5sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は18分である。また、p+型コンタクト層25の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、トリメチルアルミニウム(10sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は6分である。
【0035】
上記の各形成工程の処理により、この第1実施形態のpinダイオード用のSiCエピタキシャルウェーハを作製できる。
【0036】
次に、この第1実施形態となるSiCエピタキシャルウェーハに、次に説明する加工を施すことによって、図1に示すこの実施形態のpinダイオード20を作製できる。
【0037】
まず、反応性イオンエッチング(RIE)により、SiCエピタキシャルウエーハのアノードとなるp型接合層24とp+型コンタクト層25およびn型ドリフト層23を、図2に示すようなメサ構造に加工する。このRIEにおけるエッチングガスとしては、CF4(4弗化炭素)とO2を用いて、プラズマ処理装置により、圧力5Pa、高周波電力260Wの条件で深さ約2.5μmまでエッチングした。また、このときのマスク材料として、CVDによって堆積したSiO2膜(厚さ10μm)を用いた。
【0038】
図2に示すように、上記メサ構造は六角柱形状(より詳しくは六角錐のうち頂部が切り取られた残りの底部の様な形状)であり、上記六角柱形状のメサ状の半導体層31の6つのメサ面31Aを{01-10}面が微視的に現れる{0m-mn}面(m,nは整数)とした。この{01-10}面は、等価な対称性を持つ6つの面(10-10),(01-10),(-1100),(-1010),(0-110),(1-100)を示している。
【0039】
次に、図1に示すように、エッチングにより形成したメサ底部での電界集中を緩和するために、メサ底部に幅250μm、深さ0.7μmのp型JTE(ジャンクション・ターミネーション・エクステンション)26を設けた。このp型JTE26は、Alイオン注入により形成した。このAlイオン注入のエネルギーは30~450keVの間で6段階に変え、トータルドーズ量は1.2×1013cm-2である。また、このp型JTE26の形成時には、JTE26の注入層がボックスプロファイルとなるように設計した。イオン注入は全て室温で行い、イオン注入のマスクには、グラファイト(厚さ5μm)を用いた。注入イオンの活性化のための熱処理をアルゴンガス雰囲気中で1700℃、3分の条件で行った。アニールの後、温度1200℃、3時間のウェット酸化により保護膜としての熱酸化膜27を形成した。なお、図1において、30は、絶縁保護膜(もしくは酸化膜)である。
【0040】
次に、基板21の下面に、Ni(厚さ350nm)を形成しカソード電極28とする。P+型コンタクト層25上に、Ti(チタン:厚さ350nm)とAl(アルミニウム:厚さ100nm)の膜をそれぞれ蒸着し、アノード電極29とする。アノード電極29は、Ti層29aとAl層29bから構成されている。最後に、1000℃で20分間の熱処理を行って、カソード電極28およびアノード電極29をそれぞれオーミック電極にする。なお、この実施形態ではアルミニウムイオン注入によってp型JTE26を形成したが、ボロン(B)のイオン注入を用いた場合でも同様の効果がある。
【0041】
そして、この実施形態では、図2に示すように、上記n型の4H型SiC基板21,n型SiCバッファ層22およびn型SiCドリフト層23を、上記六角柱形状のメサ状の半導体層31の形状に合わせて、ダイシングにより六角柱形状に切り分けた。よって、この切り分けられたn型の4H型SiC基板21,n型SiCバッファ層22,n型SiCドリフト層23で構成された基部33は、上記六角柱形状のメサ状の半導体層31の6つのメサ面31Aと同様に{01-10}面が現れる6つの側面33Aを有する。
【0042】
この第1実施形態のpinダイオード20の耐電圧は3600Vであり、オン電圧は3.7Vである。上記のpinダイオード20に順方向に電流密度100A/cm2で1時間通電し、通電開始直後と1時間通電後の室温での電流電圧特性をカーブトレーサで測定した。この測定の結果は、順方向電流密度100A/cm2での通電開始直後の順方向電流電圧特性と、1時間通電後の順方向電流電圧特性との順方向電圧差ΔVfは、0.1V以下であり、ほとんど差がなかった。したがって、この第1実施形態のpinダイオード20は、上述の1時間の通電後もほとんど劣化していなかった。」

図1、2は、以下のとおりのものである。

【図1】

[図:0001398916000001.jpg]

【図2】

[図:0001398916000002.jpg]

イ 引用発明

上記アからみて、引用文献1には、第1の実施の形態に関して、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「キャリヤ密度が8×1018cm-3であり、カソードとなるn型の4H-SiC基板21と、
SiC基板21に形成された、ドナー密度が約5×1015cm-3、膜厚が40μmで、窒素ドープn型SiC層であるn型のドリフト層23と、
アルミニウムドープp型SiC層であり、アノードとなるp型接合層24と、
を備え、
炭化珪素半導体で作製されたバイポーラ半導体素子としてのpinダイオード20。」

(2)引用文献2の記載等

ア 引用文献2の記載(翻訳文は合議体が作成した。)

(ア)「We have studied intrinsic and impurity related defects in silicon carbide (SiC) epilayers grown with fast epitaxy using chemical vapor deposition in a vertical hot-wall reactor.」(4708ページ上段1~2行)

(「縦型ホットウォールリアクターで、化学気相成長法を用いた高速エピタキシー法で成長させた炭化ケイ素(SiC)エピ層における真性及び不純物関連の欠陥を研究した。」)

(イ)「Another impurity boron, is suggested to create at least two electrically active levels in SiC: one shallow acceptor level and one deeper level.12 From both experimental studies13,14 and theoretical calculations,15 the shallow B acceptor level has been suggested as an off-centered boron residing on a Si site. For the deeper B-related level, known as the D center, different models involving complexes of B and intrinsic defects have been suggested.14,16,17」(4708ページ右下欄18~26行)

(「別の不純物のホウ素は、SiCに少なくとも2つの電気的に活性な準位:1つの浅いアクセプター準位と1つの深い準位、を形成することが示唆されている12。実験的研究13、14及び理論計算15の両方から、浅いBアクセプター準位は、Siサイトに存在する偏心ボロンとして示唆されている。Dセンターとして知られている、深い方のB関連準位については、Bの複合体と真性欠陥を含むさまざまなモデルが提案されている14、16、17。」)

(ウ)「An example of the typical DLTS and MCTS spectra is illustrated in Fig. 1. The negative peaks represent the electron traps whereas the positive peaks correspond to hole traps.」(4709ページ右欄下から17~13行)

(「典型的なDLTS及びMCTSスペクトルの例が、図1に示されている。負のピークは電子トラップを表し、正のピークはホールトラップに対応する。」)

(エ)「The MCTS spectra reveal three hole traps at temperatures of 120, 150, and 270 K, respectively.」(4710ページ左欄2~4行)

(「MCTSスペクトルは、それぞれ120、150及び270Kの温度で3つのホールトラップを明らかにする。」)

(オ)「The concentration of the D center was much lower than that of the shallow boron in our samples, usually below 1011 cm-3, which makes an accurate estimation of the concentration of this defect difficult. The D center is therefore not discussed in this article.」(4710ページ左欄11~15行)

(「Dセンターの濃度は、サンプル中の浅いボロンの濃度よりもはるかに低く、通常は1011cm-3未満であり、この欠陥の濃度を正確に推定することは困難である。したがって、この記事ではDセンターについては論じない。」)

(カ)「B. Impurities: B and Ti

The shallow B was observed by MCTS as a hole trap at around 125 K. The calculated energy level and the hole capture cross section were EV+0.27 eV and 6×10-14 cm2, respectively. The background concentration of the shallow B decreases from low-1013 to mid-1012 cm-3 with increasing growth temperatures (Fig. 5) One possible explanation is that the desorption of B-related species from the growing surface is enhanced at higher temperatures, giving rise to the reduced incorporation.(4711ページ右欄下から16~7行)

(「B.不純物:B及びTi

浅いBは、125K付近でホールトラップとしてMCTSによって観測された。計算されたエネルギー準位とホール捕獲断面積は、それぞれ、Ev+0.27eVと6×10-14cm2であった。浅いBのバックグラウンド濃度は、成長温度の増加とともに1013台前半から1012cm-3台半ばに減少する(図5)。考えられる説明の1つは、成長表面からのB関連種の脱離は、より温度で増強され、取り込みの減少を引き起こすことである。」)

(キ)「In the annealed samples the shallow B concentration decreased to 50%-75% of the initial value. This concentration determined by MCTS is only the electrically active fraction of the total concentration of the incorporated B. The rest of the B may be electrically inactive due to a certain type of passivation by, for instance, hydrogen,37 or they have formed complexes with other intrinsic defects to give rise to other electrically inactive boron-related levels. The decreased concentration of the shallow B after annealing is not expected by the model of hydrogen passivation, which would rather result in an increased concentration of the electrically active B as the hydrogen has diffused out during the annealing. This discrepancy may be explained by the very low concentration of B in these epilayers. If there is any hydrogen incorporated, the hydrogen may be more likely associated to the intrinsic defects of much higher concentration than the shallow B center. At the CVD growth temperatures the diffusion coefficient of B in as-grown SiC is very low,38 therefore the decrease in the shallow B concentration is not likely to be caused by B diffusion.」(4712ページ左欄1行~右欄7行)

(「アニールされたサンプルでは、浅いB濃度は初期値の50%~75%に減少した。MCTSによって決定されるこの濃度は、取り込まれたBの全体の濃度の電気的に活性な一部のみである。Bの残りの部分は、例えば水素による特定のタイプの不動態化のために電気的に不活性であるか37、あるいは、他の真性欠陥と錯体を形成して、他の電気的に不活性なボロン関連準位を生じさせている可能性がある。アニール後の浅いBの濃度の低下は、水素不動態化のモデルでは予想されず、むしろアニール中に水素が拡散するため、電気的に活性なBの濃度が増加することとなる。この不一致は、これらのエピ層におけるBの濃度が非常に低いことによって説明され得る。取り込まれた水素がある場合、水素は、浅いBセンターよりもずっと高い濃度の真性欠陥に関連している可能性が高くなる。CVD成長温度では、成長中のSiC中のBの拡散係数は非常に低く38、したがって、浅いB濃度の低下はB拡散によって引き起こされる可能性は低い。」)

イ(ア)上記アのとおり、引用文献2の4708ページ上段1~2行には、「縦型ホットウォールリアクターで、化学気相成長法を用いて高速エピタキシー法で成長させた炭化ケイ素(SiC)エピ層における真性性及び不純物関連の欠陥を研究した。」と記載されている。

また、引用文献2の4709ページ右欄下から17~13行には、典型的なDLTS及びMCTSスペクトルの例が、図1に示されており、正のピークはホールトラップに対応する旨が記載されており、4710ページ左欄2~4行には、「MCTSスペクトルは、それぞれ120、150及び270Kの温度で3つのホールトラップを明らかにする。」と記載されている。

引用文献2の4710ページ左欄11~15行(4708ページ右欄23~24行も参照。)には、「Dセンター(深い方のボロンに関連する準位)の濃度は、サンプル中の浅いボロンの濃度よりもはるかに低く、通常は1011cm-3未満であり、この欠陥の濃度を正確に推定することは困難である。したがって、この記事ではDセンターについては論じない。」と記載されている。

また、引用文献2の4711ページ右欄「B.不純物:B及びTi」の1~6行には、「浅いBは、125K付近でホールトラップとしてMCTSによって観測された。計算されたエネルギー準位とホール捕獲断面積は、それぞれEv+0.27eVと6×10-14cm2であった。浅いBのバックグラウンド濃度は、成長温度の増加とともに1013cm-3台前半から1012cm-3台半ばに減少する(図5)。」と記載されており、また、4712ページ左欄1行~右欄7行には、アニール後のサンプルでは、浅いB濃度は初期値から減少し、エピ層におけるBの濃度がとても低いことによって説明され得る旨が記載されている。

(イ)したがって、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されている。

「縦型ホットウォールリアクターで化学気相成長法を用いた高速エピタキシー法で成長したn型炭化ケイ素層について、深いボロン(Dセンター)の濃度は、通常1011cm-3未満で、十分に低く、浅いボロンの濃度は、アニール後に1013cm-3台前半から1012cm-3台半ばであったこと。」、及び、「ボロンはホールトラップとして観測されたこと。」

(3)その他の文献の記載

ア 文献1の記載

本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-15427号公報(以下、「文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は炭化珪素半導体装置に関するものである。」
「【0003】
より高電圧で動作させる半導体装置では、ユニポーラ型では素子抵抗の低減が困難となるので、耐圧層中で伝導に寄与するキャリアが電子と正孔との両方になるバイポーラ型を採用することが期待されている。耐圧層、アノード層およびカソード層の、スイッチング特性の改善などについては比較的よく検討されている(たとえば特許文献1、特許文献2、および特許文献3)。」
「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に関する炭化珪素半導体装置は、層の厚さが40μm以上であり、ドーピング濃度が0より大きく、かつ、2.5×1015/cm3以下である炭化珪素半導体層と、前記炭化珪素半導体層の表面に形成される、ドーピング濃度が1×1018/cm3以上であるp型層と、前記炭化珪素半導体層の前記表面の反対側の面である裏面に形成される、ドーピング濃度が1×1018/cm3以上であるn型層とを備え、前記p型層の厚さが、5μm以上30μm以下である。」
「【0014】
<実施形態>
<構成>
図1は、本実施形態に関する炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。図1に示されるように、炭化珪素半導体装置は、高濃度n型のカソード層1と、カソード層1の表面に形成された高純度の耐圧層2(半導体層)と、耐圧層2の表面に形成された高濃度p型のアノード層3と、カソード層1の裏面に形成されたカソード電極4と、アノード層3の表面に形成されたアノード電極5とを備える。
続きを表示(全13行)
【0015】
耐圧層2は、所望の動作電圧(耐圧)に応じて、その厚さおよびドーピング濃度が設定される。
【0016】
たとえば、3300V耐圧では、層の厚さがおよそ20μm以上35μm以下で、ドーピング濃度がおよそ2×1015/cm3以上4.5×1015/cm3以下である。
・・・
【0019】
10000V耐圧では、層の厚さがおよそ100μm以上150μm以下で、ドーピング濃度がおよそ0.5×1015/cm3以上1×1015/cm3以下である。なお、耐圧層の導電型はn型でもp型でもよい。
【0020】
現状では、上記の小さいドーピング濃度を実現するにはn型層の方が容易である。少数キャリアが電子となるp型の方がデバイス特性上有利となる可能性があるが、高純度で小さいドーピング濃度を実現することが困難である。」
「【0026】
<作用>
以下の例では、13000V耐圧を想定し、耐圧層2として、厚さが150μm程度、n型のドーピング濃度が0.7×1015/cm3程度、キャリア時定数τが10μsecの場合について検討する。なお、カソード層1およびアノード層3のドーピング濃度は、およそ1×1018/cm3である。」
「【0050】
本実施形態では、耐圧層2、カソード層1およびアノード層3からなるpinダイオードの場合について述べたが、バイポーラ型のスイッチング素子に対しても適用することができる。たとえば、サイリスタであれば、本実施形態に示されたカソード層1およびアノード層3を備えることで、素子抵抗を低減することができる。
【0051】
また、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタであれば、カソード層1に対応させてエミッタ層を、アノード層3に対応させてコレクタ層をそれぞれ備えればよく、接合バイポーラトランジスタであれば、カソード層1に対応させてコレクタコンタクト層を、アノード層3に対応させてベースコンタクト層をそれぞれ備えればよい。
【0052】
また、本実施形態では13000V耐圧を想定した場合の耐圧層について述べたが、バイポーラ型の半導体装置であれば、想定耐圧によらず適用可能である。」
「【0054】
本実施形態によれば、炭化珪素半導体装置が、層の厚さが40μm以上であり、ドーピング濃度が0より大きく、かつ、2.5×1015/cm3以下である炭化珪素半導体層としての耐圧層2と、耐圧層2の表面に形成される、ドーピング濃度が1×1018/cm3以上であるアノード層3と、耐圧層2の表面の反対側の面である裏面に形成される、ドーピング濃度が1×1018/cm3以上であるカソード層1とを備える。」

イ 文献2の記載

本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2015/115202号(以下、「文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「[0001] 本技術は、炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。」

「[0012] 本技術の一態様に関する炭化珪素半導体装置は、第1導電型の炭化珪素基板と、前記炭化珪素基板上に形成され、ドーパントがドーピングされた第1導電型のドリフト層とを備え、前記ドリフト層は、前記ドーパントのドーピング濃度が4×1015cm-3以上2×1017cm-3以下の値となる地点から前記ドリフト層の表面に亘る、膜厚がdである耐圧保持層を有し、前記耐圧保持層の前記ドーパントのドーピング濃度は、前記耐圧保持層の前記ドリフト層の表面へ向かう膜厚方向において連続的に低下する。」

「[0022] <第1実施形態>(SBD 傾斜エピ)
<構成>
図1は、本発明の第1実施形態に関する炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。また、図2は、本発明の第1実施形態に関するエピタキシャル基板の構造を示す断面図である。
・・・
続きを表示(全16行)
[0030] 以下では、ドーパントのドーピング濃度が所定の値となる地点からドリフト層2の表面までの層を指して耐圧保持層と称する。
・・・
[0034] 各線形濃度分布層における膜厚方向の両端部(位置xi)におけるドーピング濃度fL(xi)が、ドリフト層の表面における不純物のドーピング濃度をドーピング濃度NF(=fL(x0)=εEC2/3qVB)、ドリフト層の基板界面における不純物のドーピング濃度をドーピング濃度NI(2×1017cm-3≦NI≦NS)、耐圧保持層の膜厚をd、所定の割合をPとしたとき、
・・・
[0040] 図13は、本実施形態における、好適な、半導体装置の耐圧とドリフト層の表面におけるドーピング濃度NFとの関係、及び、半導体装置の耐圧と耐圧保持層の厚さdとの関係を示す図である。図13において、左側の縦軸はドーピング濃度[cm-3]を、右側の縦軸は耐圧保持層の厚み[μm]を、横軸は(定格)耐圧[V]をそれぞれ示している。左側の縦軸は、ドーピング濃度を示す丸印の点に、右側の縦軸は、耐圧保持層の厚みを示す三角印の点にそれぞれ対応する。
・・・
[0043] ドリフト層の表面におけるドーピング濃度NFは、600V耐圧品を意図して作製する場合、1.58×1016cm-3から1.93×1016cm-3程度であればよく、より好適には、1.66×1016cm-3から1.84×1016cm-3程度であればよい。
[0044] 耐圧保持層の厚さdは、600V耐圧品を意図して作製する場合、3.87μmから4.27μm程度であればよく、より好適には、3.97μmから4.17μm程度であればよい。
・・・
[0061] ドリフト層表面におけるドーピング濃度NFは、13000V耐圧品を意図して作製する場合、3.51×1014cm-3から4.29×1014cm-3程度であればよく、より好適には、3.71×1014cm-3から4.10×1014cm-3程度であればよい。
[0062] 耐圧保持層の厚さdは、13000V耐圧品を意図して作製する場合、120.73μmから133.43μm程度であればよく、より好適には、123.90μmから130.26μm程度であればよい。
[0063] 13000V耐圧品を意図して作製する場合、ドーピング濃度NIは2×1017cm-3程度以上であることが好適であるが、4×1015cm-3程度以上であっても、その効果を生じる。」
「[0188] <第4実施形態>(pnダイオード 傾斜エピ)
<構成>
本実施形態は第1実施形態の変形例である。以下では、上記実施形態で説明した構成と同様の構成については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略する。
[0189] 図14は、本実施形態に関する炭化珪素半導体素子の構成を示す断面図である。本実施形態においては、半導体素子の例としてpnダイオードを挙げる。
[0190] pnダイオードにおいては、本来、電子とホールとが同時に流れることによる電導度変調効果による抵抗低減が見込まれうるが、炭化珪素半導体に固有の、少数キャリア寿命が短いという問題があるため、実際にはほぼ多数キャリアのみの電導により半導体素子の抵抗が決定される。すなわち、他に示す実施形態同様、本実施形態においても、本実施形態における耐圧保持層構造によるドリフト抵抗低減効果を見積もることができる。
[0191] 図14に示されるように、半導体素子である炭化珪素pnダイオード103は、4H-SiC(0001)面からオフ角を有するn型の、低抵抗である炭化珪素基板1と、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長によって形成された、n型のドリフト層2とを有するエピタキシャル基板100を備えている。なお、耐圧保持層の構成については、第1実施形態と同様である。
・・・
[0195] 本実施形態において、ドリフト層2の表面は、p型の炭化珪素アノード領域41の下面である。その深さからエピタキシャル層の表面までのエピタキシャル成長時のドーピング濃度は、例えば、3×1014cm-3から3×1018cm-3程度である。」

図13、14は、以下のとおりのものである。

[図:0001398916000003.jpg]

ウ 文献3の記載

本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2015/072210号(以下、「文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

「背景技術
[0002] SiC(炭化珪素)基板を用いた、ショットキーダイオード、pnダイオード、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体装置が、従来から存在している。SiCはSiに比べて高い絶縁破壊電界強度を有するために、SiC基板を用いたこれらの半導体装置は、Siでは適用不可能な超高耐電圧領域(10kV以上)においても用いることができる。
[0003] このような超高耐電圧領域においては、耐圧を確保するために、低濃度かつ厚膜のドリフト層が用いられる。よって、半導体装置がユニポーラデバイスとして用いられる場合にはドリフト抵抗、さらにはオン抵抗が大きくなりやすい。そこで、オン抵抗を低減させるために、しばしばバイポーラデバイスが用いられる。バイポーラデバイスとしては、例えばpnダイオード又はIGBTなどが挙げられる。バイポーラデバイスでは、電子及び正孔の両方のキャリアが伝導に寄与するため、低濃度のドリフト層が見かけ上あたかも高濃度でドーピングされたかのように働き(伝導度変調効果)、オン抵抗が著しく低減する。
[0004] バイポーラデバイスの性能を議論する上で、過剰キャリアが再結合により消失する時定数(キャリアのライフタイム)が重要な指標として挙げられる。ライフタイムが大きいほどバイポーラデバイスにおける伝導度変調効果が大きくなるため、結果としてオン抵抗を低減することができる。一方でライフタイムが大きすぎると、キャリアの蓄積によりバイポーラデバイスのスイッチング特性が悪化し、スイッチング損失の増大が生じる。したがって、デバイスの使用目的に応じて、ライフタイムを最適に制御する必要がある。
[0005] パワーデバイスの材料として通常用いられている、Si又はSiCなどの間接遷移型半導体では、バンド間における電子と正孔との再結合速度が遅いため、ライフタイムは大きくなる。しかし一方で、半導体材料中に不純物、真性欠陥、転位又は積層欠陥などの結晶欠陥が存在する場合は、バンドギャップ中にエネルギー準位(欠陥準位)を作る。電子と正孔とがこの欠陥準位を介して再結合する場合があり、この欠陥は再結合中心と呼ばれる。再結合中心が複数ある場合は、半導体材料としてのライフタイムは、それぞれの再結合過程によるライフタイムの逆数の和の逆数で表される。このため、複数ある再結合過程の中で、最もライフタイムの小さい過程により半導体材料のライフタイムが律速されることになる。
[0006] したがって間接遷移型半導体では、半導体材料が本来備えているバンド間遷移のライフタイムではなく、再結合中心によりライフタイムが決まる。特に、ライフタイムを小さくする主原因となる再結合中心は、ライフタイムキラーと呼ばれる。
[0007] これまでに、SiCのライフタイムキラーとなる欠陥の特定、又は、その低減を目的とした研究成果が数多く報告されている。」

5 対比

本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「炭化珪素半導体で作製されたバイポーラ半導体素子としてのpinダイオード20」、「キャリヤ密度が8×1018cm-3であり、カソードとなるn型の4H-SiC基板21」、「ドナー密度が約5×1015cm-3、膜厚が40μmで、窒素ドープn型SiC層であるn型のドリフト層23」、「アルミニウムドープp型SiC層であり、アノードとなるp型接合層24」は、それぞれ本願発明の「炭化珪素半導体装置」、「n型の炭化珪素からなる半導体基板」、「前記半導体基板の表面に設けられた、前記半導体基板よりも不純物濃度の低いn型の炭化珪素結晶層からなる第1半導体領域」、「前記第1半導体領域の、前記半導体基板側に対して反対側に設けられ、前記第1半導体領域とpn接合を形成するキャリアがアルミニウムであるp型の第2半導体領域」に相当する。

(2)引用発明の「n型のドリフト層23」は「ドナー密度が約5×1015cm-3」であるから、本願発明と引用発明とは、「前記第1半導体領域のn型不純物の不純物濃度は、1×1016/cm3以下であ」る点で一致する。

(3)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点と相違点は以下のとおりである。

<一致点>

「n型の炭化珪素からなる半導体基板と、
前記半導体基板の表面に設けられた、前記半導体基板よりも不純物濃度の低いn型の炭化珪素結晶層からなる第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の、前記半導体基板側に対して反対側に設けられ、前記第1半導体領域とpn接合を形成するキャリアがアルミニウムであるp型の第2半導体領域と、
を備え、
前記第1半導体領域のn型不純物の不純物濃度は、1×1016/cm3以下である炭化珪素半導体装置。」

<相違点>

<相違点1>

「前記第1半導体領域の、前記n型不純物以外の不純物であるボロンの不純物濃度」について、本願発明は、「前記第1半導体領域の、前記n型不純物以外の不純物であるボロンの不純物濃度は、前記第1半導体領域の前記n型不純物の不純物濃度よりも低く(以下、「相違点1-1」という。)、かつ1×1014/cm3以下である(以下、「相違点1-2」という。)」のに対し、引用発明では、「n型のドリフト層23」の、不純物であるボロンについて、そのような特定はなされていない点。

<相違点2>

「前記第1半導体領域の前記n型不純物の不純物濃度」について、本願発明は、「前記第1半導体領域のn型不純物濃度は、1×1016/cm3以下であり」、「前記第1半導体領域の、前記n型不純物の不純物濃度が4×1014/cm3以下であ」るのに対し、引用発明では、「n型のドリフト層23」は「ドナー密度が約5×1015cm-3」であり、本願発明の上記のような特定はなされていない点。

<相違点3>

「第1半導体領域」について、本願発明は、「厚さが150μm以上である」のに対し、引用発明では、「膜厚が40μm」である点。

6 判断

上記相違点について、検討する。

(1)相違点1について

ア まず、相違点1-1について検討する。

引用発明において、「n型のドリフト層23」は、「窒素ドープn型SiC層」であるところ、SiC層において、窒素はn型不純物であり、ボロンはp型不純物であることは技術常識である。また、「ドリフト層23」はn型層であるから、n型不純物濃度がp型不純物濃度よりも高いことは明らかである。

したがって、「ドリフト層23」のボロンの不純物濃度が、「ドリフト層23」のn型不純物の不純物濃度よりも低いものであることは、当然である。

よって、相違点1-1は、実質的なものではない。

イ 次に、相違点1-2について検討する。

(ア)上記4(2)イ(イ)のとおり、引用文献2には、「縦型ホットウォールリアクターで化学気相成長法を用いて成長したn型炭化ケイ素層について、深いボロンの濃度は、通常1011cm-3未満で、十分に低く、浅いボロン(Dセンター)の濃度は、アニール後に1013cm-3台前半から1012cm-3台半ばであったこと。」、及び、「ボロンはホールトラップとして観測されたこと。」との技術的事項が記載されている。

(イ)一方、引用発明の「pinダイオード20」は、「カソードとなるn型の4H-SiC基板21」と、「SiC基板21に形成された、ドナー密度が約5×1015cm-3」の「n型のドリフト層23」と、「アノードとなるp型接合層24」とを備えたものであり、「n型のドリフト層23」のドナー密度「約5×1015cm-3」は十分に低濃度であるといえるから、引用発明において、「n型のドリフト層23」は、「pinダイオード20」のi層であることが明らかである。

(ウ)そして、pinダイオードは、順方向動作時に、バイポーラ動作、すなわち、アノード側のp型層からホールが、カソード側のn型層から電子が、i層に流れ込み、i層は高濃度にドーピングがされた状態になり、その結果、伝導度変調が発生し、高抵抗だったi層は順方向の電流が流れるようになり低オン抵抗となるというのがその動作原理であるところ、順方向動作時に、i層であるドリフト層に少数キャリア(ホール)と多数キャリア(電子)を十分に供給する必要があることは、当業者における技術常識であるといえる。(必要であれば、<URL: https://metoree.com/categories/pin-diode/>を参照。)

(エ)以上によれば、引用発明において、「ドリフト層23」を、ホールを十分に供給するためにホールトラップを少ないものとすべきことは当業者には明らかである。

そうすると、引用発明において、「ドリフト層23」にホールが十分に供給されて、「ドリフト層23」のホールトラップが抑制されるように、「ドリフト層23」について、引用文献2に記載の技術的事項を採用して、縦型ホットリアクターを用いて成長し、深いボロンの濃度は十分に低く、浅いボロンの濃度はアニール後に1013cm-3台前半から1012cm-3台半ばとなるものとすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。

したがって、引用発明において、引用文献2に記載の技術的事項に基づき、相違点1-2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(2)相違点2及び相違点3について

相違点2及び相違点3について、まとめて検討する。

ア ドリフト層を有する炭化珪素半導体で作製された、pinダイオードなどのバイポーラ半導体素子において、ドリフト層の不純物濃度及び厚さは、炭化珪素半導体装置の耐圧を考慮して適宜設定すべき設計的事項であることは、当業者における技術常識である(必要であれば、上記文献1~3の記載を参照。)。

また、例えば、文献1には、層の厚さが40μm以上であり、ドーピング濃度が0より大きく、かつ、2.5×1015/cm-3以下である炭化珪素半導体層としての耐圧層を備える炭化珪素半導体装置(段落【0008】、【0054】)、10000V耐圧では、層の厚さがおよそ100μm以上150μm以下で、ドーピング濃度がおよそ0.5×1015/cm3以上1×1015/cm3以下である(段落【0019】)と記載されており、文献2には、ドリフト層の表面のドーピング濃度として、13000Vの耐圧品の場合、3.51×1014cm-3から4.29×1014cm-3程度であればよい(段落【0061】)と記載されている。

イ そして、上記4(1)アに摘記のとおり、引用文献1の段落【0042】には、「第1実施形態のpinダイオード20の耐電圧は3600V」と記載されているから、pinダイオード20に係る引用発明は、高耐圧素子であるといえるところ、文献1、2を参照した当業者であれば、引用発明において、耐圧をより高いものを実現したいとの要請があることは自明の事項である。

ウ 以上によれば、引用発明において、より高耐圧なバイポーラ半導体素子としてのpinダイオード20とするために、上記技術常識を参酌して、「n型のドリフト層23」の不純物濃度及び厚さを調整することにより、「約5×1015/cm3」の「ドナー密度」を4×1014/cm3以下のより低濃度のものとし、「40μm」の「膜厚」を150μm以上のより厚いものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(3)よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-006166

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