特許拒絶査定不服審判
2022-005935
車両を自律的にナビゲートするためのシステム、車両、および車両をナビゲートする方法
- 審判番号
- 2022-005935
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-015313外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月20日
- 審決日
- 2023年01月17日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】モービルアイ ビジョン テクノロジーズ リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (B60W) / P18 .113-WZ (B60W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-15313「車両を自律的にナビゲートするためのシステム、車両、および車両をナビゲートする方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年8月12日出願公開、特開2021-119072〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)2月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年2月10日(US)アメリカ合衆国、2015年5月20日(US)アメリカ合衆国、2015年6月4日(US)アメリカ合衆国、2015年6月19日(US)アメリカ合衆国、2015年7月15日(US)アメリカ合衆国、2015年9月9日(US)アメリカ合衆国、2015年9月17日(US)アメリカ合衆国、2015年12月1日(US)アメリカ合衆国、2015年12月1日(US)アメリカ合衆国、2015年12月15日(US)アメリカ合衆国、2015年12月18日(US)アメリカ合衆国、2015年12月21日(US)アメリカ合衆国、2015年12月21日(US)アメリカ合衆国、2015年12月21日(US)アメリカ合衆国、2015年12月22日(US)アメリカ合衆国、2016年1月5日(US)アメリカ合衆国、2016年1月5日(US)アメリカ合衆国、2016年1月5日(US)アメリカ合衆国、2016年1月5日(US)アメリカ合衆国、2016年1月11日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願である特願2017-542097号の一部を令和2年3月3日に新たな特許出願とした特願2020-36232号の一部を令和3年2月2日に新たな特許出願としたものであって、その手続は以下のとおりである。
令和3年6月30日(発送日:同年7月6日) :拒絶理由通知書
令和3年10月5日 :意見書の提出
令和3年12月15日(発送日:同年12月21日):拒絶査定
令和4年4月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年7月7日(発送日:同年7月12日) :拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。)
令和4年10月5日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし22に係る発明は、令和4年10月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
1 本願発明1
「 道路セグメントに沿って車両を自律的にナビゲートするためのシステムであって、
少なくとも1つのセンサから、前記道路セグメントの1つまたは複数の側面に関連する情報を受信し、
前記受信した情報に基づいて前記道路セグメントの局所的な特徴を決定し、
前記局所的な特徴の少なくとも1つの次元に基づき、前記局所的な特徴に関連する計算を実行し、
前記局所的な特徴に関連する計算の結果を前記道路セグメントの予め定められたシグネチャ特徴と比較することであって、前記予め定められたシグネチャ特徴が、前記道路セグメントに関連付けられた予め定められた道路モデル軌跡に沿った複数の位置に対応する複数の次元を含み、前記局所的な特徴に関連する計算の結果を前記道路セグメントの前記予め定められたシグネチャ特徴と比較することは、前記計算の結果を、前記予め定められたシグネチャ特徴の前記複数の次元のうちの少なくとも1つに基づいて実行される対応する計算の結果と比較することを含み、
前記局所的な特徴に関連する計算の結果と前記予め定められたシグネチャ特徴に基づいて実行される対応する計算の結果との間の相関関係に基づいて、前記予め定められた道路モデル軌跡に対する前記車両の現在位置を決定し、
前記決定された位置における前記予め定められた道路モデル軌跡の方向に基づいて、前記車両の自律的な操舵動作を決定する、
ようにプログラムされた少なくとも1つのプロセッサを有する、システム。」
第3 当審における拒絶の理由
令和4年7月7日付けで当審が通知した拒絶理由は、大略次のとおりのものである。
1 (新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 (進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開平7-27541号公報
第4 引用文献1及び引用発明
令和4年7月7日付けの当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献1(特開平7-27541号公報)には、「道路形状および自車両位置の計測装置」に関して、図面(特に【図2】ないし【図6】を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば車両の自動操縦や予防安全運転等のために車両の進行方向前方の道路のカーブや勾配等の形状を計測しながら、更に自車両位置と対道路自車両姿勢を計測する道路形状及び自車両位置の計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両の自動操縦や追突防止等の予防安全運転等のためには、車両の進行方向前方における道路の形状データである例えば車両の道路端からの距離、道路方向と車両の方向とのなすヨー角、道路のカーブ曲率である水平曲率、道路の勾配変化である垂直曲率等の道路の3次元形状データを精度良く高速に計測することが必要である。
【0003】また、グローバルな自車両位置を求めて自車両がどのあたりを走行中であるかも併せて知ることが必要である。
【0004】上記した道路の3次元形状データは、車両に搭載したカメラで撮像した画像から推定しているが、この場合、従来はカメラの道路に対する姿勢のうち、カメラの高さ、ピッチ角、ロール角が一定であるという仮定のもとに道路の形状データを計測するものが多い。」
イ 「【0008】本発明は、上記した従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、正確な道路形状及び自車両位置の計測を行える道路形状及び自車両位置の計測装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するため、図1に示すように、車両の進行方向前方の道路を撮像する撮像手段101と、該撮像手段で撮像した画像から車両の進行方向前方の道路形状を表わす特徴を抽出する道路形状検出手段102と、道路の3次元形状に対応するデータを含む地図情報を予め記憶した地図情報記憶手段103と、1回前に計測された車両位置パラメータ及び前記撮像手段101の姿勢パラメータを保持するパラメータ保持手段104と、前記車両位置パラメータに基づいて、前記地図情報を参照し、3次元座標上で定義された3次元道路モデルを演算する道路モデル演算手段105と、該道路モデル演算手段105で演算された3次元道路モデルを前記撮像手段の姿勢パラメータに基づいて画像座標に変換する座標変換手段106と、前記道路形状検出手段102で検出された前記道路形状を、前記座標変換手段106で座標変換された前記3次元道路モデルと比較して、両者間の位置ずれを検出する位置ずれ検出手段107と、該位置ずれ検出手段で検出した位置ずれから前記車両位置パラメータの変化量および前記撮像手段の姿勢パラメータの変化量を演算する変化量演算手段108と、前記両パラメータの変化量に基づき前記パラメータ保持手段104の各パラメータを更新する更新手段109とを有することを特徴とする。
【0010】
【作用】本発明による道路形状及び自車両位置の計測装置であれば、地図情報記憶手段103は道路の3次元形状に対応するデータを含む地図情報を持っているので、道路モデル演算手段105によりパラメータ保持手段104の車両位置パラメータに基づいて地図情報記憶手段103の地図情報を参照して、3次元道路モデルが求められる。
【0011】他方、撮像手段101で撮像した画像から道路形状検出手段102が車両の進行方向前方の道路形状を検出しているので、位置ずれ検出手段107において、道路モデル演算手段105で求めた3次元道路モデルの値を座標変換手段106により画像座標に変換して受ける一方、道路形状検出手段102の道路形状の値を受けて、その両者間の位置ずれを検出し、この検出結果から変化量演算手段108により自車両の車両位置パラメータの変化量および撮像手段101の姿勢パラメータの変化量を演算し、更新手段109によりパラメータ保持手段104の各パラメータを更新することができる。
【0012】
【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0013】図2は、本発明の一実施例に係わる道路形状及び自車両位置の計測装置の全体構成を概略的に示すブロック図である。同図に示す道路形状及び自車両位置の計測装置は、車両の進行方向前方の道路を撮像すべく車両に搭載された撮像手段であるカメラ1、該カメラ1で撮像した画像信号を入力し、この入力された画像信号を画像処理する画像処理部3、および該画像処理部3で得られた計測結果である道路の3次元形状データを表示するとともに、その形状データに基づいて車両の制御および警報判断等を行う制御部5を有する。
【0014】図2に示す画像処理部3は、カメラ1で撮像された2車線道路の画像を連続的に入力し、この画像からカメラ1の高さ(Dy)、ヨー角(θ)、ピッチ角(φ)、ロール角(ψ)、道路端からの距離(Dx)という車速を除くカメラの5軸の姿勢パラメータに加えて、自車両の車両位置の単位時間当りの変動量を同時に推定するものである。更に詳しくは、本実施例では、現在の走行地点から地図情報を参照して道路形状パラメータを求め、次に、車両前方の3次元形状を計算して道路モデルとし、さらに、1画面前(前時刻)に推定された姿勢パラメータを用いて、各モデル点を車両座標系に座標変換し、さらに画像座標系に透視変換する。そして、入力された画像中の白線位置と、モデル点とを対応付けることによって、各姿勢パラメータと車両位置の単位時間当りの変動量を推定し、補正更新する。なお、レンズの焦点距離は固定とし既知とする。
【0015】図3は、図2に示す画像処理部3の詳細な構成を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理部3は、前記カメラ1で撮像された画像が入力される画像入力部11、この画像入力部11から入力された画像情報から道路の白線の右端のエッジを検出する道路形状検出手段としての前処理部13、道路の3次元形状に対応するデータを含む地図情報を予め記憶しておく地図情報記憶部15、1回前に求めた車両位置における水平曲率や垂直曲率などの道路形状パラメータを計算する道路形状パラメータ計算部19、1回前に求めた車両位置における道路形状パラメータを用いて道路中心線と白線の座標を計算する道路中心線および白線の座標計算部21、道路中心線と白線の座標を片勾配分だけ回転させる片勾配回転部23、片勾配分だけ回転された道路中心線と白線の座標を1回前のカメラ姿勢パラメータで座標変換する座標変換部25、この座標変換部25によって画像座標系に座標変換された道路モデルと前処理部13で検出された道路のエッジ画像とを線対応関係で対応づける線対応マッチング部27、この線対応マッチング部27によって線対応づけられた画像の位置ずれを検出し、この位置ずれから前記車両位置パラメータおよび前記カメラ姿勢パラメータを最小二乗法を適用して推定する最小二乗推定部29、この最小二乗推定部29で推定されたパラメータを1回前の各パラメータ値に加えることにより各パラメータを更新するパラメータ更新部31、更新された各パラメータを次回の計測に用いるために保持しておくパラメータ保持部35から構成されている。
【0016】前処理部13における前処理は、カメラ1で撮像した道路の入力画像から道路の白線のエッジを検出するために、入力画像をI(x,y)とし、エッジ画像をG(x,y)とした場合、次式の演算を行い、エッジ画像を検出する。
【0017】
【数1】
[図:0001397840000001.jpg]
このような演算式を使用することにより、カーブ路において遠方の白線はほとんど水平で、線幅も1画素以下で撮影されてもエッジを抽出することができる。」
ウ 「【0024】道路形状パラメータ計算部19、道路中心線および白線の座標計算部21、片勾配回転部23、座標変換部25の処理過程では、N×M(Nは白線1本当りのモデル点数,Mは白線の本数)2点からなる道路モデルを作成する。具体的には、道路形状パラメータ計算部19において、前時刻の車両位置Lから地図データを参照し、(2)~(4)式によって道路形状パラメータを求める。次に道路中心線及び白線の座標計算部21によって3次元の道路モデルを計算する。」
エ 「【0045】一方、カメラ1からの画像が画像入力部11を介して前処理部13に加わり、前処理部13において、(1)式の演算がなされることによりエッジ画像を検出しているので、線対応マッチング部27において、座標変換部25からの道路モデルの画像座標を受ける一方、前処理部13のエッジ画像を受けて、その両者間の位置ずれを検出し、この検出結果から最小二乗推定部29により自車両の車両位置パラメータの変化量およびカメラ1の姿勢パラメータの変化量を推定し、パラメータ更新部31によりその各パラメータを更新することができる。」
オ 「【0070】パラメータの変化量が算出された後、前時刻のパラメータを更新する。前時刻のパラメータを添字k-1で表し、更新されたパラメータを添字kで表す。
【0071】座標回転を表すパラメータ(θ,φ,ψ)以外は、前回のパラメータに推定された変化量を加えればよい。すなわち、
【数47】
Lk =Lk-1 +ΔL
DX(k)=DX(k-1)+ΔDX
DY(k)=DY(k-1)+ΔDY (47)
回転を表すパラメータについては、
【数48】
Rθφψ(k) =RαβγRθφψ(k) (48)
により更新される。ただし、Rαβγは(16)式においてα=Δα,β=Δβ,γ=Δγとおいたものである。パラメータθ(k) ,φ(k) ,ψ(k) は、更新されたマトリクスRθφψ(k) の要素から求められる。
【0072】このようなパラメータ推定更新の原理でその処理がなされるので、上記したように3次元道路モデルの点列の作成後、次に、前時刻の姿勢パラメータにより、(5)式~(7)式で車両座標系に変換し、また、(36)~(40)式で接線の傾きを計算する。そして、係数A(i) を(24)~(35)式と(45)式に従って計算する。さらに(8)式でモデル点を車両座標系から画像座標系に変換し、各モデル点の座標(xi ,yi )(i=1~N)を得る。」
カ 「【0079】以上のように本発明の一実施例においては、地図情報として、水平曲率、垂直曲率、バンク角等の道路の3次元形状に対応するデータを含む地図情報を予め記憶手段に格納しておき、上記地図情報を参照して道路形状を算出する。従って、カメラの姿勢パラメータが変化しても道路形状を精度良く求めることができ、同時にその求めた道路形状と入力された画像とのずれから、グローバルかつローカルな自車両位置を推定することができる。
【0080】なお、上記した本発明の一実施例の説明では、地図情報として、水平曲率、垂直曲率、バンク角として説明したが、車線数や車線の幅(Bjに対応)などの情報も付加情報として追加できる。また、一般道においては、交差点や分岐・分流を表わすノードと、2つのノードを結ぶパスとで構成し、パスの情報として、前記地図情報を用いればよい。さらにガソリンスタンドや、信号機の有無などの情報も容易に付加でき、ナビゲーション装置の地図と自車位置検出としても使える。
【0081】また、垂直曲率にあわせて勾配(何%という)値も格納しておけばスロットルなどの予見制御にもつながる。なお、現在位置Lk の推定には初期位置が既知である必要があるラビゲーション装置の現在位置を用いてもよいし、高速道路の入口などスイッチ操作による現在位置を設定するようにしてもよい。」
キ 「【0088】更に、自動操縦について説明すると、本発明の計測装置では、地図情報から自車両の位置の曲率の他にも前方の曲率も求めることができるので、予め速度を制御する自動操縦が可能となる。例えば、次のように制御することができる。
【0089】
|前方の水平曲率|>|現在の水平曲率|→減速
|前方の水平曲率|<|現在の水平曲率|→加速
前方の垂直曲率(勾配)>現在の垂直曲率(勾配)→加速(スロットル開)
前方の垂直曲率(勾配)<現在の垂直曲率(勾配)→減速(スロットル閉)
なお、前方の曲率は現在地点Lk の代わりにLk +L´において地図情報を参照し(2)~(4)式を計算すればよい。
【0090】また、例えば、ピッチ角φ、ロール角ψ、高さDyの変動が大きい場合には、減速すること等も考えられる。乗り心地のフィードバックと言える。
【0091】また、操舵制御は、例えば
(1)現在の曲率に比例した操舵角 Φk1=K・ρ
(2)ヨー角が正の場合には左に操舵 Φk2=Φk-1 -δ
(3)ヨー角が負の場合には右に操舵 Φk3=Φk-1 +δ
(4)Dxが所定値より大きい場合右に操舵 Φk4=Φk-1 +δ
(5)Dxが所定値より小さい場合左に操舵 Φk5=Φk-1 -δ
とし、Φk1~Φk5を平均した操舵角に設定すればよい。」
以上から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両の自動操縦のための道路形状及び自車両位置の計測装置であって、
カメラ1から、道路の車両の進行方向前方の画像信号を入力し、
前記入力した画像信号に基づいて前記道路の3次元形状データを計測し、
前記3次元形状データを前記道路の地図情報と参照することであって、前記地図情報が、前記道路に関連付けられた水平曲率、垂直曲率、バンク角、車線数や車線の幅を含み、前記3次元形状データを前記道路の前記地図情報と参照することは、前記3次元データを、前記地図情報の前記水平曲率、垂直曲率、バンク角、車線数や車線の幅と参照することを含み、
前記3次元形状データと前記地図情報との間のずれに基づいて、自車両位置を推定し、
前記推定された自車両位置における前方の曲率に基づいて、前自動操縦の操舵制御を行う、
道路形状及び自車両位置の計測装置。」
第5 判断
1 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「道路」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「道路セグメント」に相当し、以下同様に、「カメラ1」は「少なくとも1つのセンサ」に、「画像信号」は「情報」に、「入力」は「受信」に、「3次元形状データ」は「局所的な特徴」に、「計測」は「決定」に、「地図情報の水平曲率、垂直曲率、バンク角、車線数や車線の幅」は「予め定められたシグネチャ特徴」に、「参照」は「比較」に、「自車両位置」は「車両の現在位置」及び「位置」に、「推定」は「決定」に、「自動操縦の操舵制御」は「車両の自律的な操舵動作」に、「行う」は「決定する」にそれぞれ相当する。
また、後者の「車両の自動操縦」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「道路セグメントに沿って車両を自律的にナビゲートする」ことに相当し、同様に「道路の車両の進行方向前方の画像信号」は、「道路セグメントの1つまたは複数の側面に関連する情報」に相当する。
そして、後者の「前記地図情報が、前記道路の複数の位置に対応する水平曲率、垂直曲率、バンク角、車線数や車線の幅を含」むことは、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「前記予め定められたシグニチャ特徴が、道路セグメントに関連付けられた予め定められた道路モデル軌跡に沿った複数の位置に対応する複数の次元を含」むことに相当する。そうすると、後者の「前記3次元形状データを前記道路の前記地図情報と参照することは、前記地図情報の前記水平曲率、垂直曲率、バンク角、車線数や車線の幅と参照することを含」むことと前者の「前記局所的な特徴に関連する計算の結果を前記道路セグメントの前記予め定められたシグネチャ特徴と比較することは、前記計算の結果を、前記予め定められたシグネチャ特徴の前記複数の次元のうちの少なくとも1つに基づいて実行される対応する計算の結果と比較することを含」むこととは、「前記局所的な特徴を前記道路セグメントの前記予め定められたシグネチャ特徴と比較することは、前記局所的な特徴を、前記予め定められたシグネチャ特徴の前記複数の次元のうちの少なくとも1つと比較することを含」むという限りで一致する。
さらに、後者の「3次元形状データと前記地図情報との間のずれ」と前者の「局所的な特徴に関連する計算の結果と前記予め定められたシグネチャ特徴に基づいて実行される対応する計算の結果との間の相関関係」とは、その機能、構成及び技術的意義からみて「局所的な特徴と前記予め定められたシグネチャ特徴との間の相関関係」という限りで一致する。そうすると、後者の「前記3次元形状データと前記地図情報との間のずれに基づいて、自車両位置を推定」することと前者の「前記局所的な特徴に関連する計算の結果と前記予め定められたシグネチャ特徴に基づいて実行される対応する計算の結果との間の相関関係に基づいて、前記予め定められた道路モデル軌跡に対する前記車両の現在位置を決定」することとは、「前記局所的な特徴と前記予め定められたシグネチャ特徴との間の相関関係に基づいて、前記予め定められた道路モデル軌跡に対する前記車両の現在位置を決定」という限りで一致する。
加えて、後者の「前方の曲率」は、前者の「予め定められた道路モデル軌跡の方向」に相当し、同様に後者の「道路形状及び自車両位置の計測装置」は前者の「システム」に相当する。
したがって、両者は、
「 道路セグメントに沿って車両を自律的にナビゲートするためのシステムであって、
少なくとも1つのセンサから、前記道路セグメントの1つまたは複数の側面に関連する情報を受信し、
前記受信した情報に基づいて前記道路セグメントの局所的な特徴を決定し、
前記局所的な特徴を前記道路セグメントの予め定められたシグネチャ特徴と比較することであって、前記予め定められたシグネチャ特徴が、前記道路セグメントに関連付けられた予め定められた道路モデル軌跡に沿った複数の位置に対応する複数の次元を含み、前記局所的な特徴を前記道路セグメントの前記予め定められたシグネチャ特徴と比較することは、前局所的な特徴を、前記予め定められたシグネチャ特徴の前記複数の次元のうちの少なくとも1つと比較することを含み、
前記局所的な特徴と前記予め定められたシグネチャ特徴との間の相関関係に基づいて、前記予め定められた道路モデル軌跡に対する前記車両の現在位置を決定し、
前記決定された位置における前記予め定められた道路モデル軌跡の方向に基づいて、前記車両の自律的な操舵動作を決定する、
システム。」である点で一致し、次の2点で相違する。
[相違点1]
前者は「前記局所的な特徴の少なくとも1つの次元に基づき、前記局所的な特徴に関連する計算を実行」し、「前記局所的な特徴に関連する計算の結果を前記道路セグメントの予め定められたシグネチャ特徴と比較すること」であって、「前記局所的な特徴に関連する計算の結果を前記道路セグメントの前記予め定められたシグネチャ特徴と比較することは、前記計算の結果を、前記予め定められたシグネチャ特徴の前記複数の次元のうちの少なくとも1つに基づいて実行される対応する計算の結果と比較することを含」み、「前記局所的な特徴に関連する計算の結果と前記予め定められたシグネチャ特徴に基づいて実行される対応する計算の結果との間の相関関係に基づいて、前記予め定められた道路モデル軌跡に対する前記車両の現在位置を決定」するのに対し、後者は「前記3次元形状データを前記道路の地図情報と参照すること」であって、「前記3次元形状データを前記道路の前記地図情報と参照することは、前記3次元データを、前記地図情報の前記水平曲率、垂直曲率、バンク角、車線数や車線の幅と参照することを含」み、「前記3次元形状データと前記地図情報との間のずれに基づいて、自車両位置を推定」する点。
[相違点2]
前者は、「プログラムされた少なくとも1つのプロセッサを有する」のに対し、後者は係る事項を備えているか不明な点。
2 判断
上記相違点について検討する。
相違点1について検討する。
引用発明の3次元形状データについて、上記イの段落【0015】には「画像入力部11から入力された画像情報から道路の白線の右端のエッジを検出する道路形状検出手段としての前処理部13」、「座標変換部25によって画像座標系に座標変換された道路モデルと前処理部13で検出された道路のエッジ画像とを線対応関係で対応づける線対応マッチング部27」及び「線対応マッチング部27によって線対応づけられた画像の位置ずれを検出する最小二乗推定部29」が開示され、上記エの段落【0045】には「前処理部13のエッジ画像を受けて、その両者間の位置ずれを検出し」との記載がある。これら記載から、引用発明の3次元形状データは、画像情報のエッジから形状を検出することにより得られるもので、当該エッジを道路モデルと対応関係で対応づけ、位置ずれを検出するものであるから、引用発明は3次元形状データに関連する計算を実行し、その結果に基づいて位置ずれを検出しているといえる。
そして、段落【0015】には、道路形状パラメータ計算部19で計算された1回前に求めた車両位置における水平曲率や垂直曲率などの道路形状パラメータを用い、座標変換部25によって画像座標系に座標変換された道路モデルと前処理部13で検出された道路のエッジ画像とを線対応マッチング部27において線対応関係で対応づけることが開示され、さらに、上記ウの【0024】には道路形状パラメータは、前時刻の車両位置Lから地図データ、すなわち地図情報を参照し計算されることが開示される。そうすると、引用発明における3次元形状データに関連する計算の結果に基づく位置ずれの検出は、3次元形状データに関連する計算の結果と地図情報に基づいて実行される対応する計算の結果とのずれということができる。
そうすると、上記相違点1については実質的な相違ではなく、引用発明もまた相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えている。
仮に実質的な相違であるとしても、一般にプログラムを用いたシステムにおいて、当該プログラムで用いる複数の特徴を比較する場合、それぞれの特徴について関連する計算を行い、その結果を比較することは例示するまでもない技術常識といえるものであるから、引用発明の3次元形状データ及び地図情報について、当該技術常識を踏まえ、当業者の通常の創作能力の範囲で相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、容易になし得たことである。
相違点2について検討する。
一般に、車両あるいは車両を構成する装置を制御するための装置において、当該制御するための装置がその制御内容がプログラムされた少なくとも1つのプロセッサを備えていることは技術常識であるから、引用発明もまた当然備えているといえる。この理解において、上記相違点2は実質的な相違とはいえず、引用発明も相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えている。
仮に実質的な相違であるとしても、引用発明において、当該技術常識を踏まえ、当業者の通常の創作能力の範囲で相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、容易になし得たことである。
また、本願発明1は、全体としてみても、引用発明から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明1は引用発明である。または、本願発明1は引用発明に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
3 請求人の主張について
令和4年10月5日の意見書において、請求人は、「本願明細書の段落0632には、「例えば、処理ユニット110は、現在位置5628に対応する局所特徴を表すために、平均道路幅Wavg(例えば、Wp1、Wp2、Wp3、Wcの平均)、道路幅分散Wvar(例えば、Wp1、Wp2、Wp3、Wcの分散)、平均レーン幅Davg(例えば、Dp1、Dp2、Dp3、Dcの平均)、レーン幅分散Dvar(例えば、Dp1、Dp2、Dp3、Dcの分散)、又はメジアン、モード等の他のパラメータのうちの1つ又は複数を特定し得る。対応する所定の道路シグネチャ特徴は、所定の道路モデル軌道5612上の所定の位置での平均道路幅、道路幅分散、平均レーン幅、レーン幅分散、道路幅のメジアン又は最頻値、レーン幅のメジアン又は最頻値等により表すこともできる。処理ユニット110は、上述したように、特定された局所特徴と所定の道路シグネチャ特徴とを比較することにより、車両200の現在位置5628を特定し得る。」と記載されている。
上記補正後の請求項1に係る発明は、局所的な特徴とシグネチャ特徴の計算をそれぞれ行い(例えば、平均や分散などを算出する)、計算の結果を比較することにより、車両の現在位置を特定するものである。
引用文献1の段落0079には、「地図情報として、水平曲率、垂直曲率、バンク角等の道路の3次元形状に対応するデータを含む地図情報を予め記憶手段に格納しておき、・・・同時にその求めた道路形状と入力された画像とのずれから、グローバルかつローカルな自車両位置を推定する」と記載されている。
しかしながら、引用文献1には、例えば、平均道路幅や道路幅分散などを計算によって算出することは記載されておらず、したがって、本願発明のように、局所的な特徴とシグネチャ特徴の計算を行い(例えば、平均や分散などを算出する)、計算の結果を比較することにより、車両の現在位置を特定することは記載されていない。」と主張する。
しかしながら、本願発明1の発明特定事項である「局所的な特徴」及び「シグネチャ特徴」は、その記載からみて「平均道路幅」、「道路幅分散」のみに限定できるものではなく、それ以外の受信した情報に基づいて決定される「平均道路幅」あるいは「道路幅分散」以外のものも「局所的な特徴」及び「シグネチャ特徴」に含まれると理解できる。同様に、本願発明1の発明特定事項である「局所的な特徴に関連する計算」及び「予め定められたシグネチャ特徴に基づいて実行される対応する計算」についても、その記載からみて「平均や分散を算出する」ことのみに限定できるものではなく、それ以外の「計算」も含まれると理解できる。この理解にたって本願発明1と引用発明を対比すると、両者は上述したような2つの相違点を備え、これら2つの相違点については、実質的な相違点でない、または引用発明から容易になし得たことといえるものである。
そうすると、上記意見書における請求人の上記主張は当を得ない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
または、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-005935