2022-004277
オリゴヌクレオチド含有調味料
- 審判番号
- 2022-004277
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-516967外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月22日
- 審決日
- 2023年08月17日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱商事ライフサイエンス株式会社
- 分類
- P18 .113-Z (A23L) / P18 .121-Z (A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)4月28日(優先権主張 平成28年12月28日)を国際出願日とする出願であって、令和3年6月3日付けで拒絶理由が通知され、同年8月16日に意見書が提出され、同年12月14日付けで拒絶査定がされ、令和4年3月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、令和4年3月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
なお、上記手続補正書による補正は、特許請求の範囲についてする請求項の削除(特許法第17条の2第5項第1号)を目的とする補正であり、また、国際出願日における明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり(同法同条第3項)、さらに、上記手続補正書による補正前の請求項2及び4に係る発明と上記手続補正書による補正後の請求項1及び2に係る発明は同法第37条の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなっている(同法第17条の2第4項)から、上記手続補正書による補正は、適法なものと認める。
「【請求項1】オリゴヌクレオチドを5重量%以上含有する酵母調味料。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由はおおむね次の理由を含むものである。
1 理由1(新規性)
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である下記の文献1ないし3(以下、順に「引用文献1」のようにいう。)のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
2 理由2(進歩性)
本願発明は、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である下記の引用文献1ないし3のいずれかに記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開昭62-25933号公報
2.特開昭62-25935号公報
3.特開昭62-25960号公報
第4 当審の判断
1 引用文献1に記載された事項等
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「乳酸菌発酵乳製品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は予め付されたものと当審において付したものである。
・「〔産業上の利用分野〕
本発明は、従来の乳酸菌発酵乳に少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを含有せしめて栄養価を高めると同時に、風味を改良した乳酸菌発酵乳製品に関するものである。」(第1ページ右下欄第6ないし10行)
・「本発明におけるオリゴヌクレオチドは、モノヌクレオチドが2~40単位の連鎖のものが好ましく、2~20単位のものが特に好ましい。」(第2ページ左上欄末行ないし右上欄第2行)
・「本発明で用いるオリゴヌクレオチドは公知の方法により、化学的に合成することもできる。しかし、より好ましい製造例としては乳酸菌と酵母を同一培地中で同時に培養し、培養のある時点で超音波により乳酸菌細胞壁を破り、乳酸菌中のオリゴヌクレオシドに富む成分を酵母中に取り込ませ、これを常法により遠心分離、洗浄、熱乾燥したものをその含有物として用いることである。
酵母としては、乳酸菌のオリゴヌクレオシドを取り込む能力のあるものであれば特に制限はないが、例えばパン酵母は特に好ましい。
酵母中でオリゴヌクレオシドはリン酸化してオリゴヌクレオチドに変化する。」(第2ページ右上欄第12行ないし左下欄第4行)
・「本発明の乳製品におけるオリゴヌクレオチドの含有量は特に制限はないが、通常は、乳酸菌発酵乳製品100g当たり100mgから1000mgの間が好ましい。」(第2ページ左下欄第13ないし16行)
・「〔実施例〕
オリゴヌクレオチド成分の製造
酵母エキス寒天培地に、ブルガリヤ乳酸桿菌(Lactobacillus bulgaricus)と、パン酵母とを加えて培養した。超音波菌体破壊器により、乳酸菌の細胞壁のみを破壊した。更に培養を続けた後、酵母を集菌し、自己消化させた後ヌクレオチド単位が20以下のオリゴヌクレオチドを30wt%含む抽出物を得た。」(第2ページ右下欄第17行ないし第3ページ左上欄第5行)
・「ヨーグルトの製造
ヨーグルトの配合
[図:0001403138000001.jpg]
上記原料のうち、乳酸菌、アスパルテーム、前記抽出物を除く他の原料を攪拌溶解し、95℃、25分で加熱殺菌処理後43℃に冷却する。乳酸菌を加え、42±1℃で3時間発酵させ、22℃に冷却し、アスパルテームと前記抽出物を添加し、5℃で冷却保存した。
このヨーグルトの風味はオリゴヌクレオチド成分を含む前記抽出物の添加により、オリゴヌクレオチド特有の旨味が強化され、こくのあるまろやかな味わいとなつた。香りに関しては、用いた前記抽出物は、ヨーグルトと類似の香りを持ち、何らヨーグルトそのものの爽やかな香りを損わせるものではなかつた。」(第3ページ左上欄第6行ないし右上欄第10行)
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された事項を、特に実施例に関して整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
<引用発明>
「酵母エキス寒天培地に、ブルガリヤ乳酸桿菌と、パン酵母とを加えて培養し、超音波菌体破壊器により、乳酸菌の細胞壁のみを破壊し、更に培養を続けた後、酵母を集菌し、自己消化させた後、得たヌクレオチド単位が20以下のオリゴヌクレオチドを30wt%含む抽出物。」
2 本願発明と引用発明との対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「ヌクレオチド単位が20以下のオリゴヌクレオチド」は本願発明における「オリゴヌクレオチド」に相当する。
引用発明における「30wt%含む」は本願発明における「5重量%以上含有する」という発明特定事項の条件を満足する。
引用発明における「酵母エキス寒天培地に、ブルガリヤ乳酸桿菌と、パン酵母とを加えて培養し、超音波菌体破壊器により、乳酸菌の細胞壁のみを破壊し、更に培養を続けた後、酵母を集菌し、自己消化させた後、得た」「抽出物」は、「パン酵母」を含むものであるから、本願発明における「酵母調味料」と、「酵母を含む物」という限りにおいて一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「オリゴヌクレオチドを5重量%以上含有する酵母を含む物。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点>
「酵母を含む物」に関して、本願発明においては「酵母調味料」と特定されているのに対し、引用発明においては「抽出物」と特定されている点。
(2)判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用文献1の「このヨーグルトの風味はオリゴヌクレオチド成分を含む前記抽出物の添加により、オリゴヌクレオチド特有の旨味が強化され、こくのあるまろやかな味わいとなつた。」(引用文献1の第3ページ右上欄第4ないし7行)という記載によると、引用発明における「抽出物」は、ヨーグルトに添加されて、ヨーグルトにおけるオリゴヌクレオチド特有の旨味を強化し、こくのあるまろやかな味わいとするものであるから、「調味料」の役割を果たすものである。
すなわち、引用発明における「抽出物」は「酵母調味料」であるといえる。
したがって、上記相違点は実質的な相違点であるとはいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明である。
また、本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本願発明と引用文献2又は3に記載された発明との対比・判断
引用文献2又は3についても、引用文献1と同様の記載があるから、引用文献1に記載された発明と同様の発明が認定される。
そして、本願発明とそれらの発明との対比・判断も本願発明と引用文献1に記載された発明との対比・判断と同様である。
すなわち、本願発明は引用文献2又は3に記載された発明である。
また、本願発明は引用文献2又は3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 請求人の主張について
(1)請求人の主張の概要
折りたたみ中(クリックで表示)
請求人は、令和4年3月22日に提出された審判請求書において、おおむね次のとおり主張する。
ア 主張1
「前述のように、引用文献1から3は、乳酸菌由来のヌクレオシドを酵母でリン酸化を行い、ヌクレオチドを製造しております。さらに、引用文献1から3では、酵母による自己消化を経ております。実施例には、酵母の種類については記載がありませんが、明細書中には、パン酵母が好ましいとの記載があります。本願明細書段落0015記載にしてありますように、「パン酵母、ビール酵母などを用いる場合は、適度なリボヌクレアーゼ活性があるため、ホスファターゼ活性が低い条件で自己消化が好ましく」と記載しております。引用文献1から3には、具体的な自己消化条件の記載がありません。したがって、自己消化によって、オリゴヌクレオチドがどの程度含まれているのか、5’ヌクレオチドにどの程度分解されているかなど、詳細については不明です。これは、オリゴヌクレオチドは、呈味性核酸ではありませんが、引用文献1-3の実施例においては、オリゴヌクレオチド特有の旨味が強化され、こくのあるまろやかな味わいとなったとの記載から、自己消化によって、相当程度のRNAが、呈味性核酸である、5’ヌクレオチドに分解しているものと考えます。一方、本願は、実施例において、オリゴヌクレオチドと5’ヌクレオチドの含量を測定しており、確実にオリゴヌクレオチドを5重量%以上含む酵母調味料により、その効果を確認しております。」(審判請求書第3ページ)
イ 主張2
「また、引用文献1-3は、乳酸菌のRNAを酵母に取り込ませているため、本願の酵母由来のオリゴヌクレオチドを含有する調味料と異なると考えます。」(審判請求書第4ページ)
ウ 主張3
「さらに、本願は、食品に対して、中味の厚み付与、脂肪感の付与、充実感の付与、濃厚感を付与するとの効果を有しておりますが、前述のように、引用文献1-3では、旨味が強化された一方で、ヨーグルト、豆乳などの風味に変化がなかったとあります。このように、本願と引用文献1-3とでは、呈する効果が異なります。これは、本願がオリゴヌクレオチドを5重量%以上含んでいるが、引用文献では、オリゴヌクレオチドの含量が不明な点、乳酸菌の核酸を酵母に取り込ませている点などの相違点を明確にするものであると考えます。」(審判請求書第4ページ)
(2)請求人の主張についての検討
折りたたみ中(クリックで表示)
そこで、上記主張について検討する。
ア 主張1について
引用文献1ないし3には、具体的な自己消化の条件について記載がないものの、それぞれ「自己消化させた後ヌクレオチド単位が20以下のオリゴヌクレオチドを、30wt%含む抽出物を得た。」(引用文献1の第3ページ左上欄第3ないし5行)、「自己消化させた後ヌクレオチド単位が20以下のオリゴヌクレオチドを30wt%含む抽出物を得た。」(引用文献2の第3ページ左上欄第16ないし18行)及び「自己消化によりヌクレオチド単位が20以下のオリゴヌクレオチドを30wt%含む抽出物を得た。」(引用文献3の第2ページ右下欄第9ないし11行)と記載されており、また、引用文献1ないし3に記載された「抽出物」を得る方法は、本願の発明の詳細な説明の【0013】に記載された方法と同様であるから、引用文献1ないし3のいずれに記載された発明においても、「自己消化によって、相当程度のRNAが、呈味性核酸である、5’ヌクレオチドに分解している」可能性はあるものの、ヌクレオチド単位が20以下のオリゴヌクレオチドを、30wt%含んでいることは明らかである。
なお、引用文献1の「本発明の乳製品におけるオリゴヌクレオチドの含有量は特に制限はないが、通常は、乳酸菌発酵乳製品100g当たり100mgから1000mgの間が好ましい。」(引用文献1の第2ページ左下欄第13ないし16行)という記載は、文字どおり、乳酸菌発酵乳製品100g当たりのオリゴヌクレオチドの含有量を示すものであって、「抽出物」中の含有量を示すものではない(このように理解することは、引用文献1の第3ページ左上欄の「ヨーグルトの配合」の表の記載内容とも整合する。)ので、令和3年8月16日に提出された意見書の3.(1)の「実施例の「オリゴヌクレオチドを30wt%」との記載は、「オリゴヌクレオチドを0.30wt%」との記載の誤記と考えられます。」旨の主張も採用できない。
したがって、上記主張1は採用できない。
イ 主張2について
本願の請求項1の記載は、上記第2のとおりであり、「オリゴヌクレオチド」が「酵母由来」であることは記載されていないから、本願発明は、「オリゴヌクレオチド」が「酵母由来」のものに特定される発明ではない。
したがって、上記主張2は、本願の請求項1の記載に基づかない主張であり、採用できない。
ウ 主張3について
仮に、本願発明と引用文献1ないし3のいずれかに記載された発明とでは、呈する効果が異なるとしても、上記2及び3のとおり、本願発明と引用文献1ないし3のいずれかに記載された発明との間で実質的な相違点がない以上、上記主張3は採用できない。
5 むすび
したがって、本願発明は引用文献1ないし3のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
また、本願発明は引用文献1ないし3のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第5 結語
上記第4のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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