2022-000977
発光素子パッケージ及び照明装置
- 審判番号
- 2022-000977
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-529153外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月21日
- 審決日
- 2023年01月23日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スージョウ レキン セミコンダクター カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】武田 幸子
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)5月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年5月16日、韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明は、令和4年1月21日に提出された手続補正により補正された請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項3(当該補正前の請求項4)に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「パッケージ本体と、前記パッケージ本体の上に配置される発光素子と、前記発光素子の上に配置されるモールディング部材と、前記モールディング部材内に配置された蛍光体と、を含む発光素子パッケージにおいて、前記発光素子パッケージの415nm~455nmである第1波長領域の波長スペクトル強度(intensity)の比率より、465nm~495nmである第2波長領域の波長スペクトル強度の比率が大きく、前記蛍光体は、緑色蛍光体である第1蛍光体と、赤色蛍光体である第2蛍光体とを含み、前記発光素子の発光波長を励起波長として白色光源を具現し、前記第1蛍光体は、前記第2蛍光体より高い割合で蛍光体組成物が形成され、前記第1蛍光体と前記第2蛍光体の相対的な比率(前記第1蛍光体:前記第2蛍光体)は、85wt%~95wt%:5wt%~15wt%である、発光素子パッケージ。」
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項4に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
国際公開第2014/203839号
4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献(国際公開第2014/203839号)に記載された事項
引用文献には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
「[請求項1]発光ダイオードを用いて白色光を発光する光源装置において、上記白色光の発光スペクトルのうち415nm~460nmの積分発光強度よりも460nm~500nmの積分発光強度が大であることを特徴とする光源装置。」
「[0007] しかしながら、LEDを利用した従来の光源、発光装置においては、何れも発光効率を向上させることを目的としたものであり、人の眼の網膜に対する影響について特に考慮していないため、何れも、青色光傷害関数の値が大きい450nm近傍の青色成分が白色光に含まれている。[0008] 本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、青色光傷害関数の値が小さい青色光を用いることで、人の眼に優しい白色光を発光する光源装置および発光装置を提供することにある。[0009] 上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光源装置は、発光ダイオードを用いて白色光を発光する光源装置において、上記白色光の発光スペクトルのうち415nm~460nmの積分発光強度よりも460nm~500nmの積分発光強度が大であることを特徴とする。」
[0010] 本発明の一態様によれば、白色光の主たる青色成分が、460nm~500nmの光であることで、人の眼に優しい白色光を発光する光源装置を提供することができるという顕著な効果を奏する。」
「[0014] (光源装置の基本構成)図1の(a)に示すように、光源装置10は、基板101、第1LEDチップ102(第1発光ダイオード)、蛍光体含有樹脂層(蛍光体含有封止樹脂)104、ダムリング105(樹脂性枠)を備えている。[0015] 基板101は、セラミックからなる基板である。基板101は、平面視長方形の形状を有している。基板101の一方の面(以下、上面と定義する。)には、上述した、第1LEDチップ102(第1発光ダイオード)、蛍光体含有樹脂層104、ダムリング105(樹脂性枠)が設けられている他、外部接続用の電極ランド106、107が形成されている。」
「[0017] 第1LEDチップ102は、それぞれ青色発光ダイオードからなり、図示しない配線に電気的に接続され、当該配線は電極ランド106,107に接続されている。これにより、電極ランド106,107は、第1LEDチップ102を介して、当該第1LEDチップ102が発光可能に、接続されている。第1LEDチップ102の詳細については後述する。[0018] 蛍光体含有樹脂層104は、図1の(b)に示すように、緑色蛍光体104a(2価のユーロピウム賦活のβ型SiAlON)および赤色蛍光体104b(SrxCa1-xAlSiN3:Eu2+)を含有する樹脂からなる封止樹脂層である。蛍光体含有樹脂層104は、ダムリング105により囲まれた領域に充填されて、当該領域に配置された第1LEDチップ102を埋め込むように形成されている。つまり、蛍光体含有樹脂層104は、第1LEDチップ102を一括封止している。」
「[0023] (LEDチップの構成)第1LEDチップ102は、ピーク波長が460nm~500nmの範囲の青色発光ダイオード(470nmチップ)である。本実施形態では、ピーク波長が415nm~460nmの範囲の青色発光ダイオード(450nmチップ)は使用しない。[0024] すなわち、第1LEDチップ102は、ピーク波長が460nm~500nmの範囲である。そして、この第1LEDチップ102が発光して得られる青色光は、白色光の形成に用いられる。つまり、第1LEDチップ102が発光して得られる青色光は、光源装置10から出射される白色光の青色成分となる。」
「図1(b)[図:0001398788000001.jpg]」
(2)引用発明
上記(1)より、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。
<引用発明>
「発光ダイオードを用いて白色光を発光する光源装置において、上記白色光の発光スペクトルのうち415nm~460nmの積分発光強度よりも460nm~500nmの積分発光強度が大であり、(請求項1)光源装置は、基板101、第1LEDチップ102、蛍光体含有樹脂層104、ダムリング105を備え、基板101の一方の面には、第1LEDチップ102、蛍光体含有樹脂層104、ダムリング105が設けられ、([0014])第1LEDチップ102は、それぞれ青色発光ダイオードからなり、([0017])蛍光体含有樹脂層104は、緑色蛍光体104aおよび赤色蛍光体104bを含有する樹脂からなる封止樹脂層であり、第1LEDチップ102を一括封止し、([0018])第1LEDチップ102は、ピーク波長が460nm~500nmの範囲の青色発光ダイオードであり、([0023])この第1LEDチップ102が発光して得られる青色光は、白色光の形成に用いられる、([0024])光源装置。」
5 対比・判断
(1)対比
ア 本願発明の「パッケージ本体と、前記パッケージ本体の上に配置される発光素子と、前記発光素子の上に配置されるモールディング部材と、前記モールディング部材内に配置された蛍光体と、を含む発光素子パッケージにおいて、」との特定事項について
引用発明は、「発光ダイオードを用いて白色光を発光する光源装置」であって、「基板101、第1LEDチップ102、蛍光体含有樹脂層(104」を備え、「基板101の一方の面には、第1LEDチップ102、蛍光体含有樹脂層104」が設けられており、当該「蛍光体含有樹脂層104」は、「緑色蛍光体104aおよび赤色蛍光体104bを含有する樹脂からなる封止樹脂層であり、第1LEDチップ102を一括封止」するものである。
そうすると、引用発明の「基板101」、「第1LEDチップ102」、「蛍光体含有樹脂層」、「緑色蛍光体104aおよび赤色蛍光体104b」及び「光源装置」は、それぞれ本願発明の「パッケージ本体」、「発光素子」、「モールディング部材」、「蛍光体」及び「発光素子パッケージ」に相当するといえる。
そして、引用発明の「発光素子」、は、「基板101の一方の面に」「設けられて」いるから、本願発明の「前記パッケージ本体の上に配置される」との上記特定事項を満たし、引用発明の「蛍光体含有樹脂層104」は、「第1LEDチップ102を一括封止」しているから、本願発明の「前記発光素子の上に配置される」との上記特定事項を満たし、引用発明の「緑色蛍光体104aおよび赤色蛍光体104b」は、「蛍光体含有樹脂層104は、緑色蛍光体104a」「および赤色蛍光体104b」「を含有する樹脂」であるから、本願発明の「前記モールディング部材内に配置された」との上記特定事項を満たすといえる。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。
イ 本願発明の「前記発光素子パッケージの415nm~455nmである第1波長領域の波長スペクトル強度(intensity)の比率より、465nm~495nmである第2波長領域の波長スペクトル強度の比率が大きく、」との特定事項について
引用発明は、「白色光の発光スペクトルのうち415nm~460nmの積分発光強度よりも460nm~500nmの積分発光強度が大であり」と特定されている。
ウ 本願発明の「前記蛍光体は、緑色蛍光体である第1蛍光体と、赤色蛍光体である第2蛍光体とを含み、前記発光素子の発光波長を励起波長として白色光源を具現し、」との特定事項について
引用発明は、「蛍光体含有樹脂層104は、緑色蛍光体104aおよび赤色蛍光体104bを含有する樹脂からなる封止樹脂層」を備え、「第1LEDチップ102は、ピーク波長が460nm~500nmの範囲の青色発光ダイオードであり」、「この第1LEDチップ102が発光して得られる青色光は、白色光の形成に用いられる」ものである。
そうすると、引用発明の「緑色蛍光体104a」及び「赤色蛍光体104b」は、それぞれ本願発明の「第1蛍光体」及び「第2蛍光体」に相当し、引用発明は、本願発明の「前記発光素子の発光波長を励起波長として白色光源を具現し」との特定事項を満たすといえる。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。
エ 本願発明の「前記第1蛍光体は、前記第2蛍光体より高い割合で蛍光体組成物が形成され、前記第1蛍光体と前記第2蛍光体の相対的な比率(前記第1蛍光体:前記第2蛍光体)は、85wt%~95wt%:5wt%~15wt%である、」との特定事項について
引用発明において、「緑色蛍光体104a」と「赤色蛍光体104b」の相対的な比率は特定されていない。
オ 以上より、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「パッケージ本体と、前記パッケージ本体の上に配置される発光素子と、前記発光素子の上に配置されるモールディング部材と、前記モールディング部材内に配置された蛍光体と、を含む発光素子パッケージにおいて、前記蛍光体は、緑色蛍光体である第1蛍光体と、赤色蛍光体である第2蛍光体とを含み、前記発光素子の発光波長を励起波長として白色光源を具現している、発光素子パッケージ。」
<相違点>
・相違点1
本願発明は、「前記発光素子パッケージの415nm~455nmである第1波長領域の波長スペクトル強度(intensity)の比率より、465nm~495nmである第2波長領域の波長スペクトル強度の比率が大きく」と特定されるのに対し、引用発明は、「白色光の発光スペクトルのうち415nm~460nmの積分発光強度よりも460nm~500nmの積分発光強度が大であり」と特定されている点。
・相違点2
「第1蛍光体」及び「第2蛍光体」について、本願発明は「前記第1蛍光体は、前記第2蛍光体より高い割合で蛍光体組成物が形成され、前記第1蛍光体と前記第2蛍光体の相対的な比率(前記第1蛍光体:前記第2蛍光体)は、85wt%~95wt%:5wt%~15wt%である」と特定されるのに対し、引用発明は、「緑色蛍光体104a」と「赤色蛍光体104b」の相対的な比率は特定されていない点。
(2)判断
ア 相違点1について
(ア)本願発明では、「前記発光素子パッケージの415nm~455nmである第1波長領域の波長スペクトル強度(intensity)の比率より、465nm~495nmである第2波長領域の波長スペクトル強度の比率が大きく」と特定している(以下「第1波長領域の波長スペクトル強度」及び「第2波長領域の波長スペクトル強度」を、それぞれ「第1スペクトル強度」及び「第2スペクトル強度」という。)ところ、一般に「スペクトル」とは波長における光の強度分布を配列したものをいい、当該「スペクトル」は、横軸に波長(nm)、縦軸に光強度(Intensity)を示してグラフ化されることが技術常識であるから、当該技術常識を踏まえると、本願発明の「第1スペクトル強度」は、「第1波長領域における発光強度の積分値」であると理解できる。
そして、当該「第1スペクトル強度」の「比率」について、何に対する比率であるか特定されていないところ、当該「第1スペクトル強度」が、所定の波長域(第1波長領域)における「発光強度の積分値」であることに照らせば、「全ての発光波長領域における発光強度の積分値」に対する「第1スペクトル強度」の「比率」を意味すると解することが自然な理解といえる。また、「第2スペクトル強度」についても同様である。
(イ)他方、引用発明では、「白色光の発光スペクトルのうち415nm~460nmの積分発光強度よりも460nm~500nmの積分発光強度が大であり」と特定されており、「415nm~460nmの積分発光強度」と「460nm~500nmの積分発光強度」との大小関係を特定するものであるところ、当該各「積分発光強度」を「白色光の発光スペクトル」全体の発光強度に対する比率に換算しても、上記大小関係が保たれることは明らかといえるから、引用発明の上記特定事項は、「白色光の発光スペクトルのうち415nm~460nmの積分発光強度の比率よりも460nm~500nmの積分発光強度の比率が大であり」と言い換えることができるものである。
そうすると、引用発明が相違点1に係る本願発明の構成を満たしているというためには、引用発明が、「415nm~455nmの積分発光強度よりも465nm~495nmの積分発光強度が大」であるといえれば足りるものと解されるから、そのようにいえるかについて検討する。
(ウ)引用発明の「第1LEDチップ102」は、「ピーク波長が460nm~500nmの範囲の青色発光ダイオード」であるところ、一般にLEDチップの発光スペクトルは、ピーク波長を中心に左右対称の単峰性であり、その半値幅は30~60nm程度(例えば、特開平9-162442号公報の【0040】、国際公開第2014/057591号の【0035】及び【0083】参照)である。
ここで、当該「第1LEDチップ102」のピーク波長が、上記範囲内で最も短波長側の「460nm」のとき、当該ピーク波長(460nm)が、455nmと465nmとの中心の波長であることを踏まえると、当該「第1LEDチップ102」の発光による「415nm~455nm」の積分発光強度と「465nm~495nm」の積分発光強度は、ほぼ等しくなるものと理解できる。そして、引用発明は「緑色蛍光体104a」を更に備えており、蛍光体からの発光は幅広であるとの技術常識を踏まえると、引用発明における「465nm~495nm」の積分発光強度には、当該「緑色蛍光体104a」からの発光が含まれていると解されるものである。
そうすると、引用発明において、「第1LEDチップ102」のピーク波長が、「460nm」である場合に、引用発明は、「415nm~455nmの積分発光強度よりも465nm~495nmの積分発光強度が大」であるとの構成を満たすといえ、そのピーク波長が、「460nm」より長波長側へシフトする場合にも、当該構成が満たされることは明らかといえる。
よって、引用発明は、「415nm~455nmの積分発光強度よりも465nm~495nmの積分発光強度が大」であるといえるから、上記相違点1は、実質的な相違ではない。
(エ)仮に、そこまではいえないとしても、引用文献の[0007]~[0010]に記載のとおり、引用発明は、青色光傷害関数の値が大きい450nm近傍の青色成分を減らし、白色光の主たる青色成分を460nm~500nmの光として、人の眼に優しい白色光を発光する光源装置を提供するものであるから、当該技術思想を踏まえると、引用発明は、上記相違点1に係る構成を満たしていると解することが自然といえるので、やはり、上記相違点1は、実質的な相違ではない。
イ 相違点2について
引用発明は、「第1LEDチップ102」の青色光、「緑色蛍光体104a」の緑色光及び「赤色蛍光体104b」の赤色光の混色により白色光を得るものであるから、「緑色蛍光体104a」及び「赤色蛍光体104b」の添加量は、所望の白色光が得られるよう、当業者が適宜設計し得るものといえる。
そして、「緑色蛍光体104a」と「赤色蛍光体104b」の相対的な比率として、「85wt%~95wt%:5wt%~15wt%」の範囲は、特別なものでもない(例えば、特表2006-524425号公報の【0055】、特開2006-332269号公報の【0019】及び特開2006-49799号公報の【0101】参照)ことを踏まえると、引用発明の「緑色蛍光体104a」と「赤色蛍光体104b」の相対的な比率を、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。
ウ 本願発明の効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。
(3)審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書にて、引用文献には、緑色蛍光体と赤色蛍光体の相対的な比率について記載も示唆もなされていないことを主張している。
しかしながら、上記(2)イに説示のとおりであるから、審判請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。
6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-000977