特許拒絶査定不服審判
2022-000366
有料トイレ利用制御装置、有料トイレシステム、および有料トイレ利用制御プログラム
- 審判番号
- 2022-000366
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-561891外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月11日
- 審決日
- 2023年03月28日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社エクセルシア
- 【請求人代理人】IBC一番町弁理士法人
- 分類
- P18 .121-Z (G07F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-561891号「有料トイレ利用制御装置、有料トイレシステム、および有料トイレ利用制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年6月24日国際公開、WO2021/125363〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)1月5日を国際出願日とする出願であって、令和3年10月15日に手続補正書が提出され、同年11月2日付けで拒絶理由が通知され、同年12月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月9日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、令和4年1月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~22に係る発明は、令和4年1月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項22に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
なお、請求項22は、令和4年1月11日付けの手続補正により補正されていない。
「 【請求項22】
ユーザーが有料トイレを使用するための利用料に関する決済処理を実行する決済工程と、
前記決済処理が実行された場合に、施錠された前記有料トイレの出入口の鍵を開錠する使用前開錠工程と、
前記ユーザーが前記有料トイレを使用する際に、開錠された前記鍵を施錠する使用中施錠工程と、
前記ユーザーが前記有料トイレの使用を完了した際に、施錠された前記鍵を開錠する使用後開錠工程と、
前記使用後開錠工程において前記鍵が開錠された後に、開錠された前記鍵を施錠する使用後施錠工程と、
前記使用中施錠工程において前記鍵が施錠された状態が所定の時間以上継続した場合に、ネットワークにより接続された管理者端末に対して警告を送信する警告工程と、
を有料トイレ利用制御装置が実行する有料トイレ利用制御方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
[理由]
この出願の請求項1、3~5、7~16及び20~22に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・実願平1-41498号(実開平2-133789号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)
・特開2015-87882号公報(以下「引用文献2」という。)
第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「[産業上の利用分野]
本考案は、有料の更衣室、シヤワー室、浴室、洗面室、トイレ等の有料貸室の料金徴収装置に関するものである。」(明細書1ページ20行~2ページ2行)
(1b)
「[実施例]
次に、本考案の一実施例を図面に基づいて説明する。図面において、1は貸室の出入口に取付けられるドア体であって、該ドア体1は、ドアノブ2の操作によって開閉される・・・マイクロコンピユータ等で構成される制御部9、・・・等が設けられる」(明細書3ページ18行~4ページ12行)
(1c)
「 次に、制御部9の制御手順を第5図および第6図に示すフローチヤート図に基づいて説明する。この制御部9は、・・・制御がスタートすると、まず初期設定が成された後、コインが投入されたか否かが連続的に判断される。ここでコインの投入があつたと判断されると、ソレノイド4aの動作に伴う電動錠4の解錠動作でドア体1の開放が許容されることになる」(明細書5ページ5~18行)
(1d)
「使用者が入室したか否かが判断される。・・・そして、入室判断が成されると、該判断に伴う電動錠4の施錠動作により使用者以外の入室を規制し、これによって使用者は貸室を独占的に使用することができるようになつている。」(明細書6ページ1~13行)
(1e)
「ここで、使用可能時間Aが残り2分であると判断した場合は、前記音声発生部7を動作させて例えば「残り時間が2分となりました。時間を延長する場合はコインを投入して下さい。」等の音声メツセージを発し、使用者に対して残り時間が少なくなったことを報知する」(明細書7ページ4~9行)
(1f)
「そして、退出判断が成されると、該判断に伴う電動錠4の施錠動作によりコインを投入した正規の使用者以外の入室を規制する初期状態に戻るようになっている」(明細書8ページ10~13行)
(1g)
「 尚、本考案は、前記実施例に限定されないものであることは勿論であって、・・・また、さらに、料金徴収装置の制御としては、第7図(一部省略)に示す第二実施例のように行うこともできる。即ち、第二実施例は、ドア体に別途設けた退出スイッチの操作に基づいて解錠を行うものであるが、このような構成とすれば、使用可能時間が残り少なく待つまでもなく、使用可能時間がプラスであれば任意の時間に退出できるようにすることができる。」(明細書11ページ5~20行)
(1h)
第5図、第6図及び第7図には、以下の内容が示されている。
[図:0001397667000001.jpg]
[図:0001397667000002.jpg]
[図:0001397667000003.jpg]
(2)引用文献1の認定事項
ア
第5図の「コインの投入か?」における「YES」は、「コインの投入があつたと判断」する工程であり、摘記(1a)、(1c)、(1d)を参照すると、「有料の更衣室、シャワー室、浴室、洗面室、トイレ等の有料貸室」を利用する「使用者」による「コインの投入があったと判断する」工程であると認定できる。
イ
第5図の「解錠」は、摘記(1a)、(1b)、(1c)を参照すると、「コインの投入があつたと判断されると、ソレノイド4aの動作に伴う電動錠4の解錠動作で」「有料貸室」の「ドア体1の開放が許容される」工程であると認定できる。
ウ
第5図の「施錠」は、摘記(1a)、(1d)を参照すると、「有料貸室」への「入室判断が成されると、該判断に伴う電動錠4の施錠動作により使用者以外の入室を規制」する工程であると認定できる。
エ
第7図の「退出スイッチONか?」における「YES」は、摘記(1a)、(1g)を参照すると、「有料貸室」の「使用可能時間がプラスであれば任意の時間に退出できるように」、「ドア体」1「に別途設けた退出スイッチの操作に基づいて解錠を行う」工程であると認定できる。
オ
第6図の「ドア閉鎖か?」における「YES」に続く「施錠」は、摘記(1a)、(1f)を参照すると、「有料貸室」からの「退出判断が成されると、該判断に伴う電動錠4の施錠動作によりコインを投入した正規の使用者以外の入室を規制する初期状態に戻る」工程であると認定できる。
カ
第5図の「A=2分か?」における「YES」に続く第6図の「音声出力」は、摘記(1a)、(1e)を参照すると、「有料貸室」の「使用可能時間Aが残り2分であると判断した場合は、」「音声発生部7を動作させて」、「時間を延長する場合はコインを投入してください」「等の音声メツセージを発し、使用者に対して残り時間が少なくなったことを報知する」工程であると認定できる。
キ
「第5図および第6図に示すフローチヤー図」と「第7図(一部省略)に示す第二実施例」に着目し、摘記(1a)、(1b)を参照すると、「マイクロコンピユータ等で構成される」「制御部9の制御手順」には、「有料貸室の料金徴収装置」に「設けられ」た「マイクロコンピュータ等で構成される制御部9」が実行する、「有料貸室」の利用制御方法が記載されていると認められる。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)、(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「有料の更衣室、シャワー室、浴室、洗面室、トイレ等の有料貸室を利用する使用者によるコインの投入があつたと判断する工程と、
コインの投入があったと判断されると、ソレノイド4aの動作に伴う電動錠4の解錠動作で前記有料貸室のドア体1の開放が許容される工程と、
前記有料貸室への入室判断が成されると、該判断に伴う電動錠4の施錠動作により使用者以外の入室を規制する工程と、
前記有料貸室の使用可能時間Aが残り2分であると判断した場合は、音声発生部7を動作させて、時間を延長する場合はコインを投入してください等の音声メツセージを発し、使用者に対して残り時間が少なくなったことを報知する工程と
前記有料貸室の使用可能時間がプラスであれば任意の時間に退出できるように、ドア体1に別途設けた退出スイッチの操作に基づいて解錠を行う工程と、
前記有料貸室からの退出判断が成されると、該判断に伴う電動錠4の施錠動作によりコインを投入した正規の使用者以外の入室を規制する初期状態に戻る工程とを、
前記有料貸室の料金徴収装置に設けられたマイクロコンピュータ等で構成される制御部9が実行する、前記有料貸室の利用制御方法。」
2 引用文献2
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【0058】
次に本実施形態のトイレシステムにおけるトイレ管理方法について説明する。図9は、管理サーバ2がトイレ管理プログラムに従って実行するトイレ管理方法の説明図である。
【0059】
まず、使用者がトイレブース14に入室し、検出部46が、この入出を検出すると、制御装置44が、当該トイレブース14の識別情報と入室時刻を管理サーバ2へ送信する。
・・・
【0067】
そして管理サーバ2は、ステップS10で記録した入室時刻から第1の時間が経過したか否かを判定する(ステップ90)。・・・
【0068】
一方、ステップS90で第1の時間が経過していると判定した場合(ステップS90、Yes)、警報を出力して管理サーバ2の操作者や管理者に知らせると共に、当該トイレブース14の制御装置44に通知する(ステップS110)。なお、警報の出力は、管理サーバ2の表示装置等に警報を表示させて管理サーバ2の操作者に知らせ、操作者から管理者へ電話等で連絡することや、管理サーバ2が直接管理者の端末にメール等で通知することでも良い。また、本実施形態では、警報をトイレブース14の警報機45から出力することで、当該トイレブース14内の使用者だけでなく、周囲の人にも知らせることができる。なお、警報の出力は、トイレブース14と管理サーバ2の何れか一方でもよく、例えばトイレブース14における警報の出力を省略しても良い。」
(2)引用文献2に記載された技術事項
上記(1)から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2に記載された技術事項]
「トイレブース14に使用者が入室してから第1の時間が経過していると判定した場合、直接管理者の端末にメール等で通知して警報を出力し、警報をトイレブース14の警報機45から出力する、管理サーバ2がトイレ管理プログラムに従って実行するトイレ管理方法。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)
引用発明の「使用者」は、本願発明の「ユーザー」に相当する。
引用発明の「有料の更衣室、シャワー室、浴室、洗面室、トイレ等の有料貸室」と、本願発明の「有料トイレ」とは、「有料貸室」において共通する。
(2)
ア
引用発明の「コイン」は、本願発明の「利用料」に相当する。
このことと、上記(1)を踏まえると、引用発明の「有料の更衣室、シャワー室、浴室、洗面室、トイレ等の有料貸室を利用する使用者によるコインの投入があつたと判断する工程」と、本願発明の「ユーザーが有料トイレを使用するための利用料に関する決済処理を実行する決済工程」とは、「ユーザーが有料貸室を使用するための利用料に関する処理を実行する工程」において共通する。
イ
上記ア、(1)を踏まえると、引用発明の「コインの投入があつたと判断されると、ソレノイド4aの動作に伴う電動錠4の解錠動作で前記有料貸室のドア体1の開放が許容される工程」と、本願発明の「前記決済処理が実行された場合に、施錠された前記有料トイレの出入口の鍵を開錠する使用前開錠工程」とは、「前記処理が実行された場合に、施錠された前記有料貸室の出入口の鍵を開錠する使用前開錠工程」において共通する。
ウ
上記(1)を踏まえると、引用発明の「前記有料貸室への入室判断が成されると、該判断に伴う電動錠4の施錠動作により使用者以外の入室を規制する工程」と、本願発明の「前記ユーザーが前記有料トイレを使用する際に、開錠された前記鍵を施錠する使用中施錠工程」とは、「前記ユーザーが前記有料貸室を使用する際に、開錠された前記鍵を施錠する使用中施錠工程」において共通する。
エ
上記(1)を踏まえると、引用発明の「前記有料貸室の使用可能時間がプラスであれば任意の時間に退出できるように、ドア体1に別途設けた退出スイッチの操作に基づいて解錠を行う工程」と、本願発明の「前記ユーザーが前記有料トイレの使用を完了した際に、施錠された前記鍵を開錠する使用後開錠工程」とは、「前記ユーザーが前記有料貸室の使用を完了した際に、施錠された前記鍵を開錠する使用後開錠工程」において共通する。
オ
引用発明の「前記有料貸室からの退出判断が成される」ことは、上記エの工程の後であることが明らかであるから、本願発明の「使用後開錠工程において前記鍵が開錠された後」に相当する。
そうすると、引用発明の「前記有料貸室からの退出判断が成されると、該判断に伴う電動錠4の施錠動作によりコインを投入した正規の使用者以外の入室を規制する初期状態に戻る工程」は、本願発明の「前記使用後開錠工程において前記鍵が開錠された後に、開錠された前記鍵を施錠する使用後施錠工程」に相当する。
(3)
上記(1)を踏まえると、引用発明の「前記有料貸室の料金徴収装置に設けられたマイクロコンピュータ等で構成される制御部9」と、本願発明の「有料トイレ利用制御装置」とは、「有料貸室利用制御装置」において共通する。
そうすると、引用発明の「前記有料貸室の料金徴収装置に設けられたマイクロコンピュータ等で構成される制御部9が実行する、前記有料貸室の利用制御方法」と、本願発明の「有料トイレ利用制御装置が実行する有料トイレ利用制御方法」とは、「有料貸室利用制御装置が実行する有料貸室利用制御方法」において共通する。
2 一致点及び相違点
上記1から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「ユーザーが有料貸室を使用するための利用料に関する処理を実行する工程と、
前記処理が実行された場合に、施錠された前記有料貸室の出入口の鍵を開錠する使用前開錠工程と、
前記ユーザーが前記有料貸室を使用する際に、開錠された前記鍵を施錠する使用中施錠工程と、
前記ユーザーが前記有料貸室の使用を完了した際に、施錠された前記鍵を開錠する使用後開錠工程と、
前記使用後開錠工程において前記鍵が開錠された後に、開錠された前記鍵を施錠する使用後施錠工程と、
前記使用中施錠工程において前記鍵が施錠された状態が所定の時間以上継続した場合に、警告を送信する警告工程と、
を有料貸室利用制御装置が実行する有料貸室利用制御方法。」
<相違点1>
「利用料に関する処理を実行する工程」について、本願発明では、「利用料に関する決済処理を実行する」のに対して、引用発明では、「コインの投入があつたと判断される」すなわち「コインの投入があったことを判断する」点。
<相違点2>
本願発明は、「前記使用中施錠工程において前記鍵が施錠された状態が所定の時間以上継続した場合に、ネットワークにより接続された管理者端末に対して警告を送信する警告工程」「を実行する」のに対して、引用発明は、「前記有料貸室の使用可能時間Aが残り2分であると判断した場合は、音声発生部7を動作させて、時間を延長する場合はコインを投入してください等の音声メツセージを発し、使用者に対して残り時間が少なくなったことを報知する工程と、前記有料貸室の使用可能時間がプラスであれば任意の時間に退出できるように、ドア体1に別途設けた退出スイッチの操作に基づいて解錠を行う工程」「とを実行する」点。
第6 判断
1 相違点について
相違点について以下検討する。
(1)相違点1について
ア
引用発明の「コインの投入があったことを判断する」ことは、利用のために使用できるコイン(例えば10円、50円、100円)の種類や枚数を判断することで、利用料が十分であることを判断していることが明らかであり(引用文献1の「前記投入されたコインに基づいて使用可能時間Aを算出する」という記載からも明らかである。)、実質的に利用料に関する決済処理を実行するといえるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
イ
仮に、本願発明の「利用料に関する決済処理を実行する」ことが現金による支払いを含まないことを意味しており、また、引用発明の「コインの投入があったことを判断する」ことが、決済処理までは実行していないものであり、相違点1が実質的な相違点であったとしても、有料トイレの利用料をカード等で決済することは周知技術(必要があれば、特開2007-241538号公報の段落【0020】、【0024】、【0025】、図3、図5、特開平6―12905号公報の段落【0009】、図5、特開2004-341798号公報の段落【0024】、【0029】、【0034】、等を参照。)であり、この周知技術に鑑み相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
(2)相違点2について
ア
引用発明の「有料貸室」は、「有料の更衣室、シャワー室、浴室、洗面室、トイレ等の有料貸室」であるから、「有料」「トイレ」を含む4つの具体例が記載されており、その4つの具体例のうち「有料」「トイレ」にも着目することは、自然なことである。
イ
ここで、有料か無料かにかかわらず、個室トイレ(引用発明のように、有料貸室となっている有料トイレは個室といえる。)の内部において、長時間使用などの何らかの異常事態(例えば、利用者自ら外部に知らせることができないようないような異常事態)が発生した場合に、異常であることを外部に伝える手段を設けることは、自明な課題である(必要があれば、特許第4991771号公報の段落【0002】、【0009】、【0026】、特開2000-132770号公報の段落【0021】~【0023】、特開平8-180282号公報の段落【0021】、【0022】、【0026】等も参照。)。
ウ
そして、引用発明は、「前記有料貸室の使用可能時間がプラスであれば任意の時間に退出できる」、すなわち、コインを投入せずに使用が継続すると、有料貸室の使用可能時間がマイナスの状態になったままで鍵が施錠された状態が継続し、利用料に相当するコインを投入しない限り退出できないものであり(引用文献1の第7図の「○2」(「2」を「○」で囲った記号を意味する。以下同様。」~「○4」のフローも参照。)、この状態には、長時間使用などの何らかの異常事態(例えば、利用者自ら外部に知らせることができないようないような異常事態)が発生した場合も包含されていることが明らかである。
そうすると、引用発明は、上記イで述べた自明な課題を内在しているものである(要するに、引用発明は、利用者自ら外部に知らせることができないようないような異常事態になった場合、個室トイレ等の個室に閉じ込められてしまうおそれのあるものであり、それを外部に伝えるようにすることは、自明な課題である。)。
エ
以上を総合すると、引用発明において、「有料」「トイレ」を選択して(上記ア)、個室トイレの内部において、長時間使用など何らかの異常事態が発生した場合に、異常であることを外部に伝える手段を設けるという、自明な課題に鑑み(上記イ)、当該課題を解決するために、引用文献2に記載された技術事項の「トイレブース14に使用者が入室してから第1の時間が経過していると判定した場合、直接管理者の端末にメール等で通知して警報を出力」することを付加することで、引用発明において、有料貸室の使用可能時間がマイナスの状態になったままで鍵が施錠された状態が、所定の時間以上継続した場合に、ネットワークにより接続された管理者端末に対して警告を送信する警告工程を実行するようにして、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことにすぎない。
(3)作用効果について
本願発明が奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項から予測されるものであり、格別に顕著な作用効果ではない。
2 審判請求人の主張について
(1)主張の内容
審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」「(3)本願発明と引用発明との対比」において、
「引用文献1に開示された発明は、有料トイレ特有の技術に関するものではなく、一般的な有料貸室の料金徴収に関する技術であることが明らかです。」、
「このように、技術分野、作用および機能のいずれもが異なる引用文献1に、引用文献6を組み合わせる動機付けは存在せず、当業者であっても、引用文献1に記載の発明に引用文献6の技術的思想を組み合わせることは困難です。」及び
「引用文献1には、管理者を常駐させる場所についての記載はなされていません。有料貸室側であっても管理者端末側であっても、管理者を配置すれば人件費がかかります。「完全な無人化」(第2頁下から3行目)および「人件費の大幅な削減」(第12頁8行目)等の記載を考慮すれば、やはり、引用文献1に開示された発明において、管理者端末側であっても管理者を配置させることには阻害要因があると言わざるを得ません。」
等主張している。
(2)検討
上記1(2)アで示したとおり、引用発明の「有料の更衣室、シャワー室、浴室、洗面室、トイレ等の有料貸室」には、4つの選択肢の中に「有料」「トイレ」が含まれているから、引用発明において、有料トイレが想定されていることは明らかである。
そして、上記のように実質的に技術分野が共通することや、上記1(2)イ、ウで述べたとおりの自明な課題に鑑みると、引用発明に引用文献2(上記(1)でいう引用文献6)に記載された技術事項を適用する動機付けは充分にあるといえる。
さらに、引用文献1の「完全な無人化」(2ページ下から3行)および「人件費の大幅な削減」(12ページ8行)は、「有料の更衣室、シャワー室、浴室、洗面室、トイレ等の有料貸室」自体についてのことであるから、引用発明の「有料貸室」は、管理者を配置させる必要がないものであるところ、管理者の必要性を、その「トイレ等の有料貸室」の外部についてまでいうものではない上に、引用文献2(上記(1)でいう引用文献6)に記載された技術事項は、プログラムが自動的に実行するから、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用しても、管理者端末側に元々いた管理者がいれば十分であって、新たな人件費が必要になることはなく、人件費に係る阻害要因は存在しない。
したがって、上記(1)の主張は、採用できない。
3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-000366