特許拒絶査定不服審判
2024-020148
取引装置及び取引プログラム
- 審判番号
- 2024-020148
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-072200
- 請求日
- 2024年12月16日
- 審決日
- 2025年12月09日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】沖電気工業株式会社
- 【請求人代理人】吉田 倫太郎
- 【請求人代理人】若林 裕介
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 岩間 直純
- 審判官 坂庭 剛史
- 分類
- P18 .121-WZ (G07F) / P18 .537-WZ (G07F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第44条第1項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 72200「取引装置及び取引プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 7月13日出願公開、特開2023- 99566〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
理由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)9月26日を出願日とする特願2018-180401号の一部を令和5年(2023年)4月26日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願としたものであって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
令和 6年 5月30日付け 拒絶理由通知
令和 6年 8月13日 意見書・手続補正書の提出
令和 6年 9月 4日付け 拒絶査定
令和 6年12月16日 審判請求書・手続補正書の提出
令和 7年 5月19日付け 拒絶理由通知(当審)
令和 7年 7月22日 意見書・手続補正書の提出
第2 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、令和7年7月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「取引装置において、
顧客により入力された振込情報に基づいて振込取引を行う振込取引処理部と、
前記顧客の入力操作を受付け顧客への情報の表示を行う操作表示部とを備え、
取引処理を行おうとする時刻がモアタイムである場合、前記顧客に対して即時に振込を実行する即時振込と次の営業日に振込を実行する予約振込のいずれを所望するかを前記操作表示部にて選択させた後に、前記即時振込が選択された場合に発生するモアタイムの即時振込手数料の金額をモアタイムの手数料であることを示す情報とともに表示し確認させることを特徴とする取引装置。」
第3 原査定及び当審の拒絶の理由の概要
1 原査定の拒絶の理由
請求項1についての原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
「<引用文献等一覧>
1.特開2009-211660号公報
2.特開2016-177789号公報」
2 当審の拒絶の理由
請求項1についての当審の拒絶の理由は、以下のとおりである。
「1(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
「請求項1に「取引処理を行おうとする時刻がモアタイムである場合、前記顧客に対して即時に振込を実行する即時振込と次の営業日に振込を実行する予約振込のいずれを所望するかを前記操作表示部にて選択させるとともに、前記即時振込が選択された場合に発生するモアタイムの即時振込手数料の金額を表示し確認させる」と記載されている。
該記載では、「前記顧客に対して即時に振込を実行する即時振込と次の営業日に振込を実行する予約振込のいずれを所望するかを前記操作表示部にて選択させ」(以下の「振込の選択」という。)た後に、別の画面に「前記即時振込が選択された場合に発生するモアタイムの即時振込手数料の金額を表示」(以下、「手数料金額の表示」という。)するのか、振込の選択の際に、手数料金額の表示も同時に行うか不明であって、特許請求の範囲の技術的範囲が不明確となっている。」
「引用文献等一覧
1.特開2016-177789号公報
2.特開2009-211660号公報」
第4 当審の判断
1 引用文献1の記載事項及び引用発明
(1) 引用文献1の記載事項
当審の拒絶理由で引用された引用文献1(特開2016-177789号)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付したものである。以下同じ。)。
ア
「【図1】
[図:0001431877000001.jpg]
」
イ
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、日本国内の金融機関が他の金融機関(以下、「他行」と呼ぶ。)宛の当日振込扱いとする振込時間は平日の15時までとされている。近年、金融システムの決済インフラの高度化等の観点から、自行宛の振込時間や他行宛の振込時間の延長等が検討されている。例えば、従来のように自行宛又は他行宛の振込時間は15時から16時まで延長したり、将来的には土日の当日振込も検討されている。
【0005】
しかしながら、当日扱いの振込時間が延長した場合、日本全国の全ての金融機関が一斉に移行しない可能性もあり、金融機関によっては対応の足並みがそろわないおそれも生じ得る。
【0006】
そのため、振込時間が変わった場合でも、顧客に振込日を注意喚起させることができ、また、金融システムに柔軟に対応して当日扱いの振込取引を行うことができる取引装置及び取引プログラムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、第1の本発明に係る取引装置は、入力された振込情報に基づいて振込取引を行う取引装置において、振込先の金融機関が当日扱いの振込が可能な時間帯であるか否かの確認結果に応じて、振込日を注意喚起させる振込日注意喚起情報を出力する振込取引処理部を備えることを特徴とする。」
ウ
「【0013】
(A-1)第1の実施形態の構成
(A-1-1)取引システムの全体構成
図1は、第1の実施形態に係る取引システムの全体構成を示す全体構成図である。
【0014】
図1において、第1の実施形態に係る取引システム5は、通信回線4-1に接続可能な複数のATM1と振込元の金融機関のホストサーバや管理サーバ(以下、金融機関のホストサーバや管理サーバを「金融ホストサーバ」と呼ぶ。)金融ホストサーバ2とを有する。また、金融ホストサーバ2は、通信回線4-2を介して、他行の金融ホストサーバ3と接続可能である。」
エ
「【0022】
(A-1-2)ATM1の内部構成
図2は、第1の実施形態に係るATM1の外観構成を示す外観構成図である。図2において、この実施形態に係るATM1は、操作表示部11、紙幣入出金口12、硬貨入出金口13、通帳入出口14、カード入出口15を有する。
【0023】
操作表示部11は、例えば、取引種類の選択メニュー画面、各取引種類の操作画面、取引内容の確認画面等を表示したり、顧客が入力した入力情報を取り込んだりするものである。操作表示部11は、例えば、タッチパネル方式の操作表示部を適用することができる。なお、操作表示部11は、操作部と表示部とが一体となったタッチパネル方式のものに限らず、操作部と表示部とがそれぞれ物理的に別の構成のものであってもよい。
(中略)
【0028】
図3は、第1の実施形態に係るATM1の内部構成を示す内部構成図である。ATM1は、例えば制御装置や通信装置や機構部等を有して構成されるものであり、図3は、ATM1の内部構成を機能的に示している。
【0029】
図3おいて、ATM1は、取引制御部21、記憶部23、通信部24、操作表示制御部25、カード機構部26、通帳機構部27、現金機構部28を有する。
【0030】
取引制御部21は、ATM1の全体的な機能を司る処理部又は装置である。取引制御部21は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、入出力インターフェース等を有して構成されるものであり、CPUがROMに格納される処理プログラムを実行することによりATM1の各種機能が実現される。また、処理プログラムがインストールされることによりATM1の機能が構築されるようにしても良く、その場合でも、機能的には図1に示すことができる。また、取引制御部21により実行される主な機能として、各種取引処理を行う取引処理部211を有する。
【0031】
取引処理部211は、ATM1において実行可能な取引種別を表示するメニュー画面を表示する。取引処理部211は、メニュー画面において顧客操作により選択された取引種別の案内画面を表示して取引を進行させながら、情報を取得して取引処理を行う。取引処理部211は、入金処理の各種取引(例えば預け入れ取引、振込取引等)、出金処理(引き出し取引等)を行うものであり、入金処理の1つとして振込取引処理部30を有する。
【0032】
振込取引処理部30は、顧客操作により振込取引が選択されたときに、取得した振込内容で振込先に対して現金を振り込む取引を行う。振込取引処理部30は、現金振込又はカード振込のいずれかを行うことができる。また、振込取引処理部30は、振込先が自行であっても良いし又は他行であっても良い。
【0033】
例えば、振込取引処理部30は、振込に係る取引画面を通じて、振込金額、依頼者名、振込先情報(より具体的には、振込先の金融機関名及び金融機関番号、支店名及び支店番号、振込先の口座番号等)を含む振込情報を取得し、この振込情報を含む振込照会要求電文を金融ホストサーバ2に送信する。振込取引処理部30は、金融ホストサーバ2から振込照会応答電文を取得し、振込可能であればその旨を表示して、顧客により確認ボタンが選択されると振込取引を完了する。振込取引処理部30は、後述する振込注意喚起情報を出力又は操作表示部11に表示する。
【0034】
操作表示制御部25は、ATM1のユーザインタフェース機能を制御するものである。具体的には、操作表示制御部25は、例えばタッチパネル方式の操作表示部11を用いて、利用者に操作画面を提示し、利用者への情報出力や、利用者からの操作受付(メニュー選択、取引種別入力、金額入力、番号入力等)を行う。
【0035】
操作表示制御部25は、取引処理部211による取引種別に応じて、対応する取引種別の所定の画面データを操作表示制御部25に与えて、操作表示部11に表示画面を表示させる。操作表示制御部25により表示される画面は、例えば、予め記憶されている取引種別ごとの画像データを記憶部23から読み出して操作表示部11に表示するようにしても良いし、金融ホストサーバ2から取得した画像データに基づいて操作表示部11に表示するようにしても良い。」
オ
「【図5】
[図:0001431877000002.jpg]
」
カ
「【図6】
[図:0001431877000003.jpg]
」
キ
「【0050】
(A-2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態に係る取引システム5における振込取引の処理の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0051】
図5及び図6は、第1の実施形態に係る取引システム5における振込取引の処理動作を示すフローチャートである。
【0052】
まず、ATM1において、取引メニュー画面が操作表示部11に表示されており、顧客操作により所望の取引種別が選択される。ここでは、操作表示部11上において、振込取引が選択される(S101)。取引制御部21では、振込取引処理部30が起動し、振込取引処理30は、振込取引が選択された旨の要求電文を金融ホストサーバ2に送信する(S102)。金融ホストサーバ2は、当日扱いの振込取引が可能であるか否かを判断し、取得した要求電文に対する応答電文をATM1に返信する(S103)。
【0053】
例えば、金融ホストサーバ2は、振込取引が選択された時刻が、当日振込扱いの振込時間帯であるか否かを判断する。ここでは、振込先が他行宛であるか否かを判断しているのではなく、当該ATM1を利用した振込時刻が、自行の当日扱いとする振込ができるか否かの時間帯であるか否かを判断している。なお、ここでは、ATM1が金融ホストサーバ2に対して当日扱いの時間帯を確認している場合を例示したが、ATM1自体が、ATM1を利用した当日扱いの時間帯であるか否かを判断するようにしても良い。その場合、図5のS102及びS103を省略しても良い。
【0054】
ATM1では、ATM1を利用した振込取引が翌日営業日扱い(図5では「翌営業日扱」と表示する。)であるか否かを判断する(S104)。S104において、当日扱いの振込が可能である場合、処理はS107に移行する。
【0055】
S104において翌営業日扱いと判断されると、処理はS105に移行し、振込日注意喚起情報としての振込日確認画面が、操作表示部11に表示される(S105)。振込日確認画面は、例えば「ただいまの時間帯は翌営業日のお取扱いとなります よろしければ「確認」ボタンを押してください」等のガイダンス表示と、「確認」ボタンが表示される。そして、顧客操作により「確認」ボタンが押下されると、振込日が翌営業日になることを表示し、顧客が確認したことを示す振込日確認情報231が記憶部23に記憶される(S106)。この振込日確認情報231は、少なくとも今回の取引が終了するまで記憶部23に一時的に記憶される。そして、処理はS107に移行する。つまり、振込日確認画面で「確認」ボタンが押下されなければ振込取引が継続出来ないようになっている。
【0056】
なお、S105において、振込日確認画面において「取消中止」ボタンが押下されると処理はS121に移行して、振込取引が取引中止となる(S121)。
【0057】
S107では、振込取引のガイダンス画面が操作表示部11に表示されて、振込方法がカード振込か又は現金振り込みかの選択(図5では「カード/現金選択」と表示)、カード等(例えばキャッシュカードや振込カードや通帳等)の挿入、振込先情報の入力等がなされる(S107)。
【0058】
S108では、振込金額入力画面が操作表示部11に表示され、顧客により振込金額が入力され(S108)、入力された振込金額が操作表示部11に表示され、顧客操作により「確認」ボタンが選択されると、振込処理が実行される(S109)。
【0059】
このとき、ATM1は、入力された振込に関する情報を含む振込照会要求電文を金融ホストサーバ2に送信する(S110)。例えば、振込照会要求電文には、振込金額、依頼者名、振込先情報(振込先の金融機関名及び金融機関番号、支店名及び支店番号、振込先の口座番号等)が含まれる。
【0060】
金融ホストサーバ2では、取得した振込照会要求電文に含まれる振込先の金融機関名及び金融機関番号に基づいて、振込先の金融機関が他行か否かを確認する(S122)。そして、振込先の金融機関が他行であれば、処理はS123に移行して当該他行の当日扱いの振込期間を確認する。つまり、金融ホストサーバ2は、振込先の他行金融ホストサーバ3に対して当日扱いの振込が可能であるか否かの振込照会を行う(S123)。金融機関ホストサーバ2は、他行金融ホストサーバ3から照会結果を取得して、その照会結果をATM1に送出する(S111)。そして、金融ホストサーバ2は、他行宛の当日扱いの振込が可能であるか否かの応答電文を、ATM1に返信する(S112)。
【0061】
なお、S122において、振込先が自行である場合には、金融機関ホストサーバ2は、処理をS111に移行させて、処理結果をATM1に送出する(S111)。振込先の金融機関が自行の場合、ATM1は、振込先を確認して、振込実行電文を金融機関ホストサーバ2に送信して(S124)、振込処理を完了する(S125)。
【0062】
一方、振込先の金融機関が他行の場合、ATM1では、振込取引処理部30は、金融ホストサーバ2から取得した応答電文に基づいて、他行宛の振込が翌営業日扱いであるか否かを判断する(S113)。
【0063】
S113において、他行が当日扱いの振込ができず、振込取引が翌営業日扱いとなる場合、処理はS114に移行する。そして、振込取引処理部30は、S105において振込日確認画面を既に表示したか否かを判断する(S114)。ここでは、振込日確認画面を多数回に亘って表示することになり、顧客にとって煩わしくなることを回避するために、既に振込日確認画面を表示したか否かを確認している。
【0064】
既に振込日確認画面を表示済みであるときには、入力された振込情報の内容で振込取引を実行する(S127、S128)。一方、振込日確認画面を表示していないときには、振込日が翌営業日となる旨を顧客に知らせるために、処理はS117に移行して、振込日確認画面が、操作表示部11に表示される(S117)。振込日確認画面の「確認」ボタンが押下されると、入力された振込情報の内容で振込取引を実行する(S127、S128)。つまり、振込日確認画面で振込日を確認したという顧客の承諾を示す「確認」ボタンが押下されなければ振込取引が継続出来ないようになっている。また振込日選択画面は「取引中止」ボタンを有しており、「取引中止」ボタンが押下されると、取引は中止される(S126)。
【0065】
S113において、金融ホストサーバ2からの応答電文に基づいて、振込取引が翌営業日扱いでない場合、処理はS116に移行して、振込日を当日扱いとするか又は翌営業日とするかを選択させる振込日選択画面が操作表示部11に表示される(S116)。また振込日選択画面は「取引中止」ボタンを有しており、「取引中止」ボタンが押下されると、取引は中止される(S126)。一方、振込日選択画面において「当日扱い」ボタン、「翌営業日扱い」ボタンが押下されると、処理はS127に移行する。ここで、S116の振込日選択画面の表示を省略して振込日を当日扱いで処理しても良い。これは、S113で振込先の他行は当日扱いの振込取引が可能であることを認識しているからである。
・・・中略・・・
【0068】
(A-3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、振込時間延長対応が遅れた金融機関への振込取引の場合に、ATMでは当日扱いが可能でも、振込先の金融機関が振込処理をできない場合に、顧客に振込日を意識させることで、クレームの抑止が可能となる。」
(2) 引用発明
引用文献1【0032】より「顧客操作により振込取引が選択されたときに、取得した振込内容で振込先に対して現金を振り込む取引を行う振込取引処理部」、【0034】より「利用者に操作画面を提示し、利用者への情報出力や、利用者からの操作受付を行う操作表示制御部」を備えたATMが引用文献1には記載されている。
引用文献1【0053】の「例えば、金融ホストサーバ2は、振込取引が選択された時刻が、当日振込扱いの振込時間帯であるか否かを判断する。ここでは、振込先が他行宛であるか否かを判断しているのではなく、当該ATM1を利用した振込時刻が、自行の当日扱いとする振込ができるか否かの時間帯であるか否かを判断している。」との記載より、金融ホストサーバ2は、当該ATM1を利用した振込時刻が、自行の当日扱いとする振込みができるか否かの時間帯であるかを判断して、振込取引が選択された時刻が、当日振込扱いの振込時間帯であるか否かを判断しているものと解される。さらに「ATM1が金融ホストサーバ2に対して当日扱いの時間帯を確認している場合を例示したが、ATM1自体が、ATM1を利用した当日扱いの時間帯であるか否かを判断するようにしても良い」との記載より、引用文献1にはATMが、前記ATMを利用した「振込時刻が、自行の当日扱いとする振込ができるか否かの時間帯であるかを判断して、振込取引が選択された時刻が、当日振込扱いの振込時間帯であるか否かを判断」することが記載されていると認められる。
【0054】及び【0062】より、引用文献1には「当日扱いの振込が可能である場合、前記振込取引処理部は、振込先の金融機関が他行の場合、金融ホストサーバから取得した応答電文に基づいて、他行宛の振込が翌営業日扱いであるか否かを判断」することが記載されている。
【0065】より、引用文献1には「振込取引が翌営業日扱いでない場合、振込日を当日扱いとするか又は翌営業日とするかを選択させる振込日選択画面が操作表示部に表示」されることが記載されている。
よって、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「顧客操作により振込取引が選択されたときに、取得した振込内容で振込先に対して現金を振り込む取引を行う振込取引処理部と、
利用者に操作画面を提示し、利用者への情報出力や、利用者からの操作受付を行う操作表示制御部とを備え、
振込時刻が、自行の当日扱いとする振込ができるか否かの時間帯であるかを判断して、振込取引が選択された時刻が、当日振込扱いの振込時間帯であるか否かを判断し、
当日扱いの振込が可能である場合、前記振込取引処理部は、振込先の金融機関が他行の場合、金融ホストサーバから取得した応答電文に基づいて、他行宛の振込が翌営業日扱いであるか否かを判断し、振込取引が翌営業日扱いでない場合、振込日を当日扱いとするか又は翌営業日とするかを選択させる振込日選択画面が操作表示部に表示する、
ATM」
2 引用文献2の記載事項及び引用文献2記載技術
(1) 引用文献2の記載事項
ア
「【図1】
[図:0001431877000004.jpg]
」
イ
「【実施例1】
【0010】
以下、図面に従って実施例を説明する。図2は本発明の自動取引装置の制御ブロック図である。図において、1は自動取引装置(以後、ATMとする)であり、2は金融機関が管理し維持するホストコンピュータであり、利用者毎の口座番号,氏名および預貯金残高情報等の利用者情報が記憶された記憶装置3を有している。この記憶装置3には口座番号の他にも暗証番号および取引履歴情報等も格納されている。4は通信回線であり、ATM1の図示しないインターフェース部と接続されている。
【0011】
ATM1は利用者操作により入金取引や出金取引、振込取引、更には通帳記帳や諸届出が行え、金融機関の本支店や出張所の無人化店舗等に設置される。10aは操作部であって、利用者Pが取引操作入力するための取引入力キー等で構成される。10bは取引操作時の案内を文字や記号、更にはイラストや動画像により表示する表示部である。なお、表示部10bの上面に赤外線等をマトリックス状に走査させたタッチパネル10cが構成される。これらを含めて報知手段としての利用者操作表示部10とする。
【0012】
11は通帳処理部であり通帳挿入返却口より挿入される通帳(図示しない)に印字処理など行なうもので、更に図示しない機構により利用者情報の読取りや更新手段、印字頁行の検出手段及び改頁手段等を有している。
12はカード処理部であって、金融機関毎のコードや利用者の口座番号,氏名等の利用者情報が記憶された利用者識別カード(以後、キャッシュカードとする)から前記情報を読出す機能を有する。このカード処理部12の前面側に接続されたカード挿入返却口により、キャッシュカードが挿入され、また取引終了時に返却が行なわれる。13は明細票処理部であり取引明細の印字を行ない後述する手順により利用者Pに発行される取引明細票の印字発行処理を行なうものである。
【0013】
14は紙幣入出金部であり、利用者Pにより入金される紙幣を真偽鑑別,計数し、搬送して図示しない金種別保管金庫に収納し、又は利用者Pに支払われる紙幣を金種別保管金庫より繰出し、出金口まで搬送するものである。15は硬貨入出金部であり、利用者Pにより入金される硬貨を真偽鑑別,計数し、搬送して図示しない金種別保管金庫に収納し、又は利用者Pに支払われる硬貨を金種別保管金庫より繰出し、出金口まで搬送するものである。なお、紙幣と硬貨を合わせて貨幣と称す。また、金種別保管金庫より繰出され出金口に一時集積された貨幣は、シャッタを開くことで利用者Pによる取り出しが可能になる。
【0014】
16は以上の各部を制御する制御部であり、処理実行プログラムや各種データが記憶されたRAMやROM又はハードディスクなどで構成された記憶部17も制御する。この記憶部17内には取引種目別に取引条件情報170も格納してある。この取引条件情報170としては、例えば図3に示すようなものである(詳細は後述する)。
更にはホストコンピュータ2との接続口であるインターフェース部も有している。また、18は時計部であって、現在時刻情報を出力させるための計時機能や、現在日である取引日を平日、土日、祝日等に区別して認識するカレンダー機能を有している。この時計部18は制御部16の指示により、曜日や時刻情報等を出力するものである。
なお、ATM1の機能を提供するには他にも各部に電力を供給する電源部、利用者のATM1への接近を検知する接近検知機能を始め、多々の機能・構成が備えられているが、本発明に関係しないため記載および説明は省略する。
【0015】
次に、記憶部17内に格納されている取引条件情報170を図3に示す利用時間と手数料の関係を示す図により説明する。本実施例1においては取引時間帯により差異がある取引手数料を、取引条件の一例として説明する。まず、取引手数料は出金取引や振込取引で課金され、その他(入金取引や記帳取引及び残高照会等)の取引では課金されないことを意味する。この手数料は取引する曜日と時間帯により、金額に差異がある。図3では、月曜日の午前0(零)時から午前7時未満までは220円、午前7時から午前9時未満までは110円、そして午前9時を過ぎると午後6時までは無料とする。そして、午後6時を経過すると午後11時未満までは110円となり、午後11時を過ぎると220円の手数料となる。
また、土曜日であれば午前7時から午後11時までは手数料110円が必要となることを意味する。更に、午後11時を過ぎると午前0(零)時までは取引中止となる。このような情報は、自行/他行扱い等々によりそれぞれ異なるが本願に関係しないため説明の都合上簡略化している。
【0016】
図1に示す本発明の実施例1の動作フローチャート及び図4に示す取引誘導画面の表示例により、出金取引を行う場合の処理例を説明する。なお、Sはステップを意味する。
S1.利用者PがATM1に近づくと、図示しない接近検知器がこれを検知し、制御部16は記憶部17に格納された処理動作プログラムにより表示部10bに取引科目の選択画面を表示する。また、操作部10aを取引入力モードとする。
以下の説明においては、タッチパネル式のため表示部10bに表示される操作キーの表示部上に触れることにより操作部10aが入力されることにする。
【0017】
S2.利用者Pが表示部10bの取引選択画面上より「お支払い」キーを選択すると、タッチパネル10cが指触位置を検出し、制御部16は通帳処理部11やカード処理部12、そして紙幣入出金部14及び硬貨入出金部15等を出金取引モードに設定する。
【0018】
S3.制御部16は出金取引モードの決定により、まず時計部18に現在時刻情報としての現在曜日・時刻情報を問い合わせる。時計部18は計時機能やカレンダー機能から曜日情報と現在時刻情報を分単位で制御部16に返信する。この現在曜日・時刻情報により取引開始時刻が特定される。
S4.制御部16は記憶部17に格納されている取引条件情報170を、入手した現在曜日・時刻情報により検索する。例えば、月曜の14時30分であれば取引時間帯9:00~18:00内に入り、手数料は0(ゼロ)円となる。また、18時03分であれば取引時間帯18:00~23:00に入り、手数料が110円掛かることになる。
【0019】
S5.制御部16は、現在曜日・時刻情報と取引時間帯情報を比較して、取引条件(本願では、取引手数料として説明する)の切り替わり後の経過時間T1を算出する。先の14時30分であれば9時から5時間30分経過しており、18時03分であれば18時から3分経過していることになる。
制御部16はこの経過時間T1が予め定めた確認表示時間T0(本願例では5分とする)内であるか否かを判定する。即ち、取引手数料が切り替わった後、5分未満である場合には次ステップS6に進み、5分以上であれば後述するステップS8に進める。
【0020】
S6.制御部16は、図4(a)に示すような取引誘導画面を表示部10bに表示させる。この画面情報は記憶部17に記憶されているテンプレート画像情報に現在時刻情報102および取引条件情報170に記憶している手数料金情報103等を嵌め込み合成して表示する。
利用者Pは表示された取引条件案内表示100により、“今回の出金取引には手数料110円が掛かること”を報知情報から認識することができる。なお、この報知手段は画面表示のほかに音声による報知とすること、およびそれらを兼用とすることもできる。
【0021】
S7.制御部16は、利用者Pが図4(a)のように画面表示された取引誘導画面に示す、確認キー104を押下したことを検出したときには、手数料の課金、即ち取引条件が承諾されたこととしてステップS8に進める。ここで、取消キー105が押下された場合には、利用者Pは何らかの理由で未承諾と判断したことになり、ステップS9に進める。
S8.制御部16は表示部10bに『カードを挿入してください』と表示する。利用者Pがキャッシュカードをカード挿入返却口より挿入すると、キャッシュカードをカード処理部12まで取込み、記憶されている利用者情報(少なくとも口座番号)を読取る。更には通帳が挿入されれば通帳処理部11内まで取込み、記録されている情報を読み取る。
ウ
「【図4】
[図:0001431877000005.jpg]
」
(2) 引用文献2記載技術
引用文献2【0010】~【0011】、【0017】、【0020】~【0021】、図1、図4より、引用文献2には「出金処理、振込処理が行えるATMにおいて、出金取引モードに設定された場合、現在時刻情報及び手数料金情報等を表示する取引誘導画面を表示部に表示させ、利用者が確認キーを押下げしたことを検出したときに、取引条件が承諾されたこととする」技術(以下「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。
3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「ATM」は、本願発明の「取引装置」に対応する。
引用発明の「顧客操作により振込取引が選択されたときに、取得した振込内容で振込先に対して現金を振り込む取引を行う振込取引処理部」は、本願発明の「顧客により入力された振込情報に基づいて振込取引を行う振込取引処理部」に相当する。
引用発明の「利用者に操作画面を提示し、利用者への情報出力や、利用者からの操作受付を行う操作表示制御部」は「操作表示部」の表示及び操作受付を制御するものと解されるから、引用発明の前記「操作表示制御部」及び「操作表示部」を合わせたものは、本願発明の「前記顧客の入力操作を受付け顧客への情報の表示を行う操作表示部」に対応する。
引用発明の「取得した応答電文に基づいて、他行宛の振込が翌営業日扱いであるか否かを判断し、
金融ホストサーバからの応答電文に基づいて、振込取引が翌営業日扱いでない場合、振込日を当日扱いとするか又は翌営業日とするかを選択させる振込日選択画面が操作表示部に表示される」において、振込に関する技術常識を勘案すると、振込日を当日扱いとすることは、即時に振込が実行され、振込日を翌営業日とすることは、次の営業日に振込を実行する予約振込を行うものと解される。
してみれば、引用発明の「振込時刻が、自行の当日扱いとする振込ができるか否かの時間帯であるかを判断して、振込取引が選択された時刻が、当日振込扱いの振込時間帯であるか否かを判断し」、「当日扱いの振込が可能である場合、前記振込取引処理部は、振込先の金融機関が他行の場合、金融ホストサーバから取得した応答電文に基づいて、他行宛の振込が翌営業日扱いであるか否かを判断し、振込取引が翌営業日扱いでない場合、振込日を当日扱いとするか又は翌営業日とするかを選択させる振込日選択画面が操作表示部に表示する」との事項と、本願発明の「取引処理を行おうとする時刻がモアタイムである場合、前記顧客に対して即時に振込を実行する即時振込と次の営業日に振込を実行する予約振込のいずれを所望するかを前記操作表示部にて選択させた後に、前記即時振込が選択された場合に発生するモアタイムの即時振込手数料の金額をモアタイムの手数料であることを示す情報とともに表示し確認させる」とでは、「前記顧客に対して即時に振込を実行する即時振込と次の営業日に振込を実行する予約振込のいずれを所望するかを前記操作表示部にて選択させ」る点で共通し、後記する相違点で相違する。
ア 一致点
「取引装置において、
顧客により入力された振込情報に基づいて振込取引を行う振込取引処理部と、
前記顧客の入力操作を受付け顧客への情報の表示を行う操作表示部とを備え、
前記顧客に対して即時に振込を実行する即時振込と次の営業日に振込を実行する予約振込のいずれを所望するかを前記操作表示部にて選択させる
取引装置。」
イ 相違点
(ア) 相違点1
「前記顧客に対して即時に振込を実行する即時振込と次の営業日に振込を実行する予約振込のいずれを所望するかを前記操作表示部にて選択させ」る点に関し、本願発明は、「取引処理を行おうとする時刻がモアタイムである場合」に当該選択をさせるのに対し、引用発明では、「振込時刻が、自行の当日扱いとする振込ができるか否かの時間帯であるかを判断して、振込取引が選択された時刻が、当日振込扱いの振込時間帯であるか否かを判断し」、「当日扱いの振込が可能である場合、前記振込取引処理部は、振込先の金融機関が他行の場合、金融ホストサーバから取得した応答電文に基づいて、他行宛の振込が翌営業日扱いであるか否かを判断し、振込取引が翌営業日扱いでない場合」に、当該選択をさせる点。
(イ) 相違点2
本願発明は、「前記即時振込が選択された場合に発生するモアタイムの即時振込手数料の金額をモアタイムの手数料であることを示す情報とともに表示し確認させる」のに対し、引用発明では、当該点については特定がない点。
(2) 判断
前記相違点について検討する。
ア 相違点1について
本願明細書には、以下の記載がある。
「【0004】
上記特許文献2に記載の通り、営業日の営業時間後のモアタイム(15時~24時)の時間帯に振込する場合、受取先の金融機関が即時振込可のときは、営業日当日中に振込される。一方、受取先の金融機関が、即時振込が不可のとき、又は即時振込可能か不明なときは、特許文献2に記載の技術では、翌営業日扱いの予約振込となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-149097号公報
【特許文献2】特開2016-177789号公報」
これより、本件発明1の「モアタイム」とは、「営業日の営業時間後(15時~24時)の時間帯」と解される。
一方、前記特許文献2は引用文献1と同一の文献であるから、引用文献1における「自行の当日扱いとする振込ができる」「時間帯」は、営業時間及びモアタイムのうち自行の当日扱いとする振込ができる時間帯と認められる。
ここで、振込に関し、モアタイムの即時振込は手数料が営業時間内の即時振込より高く設定されている場合が多いこと、予約振込は手数料が営業時間内の手数料と同額である場合が多いこと、自行の即時振込ができる時間帯であっても、受取先の金融機関への即時振込ができない時間帯がありえること、などは技術常識であると認められる。してみれば、引用発明において、自行及び受取先の金融機関への即時振込が可能であることが明らかである営業時間内については、顧客に対して手数料に関し不利となることはないことから、「前記顧客に対して即時に振込を実行する即時振込と次の営業日に振込を実行する予約振込のいずれを所望するかを前記操作表示部にて選択させ」ることなく、即時振込を行うようにすること、及び、「取引処理を行おうとする時刻がモアタイムである場合」に、手数料が営業時間内のそれとは高く設定されている場合が多いことに応じて「前記顧客に対して即時に振込を実行する即時振込と次の営業日に振込を実行する予約振込のいずれを所望するかを前記操作表示部にて選択させ」ることは、技術的には格別の困難はなく、取引上の要請に応じて当業者が適宜設計的になし得た事項であると認められる。
イ 相違点2について
引用文献2には前記のとおり「出金処理、振込処理が行えるATMにおいて、出金取引モードに設定された場合、現在時刻情報及び手数料金情報等を表示する取引誘導画面を表示部に表示させ、利用者が確認キーを押下げしたことを検出したときに、取引条件が承諾されたこととする」技術が記載されている。引用文献2には記載がないものの、振込処理においても、出金処理と同様に手数料金情報等を表示し、利用者が確認キーを押下げしたことを検出したときに、取引条件が承諾されたこととすることも、当業者にとって、引用文献2に記載されたに等しい技術といえる。また、料金表示・確認において、その説明を付すことも、広く行われており、当業者が適宜採用することができる事項である。
してみれば、引用発明に前記引用文献2に記載されたに等しい技術を適用し、合わせて「モアタイムの手数料であることを示す情報」をともに表示するようにし、「前記即時振込が選択された場合に発生するモアタイムの即時振込手数料の金額をモアタイムの手数料であることを示す情報とともに表示し確認させること」は、当業者が容易に想到することができた事項である。
ウ 小括
してみれば、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-020148