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特許異議申立

2021-701237

外用組成物

審判番号
2021-701237
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-235795
登録番号
6894223
請求日
2021年12月24日
審決日
2023年01月31日
公報発行日
2023年05月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ロート製薬株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
  • 【異議申立人】小池 良
審判長/審判官
  • 審判長 瀬良 聡機
  • 審判官 阪野 誠司
  • 審判官 野田 定文
分類
P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6894223号発明「外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6894223号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6894223号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6894223号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年12月5日(優先権主張 平成28年10月13日)に出願され、令和3年6月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月24日に特許異議申立人 小池 良(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て以後の手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年 4月28日付け 取消理由通知 同年 6月29日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 7月29日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 8月31日 意見書の提出(申立人) 同年11月18日付け 訂正拒絶理由通知 同年12月22日 手続補正書及び意見書の提出(特許権者) 第2 訂正の適否 1 訂正請求書に対する手続補正の適否 令和4年12月22日提出の手続補正書による手続補正は、同年6月29日提出の訂正請求書を対象とし、同年11月18日付け訂正拒絶理由通知に応じてなされたものである。上記手続補正は、軽微な瑕疵の補正であり、上記訂正請求書の要旨を変更するものとはいえない。そして、上記手続補正により、上記訂正拒絶理由通知で通知された拒絶理由は解消している。 以下、令和4年6月29日に提出され、上記手続補正書により補正された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。 2 請求の趣旨及び訂正の内容 本件訂正の「請求の趣旨」は、「特許第6894223号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1から請求項6について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1及び2からなるものである。 (1)訂正事項1 ア 訂正事項1-1 訂正前の請求項1の「ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種」との記載を、「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種」に訂正する(下線は、訂正箇所を示す。以下同じ。)。 (請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6についても同様に訂正する。) イ 訂正事項1-2 訂正前の請求項1の「のための外用組成物。」との記載を、「のための外用組成物(ただし、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、POEソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、オリーブ油、トコフェロール、EDTA-2ナトリウム、アルギニン、グリチルリチン酸ジカリウム、アルブチン、パルミチン酸レチノール、クジンエキス、海藻エキス、トラネキサム酸、エラスチン、コラーゲン、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、プロピルパラベン、メチルパラベン、香料、および、精製水を含む外用組成物を除く。)。」に訂正する。 (請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6についても同様に訂正する。) (2)訂正事項2 訂正前の請求項6の「ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種」との記載を、「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種」に訂正する。 なお、訂正前の請求項2~6は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1によって訂正される訂正前の請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものであるので、本件訂正は一群の請求項について請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1-1 訂正事項1-1は、訂正前の請求項1の「ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種」との記載を、「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種」とするものであり(下線は、訂正箇所を示す。)、訂正前の請求項1の選択肢うち、「その誘導体」(ヒアルロン酸の誘導体)及び「それらの塩」(ヒアルロン酸の誘導体の塩)を削除するとともに、「(ヒアルロン酸)の塩」について、本件特許明細書の「ヒアルロン酸又はその誘導体の塩もまた、薬理学的に又は生理学的に許容される限り特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの金属との塩などを挙げることができる。」(【0020】)との記載に基づいて、塩をナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩及びアルミニウム塩に限定するものである。 そうしてみれば、訂正事項1-1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項全体との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項1-2 訂正事項1-2は、令和4年4月28日付けで通知した取消理由(新規性欠如)に対応して、引用例2(特開2015-147945号)に記載された事項を、いわゆる「除くクレーム」により、訂正前の請求項1に係る発明から除外するものである。それゆえ、訂正事項1-2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項1-2は、本件特許明細書等に記載した事項全体との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項2 訂正事項2は、訂正事項1-1と同様の訂正であり、上記(1)で述べたように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項全体との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 4 独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、本件訂正に関して、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正後の請求項1~6に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。また、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)。 「【請求項1】 ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種と、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と、を有効成分として含有し、 ヒアルロン酸の平均分子量が4~700kDaである、皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善のための外用組成物(ただし、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、POEソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、オリーブ油、トコフェロール、EDTA-2ナトリウム、アルギニン、グリチルリチン酸ジカリウム、アルブチン、パルミチン酸レチノール、クジンエキス、海藻エキス、トラネキサム酸、エラスチン、コラーゲン、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、プロピルパラベン、メチルパラベン、香料、および、精製水を含む外用組成物を除く。)。 【請求項2】 皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善が、紫外線曝露による皮膚の炎症を予防又は改善することを含む、請求項1に記載の外用組成物。 【請求項3】 紫外線が紫外線B波である、請求項1又は2に記載の外用組成物。 【請求項4】 皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善が、紫外線曝露による皮膚の炎症に起因するメラニン産生の誘発を予防又は改善することを含む、請求項1~3のいずれかに記載の外用組成物。 【請求項5】 皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善が、紫外線曝露による表皮角化細胞におけるPGE2及びIL-1αからなる群より選択される少なくとも1種の産生を抑制することによるものである、請求項1~4のいずれかに記載の外用組成物。 【請求項6】 ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の成分の総量1重量部に対して、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の成分の総量が0.05~4000重量部である、請求項1~5のいずれかに記載の外用組成物。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由について 1 特許異議申立理由の概要 申立人が、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~6に係る特許に対して申し立てていた特許異議の申立理由は、概略、以下の(1)~(3)のとおりであって、申立人は、特許異議申立書に添付して、証拠方法として、下記(4)の甲第1~6号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)を提出した。 (1)申立理由1(サポート要件違反) 本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、以下のア及びイの点で、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~6に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、同法113条1項4号により、取り消されるべきものである。 ア 本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、平均分子量350超~700kDaのヒアルロン酸をトラネキサム酸と併用する発明を含むが、この範囲について高い紫外線ダメージ抑制作用が得られるという記載は、本件特許明細書には存在せず、かつ、その根拠が示されていない。 イ 本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、ヒアルロン酸類とトラネキサム酸類との比率が規定されていない。また、本件訂正前の請求項6に係る発明は、ヒアルロン酸類1重量部に対して、トラネキサム酸類0.05~4000重量部と規定されているが、この広い範囲について、PGE2産生量の低減という本件発明の作用効果が得られるという根拠がない。 (2)申立理由2(新規性欠如) 本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲1、甲2、甲3、甲4又は甲5に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1~6に係る特許は、同法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号により、取り消すべきものである。 (3)申立理由3(進歩性欠如) 本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲1、甲2、甲3、甲4又は甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号により、取り消されるべきものである。 (4)甲号証 甲1:特開2012-214418号公報 甲2:特開2015-147945号公報 甲3:特開2016-40236号公報 甲4:特開平10-279418号公報 甲5:特開2016-199516号公報 甲6:特開2012-12390号公報 2 令和4年4月28日付け取消理由通知で通知した取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~4及び6に係る発明について、令和4年4月28日付け取消理由通知で通知した取消理由Aは、上記1の特許異議の申立理由2(新規性欠如)のうち、甲1(引用例1)及び甲2(引用例2)に基づく新規性欠如を理由とするものであり、概略は、以下のとおりである。 (1)取消理由A(新規性欠如) 本件特許の請求項1~4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1(引用例1)及び甲2(引用例2)に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するものであるから、請求項1~4及び6に係る特許は、同法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号により、取り消されるべきものである。 (2)引用例等 甲1(引用例1):特開2012-214418号公報 甲2(引用例2):特開2015-147945号公報 参考文献:日本香粧品学会誌,2015,39(4),p.275-285 第5 取消理由通知で通知した取消理由Aについて 1 甲1に基づく新規性欠如について (1)甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。 甲1a 「【請求項1】 分解ヒアルロン酸亜鉛、及びアセチルヒアルロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含む外用組成物。 ・・・ 【請求項3】 分解ヒアルロン酸亜鉛中の分解ヒアルロン酸の重量平均分子量が100kDa以下である請求項1又は2に記載の外用組成物。 ・・・ 【請求項5】 分解ヒアルロン酸亜鉛の含有量が、組成物の全量に対して、乾燥重量で、0.0001~20重量%である請求項1~4の何れかに記載の外用組成物。 【請求項6】 アセチルヒアルロン酸又は薬学的に許容されるその塩の含有量が、組成物の全量に対して、乾燥重量に換算して、0.0001~10重量%である請求項1~5の何れかに記載の外用組成物。」 甲1b 「【背景技術】 【0002】 ヒアルロン酸は、グルクロン酸とN‐アセチルグルコサミンからなるムコ多糖類であり、生体内では細胞や線維間を埋める接合物質として真皮に多量に存在し、表皮にも存在する。ヒアルロン酸は高い保水性と粘弾性を有しているため(非特許文献1)、保湿剤などとして皮膚外用剤に広く用いられている。 しかし、ヒアルロン酸は曳糸性が強いため、少量を配合しただけでも特有のネバネバとした滑り感を与え、商品特性によっては受け入れ難いものとなる。特許文献1は、アセチルヒアルロン酸が、ヒアルロン酸の高い曳糸性などの欠点を改善しながら、優れた皮膚柔軟化作用を有することを教えている。 しかし、アセチルヒアルロン酸を配合した外用剤は、肌なじみ、及び使用感の点でより一層満足できるものが望まれている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、アセチルヒアルロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含み、使用感が良好な外用組成物を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、アセチルヒアルロン酸又は薬学的に許容できるその塩と、分解ヒアルロン酸亜鉛とを組み合わせて配合することにより、肌なじみが良く、さらっとした良好な使用感の外用組成物が得られることを見出した。 ・・・ 【発明の効果】 【0007】 本発明の外用組成物は、アセチルヒアルロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含むにもかかわらず、肌なじみが良く、サラサラした良好な使用感を示す。 また、アセチルヒアルロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含むことにより、保湿作用、皮膚柔軟化作用を有し、分解ヒアルロン酸亜鉛を含むことにより、保湿作用、肌のキメを整え、皮膚のバリア機能を回復させる作用を有する。 従って、化粧品や医薬外用剤として、皮膚バリア機能の改善、皮膚の保湿、肌荒れ改善、皮膚柔軟化等のために好適に使用できる。」 甲1c 「【0021】 医薬部外品又は化粧品用の皮膚外用組成物とする場合の用途としては具体的には、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、美容液、日焼け止め用化粧料、パック、マスク、ハンドクリーム、ボディローション、ボディークリームのような基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし、ひげそり剤、ボディーシャンプー、シャンプー、リンス、トリートメントのような洗浄用化粧料;リップクリーム、口紅などの口唇用化粧料;ファンデーション、マスカラなどのメイクアップ化粧料;除毛剤; 浴用剤などが挙げられる。」 甲1d 「【0030】 <その他の有効成分> また、本発明の外用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含むことができる。 有効成分の具体例として、化粧品や医薬外用剤の成分として一般に使用される、例えば、抗酸化成分、老化防止成分、抗炎症成分、美白成分、細胞賦活化成分、ビタミン類、血行促進成分、保湿成分、DNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分、抗糖化成分、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、ヒドロキノン配糖体及びそのエステル類などが挙げられる。 ・・・ 【0034】 美白成分としては、例えば、アスコルビン酸又はその誘導体、ハイドロキノン及びその誘導体、ルシノール、コウジ酸、エラグ酸、フィチン酸、ブチルレゾルシノール、パントテン酸又はその誘導体、トラネキサム酸、システイン、ビタミンE又はその誘導体などや、美白作用を有する植物成分(例えば、植物エキス)が挙げられる。 ・・・ 【0038】 保湿成分としては、植物(例えば、チガヤ)に由来する成分;アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルコサミン、テアニンのようなアミノ酸及びその誘導体;コラーゲン、ゼラチン、エラスチンのようなタンパク質やペプチド、その加水分解物;グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリンなどの多価アルコール;ソルビトールのような糖アルコール;レシチン、水素添加レシチンのようなリン脂質;ヒアルロン酸(高分子型ないしは天然型、以下、保湿成分について同様。)、ヒアルロン酸ナトリウム、カチオン化ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチンのようなムコ多糖;乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、尿素のようなNMF由来成分;ポリグルタミン酸;MPCポリマー(例えば、LIPIDURE(登録商標)等)等のリン脂質極性基を有する高分子;ポリオキシプロピレンメチルグルコシド;トリメチルグリシン(ベタイン);ヒドロキシエチルウレア;アクリル酸・アクリルアミド・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体;ソルビトールなどが挙げられる。」 甲1e 「【実施例】 ・・・ 【0049】 以下に、本発明の外用組成物の処方例を示す。各成分の含有量の単位は、重量%である。 処方例1 化粧水 分解ヒアルロン酸亜鉛 0.5% アセチルヒアルロン酸ナトリウム 0.5% トラネキサム酸 2% ジプロピレングリコール 5.0% 濃グリセリン 2.0% PEG-80水添ヒマシ油 0.1% メチルパラベン 適量 エチルヘキシルグリセリン 0.2% カプリル酸グリセリル 0.2% コハク酸 適量 コハク酸2Na 適量 ポリエチレングリコール1540 1.0% 精製水 残量 」 (2)甲1に記載された発明 甲1には、上記(1)の甲1a及び甲1eからみて、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「以下の成分を含む化粧水である外用組成物(単位は、重量%)。 分解ヒアルロン酸亜鉛 0.5 アセチルヒアルロン酸ナトリウム 0.5 トラネキサム酸 2 ジプロピレングリコール 5.0 濃グリセリン 2.0 PEG-80水添ヒマシ油 0.1 メチルパラベン 適量 エチルヘキシルグリセリン 0.2 カプリル酸グリセリル 0.2 コハク酸 適量 コハク酸2Na 適量 ポリエチレングリコール1540 1.0 精製水 残量 」 (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明におけるトラネキサム酸は、「その他の有効成分」の「美白成分」であるから(甲1d)、甲1発明は、トラネキサム酸を有効成分として含有する外用組成物である。 また、甲1発明の外用組成物は、本件発明1において、いわゆる「除くクレーム」により除かれた「カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、POEソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、オリーブ油、トコフェロール、EDTA-2ナトリウム、アルギニン、グリチルリチン酸ジカリウム、アルブチン、パルミチン酸レチノール、クジンエキス、海藻エキス、トラネキサム酸、エラスチン、コラーゲン、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、プロピルパラベン、メチルパラベン、香料、および、精製水を含む外用組成物」(以下「組成物A」ともいう。)ではない。 さらに、本件発明1は、本件発明1の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含有することもできるから(本件特許明細書【0031】)、甲1発明が、トラネキサム酸以外の成分を含むことは、両発明の相違点とはならない。 それゆえ、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する外用組成物(ただし、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、POEソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、オリーブ油、トコフェロール、EDTA-2ナトリウム、アルギニン、グリチルリチン酸ジカリウム、アルブチン、パルミチン酸レチノール、クジンエキス、海藻エキス、トラネキサム酸、エラスチン、コラーゲン、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、プロピルパラベン、メチルパラベン、香料、および、精製水を含む外用組成物を除く。)。」である点。 <相違点1> 本件発明1は、「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種」を「有効成分として含有し」、「ヒアルロン酸の平均分子量が4~700kDaである」外用組成物であるのに対し、甲1発明は、「分解ヒアルロン酸亜鉛」及び「アセチルヒアルロン酸ナトリウム」を含む外用組成物である点。 <相違点2> 本件発明1は、「皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善のための」ものであるのに対し、甲1発明はこれが明らかでない点。 イ 上記相違点について検討する。 相違点1に関し、甲1発明に含まれる「分解ヒアルロン酸亜鉛」及び「アセチルヒアルロン酸ナトリウム」は、ヒアルロン酸の誘導体であるものの、本件発明1の「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩」ではない。 ウ そうしてみれば、相違点1は実質的な相違点であるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明とはいえない。 (4)本件発明2~4及び6について 本件発明2~4及び6は、それぞれ、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4及び6に係る発明であり、本件発明1を更に技術的に限定して特定したものであるから、甲1発明に対して、本件発明1と同じ相違点を有する。そして、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4及び6は、甲1に記載された発明とはいえない。 (5)小括 以上のとおり、取消理由A(甲1に基づく新規性欠如)は理由がない。 2 甲2に基づく新規性欠如について (1)甲2に記載された事項 甲2には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。 甲2a 「【請求項5】 分子量が4,000以上80万未満であり、ヒアルロン酸を構成する2糖単位に対するカルボキシメチル化率が60%以上200%以下である、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩。 ・・・ 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれか1項に記載のカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する、化粧料。」 甲2b 「【背景技術】 【0002】 例えばヒアルロン酸等の水溶性多糖類は、水酸基やカルボキシル基を含有するものが多く、これらの基の間で形成される水素結合に起因して、粘度が高いものが多い(特開昭63-57602号公報)。水溶性多糖類の粘度の高さは、外用医薬品および化粧品においては、手触りの悪さをもたらすことがあり、また、内服医薬品および食品においては、食感の悪さをもたらすことがある。このため、保水力を有し、かつ、べとつきが少なく、食感に優れた水溶性多糖類が求められている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明は、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩、ならびにこれを含む化粧料、食品組成物および医薬組成物を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本願発明者は、特定の条件にてヒアルロン酸をハロ酢酸および/またはその塩と反応させることにより、白色度が高く、かつ、所定のカルボキシメチル化率を有する修飾ヒアルロン酸が得られることを見出した。 【0006】 また、本願発明者は、かかる方法を用いて得られた、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、白色度が高く、保水力に優れ、かつ低粘度であることを見出した。」 甲2c 「【0030】 以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。 ・・・ 【0113】 本実施形態に係る化粧料の態様は特に限定されないが、例えば、皮膚用化粧料が挙げられる。上記実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類を皮膚用化粧料に使用することにより、適度な粘度を有し、かつ、保水効果が高いため、皮膚に潤いを付与し、皮膚のかさつき感を改善することができる。 【0114】 本実施形態に係る皮膚用化粧料の態様としては、例えば、洗顔料、洗浄料、化粧水(例えば、美白化粧水)、クリーム(例えば、バニシングクリーム、コールドクリーム)、乳液、美容液、パック(例えば、ゼリー状ピールオフタイプ、ペースト状拭き取りタイプ、粉末状洗い流しタイプ)、クレンジング、ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナー、頬紅、シェービングローション、アフターサンローション、デオドラントローション、ボディローション(ハンドケアローション、フットケアローションを含む)、ボディオイル、石鹸、入浴剤が挙げられる。 【0115】 本実施形態に係る化粧料にはさらに、以下の成分が配合されていてもよい。前記成分としては、例えば、・・・保湿剤(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ジメチルシラノール、セラミド、ラウロイルグルタミン酸ジフィトステリルオクチルドデシル、フィトグリコーゲン、加水分解卵殻膜、トレハロース、グリセリン、アテロコラーゲン、ソルビトール、マルチトール、1,3-ブチレングリコール等)、・・・紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体等)、紫外線反射剤(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等)、・・・その他の機能性成分(・・・、トラネキサム酸等)、・・・が挙げられる。」 甲2d 「【0121】 [実施例] 以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。 【0122】 <実験例1:カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の調製> 30mLのサンプル瓶に水酸化ナトリウム1.04gを秤り取った後、水8mLを添加して溶解させた。次に、ヒアルロン酸2.0gを添加し溶解させた後、モノクロロ酢酸ナトリウム1.52gを添加して溶解させて、室温で48時間静置した。ここで、前記反応液のpHは13であった。その後、200mLビーカーにエタノール80mLを入れ、該反応液を撹拌しながら添加し、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を沈殿させた。その後、400メッシュのろ布で沈殿を200mLビーカーに回収した後、10%塩化ナトリウム水溶液40mLを添加して沈殿を溶解させた。さらに、8%塩酸水溶液でpHを調製した後、溶解液に撹拌しながらエタノール80mLを入れ、再度カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を沈殿させた。80%含水エタノール100mLで3回洗浄した後、減圧濾過し、55℃で3時間減圧乾燥することにより、実験番号1のカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を得た。 【0123】 <実験例2:カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の調製> 水酸化ナトリウムの濃度、含水溶媒の使用量、溶媒の種類、ハロ酢酸および/またはその塩の種類および使用量、反応温度、および反応時間を表1および表2のように変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実験番号2ないし36のカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を得た。なお、本実施例において、「室温」とは、25℃以上30℃以下の温度を意味する。 ・・・ 【0156】 <配合例4:美容液> 本配合例では、以下に記す処方にて、実験例2で得られたカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を配合した美容液(美白保湿エッセンス)を調製した。 カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸(実験例2) 0.8% ヒアルロン酸ナトリウム 0.2% 加水分解ヒアルロン酸 0.1% 1,3-ブチレングリコール 5.0% グリセリン 1.5% POEソルビタンモノステアリン酸エステル 1.0% ソルビタンモノステアリン酸エステル 0.5% キサンタンガム 0.2% アルギン酸ナトリウム 0.2% カルボキシビニルポリマー 0.2% 水酸化カリウム 0.1% オリーブ油 0.2% トコフェロール 0.1% EDTA-2ナトリウム 0.02% アルギニン 0.15% グリチルリチン酸ジカリウム 0.05% アルブチン 0.2% パルミチン酸レチノール 0.2% クジンエキス 0.2% 海藻エキス 0.2% トラネキサム酸 0.1% エラスチン 0.1% コラーゲン 0.1% リン酸アスコルビン酸マグネシウム 0.1% クエン酸ナトリウム 1.0% クエン酸 0.1% プロピルパラベン 0.1% メチルパラベン 0.15% 香料 適量 精製水 残量」 (2)甲2に記載された発明 甲2には、上記(1)の甲2a、甲2c及び甲2dからみて、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「以下の成分を含む美容液(美白保湿エッセンス)(単位は、質量%)。 カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸 0.8 ヒアルロン酸ナトリウム 0.2 加水分解ヒアルロン酸 0.1 1,3-ブチレングリコール 5.0 グリセリン 1.5 POEソルビタンモノステアリン酸エステル 1.0 ソルビタンモノステアリン酸エステル 0.5 キサンタンガム 0.2 アルギン酸ナトリウム 0.2 カルボキシビニルポリマー 0.2 水酸化カリウム 0.1 オリーブ油 0.2 トコフェロール 0.1 EDTA-2ナトリウム 0.02 アルギニン 0.15 グリチルリチン酸ジカリウム 0.05 アルブチン 0.2 パルミチン酸レチノール 0.2 クジンエキス 0.2 海藻エキス 0.2 トラネキサム酸 0.1 エラスチン 0.1 コラーゲン 0.1 リン酸アスコルビン酸マグネシウム 0.1 クエン酸ナトリウム 1.0 クエン酸 0.1 プロピルパラベン 0.1 メチルパラベン 0.15 香料 適量 精製水 残量」 (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明における「加水分解ヒアルロン酸」及び「ヒアルロン酸ナトリウム」は、本件発明1の「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩」に相当し、甲2発明は、トラネキサム酸を「その他の機能成分」として含むものである(甲2c)。また、本件発明1は、本件発明1の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含有することもできるから(本件特許明細書【0031】)、甲2発明が、「加水分解ヒアルロン酸」、「ヒアルロン酸ナトリウム」及びトラネキサム酸以外の成分を含むことは、両発明の相違点とはならない。 一方、甲2発明の「美容液」は外用組成物であるところ、甲2発明は、本件発明1において、除くクレームにより除かれた組成物A、すなわち、「カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、POEソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、オリーブ油、トコフェロール、EDTA-2ナトリウム、アルギニン、グリチルリチン酸ジカリウム、アルブチン、パルミチン酸レチノール、クジンエキス、海藻エキス、トラネキサム酸、エラスチン、コラーゲン、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、プロピルパラベン、メチルパラベン、香料、および、精製水を含む外用組成物」である。 そうしてみれば、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種と、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と、を有効成分として含有する外用組成物」である点。 <相違点2’> 本件発明1は、「皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善のための」ものであるのに対し、甲2発明はこれが明らかでない点。 <相違点3> 本件発明1のヒアルロン酸は、「平均分子量が4~700kDaである」のに対し、甲2発明の「加水分解ヒアルロン酸」及び「ヒアルロン酸ナトリウム」は、平均分子量が明らかでない点。 <相違点4> 本件発明1は、組成物Aを除く外用組成物であるのに対し、甲2発明は、組成物Aである点。 イ 上記相違点について検討すると、相違点4は実質的な相違点であることは明らかであるから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明とはいえない。 (4)本件発明2~4及び6について 本件発明2~4及び6は、それぞれ、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4及び6に係る発明であり、本件発明1を更に技術的に限定して特定したものであるから、甲2発明に対して、本件発明1と同じ相違点を有する。そして、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4及び6は、甲2に記載された発明とはいえない。 (5)小括 以上のとおり、取消理由A(甲2に基づく新規性欠如)は理由がない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立理由のうち、取消理由通知に採用しなかった理由は、以下のとおりである。 1 申立理由1(サポート要件違反) 2 申立理由3(甲1に基づく進歩性欠如) 3 申立理由3(甲2に基づく進歩性欠如) 4 申立理由2及び3(甲3に基づく新規性・進歩性欠如) 5 申立理由2及び3(甲4に基づく新規性・進歩性欠如) 6 申立理由2及び3(甲5に基づく新規性・進歩性欠如) 以下に、当審合議体の判断を述べる。 なお、取消理由通知で通知した取消理由A(甲1及び甲2に基づく新規性欠如(申立理由2))は、本件発明1~4及び6を対象とするものであって、本件発明5を対象としていないが、本件発明1を更に特定した本件発明5についても、本件発明1と同様の理由(上記第5を参照)により、甲1及び甲2に基づく新規性欠如の理由(申立理由2)がないことは明らかである。 1 申立理由1(サポート要件違反)について (1)特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件特許請求の範囲及び本件特許明細書には、以下の記載がある(下線は、当審合議体による。)。 a 特許請求の範囲の記載 上記第3のとおり。 b 発明が解決しようとする課題について 「【背景技術】 【0002】 紫外線は皮膚に様々な影響を及ぼすことが知られている。例えば、紫外線A波(UVA、315~400nm)は、波長が長いために肌の奥深くまで到達し、真皮内でコラーゲン変性等を引き起こし易い。また、紫外線の中でも波長が短い紫外線B波(UVB、280~315nm)は、エネルギーが強いため、肌表面の細胞に炎症を生じさせ易く、それが引き金となって色素沈着を生じさせ易いことが知られている。 【0003】 皮膚におけるシミ等の色素沈着は種々の原因で起こる。例えば、薬剤やアトピー性皮膚炎等のアレルギー反応による遅延型の色素沈着は、アレルギー反応から誘発されるCXCケモカインの一種であるGROαによりメラノサイトが活性化されることにより引き起こされる。一方、紫外線(UVB)を浴びた皮膚では、肌表面にある角化細胞が傷害を受けることで、角化細胞からプロスタグランジンE2(PGE2)やインターロイキン-1α(IL-1α)等の炎症性サイトカインの産生が促進され、それによりメラノサイトにおけるメラニン産生が活性化され色素沈着が引き起こされることが知られている(非特許文献1、2)。 【0004】 従来、このような紫外線による皮膚への影響を最小限に抑えるために、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤等を配合した日焼け止め剤等が汎用されている。しかし、こまめな塗り直しが適正に行われない等の不適切な使用で十分な効果が得られない場合もあり、紫外線を浴びてしまった際の皮膚におけるダメージを予防及び/又は改善する手段の開発が求められている。 【0005】 ところで、ヒアルロン酸は、皮膚への保湿効果等を期待して、これまでにも多くの皮膚外用剤に使用されている。そして、ヒアルロン酸を肌の炎症発生抑制のために用いることも提案されている(特許文献1)。しかし、特許文献1は、ヒアルロン酸を食品として経口摂取した場合の効果を確認したものであり、そして紫外線曝露による皮膚におけるPGE2やIL-1α等の炎症性サイトカインの産生に及ぼす影響については一切開示されていない。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、皮膚への紫外線ダメージを予防又は改善するために有用な外用組成物を提供することを目的とする。」 c 課題を解決するための手段について 「【0009】 本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として用いることにより、皮膚への紫外線ダメージを効果的に抑制できることを見出した。更に、本発明者等は検討を進め、特定の平均分子量を有するヒアルロン酸類を用いる場合に、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて用いると、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することができることをも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。」 d 発明を実施するための形態について 「【0014】 (1.外用組成物) 本発明の皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善のための外用組成物は、ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、ヒアルロン酸類ともいう)を有効成分として含有することを特徴とする。 【0015】 (A)ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩: ・・・ 【0017】 本発明のヒアルロン酸の平均分子量は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されず、例えば、約0.1~1800kDaであり得る。より一層効果的に本発明の効果を奏することができるという観点から、本発明のヒアルロン酸の平均分子量は、好ましくは約0.1~700kDaであり、より好ましくは約0.2~600kDaであり、更に好ましくは約4~500kDaであり、更により好ましくは約5~400kDaであり、特に好ましくは約8~350kDaである。 ・・・ 【0022】 本発明に用いるヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩は、市販のものを用いることができる。例えば、ヒアルロン酸としては、商品名「ヒアルロン酸ナトリウムHA12N」(資生堂株式会社)平均分子量1100~1600kDa、商品名「ヒアルロン酸FCH-150」(キッコーマンバイオケミファ株式会社)平均分子量1400~1800kDa、商品名「バイオヒアルロン酸ナトリウムSZE](資生堂株式会社)平均分子量1100~1600kDa、商品名「ヒアルロン酸FCH-120」(キッコーマンバイオケミファ株式会社)平均分子量1000~1400kDa、商品名「ヒアルロンサンHA-LQ」(キユーピー株式会社)平均分子量600~1200kDa、商品名「ヒアルロン酸FCH-SU」(キッコーマンバイオケミファ株式会社)平均分子量50~110kDa、商品名「ヒアルロン酸(L)」(株式会社FAPジャパン)平均分子量50kDa以下、商品名「ヒアロオリゴ」(キユーピー株式会社)平均分子量10kDa以下、商品名「ヒアルロン酸(SL)」(株式会社FAPジャパン)平均分子量10kDa以下等を挙げることができる。ヒアルロン酸の誘導体としては、商品名「アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム」(資生堂株式会社)平均分子量10~100kDa、商品名「ヒアロベール」(キューピー株式会社)平均分子量500~800kDa、商品名「ヒアロリペア」(キューピー株式会社)平均分子量10kDa以下等の市販品が例示できる。本発明の外用組成物には、例えば、ナノ化ヒアルロン酸又は浸透型ヒアルロン酸等と呼ばれる平均分子量が特に小さいヒアルロン酸類を使用してもよい。 【0023】 本発明の外用組成物における、ヒアルロン酸類の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常、組成物全体に対して0.0001~2重量%であり、0.0005~1重量%であることが好ましく、0.001~0.5重量%であることがより好ましい。 【0024】 (B)トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩: 本発明の外用組成物には、上記ヒアルロン酸類に加えて、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、トラネキサム酸類ともいう)を更なる有効成分として配合してもよい。とりわけ、ヒアルロン酸の平均分子量が350kDa以下である低分子ヒアルロン酸類を用いる場合には、トラネキサム酸類を組み合わせて用いることで両成分の作用が相俟って、より一層高い皮膚への紫外線ダメージ抑制効果が得られることが分かっている。 ・・・ 【0029】 本発明の外用組成物にトラネキサム酸類を配合する場合、その含有量は本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常、組成物全体に対して0.001~4重量%であり、0.05~3.5重量%であることが好ましく、0.1~3重量%であることがより好ましい。 【0030】 また、本発明の外用組成物にトラネキサム酸類を配合する場合、ヒアルロン酸類に対する配合比率も特に限定されず、例えば、ヒアルロン酸類の総量1重量部に対して、トラネキサム酸類の総量が0.05~4000重量部、好ましくは0.1~3500重量部、より好ましくは0.2~3000重量部とすることができる。より一層高い皮膚への紫外線ダメージ抑制効果を得ることができるという観点から、なかでも、ヒアルロン酸類の総量1重量部に対して、トラネキサム酸類の総量が7重量部~4000重量部であることが好ましく、8~3500重量部であることがより好ましく、10~3000重量部であることが特に好ましい。 ・・・ 【0050】 本発明の外用組成物は、皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善のために用いられる。ここで、皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善とは、皮膚の紫外線ダメージからの回復促進又は早期回復を含む。後述の試験例の結果に示されるように、本発明の外用組成物は、紫外線B波(UVB)に曝露した表皮角化細胞におけるプロスタグランジンE2(PGE2)及びインターロイキン-1α(IL-1α)という2つの炎症性サイトカインの過剰産生を高度に抑制することができる。なかでも、本発明の外用組成物は、紫外線曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生抑制効果に特に優れる。このようなUVB曝露で引き起こされる、表皮角化細胞におけるPGE2やIL-1αの過剰産生は、炎症反応の1つであるサンバーンと呼ばれる短期的な紅斑反応を引き起こすと共に、メラノサイト活性化を誘発し、メラニン色素を産生して色素沈着を引き起こし、皮膚においてシミやくすみ、ソバカス等の紫外線ダメージを生じさせ得る。本発明の外用組成物は、紫外線曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2及び/又はIL-1αの過剰産生を抑制できるので、紫外線曝露後の皮膚における炎症とそれに続くメラニン産生のカスケードを早い段階で抑制し、皮膚への紫外線ダメージを効果的に予防又は改善してケアすることができる。そのため、本発明の外用組成物は、紫外線を浴びることにより発生するシミやくすみ、ソバカスを予防又は改善し、透明感のある肌に整え、皮膚の美白状態を保つため又は改善するため等に有益に用いられ得る。」 e 実施例について 「【実施例】 ・・・ 【0054】 (試験例1.PGE2産生抑制試験) 下記の方法に従い、UVB曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生抑制効果について評価を行った。 まず、ヒト正常表皮角化細胞(NHEK)を、6ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、3.0×105細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で1日間培養を行った。培養液としては、Humedia-KB2(倉敷紡績製)に10μg/mLのインスリン及び0.67μg/mLのハイドロコーチゾンを添加した培地を各ウェルあたり2mLずつ使用した。次いで、培養液を除去し、2mLのPBS(-)(コージンバイオ株式会社製)に培地交換した後、表皮角化細胞に対してUVBを照射した。UVB照射は、紫外線照射装置(デルマレイ-200;東芝医療用品株式会社製)を用いて、培養プレートの蓋を除去した状態で該培養プレートに25mJ/cm2でUVBを照射することで実施した。UVB照射後、PBS(-)を除去し、下記表1の実施例1~3に示す各種のヒアルロン酸を0.001w/v%となるように添加して溶解した2mLの前記培養液に交換して3日間培養した。コントロール(比較例1)として、ヒアルロン酸を含まない以外は同様にして2mLの前記培養液に交換して培養したものを用意した。3日間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたPGE2濃度を酵素結合免疫測定法(PGE2 high sensitivity ELISA kit;Enzo Life Sciences社製)で定量した。なお、下記表1に示す本試験例で用いた各ヒアルロン酸1~3は全て、Aldrich製の試薬を用いた。この結果として、各実施例及び比較例の定量値から算出した平均値を、表1及び図1に示す。 【表1】 [図:0001397173000001.jpg] 【0055】 図1及び表1の結果から明らかなように、各分子量のヒアルロン酸を用いた実施例1~3では、コントロールの比較例1と比較して、紫外線曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生を高度に抑制できることが確認された。この結果から、本発明の外用組成物を用いることにより、紫外線曝露による皮膚の炎症とそれに起因するメラニン産生の誘発を初期の段階で効果的に抑制でき、皮膚における紫外線ダメージを高度に予防又は改善できることが分かる。 【0056】 (試験例2.PGE2産生抑制試験) 上記試験例1と実質的に同様の方法で、UVB曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生抑制試験を実施した。 本試験例では、下記表2に示す被験薬を用いて試験を行った。本試験例で用いた各ヒアルロン酸1~3は、試験例1で使用したものと同じである。同じ平均分子量のヒアルロン酸をのみを含む実施例(実施例4、6、8)を用いた場合のPGE2産生量に対する、トラネキサム酸を組み合わせた場合の実施例(実施例5、7、9)を用いたときのPGE2産生量の割合を百分率(%)として、表2に結果を併せて示す。 【表2】 [図:0001397173000002.jpg] 【0057】 表2に示されるように、本試験例の結果では、高分子のヒアルロン酸(ヒアルロン酸3)に対してトラネキサム酸を併用しても、紫外線曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生抑制作用を向上させる効果は認められなかった。一方、平均分子量が350kDa以下のヒアルロン酸(ヒアルロン酸1、ヒアルロン酸2)を用いた場合には、更にトラネキサム酸を併用することでPGE産生量が大幅に低下することが明らかとなった。この結果から、低分子ヒアルロン酸を用いる場合には、トラネキサム酸を組み合わせて配合することにより、紫外線曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生抑制効果がより一層高まり、皮膚への紫外線ダメージを予防又は改善する作用が増強されることが明らかとなった。 【0058】 (試験例3.IL-1α産生抑制試験) 下記の方法に従い、UVB曝露後の表皮角化細胞におけるIL-1α産生抑制効果について評価を行った。 まず、ヒト正常表皮角化細胞(NHEK)を、6ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、3.0×105細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で1日間培養を行った。培養液としては、Humedia-KB2(倉敷紡績製)に10μg/mLのインスリン及び0.67μg/mLのハイドロコーチゾンを添加した培地を各ウェルあたり2mLずつ使用した。次いで、培養液を除去し、2mLのPBS(-)(コージンバイオ株式会社製)に培地交換した後、表皮角化細胞に対してUVBを照射した。UVB照射は、紫外線照射装置(デルマレイ-200;東芝医療用品株式会社製)を用いて、培養プレートの蓋を除去した状態で該培養プレートに25mJ/cm2でUVBを照射することで実施した。UVB照射後、PBS(-)を除去し、下記表3の実施例10~12に示す各種のヒアルロン酸を0.001w/v%となるように添加して溶解した2mLの前記培養液に交換して3日間培養した。コントロール(比較例2)として、ヒアルロン酸を含まない以外は同様にして2mLの前記培養液に交換して培養したものを用意した。3日間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたIL-1α濃度を酵素結合免疫測定法(Quantikine ELISA Human IL-1α/IL-1F1;R&D社製)で定量した。なお、下記表3に示す本試験例で用いた各ヒアルロン酸1~3は、試験例1で使用したものと同じである。この結果として、各実施例及び比較例の定量値から算出した平均値を、表3に併せて示す。 【表3】 [図:0001397173000003.jpg] 【0059】 上記表3の結果に示されるように、各分子量のヒアルロン酸を用いた実施例10~13では、コントロールの比較例2と比較して、紫外線曝露後の表皮角化細胞におけるIL-1α産生を抑制できることが確認された。 【0060】 (試験例4.ヒト皮膚3次元モデルを使用したPGE2産生抑制試験) 下記の方法に従い、UVB曝露後の正常ヒト皮膚3次元モデルにおけるPGE2産生抑制効果について評価を行った。 まず、正常ヒト皮膚3次元モデル EPI-200(倉敷紡績製)を、6ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、培養液としてEPI-100NMM(倉敷紡績製)を各ウェルあたり5mLずつ使用し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で1日間培養を行った。次いで、各ウェルあたり0.9mLのPBS(-)(コージンバイオ株式会社製)を入れた6ウェルカルチャープレートにヒト皮膚3次元モデルを移した後、UVBを照射した。UVB照射は、紫外線照射装置(デルマレイ-200;東芝医療用品株式会社製)を用いて、プレートの蓋を除去した状態で該培養プレートに120mJ/cm2でUVBを照射することで実施した。次いで、EPI-100NMM培養液を各ウェルあたり5mLずつ入れた新しい6ウェルカルチャープレートに、UVB照射後の各ヒト皮膚3次元モデルを移した。この角層側に、下記表4に示す各種の被験薬(実施例13~15)を添加して溶解した200μLのPBS(+)(Aldrich製)を添加し、1日毎に被験薬溶液を交換して3日間培養した。コントロール(比較例3)として、被験薬を含まない以外は同様にして200μLのPBS(+)で1日毎に液交換して3日間培養したものも用意した。3日間培養後に培養液を採取し、培養液中に分泌されたPGE2濃度を酵素結合免疫測定法(PGE2 high sensitivity ELISA kit;Enzo Life Sciences社製)で定量した。なお、本試験例で用いたヒアルロン酸1は、試験例1で使用したものと同じである。各実施例及び比較例の定量値から算出した平均値の結果を表4に示す。 【表4】 [図:0001397173000004.jpg] 【0061】 表4に示されるように本試験例の結果では、平均分子量8~15kDaの低分子ヒアルロン酸とトラネキサム酸とを併用することで、ヒト皮膚3次元モデルにおいて紫外線曝露後のPGE2産生を高度に抑制できることが確認された。従って、本発明の外用組成物を用いることにより、皮膚への紫外線ダメージを効果的に抑制できることが分かる。」 (3)本件発明の課題は、本件特許明細書の記載(記載b)から、「皮膚への紫外線ダメージを予防又は改善するために有用な外用組成物を提供すること」と認められる。 (4)上記課題を解決するために、本件発明は、「ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として用いることにより、皮膚への紫外線ダメージを効果的に抑制できること」を見出し、さらに、「特定の平均分子量を有するヒアルロン酸類を用いる場合に、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて用いると、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することができること」を見出したことによって完成したものである(記載c)。そして、実施例においては、ヒアルロン酸を含む外用組成物が、紫外線暴露後に表皮角化細胞において過剰産生される炎症性サイトカインであるプロスタグランジンE2(PGE2)及びインターロイキン-1α(IL-1α)の産生を抑制することが示され(記載eの試験例1(実施例1~3)及び試験例3(実施例10~12))、皮膚への紫外線ダメージを予防又は改善することができることが示されている。さらに、平均分子量8~15kDaのヒアルロン酸とトラネキサム酸を含む組成物(実施例5)と平均分子量120~350kDaのヒアルロン酸とトラネキサム酸を含む組成物の(実施例7)が、ヒアルロン酸のみを配合したもの(実施例4)と比べて、ヒト表皮角化細胞における紫外線暴露後のPGE2の産生を大幅に抑制することが示されている(記載eの表2)。また、正常ヒト皮膚3次元モデルを使用したPGE2産生抑制試験においても、平均分子量8~15kDaのヒアルロン酸とトラネキサム酸を含む組成物(実施例15)が、ヒアルロン酸のみを配合したもの(実施例13)と比べて、紫外線暴露後のPGE2産生を高度に抑制できることが示されている(記載eの表4)。 そうしてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、上記(3)の課題を解決するための手段が記載され、実際に、実施例で皮膚への紫外線ダメージを予防又は改善することも示されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識できるといえ、本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。 (5)申立人は、上記第4の1(1)ア及びイを根拠に、本件発明はサポート要件を満たさないと主張する。 ア 根拠アに関し、本件特許明細書には、ヒアルロン酸類とトラネキサム酸類を併用したことによる効果について、「ヒアルロン酸の平均分子量が350kDa以下である低分子ヒアルロン酸類を用いる場合には、トラネキサム酸類を組み合わせて用いることで両成分の作用が相俟って、より一層高い皮膚への紫外線ダメージ抑制効果が得られることが分かっている」と記載されており(記載dの【0024】)、本件発明のヒアルロン酸の平均分子量の上限値(700kDa)についての明示的な記載はない。また、本件特許明細書の実施例9には(記載eの表2)、平均分子量1500~1750kDaの高分子量ヒアルロン酸とトラネキサム酸を併用した場合、紫外線暴露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生抑制作用を向上させる効果は認められないことが示されている。 しかしながら、本件発明のヒアルロン酸類の平均分子量は「4~700kDa」であり、その上限値(700kDa)は、実施例9の高分子量ヒアルロン酸の下限値(1500kDa)の半分以下の分子量である一方、両者を併用したことによる効果が実証されている実施例7のヒアルロン酸の上限値(350kDa)に近いものであり、当業者であれば、本件発明のヒアルロン酸類の平均分子量が上限値(700kDa)であっても、実施例7と同様又はそれと多少の効果の劣る程度の効果を期待し得る。また、本件特許明細書には、「本発明のヒアルロン酸の平均分子量は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されず、例えば、約0.1~1800kDaであり得る。より一層効果的に本発明の効果を奏することができるという観点から、本発明のヒアルロン酸の平均分子量は、好ましくは約0.1~700kDaであ(る)」ことが記載されており(記載dの【0017】。下線は当審合議体による。)、「より一層効果的に本発明の効果を奏することができる」平均分子量の範囲の上限値は、好ましくは700kDaであることが示されている。そして、上記実施例における「より一層効果的に本発明の効果を奏することができる」トラネキサム酸を併用した場合についての記載を併せて見れば、当業者は、平均分子量350超~700kDaのヒアルロン酸がトラネキサム酸との併用によって、より一層効果的に本発明の効果を奏することができることを認識できるといえる。 そうしてみれば、本件特許明細書に、平均分子量350超~700kDaのヒアルロン酸をトラネキサム酸と併用することにより高い紫外線ダメージ抑制作用が得られるという明示的な記載はなく、実施例でも当該範囲のヒアルロン酸類を用いた例が示されていないことをもって、本件発明の課題を解決することを当業者が認識できないとまではいえない。 イ 根拠イに関し、本件特許明細書の実施例においては、ヒアルロン酸とトラネキサム酸を特定の比率で含有した組成物しか示されていない。 しかしながら、本件発明は、上記(3)の課題を解決するために、「ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として用いることにより、皮膚への紫外線ダメージを効果的に抑制できること」を見出し、さらに、「特定の平均分子量を有するヒアルロン酸類を用いる場合に、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて用いると、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することができること」を見出したことによって完成したものである(記載c)。そして、上記(4)で述べたように、実施例では、特定の平均分子量を有するヒアルロン酸とトラネキサム酸を併用することにより、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することができることが示されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識できるといえる。 ウ よって、根拠ア及びイに基づく申立人の主張は受け入れられない。 (6)以上のとおり、申立理由1は、理由がない。 2 申立理由3(甲1に基づく進歩性欠如) (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明とは、上記第5の1(3)で述べたとおりの一致点及び相違点を有する。 イ 相違点1について検討する。 ヒアルロン酸を含有する従来の外用組成物は、ヒアルロン酸の強い曳糸性のため、ヒアルロン酸を少量配合しただけでも特有のネバネバとした滑り感を与えるという欠点を有しており、それを改善するために、甲1発明は、「分解ヒアルロン酸亜鉛」及び「アセチル化ヒアルロン酸又は薬学的に許容されるその塩」を含むことにより、肌なじみが良く、サラサラした良好な使用感を示すなどの所望の作用を有する外用組成物とするものである(甲1b)。そうしてみると、甲1には、必須となる有効成分である「分解ヒアルロン酸亜鉛」及び「アセチル化ヒアルロン酸又は薬学的に許容されるその塩」に代えて、特有のネバネバとした滑り感を与える「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種」とする動機付けは見当たらず、そのような本件特許出願の優先日時点での技術常識もない。 また、甲1には、その他の有効成分の保湿成分として、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸ナトリウムを配合してもよいことが記載されているが(甲1dの【0038】)、その平均分子量についての記載はない。一方、本件発明1は、「特定の平均分子量を有するヒアルロン酸類を用いる場合に、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて用いると、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することができること」を見出したことによって完成したものであるところ(記載c)、甲1を見ても、甲1発明において、トラネキサム酸との併用による効果を考慮して、保湿成分として用いられるヒアルロン酸又はヒアルロン酸ナトリウムの平均分子量を特定の範囲にするという動機付けは見当たらず、当業者は、甲1発明に相違点1に係る構成を適用することを容易に想到し得たとはいえない。また、ヒアルロン酸類とトラネキサム酸類を併用したことにより、ヒアルロン酸類のみを用いた場合に比べて、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することは、当業者の予測の範囲を超える顕著なものである。 ウ したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2~6について 本件発明1と同様に、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 申立理由3(甲2に基づく進歩性欠如) (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明とは、上記第5の2(3)で述べたとおりの一致点及び相違点を有する。 イ 相違点3について検討する。 甲2には、甲2発明における「加水分解ヒアルロン酸」及び「ヒアルロン酸ナトリウム」(本件発明1の「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩」に相当する。)について、「本実施形態に係る化粧料にはさらに、以下の成分が配合されていてもよい。前記成分としては、例えば、・・・保湿剤(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、・・・)、・・・が挙げられる。」との記載はあるものの(甲2cの【0115】)、その平均分子量についての記載はない。一方、本件発明1は、「特定の平均分子量を有するヒアルロン酸類を用いる場合に、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて用いると、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することができること」を見出したことによって完成したものであるところ(記載c)、甲2を見ても、甲2発明において、トラネキサム酸との併用による効果を考慮して、保湿剤として用いられるヒアルロン酸ナトリウム又は加水分解ヒアルロン酸の平均分子量を特定の範囲にするという動機付けは見当たらず、当業者は、甲2発明に相違点3に係る構成を適用することを容易に想到し得たとはいえない。また、ヒアルロン酸類とトラネキサム酸類を併用したことにより、ヒアルロン酸類のみを用いた場合に比べて、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することは、当業者の予測の範囲を超える顕著なものである。 ウ したがって、そのほかの相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2~6について 本件発明1と同様に、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 申立理由2及び3(甲3に基づく新規性・進歩性欠如) (1)甲3に記載された事項 甲3には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。 甲3a 「【請求項1】 (A)トラネキサム酸又はその塩と、(B)ヒアルロン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩と、(C)サリチル酸又はその塩と、を含有し、 前記(C)成分の含有量が、外用剤全量を基準として、0.01~0.5重量%である、外用剤。」 甲3b 「【0004】 ヒアルロン酸は、増粘効果があり、その増粘効果による独特のクッション性は使用感を向上させるため、外用剤の増粘剤として好ましく用いられている。サリチル酸は、皮膚表面の角質を溶解させ、ニキビの改善や肌をなめらかにするために、外用剤の成分として用いられている。しかし、発明者らの検討によれば、ヒアルロン酸及びサリチル酸を配合すると、ヒアルロン酸による増粘効果が大幅に低下し、好ましい粘度の外用剤を得ることが困難であることが判明した。 【0005】 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ヒアルロン酸及びサリチル酸を配合した際の粘度低下を抑制できる外用剤を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ヒアルロン酸及びサリチル酸を含む外用剤に、トラネキサム酸をさらに含有させることで、サリチル酸によるヒアルロン酸の増粘効果の低下を抑制できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。」 甲3c 「【0011】 (A)トラネキサム酸又はその塩 ・・・ 【0014】 本実施形態の外用剤における(A)成分の含有量は、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、外用剤の全量を基準として、(A)成分の総含有量が、通常、0.1~5重量%であり、0.5~3重量%であることが好ましく、0.8~2.2重量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲であると、本発明による効果に加え、トラネキサム酸又はその塩が有する美白、抗炎症、肌荒れ改善などの作用も得ることができる。 【0015】 (B)ヒアルロン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩 ・・・ 【0017】 ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの金属との塩などが例示できるが、ナトリウム塩、カリウム塩が好適に用いられる。また、ヒアルロン酸に比較して、塩の状態のヒアルロン酸を用いる方がより安定であることから好ましい。 ・・・ 【0019】 また、ヒアルロン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩は、平均分子量が50万~500万の範囲にあるものが好ましく、50万~400万の範囲にあることがより好ましく、60万~250万が特に好ましく、80万~200万の範囲にあることがよりさらに好ましい。本発明に用いるヒアルロン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩は、市販のものを用いることができる。かかる市販品として代表的には、ヒアルロン酸としては、商品名「ヒアルロン酸ナトリウムHA12N」(資生堂株式会社)平均分子量110万~160万、「バイオヒアルロン酸ナトリウムHA20N」(資生堂株式会社製)平均分子量190万~270万、商品名「バイオヒアルロン酸ナトリウムSZE](資生堂株式会社製)平均分子量110~160万、商品名「ヒアルロンサンHA-LQ」(キユーピー株式会社製)平均分子量60万~120万、商品名「ヒアルロン酸FCH-120」(キッコーマンバイオケミファ株式会社)平均分子量100万~140万、商品名「ヒアルロン酸FCH-150」(キッコーマンバイオケミファ株式会社)平均分子量140万~180万、商品名「ヒアルロン酸FCH-200」(キッコーマンバイオケミファ株式会社)平均分子量180万~200万などが挙げられ、ヒアルロン酸誘導体としては、「アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム」(資生堂株式会社)平均分子量1万~10万、「ヒアロベール」(キューピー株式会社)平均分子量50万~80万、「ヒアロリペア」(キューピー株式会社)平均分子量1万以下などの市販品が例示できる。」 甲3d 「【実施例】 ・・・ [試験例1:粘度の評価] (1)試験サンプルの調製 使用した試験サンプルは、各種試薬を表1及び2に示す混合比で適宜混合し、調製した。 ・・・ 【0073】 【表1】 [図:0001397173000005.jpg] 【0074】 【表2】 [図:0001397173000006.jpg] 【0075】 (3)試験結果 試験結果を表1及び2に示す。ヒアルロン酸ナトリウムにトラネキサム酸を含有させることで、試験サンプルの初期粘度が増加された(参考例1~4)。ヒアルロン酸ナトリウムにサリチル酸を含有させると初期粘度が著しく低下するが(比較例1及び2)、さらにトラネキサム酸を含有させることで、初期粘度の低下が抑制され、さらに、光照射による粘度低下も抑制することができた(実施例1~5)。 【0076】 [試験例2:pHを統一した条件下での粘度の評価] (1)試験サンプルの調製 使用した試験サンプルは、各種試薬を表3に示す混合比で適宜混合し、調製した。 ・・・ 【0078】 【表3】 [図:0001397173000007.jpg] 【0079】 (3)試験結果 試験結果を表3に示す。pHを統一した条件下であっても、トラネキサム酸を含有させることで、初期粘度の低下を抑制することができた(比較例3及び参考例5、比較例4及び実施例6)。ただし、トラネキサム酸の含有量が1重量%では、サリチル酸を試験サンプル全量に対して1重量%以上含む場合の初期粘度の低下を抑制することができなかった(比較例5及び6)。 【0080】 処方例 以下の処方に従って、外用剤が調製される。なお、処方例の各数値は重量%を示す。 【0081】 処方例1(化粧水) トラネキサム酸 2.0 サリチル酸 0.1 ヒアルロン酸ナトリウム 0.2 濃グリセリン 2.0 1,3-ブチレングリコール 10.0 ポリオキシプロピレンメチルグルコシド 0.2 アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.01 ヒドロキシエチルセルロース 0.05 防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール) 適量 着香剤 適量 精製水 残量 合計 100 【0082】 処方例2(化粧水) トラネキサム酸 1.0 サリチル酸 0.05 ヒアルロン酸ナトリウム 0.05 濃グリセリン 3.0 プロピレングリコール 5.0 ソルビトール 1.0 ポリオキシプロピレンメチルグルコシド 0.5 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1 カルボキシビニルポリマー 0.05 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体 0.5 キサンタンガム 0.05 ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション 0.3 加水分解ヒアルロン酸 0.1 リン酸L-アスコルビルマグネシウム 0.01 キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量 防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール) 適量 pH調整剤 適量 着香剤 適量 精製水 残量 合計 100 【0083】 処方例3(乳液) トラネキサム酸 2.0 アルブチン 0.1 サリチル酸 0.2 ヒアルロン酸ナトリウム 0.2 ジプロピレングリコール 5.0 1,3-ブチレングリコール 8.0 濃グリセリン 3.0 モノステアリン酸グリセリン 1.0 カルボキシビニルポリマー 0.2 キサンタンガム 0.05 メドウフォーム油 5.0 トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 5.0 メチルポリシロキサン 1.0 トリエタノールアミン 0.1 トコフェロール 0.1 アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.05 キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量 防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール) 適量 着香剤 適量 精製水 残量 合計 100 【0084】 処方例4(クリーム) トラネキサム酸 1.0 アルブチン 3.0 サリチル酸 0.05 ヒアルロン酸ナトリウム 0.15 ジプロピレングリコール 8.0 ジグリセリン 5.0 濃グリセリン 3.0 ヒドロキシエチルウレア 3.0 イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5 モノステアリン酸グリセリン 0.4 セトステアリルグルコシド・セトステアリルアルコール 1.5 アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.5 メドウフォーム油 0.5 スクワラン 3.0 トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 1.5 メチルポリシロキサン 1.0 ベヘニルアルコール 0.2 ステアリルアルコール 0.3 キサンタンガム 0.2 キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量 防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール) 適量 着香剤 適量 精製水 残量 合計 100」 (2)甲3に記載された発明 甲3には、上記(1)の甲3a及び甲3dの処方例2(化粧水)からみて、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「以下の成分を含む化粧水である外用剤(単位は、重量%)。 トラネキサム酸 1.0 サリチル酸 0.05 ヒアルロン酸ナトリウム 0.05 濃グリセリン 3.0 プロピレングリコール 5.0 ソルビトール 1.0 ポリオキシプロピレンメチルグルコシド 0.5 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1 カルボキシビニルポリマー 0.05 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体 0.5 キサンタンガム 0.05 ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション 0.3 加水分解ヒアルロン酸 0.1 リン酸L-アスコルビルマグネシウム 0.01 キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量 防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール) 適量 pH調整剤 適量 着香剤 適量 精製水 残量 合計 100 」 (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明は、加水分解ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム及びトラネキサム酸を有効成分として含む外用剤であって、甲3発明における「加水分解ヒアルロン酸」及び「ヒアルロン酸ナトリウム」は、本件発明1の「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩」に相当し、甲3発明の「外用剤」は、本件発明1の「外用組成物」に相当する。 また、甲3発明の外用組成物は、本件発明1において、「除くクレーム」により除かれた組成物Aではない。 さらに、本件発明1は、本件発明1の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含有することもできるから(本件特許明細書【0031】)、甲3発明が、「加水分解ヒアルロン酸」、「ヒアルロン酸ナトリウム」及びトラネキサム酸以外の成分を含むことは、両発明の相違点とはならない。 それゆえ、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種と、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と、を有効成分として含有する外用組成物(ただし、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、POEソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、オリーブ油、トコフェロール、EDTA-2ナトリウム、アルギニン、グリチルリチン酸ジカリウム、アルブチン、パルミチン酸レチノール、クジンエキス、海藻エキス、トラネキサム酸、エラスチン、コラーゲン、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、プロピルパラベン、メチルパラベン、香料、および、精製水を含む外用組成物を除く。)。」である点。 <相違点2’’> 本件発明1は、「皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善のための」ものであるのに対し、甲3発明はこれが明らかでない点。 <相違点3’> 本件発明1のヒアルロン酸は、「平均分子量が4~700kDaである」のに対し、甲3発明の「加水分解ヒアルロン酸」及び「ヒアルロン酸ナトリウム」は、平均分子量が明らかでない点。 イ 上記相違点3’について検討する。 甲3発明における「ヒアルロン酸ナトリウム」については、甲3の処方例(甲3dの【0080】~【0084】)には、その平均分子量の記載はないので、甲3のほかの記載を参酌する。甲3の実施例において、粘度の評価のためにヒアルロン酸ナトリウムが使用されており(甲3dの試験例1~3、特に表1~3)、そこで使用されているヒアルロン酸ナトリウムは、「バイオヒアルロンサンHA-12N」(表1)、「バイオヒアルロン酸ナトリウムHA20N」(表2)及び「バイオヒアルロン酸SZE」(表3)であるところ、甲3cの【0019】には、「ヒアルロン酸としては、商品名「ヒアルロン酸ナトリウムHA12N」(資生堂株式会社)平均分子量110万~160万、「バイオヒアルロン酸ナトリウムHA20N」(資生堂株式会社製)平均分子量190万~270万、商品名「バイオヒアルロン酸ナトリウムSZE](資生堂株式会社製)平均分子量110~160万、・・・」との記載があり、商品名の末尾の英数字から見て、これらの商品を使用しているものと考えられる。しかしながら、これらの市販品の平均分子量の下限値は、110万kDa(1100kDa)、190万kDa(1900kDa)及び110万kDa(1100kDa)であり、本件発明1のヒアルロン酸の平均分子量の上限値700kDaを大幅に超えるものである。 ウ また、甲3発明における「加水分解ヒアルロン酸」については、甲3には、その平均分子量を推測するための記載はなく、平均分子量は明らかではない。 これにつき、申立人は、「加水分解ヒアルロン酸の平均分子量が低いことは周知ですが、一例として甲第6号証を挙げます。本文献によると、分解ヒアルロン酸の平均分子量は100kDa以下となります。更に、甲第1号証の(0011)によれば、やはり分解ヒアルロン酸の重量平均分子量は、約100kDa以下であることが記載されている。」と主張する(特許異議申立書26頁14~18行)。 しかしながら、甲3発明の「加水分解ヒアルロン酸」が甲1や甲6に記載の分解ヒアルロン酸である根拠はなく、甲3発明の「加水分解ヒアルロン酸」の平均分子量が100kDa以下とはいえない。そもそも、甲3発明は、ヒアルロン酸による増粘効果が、サリチル酸との併用によって大幅に低下するという課題を解決しようとしたものであり(甲3b)、配合されるヒアルロン酸は増粘効果を奏するようにある程度高い平均分子量が必要とされるから(上記イで述べたように、上記甲3dの粘度の評価のための試験例1~3で使用されているヒアルロン酸ナトリウムの平均分子量も下限値は、110万kDa(1100kDa)や190万kDa(1900kDa)である。)、申立人の主張するような低い平均分子量とは考え難く、申立人の主張は受け入れられない。 エ 以上検討のとおり、甲3発明において用いられた「ヒアルロン酸ナトリウム」及び「加水分解ヒアルロン酸」の平均分子量についての相違点3’は、本件発明1との実質的な相違点であるといえるから、本件発明1は、甲3に記載された発明とはいえない。 オ 本件発明1が甲3に基いて容易に発明できたものであるかについて、更に検討する。 相違点3’について検討すると、本件発明1は、「特定の平均分子量を有するヒアルロン酸類を用いる場合に、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて用いると、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することができること」を見出したことによって完成したものであるところ(記載c)、甲3を見ても、甲3発明において、トラネキサム酸との併用による効果を考慮して、保湿成分として用いられるヒアルロン酸又はヒアルロン酸ナトリウムの平均分子量を特定の範囲にするという動機付けは見当たらず、当業者は、甲3発明に相違点3’に係る構成を適用することを容易に想到し得たとはいえない。また、ヒアルロン酸類とトラネキサム酸類を併用したことにより、ヒアルロン酸類のみを用いた場合に比べて、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することは、当業者の予測の範囲を超える顕著なものである。 カ したがって、そのほかの相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 なお、上記(2)で甲3発明を処方例2に基づいて認定したが、甲3に記載された発明を処方例1、3及び4のいずれに基づいて認定しても、同様の判断となる。 (4)本件発明2~6について 本件発明1と同様に、本件発明2~6は、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 申立理由2及び3(甲4に基づく新規性・進歩性欠如) (1)甲4に記載された事項 甲4には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。)。 甲4a 「【請求項1】アセチル基の置換数が、ヒアルロン酸構成単位当たり、2~4であるアセチル化ヒアルロン酸0.0001~10重量%と、トラネキサム酸0.01~10重量%とを含有し、かつアセチル化ヒアルロン酸とトラネキサム酸の配合重量比が60/1~1/5000であることを特徴とする皮膚外用剤。」 甲4b 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ヒアルロン酸またはトラネキサム酸の肌荒れ防止、肌荒れ改善効果についてはいまだ十分でなく効果を期待するには及ばなかった。本発明は上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、肌荒れ防止、肌荒れ改善効果を飛躍的に高めた新規な皮膚外用剤を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究した結果、アセチル化ヒアルロン酸と、トラネキサム酸とを配合する皮膚外用剤がこの目的を達成することを見出して本発明を完成するに至った。」 甲4c 「【0014】 【実施例】つぎに実施例、比較例および試験例を挙げて、本発明を具体的に明らかにする。本発明はこれにより限定されるものではない。なお、配合量は重量%である。 ・・・ 【0017】 【表1】 ────────────────────────────────── 組 成 (クリーム) 実施例1 比較例 ────────────────────────────────── A.セタノール 0.5 0.5 ワセリン 2.0 2.0 スクワラン 7.0 7.0 自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 2.5 2.5 POE(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル 1.5 1.5 パントテニルエチルエーテル 0.5 0.5 ホホバ油 5.0 5.0 B.プロピレングリコール 5.0 5.0 グリセリン 5.0 5.0 ビーガム(モンモリロナイト) 5.0 5.0 アセチル化ヒアルロン酸※1 0.1 - ヒアルロン酸 - 0.1 トラネキサム酸 2.0 2.0 水 残 余 残 余 ────────────────────────────────── ※1:アセチル化度3 」 (2)甲4に記載された発明 甲4には、上記(1)の甲4a及び甲4cからみて、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 「以下の成分を含むクリームである皮膚外用剤(単位は、重量%)。 A.セタノール 0.5 ワセリン 2.0 スクワラン 7.0 自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 2.5 POE(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル 1.5 パントテニルエチルエーテル 0.5 ホホバ油 5.0 B.プロピレングリコール 5.0 グリセリン 5.0 ビーガム(モンモリロナイト) 5.0 アセチル化ヒアルロン酸 0.1 トラネキサム酸 2.0 水 残 余 」 (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲4発明を対比する。 甲4発明は、トラネキサム酸を有効成分として含む皮膚外用剤であって、甲4発明の「皮膚外用剤」は、本件発明1の「外用組成物」に相当する。 また、甲4発明の皮膚外用剤は、本件発明1において、「除くクレーム」により除かれた組成物Aではない。 さらに、本件発明1は、本件発明1の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含有することもできるから(本件特許明細書【0031】)、甲4発明が、トラネキサム酸以外の成分を含むことは、両発明の相違点とはならない。 それゆえ、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する外用組成物(ただし、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、POEソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、オリーブ油、トコフェロール、EDTA-2ナトリウム、アルギニン、グリチルリチン酸ジカリウム、アルブチン、パルミチン酸レチノール、クジンエキス、海藻エキス、トラネキサム酸、エラスチン、コラーゲン、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、プロピルパラベン、メチルパラベン、香料、および、精製水を含む外用組成物を除く。)。」である点。 <相違点1’> 本件発明1は、「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種」を「有効成分として含有し」、「ヒアルロン酸の平均分子量が4~700kDaである」外用組成物であるのに対し、甲4発明は、「アセチル化ヒアルロン酸」を含む外用組成物である点。 <相違点2’’’> 本件発明1は、「皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善のための」ものであるのに対し、甲4発明はこれが明らかでない点。 イ 上記相違点について検討する。 相違点1’に関し、甲4発明に含まれる「アセチル化ヒアルロン酸」は、ヒアルロン酸の誘導体であるものの、本件発明1の「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩」ではない。 そうしてみれば、相違点1’は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲4に記載された発明とはいえない。 ウ 本件発明1が甲4に基いて容易に発明できたものであるかについて、更に検討する。 相違点1’について検討すると、甲4発明は、ヒアルロン酸又はトラネキサム酸では十分でない肌荒れ防止や肌荒れ改善効果を飛躍的に高めるために、アセチル化ヒアルロン酸とトラネキサム酸とを配合する皮膚外用剤としたものであることを考えれば(甲4b)、甲4には、必須となる有効成分であるアセチル化ヒアルロン酸に代えて、特定の平均分子量を有する「ヒアルロン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種」とする動機付けは見当たらず、そのような本件特許出願の優先日時点での技術常識もない。 そうしてみれば、当業者は甲4発明に相違点1’に係る構成を適用することは、容易に想到し得たとはいえない。 したがって、そのほかの相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明2~6について 本件発明1と同様に、本件発明2~6は、甲4に記載された発明ではないし、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 6 申立理由2及び3(甲5に基づく新規性・進歩性欠如) (1)新規性・進歩性の判断の基準日について 甲5は、平成28年12月1日に公開された公開特許公報であり、本件特許の出願日(平成28年12月5日)前であるが、本件特許出願の優先日(平成28年10月13日)後に公開されたものである。 特許法29条1項及び2項の判断の基準日は優先日であるところ、本件特許出願が優先権の主張の利益を享受できるかどうかについて、本件特許出願の優先基礎である特願2018-202129号の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「基礎出願明細書等」という。)の記載に基づき、以下検討する。 (2)基礎出願明細書等に記載された事項 基礎出願明細書等には、以下の記載がある。 基a 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、皮膚への紫外線ダメージを予防又は改善するために有用な外用組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として用いることにより、皮膚への紫外線ダメージを効果的に抑制できることを見出した。更に、本発明者等は検討を進め、特定の平均分子量を有するヒアルロン酸類を用いる場合に、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて用いると、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することができることをも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。 【0010】 すなわち、本発明は下記に掲げる外用組成物を提供する。 [項1] ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善のための外用組成物。 [項2] 皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善が、紫外線曝露による皮膚の炎症を予防又は改善することを含む、項1に記載の外用組成物。 [項3] 紫外線が紫外線B波である、項1又は2に記載の外用組成物。 [項4] 皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善が、紫外線曝露による皮膚の炎症に起因するメラニン産生の誘発を予防又は改善することを含む、項1~3のいずれかに記載の外用組成物。 [項5] 皮膚への紫外線ダメージの予防又は改善が、紫外線曝露による表皮角化細胞におけるPGE2及びIL-1αからなる群より選択される少なくとも1種の産生を抑制することによるものである、項1~4のいずれかに記載の外用組成物。 [項6] ヒアルロン酸の平均分子量が0.1~700kDaである、項1~5のいずれかに記載の外用組成物。 [項7] 更に、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、項1~6のいずれかに記載の外用組成物。 [項8] ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の成分の総量1重量部に対して、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の成分の総量が0.05~4000重量部である、項7に記載の外用組成物。 【発明の効果】 【0011】 本発明の外用組成物によれば、皮膚への紫外線ダメージを効果的に予防及び/又は改善することができる。 ・・・ 【0017】 本発明のヒアルロン酸の平均分子量は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されず、例えば、約0.1~1800kDaであり得る。より一層効果的に本発明の効果を奏することができるという観点から、本発明のヒアルロン酸の平均分子量は、好ましくは約0.1~700kDaであり、より好ましくは約0.2~600kDaであり、更に好ましくは約4~500kDaであり、更により好ましくは約5~400kDaであり、特に好ましくは約8~350kDaである。」 基b 「【0024】 (B)トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩: 本発明の外用組成物には、上記ヒアルロン酸類に加えて、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、トラネキサム酸類ともいう)を更なる有効成分として配合してもよい。とりわけ、ヒアルロン酸の平均分子量が350kDa以下である低分子ヒアルロン酸類を用いる場合には、トラネキサム酸類を組み合わせて用いることで両成分の作用が相俟って、より一層高い皮膚への紫外線ダメージ抑制効果が得られることが分かっている。 ・・・ 【0030】 また、本発明の外用組成物にトラネキサム酸類を配合する場合、ヒアルロン酸類に対する配合比率も特に限定されず、例えば、ヒアルロン酸類の総量1重量部に対して、トラネキサム酸類の総量が0.05~4000重量部、好ましくは0.1~3500重量部、より好ましくは0.2~3000重量部とすることができる。より一層高い皮膚への紫外線ダメージ抑制効果を得ることができるという観点から、なかでも、ヒアルロン酸類の総量1重量部に対して、トラネキサム酸類の総量が7重量部~4000重量部であることが好ましく、8~3500重量部であることがより好ましく、10~3000重量部であることが特に好ましい。」 基c 「【実施例】 【0053】 以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 ・・・ 【0056】 (試験例2.PGE2産生抑制試験) 上記試験例1と実質的に同様の方法で、UVB曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生抑制試験を実施した。 本試験例では、下記表2に示す被験薬を用いて試験を行った。本試験例で用いた各ヒアルロン酸1~3は、試験例1で使用したものと同じである。同じ平均分子量のヒアルロン酸をのみを含む実施例(実施例4、6、8)を用いた場合のPGE2産生量に対する、トラネキサム酸を組み合わせた場合の実施例(実施例5、7、9)を用いたときのPGE2産生量の割合を百分率(%)として、表2に結果を併せて示す。 【表2】 [図:0001397173000008.jpg] 【0057】 表2に示されるように、本試験例の結果では、高分子のヒアルロン酸(ヒアルロン酸3)に対してトラネキサム酸を併用しても、紫外線曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生抑制作用を向上させる効果は認められなかった。一方、平均分子量が350kDa以下のヒアルロン酸(ヒアルロン酸1、ヒアルロン酸2)を用いた場合には、更にトラネキサム酸を併用することでPGE産生量が大幅に低下することが明らかとなった。この結果から、低分子ヒアルロン酸を用いる場合には、トラネキサム酸を組み合わせて配合することにより、紫外線曝露後の表皮角化細胞におけるPGE2産生抑制効果がより一層高まり、皮膚への紫外線ダメージを予防又は改善する作用が増強されることが明らかとなった。」 (3)本件発明が、基礎出願明細書等に記載されているかどうかを検討する。 本件発明の課題は、本件特許明細書の記載(記載b(上記1(2)を参照。以下同じ。))から、「皮膚への紫外線ダメージを予防又は改善するために有用な外用組成物を提供すること」と認められるところ、上記課題を解決するために、本件発明は、「ヒアルロン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として用いることにより、皮膚への紫外線ダメージを効果的に抑制できること」を見出し、さらに、「特定の平均分子量を有するヒアルロン酸類を用いる場合に、トラネキサム酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて用いると、より一層効果的に紫外線ダメージ抑制効果を発揮することができること」を見出したことによって完成したものである(記載c)。 一方、基礎出願明細書等には、本件発明の課題及びそれを解決するための手段並びに本件発明の発明特定事項が記載され(基a及び基b)、実施例においても、本件特許明細書の実施例と同じ実験結果が示され(基c)、上記課題を解決できることが示されている。 そうしてみれば、本件発明は、基礎出願明細書等に記載されているといえるから、本件特許出願は、優先権主張の利益を享受することができる。 (4)以上検討のとおり、本件発明についての特許法29条1項及び2項の判断の基準日は優先日(平成28年10月13日)であるから、当該基準日より後の平成28年12月1日に公開された甲5は新規性・進歩性を判断するための引用文献とはなり得ない。 よって、甲5に基づく新規性・進歩性欠如による申立理由2及び3は、理由がない。 第7 むすび 以上のとおり、令和4年4月28日付け取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議申立理由によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 そして、ほかに本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701237

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同じ当事者の審決158件(ロート製薬株式会社、小池 良)
  • 2021-700787異議申立 / 2023-03-06 / 請求成立(取消)皮膚外用組成物
    同じ当事者: ロート製薬株式会社、小池 良
  • 2025-701132異議申立 / 2026-08-31 / 異議終了
    同じ当事者: ロート製薬株式会社
  • 2024-700813異議申立 / 2026-03-03 / 訂正認容マスク製剤
    同じ当事者: ロート製薬株式会社
  • 2025-701017異議申立 / 2026-02-27 / 維持接合用ペースト、及び接合体
    同じ当事者: 小池 良
  • 2025-700884異議申立 / 2026-02-04 / 維持mRNA送達のための脂質ナノ粒子組成物および方法
    同じ当事者: 小池 良
同じ論点・分野の審決(審決分類)5,156件(113・A61K、121・A61K、537・A61K)
  • 2026-700269異議申立 / 2026-07-03 / 維持水型又は水中油型化粧料
    共通の審決分類: 113・A61K、121・A61K、537・A61K
  • 2025-700392異議申立 / 2026-06-12 / 訂正認容エアゾール型の染毛、脱色・脱染のための酸化剤含有組成物
    共通の審決分類: 113・A61K、121・A61K、537・A61K
  • 2024-700655異議申立 / 2026-05-20 / 訂正認容スガマデクス含有の液体製剤
    共通の審決分類: 113・A61K、121・A61K、537・A61K
  • 2026-700022異議申立 / 2026-05-01 / 維持油性化粧料
    共通の審決分類: 113・A61K、121・A61K、537・A61K
  • 2024-700795異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容油中水型乳化化粧料
    共通の審決分類: 113・A61K、121・A61K、537・A61K

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