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特許異議申立

2021-701092

セル間接続部材の製造方法

審判番号
2021-701092
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-058277
登録番号
6910172
請求日
2021年11月18日
審決日
2022年09月26日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大阪瓦斯株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人R&C
  • 【異議申立人】馬場 資博
審判長/審判官
  • 審判長 池渕 立
  • 審判官 土屋 知久
  • 審判官 太田 一平
分類
P1651.121-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6910172号発明「セル間接続部材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6910172号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6910172号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6910172号の請求項1~6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成29年3月23日の出願であって、令和3年7月8日にその特許権の設定登録がなされ、同年7月28日に特許掲載公報が発行された。 本件は、その後、同年11月18日差出で特許異議申立人馬場資博(以下、「申立人」という。)より、請求項1~6(全請求項)に係る特許に対してなされた特許異議申立事件であって、令和4年4月11日付けで取消理由が通知され、これに対して、同年6月9日に特許権者より意見書が提出されるとともに、訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされたものである。 なお、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)について、申立人に期間を指定して意見を求めたが、申立人から意見書の提出はなかった。 第2 訂正請求について 1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容 本件訂正請求は、特許第6910172号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。 なお、訂正箇所には、当審で下線を付した。 (1)訂正事項1 請求項1について、本件訂正前の「スラリーが含有するAl2O3の量が、導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対して3質量%未満である」を「スラリーが含有するAl2O3の量が、導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対して0.5質量%以上3質量%未満である」と訂正する。 請求項1を引用する請求項2~6も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)【0013】について、本件訂正前の「スラリーが含有するAl2O3の量が、導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対して3質量%未満である」を「スラリーが含有するAl2O3の量が、導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対して0.5質量%以上3質量%未満である」と訂正する。 2 当審の判断 2-1 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1は、本件明細書【0037】を根拠として、本件訂正前の請求項1の発明特定事項である「導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対」する、「スラリーが含有するAl2O3の量」について、本件訂正前は「3質量%未満」と下限の特定がなかったものを、「0.5質量%以上3質量%未満」としたものであるから、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2は、訂正事項1において、特許請求の範囲の訂正に伴い、本件明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 2-2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~6は、請求項1を引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~6は一群の請求項である。 そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~6〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。 2-3 独立特許要件について 訂正事項1は、上記2-1で検討したとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件訂正請求に係る請求項はいずれも特許異議の申立てがなされているので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。 2-4 明細書の訂正について 明細書の訂正である訂正事項2は、訂正前の請求項1に対応する明細書の記載を訂正するものであるから、本件訂正請求に係る明細書の訂正は、一群の請求項の全てについて行うものである。 2-5 訂正請求についてのむすび 以上のとおり、令和4年6月9日に特許権者が行った本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~6〕についての訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 令和4年6月9日に特許権者が行った請求項1~6についての訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。また、これらの発明をまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 固体酸化物形燃料電池用セルに用いられるセル間接続部材の製造方法であって、 導電性セラミックス材料の微粉末を含有するスラリーを用いて前記セル間接続部材の基材に塗膜を湿式成膜する成膜工程と、 塗膜を湿式成膜した前記基材に熱処理を施し、前記微粉末を焼結させて基材の表面に保護膜を形成する焼結工程とを有し、 前記基材の主材料のステンレス合金がTiを含有し、前記スラリーがAl2O3を含有し、 前記スラリーが含有するAl2O3の量が、導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対して0.5質量%以上3質量%未満である、セル間接続部材の製造方法。 【請求項2】 前記スラリーにAl2O3の粉末を添加物として追加する添加工程を有する請求項1に記載のセル間接続部材の製造方法。 【請求項3】 前記スラリーが、前記導電性セラミックス材料に含まれる不純物としてのAl2O3を含有する請求項1または2に記載のセル間接続部材の製造方法。 【請求項4】 アルミナを粉砕メディアとして用いて導電性セラミックス材料を粉砕し、前記微粉末を作成する粉砕工程を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のセル間接続部材の製造方法。 【請求項5】 前記導電性セラミックス材料が、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)、亜鉛コバルト系酸化物(ZnxCo1-x)Co2O4(0.45≦x≦1.00)から選ばれる少なくとも一つの酸化物を含有する請求項1から4のいずれか1項に記載のセル間接続部材の製造方法。 【請求項6】 前記導電性セラミックス材料が、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)を主成分とする請求項1から4のいずれか1項に記載のセル間接続部材の製造方法。」 2 令和4年4月11日付けで通知された取消理由の概要 令和4年4月11日付けで通知された取消理由の概要は、以下のとおりである。 本件訂正前の請求項1には、「導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対」する、「スラリーが含有するAl2O3の量」の下限が特定されていないため、請求項1に係る発明は、本件発明の課題を解決し得ない発明を含むものであるから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 3 上記2以外の特許異議申立理由 申立人は、後述する証拠方法により、上記2以外に次の(1)~(3)の特許異議申立理由を主張した。 (1)本件訂正前の請求項1の「スラリーが含有するAl2O3の量」は、その由来を問わないものであるのか、添加物由来のものであるのかについて、明確であるとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)次のア~ウの理由により、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 ア 本件訂正前の請求項1の「スラリーが含有するAl2O3の量」には、不純物由来のAl2O3を含有しているから、不純物由来のAl2O3を何ら考慮していない本件明細書の実施例では、本件発明の課題を解決し得るか否かが不明である。したがって、本件訂正前の請求項1に係る発明及びそれを引用する請求項2~6に係る発明は、本件発明の課題を解決し得るものであるとはいえない。 イ 本件明細書の実施例は、不純物由来のAl2O3を含有していないと考えられるから、本件明細書には、不純物由来のAl2O3を含有している具体例が存在しない。したがって、本件訂正前の請求項3に係る発明及びそれを引用する請求項4~6に係る発明は、本件発明の課題を解決し得るものであるとはいえない。 ウ 本件訂正前の請求項1に係る発明は、基材におけるTiの含有量について何ら規定されておらず、基材におけるTiの含有量がごく僅かであるために、本件発明の課題を解決し得ない態様を含むものである。したがって、本件訂正前の請求項1に係る発明及びそれを引用する請求項2~6に係る発明は、本件発明の課題を解決し得るものであるとはいえない。 (3)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1~3号証に記載された発明、甲第12号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 (証拠方法) 甲第1号証:特開2013-157243号公報 甲第2号証:特開2010-250965号公報 甲第3号証:特表2013-527309号公報 甲第4号証:特開平7-247165号公報 甲第5号証:桑原好孝,「セラミックスの製造と微粉砕技術」,粉体工学会誌,粉体工学会,平成5年1月10日,第30巻,第1号,p.38-46 甲第6号証:特開2008-205388号公報 甲第7号証:特開平5-4863号公報 甲第8号証:特開2012-230887号公報 甲第9号証:特開2004-143023号公報 甲第10号証:特開2002-93422号公報 甲第11号証:特開2013-118178号公報 甲第12号証:特開2008-258064号公報 甲第13号証:国際公開第2016/072485号 以下、甲第1号証~甲第13号証をそれぞれ「甲1」~「甲13」という。 4 当審の判断 (1)特許法第36条第6項第1号について (1)-1 スラリーが含有するAl2O3の量について(上記2及び上記3の(2)のア) ア 本件発明の解決しようとする課題は、願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載によれば、「電気抵抗を低減して固体酸化物形燃料電池の性能を高めることができるセル間接続部材を提供すること」(【0012】)と認める。 イ そして、本件明細書には、次の記載がある。 「【0016】 アルミナ(Al2O3)の使用により電気抵抗が低減する理由は明らかではないが、スラリーにアルミナを含有させた場合に、基材表面の酸化皮膜中にTiが多く分布する現象が見られた。上述の非特許文献1によれば、Cr2O3酸化皮膜にTiO2をドープすることで電子導電性が改善するとあるから、スラリーへのアルミナの含有によって基材から酸化皮膜へのTiの移動が促進され、酸化皮膜の電子導電性が向上したと考えられる。 また、スラリーが含有するAl2O3の量に応じてセル間接続部材の電気抵抗値が変化することが実験で確認されている。上記の特徴構成によれば、セル間接続部材の電気抵抗値を低く抑えることができる。」 「【0037】 本実施形態では、スラリーがAl2O3を含有することによりセル間接続部材の電気抵抗が低減される。スラリーが含有するAl2O3の量は、スラリーにおける導電性セラミックス材料の微粉末の総量に対して、3質量%未満であると好適である。また、スラリーが含有するAl2O3の量は、スラリーにおける導電性セラミックス材料の微粉末の総量に対して、0.5質量%以上であると好適であり、1質量%以上であると更に好適である。」 ウ 上記イの【0016】の記載によれば、スラリーへのアルミナの含有によって基材からCr2O3酸化皮膜へのTiの移動が促進され、酸化皮膜にTiO2をドープすることとなり、酸化皮膜の電子導電性が向上したと考えられる。 エ また、上記イの【0037】の記載によれば、スラリーが含有するAl2O3の量は、スラリーにおける導電性セラミックス材料の微粉末の総量に対して、0.5質量%以上3質量%未満であると好適である。 オ さらに、本件明細書の実験例1~4(【0050】~【0053】)は、保護膜形成に用いる導電性セラミックス材料として、MnCo2O4を用いてスラリーを作成し、セル間接続部材1の基材11としてSUS445J1(フェライト系ステンレス)の部材を用い、上記スラリーに上記基材をディップし、引き上げ後乾燥し、1000℃で熱処理することによって、形成した保護膜について、550~800℃の間で50℃ずつ温度を変更して電気抵抗の測定を行ったものであり、最近の作動温度である700~800℃(【0003】)での電気抵抗に注目すると、下記の【表1】に示されるように、スラリーのアルミナの添加量を1質量%とした実験例2は、セル間接続部材1の電気抵抗が低く、上記アの課題を解決するものであるのに対し、スラリーのアルミナの添加量をそれぞれ0質量%、3質量%、5質量%とした実験例1、3、4は、セル間接続部材1の電気抵抗が高く、上記アの課題を解決するものではない。 「【表1】 [図:0001392028000001.jpg] 」 カ 一方、本件発明1は、「スラリーが含有するAl2O3の量が、導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対して0.5質量%以上3質量%未満である」との発明特定事項を含むものであって、本件の特許請求の範囲の請求項2、3の記載、本件明細書【0017】~【0020】、【0042】に記載によれば、本件発明1の「スラリーが含有するAl2O3」には、添加物としてのAl2O3、及び、不純物としてのAl2O3の両方が考えられる。 キ しかしながら、本件明細書の実験例1~4(【0050】~【0053】)には、添加物としてのAl2O3の量は記載されているものの、不純物としてAl2O3がどの程度の含まれているのかが不明である。 ク ここで、甲4には、次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ガスの分離や気相における分解の他に、燃料電池セルなどの電気化学的装置、あるいはヒータ、酸素センサ等の電極材料として好適な新規導電性セラミックスに関するものである。」 「【0009】 ・・・(略)・・・この導電性セラミックスは、不純物としてのAl及びSiの含有量が総和が金属換算で1000ppm以下であることが望ましいものである。」 ケ 上記クの記載からすると、申立人が特許異議申立書第39頁第23~24行、及び、第45頁第9~10行で述べているように、一般に、導電性セラミック材料における不純物の含有量はごく僅か(例えば、0.1%以下程度)である。 コ そうすると、上記オの本件明細書の実験例1~4(【0050】~【0053】)におけるスラリーにおいて、導電性セラミックス材料であるMnCo2O4には、ごく僅か(例えば、0.1%以下程度)のアルミナが含まれていると考えられるから、結局、実験例1~4のアルミナの含有量は、添加量と不純物量を合わせて、それぞれ0~0.1質量%程度、1~1.1質量%程度、3~3.1質量%程度、5~5.1質量%程度となるものということができる。 サ そうすると、アルミナの含有量が、1~1.1質量%程度(実験例2)であれば、上記アの課題を解決し、0~0.1質量%程度(実験例1)、3~3.1質量%程度(実験例3)、5~5.1質量%程度(実験例4)であれば、上記アの課題を解決しないこととなる。 シ したがって、上記エの事項を考慮すると、スラリーにおける導電性セラミックス材料の微粉末の総量に対して、スラリーが含有するAl2O3の量が、0.5質量%以上3質量%未満であれば、上記課題を解決し得るものといえるところ、本件訂正により、本件発明1の「スラリーにおける導電性セラミックス材料の微粉末の総量に対」する「スラリーが含有するAl2O3の量」について、「0.5質量%以上3質量%未満である」ことが特定された。 ス したがって、本件発明1は、上記アの課題を解決し得るものである。 セ よって、請求項1及びそれを引用する請求項2~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 (1)-2 不純物由来のAl2O3を含有していない具体例が存在しない点について(上記3の(2)のイ) ア 本件発明3~6は、上記(1)-1で検討したとおり、「スラリーが含有するAl2O3の量が、導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対して0.5質量%以上3質量%未満である」ことにより、上記(1)-1のアの課題を解決し得るものである。 イ 一方、上記(1)-1のウより、スラリーへのアルミナの含有によって基材から酸化皮膜へのTiの移動が促進され、酸化皮膜の電子導電性が向上したと考えられるとのことであるから、この現象が、添加物由来のアルミナと不純物由来のアルミナとで変化することは考えづらい。 ウ すなわち、本件発明の上記イの作用機序において、添加物由来のアルミナと不純物由来のアルミナとを区別する特段の理由がない。 エ そうすると、本件明細書の実施例において、添加物由来のアルミナを含有せず、不純物由来のアルミナを含有する態様が記載されていなくても、当業者であれば、本件発明3~6が、上記(1)-1のアの課題を解決し得るものであることが理解できる。 オ よって、本件発明3~6は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 (1)-3 基材におけるTiの含有量について(上記3の(2)のウ) ア 本件発明の解決しようとする課題は、上記(1)―1のアのとおりである。 イ そして、上記(1)-1のウによれば、スラリーへのアルミナの含有によって基材から酸化皮膜へのTiの移動が促進され、酸化皮膜の電子導電性が向上したと考えられるとのことである。 ウ 一方、請求項1には、「基材の主材料のステンレス合金がTiを含有」することが特定されているものの、Tiの含有量について、何ら特定されていない。 エ そうすると、本件発明1は、基材におけるTiの含有量がごく僅かである場合を含んでいるものの、たとえTiの含有量がごく僅かであったとしても、その含有量に応じて、酸化皮膜の電子導電性が向上するという効果が得られる、すなわち、課題を解決し得ると考えられる。 オ よって、本件発明1~6は、発明の詳細に記載されたものである。 (2)特許法第36条第6項第2項について(上記3の(1)) ア 特許発明の要旨認定は、特段の事情のない限り、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、あるいは一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない(昭和62(行ツ)第3号)。 イ 請求項1には、「固体酸化物形燃料電池用セルに用いられるセル間接続部材の製造方法であって、」「スラリーがAl2O3を含有し、前記スラリーが含有するAl2O3の量が、導電性セラミックス材料の前記微粉末の総量に対して0.5質量%以上3質量%未満である」と記載されている。 ウ そして、上記イの記載において、「Al2O3」は「Al2O3」という組成からなるもの全てであると解され、「固体酸化物形燃料電池用セルに用いられるセル間接続部材」の製造に用いられる「Al2O3」について、どのようにスラリーに含有されたものであるかその由来を示さなければならない特段の事情もない。 エ よって、請求項1及びそれを引用する請求項2~6に係る発明は、明確である。 (3)特許法第29条第2項について(上記3の(2)) (3)-1 甲1の記載事項 甲1には、次の記載がある。ただし、各甲号証に記載された発明の認定に関する箇所に、当審で下線を付した。以下、同じ。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、固体酸化物形燃料電池を含む固体酸化物形燃料電池装置に関し、具体的には、板状の単セルと組み合わせて用いられる板状のインターコネクタと、その製造方法に関する。」 「【0041】 (材料) 実施形態1において、インターコネクタ本体30の材料としては、鉄-クロム系合金で形成された耐熱合金(ZMG232L、日立金属株式会社)を用いた。この耐熱合金は、鉄およびクロムを主要成分とするフェライト系ステンレス鋼である。この耐熱合金は、燃料電池(SOFC)の作動温度での良好な導電性、作動温度での長時間にわたる良好な耐酸化性、電解質膜21(ジルコニア系セラミックス)に近い低熱膨張係数を有する。」 「【0043】 コート層31の材料(コート原料)としては、導電性セラミック原料と液状媒体との混合物を用いた。導電性セラミック原料は、ランタン酸化物系導電材料とガラス系結合材とからなる。 【0044】 具体的には、ランタン酸化物系導電材料として、LaXSr1-XMnOy(x=0.1~1,y=3~3.1)の組成式を有するものを用いた。より具体的には、LaXSr1-XMnO3(X=0.8)の組成式を有する粒子状の酸化物導電材料(La0.8Sr0.2MnO3)を用いた。このようなランタン酸化物系導電材料は、電子伝導性があり、安価で安定な材料である。高温の酸化雰囲気において安定であり、導電率の低下が抑制される。ガラス系結合材としては、バリウム酸化物(BaO)-ホウ素酸化物(B2O3)-シリコン酸化物(SiO2)系のものを用いた。このような結合材とランタン酸化物系導電材料とが混合するコート層31は低温焼成が容易である。更に、固体酸化物形燃料電池の作動温度領域においても、コート層31におけるガラス材料の過剰流動化が抑制されるため、酸化抑制コーティング層の保形性が確保され、ひいては酸化抑制コーティング層による酸素バリヤ性が確保される。 【0045】 また、ガラス系結合材としては、バリウム酸化物(BaO)-ホウ素酸化物(B2O3)-シリコン酸化物(SiO2)系のガラス材料(粒子状)を用いた。このガラス材料の基本組成は、質量比で、BaOが54.7%、B2O3が19.1%、SiO2が19.1%、Al2O3が4.9%である(ICP分析)。この結合材の熱膨張係数(50~350℃)は88~89[×10-7/℃]、DTA転移点は614~618℃であり、DTA軟化点は718~723℃であり、中心粒径(D50)は1.2~1.3μmであった。このガラス系結合材を用いる場合、固体酸化物形燃料電池の作動温度領域においても、コート層31におけるガラス材料の過剰流動化が抑制される。このためコート層31の保形性が確保され、ひいてはコート層31による酸素バリヤ性が確保され易い。」 「【0049】 (インターコネクタの製造方法) <成形工程> 先ず、インターコネクタ本体30の材料として、鉄-クロム系合金で形成された耐熱合金(ZMG232L;日立金属株式会社)で形成された金属板を準備した。この金属板の一方の面がアノード面36となり、他方の面がカソード面37となる。切削加工により、アノード面36に凹面状のアノードガス流通面75を形成し、カソード面37に凹面状のカソードガス流通面65を形成した。さらに、金属板の厚さ方向に貫通孔を形成した。この貫通孔はアノードガスマニホールド71、74およびカソードガスマニホールド61、64となる。アノード面36におけるアノードガスマニホールド71、74の開口面積は、アノード面36におけるカソードガスマニホールド61、64の開口面積よりも大きい。ここでいう開口面積とは、アノードガスマニホールド71、74およびカソードガスマニホールド61、64のなかでアノード面36に開口している部分の面積であり、インターコネクタ本体30の厚さ方向と略直交する平面上に形成される。なお、アノードガスマニホールド71、74およびカソードガスマニホールド61、64の開口断面積は、インターコネクタ本体30の厚さ方向に一定であっても良いし、一定でなくても良い。何れの場合にも、アノード面36における開口面積が上記の関係になっていれば良い。」 「【0051】 <接着工程> 成形工程で得たインターコネクタ本体30を2枚とり、図2に示すように、アノード面36を対面させた。アノードガス流通面75はアノード面36の一部であるため、このとき2枚のインターコネクタ本体30のアノードガス流通面75もまた対面した。さらにこのとき、一方のインターコネクタ本体30のアノードガスマニホールド71と他方のインターコネクタ本体30のカソードガスマニホールド61とが対面し、かつ、一方のインターコネクタ本体30のアノードガスマニホールド74と他方のインターコネクタ本体30のカソードガスマニホールド64とが対面するようにした。上述したように、アノード面36におけるアノードガスマニホールド71、74の開口面積は、アノード面36におけるカソードガスマニホールド61、64の開口面積よりも大きい。このため、図2に示すように、カソードガスマニホールド61がアノードガスマニホールド71の内周よりも内側に配置され、カソードガスマニホールド61はアノードガスマニホールド71に包囲された。また、カソードガスマニホールド64がアノードガスマニホールド74の内周よりも内側に配置され、カソードガスマニホールド64がアノードガスマニホールド74に包囲された。 【0052】 この2枚のインターコネクタ本体30のアノード面36に接着材90を塗布し、2枚のインターコネクタ本体30のアノード面36同士を接着した。なおこのとき、アノードガス流通面75におけるアノードガスマニホールド71、74の周縁部(図5中点線に示す位置)を充填材91で埋めた。この周縁部は、アノードガス流通面75のアノードガスマニホールド71、74との連結部に相当する。接着材は、アノード面36におけるアノードガス流通面75以外の部分(一般面36a)に塗布した。さらに、カソードガスマニホールド61、64の周縁部(周縁コート部61Yとなる部分)には塗布しなかった。接着材90は炭素と水素とを含む炭素水素系の接着剤であり、具体的にはアクリル系の接着材90である。実施形態1においては、充填材91として、接着剤90と同じものを用いた。接着材90はそのまま用いても良いし、樹脂や紙等の基材に接着材90が一体化されたテープ状またはシート状のものを用いても良い。接着材90はこれに限らず、後述する焼成工程で燃料し消失するものを用いれば良い。充填材91および基材に関しても同様である。なお、接着材、充填材、および基材はそれぞれ異なる材料からなっても良いし、同じ材料からなっても良い。 【0053】 <コート工程> 接着工程で接着した2枚のインターコネクタ本体30の表面に、導電性セラミック原料と液状媒体とを含むコート原料をコートした。 【0054】 先ず、上述した導電性セラミック原料と液状媒体とを混合して、コート原料を調製した。具体的には、ランタン酸化物系酸化物導電材料(La0.8Sr0.2MnO3;平均粒径0.3μm)と、粒子状のガラス系結合材とを、常温において質量比で94:6となるよう秤量し、有機溶剤(エタノール)に分散させた。この場合、コート層31を100%とするとき、質量比で、ガラス材料は6.0%に相当する。そして、コート原料にインターコネクタ本体30を所定時間(約20秒間)浸漬した後に取り出すことにより、このコート原料をインターコネクタ本体30の表面全体にコートした。」 「【0057】 <焼成工程> コート工程後、コート原料がコートされたインターコネクタ本体30を大気雰囲気で2時間焼成した。このときの焼成温度(加熱温度)は、800℃であり、接着材90および充填材91が燃焼する温度よりも高温であった。このため、コート工程において接着剤90および充填材91は焼失し、2枚のインターコネクタ3が得られた(図4)。」 「【図2】 [図:0001392028000002.jpg] 【図3】 [図:0001392028000003.jpg] 【図4】 [図:0001392028000004.jpg] 」 (3)-2 甲1記載の発明 上記(3)-1より、甲1(【0001】、【0045】、【0049】、【0052】~【0054】、【0057】)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「インターコネクタ本体30の材料として、鉄-クロム系合金で形成された耐熱合金(ZMG232L;日立金属株式会社)で形成された金属板を準備し、 2枚のインターコネクタ本体30のアノード面36に接着材90を塗布し、2枚のインターコネクタ本体30のアノード面36同士を接着し、 接着した2枚のインターコネクタ本体30の表面に、導電性セラミック原料と液状媒体とを含むコート原料をコートし、 コート原料がコートされたインターコネクタ本体30を大気雰囲気で2時間焼成し、このときの焼成温度(加熱温度)は、800℃であり、接着材90および充填材91が燃焼する温度よりも高温であり、 コート原料の調製は、ランタン酸化物系酸化物導電材料(La0.8Sr0.2MnO3;平均粒径0.3μm)と、粒子状のガラス系結合材とを、常温において質量比で94:6となるよう秤量し、有機溶剤(エタノール)に分散させることにより行い、 ガラス系結合材としては、バリウム酸化物(BaO)-ホウ素酸化物(B2O3)-シリコン酸化物(SiO2)系のガラス材料(粒子状)を用い、 このガラス材料の基本組成は、質量比で、BaOが54.7%、B2O3が19.1%、SiO2が19.1%、Al2O3が4.9%である(ICP分析)、固体酸化物形燃料電池のインターコネクタの製造方法。」 (3)-3 甲2の記載事項 甲2には、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ及びその形成方法に関し、より詳しくは、Crを含む耐熱合金材料を用いて構成された固体酸化物形燃料電池用インターコネクタのアノード側に面する表面に水蒸気酸化抑制層を有する固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ及びその水蒸気酸化抑制層の形成方法に関する。」 「【0043】 本発明におけるCrを含む耐熱合金材料としては、固体酸化物形燃料電池用インターコネクタとして使用されるCrを含む耐熱合金材料であれば何れも使用される。例えば下掲(1)~(3)のような材料が挙げられるが、これらに限定されない。これらはフェライト系耐熱合金として知られるものである。 (1)C:0.02%(mass%、以下同じ)、Mn:0.50%、Ni:0.26%、Cr:21.97%、Zr:0.22%、La:0.04%、Si:0.40%、Al:0.21%、Fe:バランス。 (2)C:0.03%、Mn:0.47%、Ni:0.26%、Cr:22.14%、Zr:0.20%、La:0.04%、Si:0.40%、Al:0.21%、Fe:バランス。 (3)C:0.02%、Mn:0.48%、Ni:0.33%、Cr:22.04%、Zr:0.20%、La:0.08%、Low Si、Low Al、Fe:バランス。」 「【0059】 〈(1)水蒸気酸化抑制層の形成材料スラリーの作製〉 水蒸気酸化抑制層の形成材料:MnCo2O4の油性スラリーを作製した。MnCo2O4の粉末(d50=1μm、比表面積=2.3m2/g)、LiNO3、有機バインダー、分散剤、エタノールを混合し、卓上ボールミルで10日間攪拌し、MnCo2O4の油性スラリーを作製した。」 「【0061】 〈(2)インターコネクタ材料への水蒸気酸化抑制層の形成材料スラリーの塗布〉 Crを含む耐熱合金材料〔日立金属(株)製、ZMG(登録商標)232L。組成:C=0.02%(mass%、以下同じ)、Mn=0.48%、Ni=0.33%、Cr=22.04%、Zr=0.20%、La=0.08%、Si=微量、Al=微量、Fe=バランス〕の板体を複数個用意した。各板体の表面寸法は1cm×1cm(=1cm2)である。 【0062】 それら各板体毎に、その表面に、前記〈(1)水蒸気酸化抑制層の形成材料スラリーの作製〉で作製した、MnCo2O4に対するLiNO3の添加割合を異にした油性スラリーをスクリーン印刷により塗布した。塗布後、溶媒であるエタノールを100℃前後にした恒温槽により乾燥した。こうして、各板体毎にそれぞれ、MnCo2O4に対するLiNO3の添加割合が異なるスラリーを塗膜、乾燥した各サンプルを作製した。 【0063】 〈(3)還元処理〉 〈(2)インターコネクタ材料への水蒸気酸化抑制層の形成材料スラリーの塗布〉で得た各サンプルを電気炉中、水素を含む窒素雰囲気〔N296%に対してH24%(容量%)を含む雰囲気〕において、800℃で20時間還元処理した。この処理でLiNO3はLiに還元される。LiNO3中のLi+は1価であるのでLiNO3としてのモル%はLiでも同じである。 【0064】 〈(4)酸化処理=焼成処理〉 〈(3)還元処理〉後の各サンプルを電気炉中で、空気雰囲気において、800℃で12~24時間の範囲の各時間で酸化処理した。 【0065】 〈作製した各サンプルのSEMによる観察〉 以上(1)~(4)の工程で作製したサンプルについて、その表面及び断面をSEM(走査電子顕微鏡)により観察した。その結果、各板体の表面に緻密なMnCr酸化物の層が形成され、MnCr酸化物層の上に緻密なMnCo2O4の層が形成されていることが観察された。これらの二層は、MnCo2O4が前記(3)~(4)の還元、酸化工程を経て形成されたものである。そのうちMnCo2O4層は、還元処理により一度MnOとCoへ変化し、これに続く酸化工程によりMnCo2O4へ変化したもので、このように変化する過程でMnCr酸化物層上に緻密に成膜されている。」 (3)-4 甲2記載の発明 上記(3)-3により、甲2(【0001】、【0059】、【0061】、【0062】、【0064】)には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「MnCo2O4の粉末(d50=1μm、比表面積=2.3m2/g)、LiNO3、有機バインダー、分散剤、エタノールを混合し、卓上ボールミルで10日間攪拌し、MnCo2O4の油性スラリーを作製し、 Crを含む耐熱合金材料〔日立金属(株)製、ZMG(登録商標)232L。組成:C=0.02%(mass%、以下同じ)、Mn=0.48%、Ni=0.33%、Cr=22.04%、Zr=0.20%、La=0.08%、Si=微量、Al=微量、Fe=バランス〕の板体を複数個用意し、 上記各板体毎に、その表面に、上記油性スラリーをスクリーン印刷により塗布し、 上記各板体を電気炉中、水素を含む窒素雰囲気〔N296%に対してH24%(容量%)を含む雰囲気〕において、800℃で20時間還元処理し、 上記各板体を電気炉中で、空気雰囲気において、800℃で12~24時間の範囲の各時間で酸化処理した、固体酸化物形燃料電池用インターコネクタの形成方法。」 (3)-5 甲3の記載事項 甲3には、次の記載がある。 「【0002】 固体酸化物形燃料電池(SOFC)を含む、いくつかの異なる種類の燃料電池が開発中である。固体酸化物形燃料電池は、典型的には、600~1000℃の範囲の温度で動作する。個々のセルは、電気的相互接続として知られる装置により互いに直列に電気的に接続されて、許容電圧を発生させるマルチセルスタックユニットを形成する。相互接続材料は、燃料電池の高温酸化動作条件下で、物理的及び化学的に安定で、導電性でなければならない。」 「【0011】 本発明によると、16~30wt%の間、好ましくは20~28wt%の間の十分なCr濃度を有するクロミア形成合金が、相互接続基材として提供される。或いは、酸化物分散強化型(ODS)合金又はプレーンCr基合金を、相互接続基材として使用することができる。しかしながら、このような合金は、不良な酸化挙動、酸化物スケール破砕及びより重要なことには酸化物スケールからのCr蒸発に悩まされる。 【0012】 したがって、限定するものではないが、AISI 4XXシリーズ、クロフェックス(Crofex)(登録商標)22 APU、クロフェー(Crofer)(登録商標)22H、ZMG232及びZMG232Lなどのステンレス鋼、ハイネス(Haynes)(登録商標)230(登録商標)(22wt%のCrを含む)などのNi超合金、ハイネス(登録商標)188(登録商標)(22wt%のCrを含む)などのCo超合金又はデュラロイ(Duralloy)などのCr基合金を含むクロミア形成合金が、相互接続基材として好ましい。」 「【0058】 ・・・(略)・・・ 【表4】 [図:0001392028000005.jpg] 【0059】 ・・・(略)・・・ (表5) [図:0001392028000006.jpg] 」 (3)-6 甲1発明を主たる引例とした場合 ア 本件発明1と甲1発明とを比較すると、甲1発明の「固体酸化物形燃料電池のインターコネクタ」は、本件発明1の「固体酸化物形燃料電池用セルに用いられるセル間接続部材」に相当するから、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも次の点で相違する。 (相違点1) 本件発明1は、「セル間接続部材の基材」の「主材料のステンレス合金がTiを含有」するのに対し、甲1発明は、「インターコネクタ本体30の材料」が、「鉄-クロム系合金で形成された耐熱合金(ZMG232L;日立金属株式会社)」である点。 イ 以下、上記相違点1について検討する。 ウ 甲3の【0058】の【表4】に記載されているとおり、甲1発明の「ZMG232L」は、チタンを含有するものではない。 エ 一方、甲3には、固体酸化物系燃料電池における相互接続基材(甲1発明の「固体酸化物形燃料電池のインターコネクタ」に相当。)として好ましいものとして、「ZMG232L」及び「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」が記載されており(【0012】)、さらに、「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」はチタンを含有することが記載されている(【0059】)。 オ したがって、甲1発明において、「ZMG232L」に代えて、「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」を採用すれば、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることができる。 カ しかしながら、甲1には、「実施形態1において、インターコネクタ本体30の材料としては、鉄-クロム系合金で形成された耐熱合金(ZMG232L、日立金属株式会社)を用いた。この耐熱合金は、鉄およびクロムを主要成分とするフェライト系ステンレス鋼である。この耐熱合金は、燃料電池(SOFC)の作動温度での良好な導電性、作動温度での長時間にわたる良好な耐酸化性、電解質膜21(ジルコニア系セラミックス)に近い低熱膨張係数を有する」(【0041】)と、「ZMG232L」は利点が多いインターコネクタ本体の材料であること記載されている。 キ そうすると、甲1発明において、「ZMG232L」に代えて、「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」を採用する動機がない。 ク また、仮に、甲1発明において、「ZMG232L」に代えて、「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」を採用する動機があったとしても、「基材から酸化皮膜へのTiの移動が促進され、酸化被膜の電子導電性が向上」することにより、「セル間接続部材の電気抵抗値を低く抑えることができる」(以上、本件明細書【0016】)という本件発明の効果を推測することは困難である。 ケ したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 コ よって、本件発明1は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 サ また、請求項2~6はいずれも請求項1を引用するものであって、本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2~6と甲1発明とは、少なくとも、上記相違点1で相違する。 シ そうすると、上記イ~コで検討した理由と同様の理由により、本件発明2~6は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)-7 甲2発明を主たる引例とした場合 ア 本件発明1と甲2発明とを比較すると、甲2発明の「固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ」の「板体」は、本件発明1の「固体酸化物形燃料電池用セルに用いられるセル間接続部材」の「基材」に相当するから、本件発明1と甲2発明とは、少なくとも次の点で相違する。 (相違点2) 本件発明1は、「セル間接続部材の基材」の「主材料のステンレス合金がTiを含有」するのに対し、甲2発明は、「固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ」の「板体」が、「Crを含む耐熱合金材料〔日立金属(株)製、ZMG(登録商標)232L。組成:C=0.02%(mass%、以下同じ)、Mn=0.48%、Ni=0.33%、Cr=22.04%、Zr=0.20%、La=0.08%、Si=微量、Al=微量、Fe=バランス〕」である点。 イ 以下、上記相違点2について検討する。 ウ 甲3の【0058】の【表4】に記載されているとおり、甲2発明の「ZMG232L」は、チタンを含有するものではない。 エ 一方、甲3には、固体酸化物系燃料電池における相互接続基材(甲2発明の「固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ」に相当。)として好ましいものとして、「ZMG232L」及び「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」が記載されており(【0012】)、さらに、「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」はチタン及びクロムを含有することが記載されている(【0059】)。 オ したがって、甲2発明において、「ZMG232L」に代えて、「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」を採用できれば、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることができる。 カ しかしながら、甲2発明には、クロムを含有するステンレス合金として、「ZMG232L」に代えて、「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」を採用する動機がない。 キ そして、仮に、甲2発明において、「クロフェー(Crofer)(登録商標)22H」を採用することが可能であったとしても、当該採用により、「基材から酸化皮膜へのTiの移動が促進され、酸化被膜の電子導電性が向上」することにより、「セル間接続部材の電気抵抗値を低く抑えることができる」(以上、本件明細書【0016】)という本件発明の効果を推測することは困難である。 ク したがって、甲2発明において、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 この点は、甲12を参酌しても変わらない。 ケ よって、本件発明1は、甲2発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 コ また、請求項2~6はいずれも請求項1を引用するものであって、本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2~6と甲1発明とは、少なくとも、上記相違点2で相違する。 サ そうすると、上記イ~ケで検討した理由と同様の理由により、本件発明2~6は、甲2発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 むすび 以上のとおり、本件の請求項1~6に係る特許は、令和4年4月11日付けで通知された取消理由に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701092

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