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特許異議申立

2024-700829

放射冷却装置及び冷却方法

審判番号
2024-700829
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-058631
登録番号
7442366
請求日
2024年09月03日
審決日
2025年11月18日
公報発行日
2026年02月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大阪瓦斯株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人R&C
  • 【異議申立人】弁理士法人 鷲田国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 八木 誠
  • 審判官 金丸 治之
分類
P1652.537-YAA(B32B) / P1652.121-YAA(B32B) / P1652.851-YAA(B32B) / P1652.853-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7442366号発明「放射冷却装置及び冷却方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7442366号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~20〕について訂正することを認める。 特許第7442366号の請求項1~5、7、13、14、16、20に係る特許を維持する。 特許第7442366号の請求項11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7442366号の請求項1~20に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年3月27日に出願され、令和6年2月22日にその特許権の設定登録がされ、同年3月4日に特許掲載公報が発行された。 本件特許についての特許異議申立人弁理士法人鷲田国際特許事務所(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年 9月 3日 特許異議の申立て 同年11月12日付け 取消理由通知 令和7年 1月15日 特許権者より意見書・訂正請求書の提出 同年 1月30日 特許権者より訂正請求書についての手続補正書(方式)の提出 なお、訂正請求があった旨の通知に対し、その指定期間内に申立人からの意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年1月15日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(10)のとおりである。下線は、訂正箇所を示すため、当審で付与したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を「放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置する光反射層と、着色部位と、を備え、前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層であり、前記着色部位が、可視光領域において蛍光を呈する蛍光体を含有し、前記着色部位が、前記赤外放射層における前記放射面の存在側と同じ側に位置する放射冷却装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~20も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項12に「請求項1から11のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」とあるのを、「請求項1から10のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項13に「請求項1から12のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」とあるのを、「請求項1から10、12のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項14に「請求項1から13のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」とあるのを、「請求項1から10、12、13のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項16に「請求項1から13のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」とあるのを、「請求項1から10、12、13のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項18に「請求項1から17のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」とあるのを、「請求項1から10、12~17のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項20に「請求項1から19のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」とあるのを、「請求項1から10、12~19のいずれか1項に記載の放射冷却装置。」に訂正する。 (9)訂正事項9 願書に添付した明細書の段落【0011】に「本発明の放射冷却装置の特徴構成は、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置する光反射層と、着色部位と、を備え、前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層であり、前記着色部位が、可視光領域において蛍光を呈する蛍光体を含有する点にある。」とあるのを、「本発明の放射冷却装置の特徴構成は、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置する光反射層と、着色部位と、を備え、前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層であり、前記着色部位が、可視光領域において蛍光を呈する蛍光体を含有し、前記着色部位が、前記赤外放射層における前記放射面の存在側と同じ側に位置する点にある。」に訂正する。 (10)訂正事項10 願書に添付した明細書の段落【0046】及び段落【0047】を削除する。 (11)一群の請求項 本件訂正前の請求項1~20は、請求項2~20が、本件訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~20〕について請求されたものである。 また、明細書に係る訂正(訂正事項9、10)は、一群の請求項〔1~20〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否等 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「着色部位」との事項に、「前記赤外放射層における前記放射面の存在側と同じ側に位置する」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の請求項11に基づくことは明らかであるから、新規事項を追加するものではない。 そして、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 また、訂正事項1は、請求項1とともに、請求項1を引用する請求項2~20も訂正するものであるところ、そのうち、請求項6、8~10、12、15、17~19は、本件特許異議の申立ての対象になっていないが、後述のとおり、訂正後の請求項71に係る発明を取り消すべき理由がないから、請求項1を引用する請求項6、8~10、12、15、17~19に係る発明について、新たな取消理由を生じるものでないのは明らかである。よって、訂正事項1による訂正後の請求項6、8~10、12、15、17~19に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであると認められる。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (3)訂正事項3~8について 訂正事項3~8は、請求項11を削除するのに伴って、引用する請求項から請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (4)訂正事項9について 訂正事項9は、訂正事項1による請求項1の訂正に合わせて、明細書の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、上記(1)で説示したように、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (5)訂正事項10について 訂正事項10は、訂正事項1による請求項1の訂正に合わせて、明細書の記載の一部を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 3 小括 以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~20〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の請求項1~10、12~20に係る発明(以下「本件発明1」等ともいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10、12~20に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。 「【請求項1】 放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、 当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置する光反射層と、 着色部位と、を備え、 前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層であり、 前記着色部位が、可視光領域において蛍光を呈する蛍光体を含有し、 前記着色部位が、前記赤外放射層における前記放射面の存在側と同じ側に位置する放射冷却装置。 【請求項2】 前記蛍光体が、波長が250nm以上800nm以下の領域に励起ピークを有する請求項1に記載の放射冷却装置。 【請求項3】 前記蛍光体が、波長が350nm以上850nm以下の領域に発光ピークを有する請求項1又は2に記載の放射冷却装置。 【請求項4】 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料は、炭素-フッ素結合、シロキサン結合、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エーテル結合、エステル結合、ベンゼン環のいずれかを1つ以上有する樹脂材料から選択される請求項1から3のいずれか1項に記載の放射冷却装置。 【請求項5】 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル樹脂、主成分をシロキサンとする樹脂、フッ素樹脂、シリコーンゴム、及びシリコーン樹脂のうち少なくとも一つを含む請求項1から4のいずれか1項に記載の放射冷却装置。 【請求項6】 前記光反射層が、銀又は銀合金で構成されている請求項1から5のいずれか1項に記載の放射冷却装置。 【請求項7】 前記樹脂材料層と前記光反射層との間に位置する保護層を備え、 前記保護層が、ポリオレフィン系樹脂、エチレンテレフタラート樹脂、又はアクリル樹脂で構成されている請求項1から6のいずれか1項に記載の放射冷却装置。 【請求項8】 前記保護層と前記樹脂材料層とを接合する接合層を備え、 前記接合層が、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、又はエチレン酢酸ビニル系樹脂で構成されている請求項7に記載の放射冷却装置。 【請求項9】 前記着色部位は、前記接合層における一部の部位又は前記接合層の全体である請求項8に記載の放射冷却装置。 【請求項10】 前記着色部位は、前記接合層と前記保護層との間に設けられた層状の部位、又は、前記接合層と前記樹脂材料層との間に設けられた層状の部位である請求項8又は9に記載の放射冷却装置。」 「【請求項12】 前記着色部位が、前記赤外放射層における一部の部位又は前記赤外放射層の全体である請求項1から10のいずれか1項に記載の放射冷却装置。 【請求項13】 前記蛍光体が、ストークス蛍光体である請求項1から10、12のいずれか1項に記載の放射冷却装置。 【請求項14】 前記蛍光体の量子収率が0.5以上である請求項1から10、12、13のいずれか1項に記載の放射冷却装置。 【請求項15】 前記着色部位に含有される前記蛍光体の総量を前記放射面の全体の面積で除した値を蛍光体含有量とし、 量子収率が0.5以上である蛍光体について、励起による吸収スペクトルにおいて光吸収率が100%となる波長領域が存在しないように、当該蛍光体の前記蛍光体含有量が調整されている請求項14に記載の放射冷却装置。 【請求項16】 前記蛍光体の量子収率が0.75以上である請求項1から10、12、13のいずれか1項に記載の放射冷却装置。 【請求項17】 前記着色部位に含有される前記蛍光体の総量を前記放射面の全体の面積で除した値を蛍光体含有量とし、 量子収率が0.75以上である蛍光体について、励起による吸収スペクトルにおいて光吸収率が100%となる波長領域の幅が50nm以下となるように、当該蛍光体の前記蛍光体含有量が調整されている請求項16に記載の放射冷却装置。 【請求項18】 前記赤外放射層に対して前記光反射層の存在側と反対側の最も外側に位置するハードコート層を備える請求項1から10、12~17のいずれか1項に記載の放射冷却装置。 【請求項19】 前記ハードコート層が、アクリル系樹脂で構成されている請求項18に記載の放射冷却装置。 【請求項20】 請求項1から10、12~19のいずれか1項に記載の放射冷却装置を用いる冷却方法であって、 前記赤外放射層の前記放射面が空に向く状態で前記放射冷却装置を配置する工程と、 当該放射面から赤外光を放射させる工程と、を含む冷却方法。」 第4 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~5、7、11、13、14、16、20に係る特許について、当審で通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 [取消理由1](サポート要件) 本件特許の下記請求項に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、下記請求項に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。 記 ・取消理由 1 ・請求項 1~5、7、13、14、16、20 1 取消理由1(サポート要件) 請求項1には、「放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置する光反射層と、着色部位と、を備え」と記載され、該記載では、着色部位の位置が特定されておらず、例えば、着色部位が光反射層に対して赤外放射層の反対側にあるものも含まれるが、着色部位が光反射層に対して赤外放射層の反対側にある場合には、光反射層の反射面で反射し、赤外放射層の放射面から放射される光が着色部位を通らず、着色されないことから、「放射面が着色されている状態となる放射冷却装置を低コストで提供する点にある」という本件明細書(【0010】)に記載の発明が解決しようとする課題を解決できないことは明らかである。 したがって、本件特許の請求項1、同項を直接又は間接的に引用する請求項2~5、7、請求項1を直接引用する請求項13、14、16、20、及び、請求項1を間接的に引用し、請求項11を直接的にも間接的にも引用しない請求項13、14、16、20に係る発明は、当業者が前記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められない。 第5 取消理由についての判断 本件訂正により、請求項1において、「前記着色部位が、前記赤外放射層における前記放射面の存在側と同じ側に位置する」との事項が追加され、同項の「放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置する光反射層」との事項も参酌すると、同項に係る発明は、着色部位、赤外放射層の放射面、赤外放射層(本体)、赤外放射層の放射面の反対側の面、光反射層という順で構成されるものであり、赤外放射層の放射面から放射される光は着色部位を通って着色されるから、「放射面が着色されている状態となる放射冷却装置を低コストで提供する点にある」という本件明細書(【0010】)に記載の発明が解決しようとする課題を、当業者であれば、解決できると認識できるのは明らかであるから、発明の詳細に記載されたものであると認められる。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~5、7、13、14、16、20に係る発明も同様である。 したがって、取消理由1は解消された。 第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の内容 申立人は、甲第1~8号証(以下「甲1」~「甲8」という。)を提出し、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1~5、7、11、13、14、16、20に係る発明(以下「本件訂正前発明1」等という。)について、以下の(1)及び(2)を主張する。 甲1:国際公開第2020/022156号 甲2:Sachhidananda Shivannaら、「Orange-red fluorescent polymer nanocomposite films with large stokes shift」、Journal of Luminescence、2019年1月5日公開、p.488-494 甲3:Samira Garshasbiら、「Using advanced thermochromic technologies in the built environment」、Solar Energy Materials and Solar Cells、2019年3月公開、p.21-32 甲4:欧州特許第3397699号明細書 甲5:Chunxiang Shengら、「Colored Radiative Cooler under Optical Tamm Resonance」、ACS Photonics、2019年9月11日公開、p.2545 甲6:米国特許出願公開第2017/0248381号明細書 甲7:YAO ZHAI、「SCALABLE MANUFACTURED RANDOM METAMATERIAL FOR SUB-AMBIENT DAY-TIME RADIATIVE COOLING」、University of Colorado、2018年、p.47 甲8:Yao Zhaiら、「Scalable-manufactured randomized glass-polymer hybrid metamaterial for daytime radiative cooling」、Science 355、2017年2月9日公開、p.1-4 (1)特許異議申立理由1(進歩性) 本件訂正前発明1~5、7、11、13、14、16、20は、甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された事項、又は、甲4に記載された発明及び甲1~3、5~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)特許異議申立理由2(明確性要件) 本件訂正前発明14、16は明確ではない。 2 引用文献の記載事項等 (1)甲1について ア 記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与。「・・・」は省略を表す。以下同様。)。 「発明が解決しようとする課題 ・・・ [0009] しかしながら、意匠性を向上するため、赤外放射層の放射面の存在側から放射冷却装置を見たときに、ブルー、ピンク等、種々の色に着色されていることが望まれるものであった。 つまり、放射冷却装置は、例えば、家屋の屋根や自動車の屋根等に設置して使用することが想定されるが、そのような場合において、赤外放射層の放射面の存在側から放射冷却装置を見たときの色を、周囲の色と調和する色にする等の目的のために、赤外放射層の放射面の存在側から放射冷却装置を見たときに着色されていることが望まれる場合がある。 尚、以下の記載においては、赤外放射層の放射面の存在側から放射冷却装置を見たときに着色されていることを、放射面が着色されている状態と略称する。 [0010] 本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、太陽光の吸収による放射冷却性能の低下を極力回避しながら、放射面が着色されている状態となる放射冷却装置を提供する点にある。」 「課題を解決するための手段 [0011] 本発明の放射冷却装置は、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とが積層状態で設けられたものであって、その特徴構成は、 前記光反射層が、厚さが10nm以上100nm以下の範囲の銀あるいは銀合金からなる第1金属層、透明誘電体層、及び、前記第1金属層及び前記透明誘電体層を透過した光を反射する第2金属層の順に前記赤外放射層に近い側に位置させる形態で、前記第1金属層、前記透明誘電体層及び前記第2金属層を積層した状態に構成され、 前記透明誘電体層の厚さが、前記光反射層の共鳴波長を400nm以上800nm以下の波長のうちのいずれかの波長とする厚さに設定されている点にある。 [0012] すなわち、銀あるいは銀合金からなる第1金属層の厚さを、10nm以上100nm以下の範囲とすることにより、光学的な制御(共鳴波長の共鳴)を適切に行いながらも、可視光を適切に透過させることができる。 つまり、銀あるいは銀合金は、薄くなるほど太陽光を透過する透過率が高くなり、これに反して、反射率が低下するものであるから、第1金属層の厚さを、100nmよりも厚くすると、赤外放射層を透過した可視光を適切に透過できなくなって、共鳴波長の共鳴を利用した光の吸収による放射面の着色を行えないものとなり、又、第1金属層の厚さを、10nmよりも薄くすると、光を適切に反射できないため、光学的な制御(共鳴波長の共鳴)を適切に行えないものとなって、共鳴波長の共鳴を利用した光の吸収による放射面の着色を行えないものとなる。 [0013] そして、第1金属層を透過した可視光は、基本的には、透明誘電体層を透過して第2金属層にて反射されて、再び、赤外放射層の放射面から大気中に放出されることになるが、透明誘電体層の厚さが、光反射層の共鳴波長を400nm以上800nm以下の波長のうちのいずれかの波長を共鳴波長とする厚さであるため、第1金属層を透過した可視光(つまり、400nm以上800nm以下の波長の光)のうちのいずれかの共鳴波長を中心とする狭帯域の光が、光学的な制御(共鳴波長の共鳴)により、光反射層に吸収されることになる。 つまり、第1金属層を透過して透明誘電体層に到達した可視光のうちの共鳴波長を中心とする狭帯域の光が、第1金属層と第2金属層との間で繰り返し反射されながら、第1金属層や第2金属層に吸収されることになる。 [0014] その結果、光反射層にて反射されて、赤外放射層の放射面から大気中に放出される可視光は、光反射層に吸収された狭帯域の光を含まないものとなるため、赤外放射層の放射面の存在側から放射冷却装置を見ると、着色されている状態となる。 そして、透明誘電体層の厚さを変化させることにより、400nm以上800nm以下の波長のうちの共鳴波長とする波長を変化させて、赤外放射層の放射面の存在側から放射冷却装置を見たときの色を変化させることができる(図27参照)。」 「[0055] 以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。 〔放射冷却装置の基本構成〕 図1に示すように、放射冷却装置CPの基本構成は、放射面Hから赤外光IRを放射する赤外放射層Aと、当該赤外放射層Aにおける放射面Hの存在側とは反対側に位置させる光反射層Bとが積層状態に設けられている構成である。 [0056] 光反射層Bが、第1金属層B1、透明誘電体層B2、及び、第1金属層B1及び透明誘電体層B2を透過した光を反射する第2金属層B3の順に赤外放射層Aに近い側に位置させる形態で、第1金属層B1、透明誘電体層B2及び第2金属層B3を積層した状態に構成されている。 そして、透明誘電体層B2の厚さが、光反射層Bの共鳴波長を400nm以上800nm以下の波長のうちのいずれかの波長とするための厚さ(30nm以上230nm以下)に設定されている。 [0057] 赤外放射層Aは、太陽光のエネルギーの強度が大きい400nm以上1800nm以下の波長(図26参照)についての透過率が高く(例えば、95%以上)、8μm以上14μm以下の波長範囲で大きな熱輻射を生じる材料がよい。 その具体例としては、無アルカリガラス、クラウンガラス、ホウケイ酸ガラスのうちのいずれかのガラス(白板ガラス)を挙げることができ、その他、オレフィン系樹脂、PET系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の樹脂を挙げることができる。 [0058] ちなみに、無アルカリガラスとしては、例えば、OA10G(日本電気硝子製)を用いることができ、クラウンガラスとしては、例えば、B270(登録商標、以下同じ)を用いることができ、ホウケイ酸ガラスとしては、例えば、テンパックス(登録商標、以下同じ)を用いることができる。 [0059] 以下の記載においては、赤外放射層Aが「テンパックス」にて形成されているとして説明する。 ちなみに、赤外放射層Aを構成するテンパックスの厚さは、10μm以上で10cm以下である必要があり、好ましくは、20μm以上で10cm以下、より好ましくは、100μm以上で1cm以下が良い。 つまり、赤外放射層Aを、8μm以上14μm以下の赤外域で大きな熱輻射を示し、当該熱輻射が、赤外放射層A及び光反射層Bの夫々にて吸収されるAM1.5Gの太陽光及び大気の熱輻射よりも大きくなるようにすることにより、昼夜を問わず周囲の大気よりも温度が低下する放射冷却作用を発揮する放射冷却装置CPを構成することができる。 そして、そのようにするにあたり、赤外放射層Aをテンパックスにて構成する場合には、厚さを10μm以上で10cm以下にする必要があり、好ましくは、20μm以上で10cm以下、より好ましくは、100μm以上で1cm以下が良い。 本実施形態においては、テンパックスの厚さが1mmであるとする。 [0060] 第1金属層B1が、厚さが10nm以上100nm以下の範囲の銀あるいは銀合金から構成されている。・・・」 「[0069] また、透明誘電体層B2の厚さは、放射面Hが着色されている状態、つまり、赤外放射層Aの放射面Hの存在側から放射冷却装置CPを見たときに着色されている状態とするために、光反射層Bの共鳴波長を400nm以上800nm以下の波長のうちのいずれかの波長とする厚さであり、その詳細は後述する。・・・」 イ 認定事項 [0057]では、赤外放射層Aは、8μm以上14μm以下の波長範囲で大きな熱輻射を生じる材料がよく、その具体例として、ガラスや樹脂にすることが示されており、[0058]及び[0059]では、赤外放射層Aをガラスの一種である「テンパックス」で形成する場合について、赤外放射層Aの厚さを10μm以上で10cm以下として、8μm以上14μm以下の赤外域で、赤外放射層Aからの熱輻射が、吸収される太陽光及び大気の熱輻射よりも大きくなるようにすることで、昼夜を問わず周囲の大気よりも温度が低下する放射冷却作用を発揮する放射冷却装置CPを構成することができることが示されており、赤外放射層Aを樹脂で形成する場合も、赤外放射層Aの厚さを調整して、昼夜を問わず周囲の大気よりも温度が低下する放射冷却作用を発揮するようにすることは、明らかであるから、[0057]~[0059]の記載によれば、赤外放射層Aは、樹脂で構成され、8μm以上14μm以下の赤外域で、赤外放射層Aからの熱輻射が、吸収される太陽光及び大気の熱輻射よりも大きくなるような厚さに調整されたものであることが認められる。 ウ 甲1発明 上記ア(特に、[0055]、[0056]、[0060]、[0069]参照。)及びイを総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「放射面Hから赤外光IRを放射する赤外放射層Aと、 当該赤外放射層Aにおける放射面Hの存在側とは反対側に位置させる光反射層Bとが設けられ、 赤外放射層Aは、8μm以上14μm以下の赤外域で、赤外放射層Aからの熱輻射が、吸収される太陽光及び大気の熱輻射よりも大きくなるような厚さに調整された樹脂で構成され、 光反射層Bは、第1金属層B1、透明誘電体層B2、及び、第2金属層B3の順に赤外放射層Aに近い側に位置させる形態で構成され、 第1金属層B1は、厚さが10nm以上100nm以下の範囲の銀あるいは銀合金から構成され、 透明誘電体層B2は、光反射層Bの共鳴波長を400nm以上800nm以下の波長のうちのいずれかの波長とする厚さである放射冷却装置CP。」 (2)甲4について ア 記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている(当審訳を記載する。)。 「[0019] 前述したように、本発明のコーティング組成物は、少なくとも 1 つのIR蛍光顔料または染料を含む。本明細書で使用する場合、「IR蛍光顔料または染料」という用語は、電磁スペクトルのIR領域(700nm~1mm)で蛍光を発する顔料または染料を指す。 IR蛍光顔料または染料は、電磁スペクトルのNIR領域(700~2500nm)で蛍光を発することもある。 IR蛍光顔料または染料は、有機または無機の顔料または染料であってもよい。IR蛍光顔料または染料は、より高いエネルギー波長で励起されると、より低いエネルギー波長で蛍光を発する。例えば、IR蛍光顔料または染料は、300~700nmの領域(比較的高いエネルギー波長)の放射線によって励起されると、 700~1500nmの領域(比較的低いエネルギー波長)で蛍光を発する。」 「請求項 1.コーティング組成物であって フィルム形成樹脂、赤外反射顔料;および 赤外反射顔料とは異なる赤外蛍光顔料または染料を備える コーティング組成物。 ・・・ 7.多層コーティングであって 硬化した赤外反射コーティング組成物を含む第1のコーティング層;および 前記第1のコーティング層の少なくとも一部を覆う第2のコーティング層であって、 該第2のコーティング層は、請求項1から6のいずれかに記載の硬化したコーティング組成物 を含む 、第2のコーティング層。」 イ 甲4発明 上記アを総合すると、甲4には次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 「硬化した赤外反射コーティング組成物を含む第1のコーティング層と、 前記第1のコーティング層の少なくとも一部を覆う第2のコーティング層を備え、 前記第2のコーティング層は、フィルム形成樹脂、赤外反射顔料、及び、赤外反射顔料とは異なる赤外蛍光顔料又は染料を備えるコーティング組成物を含み、 前記赤外蛍光顔料又は染料は、700~1500nmの領域で蛍光を発する、多層コーティング。」 3 特許異議申立理由についての判断 (1)特許異議申立理由1(進歩性)について ア 甲1発明を主引用発明とする場合 (ア)本件発明1について a 対比 (a)本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「放射面H」は前者の「放射面」に相当し、以下同様に、「赤外光IR」は「赤外光」に、「赤外放射層A」は「赤外放射層」に、「光反射層B」は「光反射層」に、「設けられ」ることは「備え」ることに、「8μm以上14μm以下の赤外域」は「波長8μmから波長14μmの帯域」に、「熱輻射」は「熱輻射エネルギー」に、「吸収される太陽光」は「吸収した太陽光エネルギー」に、「厚さ」は「厚み」に、「放射冷却装置CP」は「放射冷却装置」に、それぞれ相当する。 (b)上記(a)を踏まえると、後者の「放射面Hから赤外光IRを放射する赤外放射層A」は、前者の「放射面から赤外光を放射する赤外放射層」に相当し、以下同様に、「当該赤外放射層Aにおける放射面Hの存在側とは反対側に位置させる光反射層B」は「当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置する光反射層」に、「赤外放射層Aは、8μm以上14μm以下の赤外域で、赤外放射層Aからの熱輻射が、吸収される太陽光及び大気の熱輻射よりも大きくなるような厚さに調整された樹脂で構成され」ることは「前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層であ」ることに、それぞれ相当する。 (c)また、後者の「光反射層Bは、第1金属層B1、透明誘電体層B2、及び、第2金属層B3の順に赤外放射層Aに近い側に位置させる形態で構成され、第1金属層B1は、厚さが10nm以上100nm以下の範囲の銀あるいは銀合金から構成され、透明誘電体層B2は、光反射層Bの共鳴波長を400nm以上800nm以下の波長のうちのいずれかの波長とする厚さである」ことは、甲1の[0011]~[0014]等の記載により、放射面Hが着色されている状態にする構成であることを勘案すると、前者の「着色部位」及び「前記着色部位が、可視光領域において蛍光を呈する蛍光体を含有し、前記着色部位が、前記赤外放射層における前記放射面の存在側と同じ側に位置する」ことと、「放射面が着色されている状態にする手段」という点で共通する。 そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、 当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置する光反射層と、 放射面が着色されている状態にする手段と、を備え、 前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層である放射冷却装置。」 <相違点1> 放射面が着色されている状態にする手段について、本件発明1では、「着色部位」を備え、「前記着色部位が、可視光領域において蛍光を呈する蛍光体を含有し、前記着色部位が、前記赤外放射層における前記放射面の存在側と同じ側に位置する」のに対し、 甲1発明では、光反射層Bは、第1金属層B1、透明誘電体層B2、及び、第2金属層B3の順に赤外放射層Aに近い側に位置させる形態で構成され、第1金属層B1は、厚さが10nm以上100nm以下の範囲の銀あるいは銀合金から構成され、透明誘電体層B2は、光反射層Bの共鳴波長を400nm以上800nm以下の波長のうちのいずれかの波長とする厚さである点。 b 相違点についての判断 放射面が着色されている状態にする手段として、着色部位を備え、前記着色部位が、可視光領域において蛍光を呈する蛍光体を含有し、前記着色部位は、赤外放射層における放射面の存在側と同じ側に位置するという、相違点1に係る本件発明1の構成について、甲1だけでなく、甲2~8にも、記載も示唆も見いだせないから、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 c 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書(32~35ページ等参照)において、「可視光領域において蛍光を呈する蛍光体を含有する」「着色部位」は、甲2、4に示されるように周知であり、甲4には、蛍光体と反射層を積層することについても示されていること等も勘案すると、本件訂正前発明1は、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。 しかしながら、申立人が本件発明1の「可視光領域において蛍光を呈する蛍光体」に相当するとする、甲4に記載の「IR蛍光顔料または染料」及び「赤外蛍光顔料または染料」は、甲4の[0019]の記載等から、可視光領域ではなく、赤外領域で蛍光するものであるから、本件発明1の「可視光領域において蛍光を呈する蛍光体」には相当しないこと、甲2、4に記載されたものは、甲1発明と属する技術分野が同一とは認められないこと、そして、相違点1に係る本件発明1の構成、特に、「前記着色部位が、前記赤外放射層における前記放射面の存在側と同じ側に位置する」点について、甲1~5だけでなく、甲6~8にも、記載も示唆も見いだせないこと等から、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用することはできない。 d 小括 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 (イ)本件発明2~5、7、13、14、16、20について 本件発明2~5、7、13、14、16、20は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(ア)bで説示したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 イ 甲4発明を主引用発明とする場合 (ア)本件発明1について 本件発明1と甲4発明とを対比すると、両者には、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点1’> 放射面が着色されている状態にする手段について、本件発明1では、「着色部位」を備え、「前記着色部位が、可視光領域において蛍光を呈する蛍光体を含有し、前記着色部位が、前記赤外放射層における前記放射面の存在側と同じ側に位置する」のに対し、 甲4発明では、前記第2のコーティング層は、フィルム形成樹脂、赤外反射顔料、及び、赤外反射顔料とは異なる赤外蛍光顔料又は染料を備えるコーティング組成物を含む点。 ここで、相違点1’について検討すると、相違点1’は実質的に相違点1と同等であり、上記ア(ア)bで説示したように、相違点1’に係る本件発明1の構成についても、甲1~3、5~8には、記載も示唆も見いだせないから、本件発明1は、甲4発明及び甲1~3、5~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものとは認められない。 (イ)本件発明2~5、7、13、14、16、20について 本件発明2~5、7、13、14、16、20は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(ア)で説示したのと同様の理由により、甲4発明及び甲1~3、5~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 ウ まとめ 以上によれば、特許異議申立理由1は成り立たない。 (2)特許異議申立理由2(明確性要件)について ア 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(44ページ参照)において、本件訂正前発明14の「前記蛍光体の量子収率が0.5以上である」との事項は、上限が規定されておらず、不明確であるから、本件訂正前発明14は不明確であり、本件訂正前発明16の「前記蛍光体の量子収率が0.75以上である」との事項も、上限が規定されておらず、不明確であるから、本件訂正前発明16も不明確である旨主張する。 イ 申立人の主張についての判断 本件発明14及び16において、蛍光体の量子収率の数値範囲は明確であり、その上限が特定されていないことによって、上記数値範囲が不明確にはならないから、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用することはできない。 したがって、特許異議申立理由2も成り立たない。 第7 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によって、請求項1~5、7、13、14、16、20に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~5、7、13、14、16、20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項11は、本件訂正により削除されたため、申立人による特許異議の申立てにおける請求項11に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700829

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