特許異議申立
2021-701078
蛍光体保護フィルム、波長変換シート及び発光ユニット
- 審判番号
- 2021-701078
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-533498
- 登録番号
- 6927225
- 請求日
- 2021年11月15日
- 審決日
- 2023年04月20日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】凸版印刷株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】和田 雄二
- 【権利者代理人】▲高▼木 邦夫
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 磯貝 香苗
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第4号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6927225号発明「蛍光体保護フィルム、波長変換シート及び発光ユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6927225号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。
特許第6927225号の請求項1ないし2、4ないし10に係る特許を維持する。
特許第6927225号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6927225号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、
2017年(平成29年) 8月 8日(優先権主張 2016年 8月12日)に国際出願され、
令和 3年 8月10日にその特許権の設定登録(請求項の数 9)がされ、
令和 3年 8月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、当該特許に対し、
令和 3年11月15日に加藤浩志(以下、「特許異議申立人」という。)が、全ての請求項に係る特許に対して特許異議申立てを行い、
令和 4年 4月28日付けで取消理由が通知され、
令和 4年 7月11日に特許権者(凸版印刷株式会社)より訂正請求がされるとともに意見書が提出され、
令和 4年 7年25日に特許法第120条の5第5項の規定に基づき特許異議申立人に対し訂正請求があった旨の通知がされ、
令和 4年 8月25日に特許異議申立人より意見書が提出され、
令和 4年11月 7日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、
令和 5年 1月10日に特許権者により訂正請求がされるとともに意見書が提出され、
令和 5年 1月20日に特許法第120条の5第5項の規定に基づき特許異議申立人に対し訂正請求があった旨の通知がされ、
令和 5年 2月22日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
なお、令和 4年 7月11日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和 5年 1月10日にされた訂正請求における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。
なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「を含む、蛍光体保護フィルム。」とあるのを、
「を含み、
前記機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である、蛍光体保護フィルム。」と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用して特定する請求項4ないし9についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
ア 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2に、
「厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルム」とあるのを、
「厚さ55~250μmの嵩増し用樹脂フィルム」と訂正する。
併せて、請求項2を直接又は間接的に引用して特定する請求項4ないし9についても、請求項2を訂正したことに伴う訂正をする。
イ 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が45~280μm」とあるのを、
「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が55.5~280μm」と訂正する。
併せて、請求項2を直接又は間接的に引用して特定する請求項4ないし9についても、請求項2を訂正したことに伴う訂正をする。
ウ 訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項2に
「を更に備える、蛍光体保護フィルム。」とあるのを、
「を更に備え、
前記機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である、蛍光体保護フィルム。」と訂正する。
併せて、請求項2を直接又は間接的に引用して特定する請求項4ないし9についても請求項2を訂正したことに伴う訂正をする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか1項に記載」とあるのを「請求項1又は2に記載」と訂正する。
併せて、請求項4を直接又は間接的に引用して特定する請求項5ないし9についても、請求項4を訂正したことに伴う訂正をする。
(5)訂正事項5
ア 訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項5に
「前記第一蒸着層よりも内側に、
第二接着層と、
ガスバリア性を有する第二蒸着層と、
第二樹脂フィルムと、
を外側から内側に向けてこの順序で更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルム。」とあるうち、
請求項3を引用し且つ請求項3において請求項2に引用するものを新たな独立形式の請求項10として、
「蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムであって、
機能層と、
単層構造又は積層構構造を有し且つ厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層と、
ガスバリア性を有する第一蒸着層と、
を外側から内側に向けてこの順序で備え、
当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が45~280μmであり、
外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、
前記嵩増し用樹脂フィルムと前記第一蒸着層との間に介在する第一接着層と、
を更に備え、
前記第一蒸着層よりも内側に、
第二接着層と、
ガスバリア性を有する第二蒸着層と、
第二樹脂フィルムと、
を外側から内側にかけてこの順序で更に備え、
前記機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である、蛍光体保護フィルム。」と訂正する。
イ 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載」とあるのを、「請求項1,2,4のいずれか一項に記載」と訂正する。
併せて、請求項5を直接又は間接的に引用して特定する請求項6ないし9についても、請求項5を訂正したことに伴う訂正をする。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載」とあるのを、「請求項1,2,4,5,6のいずれか一項に記載」と訂正する。
併せて、請求項7を直接又は間接的に引用して特定する請求項8ないし9についても、請求項7を訂正したことに伴う訂正をする。
(7)訂正事項7
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第一保護フィルム」とあるのを、「請求項1,2,4,5,6,7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第一保護フィルム」と訂正する。
併せて、請求項8を引用して特定する請求項9についても、請求項8を訂正したことに伴う訂正をする。
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第二保護フィルム」とあるのを「請求項1,2,4,5,6,7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第二保護フィルム」と訂正する。
併せて、請求項8を引用して特定する請求項9についても、請求項8を訂正したことに伴う訂正をする。
(8)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし9について、請求項3ないし9はそれぞれ独立形式の請求項1、2を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1及び訂正事項2によって記載が訂正される請求項1及び請求項2に連動して訂正されるものである。
訂正後の請求項10は、訂正前の請求項5のうち、請求項3を引用し且つ請求項3において請求項2を引用するものを独立形式の請求項に書き下したものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし9に対応する訂正後の請求項1ないし10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を10%以上に特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の請求項3の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし9についての訂正も同様である。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2-1について
訂正事項2-1による請求項2についての訂正は、嵩増し用樹脂フィルムの厚さの数値範囲を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2-1による嵩増し用樹脂フィルムの厚さの数値範囲は、願書に添付した明細書の段落【0047】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし9についての訂正も同様である。
イ 訂正事項2-2について
訂正事項2-2による請求項2についての訂正は、機能層と第一蒸着層との間の離間距離の数値範囲を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2-2による機能層と第一蒸着層との間の離間距離の数値範囲は、願書に添付した明細書の段落【0047】及び【0044】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし9についての訂正も同様である。
ウ 訂正事項2-3について
訂正事項2-3による請求項2についての訂正は、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を10%以上に特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2-3による請求項2についての訂正は、訂正前の請求項3の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし9についての訂正も同様である。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3による請求項3の削除は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4による請求項4の訂正は、引用先の請求項を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4よる請求項4の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5ないし9についての訂正も同様である。
(5)訂正事項5について
ア 訂正事項5-1について
訂正事項5-1による請求項5の訂正は、訂正前の請求項1~4を引用する請求項5のうち訂正前の請求項3を引用し且つ請求項3において訂正前の請求項2を引用するものを新たな独立形式の請求項10とする訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的としたものである。
そして、訂正事項5-1による請求項5の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6ないし9についての訂正も同様である。
イ 訂正事項5-2について
訂正事項5-2による請求項5の訂正は、訂正前の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載」とあるのを「請求項1、2,4のいずれかに記載」として引用先の請求項を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5-2による請求項5の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6ないし9についての訂正も同様である。
(6)訂正事項6について
訂正事項6による請求項7の訂正は、訂正前の請求項7に「請求項1~5のいずれか一項に記載」とあるのを「請求項1,2,4,5,6のいずれか一項に記載」として引用先の請求項を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6による請求項7の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8ないし9についての訂正も同様である。
(7)訂正事項7について
訂正事項7-1及び訂正事項7-2による請求項8の訂正は、訂正前の請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第一保護フィルム」、「請求項1~7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第二保護フィルム」とあるのをそれぞれ「請求項1,2,4,5,6,7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第一保護フィルム」、「請求項1,2,4,5,6,7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第二保護フィルム」として引用先の請求項を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7-1及び訂正事項7-2による請求項8の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項8の記載を直接引用する請求項9についての訂正も同様である。
(8)独立特許要件について
本件訂正に際し、訂正前の全ての請求項に対し、特許異議の申立てがされているから、訂正事項1ないし7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし7による請求項1ないし10についての訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし7による請求項1ないし10についての訂正は、いずれも特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムであって、
機能層と、
積層構造を有する嵩増し層と、
ガスバリア性を有する第一蒸着層と、
を外側から内側に向けてこの順序で備え、
当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が45~280μmであり、
前記嵩増し層は、厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルムと、内側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、前記嵩増し用樹脂フィルムの内側の面と前記第一樹脂フィルムの外側の面とを貼り合わせている第一接着層とを含み、
前記機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である、蛍光体保護フィルム。
【請求項2】
蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムであって、
機能層と、
単層構造又は積層構造を有し且つ厚さ55~250μmの嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層と、
ガスバリア性を有する第一蒸着層と、
を外側から内側に向けてこの順序で備え、
当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が55.5~280μmであり、
外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、
前記嵩増し用樹脂フィルムと前記第一蒸着層との間に介在する第一接着層と、
を更に備え、
前記機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である、蛍光体保護フィルム。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
前記第一接着層は、厚さ5μmにおいて1000cm3/(m2・day・atm)以下の酸素透過度を有する、請求項1又は2に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項5】
前記第一蒸着層よりも内側に、
第二接着層と、
ガスバリア性を有する第二蒸着層と、
第二樹脂フィルムと、
を外側から内側に向けてこの順序で更に備える、請求項1,2,4のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項6】
前記第二接着層は、厚さ5μmにおいて1000cm3/(m2・day・atm)以下の酸素透過度を有する、請求項5に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項7】
前記機能層は、干渉縞防止機能、反射防止機能、光散乱機能、帯電防止機能及び傷つけ防止機能からなる群から選ばれる少なくとも一種の機能を有する、請求項1,2,4,5,6のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項8】
請求項1,2,4,5,6,7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第一保護フィルムと、
蛍光体を含む蛍光体層と、
請求項1,2,4,5,6,7のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムからなる第二保護フィルムと、
がこの順序で積層されており、
前記第一保護フィルムの内側の面と前記第二保護フィルムの内側の面同士が対面するように配置されている、波長変換シート。
【請求項9】
光源と、導光板と、請求項8に記載の波長変換シートとを備える発光ユニット。
【請求項10】
蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムであって、
機能層と、
単層構造又は積層構造を有し且つ厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層と、
ガスバリア性を有する第一蒸着層と、
を外側から内側に向けてこの順序で備え、
当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が45~280μmであり、
外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、
前記嵩増し用樹脂フィルムと前記第一蒸着層との間に介在する第一接着層と、
を更に備え、
前記第一蒸着層よりも内側に、
第二接着層と、
ガスバリア性を有する第二蒸着層と、
第二樹脂フィルムと、
を外側から内側に向けてこの順序で更に備え、
前記機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である、蛍光体保護フィルム。
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
令和3年11月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立理由の概要及び提出証拠は次の1ないし7のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性)
本件特許の請求項2、3、5、7~9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3、5、7~9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第2号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記(1)ないし(2)の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)離間距離について
本件特許発明が解決しようとする課題は、機能層とガスバリア層とが所定の距離で離間していることにより、性能上問題とならない異物が第一蒸着層に存在していたとしても、この蛍光体保護フィルムを用いてディスプレイを組み立て、その機能層の側(外側)から表示上の欠陥の有無を観察したときに、第一蒸着層における異物を欠陥として視認しにくくすることにあると解される。本件特許発明1は、機能層と第一蒸着層との離間距離が45~280μmであることを特定しているが、発明の詳細な説明には、嵩増し用樹脂フィルムの厚さが75μm及び50μmの例しか記載されておらず、技術常識から見て、本件特許発明で特定された45~280μmの範囲まで拡張又は一般化できるとは考えられない。
(2)ヘイズ値について
発明の詳細な説明に記載された実施例1、2は、コーティング層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を38%にすることにより初めて蒸着粉が異物として視認されなかったのであり、技術常識から見て、当該ヘイズ値より小さい場合、異物が視認されるものと考えられる。本件特許発明においてはヘイズ値が38%以上であることを特定しておらず、発明の課題を解決し得ない範囲を包含しており、サポート要件に違反している。
5 申立理由5(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記(1)ないし(3)の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)嵩増し用樹脂フィルムと第一樹脂フィルムを貼り合わせることについて
本件特許の請求項1において、嵩増し層が嵩増し用樹脂フィルムと第一樹脂フィルムを設け、貼り合わせることの技術的意味が不明瞭である。請求項2ないし9においても同様である。
(2)製造方法による限定について
本件特許の請求項1は、「内側の表面上に前記第一蒸着層が形成された」、及び、「前記嵩増し用樹脂フィルムの内側の面と前記第一樹脂フィルムの外側の面とを貼り合わせている」と特定しているが、製造方法による限定であり、当該限定が物の発明としてどのような構成を限定しているのか不明確であり、かつ、その構造を直接特定することが不可能であるとも実際的でないという事情が存在するとも考えられない。請求項2ないし9においても同様である。
(3)機能層と第一樹脂層との離間距離と各層の厚さの数値範囲について
本件特許の請求項1は、機能層と前記第一蒸着層との離間距離が45~280μmであると特定しているが、各層の厚さ範囲と矛盾している。嵩増し層の厚さは10~250μm、第一樹脂フィルムの厚さは9~50μm、第一接着層の厚さは0.5~50μm(本願明細書【0044】)であり、これらの合計は19.5~350μmとなって、各層の合計が350μmの場合に上記請求項1に記載の離間距離と矛盾する。請求項2ないし9においても同様である。
6 申立理由6(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記(1)ないし(2)の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明の「機能層と前記第一蒸着層との離間距離」に関して、発明の詳細な説明には、ディスプレイ視認評価(【表1】)で「嵩増し用樹脂フィルムなし」と記載されているが、積層フィルムから23μmの樹脂フィルムを除外したものを意味するのか、当該樹脂フィルムが形成されていない側を意味するのか不明瞭であり、当業者が実施できる程度に明瞭且つ十分に記載されていない。
(2)本件特許発明の「機能層と前記第一蒸着層との離間距離」に関して、発明の詳細な説明には、実施例3として、「厚さ75μmのPETフィルムの代わりに、厚さ75μmのPETフィルムを使用した」(段落【0083】)と記載されており意味が不明瞭である。
7 証拠方法
甲第1号証:特許第5900720号公報
甲第2号証:国際公開第2016/010116号
甲第3号証:特開2012-183823号公報
甲第4号証:再公表特許WO2013/161894号
甲第5号証:特開2012-250181号公報
甲第6号証:特開2012-96551号公報
甲第7号証:特開2013-251191号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。
以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由(決定の予告)の概要
当審から特許権者に対して令和 4年11月 7日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。
取消理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1、2、4ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
取消理由2の具体的理由は次のとおり。
本件特許の発明の詳細な説明【0005】の記載から、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「ガスバリア層に蒸着粉等の微細な異物が存在しても、この異物が欠陥として視認されにくい蛍光体保護フィルムを提供すること」である。そして、当該発明の課題の解決手段として、発明の詳細な説明【0006】には「この蛍光体保護フィルムは、機能層と、単層構造又は積層構造を有する嵩増し層と、ガスバリア性を有する第一蒸着層とを外側から内側に向けてこの順序で備え、当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、機能層と第一蒸着層との離間距離が45~280μm」とすることが記載されている。
しかしながら、発明の詳細な説明【0088】【表2】に開示されている本願実施例3~6及び比較例2の評価結果によると、機能層と第一蒸着層との距離が本件特許発明の規定する数値を満たしていたとしても、次のとおり、異物が視認されることが示されている。
比較例2の蛍光体保護フィルムにおける嵩増し層は、嵩増し用樹脂フィルム(厚さ75μm、ヘイズ値0%)のみをバリア層に重ねたものであって、機能層を有しておらず、蛍光体保護フィルムの視認側最表面から第一蒸着層までの離間距離が略75μmのものである。当該比較例2から、蛍光体保護フィルムの視認側の最表面から第一蒸着層までの離間距離を、請求項1が規定する45μm以上、ないし、訂正後の請求項2が規定する55.5μm以上、に離間させても、異物は確認されてしまうことが理解される。
ここで、本件特許発明の「機能層」の機能は、例えば、請求項7にて選択的構成として提示されるように、干渉縞防止機能、反射防止機能、光散乱機能、帯電防止機能及び傷付き防止機能等、様々な機能を包含するものであって、「機能層」のヘイズ値の特定はないから、ヘイズ値がゼロないしヘイズ値が低い機能層も含む。
そして、比較例2の蛍光体保護フィルムでは、ヘイズ値がゼロであるときには、厚さ75μmの厚みを有する嵩増し樹脂フィルムを利用したものであっても異物が視認されることを考慮すると、請求項1に規定されるように、嵩増し用樹脂フィルムとして厚み10μm以上のものを利用し、かつ、機能層と第一蒸着層の離間距離を45μm以上に保持したとしても、ないしは、訂正後の請求項2に規定されるように、嵩増し樹脂フィルムとして厚み55μm以上のものを利用し、機能層と第一蒸着層の離間距離を55.5μm以上に保持したとしても、いずれの層構成においても、併用する機能層のヘイズ値が低いものであれば、比較例2と同様に異物が視認されることが明らかである。
また、出願時において「機能層と第一蒸着層との離間距離が45~280μm」あるいは「機能層と第一蒸着層との離間距離が55.5~280μm」でヘイズ値の特定がない「機能層」を有することで異物が視認されなくなることが技術常識であったとは認められない。
よって、本件特許の請求項1、2、4ないし10の発明特定事項のみで課題が解決できるものとは当業者は認識できない。
したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし10に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該課題を解決できる範囲のものとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものともいえないから、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 取消理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)特許請求の範囲
本件特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には概ね次の記載がある。
「【0004】
ところで、蛍光体保護フィルムとして、透明樹脂材料からなる支持フィルムと、その表面上に形成されたガスバリア層とを備える積層フィルムが広く採用されている。しかし、無機材料(例えば酸化珪素)を支持フィルムの表面に蒸着させることによってガスバリア層を形成する場合、ガスバリア層に蒸着粉と呼ばれる白い小さな異物(サイズ0.1mm~3mm程度)が生じることがある。蛍光体保護フィルムにそのような異物が存在すると、これを用いてディスプレイを組み立てたとき、異物が表示上の欠陥として視認されることがある。ガスバリア性の性能に問題がなくても、かかる異物が蛍光体保護フィルムにおいて視認されることを理由にその部分を製品として使用できないという無駄が生じる。
【0005】
本開示は、ガスバリア層に蒸着粉等の微細な異物が存在しても、この異物が欠陥として視認されにくい蛍光体保護フィルムを提供することを目的とする。また、本開示は、上記蛍光体保護フィルムを含む波長変換シート及びこれを用いた発光ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムに関する。この蛍光体保護フィルムは、機能層と、単層構造又は積層構造を有する嵩増し層と、ガスバリア性を有する第一蒸着層とを外側から内側に向けてこの順序で備え、当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、機能層と第一蒸着層との離間距離が45~280μmである。なお、蛍光体保護フィルムの「内側」とは、当該蛍光体保護フィルムによって保護すべき蛍光体層が配置される側を意味し、「外側」とはその反対側を意味する。
【0007】
上記蛍光体保護フィルムは、機能層とガスバリア層を構成する第一蒸着層との間に嵩増し層が介在しており、機能層とガスバリア層が所定の距離(45~280μm)で離間している。かかる構成を採用したことにより、性能上問題とならない異物が第一蒸着層に存在していたとしても、この蛍光体保護フィルムを用いてディスプレイを組み立て、その機能層の側(外側)から表示上の欠陥の有無を観察したとき、第一蒸着層における異物が欠陥として視認されにくいという効果が奏される。上記異物がより一層視認されにくくする観点から、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値は10%以上であることが好ましい。ヘイズ値とは、フィルム又は積層体の濁度を表す指標であり、全光線透過光に対する拡散透過光の割合である。ヘイズ値は、具体的には下記式から求められる。下記式中のTdは拡散透過率、Ttは全光線透過率であり、拡散透過率及び全光線透過率はそれぞれヘイズメーター等で測定することができる。
ヘイズ値(%)=Td/Tt×100 」
「【0073】
[実施例1]
バリアフィルムを以下のようにして作製した。まず、樹脂フィルムとしての厚さ23μmのPETフィルムの片面に、アクリル樹脂塗液を塗布乾燥させてアンカーコート層を形成し、アンカーコート層上に蒸着層として酸化珪素を真空蒸着法により厚さ30nmで設けた。更に、蒸着層上に厚さ300nmのガスバリア性被覆層を形成した。このガスバリア性被覆層は、テトラエトキシシランとポリビニルアルコールとを含む塗液をウエットコーティング法により塗工することによって形成した。これにより、樹脂フィルムの一方の面上に蒸着層及びガスバリア性被覆層からなるバリア層が設けられたバリアフィルムを得た。このバリアフィルムと同じ構成のバリアフィルムを別途作製した。
【0074】
上記のようにして得た二つのバリアフィルムを貼り合せた。貼り合せにはエポキシ樹脂主剤と、アミン系硬化剤からなる二液型エポキシ系接着剤を使用し、硬化後の膜厚が5μmとなる接着層(30℃70%RH環境下での酸素透過度:5cm3/m2・day・atm)を形成し、二枚のバリアフィルムのガスバリア性被覆層同士が対向するように積層されたフィルムを作製した。なお、接着層の酸素透過度は以下のように測定した。厚さ20μmのOPPフィルム(30℃70%RH環境下での酸素透過度3000cm3/m2・day・atm(測定限界)以上)上に硬化後の膜厚が5μmとなるように前述の二液型エポキシ系接着剤膜を形成し評価用サンプルを作製し、差圧式ガス測定装置(GTRテック社製GTR-10X)を用いて、JIS K7126A法に記載の方法に従って30℃70%RH環境下におけるサンプルの酸素透過度を測定した。
【0075】
上記のようにして得た積層フィルム(嵩増し用フィルムなし)の蒸着粉(異物)を目視により観察するとともに、それらのサイズを測定した。具体的には、液晶モジュールに積層フィルムを設置し、下方から光をあてた状態で蒸着粉の観察及びサイズ測定を行った。液晶モジュールは下方から、反射板、導光板、下拡散板、下プリズムシート、上プリズムシート及び液晶部がこの順序で配置されており、下拡散板と下プリズムシートとの間に積層フィルムを設置できるように構成されたものを使用した。
【0076】
表1に示す視認可能な8つの蒸着粉にマークを付し、これらの蒸着粉が後述の嵩増し用樹脂フィルムの重ね合わせによって見えなくなるか否かを確認した。
【0077】
嵩増し用樹脂フィルムとしての厚さ75μmのPETフィルムの表面に、厚さ3μmのコーティング層(マット層)を形成した。このコーティング層は、アクリル樹脂と、ウレタン樹脂粒子(平均粒径3μm)とを含む塗液をウエットコーティング法により塗工することによって形成した。上記積層フィルム(嵩増し用フィルムなし)にコーティング層が形成されている面を上向きにて嵩増し用樹脂フィルムを重ね合わせた。本実施例に係る保護フィルムの嵩増し層の厚さは98μm(=23μm+75μm)であった。なお、コーティング層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値は38%であった。ヘイズ値(%)はヘイズメーターHM-150(商品名、株式会社村上色彩技研修所)を用いて測定した。測定条件は、JIS K7361-1に準拠するものとした。
【0078】
積層フィルムと嵩増し用フィルムとを重ね合わせた状態で液晶モジュールに設置し、蒸着粉の視認が可能であるか否かを確認した。表1に結果を示す。表中の「○」は蒸着粉が視認不可であったことを意味し、「×」は蒸着粉が視認可能であったことを意味する。
【0079】
[実施例2]
嵩増し用樹脂フィルムとして厚さ75μmのPETフィルムの代わりに、厚さ50μmのPETフィルムを使用したことの他は、実施例1と同様にて蒸着粉の視認の可否について評価を行った。表1に結果を示す。本実施例に係る保護フィルムの嵩増し層の厚さは73μm(=23μm+50μm)であった。なお、コーティング層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値は38%であった。
【0080】
[比較例1]
嵩増し用樹脂フィルムとして厚さ75μmのPETフィルムの代わりに、厚さ12μmのPETフィルムを使用したことの他は、実施例1と同様にて蒸着粉の視認の可否について評価を行った。表1に結果を示す。本実施例に係る保護フィルムの嵩増し層の厚さは35μm(=23μm+12μm)であった。なお、コーティング層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値は38%であった。
【0081】
【表1】
[図:0001399320000001.jpg]
表中の「サイズ」は蒸着粉の「長辺長さ」と「短辺長さ」の和を2で割った値である。
【0082】
図6~8は表1の「ディスプレイ視認評価」において目視で観察した対象の写真である。図6~8の写真に写る四本のラインはこれらの中心部における蒸着層に蒸着粉(異物)が存在することを示すものである。図6は、嵩増し用樹脂フィルムを重ね合わせていない状態で視認された蒸着粉(表1のNo.3)の写真である。図7は、厚さ50μmの嵩増し用樹脂フィルムを重ね合わせることによって蒸着粉(表1のNo.3)が視認不可となったことを示す写真である。図8は、厚さ12μmの嵩増し用樹脂フィルムを重ね合せたのでは蒸着粉(表1のNo.3)が異物として視認されたことを示す写真である。なお、図8の写真では異物を視認しにくいものの、肉眼ではNo.3の蒸着粉が異物として視認された。
【0083】
[実施例3]
嵩増し用樹脂フィルムとして厚さ75μmのPETフィルムの代わりに、厚さ75μmのPETフィルムを使用したことの他は、実施例1と同様にして、表2に示すNo.1~4の蒸着粉の視認の可否について評価を行った。表2に結果を示す。表中の「○」は蒸着粉が視認不可であったことを意味し、「△」は蒸着粉がほとんど視認不可であったことを意味し、「×」は蒸着粉が視認可能であったことを意味する。
【0084】
[実施例4]
コーティング層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を38%とする代わりに、30%としたことの他は、実施例3と同様にして、表2に示すNo.1~4の蒸着粉の視認の可否について評価を行った。表2に結果を示す。
【0085】
[実施例5]
コーティング層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を38%とする代わりに、20%としたことの他は、実施例3と同様にして、表2に示すNo.1~4の蒸着粉の視認の可否について評価を行った。表2に結果を示す。
【0086】
[実施例6]
コーティング層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を38%とする代わりに、10%としたことの他は、実施例3と同様にして、表2に示すNo.1~4の蒸着粉の視認の可否について評価を行った。表2に結果を示す。
【0087】
[比較例2]
コーティング層(機能層)を形成せず、嵩増し用樹脂フィルム(厚さ75μm、ヘイズ値0%)のみをバリア層に重ねたことの他は、実施例3と同様にして、表2に示すNo.1~4の蒸着粉の視認の可否について評価を行った。表2に結果を示す。
【0088】
【表2】
[図:0001399320000002.jpg]
表中の「サイズ」は蒸着粉の「長辺長さ」と「短辺長さ」の和を2で割った値である。」
(4)判断
発明の詳細な説明【0005】の記載から、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「ガスバリア層に蒸着粉等の微細な異物が存在しても、この異物が欠陥として視認されにくい蛍光体保護フィルムを提供すること」である。
そして、当該発明の課題の解決手段として、発明の詳細な説明【0006】には「この蛍光体保護フィルムは、機能層と、単層構造又は積層構造を有する嵩増し層と、ガスバリア性を有する第一蒸着層とを外側から内側に向けてこの順序で備え、当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、機能層と第一蒸着層との離間距離が45~280μm」とすることが記載されており、さらに、発明の詳細な説明【0007】には「異物がより一層視認されにくくするという観点から、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値は10%以上であることが好ましい」ことも記載されている。
さらに、発明の詳細な説明【0081】【表1】及び【0088】【表2】には、具体的な実施例、比較例を用い視認性を確認したものも示されている。
以上、発明の詳細な説明における記載から、当業者は、機能層と第一蒸着層との間の離間距離が45~280μmであって、かつ、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値としてある程度の数値が確保されていれば、蒸着粉を視認しにくい状態にすることができると理解する。
そうすると、当業者は本件特許発明1ないし2、4ないし10の構成を備えることにより、発明の課題を解決できると認識できる。
したがって、本件特許発明1ないし2、4ないし10は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明により当業者が発明の課題を解決することができると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1ないし2、4ないし10に関して、特許請求の範囲はサポート要件に適合する。
(5)取消理由2(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2はその理由がない。
第7 取消理由において採用しなかった申立理由についての当審の判断
以下に記載するように、当審は、特許異議申立人の申立理由について、いずれにも理由がないと判断する。
1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)についての判断
(1)甲1に記載された発明
甲1の【0066】実施例1、【0070】、及び【図1】を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「量子ドット層から遠い順に第1拡散フィルム20、接着剤層30、及び、第1バリアフィルム10を備える第1量子ドット保護フィルム1であって、
前記第1拡散フィルム20は、厚み50μmのPETフィルム基板21上に、粒子径3μmのオレフィン系粒子がウレタンバインダー中に分散された第1拡散層22からなり、ヘイズ値60%を有しており、
前記接着剤層30の接着後の厚みは5μmであり、
前記第1バリアフィルム10は、厚み16μmのPETフィルム基材11の片面に、第1密着層12、第1シリカ蒸着層13、第1複合被覆層14、第2シリカ蒸着層15、厚み1μmの第2複合被膜層16を順に積層したものである、量子ドット保護フィルム。」
(2)本件特許発明1についての対比・判断
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「量子ドット層」、「第1量子ドット保護フィルム1」、「第1拡散層22」、「厚み50μmのPETフィルム基材21」、「第2シリカ蒸着層15」は、それぞれ、
本件特許発明1における「蛍光体層」、「蛍光体保護フィルム」、「機能層」、「厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルム」、「ガスバリア性を有する第一蒸着層」に相当する。
また、甲1発明における「接着剤層30」は、本件特許発明1における「嵩増し用樹脂フィルムの内側の面」「を貼り合わせている第一接着剤層」に相当する。
甲1発明における「厚み50μmのPETフィルム基材21」と「接着剤層30」は、本件特許発明1における「嵩増し層」の「積層構造」に相当する。
甲1発明における「第1拡散フィルム20」が「ヘイズ値60%を有して」いる構成は、本件特許発明1における「機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である」構成に相当する。
さらに、甲1発明における「厚み16μmのPETフィルム基材11」は、密着層12、第1シリカ蒸着層13、第1複合被覆層14を介して「第2シリカ蒸着層15」が積層されているから、本件特許発明1における「表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルム」に相当する。
そして、甲1発明においては、「機能層」である第1拡散層22と、「ガスバリア性を有する第一蒸着層」である第2シリカ蒸着層15の間に、「嵩増し用樹脂フィルム」であるところの、厚み50μmのPETフィルム基材21と、「第一接着層」であるところの、接着後の厚みが5μmである接着剤層30と、厚み1μmの第2複合被膜層16が介在しているから、「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離」は、50μm+5μm+1μmで56μmである。
よって、甲1発明においては、「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が45~280μm」との発明特定事項を満たしている。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムであって、機能層と、積層構造を有する嵩増し層と、ガスバリア性を有する第一蒸着層とを外側から内側に向けてこの順序で備え、当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が45~280μmであり、前記嵩増し層は、厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルムを含み、内側の面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、前記嵩増し用樹脂フィルムの内側の面を貼り合わせている第一接着層とを更に備え、前記機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である、蛍光体保護フィルム。」
<相違点1-1>
本件特許発明1においては、「嵩増し層」が「第一樹脂フィルム」を含む層構成を有しているのに対し、甲1発明においては、そのような特定はない点。
<相違点1-2>
本件特許発明1においては、第一樹脂フィルムの「内側の」表面上に第一蒸着層が形成されているのに対し、甲1発明においては、第一樹脂フィルムに相当する厚み16μmのPETフィルム基材11の外側の表面上に第一蒸着層に相当する第2シリカ蒸着層が形成されている点。
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
本件特許発明1の積層構造は、蛍光体保護フィルムにおいて、蛍光体層側(内側)から、第一蒸着層/第一樹脂フィルム/(接着層)の積層順をとるのに対し、甲1発明では、蛍光体層側(内側)から、第一樹脂フィルム/第一蒸着層/(接着層)の積層順で形成されている。
そして、甲1発明において、蛍光体層側(内側)から、第一蒸着層/第一樹脂フィルム/(接着層)とする契機はない。
なお、特許異議申立人は、本件特許明細書(段落【0069】、【0071】、【図1】、【図3】ないし【図5】)にバリア積層体の表裏を逆にしてもよい旨記載されているから、バリア積層体の樹脂フィルム及びバリア層(蒸着層)のいずれかを外側に配置するかは当業者が適宜選択し得る設計的事項に過ぎないと主張するが、本件特許明細書は本件特許の優先日前に頒布された刊行物ではないから、該主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、甲2(【0074】、【図1】、【図2】)に基材8とバリア層9を備えるバリアフィルム5の層順を逆にすることが代替的に記載されているから、バリア積層体の樹脂フィルム及びバリア層のいずれかを外側に配置するかは当業者が適宜選択し得る設計的事項に過ぎないと主張しているが、甲2の当該記載に照らして判断しても、甲1発明の量子ドット保護フィルムにおいて、蛍光体側(内側)から、第一蒸着層/第一樹脂フィルム/(接着層)となるように層順を変更する契機はないので、該主張も採用できない。
したがって、甲1発明において、相違点1-2に係る発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2についての対比・判断
本件特許発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「量子ドット層」、「第1量子ドット保護フィルム1」、「第1拡散層22」、「PETフィルム基材21」、「第2シリカ蒸着層15」、「接着剤層30」は、それぞれ、
本件特許発明2における「蛍光体層」、「蛍光体保護フィルム」、「機能層」、「嵩増し用樹脂フィルム」、「ガスバリア性を有する第一蒸着層」、「第一接着層」に相当する。
甲1発明における「第1拡散フィルム20」が「ヘイズ値60%を有して」いる構成は、本件特許発明2における「機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である」構成に相当する。
甲1発明における「厚み16μmのPETフィルム基材11」は、密着層12、第1シリカ蒸着層13、第1複合被覆層14を介して「第2シリカ蒸着層15」が積層されているから、本件特許発明2における「外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルム」に相当する。
そして、甲1発明においては、「機能層」である第1拡散層22と、「ガスバリア性を有する第一蒸着層」である第2シリカ蒸着層15の間に、「嵩増し層」であるところの、厚み50μmのPETフィルム基材21と、「第一接着層」であるところの、接着後の厚みが5μmである接着剤層30と、厚み1μmの第2複合被膜層16が介在しているから、「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離」は、50μm+5μm+1μmで56μmである。
よって、甲1発明においては、本件特許発明2における「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が55.5~280μm」との発明特定事項を満たしている。
そうすると、本件特許発明2と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムであって、機能層と、単層構造又は積層構造を有し嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層と、ガスバリア性を有する第一蒸着層と、を外側から内側に向けてこの順序で備え、当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が55.5~280μmであり、外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、前記嵩増し用樹脂フィルムと前記第一蒸着層との間に介在する第一接着層と、を更に備え、前記機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である、蛍光体保護フィルム。」
<相違点1-3>
本件特許発明2においては、嵩増し用樹脂フィルムの厚さが55~250μmであるとの特定を有するのに対し、甲1発明においてはそのような特定はない点。
上記相違点1-3について検討する。
甲1発明において、嵩増し用樹脂フィルムの厚さを55~250μmとする契機はない。
したがって、甲1発明において、相違点1-3に係る発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
よって、本件特許発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明4ないし9についての対比・判断
本件特許発明4ないし9は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1又は2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は2と同様に、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件特許発明10についての対比・判断
本件特許発明10と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「量子ドット層」、「第1量子ドット保護フィルム1」、「第1拡散層22」、「厚み50μmのPETフィルム基板21」、「第2シリカ蒸着層15」、「接着剤層30」は、それぞれ、
本件特許発明10における「蛍光体層」、「蛍光体保護フィルム」、「機能層」、「単層構造又は積層構造を有し且つ厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層」、「ガスバリア性を有する第一蒸着層」、「第一接着層」に相当する。
甲1発明における「第1拡散フィルム20」が「ヘイズ値60%を有して」いる構成は、本件特許発明10における「機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である」構成に相当する。
甲1発明における「厚み16μmのPETフィルム基材11」は、密着層12、第1シリカ蒸着層13、第1複合被覆層14を介して「第2シリカ蒸着層15」が積層されているから、本件特許発明10における「外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルム」に相当する。
そして、甲1発明においては、「機能層」である第1拡散層22と、「ガスバリア性を有する第一蒸着層」である第2シリカ蒸着層15の間に、「嵩増し層」であるところの、厚み50μmのPETフィルム基材21と、「第一接着層」であるところの、接着後の厚みが5μmである接着剤層30と、厚み1μmの第2複合被膜層16が介在しているから、「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離」は、50μm+5μm+1μmで56μmである。
よって、甲1発明においては、本件特許発明2における「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が45~280μm」との発明特定事項を満たしている。
さらに、甲1発明における「第1複合被膜層14」、「第1シリカ蒸着層」は、本件特許発明10における「第二接着層」、「ガスバリア性を有する第二蒸着層」に相当する。
そうすると、本件特許発明10と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「蛍光体層に含まれる蛍光体を保護する蛍光体保護フィルムであって、機能層と、単層構造又は積層構造を有し且つ厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層と、ガスバリア性を有する第一蒸着層と、を外側から内側に向けてこの順序で備え、当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が45~280μmであり、外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、前記嵩増し用樹脂フィルムと前記第一蒸着層との間に介在する第一接着層と、を更に備え、前記第一蒸着層よりも内側に、第二接着層と、ガスバリア性を有する第二蒸着層を外側から内側に向けてこの順序で更に備え、前記機能層と前記嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上である、蛍光体保護フィルム。」
<相違点1-4>
本件特許発明10においては、第二樹脂フィルムを備えるとの特定を有するのに対し、甲1発明においてはそのような特定はない点。
上記相違点1-4について検討する。
甲1発明において、第二樹脂フィルムを更に備える契機はない。
したがって、甲1発明において、相違点1-4に係る発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
よって、本件特許発明10は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)申立理由1(甲1に基づく進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1はその理由がない。
2 申立理由2(甲2に基づく新規性)及び申立理由3(甲2に基づく進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2の第1の実施形態及び図1から、甲2には次の発明(以下、「甲2発明A」という。)が記載されているものと認める。
<甲2発明A>
「蛍光体層1にバリア性を付与するための波長変換シート用保護フィルム2であって、蛍光体層1から遠い順に、光学的機能や帯電防止機能を発揮させるためのコーティング層7、基材8とバリア層9を有するバリアフィルム5、接着層6、基材とバリア層を有するバリアフィルム5を有し、基材8は厚さ12μm以上50μm以下であり、接着層6は厚さ3μm以上10μm以下であり、バリア層9は、基材8上に積層された厚さ5~500nmの無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10と、この上に積層された厚さ50~1000nmのガスバリア性被覆層11からなる、波長変換シート用保護フィルム2」
また、甲2の第2の実施形態2及び図2から、甲2には次の発明(以下、「甲2発明B」という。)が記載されているものと認める。
<甲2発明B>
「蛍光体層1にバリア性を付与するための波長変換シート用保護フィルム2であって、蛍光体層1から遠い順に、光学的機能や帯電防止機能を発揮させるためのコーティング層7、基材8とバリア層9を有する第1のバリアフィルム5、接着層6、基材とバリア層を有する第2のバリアフィルム5、基材層8を有し、第1のバリアフィルム5のバリア層9と第2のバリアフィルム5のバリア層5とが、接着層6を介して対向するように積層され、基材8は厚さ12μm以上50μm以下であり、接着層は厚さ3μm以上10μm以下であり、バリア層9は、基材8上に積層された厚さ5~500nmの無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10と、この上に積層された厚さ50~1000nmのガスバリア性被覆層11からなる、波長変換シート用保護フィルム2」
(2)本件特許発明1についての対比・判断
本件特許発明1と甲2発明Aとを対比する。
甲2発明Aの波長変換シート用保護フィルムの積層構造を整理すると、コーティング層7/基材8-1/無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-1/ガスバリア性被覆層11-1/接着層6/基材8-2/無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-2/ガスバリア性被覆層11-2/(蛍光体層1)である。
(基材8、無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10,ガスバリア性被覆層11は同一層が2セットあるため、図番-1、図番-2を、説明のために当審にて付与した。)
甲2発明Aにおける、「蛍光体層1」、「波長変換シート用保護フィルム2」、「光学的機能や帯電防止機能を発揮させるためのコーティング層7」、「厚さ12μm以上50μm以下」の「基材8」-1、「無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-2」、「接着層6」は、それぞれ、
本件特許発明1における、「蛍光体層」「蛍光体保護フィルム」「機能層」「厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルム」、「ガスバリア性を有する第一蒸着層」、「接着層」に相当する。
また、甲2発明Aにおける「厚さ12μm以上50μm以下」の「基材8」-2は、本件特許発明1における「内側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルム」に相当する。
さらに、甲2発明Aにおける「基材8」-1と「無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10」-1及び「ガスバリア性被覆層11」-1は、本件特許発明における「積層構造を有する嵩増し層」に相当する。
甲2発明Aにおいては、機能層と第一蒸着層との離間距離は、基材層8-1(12μm~50μm)、無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-1(5~500nm)、ガスバリア性被覆層11-1(50~1000nm)、接着層6(3~10μm)、基材層8-2(12~50μm)の厚みをそれぞれ足しあわせると、27.055μm以上111.5μm以下である。
よって、甲2発明Aは、本件特許発明1における「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が」「~280μm」との要件を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明Aとの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムであって、機能層と石像構造を有する嵩増し層と、ガスバリア性を有する第一蒸着層と、を、外側から内側に向けてこの順序で備え、当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が~280μmであり、前記嵩増し層は、厚さ10~250μmの嵩増し用樹脂フィルムと、内側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、前記嵩増しよう樹脂フィルムの内側の面と前記第一樹脂フィルムの外側の面とを貼り合わせている第一接着層とを含む、蛍光体保護フィルム。」
<相違点2-1>
本件特許発明1においては、機能層と第一蒸着層との離間距離が45μm~であるのに対し、甲2発明Aにおいてはそのような特定はない点。
<相違点2-2>
本件特許発明1においては、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズが10%以上であるのに対し、甲2発明Aにおいてはそのような特定はない点。
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
甲2発明Aにおける機能層は、光学的機能や帯電防止機能を発揮させるためのものであり、甲2[0057]には、干渉縞(モアレ)防止機能、反射防止機能、拡散機能等を持たせることについて記載されている。しかしながら、甲2発明Aにおいて、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を10%以上とすることについて、その契機がない。
本件特許発明1は、機能層と第一蒸着層との離間距離を45μm以上とし、かつ、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を10%以上とすることによって、ガスバリア層に蒸着粉等の微細な異物が存在してもこの異物が欠陥として視認されにくい蛍光体保護フィルムを提供することができるという顕著な効果を有している。
したがって、甲2発明Aにおいて、相違点2-2に係る発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2についての対比・判断
本件特許発明2と甲2発明Bとを対比する。
甲2発明Bの波長変換シート用保護フィルムの積層構造を整理すると、コーティング層7/基材8-1/無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-1/ガスバリア性被覆層11-1/接着層6/ガスバリア性被覆層11-2/無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-2/基材8-2/(蛍光体層1)である。
(基材8、無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10,ガスバリア性被覆層11は同一層が2セットあるため、図番-1、図番-2を説明のために当審にて付与した。)
甲2発明Bにおける、「蛍光体層1」、「波長変換シート用保護フィルム2」、「光学的機能や帯電防止機能を発揮させるためのコーティング層7」、「基材8」-1、「接着層6」、「無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-2」は、それぞれ、
本件特許発明2における、「蛍光体層」「蛍光体保護フィルム」「機能層」「単層構造又は積層構造を有」す「嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層」、「接着層」、「ガスバリア性を有する第一蒸着層」に相当する。
また、甲2発明Bにおける「厚さ12μm以上50μm以下」の「基材8」-2は、本件特許発明2における「外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルム」に相当する。
甲2発明Bにおいては、機能層と第一蒸着層との離間距離は、基材層8-1(12μm~50μm)、無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-1(5~500nm)、ガスバリア性被覆層11-1(50~1000nm)、接着層6(3~10μm)、ガスバリア性被覆層11-2(50~1000nm)であるから、その厚みをそれぞれ足しあわせると、15.105μm~62.5μmである。
よって、甲2発明Bは、本件特許発明2における「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が」「~280μm」との要件を満たす。
そうすると、本件特許発明2と甲2発明Bとの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムであって、機能層と、単層構造又は積層構造を有し嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層と、ガスバリア性を有する第一蒸着層と、を外側から内側に向けてこの順序で備え、当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が~280μmであり、外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、前記嵩増し用樹脂フィルムと前記第一蒸着層との間に介在する第一接着層と、を更に備える、蛍光体保護フィルム。」
<相違点2-3>
本件特許発明2においては、機能層と第一蒸着層との離間距離が55.5μm~であるのに対して、甲2発明Bにおいてはそのような特定はない点。
<相違点2-4>
本件特許発明2においては、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上であるのに対して、甲2発明Bにおいてはそのような特定はない点。
本件特許発明2と甲2発明Bとは、相違点2-3及び相違点2-4の点で相違するから、本件特許発明2は甲2発明Bではない。
次に、事案に鑑み、相違点2-4について検討する。
甲2発明Bにおける機能層は、光学的機能や帯電防止機能を発揮させるためのものであり、甲2[0057]には、干渉縞(モアレ)防止機能、反射防止機能、拡散機能等を持たせることについて記載されている。しかしながら、甲2発明Bにおいて、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を10%以上とすることについて、その契機がない。
本件特許発明2は、機能層と第一蒸着層との離間距離を55.5μm以上とし、かつ、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を10%以上とすることによって、ガスバリア層に蒸着粉等の微細な異物が存在してもこの異物が欠陥として視認されにくい蛍光体保護フィルムを提供することができるという顕著な効果を有している。
したがって、甲2発明Bにおいて、相違点2-4に係る発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲2発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明4ないし9についての対比・判断
本件特許発明4ないし9は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1又は請求項2に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に、甲2発明Aまたは甲2発明Bではなく、甲2発明Aまたは甲2発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件特許発明10についての対比・判断
本件特許発明10と甲2発明Bとを対比する。
甲2発明Bの波長変換シート用保護フィルムの積層構造を整理すると、上記(3)のとおりである。
甲2発明Bにおける、「蛍光体層1」、「波長変換シート用保護フィルム2」、「光学的機能や帯電防止機能を発揮させるためのコーティング層7」、「基材8」-1、「接着層6」、「無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-2」は、それぞれ、
本件特許発明10における、「蛍光体層」「蛍光体保護フィルム」「機能層」「単層構造又は積層構造を有」す「嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層」、「接着層」、「ガスバリア性を有する第一蒸着層」に相当する。
また、甲2発明Bにおける「厚さ12μm以上50μm以下」の「基材8」-2は、本件特許発明10における「外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルム」に相当する。
甲2発明Bにおいては、機能層と第一蒸着層との離間距離は、基材層8-1(12μm~50μm)、無機薄膜層(無機酸化物薄膜層)10-1(5~500nm)、ガスバリア性被覆層11-1(50~1000nm)、接着層6(3~10μm)、ガスバリア性被覆層11-2(50~1000nm)であるから、その厚みをそれぞれ足しあわせると、15.105μm~62.5μmである。
よって、甲2発明Bは、本件特許発明10における「前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が」「~280μm」との要件を満たす。
そうすると、本件特許発明10と甲2発明Bとの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「蛍光体層に含まれる蛍光体を保護するための蛍光体保護フィルムであって、機能層と、単層構造又は積層構造を有し嵩増し用樹脂フィルムを含む嵩増し層と、ガスバリア性を有する第一蒸着層と、を外側から内側に向けてこの順序で備え、当該蛍光体保護フィルムの厚さ方向において、前記機能層と前記第一蒸着層との離間距離が~280μmであり、外側の表面上に前記第一蒸着層が形成された厚さ9~50μmの第一樹脂フィルムと、前記嵩増し用樹脂フィルムと前記第一蒸着層との間に介在する第一接着層と、を更に備える、蛍光体保護フィルム。」
<相違点2-5>
本件特許発明10においては、機能層と第一蒸着層との離間距離が45μm~であるのに対して、甲2発明Bにおいてはそのような特定はない点。
<相違点2-6>
本件特許発明10においては、第一蒸着層よりも内側に、第二接着層と、ガスバリア性を有する第二蒸着層と、第二樹脂フィルムとを外側から内側に向けてこの順序で備えるのに対して、甲2発明Bにおいてはそのような特定はない点。
<相違点2-7>
本件特許発明10においては、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値が10%以上であるのに対して、甲2発明Bにおいてはそのような特定はない点。
本件特許発明10は相違点2-5ないし相違点2-7の点で甲2発明Bと相違するから、本件特許発明10は甲2発明Bではない。
次に、事案に鑑み、相違点2-7について検討する。
甲2発明Bにおける機能層は、光学的機能や帯電防止機能を発揮させるためのものであり、甲2[0057]には、干渉縞(モアレ)防止機能、反射防止機能、拡散機能等を持たせることについて記載されている。しかしながら、甲2発明Bにおいて、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を10%以上とすることについて、その契機がない。
本件特許発明10は、機能層と第一蒸着層との離間距離を45μm以上とし、かつ、機能層と嵩増し層とからなる積層体のヘイズ値を10%以上とすることによって、ガスバリア層に蒸着粉等の微細な異物が存在してもこの異物が欠陥として視認されにくい蛍光体保護フィルムを提供することができるという顕著な効果を有している。
したがって、甲2発明Bにおいて、相違点2-7に係る発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明10は甲2発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)申立理由2(甲2に基づく新規性)及び申立理由3(甲2に基づく進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2及び申立理由3はその理由がない。
3 申立理由4(サポート要件)について
申立理由4(サポート要件)の判断については、上記第6 1 のとおりである。
以下、特許異議申立人の主張について述べる。
(1)離間距離について
本件特許明細書の発明の詳細な説明において記載の実施例で使用されている嵩増し層用樹脂フィルムの厚みは50μm、75μmであるが、嵩増し用樹脂フィルムの厚みについては本件特許明細書【0047】等に記載のとおり10~250μmの範囲から選択し得ることが記載されている。
そして、本件特許明細書【0031】、【0048】ないし【0049】において記載されているとおり、離間距離を45μm~とし、コーティング層(機能層)と嵩増し用樹脂フィルムとからなる積層体のヘイズ値をある一定数値以上にすることで、相乗的に異物をより一層見えにくくすることができることが記載されている。したがって、離間距離45~280μmの範囲についてサポートされているといえる。よって、特許異議申立人の主張(1)は採用し得ない。
(2)ヘイズ値について
先に判断したとおり、発明の課題は「ガスバリア層に蒸着粉等の微細な異物が存在しても、この異物が欠陥として視認されにくい蛍光体保護フィルムを提供すること」であって、本件特許明細書【0081】【表1】や【0088】【表2】の評価で○、△のレベルを確保することまでではない。
そうすると、本件特許発明1ないし2、4ないし10で特定される機能層と第一蒸着層との離間距離の数値範囲及び機能層のヘイズ値の数値限定により、発明の課題は既に解決されている。よって、特許異議申立人の主張(2)は採用し得ない。
(3)申立理由4(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由4はその理由がない。
4 申立理由5(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし2、4ないし10の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、本件特許の明細書の記載及び図面とも整合する。
したがって、本件特許発明1ないし2、4ないし10に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は嵩増し用樹脂フィルムと第一樹脂フィルムを貼り合わせることの技術的意味が不明であること、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームであること、機能層と第一蒸着層との離間距離と各層の厚さの数値範囲の整合性の点などをあげ、本件特許発明は明確でない旨主張するが、上記(2)のとおり、本件特許発明はいずれも明確である。また、本件特許発明の「前記嵩増し用樹脂フィルムの内側の面と前記第一樹脂フィルムの外側の面とを貼り合わせている」とは、嵩増し用樹脂フィルムの内側の面と第一樹脂フィルムの外側の面が貼り合わされた状態にあることを発明特定事項として特定するものであるから、この点についても特許異議申立人の主張は採用し得ない。
(4)申立理由5(明確性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由5はその理由がない。
5 申立理由6(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし2、4ないし10は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の記載には、本件特許発明1ないし2、4ないし10の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし10を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし2、4ないし10に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 6(1)ないし(2)における主張は、実施可能要件の判断に何ら影響しない。
(4)申立理由6(実施可能要件)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由6はその理由がない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし2、4ないし10に係る特許は、取消理由並びに特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし2、4ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701078