2021-701055
用水管理システム及び用水管理サーバ
- 審判番号
- 2021-701055
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-223965外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6871347
- 請求日
- 2021年11月09日
- 審決日
- 2022年01月14日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (A01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
1 手続の経緯
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特許第6871347号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成27年12月15日に出願された特願2015-244545号の一部を、令和1年12月11日に新たな特許出願としたものであって、令和3年4月19日にその特許権の設定登録がされ、令和3年5月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~8に係る特許に対し、令和3年11月9日に特許異議申立人宮川圭司(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
2 本件発明
特許第6871347号の請求項1~8の特許に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体の発明を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】用水供給源からパイプラインを経由して供給された用水を圃場に供給するように設けられる給水栓と、用水管理サーバとを備える用水管理システムであって、前記給水栓において、前記パイプラインから供給された用水が前記給水栓の外部に吐出されるまでの流水経路に設けられる栓部の開閉駆動を行う栓駆動部と、前記パイプラインに用水を供給するポンプと、続きを表示(全38行)前記ポンプの動作状態として、当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのかを検出する給水開始検出部と、前記圃場における水位を検出するように設置される水位センサと、前記用水管理サーバにおいて、前記栓駆動部が前記栓部を開閉するように制御を行う給水栓制御部とを備え、前記水位センサは、検出した水位を給水栓に送信可能であり、前記給水栓は、電源部と、センサ対応通信部と、サーバ対応通信部とをさらに備え、前記給水開始検出部は、検出された動作状態に応じた通知を、前記用水管理サーバに送信可能に構成される、用水管理システム。【請求項2】用水供給源からパイプラインを経由して供給された用水を圃場に供給するように設けられる給水栓と、用水管理サーバとを備える用水管理システムであって、前記給水栓において、前記パイプラインから供給された用水が前記給水栓の外部に吐出されるまでの流水経路に設けられる栓部の開閉駆動を行う栓駆動部と、前記用水供給源から前記給水栓への用水の供給の開始を検出する給水開始検出部と、前記圃場における水位を検出するように設置される水位センサと、前記用水管理サーバにおいて、前記栓駆動部が前記栓部を開閉するように制御を行う給水栓制御部とを備え、前記給水開始検出部は、検出された用水の供給の開始を、前記用水管理サーバに送信可能に構成される用水管理システム。【請求項3】前記水位センサは、検出した水位を給水栓に送信可能であり、前記給水栓は、前記水位センサが検出した水位を前記用水管理サーバに送信可能である、請求項2に記載の用水管理システム。【請求項4】前記給水栓制御部は、受信された前記水位センサが検出した水位が予め指定されている水位以上である場合に前記給水栓が栓部を閉状態とする閉栓制御を行う請求項1から3のいずれか1項に記載の用水管理システム。【請求項5】前記給水開始検出部は、一定時間ごとに流量検出情報を送信する請求項1から4のいずれか1項に記載の用水管理システム。【請求項6】前記用水供給源から供給される用水を検出する第1用水センサと、給水栓に流れる用水を検出し、検出情報を前記給水栓に送信可能な第2用水センサとを備える請求項1から5のいずれか1項に記載の用水管理システム。【請求項7】給水栓の識別子を、複数の用水供給源の識別子のうち当該給水栓が用水の供給を受ける用水供給源の識別子と対応付けた給水栓管理情報を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の用水管理システム。【請求項8】請求項1から7のいずれか1項に用水管理システムにおける用水管理サーバであって、給水栓の識別子を、複数の用水供給源の識別子のうち当該給水栓が用水の供給を受ける用水供給源の識別子と対応付けた給水栓管理情報に基づいて、複数の用水供給源のそれぞれの給排水管理を実行する用水管理サーバ。」
なお、請求項8の「請求項1から7のいずれか1項に用水管理システム」は「請求項1から7のいずれか1項に記載の用水管理システム」の誤記と認める。
3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として以下の甲第1号証を、従たる証拠として以下の甲第2号証ないし甲第4号証(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲4」という。)を提出し、請求項1~8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
4 証拠の記載
(1)甲1
ア 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、異議の決定で付した。以下同様。)。
(ア)「【0012】図1は、本発明が適用される大規模水田地域の全体図である。ここでは、水源からの灌漑用水を複数の水田地域に対し適正に配分して自動供給を行い、かつ各水田地域に対して上記供給された灌漑用水を、各地域内の複数の末端水田に対して適正に配分し自動給水を行う水田灌漑システムを示している。図1の水田灌漑システムは、河川または湖沼等の水源池101,ポンプにより水源地101から水を汲み上げて、幹線系パイプラインに圧送する機能を備えた親揚水機場102,水源池101から1以上の貯水池に接続する幹線系パイプライン103,自分の貯水池と他の貯水池とに分水する分水装置104,各水田地域ごとに設けられた貯水池105,ポンプにより貯水池105から水を汲み上げて、給水パイプラインに圧送する子揚水機場106,貯水池105から各水田まで水を搬送する給水パイプライン107,コンピュータからの制御信号により制御されて、バルブの開け閉めを行う給水バルブ108,水田の中に設置されて、水田の水位を計測する水位計109,アンテナと無線送受信機を備えた潅漑水管理用のコンピュータ110,アンテナを介して無線でデータの送受信を行うデータ伝送路111から構成される。【0013】管理対象となる水田地域では、同じ給水系統をもつ末端水田112が複数集まって水田地域113を形成し、そのような水田地域113が複数集まって大規模水田地域114を形成している。図1に示すように、各水田地域113の上流には、貯水池105と、貯水池105の水を給水パイプライン107に圧送するための子揚水機場106が設置されている。給水パイプライン107は子揚水機場106と該地域内各水田112とを接続するように敷設され、各水田112の入口には、給水パイプライン107を介して送られてきた灌漑用水を、各水田112に対して給水するための給水バルブ108が設置されている。また、各水田112内には、水位計109が設置されている。子揚水機場106では貯水池貯水量,ポンプ揚水量,ポンプ操作量を所定測定周期ごとに測定し、各給水バルブ108では給水量,バルブ操作量を上記所定周期ごとに測定し、水位計109では水田水位を上記所定周期ごとに測定し、データ伝送路111を介して上記測定データをコンピュータ110に送信している。ここで、データ伝送路111は無線で伝送されるように記載されているが、配線されている場合には有線で伝送することも可能である。」
(イ)「【0015】図2は、本発明の一実施例を示す圃場潅漑水管理装置であるコンピュータの機能ブロック図である。コンピュータ110は、図2に示すように、CPU211,RAM212,ハードディスク装置213,フロッピー(登録商標)ディスク装置214,MOディスク装置215,DVD装置216,CD-ROM装置217,RAMカード装置218,入力装置219,表示装置220によって構成される。CPU211は、水田灌漑システム全体の動作を制御して、親揚水機場102,各分水装置104,各子揚水機場106,各給水バルブ108等の制御機器の操作量を決定し、各水田地域113内の貯水池105への水供給、および各末端水田112への給水を管理する中央処理装置である。RAM212は、各種処理プログラムや各種データをロードする記憶装置である。(中略)【0017】入力装置219は、最適水配分量計画処理プログラム201の実行に必要となる各水田112の特性データや、水源池101からの取水可能量等を入力するための装置である。表示装置220は、処理プログラム201によって算出された各貯水池105への日計画水配分量や各末端水田112への日計画水配分量の表示、および各水田112における水位,給水量等の各種測定データの表示を行う装置である。ここで、上記処理プログラム201,202、およびデータベース203は上記記憶媒体のいずれに記録していてもかまわないため、以下では、記録媒体の読み書きを行う装置がハードディスク装置213のみの場合を例にとって説明する。コンピュータ110では、大規模水田地域114全体としての収量の最大化を図るべく、水源池101からの灌漑用水の各貯水池105への最適な自動水配分と、各水田112への最適な自動給水を行う。これは、ハードディスク装置213に記憶された処理プログラム201,202、およびデータベース203をRAM212にロード・記憶し、CPU211によって各処理プログラム201,202に対応する以下の処理(1)および(2)を順次実行していくことによって実現される。処理(1)は、各貯水池105および各水田112への最適水配分量を計画する処理であり、処理(2)は、上記最適水配分を実現するように各施設機器である親揚水機場102,分水装置104,子揚水機場106,給水バルブ108の自動制御を行う処理である。以下、上記処理(1),(2)の実行方法について説明する。」
(ウ)「【0028】上述のようにして、CPU221において、処理プログラム201により、各水田地域113および各水田112への最適水配分量が計画される。次に、施設機器制御処理プログラム202によって実現される,親揚水機場102,分水装置104,子揚水機場106,および給水バルブ108の自動制御を行う処理(2)について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の一実施例を示す施設機器制御処理プログラムの動作フローチャートであって、ステップ301,304,307,310の各処理を圃場潅漑コンピュータ(水管理装置)110のCPU211が行い、ステップ302,303の各動作を親揚水機場102のポンプが行い、ステップ305,306の各動作を分水装置104が行い、ステップ308,309の各動作を子揚水機場106のポンプが行い、ステップ311,312の各動作を各水田の給水バルブ108が行う。処理プログラム202では、処理プログラム201において決定された各日計画揚水量,各日計画水配分量を実現するように、毎日所定時刻以降、上記データ測定周期と同じタイミングで、各施設機器102,104,106,108の操作量を決定し、各施設機器に対して制御信号の送信を行う。【0029】処理プログラム202では、先ず初めに、当日の水源池101からの親揚水機場102の日計画揚水量と、親揚水機場102において測定される親揚水機場102の当日現在までの総揚水量の実績量とを比較し(ステップ301)、計画量>実績量であれば、親揚水機場102のポンプ運転を行い(ステップ302)、計画量≦実績量であれば、親揚水機場102のポンプ運転を停止する(ステップ303)。これにより、上記日計画揚水量分だけの灌漑用水が水源池101より取水され、大規模水田地域114に対して供給されることになる。【0030】処理プログラム202の次のステップでは、当日の各貯水池105への日計画水配分量と、各分水装置104にて測定される各貯水池105への当日現在までの総水配分量の実績量とを比較し(ステップ304)、計画量>実績量であれば、各貯水池105ごとの未だ供給されていない残りの日計画水配分量(=日計画水配分量-実績量)を算出し、各貯水池105に対して、それぞれの上記水配分残量に比例した水供給を行うように、各分水装置104の制御を行う(ステップ305)。計画量≦実績量であれば、該貯水池105への水供給を停止するように、対応する分水装置104の制御を行う(ステップ306)。これにより、上記日計画水配分量分だけの灌漑用水が各貯水池105に対して供給されることになる。【0031】処理プログラム202の次のステップでは、当日の各貯水池105からの子揚水機場106の日計画揚水量(=当日の各貯水池105への日計画水配分量)と、各子揚水機場106において測定される子揚水機場106の当日現在までの総揚水量の実績量とを比較し(ステップ307)、計画量>実績量であれば、対応する子揚水機場106のポンプ運転を行い(ステップ308)、計画量≦実績量であれば、対応する子揚水機場106のポンプ運転を停止する(ステップ309)。これにより、上記日計画揚水量分だけの灌漑用水が各貯水池105より揚水され、各末端水田112に対して給水されることになる。【0032】処理プログラム202の次のステップでは、当日の各水田112への日計画水配分量と、各給水バルブ108にて測定される各水田112への当日現在までの総給水量の実績量とを比較し(ステップ310)、計画量>実績量であれば、対応する給水バルブ108の開放を行い(ステップ311)、計画量≦実績量であれば、対応する給水バルブ108の閉鎖を行う(ステップ312)。これにより、上記日計画水配分量分だけの灌漑用水が各末端水田112に対して給水されることになる。」
イ 上記アからみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「水源からの灌漑用水を複数の水田地域に対し適正に配分して自動供給を行い、かつ各水田地域に対して上記供給された灌漑用水を、各地域内の複数の末端水田に対して適正に配分し自動給水を行う水田灌漑システムであって、各水田地域ごとに設けられた貯水池105,ポンプにより貯水池105から水を汲み上げて、給水パイプラインに圧送する子揚水機場106,貯水池105から各水田まで水を搬送する給水パイプライン107,コンピュータからの制御信号により制御されて、バルブの開け閉めを行う給水バルブ108,水田の中に設置されて、水田の水位を計測する水位計109,アンテナと無線送受信機を備えた潅漑水管理用のコンピュータ110,アンテナを介して無線でデータの送受信を行うデータ伝送路111から構成され、各水田地域113の上流には、貯水池105と、貯水池105の水を給水パイプライン107に圧送するための子揚水機場106が設置され、給水パイプライン107は子揚水機場106と該地域内各水田112とを接続するように敷設され、各水田112の入口には、給水パイプライン107を介して送られてきた灌漑用水を、各水田112に対して給水するための給水バルブ108が設置され、続きを表示(全12行)各水田112内には、水位計109が設置され、子揚水機場106ではポンプ揚水量,ポンプ操作量を所定測定周期ごとに測定し、水位計109では水田水位を上記所定周期ごとに測定し、データ伝送路111を介して上記測定データをコンピュータ110に送信し、コンピュータ110は、CPU211によって構成され、CPU211は、水田灌漑システム全体の動作を制御して、各子揚水機場106,各給水バルブ108等の制御機器の操作量を決定し、各末端水田112への給水を管理する中央処理装置であり、コンピュータ110では、CPU211によって処理プログラム202に対応する以下の処理(2)を実行し、処理(2)は、子揚水機場106の自動制御を行う処理であり、処理プログラム202では、毎日所定時刻以降、上記データ測定周期と同じタイミングで、各施設機器106の操作量を決定し、各施設機器に対して制御信号の送信を行い、処理プログラム202では、当日の各貯水池105からの子揚水機場106の日計画揚水量と、各子揚水機場106において測定される子揚水機場106の当日現在までの総揚水量の実績量とを比較し、計画量>実績量であれば、対応する子揚水機場106のポンプ運転を行い、計画量≦実績量であれば、対応する子揚水機場106のポンプ運転を停止する、水田潅漑システム。」
(2)甲2
ア 甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0017】≪下水道水位監視システム≫図1~図3に基づき本発明が適用される下水道監視システムを説明する。この下水道水位監視システム1は、図1に示すように、マンホール蓋7の底面に取り付けられた計測通信端末4と、同じくマンホール蓋7の底面に取り付けられて計測通信端末4に駆動用の電源を供給する電池(バッテリー)5と、マンホールM内の水位Pを計測する水位センサ8と、マンホール蓋7の表面に実装されたアンテナ6とを備えている。」
(イ)「【0026】≪第1実施形態≫図4に基づき本発明の第1実施形態を説明する。ここでは本発明の無線中継監視システムは下水道水位監視システム1に適用されている。図3の構成では、各計測通信端末4-1~4-nが上位ネットワークWに直接アクセスするため、計測通信端末4を増設する度に通信費が増加する。すなわち、マンホールM単位で携帯電話網などの回線使用料がその都度発生し、通信の利用料金が高騰するおそれがある。【0027】これに対して図4の構成では、計測通信端末4-1~4-nのそれぞれの近傍に中継用受信端末20が取り付けられている。図4において中継用受信端末20-1~20-nは、計測通信端末4-1~4-nのそれぞれの近傍に設置される。(中略)【0035】例えば図4中の計測通信端末4-1は、計測通信モード時に水位Pの計測値を近距離無線通信Lにより中継用受信端末20-1に伝送する。また、中継用受信端末20-1~20-n間はアドホック型の通信ネットワークが構築され、中継用受信端末20-1~20-n間を近距離無線通信Lにより順次に伝送される。【0036】なお、中継用受信端末20-nは、前記計測値を近距離無線通信L/広域無線通信I(携帯電話回線を含む。)により上位ネットワークW(広域ネットワーク/ローカルエリアネットワーク)経由で情報収集サーバSに伝送する。」
(3)甲3
ア 甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、複数の水田から構成される水田地域において、灌漑の効率化,低コスト化を図るために、遠隔自動操作により給水バルブ操作,揚水ポンプ操作,その他の水管理作業を行うための水田の水管理システムに係り、特に同一地域内に多くの水田を有する大規模水田地域で、寒い地域の水田に対して好適な水田の水管理システムに関するものである。」
(イ)「【0021】図5は、図2の給排水バルブ制御処理プログラムが実行するバルブ制御処理のフローチャートである。給排水バルブ制御処理プログラム203によって実現される水田5-jの水位を、上記目標水位の上記許容範囲内に収めるように、給水バルブ2-j,排水バル3-jの自動制御を行う処理(3)について図5により説明する。給排水バルブ制御処理プログラム203では、水位計1-jの水位測定周期と同じタイミングで給水バルブ2-j,排水バルブ3-jの開閉状態を決定し、各バルブに対して開閉信号の送信を行う。初めに、水位計1-jより測定された最新の水田水位,揚水ポンプ処理プログラム202において決定された揚水ポンプ108の操作量(ON/OFF状態),及び目標水位決定処理プログラム201において決定された水田5-jの目標水位とその許容範囲を読み込み(ステップ501)、以下に示す給排水バルブの開放/閉鎖条件に基づいて、給水バルブ3-j,排水バルブ4-jの操作を行う。・給水バルブ開放条件:揚水ポンプ運転中、かつ水田水位<目標水位-許容範囲・給水バルブ閉鎖条件:揚水ポンプ停止中、又は水田水位>目標水位・排水バルブ開放条件:水田水位>目標水位+許容範囲・排水バルブ閉鎖条件:水田水位<目標水位」
(4)甲4
ア 甲4には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、水田の水管理と肥料・薬品投入管理に関するものである。」
(イ)「【0007】また、給水パイプライン10から水槽6に水を導くための遠隔制御可能な給水制御弁11とその流量を計測する給水流量計12、薬品パイプライン13から水槽6に薬品等を導くための薬品投入制御弁14とその投入量を計測する薬品投入流量計15を、水槽5から排水管16へ排水を制御する為の排水制御弁17とその排水量を計測する排水流量計18を設ける。」
5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「貯水池105」、「給水パイプライン107」、「末端水田112」は、その構成及び機能からみて、それぞれ本件発明1の「用水供給源」、「パイプライン」、「圃場」に相当する。
また、甲1発明の「給水バルブ108」は、「貯水池105」から「給水パイプライン107を介して送られてきた潅漑用水」を、「各水田112に対して給水するため」に「各水田112の入口に」「設置され」たものであるから、当該「給水バルブ108」は、本件発明1の「用水供給源からパイプラインを経由して供給された用水を圃場に供給するように設けられる給水栓」に相当する。
また、甲1発明の「コンピュータ110」は、「各子揚水機場106,各給水バルブ108等の制御機器の操作量を決定し、各末端水田112への給水を管理する」ものであるから、当該「コンピュータ110」は、本件発明1の「用水管理サーバ」に相当する。
そして、甲1発明において『「給水バルブ108」と、「コンピュータ110」「から構成され」る「水田潅漑システム」』は、本件発明1の「給水栓と、用水管理サーバとを備える用水管理システム」に相当する。
(イ)甲1発明において、「給水バルブ108」は、「バルブの開け閉めを行う」ものであり、「給水パイプライン107を介して送られてきた潅漑用水」を「各水田112に対して給水するため」に「各水田112の入口に」「設置され」たものであるから、「水田112」に「給水」されるまでの「潅漑用水」の流水経路に「バルブ」が存在することは明らかである。また、「バルブの開け閉めを行う」のであるから、「開け閉め」のための「バルブ」の駆動部が存在することも自明である。
そうすると、甲1発明の『「給水バルブ108」において、「給水パイプライン107を介して送られてきた潅漑用水」が「水田112」に「給水」されるまでの流水経路に設けられる「バルブの開け閉めを行う」駆動部』は、本件発明1の「前記給水栓において、前記パイプラインから供給された用水が前記給水栓の外部に吐出されるまでの流水経路に設けられる栓部の開閉駆動を行う栓駆動部」に相当する。
(ウ)甲1発明の「子揚水機場106のポンプ」は、「貯水池105から」「汲み上げ」た「水」を「給水パイプラインに圧送する」ものであるから、当該「ポンプ」は、本件発明1の「前記パイプラインに用水を供給するポンプ」に相当する。
(エ)甲1発明において、「子揚水機場106ではポンプ揚水量,ポンプ操作量を所定測定周期ごとに測定」されることから、「子揚水機場106」に「ポンプ操作量」を「測定」するための手段が存在することは自明である。そして、甲1発明は「処理プログラム202では、毎日所定時刻以降、上記データ測定周期と同じタイミングで、各施設機器106の操作量を決定し、各施設機器に対して制御信号の送信を行」うものであるから、「ポンプ操作量」とはポンプの動作の強度に対応する定量値であって動作状態を示すものであると認められる。
そうすると、甲1発明の『「ポンプ操作量」を「測定」するための手段』と、本件発明1の「前記ポンプの動作状態として、当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのかを検出する給水開始検出部」とは、「前記ポンプの動作状態を検出する手段」の点で共通する。
(オ)甲1発明の「水位計109」は、「各水田112内に」「設置され」、「水田の水位を計測する」ものであるから、当該「水位計109」は、本件発明1の「前記圃場における水位を検出するように設置される水位センサ」に相当する。
(カ)甲1発明の「コンピュータ110」の「CPU211」は、「給水バルブ108」の「操作量を決定」するものであり、「給水バルブ108」における「バルブの開け閉め」は当該「決定」された「操作量」に基づいて行われるものと認められる。
そして上記(イ)も踏まえると、甲1発明の『「コンピュータ110」において、「給水バルブ」の「操作量を決定」する「CPU211」』は、本件発明1の「前記用水管理サーバにおいて、前記栓駆動部が前記栓部を開閉するように制御を行う給水栓制御部」に相当する。
(キ)甲1発明の「水位計109」は、「測定データをコンピュータ110に送信」するものであるから、甲1発明のこの点と、本件発明1の「前記水位センサは、検出した水位を給水栓に送信可能であり」の点とは、「前記水位センサは、検出した水位を送信可能であり」の点で共通する。
(ク)甲1発明の「給水バルブ108」は、明らかに野外に設置されるものであり、「コンピュータ110」との間で通信が行われることから、給電のための電源と通信のための遠隔通信手段とを有しているのは自明と考えられる。甲1発明の「給水バルブ108」のこの点と、本件発明1の「前記給水栓は、電源部と、センサ対応通信部と、サーバ対応通信部とをさらに備え」の点とは、「前記給水栓は、電源部と、サーバ対応通信部とをさらに備え」の点で共通する。
(ケ)甲1発明において、「子揚水機場106」で「測定」された「ポンプ操作量」は「コンピュータ110に送信」されるものであるから、「子揚水機場106」に「ポンプ操作量」を「送信」するための手段が存在することは自明である。
そして上記(エ)も踏まえると、甲1発明の『「ポンプ操作量」を「送信」するための手段が、「ポンプ操作量」を「コンピュータ110」に送信する』点と、本件発明1の「前記給水開始検出部は、検出された動作状態に応じた通知を、前記用水管理サーバに送信可能に構成される」点とは、「前記ポンプに関連する手段は、検出された動作状態に応じた通知を、前記用水管理サーバに送信可能に構成される」点で共通する。
(コ)上記(ア)~(ケ)からみて、本件発明1と甲1発明とは、
「用水供給源からパイプラインを経由して供給された用水を圃場に供給するように設けられる給水栓と、用水管理サーバとを備える用水管理システムであって、前記給水栓において、前記パイプラインから供給された用水が前記給水栓の外部に吐出されるまでの流水経路に設けられる栓部の開閉駆動を行う栓駆動部と、前記パイプラインに用水を供給するポンプと、前記ポンプの動作状態を検出する手段と、前記圃場における水位を検出するように設置される水位センサと、前記用水管理サーバにおいて、前記栓駆動部が前記栓部を開閉するように制御を行う給水栓制御部とを備え、前記水位センサは、検出した水位を送信可能であり、前記給水栓は、電源部と、サーバ対応通信部とをさらに備え、前記ポンプに関連する手段は、検出された動作状態に応じた通知を、前記用水管理サーバに送信可能に構成される、用水管理システム。」で一致するものの、以下の点で相違している。
〔相違点1〕ポンプの動作状態の検出に関して、本件発明1は、「当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのか」を「給水開始検出部」が検出するのに対し、甲1発明は、そのような特定がなされておらず、かつ、検出された動作状態に応じた通知を用水管理サーバに送信可能とするのが、本件発明1は、「給水開始検出部」であるのに対し、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。
〔相違点2〕水位センサが検出した水位を送信する点に関して、本件発明1は、「給水栓」に送信するのに対し、甲1発明は、「給水栓」に送信するものでなく、かつ、給水栓に関し、本件発明1は、「センサ対応通信部」を備えているのに対し、甲1発明は、「センサ対応通信部」を備えていない点。
イ 判断
(ア)上記アの相違点1及び2のうち、まず相違点1について検討する。
本件発明1の「前記ポンプの動作状態として、当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのかを検出する給水開始検出部」に関して、「給水開始検出部」が「給水」の「開始」を「検出」する手段であることはその名称から明らかであり、本件明細書の段落【0078】の記載を参酌すれば、「前記ポンプの動作状態として、当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのかを検出する」ことに基づいて「給水」の「開始」を「検出」するものと認められる。
また、本件発明1の「前記給水開始検出部は、検出された動作状態に応じた通知を、前記用水管理サーバに送信可能に構成される」点に関して、「用水管理サーバ」に「送信」される「検出された動作状態に応じた通知」とは、「当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのか」「に応じた通知」であると認められる。
一方、甲1発明においては、「子揚水機場106」にて「ポンプ操作量」が「測定」されるにとどまるものである。すなわち、甲1発明の「ポンプ操作量」を「測定」するための手段は、「前記ポンプの動作状態として、当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのかを検出する」ことに基づいて「給水」の「開始」を「検出」するものではないし、そのように変更する動機付けも無い。
また、甲1発明においては、「子揚水機場106」にて「ポンプ操作量」が「送信」されるにとどまるものである。すなわち、甲1発明の「ポンプ操作量」を「送信」するための手段は、「コンピュータ110」に、「当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのか」「に応じた通知」を「送信」するものではないし、そのように変更する動機付けも無い。
そして、甲2、甲3、甲4をみても、「前記ポンプの動作状態として、当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのかを検出する」ことに基づいて「給水」の「開始」を「検出」することや、「当該ポンプが停止している状態と動作した状態とのいずれであるのか」「に応じた通知」を「送信」することは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に甲2、甲3、甲4に記載の事項を適用することにより、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(イ)申立人は、特許異議申立書において、上記相違点1に係る事項を本件発明1と甲1発明との一致点であると認定しているが、一致点と認定できないことは上述したとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。
ウ 小括
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2、甲3、甲4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)上記(1)アでの対比のうち、(ア)(イ)(オ)(カ)については、本件発明2と甲1発明の対比についても同様である。
(イ)上記(ア)からみて、本件発明2と甲1発明とは、
「用水供給源からパイプラインを経由して供給された用水を圃場に供給するように設けられる給水栓と、用水管理サーバとを備える用水管理システムであって、前記給水栓において、前記パイプラインから供給された用水が前記給水栓の外部に吐出されるまでの流水経路に設けられる栓部の開閉駆動を行う栓駆動部と、前記圃場における水位を検出するように設置される水位センサと、前記用水管理サーバにおいて、前記栓駆動部が前記栓部を開閉するように制御を行う給水栓制御部とを備える、用水管理システム。」で一致するものの、以下の点で相違している。
〔相違点3〕本件発明1は「前記用水供給源から前記給水栓への用水の供給の開始を検出」し「検出された用水の供給の開始を、前記用水管理サーバに送信可能に構成される」「給水開始検出部」を備えるのに対し、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。
イ 判断
(ア)相違点3について検討する。
上記(1)イ(ア)で検討したのと同様である。すなわち、甲1発明においては、「子揚水機場106」にて「ポンプ操作量」が「測定」及び「送信」されるにとどまるものであり、「前記用水供給源から前記給水栓への用水の供給の開始を検出」したり、「検出された用水の供給の開始を、前記用水管理サーバに送信」したりするものではなく、そのように変更する動機付けもない。
そして、甲2、甲3、甲4をみても、上記のことは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に甲2、甲3、甲4に記載の事項を適用することにより、上記相違点3に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(イ)申立人は、特許異議申立書において、上記相違点3に係る事項を本件発明2と甲1発明との一致点であると認定しているが、一致点と認定できないことは上述したとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。
ウ 小括
よって、本件発明2は、甲1発明、甲2、甲3、甲4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明3ないし7について
本件発明3ないし7は、本件発明1又は2の構成を全て含み、さらに限定を付加する発明であるから、上記(1)又は(2)に示した理由と同様の理由により、甲1発明、甲2、甲3、甲4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明8について
本件発明8は、「請求項1から7のいずれか1項に記載の用水管理システムにおける用水管理サーバ」と認められるから、少なくとも請求項1の「検出された動作状態に応じた通知」又は請求項2の「検出された用水の供給の開始」の「送信」を受けるものとなるが、上記(1)又は(2)で述べたように、甲1発明の「コンピュータ110」はそれらの「送信」を受けるものではないし、そのように変更する動機付けも無い。よって、本件発明8は、甲1発明、甲2、甲3、甲4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701055