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特許異議申立

2025-700132

移植装置及び移植方法

審判番号
2025-700132
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-127833
登録番号
7586150
請求日
2025年01月30日
審決日
2025年08月07日
公報発行日
2025年09月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社椿本チエイン
  • 【権利者代理人】恩田 誠
  • 【権利者代理人】恩田 博宣
  • 【異議申立人】阿部 義久
審判長/審判官
  • 審判長 有家 秀郎
  • 審判官 油原 博
  • 審判官 土屋 真理子
分類
P1651.121-Y (A01G)
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7586150号発明「移植装置及び移植方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7586150号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7586150号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和4年8月10日に出願され、令和6年11月11日にその特許権の設定登録がされ、同月19日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和7年1月30日に、特許異議申立人阿部 義久(以下「申立人」という)は、本件特許の請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立てを行い、同年2月19日に、特許異議申立書を補正する手続補正書(方式)を提出した。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~5の特許に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数の苗床片を配列状態にして載置可能な載置部と、 前記苗床片を把持可能に構成されると共に、前記載置部上に前記苗床片が載置された場合に当該苗床片により占有される空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成された把持部材と、 前記空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成されると共に、前記把持部材が前記空間域内に進入して前記苗床片を把持した状態で当該苗床片を把持した把持位置から移動するときに、前記空間域内における前記把持位置と隣り合う隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけ可能に構成された押さえ部材と、を備え、 前記押さえ部材は、前記把持部材が苗床片を把持した状態で前記把持位置から移動する前に、前記隣接位置から離れた位置を始点にして前記空間域内を終点とする移動態様で、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけるように構成されており、 前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置であることを特徴とする移植装置。 【請求項2】 前記押さえ部材は、前記隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけるとき、点で接触する点接触態様、線で接触する線接触態様及び面で接触する面接触態様のうちの何れかの接触態様により前記苗床片に接触する接触部を有することを特徴とする請求項1に記載の移植装置。 【請求項3】 鉛直方向をZ方向とし、Z方向と直交する方向をX方向とし、Z方向及びX方向の双方と直交する方向をY方向とした場合、 前記載置部は、複数の前記苗床片をX方向及びY方向の二方向に沿う配列状態にして載置可能とされ、 前記把持部材は、前記苗床片を把持した状態で前記把持位置からY方向における一方側である-Y方向側に移動する構成とされ、 前記押さえ部材は、前記隣接位置に対してY方向における前記一方側とは反対の他方側である+Y方向とZ方向における鉛直下方である-Z方向に向けて移動する構成とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移植装置。 【請求項4】 前記空間域内の+Y方向における端部でX方向に沿うように配列された複数の前記苗床片が各々存在する位置のうち少なくともX方向における両端の前記苗床片が存在する前記位置に対する進入及び前記位置からの退出が可能に構成されると共に、前記位置に存在する前記苗床片の前記位置からの変位を抑制可能に構成された端部押さえ機構を備えることを特徴とする請求項3に記載の移植装置。 【請求項5】 載置部上に複数の苗床片が配列状態にして載置された場合に当該苗床片により占有される空間域内に、前記苗床片を把持可能に構成された把持部材を進入させ、当該把持部材により移植対象とする前記苗床片を把持させることと、 前記空間域内における前記把持部材が移植対象とする前記苗床片を把持する把持位置と隣り合う隣接位置に押さえ部材を移動させ、当該隣接位置に存在する前記苗床片を前記押さえ部材により前記載置部に対して押さえつけることと、 前記隣接位置に存在する前記苗床片を前記押さえ部材が前記載置部に対して押さえつけた状態において、前記把持部材を当該把持部材が移植対象とする前記苗床片を把持した状態のままで前記把持位置から移動させ、移植対象とする前記苗床片を前記隣接位置に存在する前記苗床片から分離させて移植先に移植することと、を備え、 前記押さえ部材は、前記把持部材が苗床片を把持した状態で前記把持位置から移動する前に、前記隣接位置から離れた位置を始点にして前記空間域内を終点とする移動態様で、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけるように構成されており、 前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置であることを特徴とする移植方法。」 第3 特許異議申立理由及び証拠方法 1 特許異議申立理由の概要 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各甲号証を提出している。 (1)理由1(進歩性欠如) ア 本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件特許の請求項4に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件特許の請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、または、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 証拠 甲第1号証 特開2018-68180号公報 甲第2号証 国際公開第2019/230408号 甲第3号証 特開2004-187661号公報 甲第4号証 特願2022-127833補正案 甲第5号証 特願2022-127833補正案に対する応対記録 第4 当審の判断 1 証拠の記載 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証の記載 甲第1号証には、以下の記載がある。 (ア)「【0016】 以下、分離装置の一実施形態を図面に従って説明する。 図1に示すように、分離装置11は、複数の苗床片12がマトリクス状をなすように切れ目13によって区切られた苗床14から苗床片12を切れ目13において分離するものであり、例えば、苗床14から苗床片12を分離して定植パネル(図示略)に移植する移植機(図示略)に備えられる。分離装置11は、苗床14を支持する支持部15と、支持部15に支持された苗床14から苗床片12を分離する分離部16と、一部の苗床片12の移動を阻害可能な移動阻害部17とを備えている。 【0017】 なお、以下の説明では、分離装置11の幅方向を「左右方向X」とし、分離装置11の奥行方向を「前後方向Y」とし、分離装置11の高さ方向を「鉛直方向Z」とし、左右方向X、前後方向Y、及び鉛直方向Zは互いに直交する方向である。 【0018】 支持部15は、矩形板状の苗床14を支持するとともに前後方向Yに往復移動可能に配置された矩形板状の支持台18と、支持台18を前後方向Yに移動させる支持台移動機構19とを備えている。支持台移動機構19は、例えば、モーター及び減速機などによって構成される。支持台18上における苗床14の4つのコーナー部と対応する位置には、苗床14を位置決めするL字状の位置決め凸部20がそれぞれ設けられている。 【0019】 苗床14は、例えばウレタン等の発泡樹脂からなる弾性変形可能な平面視矩形状のマット体であり、左右方向X及び前後方向Yに沿って延びる複数の切れ目13が平面視で格子状をなすように形成されている。そして、苗床14は、格子状をなす切れ目13により略立方体形状をなす複数の苗床片12に区切られている。因みに本実施形態では、苗床片12が前後方向Yに4個並び且つ左右方向Xに5個並ぶマトリクス状の配置となるように、格子状の切れ目13が苗床14に形成されている。 【0020】 切れ目13によりマトリクス状に区切られた苗床片12は、平面視において隣接する他の苗床片12との境界となる辺の略中央部が当該他の苗床片12と部分的に連なる連結部(図示略)とされている。したがって、苗床14を構成する複数の苗床片12は、左右方向X及び前後方向Yにおいて切れ目13と上記連結部(図示略)とが交互に連続することにより、左右方向X及び前後方向Yにおいて隣接する他の苗床片12と断続的に連結されている。 【0021】 苗床片12の上面における略中央部には平面視円形の凹部(図示略)が形成され、当該凹部内には植物の苗Nが植え付けられる。苗床片12の凹部の底部には苗床片12の下面まで延びる切り込みが入れられており、当該凹部内に植え付けられた苗Nの根が伸びた場合に当該根が当該切り込みを通じて苗床片12の下面側から出られるようになっている。 【0022】 移動阻害部17は、支持台18と左右方向Xで隣り合うように配置され、丸棒状の移動阻害部材21と、移動阻害部材21を左右方向Xに沿って支持台18側に移動させることが可能な移動阻害アクチュエーター22とを備えている。そして、移動阻害部材21は、移動阻害アクチュエーター22の駆動により、苗床14の上面と係合する係合位置(図3に示す位置)と、苗床14の上面から退避した退避位置(図1に示す位置)との間で移動されるようになっている。なお、移動阻害部17は、例えばエアシリンダーによって構成される。 【0023】 分離部16は、支持台18と前後方向Yで隣り合うように配置された分離ユニット23と、分離ユニット23を左右方向X、前後方向Y、及び鉛直方向(上下方向)Zに移動可能な分離ユニット移動機構24とを備えている。分離ユニット移動機構24は、例えば、モーター及び減速機などによって構成される。分離ユニット23は、左右方向X及び鉛直方向Zに平行な板状のベース部材25を備えている。 【0024】 ベース部材25における支持台18側の面となる前面の下部には、左右方向Xに延びるガイドレール26が設けられている。ガイドレール26には、苗床片12を把持する複数(本実施形態では4つ)の把持ユニット27が左右方向Xに沿って摺動可能に支持されている。すなわち、4つの把持ユニット27は、左右方向Xに並んで配置され、それぞれガイドレール26にガイドされながら左右方向Xに摺動可能になっている。 【0025】 各把持ユニット27は、ガイドレール26に摺動可能に支持される支持板28と、支持板28に支持された伸縮アクチュエーター29と、伸縮アクチュエーター29によって略前後方向Yに移動可能に支持されたL字状の連結板30と、連結板30の先端部に連結されるとともに1つの苗床片12を把持可能な把持部材31とを備えている。伸縮アクチュエーター29は、例えばロッドを直線移動させるエアシリンダーによって構成され、前後方向Yに対して鉛直方向Zに傾斜するように配置されている。 【0026】 したがって、伸縮アクチュエーター29は、その駆動により連結板30を介して把持部材31を前斜め下方に向かう方向及び後斜め上方に向かう方向に直線的に移動させることが可能になっている。すなわち、伸縮アクチュエーター29は、把持部材31を前後方向Yにおいて支持台18に近づくように移動させた突出位置(図1に示す位置)と、把持部材31を前後方向Yにおいて支持台18から離れるように移動させた戻し位置(図7に示す位置)との間で移動させることが可能になっている。なお、伸縮アクチュエーター29の上面には、連結板30を、その移動方向に沿ってガイドするガイド部32が設けられている。 【0027】 把持部材31は、苗床片12を前後方向Yの側面側から把持する左右方向Xに並ぶ一対の把持片33と、一対の把持片33を支持しながら駆動する把持片駆動アクチュエーター34とを備えている。 【0028】 把持片駆動アクチュエーター34は、一対の把持片33に苗床片12を把持させたり、一対の把持片33による苗床片12の把持状態を解除させたりするように、一対の把持片33を駆動する。すなわち、把持片駆動アクチュエーター34は、その駆動により、一対の把持片33を左右方向Xにおいて互いに近づけたり遠ざけたりするように移動させることが可能になっている。 【0029】 なお、本実施形態では、各把持部材31が苗床片12を把持した状態で各把持部材31と苗床14とを相対移動させることによって苗床14から連続する少なくとも2つの苗床片12を一度に分離可能な第1分離機構(分離機構)が、各把持部材31及び分離ユニット移動機構24によって構成されている。さらに、本実施形態では、第1分離機構によって苗床14から一度に分離した連続する少なくとも2つの苗床片12を、左右方向Xで隣接する苗床片12を把持する把持部材31同士を互いに離れる方向に相対移動させることによって個別に分離する第2分離機構が、各伸縮アクチュエーター29によって構成されている。」 (イ)「【0039】 次に、分離装置11の作用について説明する。 さて、苗床14から苗床片12を分離する場合には、まず、図3に示すように、レージトング機構35を収縮状態にするとともに左右方向Xに並ぶ4つの把持部材31を突出位置に移動させた状態で分離ユニット23を移動させて、4つの把持部材31を、苗床14における最も手前側(分離ユニット23側)に位置する左右方向Xに整列した一列分(ここでは5つ)の苗床片12である把持用苗床片12Aのうちの左右方向Xで連続する4つの把持用苗床片12Aと前後方向Yにおいてそれぞれ対向させる。 【0040】 続いて、移動阻害部材21を係合位置に移動させると、各把持用苗床片12Aと前後方向Yで隣り合う他の苗床片12である各隣接苗床片12Bの上面に移動阻害部材21が係合される。これにより、各隣接苗床片12Bの上方への移動が移動阻害部材21によって阻害される状態となる。この場合、移動阻害部材21は、各隣接苗床片12Bの上面における苗Nを避けた領域に係合するため、各隣接苗床片12Bに植え付けられた苗Nを傷付けることはない。 【0041】 続いて、図4に示すように、分離ユニット23を苗床14に向かって移動させ、4つの把持部材31の一対の把持片33に、これらと前後方向Yにおいて対応する4つの把持用苗床片12Aをそれぞれ把持させる。このとき、把持部材31の一対の把持片33に把持されない残りの1つの把持用苗床片12Aの上面における苗Nを避けた領域には、棒状の補助係合部材46が係合する。 【0042】 これにより、この1つの把持用苗床片12Aの苗Nを傷付けることなく、当該1つの把持用苗床片12Aの上方への移動が補助係合部材46によって阻害される状態となる。なお、補助係合部材46は、図示しない移動機構によって左右方向X、前後方向Y、及び鉛直方向Zに移動可能に構成されている。 【0043】 続いて、図5に示すように、4つの把持部材31の一対の把持片33がこれらと対応する4つの把持用苗床片12Aをそれぞれ把持した状態で分離ユニット23を上昇させて当該4つの把持部材31を上方に移動させる。すると、4つの把持部材31にそれぞれ把持された4つの把持用苗床片12Aが、4つの把持用苗床片12Aと、把持部材31に把持されていない1つの把持用苗床片12A及び当該4つの把持用苗床片12Aが隣接する4つの隣接苗床片12Bとの間の切れ目13において苗床14から千切られて分離される。 【0044】 すなわち、4つの把持用苗床片12Aは、4つの把持部材31により、当該4つの把持用苗床片12Aと左右方向X及び前後方向Yで隣接する他の5つの苗床片12との間の切れ目13において、それぞれ苗床14から引き千切られて分離される。このとき、上記した4つの把持用苗床片12Aと左右方向X及び前後方向Yで隣接する他の5つの苗床片12、すなわち把持部材31に把持されていない1つの把持用苗床片12A及び4つの隣接苗床片12Bは、4つの把持部材31により4つの把持用苗床片12Aを介して上方へ引っ張られるが、補助係合部材46及び移動阻害部材21によってそれぞれ上方への移動が阻害される。 【0045】 このため、把持部材31に把持されていない1つの把持用苗床片12A及び4つの隣接苗床片12Bは、4つの把持用苗床片12Aに追従して苗床14から引き千切られない。したがって、4つの把持部材31により、苗床14における一列分の複数(ここでは5つ)の把持用苗床片12Aのうちの連続する少なくとも2つ(ここでは4つ)の把持用苗床片12Aだけが苗床14から精度よく一度に分離される。 ・・・ 【0049】 すると、図7に示すように、把持用苗床片12Aをそれぞれ把持した4つの把持部材31が等間隔で左右方向Xに並んだ状態になる。続いて、図8に示すように、リンク駆動アクチュエーター39の駆動によりレージトング機構35を収縮状態から伸長状態にすると、把持用苗床片12Aをそれぞれ把持した4つの把持部材31が等間隔で左右方向Xに並んだ状態を維持しながら、当該4つの把持部材31同士の間隔が所定の距離となるように広げられる。その後、これら4つの把持部材31に把持された把持用苗床片12Aは、移植用アーム(図示略)に受け渡されて定植パネル(図示略)に移植される。 【0050】 以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。 ・・・ 【0052】 (3)分離装置11は、把持部材31によって把持用苗床片12Aを把持した状態で把持部材31を上方に移動させることによって苗床14から把持用苗床片12Aを分離する。このため、苗床14から把持部材31によって把持用苗床片12Aを分離する際に、苗床14から分離される把持用苗床片12Aの苗Nの根が引きずられることを抑制できる。 【0053】 (4)分離装置11は、把持部材31によって把持される把持用苗床片12Aと隣り合う他の苗床片12である隣接苗床片12Bの上方への移動を阻害可能な移動阻害部材21を備えている。このため、把持部材31に把持された把持用苗床片12Aを上方に移動させることによって苗床14から分離する際に、移動阻害部材21によって隣接苗床片12Bの上方への移動が阻害されるので、隣接苗床片12Bを苗床14に残した状態で把持部材31によって把持された把持用苗床片12Aだけを苗床14から分離することができる。すなわち、移動阻害部材21により、苗床14から分離される把持用苗床片12Aに追従して苗床14から隣接苗床片12Bが分離されることを抑制できる。」 (ウ)図3~図5 [図:0001426841000001.jpg] [図:0001426841000002.jpg] [図:0001426841000003.jpg] (エ)上記(ア)及び(イ)の記載を踏まえると、上記(ウ)の図3~5からは、把持部材31の一対の把持片33は、支持台18上に載置された複数の苗床片12がマトリクス状をなすように切れ目13によって区切られた苗床14により占有される空間域に進入して苗床片12を把持し、 一対の把持片33が前記空間域に進入して苗床片12を把持した状態で当該苗床片12を把持した把持位置から移動する前に、移動阻害部材21及び補助係合部材46は、それぞれ、隣接苗床片12Bの上面及び一対の把持片33に把持されない残りの1つの把持用苗床片12Aの上面にあることが看取される。 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アより、甲第1号証には、以下の2の発明(以下、それぞれ、「甲1発明」及び「甲1方法発明」という。)が記載されていると認められる。 (ア)甲1発明 苗床14から苗床片12を分離して定植パネルに移植する移植機であって、(【0016】) 分離装置11を備え、(【0016】) 分離装置11は、複数の苗床片12がマトリクス状をなすように切れ目13によって区切られた苗床14から苗床片12を切れ目13において分離するものであり、苗床14を支持する支持部15と、支持部15に支持された苗床14から苗床片12を分離する分離部16と、一部の苗床片12の移動を阻害可能な移動阻害部17とを備えており、(【0016】) 支持部15は、矩形板状の苗床14を支持するとともに前後方向Yに往復移動可能に配置された矩形板状の支持台18を備え、(【0018】) 苗床14は、例えばウレタン等の発泡樹脂からなる弾性変形可能な平面視矩形状のマット体であり、左右方向X及び前後方向Yに沿って延びる複数の切れ目13が平面視で格子状をなすように形成され、格子状をなす切れ目13により略立方体形状をなす複数の苗床片12に区切られており、(【0019】) 移動阻害部17は、丸棒状の移動阻害部材21と、移動阻害部材21を左右方向Xに沿って支持台18側に移動させることが可能な移動阻害アクチュエーター22とを備えており、移動阻害部材21は、苗床14の上面と係合する係合位置と、苗床14の上面から退避した退避位置との間で移動されるようになっており、(【0022】) 分離部16は、分離ユニット23を備え、分離ユニット23は、ベース部材25を備え、ベース部材25には、ガイドレール26が設けられ、ガイドレール26には、苗床片12を把持する複数の把持ユニット27が支持されており、各把持ユニット27は、伸縮アクチュエーター29と、1つの苗床片12を把持可能な把持部材31とを備え、(【0023】~【0025】) 伸縮アクチュエーター29は、把持部材31を前後方向Yにおいて支持台18に近づくように移動させた突出位置と、把持部材31を前後方向Yにおいて支持台18から離れるように移動させた戻し位置との間で移動させることが可能になっており、(【0026】) 把持部材31は、苗床片12を前後方向Yの側面側から把持する左右方向Xに並ぶ一対の把持片33と、一対の把持片33を支持しながら駆動する把持片駆動アクチュエーター34とを備え、(【0027】) 把持片駆動アクチュエーター34は、一対の把持片33に苗床片12を把持させたり、一対の把持片33による苗床片12の把持状態を解除させたりするように、一対の把持片33を駆動し、(【0028】) 苗床14から苗床片12を分離する場合には、把持部材31を、苗床14における最も手前側に位置する左右方向Xに整列した一列分の苗床片12である把持用苗床片12Aのうちの左右方向Xで連続する4つの把持用苗床片12Aと前後方向Yにおいてそれぞれ対向させ、(【0039】) 続いて、移動阻害部材21を係合位置に移動させると、各把持用苗床片12Aと前後方向Yで隣り合う他の苗床片12である各隣接苗床片12Bの上面に移動阻害部材21が係合され、これにより、各隣接苗床片12Bの上方への移動が移動阻害部材21によって阻害される状態となり、(【0040】) 続いて、把持部材31の一対の把持片33に、把持用苗床片12Aをそれぞれ把持させ、このとき、把持部材31の一対の把持片33に把持されない残りの1つの把持用苗床片12Aの上面における苗Nを避けた領域には、棒状の補助係合部材46が係合し、(【0041】) これにより、当該1つの把持用苗床片12Aの上方への移動が補助係合部材46によって阻害される状態となり、補助係合部材46は、移動機構によって左右方向X、前後方向Y、及び鉛直方向Zに移動可能に構成されており、(【0042】)、 続いて、把持部材31の一対の把持片33が把持用苗床片12Aをそれぞれ把持した状態で分離ユニット23を上昇させて把持部材31を上方に移動させ、把持部材31にそれぞれ把持された把持用苗床片12Aが、把持用苗床片12Aと、把持部材31に把持されていない1つの把持用苗床片12A及び当該把持用苗床片12Aが隣接する隣接苗床片12Bとの間の切れ目13において苗床14から千切られて分離され、(【0043】) このとき、把持部材31に把持されていない1つの把持用苗床片12A及び隣接苗床片12Bは、把持用苗床片12Aを介して上方へ引っ張られるが、補助係合部材46及び移動阻害部材21によってそれぞれ上方への移動が阻害され、(【0044】) 把持部材31に把持された把持用苗床片12Aは、移植用アームに受け渡されて定植パネルに移植される、(【0049】) 把持部材31の一対の把持片33は、支持台18上に載置された複数の苗床片12がマトリクス状をなすように切れ目13によって区切られた苗床14により占有される空間域に進入して苗床片12を把持し、 一対の把持片33が前記空間域に進入して苗床片12を把持した状態で当該苗床片12を把持した把持位置から移動する前に、移動阻害部材21及び補助係合部材46は、それぞれ、隣接苗床片12Bの上面及び一対の把持片33に把持されない残りの1つの把持用苗床片12Aの上面にある、(【図3】~【図5】) 移植機。 (イ)甲1方法発明 甲1発明に係る移植機により、苗床14から苗床片12を分離して定植パネルに移植する方法。 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証の記載 甲第2号証には、以下の記載がある。 (ア)「発明を実施するための形態 [0040] 図1~図4は個別に苗が植えられ、互いに分離し得る単位苗床71が平面上、二方向に配列して構成された苗床7を支持した苗トレイ3と、苗トレイ3上の単位苗床71の移植先となる水耕パネル4と、苗トレイ3上の一部の単位苗床71を保持して苗床7から分離させ、水耕パネル4上に降下させる保持部材5を備える移植装置1の全体を示す。 [0041] 苗トレイ3と水耕パネル4は図10に示す立体形状のフレーム2に支持される。移植装置1も移植装置1の本体、あるいは骨格となるフレーム2に支持される。図1~図4は保持部材5の動きも示している。苗トレイ3と水耕パネル4は例えば連続発泡等の合成樹脂等から製作され、単位苗床71には苗トレイ3上に貯留した水が含浸するよう、発泡ポリウレタン樹脂等のスポンジ状材料が使用される。苗は苗木を含む。 [0042] 保持部材5はフレーム2に鉛直軸回りに回動自在で、且つ昇降自在に支持される。保持部材5は苗トレイ3上の、苗床7の最も外周側に配列し、他の単位苗床71が隣接しない(開放した)側面を有するいずれか1個、もしくは複数個の単位苗床71を単位苗床71の前記側面側から単位苗床71の幅方向に保持して苗床7から分離させる。 [0043] 図面では苗トレイ3上の、保持部材5に保持されるべき単位苗床71の、他の単位苗床71が隣接しない側面が水耕パネル4側を向いた側面であることから、この開放した側面を正面と呼称することもある。保持部材5は単位苗床71の分離後、水耕パネル4に形成された孔41内に、保持している単位苗床71を挿入し、保持部材5から離脱させる(移植する)。」 (イ)「[0047] 保持部材5は苗トレイ3上の単位苗床71を保持した後、鉛直軸回りに回動し、水耕パネル4上でそのまま鉛直方向に降下することにより水耕パネル4の孔41内に単位苗床71を差し込む。この関係で、水耕パネル4と苗トレイ3が同一レベルに位置していれば、降下による単位苗床71の孔41への挿入ができないため、保持部材5が苗トレイ3上から回動するときに、水耕パネル4の手前で一旦、上昇した後に降下しなければならない。これに対し、水耕パネル4の配置レベル(配置高さ)を苗トレイ3の配置レベル(配置高さ)より下方に位置させることで、保持部材5の水耕パネル4の手前での上昇の動作を省略することができる。 [0048] 保持部材5は図1、図6等に示すようにフレーム2のいずれかの部分に鉛直軸回りに回動自在に支持されたアーム8に支持される本体部51と、本体部51に、先端部が開閉自在に支持された一対の把持爪52、52を備える。一対の把持爪52、52は本体部51に直接、開閉自在に支持されることもあるが、図面では図6-(a)、(b)に示すように直接の操作量を拡大して一対の把持爪52、52の開閉動作に伝達する目的で、支持材53、53を介して把持爪52、52を本体部51に間接的に支持させている。この場合、一対の把持爪52、52は各支持材53に連結(軸支)され、一対の支持材53、53が直接、操作されることにより把持爪52、52が開閉動作する。」 (ウ)「[0067] ここで、図1~図4に基づき、保持部材5が苗トレイ3上で単位苗床71を保持する状況から水耕パネル4上へ移動し、水耕パネル4の孔41内に単位苗床71を離脱(移植)させた後、苗トレイ3上に復帰するまでの操作手順を説明する。 ・・・ [0078] 図1の状態からは、保持部材5の、把持爪52、52が張り出す側の正面は図2に示すように鉛直軸回りに90°回動して苗トレイ3側を向き、苗トレイ3上の次に保持部材5が保持すべき目標の単位苗床71に向き合う。 [0079] 次の単位苗床71に向き合うまでに、一対の把持爪52、52は単位苗床71の幅に対応した距離(大きさ)まで開放し、そのまま図7、図8に示すように保持部材5が単位苗床71側へ直線運動(前進)することで、図9-(a)に示すように一対の把持爪52、52が単位苗床71の幅方向両側に差し込まれる。このとき、クランク54の回転による連接棒55の上昇により図6-(b)に示すように一対の把持爪52、52間距離は短縮し、単位苗床71を幅方向に保持(把持)する。 [0080] 保持部材5が図2に示す状態の直前の図7に示す状態になったとき、コントローラは「保持部材5の正面に保持すべき単位苗床71が位置していること」と「保持すべき単位苗床71の幅方向両側に一対の把持爪52、52が位置(開放)していること」をカメラの映像から確認する。確認後、コントローラは保持部材5を単位苗床71側へ接近(前進)させると共に、モータ56を駆動させ、クランク54の回転操作により連接棒55を上昇させ、一対の把持爪52、52間距離を短縮させて単位苗床71を保持させる。 [0081] 一対の把持爪52、52が単位苗床71を保持した図2の状態からは、保持部材5は保持した単位苗床71を苗トレイ3上の苗床7から分離させるために、苗床7に対し、保持部材5が単位苗床71と対向する方向後方側へ直線運動(後退)し、保持部材5が保持した単位苗床71を他の単位苗床71から分離させる。その後、アーム8の鉛直軸回りの90°の回動により保持部材5の正面が図3に示すように苗トレイ3上の単位苗床71と向き合う方向(フレーム2の長さ方向)に直交する方向(フレーム2の幅方向)を向き、複数個の保持部材5は水耕パネル4の孔41の配列方向(フレーム2の長さ方向)に並列する。 [0082] 保持部材5が保持した単位苗床71を他の単位苗床71から分離させるときには、保持した単位苗床71が容易に分離するよう、図4、図5に示すように保持部材5が保持しない他の単位苗床71の正面には、この単位苗床71を苗トレイ3上の元の位置に拘束する拘束部材6が接触し、他の単位苗床71を正面側から押さえている。「他の単位苗床71の正面」は単位苗床71が保持部材5に向き合う面であり、苗トレイ3上に配列している苗床7の内、苗床7の最も外周側に配列し、単位苗床71が隣接しない側面(正面)である。 [0083] 拘束部材6は図2、図4、図5に示すようにフレーム2に、保持部材5による単位苗床71の分離の方向(フレーム2の長さ方向)に交差する方向、図示する例ではフレーム2の幅方向に、例えばフレーム2の幅方向にスライド自在に支持される。具体的にはフレーム2の幅方向に架設された案内棒10の軸方向に連続して形成された例えば溝10a内に一部が差し込まれる、あるいは案内棒10の表面に連続して突設された軌道(レール)を摺動自在に把持する等により、案内棒10の軸方向に沿い、拘束部材6がフレーム2の幅方向にスライド自在に支持される。 [0084] 保持部材5による単位苗床71の分離時には、拘束部材6は分離させられる単位苗床71以外の残りの単位苗床71の部分に移動させられ、その保持部材5側の正面を押さえるように制御されている。図2、図4、図5等では拘束部材6を、案内棒10に沿って摺動可能な摺動部61と、摺動部61から懸垂し、単位苗床71の正面に接触するY字形状の拘束部62の2部分から構成しているが、拘束部材6、あるいは拘束部62の形状は任意である。」 (エ)図5 [図:0001426841000004.jpg] イ 甲2発明 上記アより、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲2発明) 個別に苗が植えられ、互いに分離し得る単位苗床71が平面上、二方向に配列して構成された苗床7を支持した苗トレイ3と、苗トレイ3上の単位苗床71の移植先となる水耕パネル4と、苗トレイ3上の一部の単位苗床71を保持して苗床7から分離させ、水耕パネル4上に降下させる保持部材5を備える移植装置1であって、([0040]) 保持部材5は苗トレイ3上の、苗床7の最も外周側に配列し、他の単位苗床71が隣接しない(開放した)側面(この開放した側面を正面と呼称することもある)を有するいずれか1個、もしくは複数個の単位苗床71を単位苗床71の前記側面側から単位苗床71の幅方向に保持して苗床7から分離させ、([0042]、[0043]) 保持部材5は、先端部が開閉自在に支持された一対の把持爪52、52を備え、([0048]) 保持部材5が単位苗床71側へ前進することで、一対の把持爪52、52が単位苗床71の幅方向両側に差し込まれ、一対の把持爪52、52間距離は短縮し、単位苗床71を幅方向に把持し、([0079]) 保持部材5は保持した単位苗床71を苗トレイ3上の苗床7から分離させるために、苗床7に対し、保持部材5が単位苗床71と対向する方向後方側へ後退し、保持部材5が保持した単位苗床71を他の単位苗床71から分離させ、([0081]) 保持部材5が保持した単位苗床71を他の単位苗床71から分離させるときには、保持した単位苗床71が容易に分離するよう、保持部材5が保持しない他の単位苗床71の正面には、この単位苗床71を苗トレイ3上の元の位置に拘束する拘束部材6が接触し、他の単位苗床71を正面側から押さえており、([0082]) 拘束部材6は、保持部材5による単位苗床71の分離の方向に交差する方向であるフレーム2の幅方向に架設された案内棒10に沿い、スライド自在に支持され、([0083]) 保持部材5による単位苗床71の分離時には、拘束部材6は分離させられる単位苗床71以外の残りの単位苗床71の部分に移動させられ、その保持部材5側の正面を押さえるように制御されている、([0084]) 移植装置1。 (3)甲第3号証 ア 甲第3号証の記載 甲第3号証には、以下の記載がある。 (ア)「【0009】 先ず本発明の定植機の苗床ブロック分離装置1を装備する定植機2の構成の概略を図1を参照して説明すると、基台3の上流端4近傍には搬送するための空の育生パネル7,7,・・を段積みにするパネル積載部6を設け、上流端4にあるスプロケット10と下流端5にあるスプロケット10′との間には、搬送用駒(図示せず)を所定の間隔に設けた無端チェーンによる下段コンベヤ8を張設し、前記パネル積載部6に段積みにされた育生パネル7,7,・・を最下段から1個ずつ下流側にある移植部12に搬送する。図中の矢印Aは上流側を示し、矢印Bは下流側を示す。 【0010】 図1及び図2に示すように、下段コンベヤ8の上方にはスラットコンベヤである上段コンベヤ9(図4、図5、図8を参照)を配設し、この上段コンベヤ9の下流側に載置された苗付ウレタンマットW,W,・・を上段コンベヤ9の下流端9aつまり移植部12に搬送する。前記移植部12では、前記上段コンベヤ9によって搬送されてきた苗付ウレタンマットW,W,・・を単体の苗床ブロックW′,W′,・・毎に千切り、前記下段コンベヤ8で搬送されてきた育生パネル7,7,・・の株間を大きく開けた小円孔であるポット穴7a,7a,・・の中に移植する。なお、この定植機2本体の構成は前記したように、特許文献2以前から公知のものである。 【0011】 前記上段コンベヤ9上を搬送される苗付ウレタンマットWの形態は、既に一般に市販されているものであり、柔軟なウレタンマット製で、図3の(c)図に示すように、上面には方眼の角部に切込み35,35,・・が形成され、その各切込み35,35,・・間は軽く接続した状態にしてあり、移植する際に、ブロック分離具40の把持針44,44,・・(図2、図9参照)により容易に引き千切られ、図3の(d)図に示すように、小立方体の苗床ブロックW′,W′,・・に分離されるようにしてある。苗付ウレタンマットW,W,・・を構成する各苗床ブロックW′,W′,・・の平面視中央の播種穴36,36,・・には、野菜の種が機械により播かれ、この工程では既に発芽して稚苗の状態である水耕苗21,21,・・が配列されている。 【0012】 図4、図5及び図7に示すように、上段コンベヤ9は、ほぼ苗付ウレタンマットWを1枚ずつを載置するに相当する枚数のスラット9b,9b,・・群が無端チェーンの上に複数個架設されており、先行のスラット9b,9b,・・群と、後続のスラット9b,9b,・・群との間にはスラット9b,9b,・・のない間隙が設けてある。各スラット9b,9b,・・群の最後端のスラット9bの上面には、マット係止ピン9d,9d.・・が一列に複数配列されており、苗付ウレタンマットWの播種穴36,36,・・の下面側をこのマット係止ピン9d,9d,・・に刺して載置する。これは正確な位置に載置するための目安であるのと、苗付ウレタンマットWが1個ずつ苗床ブロックW′,W′,・・に引き千切られていき、残る最後列の苗床ブロックW′,W′,・・を把持針44,44,・・で把持するとき、弾かれ転倒することを防ぐ役目をする。図7に示す先頭のスラット9b,9b,・・群には苗付ウレタンマットWが載置されていない状態を示し、符号9eは上段コンベヤ9上に苗付ウレタンマットWを載置する際の縁決め突起である。 【0013】 上段コンベヤ9上に載置された先頭の苗付ウレタンマットWが搬送されて上段コンベヤ9の下流端9aに到着したことを上段コンベヤ9の枠上に設置された光電センサ13,13(図4の(a)図及び図5参照)が検知するとともに、上段コンベヤ9の枠上にブラケットで固着された近接スイッチ14(図1、図4、図5、図7参照)が、後続スラット9b,9b,・・群の先頭のスラット9bの上面に突出したスラット止めボルト9cを検知し上段コンベヤ9が停止するように設定してある。これにより、各スラット9b,9b,・・は正確な位置で停止する。図1における矢印Aは下流側を示し、図1、図4、図5、図7における矢印Bは共に走行方向である下流側方向を示す。 このように、スラット9b,9b,・・の停止位置を正確にすることは、後述するように、上段コンベヤ9上の苗付ウレタンマットWから苗床ブロックW′,W′,・・を一個ずつ把持針44,44,・・で把持して分離するという本発明の定植機の苗床ブロック分離装置1にとっては必要なことである。 【0014】 搬送されてきた苗付ウレタンマットWが上段コンベヤの下流端9aに停止すると、移植部12の下流側両側に固着したエアシリンダ31,31が作動してマット押え具32の「コの字」状板33,33,・・が降下し、その「コの字」状板33,33,・・に所定間隔に配列された4本の押え棒34,34,・・が、苗付ウレタンマットWのこれから把持針44,44,・・で千切ろうとする苗床ブロックW′,W′,・・の脇の残りの各2個の苗床ブロックW′,W′,・・とその2列目の苗床ブロックW′,W′,・・とを、押え棒34,34,・・2本ずつでそれぞれ上面から軽く押圧し固定する。 【0015】 それとほぼ同時に、マット押え具を構成する押え棒支持軸27が降下し、その押え棒支持軸27に所定間隔に配列された2本一組の「逆さへの字」状の押え棒28,28,・・が、苗付ウレタンマットWのこれから把持針44,44,・・で千切ろうとする苗床ブロックW′,W′,・・の上流側の苗床ブロックW′,W′,・・の各上面に降下し、押え棒28,28,・・の水平部分で苗付ウレタンマットWを上から軽く押圧する。これで把持針44,44,・・で千切ろうとする苗床ブロックW′,W′,・・の周囲の苗付ウレタンマットWの上面は全て押圧固定されることになる。 【0016】 前記押え棒28,28,・・及び押え棒34,34,・・の各周囲には水耕苗21,21,・・を傷めないように合成ゴム等の緩衝材でコーティングしてあり、押え棒28,28,・・及び押え棒34,34,・・は押圧時に苗付ウレタンマットWの水耕苗21,21,・・の中心を外し、その両脇部分を軽く押圧するので水耕苗21,21,・・を傷めることはなく、仮に葉先部分を押え棒28,28,・・及び押え棒34,34,・・で押圧しても、従来技術のように、水耕苗21,21,・・がウレタンマット固定針で突き刺した所が黒く枯れるようなことはなく、また、ウレタンマット固定針が振動や衝撃によって折れる事故が生ずる場合があったが、対象物が食材であることから「草の根を分けても探さなければならない」という重大な事故となった。図6及び図8中の符号29は押え棒28,28,・・の角度調節用ネジであり、押え棒28,28・・の角度の補正を行う。このれによって苗付ウレタンマットWに対する押圧力の加減調節が容易にできるようになった。 【0017】 周囲を押え棒28,28,・・及び押え棒34,34,・・によって押圧された苗床ブロックW′,W′,・・を把持針44,44,・・で引き千切り下流側の移植針47,47,・・に搬送する。上段コンベヤ9はエアシリンダ15の作動により横方向に複数段階の間欠的摺動(実施例では3段階)をするように設定されており、その都度、押え棒28,28,・・と押え棒34,34,・・も上下動して、苗付ウレタンマットWの上面の固定と解除をくり返し、横列に並列した苗床ブロックW′,W′,・・を分離して順次移植針へと搬送していく。 【0018】 苗ブロックW′,W′,・・は、図5に示すように、エアチャック43,43,・・の駆動で開閉する前記把持針44,44,・・により把持され、エアシリンダ42,42,・・の作動で昇降することにより、単体の苗床ブロックW′,W′,に分離される。更に、ロッドレスシリンダ41が駆動して搬送され、移植具46の移植針47,47,・・に引き渡される。苗付ウレタンマットWの先頭列の苗床ブロックW′,W′,・・が全て千切られ搬送されると、上段コンベヤ9は前進して苗付ウレタンマットWの2列目の苗床ブロックW′,W′,・・が先頭列となる。そこで再び、苗付ウレタンマットWから苗ブロックW′,W′,・・を1個ずつ分離し、移植針47,47,・・まで搬送する動作が繰り返される。従来の装置では、苗床ブロックW′,W′,・・の最後の1列は前後の押さえが効かなくなり、一個が千切られるとき、残りの苗床ブロックW′,W′,・・が弾かれたり倒れたりするので、絶えず注意が必要で人手を患わす不具合があったが、本発明の苗床ブロック分離装置1では押え棒28,28,と押え棒34,34,・・及びマット係止ピン9d,9d,・・の効果により、苗床ブロックの最後の一個まで把持針で掴み取ることができ、定植作業を円滑に遂行することができる。 【0019】 基台3の上流側にあるパネル積載部6に段積みされた育生パネル7,,・・が1個ずつ、所定の間隔に搬送用駒(図示せず)を設けたチェーンコンベヤ(図示せず)による下段コンベヤ8によって搬送されてくると、下流端5近傍に配置された穴検知センサ52,52が上方を通過する育生パネル7のポット穴7a,7a,・・を検知し、下段コンベヤ8は移植に合わせた間欠駆動となる。それと合わせて穴位置決め具50,50がエアシリンダ51,51の作動により伸長縮退してポット穴7a,7aに出入し、移植針47,47,・・が移植する動作に見合うポット穴7a,7a,・・の正確な位置決めと時間的移動を行っていく。穴位置決め具50,50がポット穴7a,7aに嵌入する時、育生パネル7の後端を押し搬送してきた搬送駒(図示せず)は僅かに後退し、穴位置決め具50,50が育生パネル7の前進しようとする慣性を排除して正確にポット穴7a,7aの位置決めができるようにする。」 イ 甲3発明 上記アより、甲第3号証には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲3発明) 苗床ブロック分離装置1を装備する定植機2であって、(【0009】) 下段コンベヤ8の上方にはスラットコンベヤである上段コンベヤ9を配設し、この上段コンベヤ9の下流側に載置された苗付ウレタンマットWを上段コンベヤ9の下流端9aつまり移植部12に搬送し、移植部12では、前記上段コンベヤ9によって搬送されてきた苗付ウレタンマットWを単体の苗床ブロックW′毎に千切り、前記下段コンベヤ8で搬送されてきた育生パネル7のポット穴7aの中に移植するものであり、(【0010】) 苗付ウレタンマットWは、柔軟なウレタンマット製で、上面には方眼の角部に切込み35が形成され、その各切込み35間は軽く接続した状態にしてあり、移植する際に、ブロック分離具40の把持針44により容易に引き千切られ、小立方体の苗床ブロックW′に分離されるようにしてあり、(【0011】) 上段コンベヤ9は、ほぼ苗付ウレタンマットWを1枚ずつを載置するに相当する枚数のスラット9b群が無端チェーンの上に複数個架設されており、先行のスラット群と、後続のスラット群との間にはスラットのない間隙が設けてあり、各スラット群の最後端のスラット9bの上面には、マット係止ピン9dが一列に複数配列されており、苗付ウレタンマットWの播種穴36の下面側をこのマット係止ピン9dに刺して載置し、苗付ウレタンマットWが1個ずつ苗床ブロックW′に引き千切られていき、残る最後列の苗床ブロックW′を把持針44で把持するとき、弾かれ転倒することを防ぐ役目をし、(【0012】) 搬送されてきた苗付ウレタンマットWが上段コンベヤの下流端9aに停止すると、マット押え具32の「コの字」状板33が降下し、その「コの字」状板33に所定間隔に配列された4本の押え棒34が、苗付ウレタンマットWのこれから把持針44で千切ろうとする苗床ブロックW′の脇の残りの各2個の苗床ブロックW′とその2列目の苗床ブロックW′とを、押え棒342本ずつでそれぞれ上面から軽く押圧し固定し、(【0014】) それとほぼ同時に、マット押え具を構成する押え棒支持軸27が降下し、その押え棒支持軸27に所定間隔に配列された2本一組の「逆さへの字」状の押え棒28が、苗付ウレタンマットWのこれから把持針44で千切ろうとする苗床ブロックW′の上流側の苗床ブロックW′の各上面に降下し、押え棒28の水平部分で苗付ウレタンマットWを上から軽く押圧し、把持針44で千切ろうとする苗床ブロックW′の周囲の苗付ウレタンマットWの上面は全て押圧固定されることになり、(【0015】) 押え棒28と押え棒34及びマット係止ピン9dの効果により、苗床ブロックの最後の一個まで把持針で掴み取ることができ、定植作業を円滑に遂行することができる、(【0018】) 定植機2。 2 本件発明1 (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「複数の苗床片12がマトリクス状をなすように切れ目13によって区切られた苗床14」は、本件発明1の「複数の苗床片を配列状態にし」たものに相当し、甲1発明の「支持部15」の備える「支持台18」は、「苗床14を支持する」ものであるから、本件発明1の「複数の苗床片を配列状態にして載置可能な載置部」に相当する。 イ 甲1発明の「把持部材31」の「一対の把持片33」は、「把持片駆動アクチュエーター34」により「駆動」されて「苗床片12を把持」できるようにされたものであるから、甲1発明は、本件発明1の「把持部材」が「前記苗床片を把持可能に構成される」ことに相当する構成を備える。 ウ 甲1発明の「把持部材31」の「一対の把持片33」が、「苗床14から苗床片12を分離する場合」に、「苗床14における最も手前側に位置する左右方向Xに整列した一列分の苗床片12である把持用苗床片12A」に「対向」する位置から移動して、「支持台18上に載置された複数の苗床片12がマトリクス状をなすように切れ目13によって区切られた苗床14により占有される空間域に進入して苗床片12を把持し」、その後、「把持用苗床片12A」が「隣接苗床片12Bとの間の切れ目13において苗床14から千切られて分離され」るべく「上方に移動」するものであることから、上記イの対比を踏まえると、甲1発明の「把持部材31」は、本件発明1の「前記苗床片を把持可能に構成されると共に、前記載置部上に前記苗床片が載置された場合に当該苗床片により占有される空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成された把持部材」に相当する。 エ 本件発明1の「押さえ部材」と甲1発明の「移動阻害部材21」及び「補助係合部材46」とは、ともに、把持部材が把持しない苗床片(甲1発明の「隣接苗床片12B」及び「把持部材31の一対の把持片33に把持されない・・・1つの把持用苗床片12A」)が、把持部材が把持した苗床片の移動に連れて移動してしまうのを抑制する部材であるから、「移動抑制部材」の点で共通する。 オ (ア)甲1発明の「移動阻害部材21」及び「補助係合部材46」について、「移動阻害部材21」は、「苗床14の上面と係合する係合位置と、苗床14の上面から退避した退避位置との間で移動されるようになって」いるとともに、「移動阻害部材21及び補助係合部材46」は、それぞれ、「一対の把持片33が前記空間域に進入して苗床片12を把持した状態で当該苗床片12を把持した把持位置から移動する前に、・・・隣接苗床片12Bの上面及び一対の把持片33に把持されない残りの1つの把持用苗床片12Aの上面にあ」り、さらに、「各隣接苗床片12Bの上面に移動阻害部材21が係合され」て「各隣接苗床片12Bの上方への移動が移動阻害部材21によって阻害される状態とな」り、また、「当該1つの把持用苗床片12Aの上方への移動が補助係合部材46によって阻害される状態となる」ものである。 (イ)「補助係合部材46」が、「移動阻害部材21」と同様に、把持部材が把持しない苗床片の「上面にあ」ることによって当該苗床片の「上方への移動」を阻害する状態とする部材であることから、「移動阻害部材21」同様、「苗床14の上面から退避した退避位置との間で移動されるようになって」いることは明らかである。 そうすると、上記エの対比を踏まえると、本件発明1の「押さえ部材」が「前記空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成されると共に、前記把持部材が前記空間域内に進入して前記苗床片を把持した状態で当該苗床片を把持した把持位置から移動するときに、前記空間域内における前記把持位置と隣り合う隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけ可能に構成された」ことと、甲1発明の「移動阻害部材21」及び「補助係合部材46」が上記(ア)のような状態となるように構成されることとは、「移動抑制部材」が「前記把持部材が前記空間域内に進入して前記苗床片を把持した状態で当該苗床片を把持した把持位置から移動するときに、前記空間域内における前記把持位置と隣り合う隣接位置に存在する前記苗床片を移動抑制可能に構成された」点で共通する。 カ 上記オの対比を踏まえると、本件発明1の「前記押さえ部材は、前記把持部材が苗床片を把持した状態で前記把持位置から移動する前に、前記隣接位置から離れた位置を始点にして前記空間域内を終点とする移動態様で、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけるように構成されて」いることと、甲1発明の「移動阻害部材21」が「苗床14の上面と係合する係合位置と、苗床14の上面から退避した退避位置との間で移動されるようになっており」、「補助係合部材46」についても同様であることが明らかであるとともに、「一対の把持片33が前記空間域に進入して苗床片12を把持した状態で当該苗床片12を把持した把持位置から移動する前に、移動阻害部材21及び補助係合部材46は、それぞれ、隣接苗床片12Bの上面及び一対の把持片33に把持されない残りの1つの把持用苗床片12Aの上面にあ」って「移動」を「阻害」することとは、「移動抑制部材」は、「前記把持部材が苗床片を把持した状態で前記把持位置から移動する前に、前記隣接位置から離れた位置を始点にして、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を移動抑制するように構成されて」いる点で共通する。 キ 甲1発明の「移植機」は、苗床14から苗床片12を分離して定植パネルに移植するものであり、本件発明1の「移植装置」に相当する。 ク 上記ア~キより、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点) 複数の苗床片を配列状態にして載置可能な載置部と、 前記苗床片を把持可能に構成されると共に、前記載置部上に前記苗床片が載置された場合に当該苗床片により占有される空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成された把持部材と、 前記把持部材が前記空間域内に進入して前記苗床片を把持した状態で当該苗床片を把持した把持位置から移動するときに、前記空間域内における前記把持位置と隣り合う隣接位置に存在する前記苗床片を移動抑制可能に構成された移動抑制部材と、を備え、 前記移動抑制部材は、前記把持部材が苗床片を把持した状態で前記把持位置から移動する前に、前記隣接位置から離れた位置を始点にして、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を移動抑制するように構成されている、 移植装置。 (相違点1) 本件発明1は、移動抑制部材が、「前記空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成され」、前記空間域内における前記把持位置と隣り合う隣接位置に存在する前記苗床片を「前記載置部に対して押さえつけ可能」に構成された「押さえ部材」であり、「前記空間域内を終点とする移動態様」で、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を「前記載置部に対して押さえつける」ように構成されており、「前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である」のに対し、甲1発明は、移動抑制部材である「移動阻害部材21及び係合部材46」について、「苗床14の上面と係合する係合位置」が移動の終点とされているが、該「係合位置」が「前記空間域」内であるか不明であるから、「前記空間域内を終点とする移動態様」であるか、及び、「前記空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成され」ているか不明であるとともに、「前記載置部に対して押さえつけ可能」に構成された「押さえ部材」であるか不明であり、また、「前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である」ものではない点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 ア 甲2発明の「個別に苗が植えられ、互いに分離し得る単位苗床71が平面上、二方向に配列して構成された苗床7を支持した苗トレイ3」は本件発明1の「複数の苗床片を配列状態にして載置可能な載置部」に相当する。 イ 甲2発明の「保持部材5」は、本件発明1の「把持部材」に相当する。 ウ 甲2発明の「拘束部材6」は、把持部材(甲2発明の「保持部材5」)が把持した苗床片(甲2発明の「保持部材5が保持した単位苗床71」)と隣り合う苗床片(甲2発明の「分離させる」「他の単位苗床71」)が、把持部材が把持した苗床片の移動に連れて移動してしまうのを抑制する部材であるから、「移動抑制部材」の点で共通する。 しかし、この「拘束部材6」は、「他の単位苗床71」を「正面側」、すなわち「苗床7の最も外周側に配列し、他の単位苗床71が隣接しない(開放した)側面」の側から押さえるものであるから、「前記載置部」(苗トレイ3)に対して「押さえつけ可能」に構成された「押さえ部材」ではなく、「苗床7」の「最も外周側に配列」する「単位苗床71」に占有される「空間域」に進入するともいえない。また、甲第2号証の図5(上記1(2)ア(エ))において、「拘束部材6」の「拘束部62」が「単位苗床71」の上下方向の略中央に接触する様子が示されているが、当該拘束部62の接触は、「単位苗床71」の「上面」ではなく「側面」の側から接触することを前提としているから、甲2発明は「載置部」に対する「押さえ部材」の接触位置として「前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である」構成を有するものでもない。 エ そうすると、甲2発明は、相違点1に係る本件発明1の構成を備えるものではない。また、甲1発明の「移動阻害部材21及び係合部材46」は、「上面」で移動を阻害するのに対し、甲2発明の「拘束部材6」は「側面」に位置して移動を阻害するから、両者は、移動を阻害する態様が異なっており、甲1発明の「移動阻害部材21及び係合部材46」について、甲2発明の「拘束部材6」に置き換える動機付けはない。したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2発明から当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 オ 申立人は、申立書中において甲第2号証の段落0024、0083等を根拠に、甲第2号証の「拘束部材6」は「・・・前記載置部に対して押さえつけ可能に構成された押さえ部材」に相当する旨主張する(特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)13頁下から9行~14頁4行)。しかし、段落0024には「拘束部材6」が「単位苗床71の前記側面(正面)側から押さえ」ることが記載されているのであって、単位苗床71を載置する苗トレイ3に押さえつけることが記載されたものではない。また、0083にも、苗トレイとの関係について何ら記載はなく、「拘束部材6」は「・・・前記載置部に対して押さえつけ可能に構成された押さえ部材」に相当する旨主張を採用することはできない。 カ 申立人は、また、甲第1号証において「押さえ部材(移動阻害部材21)」を甲第2号証の「拘束部材6」に置き換えれば、本件請求項1発明の全要件を備えることができ、本件明細書段落【0004】に記載された課題を解決することができるため、本件発明1は、甲第1号証と甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する(申立書18頁12~19行。)しかし、上記ウ及びエにおいて検討したように、甲2発明は、相違点1に係る本件発明1の構成を有さないし、甲1発明の「移動阻害部材21及び係合部材46」を甲2発明の「拘束部材6」に置き換える動機付けもない。よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明と甲2発明とから当業者が容易になし得たこととはいえない。 キ 甲2発明が有する構成に関し、申立人は、「空間域内を終点とする移動態様である」点で相違するとしても、その点は、甲第2号証に記載されているに等しいないし導出し得る示唆がされている旨主張する。(申立書15頁2行~16頁下から3行)。しかし、甲2発明の「拘束部材6」が「単位苗床71」に接触した際に、当該接触の前に「単位苗床71」が占めていた領域内に「拘束部材6」の「拘束部62」が「側面」から押されて若干入り込んだとしても、そのことによって上記ウ及びエの判断を変更すべき事情はない。 ク 以上のとおりであるから、甲1発明に甲2発明を組み合わせて容易とする申立人の主張は、採用することができない。 (3)小括 本件発明1は、甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 3 本件発明2及び3 本件発明2及び3は、いずれも、本件発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものである。 上記2において検討したとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件発明2及び3において付加された構成について検討するまでもなく、本件発明2及び3は、いずれも、甲1発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 4 本件発明4 (1)対比 本件発明4は、本件発明1を間接的に引用し、本件発明1の構成を有するから、本件発明4と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも、本件発明1と甲1発明との相違点である相違点1において相違する。 (2)判断 相違点1が、甲2発明に基づいて想到容易でないことは、上記2に判断したとおりである。 申立人は、本件発明4が容易に発明できた根拠として、甲第3号証も挙げているので(上記第3の1(1)イ)、以下、甲3発明を考慮した場合に相違点1が想到容易であるか否かを判断する。 ア 甲3発明の「柔軟なウレタンマット製で、上面には方眼の角部に切込み35,35,・・が形成され、その各切込み35,35,・・間は軽く接続した状態にしてあ」る「苗付ウレタンマットW」は、本件発明1の「配列状態」の「複数の苗床片」に相当し、甲3発明の「移植部12」において「苗付ウレタンマットW」を「載置」する「上段コンベヤ9」の「スラット群」は、本件発明1の「載置部」に相当する。 イ 甲3発明は、「押え棒34」が、「これから把持針44で千切ろうとする苗床ブロックW′の脇の残りの各2個の苗床ブロックW′とその2列目の苗床ブロックW′とを、2本ずつでそれぞれ上面から軽く押圧し固定」し、「押え棒28」が「苗付ウレタンマットWのこれから把持針44で千切ろうとする苗床ブロックW′の上流側の苗床ブロックW′の各上面に降下し、押え棒28の水平部分で苗付ウレタンマットWを上から軽く押圧し、把持針44で千切ろうとする苗床ブロックW′の周囲の苗付ウレタンマットWの上面は全て押圧固定されることにな」るものである。 そして、甲3発明の「押え棒34」及び「押え棒28」は、「柔軟なウレタンマット製」の「苗床ブロックW′の各上面」から「軽く押圧」して固定するものであるから、軽い押圧で柔軟なウレタンマット製の苗床ブロックW′が若干凹み得ることまで考慮すれば、本件発明1の「前記空間域に対する進入」が可能に構成されるものといえ、空間域からの「退出」についても可能であるといえる。そうすると、甲3発明は、上記相違点1に係る本件発明1の構成のうち、「前記空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成されると共に、前記把持部材が前記空間域内に進入して前記苗床片を把持した状態で当該苗床片を把持した把持位置から移動するときに、前記空間域内における前記把持位置と隣り合う隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけ可能に構成された押さえ部材」に相当する構成を備えるといえる。 ウ 甲3発明の「押え棒34」及び「押え棒28」は、「苗床ブロックW′の各上面」に当接するまでにも移動することは自明であるから、上記イの対比を踏まえると、甲3発明は、上記相違点1に係る本件発明1の構成のうち「前記押さえ部材は、前記把持部材が苗床片を把持した状態で前記把持位置から移動する前に、前記隣接位置から離れた位置を始点にして前記空間域内を終点とする移動態様で、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけるように構成されて」いることに相当する構成を備えるといえる。 エ しかし、甲3発明の「押え棒34」及び「押え棒28」は、「これから把持針44で千切ろうとする苗床ブロックW′」に隣接する苗床ブロックW′」の「上面」を「軽く押圧」して「固定」するものであるから、「柔軟なウレタンマット製」の「苗床ブロックW′」の若干の凹みを考慮したとしても、上記相違点1に係る本件発明1の構成のうち、「前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である」構成を備えない。 オ また、上述のとおり、甲3発明の「押え棒34」及び「押え棒28」は、「上面」を「軽く押圧」するものであり、甲1発明において甲3発明を採用するにあたって、移動の終点を、「上面」を「軽く押圧」する程度の範囲の中でどの位置とするかは、当業者が適宜設計し得る事項であるとは言えても、「上面」とはいえない「苗床片の上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置」とすることまでも設計事項ということはできない。よって、甲1発明において甲3発明を適用しても、「前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である」ものとすることはできず、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至るものではない。 カ 申立人は、甲3発明について、本件発明4の構成である「前記空間域内の+Y方向における端部でX方向に沿うように配列された複数の前記苗床片が各々存在する位置のうち少なくともX方向における両端の前記苗床片が存在する前記位置に対する進入及び前記位置からの退出が可能に構成されると共に、前記位置に存在する前記苗床片の前記位置からの変位を抑制可能に構成された端部押さえ機構を備える」に相当する構成を有し、本件発明4は、甲1発明、甲2発明、甲3発明に基づいて当業者が容易になし得たといえる旨主張しているが、相違点1に係る本件発明1の構成について、上記2において検討したように甲2発明を組み合わせても当業者が容易になし得たものとはいえない。また、上記エ及びオに示したとおり、甲1発明に甲3発明を組み合わせても、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至ることは当業者が容易になし得たものとはいえない。 キ よって、その余の構成について判断するまでもなく、本件発明1を引用する本件発明4は、甲1発明、甲2発明、甲3発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (3)小括 本件発明4は、甲1発明、甲2発明及び甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 5 本件発明5 (1)対比 本件発明5は、実質的に、本件発明1に係る移植装置による移植方法の発明であり、本件発明5と甲1方法発明とを対比すると、甲1方法発明の「移植する方法」は、本件発明5の「移植方法」に相当する。 そして、上記2(1)の本件発明1と甲1発明との対比を踏まえると、本件発明5と甲1方法発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点) 載置部上に複数の苗床片が配列状態にして載置された場合に当該苗床片により占有される空間域内に、前記苗床片を把持可能に構成された把持部材を進入させ、当該把持部材により移植対象とする前記苗床片を把持させることと、 前記空間域内における前記把持部材が移植対象とする前記苗床片を把持する把持位置と隣り合う隣接位置に移動抑制部材を移動させ、当該隣接位置に存在する前記苗床片を前記移動抑制部材により移動抑制することと、 前記隣接位置に存在する前記苗床片を前記移動抑制部材が移動抑制した状態において、前記把持部材を当該把持部材が移植対象とする前記苗床片を把持した状態のままで前記把持位置から移動させ、移植対象とする前記苗床片を前記隣接位置に存在する前記苗床片から分離させて移植先に移植することと、を備え、 前記移動抑制部材は、前記把持部材が苗床片を把持した状態で前記把持位置から移動する前に、前記隣接位置から離れた位置を始点にして前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を移動抑制するように構成されている、 移植方法。 (相違点1’) 本件発明5は、移動抑制部材が、前記苗床片を「前記載置部に対して押さえつけ可能」に構成された「押さえ部材」であり、「前記空間域内を終点とする移動態様」で、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を「前記載置部に対して押さえつける」ように構成されており、「前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である」のに対し、甲1方法発明の「移動阻害部材21」及び「補助係合部材46」が、前記苗床片を「前記載置部に対して押さえつけ可能」に構成された「押さえ部材」であるか、「前記空間域内を終点とする移動態様」であるか、不明であり、「前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である」ものではない点。 (2)判断 上記相違点1’について検討する。 ア 甲1方法発明に基づいて容易といえるかについて (ア)上記2(1)において検討したのと同様の理由により、甲1方法発明の「移動阻害部材21」及び「補助係合部材46」は、「前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である」、「前記載置部に対して押さえつけ可能」に構成された「押さえ部材」ではない。 また、甲1方法発明の「移動阻害部材21」及び「補助係合部材46」を、「前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である」、「前記載置部に対して押さえつけ可能」に構成された「押さえ部材」とすることが周知技術であるといえるものでもなく、甲1方法発明において相違点1’に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。 (イ)申立人は、甲第1号証は本件発明5の全要件を備えている旨主張する(申立書25頁最下行~27頁7行、下から2行~最下行)が、本件発明5と甲1方法発明とは、相違点1’で相違するものであり、申立人の上記主張は採用できない。 イ 甲1方法発明及び甲3発明に基づいて容易といえるかについて 甲3発明については、上記4(2)において検討したとおりであり、甲1方法発明及び甲3発明に基づいて、相違点1’に係る本件発明5の構成とすることは、上記4(2)において本件発明4と甲1発明との相違点として検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たことであるということはできない。 ウ 甲1方法発明~甲3発明に基づいて容易といえるかについて 甲2発明については、上記2(2)において検討したとおりであり、甲1方法発明及び甲2発明に基づいて、相違点1’に係る本件発明5の構成とすることは、上記2(2)において本件発明1と甲1発明との相違点として検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たことであるということはできない。 そして、上記イの検討も踏まえると、本件発明5は、申立人が提出した甲第1号証~甲第3号証に記載された発明から容易になし得たものであるということはできない。 (3)小括 本件発明5は、甲1方法発明に基づいて、甲1方法発明及び甲3発明に基づいて、または甲1方法発明~甲3発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700132

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