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特許異議申立

2021-701040

溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物

審判番号
2021-701040
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-045470外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6885647
請求日
2021年11月02日
審決日
2023年04月18日
公報発行日
2023年07月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(C10M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6885647号発明「溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6885647号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6885647号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。 特許第6885647号の請求項3に係る特許異議申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は平成29年3月9日に出願され、令和3年5月17日に特許権の設定登録がされ(請求項の数4)、同年6月16日に特許掲載公報が発行され、同年11月2日に特許異議申立人 泰 誠一郎(以下「申立人」という。)によって、全請求項に係る発明に対して、特許異議の申立てがされたものである。 その後の手続は次のとおりである。 令和4年 3月23日付 当審から取消理由通知 令和4年 5月27日 特許権者から意見書の提出 令和4年 9月13日付 当審から取消理由通知(決定の予告) 令和4年11月11日 特許権者から意見書の提出とともに訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。) 令和5年 1月11日付 当審から訂正請求があった旨の通知 令和5年 2月 9日 申立人から意見書 第2 本件訂正についての判断 1 請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、「特許第6885647号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正事項 本件訂正は、次の訂正事項からなるものである。 (1)訂正事項1 請求項1に「クマリン系化合物を含む発光性化合物と、を含有する 溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物。」と記載されているのを、「クマリン系化合物を含む発光性化合物と、を含有し、 前記フッ素系溶剤は、1,3-トリフルオロメチルベンゼンを含む 溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物。」と訂正する。 (2)訂正事項2 請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 請求項4に「請求項3に記載の」と記載されているのを、「請求項1に記載の」と訂正する。 3 訂正要件についての検討 (1)一群の請求項について 訂正前の請求項1~4のうち、請求項2~4は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であるから、訂正前の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であるといえる。 (2)訂正事項1 ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前に特定のなかった「フッ素系溶剤」について、「前記フッ素系溶剤は、1,3-トリフルオロメチルベンゼンを含む」と限定するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと解される。 イ 実質上の拡張・変更の有無 前記アで検討したように、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 ウ 新規事項の追加の有無 訂正事項1の「前記フッ素系溶剤は、1,3-トリフルオロメチルベンゼンを含む」は、訂正前の請求項3に記載されている事項である。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。 (3)訂正事項2 ア 訂正の目的 訂正事項2は、請求項3を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上の拡張・変更の有無 訂正事項2は、請求項3を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものといえない。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 ウ 新規事項の追加の有無 訂正事項2は、請求項3を削除するというものであるから、新規事項を追加するものでない。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 (4)訂正事項3 ア 訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項3を引用していたところ、前記訂正事項1により、訂正前の請求項3に係る特定事項が訂正後の請求項1に追加されたことから、訂正後の請求項4は訂正後の請求項1を引用することとしたものである。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上の拡張・変更の有無 前記アで検討したように、請求項4は、訂正により実質的に変更されていないから、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものといえない。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 ウ 新規事項の追加の有無 前記アで検討したように、請求項4は、訂正により実質的に変更されていないから、新規事項を追加するものでない。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 4 小括 以上より、本件訂正は訂正要件を満たすから、本件訂正を認める。 第3 本件発明など 1 前記第2において本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなる溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物であって、 基油であるパーフルオロポリエーテル油と、 固体潤滑剤と、 クマリン系化合物を含む発光性化合物と、を含有し、 前記フッ素系溶剤は、1,3-トリフルオロメチルベンゼンを含む 溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物。 【請求項2】 前記発光性化合物を、前記パーフルオロポリエーテル油100質量部に対して、0.0001質量%~10.0質量%の割合で含有する 請求項1に記載の溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物。 【請求項3】〔削除〕 【請求項4】 前記フッ素系溶剤は、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びハイドロフルオロオレフィンからなる群から選択される1種以上をさらに含む 請求項1に記載の溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物。」 2 本件特許明細書には次の記載がある。 「【0038】 (4)フッ素系溶剤 本実施の形態に係る溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物は、パーフルオロポリエーテル油を含有するグリースをフッ素系溶剤に分散(又は溶解)させた潤滑剤組成物である。フッ素系溶剤としては、特に限定されるものではないが、ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボンを用いることが好ましい。 【0039】 ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボンは、パーフルオロポリエーテル油との溶解性が高く、また、他のハロゲン系溶剤に比べて地球温暖化係数が低いため、近年の環境意識の高まりを考慮して特に好ましい。具体的には、NOVECシリーズ(スリーエムジャパン製)、アサヒクリンシリーズ(旭硝子株式会社製)、バートレルシリーズ(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等の市販品を用いることができる。 【0040】 また、フッ素系溶剤としては、近年環境対応型として普及し始めている、ハイドロフルオロオレフィンを用いることもできる。例えば、スープリオン(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等の製品が市販されており、好適に用いることができる。 【0041】 さらに、フッ素系溶剤としては、1,3-トリフルオロメチルベンゼンを用いることが好ましい。1,3-トリフルオロメチルベンゼンは、上述したクマリン系化合物の溶解性が特に高い。1,3-トリフルオロメチルベンゼンは、例えば、セントラル硝子株式会社製のものが市販されている。1,3-トリフルオロメチルベンゼンを用いる場合、さらにハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン等の溶剤と併用することが好ましい。このような溶剤と1,3-トリフルオロメチルベンゼンとを併用することにより、パーフルオロポリエーテル油の分散性や溶解性を高めることができる。」 「【実施例】 【0049】 以下に、本発明の具体的な実施例を示してより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。 【0050】 <成分材料> 以下の溶解性試験、目視認性試験及び潤滑性試験においては、成分材料としてそれぞれ以下のものを用いた。 (基油) パーフルオロポリエーテル油 :デムナムS-65(ダイキン工業株式会社製) (固体潤滑剤) ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) :ZONYL TLP 10F-1(ケマーズ社製) (フッ素系溶剤) フッ素系溶剤A :NOVEC7100(スリーエムジャパン社製) フッ素系溶剤B :メタキシレンヘキサフロライド(セントラル硝子株式会社製) (発光性化合物) クマリン系化合物 :Kayalight B(日本化薬株式会社製) (着色剤) 染料着色剤A :Clormate Blue 8A(株式会社シラド化学製) 染料着色剤B :Clormate Red(株式会社シラド化学製) 染料着色剤C :OIL Green FF new(株式会社シラド化学製)」 「【0054】 【表1】 [図:0001399318000001.jpg] 【0055】 <視認性試験> [試料の作製] パーフルオロポリエーテル油とポリテトラフルオロエチレンとを混練し、3本ロールミルで分散処理を施して、グリース組成物を作製した。 一方で、フッ素系溶剤A(NOVEC7100)単独又はフッ素系溶剤Aとフッ素系溶剤B(メタキシレンヘキサフロライド)の混合溶剤に対し、表2に示す量の発光性化合物(クマリン系化合物)又は着色剤(染料着色剤A~C)を添加し、プロペラ撹拌機で10分撹拌し、発光性化合物又は着色剤を含有するフッ素溶液を得た。 その後、発光性化合物又は着色剤を含有するフッ素溶液に、作製したグリース組成物を表2に示す割合で投入して撹拌混合した。これにより、溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物を作製した。」 「【0059】 【表2】 [図:0001399318000002.jpg] 」 第4 取消理由の概要 1 引用文献の一覧 以下、申立人の提示した甲第1~5号証を、甲1~甲5という。 甲1:特開2006-226546号公報 甲2:特開2013-209592号公報 甲3:特開2015-140351号公報 甲4:特開2011-63676号公報 甲5:特表2015-511262号公報 2 取消理由の一覧 本件発明1~4は、甲1に記載された発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。したがって、本件発明1~4に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 引用文献の記載事項 1 甲1には次の記載がある。 「【請求項1】 熱交換器及び送風機を有し、これらが樹脂製の外装部品で覆われた空気調和装置の室内ユニットにおいて、 前記外装部品における他部品との接触面に、所定の波長の光を照射することにより発光する蛍光塗料を含有する、潤滑剤を塗布したことを特徴とする空気調和装置の室内ユニット。 【請求項2】 前記潤滑剤は、透明又は前記樹脂部品と同色であることを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置の室内ユニット。 【請求項3】 前記所定の波長の光は、近紫外線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和装置の室内ユニット。 【請求項4】 前記蛍光塗料は、無機系蛍光塗料であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の空気調和装置の室内ユニット。 【請求項5】 前記潤滑剤は、フッ素グリースをパーフルオロカーボンで希釈したものであることを特徴とする請求項1乃至4に記載の空気調和装置の室内ユニット。 【請求項6】 前記フッ素グリースは、基油にフッ素オイルを用い、フッ素系樹脂で増ちょうしたものであることを特徴とする請求項5に記載の空気調和装置の室内ユニット。」 「【0004】 この潤滑剤は、室内ユニットの外装を構成するグリルとフレームとの嵌合部等、外装部品の組立に先立って、その部品に予め塗布されているが、この潤滑剤は、潤滑剤が仮に外部に露出しても目立たないように透明である。従って、室内ユニットの組立時に、外装部品等に潤滑剤が塗布されていなくても、それを発見するのは困難であった。 【0005】 そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、潤滑剤の塗布の有無を容易に確認可能な空気調和装置の室内ユニットを提供することにある。 ・・・ 【0007】 この場合において、前記潤滑剤は、透明又は前記樹脂部品と同色であってもよい。前記所定の波長の光は、近紫外線であってもよい。前記蛍光塗料は、無機系蛍光塗料であってもよい。前記潤滑剤は、フッ素グリースをパーフルオロカーボンで希釈したものであってもよい。前記フッ素グリースは、基油にフッ素オイルを用い、フッ素系樹脂(例えばテフロン(登録商標))で増ちょうしたものであってもよい。」 「【0025】 グリル1やフレーム2等に塗布されている潤滑剤は、基油にフッ素オイルを用い、PTFE(フッ素系樹脂)で増ちょうしたフッ素グリースを、PFC(パーフルオロカーボン)で希釈した液状のものであり、樹脂部品に対する潤滑作用を有する。この潤滑剤は無機系蛍光塗料が含有されており、通常時には透明であるが、近紫外線が照射されることにより発光するという性質を有する。 【0026】 この潤滑剤は、グリル1やフレーム2等の樹脂部品が成型されたときに作業員によって、刷毛を用いて塗布される。そして、潤滑剤が塗布された樹脂部品は、室内ユニット12の組立製造ラインにおいて、室内ユニット12に組み付けられる前に近紫外線をこの樹脂部品に照射し、潤滑剤に含有された無機系蛍光塗料を励起発光させ、作業員がこれを目視で確認することにより、潤滑剤の塗布の有無が確認される。このとき、この作業を行う場所は、明る過ぎない場所、特に薄暗い場所であることが望ましい。 【0027】 本実施形態における樹脂部品を用いることにより、近紫外線を照射するだけで、透明な潤滑剤が樹脂部品に塗布されているのか否かを容易に確認することが可能である。この確認を行うことにより、確認された樹脂部品に潤滑剤が未塗布、あるいは十分に塗布されていない時に、この部品を室内ユニット12の組立に使用する部品から外すことにより、未塗布の製品が出荷されて、施工後に樹脂部品からきしみ音が発生するといったトラブルが防止される。 【0028】 以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態では近紫外線が照射され、潤滑剤に含有された蛍光塗料が発光することにより、潤滑剤の塗布の有無を確認しているが、これに限らず、潤滑剤の塗布の確認時は有色であり、製品出荷時は透明、あるいは塗布された部品と同色であればよい。従って、例えば潤滑剤に、熱が与えられることにより色が変化するサーモクロミック塗料等を含有させ、検査時に常温よりも高い温度で加熱することにより、潤滑剤の色を変化させ、潤滑剤の塗布の有無を確認してもよい。また、熱や溶剤が加わると、色素と発色剤の結合が切断されて色が消える塗料等、薬品によって色が変化する塗料を潤滑剤に含有させてもよい。また、本実施形態では、グリル1やフレーム2等の外装部品に潤滑剤が塗布されているが、これに限らず、室内ユニット12が有するその他の接触面等に潤滑剤が塗布されていてもよい。」 2 甲2には次の記載がある。 「【請求項1】 基油に添加剤を配合してなる冷凍機用潤滑油組成物であって、 前記添加剤がクマリン化合物である ことを特徴とする冷凍機用潤滑油組成物。 【請求項2】 請求項1に記載の冷凍機用潤滑油組成物において、 当該組成物を用いる冷凍機の冷媒が飽和フッ化炭化水素化合物(飽和HFC)、二酸化炭素(CO2)、炭素数5以下の炭化水素(HC)、アンモニア、および下記分子式(A)で示される含フッ素有機化合物、の少なくともいずれかである ことを特徴とする冷凍機用潤滑油組成物。 CpOqFrRs (A) (式中、Rは、Cl、Br、Iまたは水素を示し、pは1から6まで、qは0から2まで、rは1から14まで、sは0から13までの整数である。ただし、qが0の場合は、pは2から6までであり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。) 【請求項3】 請求項2に記載の冷凍機用潤滑油組成物において、 前記冷媒が、炭素数1から3までの飽和HFC、または炭素-炭素間に二重結合を有する炭素数3の不飽和HFCである ことを特徴とする冷凍機用潤滑油組成物。」 「【0008】 本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、各種冷媒雰囲気下で熱的および化学的に安定であり、長期間に渡って漏洩検出能を発揮する。それ故、不飽和結合を有する不安定な冷媒を使用する冷凍機に対して本発明の潤滑油組成物を適用することが好ましい。 【発明を実施するための形態】 【0009】 本発明の冷凍機用潤滑油組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、基油に添加剤を配合してなる冷凍機用潤滑油組成物であって、前記添加剤がクマリン化合物である。以下、詳細に説明する。」 「【0025】 (9)エーテル系化合物 本組成物において、下記式(1)で示される構造を有するエーテル系化合物が基油として好ましく挙げられる。 Ra-〔(ORb)n-(B)-(ORc)k〕x-Rd (1) ここで、式中、Ra、Rdはそれぞれ水素原子、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数2から10までのアシル基または結合部2個から6個までを有する炭素数1から10までの炭化水素基、Rb、Rcはそれぞれ炭素数2から4までのアルキレン基、n、kは0から20までの整数であり、xは1から6までの整数である。(B)は、下記式(2)で示されるモノマー単位を3以上含んだ重合部である。 【0026】 【化4】 [図:0001399318000003.jpg] 」 「【0030】 本組成物では、基油に対して、クマリン化合物が添加剤として配合される。以下、この添加剤を本添加剤ともいう。 本添加剤は、冷媒および本組成物が冷凍機(冷凍システム)から漏れた場合に漏洩検出剤として機能する。すなわち、クマリン化合物のような共役系を有する化合物は、紫外線を当てることにより蛍光を発するので、漏れ箇所を容易に見つけることができる。しかも、本添加剤を配合してなる潤滑油組成物および冷媒からなる系は熱的にも化学的にも安定である。 【0031】 ここで、クマリン化合物とは、クマリン(coumarin化学式 C9H6O2)を基本骨格とする誘導体である。たとえば、10-オキソ-2,3,5,6-テトラヒドロ-4H,10H-11-オキサ-3a-アザ-1H-ベンゾ[de]アントラセン-9-カルボン酸エチル、7-(エチルアミノ)-4,6-ジメチル-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、および下記式(6)~(10)に示す化合物などが挙げられる。 【0032】 【化5】 [図:0001399318000004.jpg] 【0033】 上述したクマリン化合物の好ましい配合量(添加量)は、潤滑油組成物基準で、0.001質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.001質量%以上1質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以上0.1質量%以下である。配合量がこの下限値よりも少ないと、冷凍機から本組成物が漏出しても蛍光量が少なく、漏洩箇所がわかりにくくなるおそれがある。一方、上限値よりも多く配合しても漏洩検出剤としての効果の向上は特になくむしろ本組成物の安定性を阻害するおそれがある。 【0034】 本組成物が適用される冷媒としては、飽和フッ化炭化水素化合物(飽和HFC)、二酸化炭素(CO2)、炭素数5以下の炭化水素(HC)、あるいはアンモニアなども挙げられるが、下記分子式(A)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種の含フッ素有機化合物、またはこの含フッ素有機化合物と飽和フッ化炭化水素化合物との組み合わせを含む冷媒であれば地球温暖化係数が低い点で好ましい。 CpOqFrRs (A) (式中、Rは、Cl、Br、Iまたは水素を示し、pは1から6まで、qは0から2まで、rは1から14まで、sは0から13までの整数である。ただし、qが0の場合は、pは2から6までであり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。)」 「【0044】 本発明においては、この酸捕捉剤を配合することにより、本組成物の安定性をより向上させることができる。また、前記した極圧剤および酸化防止剤を併用することにより、さらに安定性を向上させる効果が発揮される。 金属不活性化剤としては、例えばN-[N’,N’-ジアルキル(炭素数3から12までのアルキル基)アミノメチル]トルトリアゾールなどを挙げることができ、前記消泡剤としては、例えばシリコーン油やフッ素化シリコーン油などを挙げることができる。」 「【0047】 本組成物は、基油に添加剤としてクマリン化合物が配合されているので、潤滑油組成物の熱的および化学的安定性を損なわない。それ故、本発明の冷凍機用潤滑油組成物を使用するカーエアコン、電動カーエアコン、ガスヒートポンプ、空調、冷蔵庫、自動販売機またはショーケースの各種給湯システム、および冷凍・暖房システム冷凍機などでは、長期間安定して冷媒の漏洩検出が可能となる。本組成物は、これらの各種機器に対して安定性の低い不飽和フロン冷媒を用いた場合に極めて有効である。」 3 甲3には次の記載がある。 「【請求項1】 下記一般式(1)で表されるフッ素含有モノマーを60質量%以上99質量%以下と下記一般式(2)で表わされる(メタ)アクリル酸エステルを1質量%以上40質量%以下とを重合させてなるフッ素系共重合体Aと、 下記一般式(1)で表されるフッ素含有モノマーを20質量%以上50質量%以下と下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルを50質量%以上80質量%以下と、を重合させてなるフッ素系共重合体Bと、 エステル系溶剤および芳香族系溶剤から選ばれる有機溶剤と、蛍光剤および着色剤から選ばれる染料と、を含み、 前記有機溶剤の量が、前記染料以外の成分の総質量に対して25質量%以上であるコーティング剤。 【化1】 [図:0001399318000005.jpg] (式中、R1は水素又はメチル基であり、mは0~4の整数、nは1~10の整数を示す。) 【化2】 [図:0001399318000006.jpg] (式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は炭素数1~4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基を示す。) 【化3】 [図:0001399318000007.jpg] (式中、R1は水素又はメチル基であり、R3は炭素および水素からなる環状部分を有する官能基を示す。)」 「【0002】 モーター軸受け等電子部品、繊維製品、皮革製品などの表面に塗布されて撥油性を付与するコーティング剤においては、撥油性に優れるという観点からパーフルオロアルキル基を有するフッ素系重合体が多く用いられている。」 「【0007】 また、一般に、フッ素系ポリマーは、透明性が高く、しかもコーティング剤として用いられるときには塗布膜厚が薄いため、所望のコーティング膜が所定部位に形成されたか否かを確認することが困難であるため、コーティング剤にはクマリン系の蛍光剤や着色剤などを含有させてコーティング膜に視認性を付与することが行われている。 しかしながら、従来のフッ素系ポリマーを含むコーティング剤に蛍光剤などを添加すると、特に低温条件下では、析出することもあり、コーティング膜に充分な視認性を付与することが困難であるという問題があった。」 「【0043】 (有機溶剤) フッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体Bは、溶媒に溶解あるいは溶媒中に分散させることによりコーティング剤として使用することができる。本発明においては、フッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体Bを溶解あるいは分散させる溶媒として、有機溶剤もしくは、有機溶剤およびフッ素系溶剤の混合物を用いる。 【0044】 有機溶剤としては、エステル系溶剤および芳香族系溶剤から選ばれる溶剤が用いられる。エステル系溶剤としては酢酸エチル、酢酸ブチルなどがあげられる。芳香族系溶剤としてはトルエン、キシレンなどがあげられる。これらとともに、アセトンなどのケトン系溶剤を用いてもよい。有機溶剤は単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。 【0045】 有機溶剤と混合して用いられるフッ素系溶剤としては、特に限定されず、例えば、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、ハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼンなどを使用することができる。これらのフッ素系溶剤は単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。」 「【0050】 (染料) 本発明のコーティング剤には、コーティング膜に視認性を付与するために、蛍光剤および着色剤から選ばれる染料が含まれる。染料としては公知の蛍光剤や着色剤を用いることができる。 具体的には蛍光剤としてはクマリン系UV発色剤やオキサゾール系UV発色剤などがあげられ、着色剤としては、クロム系化合物、アントラセン系化合物、アゾ系化合物などがあげられる。これらは単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。 【0051】 染料はコーティング剤をコーティングすることにより形成されるコーティング膜に視認性を付与可能な程度の量添加すればよく、コーティング剤を使用する基材の色や材質を考慮して適宜選択することが可能である。染料の添加量はコーティング剤100質量部に対して0.1質量部以下であることが好ましい。染料の添加量が多すぎると、コーティング膜特性が劣化することがある。」 「【0053】 (コーティング剤の用途) 本発明のコーティング剤は、マイクロモーターの軸受けに用いる潤滑オイルの拡散を防止するオイルバリア剤、HDDモーターの流体軸受けに用いる潤滑オイルの拡散を防止するオイルバリア剤のほか、幅広い用途、電子基板の防湿コーティング剤などに用いて表面にフッ素を配向させ撥水性を向上させる用途や、塩水・電解液・腐食性ガス等から基材を保護する耐薬品保護コーティング剤、サインペン・ボールペン等のインクの漏れを防止する漏れ防止剤、コネクタ・電子部品等の汚れ防止剤、絶縁樹脂の這い上がり防止剤、MFコンデンサのリード封止樹脂の付着防止剤、繊維などの撥水・撥油剤、防水スプレー原液に使用することができる。 【0054】 (コーティング方法) 本発明のコーティング剤を用いてコーティング膜を形成する方法としては、浸漬法、ハケ塗り法、スプレー法、ロールコート法など公知の方法が採用可能であり、コーティング剤を使用する基材の性質や形態などを考慮して適宜選択することができる。本発明のコーティング剤は、コーティング処理を行う前に、予め汚れ成分等を洗浄除去した基材に適用することもできるが、コーティング処理前の汚れ成分等の洗浄除去処理を行っていない基材に適用することもできる。本発明のコーティング剤により、汚れ成分等の洗浄除去を行わない基材のコーティング処理を行うと、洗浄処理を省略しつつ、十分な撥油性を基材に付与することができるので、作業効率に優れるという利点がある。」 「【0061】 (2)コーティング剤の作製 コーティング剤を以下の方法により作製した、コーティング剤の配合は後述の試験例2~試験例3の結果とともに表3および表4に示した。 (実施例1) 重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液を2.1g、酢酸ブチル29.5g、スリーエム社製HFE-7200を50g、クマリン系蛍光剤を0.01g秤量し、十分に攪拌して固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。 (比較例1) 重合例A2で作製した生成物を5g、スリーエム社製HFE-7200を95g、クマリン系蛍光剤を0.01g秤量し、十分に攪拌して固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。」 4 甲4には次の記載がある。 (1)「【請求項1】 パーフルオロポリエーテル油である基油と、フッ素樹脂粒子である増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であって、 前記添加剤は、植物由来のポリフェノール化合物およびその分解化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物を含有することを特徴とするグリース組成物。 【請求項6】 前記化合物の配合割合は、ベースグリース100重量部に対して0.1~5重量部であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載のグリース組成物。」 (2)「【0018】 本発明において使用できるポリフェノール化合物は、芳香族炭化水素環の水素原子を水酸基(ヒドロキシ基)で置換した、1分子内に複数の水酸基を有する芳香族ヒドロキシ化合物である。ポリフェノール化合物は、ほとんどの植物に含有され、光合成によってできる植物由来の成分である。 【0019】 また、上記植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物は、該ポリフェノール化合物の加水分解などで生成する芳香族または脂環族ヒドロキシ化合物などである。ポリフェノール化合物と同様の作用効果を得るため、該分解化合物においても、1分子内に複数の水酸基を有することが好ましい。 【0020】 本発明において使用できる植物由来のポリフェノール化合物またはその分解化合物としては、例えば、タンニン、エラグ酸、クロロゲン酸、クルクミン、ケルセチン、テアフラビン、アントシアニン、ルチン、リグナン、カテキンなどが挙げられる。また、植物由来のセサミン、イソフラボン、クマリンなどから得られるポリフェノール化合物も使用できる。以上のようなポリフェノール化合物またはその分解化合物は、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。」 (3)「【0024】 植物由来のポリフェノール化合物およびその分解化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物の配合割合は、ベースグリース100重量部に対して0.1~5重量部である。上記化合物の配合割合が0.1重量部未満であると、高温条件下の用途においてグリースの酸化劣化を効果的に防止できない。上記化合物の配合割合が5重量部をこえても潤滑剤の酸化劣化を防止する効果がそれ以上に向上しにくい。 【0025】 本発明のグリース組成物におけるベースグリースは、PFPE油を基油とし、フッ素樹脂粒子を増ちょう剤とする。PFPE油は、脂肪族炭化水素ポリエーテルの水素原子をフッ素原子で置換した化合物であれば使用できる。そのようなPFPE油を例示すれば、以下の化4および化5で示される側鎖を有するPFPE油と、化6から化8で示される直鎖状のPFPE油とがある。これらは単独でもまた混合しても使用できる。m、nは整数である。 【0026】 化4の市販品としてはフォンブリンY(ソルベイ ソレクシス社商品名)、化5の市販品としてはクライトックス(デュポン社商品名)やバリエルタJオイル(NOKクリューバー社商品名)、化6の市販品としてはフォンブリンZ(ソルベイ ソレクシス社商品名)、化7の市販品としてはフォンブリンM(ソルベイ ソレクシス社商品名)、化8の市販品としてはデムナム(ダイキン社商品名)などを例示できる。」 (4)「【0028】 本発明において増ちょう剤として用いるフッ素樹脂粒子は、上記PFPE油と親和性が高く、高温安定性、耐薬品性を有する粉末が使用できる。フッ素樹脂を例示すれば、PTFE樹脂、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのパーフルオロ系フッ素樹脂が好ましく、特に、PTFE樹脂が高温安定性、耐薬品性が優れているため好ましい。 【0029】 上記ベースグリースは、PFPE油を50~90重量%、フッ素樹脂粒子を50~10重量%配することが好ましい。この範囲の配合とすることにより、軸受封入グリースとして洩れが少なく、長時間トルクを下げられる好ましいちょう度に調整できる。」 5 甲5には次の記載がある。 「【0043】 組成物 (a)20質量パーセント~25.5質量パーセントのHFO-1234yfと、(b)20質量パーセント~24.5質量パーセントのHFC-32と、(c)24.5質量パーセント~30質量パーセントのHFC-125と、(d)25.5質量パーセント~30質量パーセントのHFC-134aと、任意選択で(e)約0.0001質量パーセント~10質量パーセントのHFO-1234zeとから本質的になる非引火性冷媒混合物が開示される。」 「【0053】 いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物中の任意選択の非冷媒成分(本明細書では添加剤とも呼ばれる)は、潤滑剤、色素(UV色素を含む)、可溶化剤、相溶化剤、安定剤、トレーサー、ペルフルオロポリエーテル、摩耗防止剤、極圧添加剤、腐食および酸化防止剤、金属表面エネルギー低下剤、金属表面不活性化剤、フリーラジカル捕捉剤、発泡調節剤、粘度指数改善剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調整剤、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の成分を含むことができる。実際には、これらの任意選択の非冷媒成分の多くはこれらのカテゴリーの1つまたは複数に当てはまり、1つまたは複数の性能特性を達成するために役立つ性質を有し得る。」 「【0056】 いくつかの実施形態は、1つまたは複数の合成潤滑剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、合成潤滑剤は、アルキル置換芳香族化合物(線状アルキル基、分枝状アルキル基、または線状および分枝状アルキル基の混合物によって置換されたベンゼンまたはナフタレンなどであり、一般的にアルキルベンゼンと称されることが多い)、合成パラフィンおよびナフテン、ポリ(αオレフィン)、ポリグリコール(ポリアルキレングリコールを含む)、二塩基酸エステル、ポリエステル、ポリオールエステル、ネオペンチルエステル、ポリビニルエーテル(PVE)、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)シリコーン、ケイ酸エステル、フッ素化化合物、リン酸エステル、ポリカーボネートならびにこれらの混合物(この段落で開示される潤滑剤のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される。 【0057】 本明細書に開示される潤滑剤は、市販の潤滑剤であってもよい。例えば、潤滑剤は、BVM 100 NとしてBVA Oilsによって販売されるパラフィン系鉱油;Suniso(登録商標)1GS、Suniso(登録商標)3GSおよびSuniso(登録商標)5GSという商標でCrompton Co.によって販売されるナフテン系鉱油;Sontex(登録商標)372LTという商標でPennzoilによって販売されるナフテン系鉱油;Calumet(登録商標)RO-30という商標でCalumet Lubricantsによって販売されるナフテン系鉱油;Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150およびZerol(登録商標)500という商標でShrieve Chemicalsによって販売される線状アルキルベンゼン;およびHAB 22としてNippon Oilによって販売される分枝状アルキルベンゼン;Castrol(登録商標)100という商標でCastrolによって販売されるポリオールエステル(POE);Dow ChmicalからのRL-488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG);Krytox(登録商標)という商標でE.I.du Pont de Nemoursによって販売されるペルフルオロポリエーテル(PFPE);Fomblin(登録商標)という商標でAusimontによって販売されるもの;またはDemnumという商標でDaikin Industriesによって販売されるもの;ならびにこれらの混合物(この段落で開示される潤滑剤のいずれかの混合物を意味する)であり得る。」 「【0058】 本発明と共に使用される潤滑剤は、ハイドロフルオロカーボン冷媒と共に使用するために設計され、圧縮冷凍および空調装置の運転条件下で本明細書に開示される組成物と混和性であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、所与の圧縮器の要求と、潤滑剤がさらされ得る環境とを考慮することによって選択される。 【0059】 潤滑剤を含む本発明の組成物では、潤滑剤は、全組成物の5.0質量パーセント未満の量で存在する。その他の実施形態では、潤滑剤の量は、全組成物の約0.1~3.5質量パーセントの間である。」 「【0062】 本発明の組成物と共に使用される非冷媒成分は、少なくとも1つの色素を含むことができる。色素は、少なくとも1つの紫外線(UV)色素であり得る。UV色素は、蛍光色素であってもよい。蛍光色素は、ナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントラセン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、フルオレセイン、および前記色素の誘導体、ならびにこれらの組み合わせ(この段落で開示される上記の色素またはその誘導体のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択することができる。 【0063】 いくつかの実施形態では、開示される組成物は、約0.001質量パーセント~約1.0質量パーセントのUV色素を含有する。その他の実施形態では、UV色素は全組成物の約0.005質量パーセント~約0.5質量パーセントの量で存在し、他の実施形態では、UV色素は全組成物の0.01質量パーセント~約0.25質量パーセントの量で存在する。 【0064】 UV色素は、装置(例えば、冷凍ユニット、空調装置またはヒートポンプ)内の漏出点において、またはその近くで色素の蛍光を観察できるようにすることによって、組成物の漏れを検出するために有用な成分である。色素からのUV発光、例えば蛍光は、紫外光の下で観察することができる。従って、このようなUV色素を含有する組成物が装置の所与の点から漏出していれば、漏出点または漏出点の近くで蛍光を検出することができる。」 「【0066】 いくつかの実施形態では、非冷媒成分は、1つまたは複数の潤滑剤と、開示される組成物との相溶性を改善するために少なくとも1つの相溶化剤を含む。相溶化剤は、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテルなど)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム、またはこれらの混合物など)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル、1,1,1-トリフルオロアルカン、およびこれらの混合物(この段落で開示される相溶化剤のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択され得る。 ・・・ 【0068】 相溶化剤は、6~15個の炭素原子を含有する線状または環状の脂肪族または芳香族炭化水素相溶化剤であり得る。相溶化剤は、少なくとも、特にヘキサン、オクタン、ノナン、およびデカンからなる群から選択され得る少なくとも1つの炭化水素であり得る。市販の炭化水素相溶化剤としては、Isopar(登録商標)H(ウンデカン(C11)およびドデカン(C12)の混合物)(高純度C11~C12イソパラフィン系)、Aromatic 150(C9~C11芳香族)、Aromatic 200(C9~C15芳香族)、およびNaphtha 140(C5~C11パラフィン、ナフテンおよび芳香族炭化水素の混合物)という商標でExxon Chemical(USA)から販売されているもの、ならびにこれらの混合物(この段落で開示される炭化水素のいずれかの混合物を意味する)が挙げられるが、これらに限定されない。」 第6 取消理由についての当審の判断 1 進歩性について (1)甲1発明の認定 前記第5、1に摘記した甲1の段落【0025】に記載の潤滑油に注目すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が認定できる。 「基油にフッ素オイルを用い、PTFE(フッ素系樹脂)で増ちょうしたフッ素グリースを、PFC(パーフルオロカーボン)で希釈した液状のものであり、樹脂部品に対する潤滑作用を有し、無機系蛍光塗料が含有されている潤滑剤。」 (2)本件発明1との対比 ア 甲1発明の「フッ素グリース」、「PFC(パーフルオロカーボン)」、「PTFE(フッ素系樹脂)」、「潤滑剤」は、本件発明の「フッ素グリース」、「フッ素系溶剤」、「固体潤滑剤」、「潤滑剤組成物」にそれぞれ相当する。 イ 甲1発明は、「基油にフッ素オイルを用い」ているから、その「フッ素系オイル」は、本件発明1の「基油」に相当する。 ウ 甲1発明の「無機系蛍光塗料」には、発光性化合物が含まれることは明らかであるから、本件発明1の「発光性化合物」に相当する。 (3)一致点 以上から、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致する。 「フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなる溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物であって、 基油と、 固体潤滑剤と、 発光性化合物と、を含有する 溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物。」 (4)相違点 本件発明1と甲1発明との相違点は、次の3点である。 ア 相違点1-1 基油に関して、本件発明1においては、「パーフルオロポリエーテル油」であるのに対して、甲1発明においては「フッ素系オイル」である点。 イ 相違点1-2 発光性化合物に関して、本件発明1においては、「クマリン系化合物を含む」と特定されているのに対して、甲1発明においては、「無機系蛍光塗料」である点。 ウ 相違点1-3 フッ素系溶剤に関して、本件発明1においては、「1,3-トリフルオロメチルベンゼンを含む」と特定されているのに対し、甲1発明においては、「PFC(パーフルオロカーボン)」である点。 (5)相違点についての判断 ア 相違点1-1について 甲1には、「フッ素系オイル」について詳細は明らかではないが、前記第5、4(1)に摘記した甲4の請求項1及び同(3)に摘記した甲4の段落【0025】~【0026】に記載されているように、グリースの基油として市販のPFPE油、すなわち、「パーフルオロポリエーテル油」を用いることは、本願出願前周知の事項であったと認められるから、甲1発明における「フッ素系オイル」に代えて「パーフルオロポリエーテル油」を用いることは、当業者が容易に想到しうることである。また、相違点1-1に係る本件発明1の構成を備えることによる効果が、甲4の記載から予測し得ないということはできない。 イ 相違点1-2及び相違点1-3について 本件発明1の相違点1-2に係る構成と相違点1-3は、関連する相違点であるから、まとめて検討する。 相違点1-2に係る構成である検出や視認するための発光性化合物としてクマリン系化合物を用いることは、甲2、3、5に記載されているが、発光性化合物としてクマリン系化合物を用い、かつ、フッ素系溶剤として、「1,3-トリフルオロメチルベンゼンを含む」溶剤を用いることは甲2、3、5には記載されていない。そして、前記第3、2で摘記した本件特許明細書の段落【0041】に記載されているように、「1,3-トリフルオロメチルベンゼンは、上述したクマリン系化合物の溶解性が特に高い。」ものである。 また、同段落【0054】の【表1】に記載された実施例4~8及び同段落【0059】の【表2】に記載された実施例12~16に用いられているフッ素系溶媒Bは、同段落【0051】の記載によると「メタキシレンヘキサフロライド」であるから、化合物として「1,3-トリフルオロメチルベンゼン」のことを指しているから、相違点1-2及び相違点1-3に係る本件発明1の構成により、「溶解性が特に高い。」ことが実証されているといえる。 そして、発光性化合物としてクマリン系化合物を用い、かつ、フッ素系溶剤として、「1,3-トリフルオロメチルベンゼンを含む」溶剤を用いたことによる効果は、甲1~5に記載も示唆もない。 そうすると、相違点1-2及び相違点1-3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到できるものといえない。 ウ 小括 以上から、本件発明1は甲1発明及び甲2~5に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、同法第113条第2号に該当しない。 (6)本件発明2、4について 本件発明2、4は、本件発明1を包含し、さらに発明特定事項を追加したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲2~5に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、同法第113条第2号に該当しない。 2 意見書における申立人の主張に対して 令和5年2月9日に提出された申立人の意見書において、前記第5、3に摘記した甲3の段落【0045】には、「フッ素系溶剤として、・・・1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン」と記載されており、相違点1-3は、当業者が容易に想到しうるものと主張する。 しかしながら、甲3の段落【0045】に記載された「1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン」は、多数列挙されたフッ素系溶剤のうちの一つにすぎないものであって、前記のとおり、甲3には、相違点1-2及び相違点1-3の両方を示すものでなく、相違点1-2及び相違点1-3は分離して検討することは適切でないので、申立人の主張は採用できない。 3 小括 本件発明1、2、4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、同法第113条第2号に該当せず、本件発明1、2、4に係る特許を取り消すことはできない。 第7 取消理由に採用されなかった特許異議申立ての理由 1 甲2を主引用例とする進歩性欠如の主張 (1)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の11頁において、甲2に次の発明が記載されていると主張する。 「甲2A:潤滑油がフッ素系溶剤に分散してなる冷凍機用の溶剤希釈型潤滑剤組成物であり、 甲2B:基油で刈るエーテル系化合物 甲2B’:消泡剤として添加されるフッ素化シリコーン油 甲2D:クマリン系化合物を含む発光性化合物 甲2E:発光性化合物を、潤滑油100質量部に対して、0.0001質量%~10.0質量%の割合で含有する 甲2G:フッ素系溶剤は、ハイドロフルオロカーボンである」 (2)当審の見解 前記(1)の甲2に記載された発明は、潤滑剤組成物であるが、冷凍機用の冷媒が使用時に漏洩しているか否かを検出するためにクマリン系化合物を用いるものであるから、この技術を、作業時に必要な潤滑のためにグリースを用いる技術に転用することは当業者が容易になし得ることといえない。したがって、当審は、甲2を主引用例とする進歩性欠如の理由は採用しなかった。 2 甲3を主引用例とする進歩性欠如の主張 (1)申立人は、特許異議申立書の13~14頁において、甲3に次の発明が記載されていると主張する。 「甲3A:コーティング組成物がフッ素系溶剤に分散してなるコーティング剤であって、 甲3C:コーティング組成物となるフッ素樹脂 甲3D:クマリン系化合物を含む発光性化合物 甲3E:発光性化合物を、前記コーティング組成物100質量部に対して、0.1質量部の割合で含有する 甲3F:フッ素溶剤は、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼンを含む 甲3G:フッ素系溶剤は、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン及びハイドロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる1種以上をさらに含む 甲3G’:フッ素系樹脂は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)を更に含む」 (2)当審の見解 前記1(2)と同様に、甲3には、グリースに関する記載が存在せず、主引用例とするのは適切でないから、甲3を主引用例とする主張は採用しなかった。 3 甲4を主引用例とする進歩性欠如の主張 (1)申立人は、特許異議申立書の15頁において、甲4に次の発明が記載されていると主張する。 「甲4A:ベースグリースを有するフッ素系潤滑剤組成物であって、 甲4B:基油であるパーフルオロポリエーテル油 甲4C:固体潤滑剤を含む 甲4D:クマリン系化合物を含む酸化防止剤 甲4E:クマリン系化合物を、ベースグリース100質量部に対して、0.1質量部~ 5.0質量部の割合で含有する」 (2)当審の見解 前記第5、4(2)に摘記した甲4の段落【0020】には、植物由来のポリフェノールの一例として、多数の選択肢の一つとして「クマリン」があげられているに過ぎないから、特に「クマリン」を取り上げて、甲4に記載された発明とすることは適切ではない。 仮に、「クマリン」という記載から、「クマリン系化合物」を認定できたとしても、甲4においては、添加目的がグリースの酸化劣化を防止することであるから、発光性化合物として機能するか否かは明らかでない。 したがって、甲4を主引例とする進歩性欠如の理由は採用しなかった。 4 甲5を主引用例とする進歩性欠如の主張 (1)申立人は、特許異議申立書の19頁において、甲5に次の発明が記載されていると主張する。 「甲5A:潤滑剤がフッ素系冷媒に分散してなる冷媒組成物であって、 甲5B:潤滑剤であるパーフルオロポリエーテル油 甲5D:クマリン系化合物を含む発光性化合物 甲5E:発光性化合物を、パーフルオロポリエーテル油100質量部に対して、0.0001質量% 甲5F;相溶化剤として、1,1,1-トリフルオロアルカン/芳香族炭化水素相溶化剤を含む 甲5G:フッ素系溶媒は、ハイドロフルオロカーボン及びハイドロフルオロオレフィンからなる群から選択される1種以上を含む」 (2)当審の見解 前記1(2)と同様に、甲5には、グリースに関する記載が存在せず、主引用例とするのは適切でないから、甲5を主引用例とする主張は採用しなかった。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)の理由及び申立人が主張する理由によっては、本件発明1、2、4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1、2、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項3は本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701040

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