特許異議申立
2024-701044
食品機械用潤滑剤組成物
- 審判番号
- 2024-701044
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-057465
- 登録番号
- 7473378
- 請求日
- 2024年10月23日
- 審決日
- 2025年09月02日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住鉱潤滑剤株式会社
- 【権利者代理人】林 一好
- 【異議申立人】鈴木 憲治
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 渡辺 陽子
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.121-YAA(C10M) / P1651.536-YAA(C10M) / P1651.537-YAA(C10M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7473378号発明「食品機械用潤滑剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7473378号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第7473378号の請求項1-4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和2年3月27日の出願であって、令和6年4月15日に特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行され、その後、同年10月23日に申立人である鈴木 憲治(以下、「申立人」という。)により、その請求項1~4に係る特許について特許異議の申立てがされたものであり、当審は、令和7年1月28日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年3月28日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、同年4月15日付けで手続補正指令書(方式)を通知し、特許権者は、同年4月30日に手続補正書の提出を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったことを、同年5月27日付けで申立人に通知し、申立人は、同年6月30日に意見書を提出したものである。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
本件訂正請求は、請求の趣旨を「特許第7473378号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項からなる。訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「食品機械に用いられる潤滑剤組成物であって、基油と、ポリオールエステルと、を含有し、アミン系酸化防止剤を含有しないものであり、チオフェノール系酸化防止剤をさらに含有する、食品機械用潤滑剤組成物。」と記載されているのを「食品機械に用いられる潤滑剤組成物であって、基油と、ポリオールエステルと、を含有し、アミン系酸化防止剤を含有しないものであり、チオフェノール系酸化防止剤をさらに含有し、前記ポリオールエステルの含有量は、10~50質量%の範囲である食品機械用潤滑剤組成物。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
前記訂正事項1は、ポリオールエステルの含有量は、10~50質量%の範囲であることを特定するものである。
すなわち、前記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記アの理由から明らかなように、ポリオールエステルの含有量は、10~50質量%の範囲であることを特定するものであり、前記訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
請求項1における「前記ポリオールエステルの含有量は、10~50質量%の範囲である」の訂正根拠は、本件明細書の段落[0038]の「ポリオールエステルの含有量としては、特に限定されないが、潤滑剤組成物全量を100質量%としたとき3質量%~50質量%程度とすることが好ましく・・・10質量%~25質量%の範囲とすることが特に好ましい。」との記載等に基づいている。
よって、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1~4について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1~4に係る訂正事項に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~4についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
4 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~4に係る発明は、令和7年3月28日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」等、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
食品機械に用いられる潤滑剤組成物であって、
基油と、ポリオールエステルと、を含有し、
アミン系酸化防止剤を含有しないものであり、
チオフェノール系酸化防止剤をさらに含有し、
前記ポリオールエステルの含有量は、10~50質量%の範囲である
食品機械用潤滑剤組成物。
【請求項2】
チオリン酸エステルをさらに含有する、
請求項1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記基油としてポリアルファオレフィンを含む、
請求項1又は2に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記基油として流動パラフィンをさらに含む、
請求項3に記載の食品機械用潤滑剤組成物。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要等
1 特許異議の申立ての理由は次の理由1~3である。
理由1(進歩性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第1号証~甲第9号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開平8-209181号公報
甲第2号証:IRGANOX(R)(当審注:(R)は○の中にR)L115テクニカルインフォメーション、2010年、BASF社
甲第3号証:特開2016-180052号公報
甲第4号証:米国特許第5102567号明細書
甲第5号証:特表2020-503412号公報
甲第6号証:八児 真一、酸化防止剤の適材適所、1984年、油化学、第33巻、第7号、第420頁~第425頁
甲第7号証:特表2011-528060号公報
甲第8号証:化学大辞典、第1版、第7刷、東京化学同人、2005年7月1日、第2500頁
甲第9号証:国際出願公開第2009/018087号
理由2(サポート要件)本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(1) 本件特許発明1では「基油」について何ら限定されていない。
本件特許明細書の段落0022では、「潤滑剤組成物を構成する基油としては、食品機械に用いる基油であれば限定されないが、ポリアルファオレフィン(ポリαオレフィン、PAO)を含むことが好ましい。このように、ポリアルファオレフィンを含む基油を用いることで、優れた潤滑性を付与することができる。」との記載があり、実施例において使用されている4種の基油はいずれもPAOである(段落0056、段落0061の表1)。
一方、本件特許発明の課題は、変色を生じさせずに、優れた潤滑性を付与することができる潤滑剤組成物を提供することであり(段落0010)、上記実施例は、4種の基油を使用してその効果を確認しようとするものであるが、基油として用いられているのはPAOのみである。
さらに、同段落0022に記載のように、PAOを基油として採用する理由が、優れた潤滑性を付与することであるのであればなおのこと、実施例において使用されたPAO以外の、食品機械に用いることができるあらゆる基油を使用した場合に、上記課題、すなわち、変色を生じさせずに、優れた潤滑性を付与することができる潤滑剤組成物を提供することが達成できるかどうか確認することができない。
以上を勘案すると、発明の詳細な説明には、本件特許発明1に含まれるあらゆる種類の基油を含む潤滑剤組成物において、上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。
したがって、本件特許発明1と発明の詳細な説明に記載された発明とは実質的に対応しているとはいえず、特許請求の範囲はサポート要件を満たしていない。
(2)本件特許発明1では「チオフェノール系酸化防止剤」の含有量について何ら特定されていない。
本件特許明細書の段落0046には、「アミン系酸化防止剤以外の酸化防止剤の含有量としては、特に限定されないが、潤滑剤組成物全量を100質量%としたとき0.05質量%~1質量%程度とすることが好ましく、0.1質量%~0.8質量%程度とすることがより好ましい。」との記載がある。
しかしながら、本件特許明細書の実施例に記載の「チオフェノール系酸化防止剤」の含有量は0.2質量%であり、これを上回る量で配合した場合に、変色を生じさせずに、優れた潤滑性を付与することができる潤滑剤組成物を提供することができるか、確認することができない。
さらに言えば、食品との接触が意図される潤滑剤の用途において用いられる場合の、「チオフェノール系酸化防止剤」の最大許容濃度が0.5質量%であることは、本件特許出願時の技術常識であった(必要であれば甲2、甲3参照)ことを考慮すれば、特に、上記最大許容濃度を大きく上回るような場合においては、そもそも食品機械用潤滑剤組成物として使用できないと考えられる。
以上を勘案すると、発明の詳細な説明には、本件特許発明1に含まれるチオフェノール系酸化防止剤をあらゆる含有量で含む潤滑剤組成物において、上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。
したがって、本件特許発明1と発明の詳細な説明に記載された発明とは実質的に対応しているとはいえず、特許請求の範囲はサポート要件を満たしていない。
理由3(実施可能要件)本件特許の訂正前の請求項1、2、4に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許発明1では「基油」について何ら限定されていない。
ここで、本件特許明細書の段落0022では、「潤滑剤組成物を構成する基油としては、食品機械に用いる基油であれば限定されないが、ポリアルファオレフィン(ポリaオレフィン、PAO)を含むことが好ましい。このように、ポリアルファオレフィンを含む基油を用いることで、優れた潤滑特性を付与することができる。」との記載があり、実施例において使用されている4種の基油はいずれもPAOである(段落0056、段落0061の表1)。
さらに、本件特許明細書の段落0029には、さらに「・・・他の基油成分を含有させることができる。」とあり、ここには、流動パラフィンといった、食品との接触が意図される条件下で潤滑剤として使用できることが知られた基油成分が記載されている。このことからも、本件特許明細書に記載されているのは、基油PAOに加えて、流動パラフィンのような食品機械に用いる基油をさらに加えてもよい潤滑剤組成物なのであって、本件特許発明1の「基油」において、食品機械に用いることのできるあらゆる基油が含まれるものとはいえない。
以上を勘案すると、実施例で記載されたPAO以外の基油を使用する場合においては、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、当業者が本件特許発明1を実施できる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえない。
2 令和7年1月28日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由である。
理由(進歩性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第1号証~甲第4号証及び甲第7号証~甲第9号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 前記第4 2の理由(進歩性)について
1 甲号証について
甲第1号証~甲第9号証は前記第4 1のものと同じ。
甲第10号証:化学大辞典9 化学大辞典編集委員会編 2006年9月15日 縮刷版第39刷発行、第380頁左欄「油性向上剤」
甲第11号証:「SYNATIVE ES TMTC」データシート、2011年7月20日、BASF社
甲第12号証:「Prio1ubeTM3970」製品情報、2016年、Croda Lubricants
甲第13号証:特開2003-336088号公報
甲第14号証:中国特許出願公開第105154194号公報
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
「【請求項1】 以下の(A)および(B)を含有する潤滑剤組成物:
(A)主要量の、次式の少なくとも1種の遺伝的に変性した植物油または合成トリグリセリド油:
【化1】
[図:0001429011000001.jpg]
ここで、R1、R2およびR3は、少なくとも60%がモノ不飽和である脂肪族基であり、さらに、ここで、オレイン酸部分:リノール酸部分の比は、2から約90までであり、該R1、R2およびR3基は、約7個~約23個の炭素原子を含有する;および
(B)少量の、以下の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)または(7)を含有する少なくとも1種の性能添加剤:
(1)以下のアルキルフェノールまたはメチレン架橋フェノール、または該アルキルフェノールおよび該メチレン架橋フェノールの混合物、を含有するフェノール:
(a)次式のアルキルフェノール:
【化2】
[図:0001429011000002.jpg]
または
(b)次式のメチレン架橋フェノール:
【化3】
[図:0001429011000003.jpg]
ここで、R4およびR5は、独立して、1個から約12個までの炭素原子を含有する脂肪族基であり、R6は、水素、1個から約12個までの炭素原子を含有する脂肪族基またはアルコキシ基、R7は、1個から約18個までの炭素原子を含有する脂肪族基であり、そしてaは、0~3の整数である;
(2)次式のサルコシンのN-アシル誘導体:
【化4】
[図:0001429011000004.jpg]
ここで、R9およびR10は、独立して、約4個から約24個までの炭素原子を含有する脂肪族基、R22およびR23は、独立して、水素、または約1個から約18個までの脂肪族炭素原子を含有する脂肪族基、mおよびnの合計は、3であり、そしてXは、酸素またはイオウである;
(4) 次式のグリセロールの部分エステル化脂肪族エステル:
【化6】
[図:0001429011000005.jpg]
ここで、R12およびR13は、7個から約23個までの炭素原子を含有する脂肪族基である;
(5)次式のソルビタンエステル:
【化7】
[図:0001429011000006.jpg]
ここで、w、x、yおよびzの合計は、0または10~60のいずれかであり、そしてR13は、7個から約23個までの炭素原子を含有する脂肪族基である;
(6)次式の芳香族アミン:
【化8】
[図:0001429011000007.jpg]
ここで、R14は、
【化9】
[図:0001429011000008.jpg]
であり、そしてR15およびR16は、独立して、水素、または1個から約24個までの炭素原子を含有するアルキル基である;または
(7)次式のイミダゾリン:
【化10】
[図:0001429011000009.jpg]
ここで、R17は、1個から約24個までの炭素原子を含有する脂肪族基、そしてR18は、1個から約24個までの炭素原子を含有するアルキレン基である。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑剤に関し、さらに特定すると、食品サービス工業の装置用の油圧作動液、ギア油および圧縮機油として特に有用な、食品等級の潤滑油に関する。
・・・
【0024】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、食品サービス工業の装置用の油圧作動液、ギア油および圧縮機油として特に有用な、食品等級の潤滑油を提供することを目的とする。」
「【0079】例えば、オレイン酸部分だけから構成されるトリグリセリドは、100%のオレイン酸含量、従って、100%のモノ不飽和含量を有する。このトリグリセリドが、オレイン酸70%、ステアリン酸10%、パルミチン酸13%およびリノール酸7%の酸部分から構成されるとき、そのモノ不飽和含量は、70%である。好ましいトリグリセリド油は、高オレイン酸(少なくとも60%)トリグリセリド油である。本発明で使用される典型的な高オレイン酸植物油は、高オレイン酸サフラワー油、高オレイン酸落花生油、高オレイン酸とうもろこし油、高オレイン酸なたね油、高オレイン酸ひまわり油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸綿実油、高オレイン酸レスクレラ(lesquerella)油および高オレイン酸パームオレインである。好ましい高オレイン酸植物油は、Helianthus sp.から得られる高オレイン酸ひまわり油である。この生成物は、SVO Enterprises社(イーストレイク、オハイオ)から、Sunyl(登録商標)高オレイン酸ひまわり油として、入手できる。Sunyl 80 油は、高オレイン酸トリグリセリドであり、ここで、その酸部分は、約80%のオレイン酸から構成され、そしてSunyl 90 油は、高オレイン酸トリグリセリドであり、ここで、その酸部分は、約90%のオレイン酸から構成される。他の好ましい高オレイン酸植物油には、Brassica campestrisまたはBrassica napusから得られる高オレイン酸なたね油があり、これもまた、SVO Enterprises社から入手できる。RS80油は、その酸部分が約80%のオレイン酸を含有するなたね油を示す。 オリーブ油は、本発明における遺伝的に変性した植物油(A)としては、除外されることが注目される。オリーブ油のオレイン酸含量は、典型的には、65~85%の範囲である。しかしながら、この含量は、遺伝的な変性によっては得られず、むしろ、天然に生じる。」
「【0118】(C)リン含有化合物
成分(A)および(B)を含有する組成物は、さらに、成分(C)リン含有化合物を含有し得る。このリン含有化合物は、次式を有する:
【0119】
【化43】
[図:0001429011000010.jpg]
【0120】ここで、R19、R20およびR21は、独立して、水素、1個から約12個までの炭素原子を含有する脂肪族基またはアルコキシ基、またはアリール基またはアリールオキシ基であり、ここで、該アリール基は、フェニルまたはナフチル、該アリールオキシ基は、フェノキシまたはナフトキシであり、そしてXは、酸素またはイオウである。最も好ましいリン含有化合物は、ホスホチオ酸トリフェニルであり、これはまた、TPPTとして知られている。この最も好ましいリン含有化合物は、Irgalube(登録商標)TPPTの名称で、Ciba-Geigy社から入手できる。TPPTの構造は、
【0121】
【化44】
[図:0001429011000011.jpg]
」
「【0126】本発明の範囲内で処方された潤滑組成物として、この組成物が、成分(A)、(B)および(C)を含有するとき、これらの成分の重量比の範囲は表1に示す。
【0127】
【表1】
[図:0001429011000012.jpg]
」
「【0134】
【実施例】本発明の成分は、上記範囲に従って共に混合されて、溶液が生じる。以下の表3~9は、本発明の組成物をいかにして製造するかに関する完全な開示および記述を、当業者に提供するために、例を挙げており、本発明者がその発明と見なす範囲を限定する意図はない。全ての部は重量部である。
・・・
【0145】表8は、成分(A)それ自体、成分(A)および成分(C)の混合物、および成分(A)、成分(B)および成分(C)の混合物のRBOT値を比較する。成分(C)を成分(A)に単に混合することでは、RBOT値は改良されない。
【0146】
【表8】
[図:0001429011000013.jpg]
」
(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
摘記箇所の後に特許異議申立人による翻訳を示す。
2a「
[図:0001429011000014.jpg]
・・・
[図:0001429011000015.jpg]
・・・
[図:0001429011000016.jpg]
・・・
[図:0001429011000017.jpg]
」(第1~2ページ)
IRGANOX(R)(当審注:(R)は○の中にR)L115 フェノール系酸化防止剤
・・・
典型的な化学および物理特性 IRGANO X L115は、潤滑剤の
ための、高分子量のフェノール系酸化防止
剤あって、チオエーテル基を有する。
[図:0001429011000018.jpg]
外観 結晶性の、白からわずかに黄味を帯び
た粉末
・・・
効能 一次酸化防止剤および過酸化物分解剤(二次
酸化防止剤)として多機能的な活性を提供す
る。これは、ナフタレン系ベースストック
および合成液体、たとえばPAOおよびカ
ルボキシレートにおいて有益である。
通常のフェノール系酸化防止剤と比較して優
れた熱安定性を有する。
食品との接触が意図される潤滑剤に配合され
る用途においてFDA/USAの認可を受け
ている。
高温操作条件下での損失を減少させることが
できる。
CIGRA試験において優れた活性を提供す
る。
・・・
食品との接触が意図される BASFは、食品との接触が意図される潤滑剤
潤滑剤 に配合するために、FDA/USAの基準を満
たす添加剤の全範囲を提供することができる。
全リストに関しては、製品セレクションガイド
をご参照ください。
食品との接触が意図されるUSDA H-1潤
滑剤での用途において、21CFR178.3
570としてFDAによる基準を満たしてい
る。
最大処理レベル
IRGANOXL115 0.5wt/wt
(1)最大許容濃度は、いくつかのベーススト
ックにおけるこの添加物の溶解限界を超過しう
る。
(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
「【請求項1】
ポリオールエステルの基油と、芳香族アミン系酸化防止剤と、フェノール系酸化防止剤と、チオフェノール系酸化防止剤と、リン系極圧剤とを含む潤滑油組成物。」
「【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、より詳しくは、食品機械分野において耐摩耗性を維持しつつ熱安定性に優れ、例えば150℃~250℃程度の高温での使用に好適な食品機械用の潤滑油組成物に関する。
・・・
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、各種機械装置の開放系チェーン部での150℃~250℃程度の高温環境下においても固化(酸化重合)及びスラッジ化が起こり難く、熱安定性に優れ、蒸発損失を有効に低減させることができる食品機械用の潤滑油組成物を提供することを目的とする。」
「【0049】
以下、本発明の実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
・・・
【0054】
また、酸化防止剤Cとしては、IRGANOX L115(BASF社製、チオジエチレンビス[3-(3,5-di-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])を用いた。
・・・
【0059】
【表1】
[図:0001429011000019.jpg]
」
(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
摘記箇所の後に特許異議申立人の翻訳又は当審の仮訳を示す。
4a
「
[図:0001429011000020.jpg]
」(第3欄第13~24行)
高性能食品グレード潤滑油に用いる基油は、食品グレードの炭化水素油、たとえば食品グレードの鉱油、食品グレードのポリブテン、食品グレードの水素化ポリブテン、食品グレードのポリオールエステル、食品グレードのジエステルおよび食品グレードの水素化ポリ(アルファオレフィン)(6個以上の炭素原子を有するアルファオレフィンモノマーを有するもの)を含んでいてもよい。上記基油は、実質的には無臭、無職および無味でなければならず、かつ、USDA Hl規格に準拠し、かつ食品との接触 が意図される加工工場で使用するための要件に適合するものでなければならない。
4b「
[図:0001429011000021.jpg]
」(第4欄第10~13行)
本発明の実施において使用することができるフェノール系酸化防止剤のクラスは、食品グレードの、油溶性の、立体障害フェノールおよびチオフェノールを含む。
4c「
[図:0001429011000022.jpg]
」(第5欄第6~7行)
好適な食品グレードのフェノール系酸化防止剤はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である。
(5)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
「【0178】
フェノールベースの酸化防止剤の他の例としては、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2-(ジ-p-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-シクロヘキシリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコールビス[3,(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](「Irganox L109」の商標名でCiba Speciality Chemicals Co.によって製造される)、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-y-5-メチルフェニル)プロピオネート](「Tominox 917」の商標名でYoshitomi Seiyaku Co.によって製造される)、2,2’-チオ[ジエチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](「Irganox L115」の商標名でCiba Speciality Chemicals Co.によって製造される)、3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ]エチル}2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(「Sumilizer GA80」の商標名でSumitomo Kagaku Co.によって製造される)および4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)(「Antage RC」の商標名でKawaguchi Kagaku Co.によって製造される)、2,2’-チオビス(4,6-ジ-t-ブチルレゾルシノール);ポリフェノール、例えば、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナト]メタン(「Irganox L101」の商標名でCiba Speciality Chemicals Co.によって製造される)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン(「Yoshinox 930」の商標名でYoshitomi Seiyaku Co.によって製造される)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(「Irganox 330」の商標名でCiba Speciality Chemicalsによって製造される)、ビス[3,3’-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)酪酸]グリコールエステル、2-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-メチル-4-(2’’,4’’-ジ-t-ブチル-3’’-ヒドロキシフェニル)メチル-6-t-ブチルフェノールおよび2,6-ビス(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルベンジル)-4-メチルフェノール;およびフェノール/アルデヒド縮合物、例えば、p-t-ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物およびp-t-ブチルフェノールとアセトアルデヒドとの縮合物が含まれる。」
(6)甲第6号証(以下、「甲6」という。)
6a「
[図:0001429011000023.jpg]
」(第420ページ左欄下から第4~2行)
6b「
[図:0001429011000024.jpg]
」(第422ページ左欄第10~12行)
(7)甲第7号証(以下、「甲7」という。)
「【請求項9】
以下を含む、上記組成物
(A)基油、及び
(B)液体添加剤パッケージ
を含む潤滑油組成物であって、該添加剤パッケージが、
(i)アルキル化ジフェニルアミン、
(ii)添加剤パッケージの重量に対して少なくとも5重量パーセントのフェニルナフチルアミン、及び
(iii)硫黄含有フェノール。」
「【0095】
基油は、動物油及び植物油を含めての天然オイル、例えば、ラード油、ひまし油、流動パラフィン(liquid petroleum)油、並びに、水素化精製、溶媒処理若しくは酸処理された、パラフィン系、ナフテン系、及びパラフィン系-ナフテン系混合タイプの鉱油を含み得る。石炭又はシェールから誘導される潤滑粘度のオイルもまた、有用な基油として役立つ。動物又は植物原料由来の油脂の他の例は、ナタネ油、コリアンダー油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ひまし油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、トウモロコシ(maize)油、アーモンドオイル、キャノーラ油、ホホバ油、ヤシ核油、ココナッツオイル、マスタード種子油、ジャトロファ(jatropha)油、牛脂(beef tallow)、及び魚油である。さらなる例には、コーン(corn)、ジュート、ゴマ、シアナッツ、グラウンドナッツ(ground nut)に由来するオイル、及び亜麻仁油が含まれ、それらから、当技術分野において知られている方法によって誘導され得る。ナタネ油は、グリセロールにより部分的にエステル化された脂肪酸の混合物であり、大量に入手可能であり、ナタネから、圧搾による簡単な方法で得ることができる。使用済みキッチンオイルのようなリサイクル油もまた適切である。」
(8)甲第8号証(以下、「甲8」という。)
8a「
[図:0001429011000025.jpg]
」
(9)甲第9号証(以下、「甲9」という。)
摘記箇所の後に特許異議申立人の翻訳を示す。
「
[図:0001429011000026.jpg]
・・・
[図:0001429011000027.jpg]
」
特許請求の範囲
14.装置および/またはパーツの潤滑に用いるH-1規格に適合する潤滑油であって、該潤滑油は、人体との外的または内的接触における安全な使用において米国政府の認可を受けた油が主要な部分を占めるベース液体、任意に20質量%までの少なくとも1種の添加剤であって、食品グレードの増粘剤成分、立体障害フェノールおよびチオフェノールからなる群から選択される食品グレードの抗酸化剤、食品グレードの防錆添加剤、非毒性乳化剤および緩衝剤からなる群から選択される添加剤を含み、ここで、前記ベース液体は、少なくとも100m2/gの表面積を有する酸活性粘土を含む濾過床を通して濾過された異性化基油であり、かつ、前記異性化基油は、一連の数の炭素原子を有し、10質量%未満のn-d-Mによるナフテン炭素を有する。
(10)甲第10号証(以下、「甲10」という。)
10a「
[図:0001429011000028.jpg]
」
(11)甲第11号証(以下、「甲11」という。)
摘記箇所の後に特許異議申立人の翻訳を示す。
「
[図:0001429011000029.jpg]
」(第1ページ第8~13行)
[図:0001429011000030.jpg]
(12)甲第12号証(以下、「甲12」という。)
摘記箇所の後に特許異議申立人の翻訳を示す。
12a「
[図:0001429011000031.jpg]
[図:0001429011000032.jpg]
・・・
[図:0001429011000033.jpg]
・・・
[図:0001429011000034.jpg]
・・・
[図:0001429011000035.jpg]
・・・
[図:0001429011000036.jpg]
」
[図:0001429011000037.jpg]
[図:0001429011000038.jpg]
(13)甲第13号証(以下、「甲13」という。)
「【請求項1】基油と共に、(A)硫黄系極圧剤0.01~1.0質量%及び/又は(B)リン系極圧剤0.01~2.0質量%を含むことを特徴とする冷間圧延油組成物。
【請求項2】さらに、(C)成分として、エステル類、アルコール類及び脂肪酸類の中から選ばれる少なくとも一種の油性剤1~60質量%を含む請求項1記載の冷間圧延油組成物。」
「【0014】で表される化合物を挙げることができる。前記一般式(III)において、R5は炭素数4~20の炭化水素基であり、R6は炭素数4~20の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基又はアルケニル基、m及びnはそれぞれ1又は2であり、複数のR5は同一でも異なっていてもよく、また複数のR6は同一でも異なっていてもよい。上記R5で表される炭素数4~20の炭化水素基としては、炭素数4~20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基などを挙げることができる。このようなものの具体例としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、エイコシル基、フェニル基、イソプロピルフェニル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。また、R6としては、例えばブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、エイコシル基などが挙げられる。この(B)成分のリン系極圧剤は、特に圧延油組成物中に圧延摩耗粉を分散しやすくすることにより、圧延材の摩耗粉による押し込み傷の発生を抑制する作用を有しており、本発明においては、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、圧延油組成物における該リン系極圧剤の含有量は、0.01~2.0質量%の範囲で選定される。この含有量が0.01質量%未満では圧延摩耗粉分散効果が発揮されず、一方、2.0質量%を超えるとその量の割には効果の向上が認められず、むしろ経済的に不利となる。本発明の組成物においては、(A)成分と(B)成分を併用すると、効果の点で好ましい。本発明の組成物においては、必要に応じ、(C)成分として油性剤を含有させることができる。この油性剤としては特に制限はなく、従来圧延油において油性剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宣選択して用いることができる。このような油性剤としては、例えばエステル類、アルコール類及び脂肪酸類などが挙げられる。
【0015】前記エステル類としては、炭素数6~22のカルボン酸と炭素数1~18の脂肪族アルコールとからなるエステルを挙げることができる。ここで、炭素数6~22のカルボン酸は、一塩基酸であってもよいし、二塩基酸以上の多塩基酸であってもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。さらに、直鎖状のものであってもよく、分岐鎖状のものであってもよい。このようなカルボン酸の例としては、直鎖状又は分岐鎖状である、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、ヒドロキシオクタデカン酸、イコサン酸、オクテン酸、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデセン酸、ヒドロキシオクタデセン酸、イコセン酸、オクタン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸、オクテン二酸、デセン二酸、ドデセン二酸、テトラデセン二酸、ヘキサデセン二酸、オクタデセン二酸、イコセン二酸などが挙げられる。また、炭素数1~18の脂肪族アルコールは、一価アルコールであってもよいし、多価アルコールであってもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。さらに直鎖状のものであってもよく、分岐鎖状のものであってもよいが、通常一価のアルコールが用いられる。このようなアルコールの例としては、メタノール、エタノール、アリルアルコール、あるいは直鎖状又は分岐鎖状である、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、ブテノール、ペンテノール、ヘキセノール、オクテノール、デセノール、ドデセノール、テトラデセノール、ヘキサデセノール、オクタデセノールなどが挙げられる。」
「【0017】圧延油組成物における前記油性剤の含有量は、通常1~60質量%の範囲で選定される。この含有量が1重量%未満では加工性が不充分となるおそれがあり、一方60質量%を超えるとロールスリップが生じる原因となる。該油性剤の好ましい含有量は2~40質量%の範囲であり、特に3~20質量%の範囲が好ましい。本発明の圧延油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種添加剤、例えば摩耗防止剤、酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、消泡剤などを単独又は二種以上を組み合わせて、適宣含有させることができる。ここで、摩耗防止剤としては、例えばジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、硫化オキシジチオリン酸モリブデン(MoDTP),硫化オキシジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)などが、酸化防止剤としては、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化-α-ナフチルアミンなどのアミン系、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールなどのフェノール系、及び硫黄系などが、防錆剤や腐食防止剤としては、例えばソルビタンエステル、中性アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属フェネート、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属サリチレート、チアジアゾール、ベンゾトリアゾールなどが、消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサン、フルオロエーテルなどが挙げられる。」
(14)甲第14号証(以下、「甲14」という。)
摘記箇所の後に特許異議申立人の翻訳を示す。
「
[図:0001429011000039.jpg]
[図:0001429011000040.jpg]
」
[図:0001429011000041.jpg]
「
[図:0001429011000042.jpg]
」
[図:0001429011000043.jpg]
3 甲1に記載された発明
甲1には、請求項1、【0001】及び【0146】の【表8】の実施例4に着目すると、「成分(A)として97.5部のSunyl 80油、成分(B)として1部のブチル化ヒドロキシトルエン及び1部のグリセロールモノオレエート、並びに、成分(C)として0.5部のTPPTからなる食品等級の潤滑剤組成物。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲1発明との対比
甲1発明の「成分(A)」及び「Sunyl 80油」は、高オレイン酸トリグリセリドであり、ここで、その酸部分は、約80%のオレイン酸から構成されたものであるし(【0079】参照)、その含有量は97.5部と多いから本件特許発明1の「基油」に相当する。
甲1発明の「ブチル化ヒドロキシトルエン」は本件特許発明1の「酸化防止剤」に相当する(摘記4c参照)。
甲1発明の「成分(B)」及び「グリセロールモノオレエート」は本件特許発明1の「ポリオールエステル」に相当する。
甲1発明の「食品等級の潤滑剤組成物」は、アミン系酸化防止剤を含有しないから、本件特許発明1の「食品機械に用いられる潤滑剤組成物」、「アミン系酸化防止剤を含有しないものであり」及び「食品機械用潤滑剤組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「食品機械に用いられる潤滑剤組成物であって、
基油と、ポリオールエステルと、を含有し、
アミン系酸化防止剤を含有しないものであり、
酸化防止剤をさらに含有する
食品機械用潤滑剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
酸化防止剤が、本件特許発明1ではチオフェノール系酸化防止剤であるのに対し、甲1発明ではブチル化ヒドロキシトルエンである点。
<相違点2>
ポリオールエステルの含有量が、本件特許発明1では10~50質量%の範囲であるのに対し、甲1発明では1質量%である点。
イ 相違点についての検討
<相違点2>について
事案に鑑み、まず、<相違点2>について検討する。
甲1には、甲1発明の食品等級の潤滑剤組成物のように成分(A)、(B)および(C)を含有するとき、成分(B)は0.05~5質量%含むことが記載されており(【0126】、【0127】参照。)、その記載に基づけば、甲1発明の食品等級の潤滑剤組成物において成分(B)であるブチル化ヒドロキシトルエン及びグリセロールモノオレエートの含有量は合わせて最大5質量%までであり、具体的な組成として記載があるのは、他の実施例も合わせて2質量%まで含むもののみであり、そうすると、甲1発明の食品等級の潤滑剤組成物において成分(B)の1つであるグリセロールモノオレエートを10~50質量%の範囲として、ポリオールエステルの含有量を10~50質量%の範囲とする動機付けがあるとはいえない。
また、甲10及び甲11には潤滑剤組成物におけるポリオールエステルの含有量についての記載はなく、甲12には食品等級の潤滑剤組成物においてポリオールエステルの含有量を10~90%とすることが記載されているものの(摘記12a参照。)、特定の商品のポリオールエステルに関するものであり、甲13には潤滑剤組成物においてポリオールエステルの含有量が1~60質量%とすることが記載されているものの(【請求項1】、【請求項2】参照。)、食品等級の潤滑剤組成物に関するものではなく、甲14には食品等級の潤滑剤組成物においてポリオールエステルの含有量が90質量%近いものが記載されているものの([0046]、[0047]参照。)、1つの実施例に記載された1態様に過ぎず、そのような甲10~甲14の記載から、食品等級の潤滑剤組成物においてポリオールエステル含有量が10~50質量%以上とすることが出願時の技術常識であったとまではいえず、甲1発明の食品等級の潤滑剤組成物においてポリオールエステルであるグリセロールモノオレエートの含有量を10~50質量%以上とすることは当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
そして、他の証拠の記載をみても、甲1発明の食品等級の潤滑剤組成物において成分(B)の1つであるグリセロールモノオレエートを10~50質量%の範囲として、ポリオールエステルの含有量を10~50質量%の範囲とする動機付けがあるとはいえない。
ウ 申立人の主張及び当審の判断について
申立人は、令和7年6月30日提出の意見書において、甲10~14からみて、油性剤としてのポリオールエステル製品において、潤滑剤組成物において10質量%を上回る量で添加することが通常おこなわれていることを考慮すれば、この潤滑性の向上効果は出願時の技術水準から当業者が予測できない効果であるともいえない旨を主張する。
しかし、前記イで検討したとおり、甲10~甲14の記載から、食品等級の潤滑剤組成物においてポリオールエステル含有量が10~50質量%以上とすることが、出願時の技術常識であったとはいえない以上、潤滑剤組成物において10質量%を上回る量で添加することが通常おこなわれているとまではいえない。
よって、申立人の前記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点1>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2) 本件特許発明2~4
本件特許発明2~4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点2>と同じの相違点を有するものであり、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人の主張のうちは取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は以下のとおりである。
1 前記第4 1 理由2(サポート要件)本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由は前記第4 1 理由2(サポート要件)で示したとおり。
2 前記第4 1 理由3(実施可能要件)本件特許の訂正前の請求項1、2、4に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由は前記第4 1 理由3(実施可能要件)で示したとおり。
第7 前記第6 1(サポート要件)について
1 本件特許発明の課題について
本件特許発明の課題は、本件特許発明細書の【0009】に記載からみて、食品機械に適用することができる食品機械用潤滑剤組成物において、変色を生じさせずに、優れた潤滑性を付与することができる潤滑剤組成物を提供することにあると認める。
2 本件特許明細書の記載について
本件特許明細書の実施例の記載からみて、アミン系酸化防止剤を含有せず、チオフェノール系酸化防止剤を含有するものが、前記課題を解決できることが理解できる。
3 「(1)本件特許発明1では「基油」について何ら限定されていない。」について
甲6の記載(摘記6a参照。)からみて、アミン系酸化防止剤を含有しなければ、変色を生じさせないといえ、通常の基油を含有すれば、潤滑性を付与することができるといえる。
4 「(2)本件特許発明1では「チオフェノール系酸化防止剤」の含有量について何ら特定されていない。」について
確かに、甲2及び甲3にはチオフェノール系酸化防止剤の最大許容濃度が0.5質量%であることが記載されているものの、最大許容濃度を超えることにより変色を生じさせることは記載されていないし、本件特許発明は、食品機械用潤滑剤組成物であり、潤滑剤組成物とならない程多くのチオフェノール系酸化防止剤を含有するものまでは想定されていない。
5 まとめ
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明が、基油の限定がなく、チオフェノール系酸化防止剤の含有量の限定がなくとも、前記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。
第8 前記第6 2(実施可能要件)について
本件特許明細書の実施例の記載からみて、PAOを使用する本件特許発明の食品機械用潤滑剤組成物を実施できることが理解でき、PAO以外の基油を使用する場合にも実施例と同様に使用すれば、本件特許発明の食品機械用潤滑剤組成物を実施できることは明らかである。
そうすると、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、当業者が本件特許発明1を実施できる程度に明確かつ十分に説明されているといえる。
第9 むすび
以上のとおりであるから、令和7年1月28日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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