特許異議申立
2025-700441
内燃機関用潤滑油組成物
- 審判番号
- 2025-700441
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-094588
- 登録番号
- 7570284
- 請求日
- 2025年04月21日
- 審決日
- 2026年03月17日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ENEOS株式会社
- 【権利者代理人】山本 典輝
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【異議申立人】林 紀美江
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 光本 美奈子
- 審判官 渡辺 陽子
- 分類
- P1651.121-YAA(C10M) / P1651.537-YAA(C10M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7570284号発明「内燃機関用潤滑油組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7570284号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7570284号の請求項1,2、5~8に係る特許を維持する。
特許第7570284号の請求項3、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和3年6月4日(優先権主張 令和2年8月31日)の出願であって、令和6年10月10日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行されたところ、令和7年4月21日に特許異議申立人 林 紀美江(以下「申立人」という。)により全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものであり、その後の手続きは以下のとおりである。
令和7年 7月31日付け 取消理由通知
令和7年10月 2日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
その後、当審において令和7年12月3日付けで、申立人に対して意見書提出の期間を指定して、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行ったが、当該期間内に申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正内容
令和7年10月2日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次の訂正事項からなる。
なお、下線は訂正箇所であり、当審が付与した。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1における「(B)1種以上の金属サリシレート清浄剤を含む金属系清浄剤を、組成物全量基準で金属量として1000~2000質量ppm、且つ組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として10mmol/kg以上と」を「(B)1種以上の金属サリシレート清浄剤を含む金属系清浄剤を、組成物全量基準で金属量として1000~2000質量ppm、且つ組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として18.1mmol/kg以上であり、全石けん基に占める前記全サリシレート石けん基の割合が95~100mol%と」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5~8も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項3、4を削除する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4の記載を引用する記載であるところ、請求項3、4が削除されたことに伴い、訂正前の請求項3、4を引用する態様を削除する。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項6が訂正前の請求項1~5の記載を引用する記載であるところ、請求項3、4が削除されたことに伴い、訂正前の請求項3、4を引用する態様を削除する。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項7が訂正前の請求項1~6の記載を引用する記載であるところ、請求項3、4が削除されたことに伴い、訂正前の請求項3、4を引用する態様を削除する。
(6)訂正事項6
訂正前の請求項8が訂正前の請求項1~7の記載を引用する記載であるところ、請求項3、4が削除されたことに伴い、訂正前の請求項3、4を引用する態様を削除する。
2 一群の請求項について
訂正事項1~6は、訂正前に引用関係を有する請求項1~8に対して、請求されたものであるから、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されている。
3 本件訂正についての検討
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1による請求項1についての訂正は、(B)について「組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として10mmol/kg以上であり」を組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として18.1mmol/kg以上であり」に訂正し、「全石けん基に占める前記全サリシレート石けん基の割合が95~100mol%」の限定をさらに付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 訂正事項1は、技術的特徴の数値範囲を減縮し、また技術的特徴を付加することにより発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 「組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として18.1mmol/kg以上であり」とすることは、【0155】表1における実施例3の記載に基づくものであり、「全石けん基に占める前記全サリシレート石けん基の割合が95~100mol%」とすることは、訂正前の請求項4及び【0155】表1~表3の実施例1~15の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 請求項1を直接又は間接的に引用して特定される請求項2、5~8についての訂正も、前記ア~ウ同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し、さらに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項3、4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し、さらに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3~6
ア 訂正事項3~6は、訂正前の請求項3、4を削除し、当該削除に伴い他の請求項における引用関係を整理するものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び同法同条同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 訂正事項3~6は、上記アのとおり請求項の削除と引用関係の整理を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3~6に係る訂正は、上記アのとおり請求項の削除と引用関係の整理を行うものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課される請求項はない。
(5)小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1、3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
4 訂正の適否についてのまとめ
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
前記第2のとおり、本件訂正の請求は認められたので、本件特許の請求項1~8に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された以下のとおりのものである(それらのうち、請求項1等に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明1」などといい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)。
「【請求項1】
(A)1種以上の鉱油系基油もしくは1種以上の合成系基油またはそれらの組み合わせからなり、100℃における動粘度が3.8~4.6mm2/sである潤滑油基油と、
(B)1種以上の金属サリシレート清浄剤を含む金属系清浄剤を、組成物全量基準で金属量として1000~2000質量ppm、且つ組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として18.1mmol/kg以上であり、全石けん基に占める前記全サリシレート石けん基の割合が95~100mol%と、
(C)重量平均分子量が350,000~1,000,000且つ多分散度が4.0以下である1種以上の櫛形ポリ(メタ)アクリレートを、組成物全量基準で樹脂分として1.0~4.0質量%と、
(D)1種以上の無変性コハク酸イミド分散剤もしくは1種以上のホウ酸変性コハク酸イミド分散剤またはそれらの組み合わせを含む、コハク酸イミド分散剤であって、該コハク酸イミド分散剤の全窒素分に占める前記無変性コハク酸イミド分散剤および前記ホウ酸変性コハク酸イミド分散剤の合計の窒素分の割合が70質量%以上である、コハク酸イミド分散剤を、組成物全量基準で窒素分として100~1000質量ppmと
を含み、
150℃におけるHTHS粘度が2.25mPa・s以上2.55mPa・s未満であることを特徴とする、内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項2】
前記(A)潤滑油基油が、1種以上のAPI基油分類グループIII基油、もしくは1種以上のAPI基油分類グループIV基油、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記(C)成分の重量平均分子量が400,000超1,000,000以下である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記(D)成分の全ホウ素分(B)の全窒素分(N)に対する質量比(B/N)が、0~0.60である、請求項1、2及び5のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記(D)成分が、炭素数40~400のアルキル若しくはアルケニル基を有するアルキル若しくはアルケニルコハク酸若しくはその無水物と、ポリアミンとの縮合反応生成物、若しくはその変性物、又はそれらの組み合わせである、請求項1、2、5及び6のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
ハイブリッド車の内燃機関の潤滑に用いられる、請求項1、2及び5~7のいずれかに記載の潤滑油組成物。」
第4 特許異議申立ての理由及び当審が通知した取消理由の概要
1 申立人が申し立てた理由(以下「申立理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
(1)進歩性の欠如
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は、甲第1号に記載された発明及び甲第2号証~甲第5号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)サポート要件違反
ア サポート要件1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8は、「該コハク酸イミド分散剤の全窒素分に占める前記無変性コハク酸イミド分散剤および前記ホウ酸変性コハク酸イミド分散剤の合計の窒素分の割合が70質量%以上」及び「コハク酸イミド分散剤を、組成物全量基準で窒素分として100~ 1000質量ppm」 との特定事項を有する。その一方で、実施例には、前者については 「窒素分の割合が100質量%」のもの、後者については「窒素分として580質量ppm」のものが開示されるのみであり、技術常識を勘案しても、本件特許発明1~8の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、請求項1~8に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
したがって、本件特許は特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法第113条第4号に該当し、特許を取り消すべきものである。
イ サポート要件2
本件特許発明1は、1種以上の金属サリシレー ト清浄剤を含む金属系清浄剤 、組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として10mmol/kg以上となる量を含むとする構成を有する。その一方で、実施例においては、特定のサリシレート金属石けんを用いたものを開示するのみであるから、本件特許発明1~8の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、請求項1~8に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
したがって、本件特許は特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法第113条第4号に該当し、特許を取り消すべきものである。
2 当審において令和7年7月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(甲第1号証、甲第4号証に基づく進歩性について)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第4号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)取消理由2 (甲第1号証~甲第4号証に基づく進歩性について)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第4号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 証拠方法等の一覧
いずれも特許異議申立書とともに申立人が提出した証拠(進歩性を否定するための証拠)である。
甲第1号証:特開2018-168344号公報
甲第2号証:特開2012-57167号公報
甲第3号証:特開2017-101211号公報
甲第4号証:特開2018-159011号公報
甲第5号証:特許第7570284号公報
(以下、「甲第1号証」~「甲第5号証」をそれぞれ「甲1」~「甲5」ともいい、これらをまとめて「甲号証」ともいう。)
第5 取消理由についての判断
1 甲号証の記載事項
以下、下線は当審により付した。
(1) 甲1
「【請求項1】
基油と、
過塩基性カルシウムスルホネート(A)と、
過塩基性マグネシウム清浄剤(B)とを含有し、
成分(B)の塩素原子含有量が、成分(B)全量基準で400質量ppm以下である、内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項2】
成分(B)が、過塩基性マグネシウムスルホネート、過塩基性マグネシウムサリシレート、及び過塩基性マグネシウムフェネートからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項3】
成分(A)の塩酸法により測定される塩基価が、200mgKOH/g以上である、請求項1又は2に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項4】
成分(B)の塩酸法により測定される塩基価が、200mgKOH/g以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項5】
成分(B)が直鎖アルキル基又は分岐アルキル基を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項6】
更に、成分(C)として、有機モリブデン化合物を含み、モリブデン原子換算での成分(C)の含有量が潤滑油組成物全量基準で50質量ppm以上400質量ppm未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項7】
塩基価維持率が5.0%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項8】
ハイブリッドシステムを採用した車両に搭載される内燃機関に用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項9】
アルコール燃料を含有する燃料を用いる内燃機関に用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項10】
潤滑油組成物中の塩素原子含有量(Cl)と、潤滑油組成物中の成分(B)の含有量との比〔成分(B)/(Cl)〕が、質量比で、3,000以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。」
「【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のカルシウム系清浄剤と特定のマグネシウム系清浄剤とを含有する内燃機関用潤滑油組成物が、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明の各実施形態はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明の各実施形態によれば、以下の[1]~[4]が提供される。
[1]基油と、
過塩基性カルシウムスルホネート(A)と、
過塩基性マグネシウム清浄剤(B)
・・・
【0007】
本発明によれば、耐水性及び水分混入時の耐久性に優れる内燃機関用潤滑油組成物を提供することができる。」
「【0054】
<その他成分>
前記内燃機関用潤滑油組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、上記成分(A)~(C)以外のその他成分を、更に含有したものであってもよい。その他成分としては、例えば、粘度指数向上剤、酸化防止剤、有機ジチオリン酸亜鉛等の酸化防止剤としての機能も兼ね備える成分(C)以外の摩擦調整剤、無灰系分散剤、無灰系摩擦調整剤、極圧剤、防錆剤、流動点降下剤、金属不活性化剤、消泡剤等が挙げられる。
【0055】
前記粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート、分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート等のPMA系;オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体等のOCP系;スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体など)などが挙げられる。
なお、本明細書中、「アルキル(メタ)アクリレート」とは、アルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートの両方を含む意味で用いられる。
これらの粘度指数向上剤は、好ましくは、重量平均分子量(Mw)が5,000以上1,500,000以下であり、PMA系の場合、好ましくは20,000以上、より好ましくは100,000以上であり、また、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下である。また、OCP系の場合、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、また、好ましくは800,000以下、より好ましくは500,000以下である。
なお、当該重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載の方法にて測定される。
なお、粘度指数向上剤の構造としては、直鎖であってもよく、分岐鎖を有するものであってもよい。また、高分子量の側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多くもつ構造を有する櫛形ポリマーや、分岐高分子の一種であり1点で3本以上の鎖状高分子が結合している構造を有する星形ポリマー等といった特定の構造を有するポリマーであってもよい。
【0056】
また、前記粘度指数向上剤としては、前述のとおり、線状の側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多くもつ構造を有するポリマー(以下、「櫛形ポリマー」という。)を含有してもよい。このような櫛形ポリマーとしては、例えば、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エテニル基、ビニルエーテル基、アリル基等の重合性官能基を有するマクロモノマーに由来する構成単位を少なくとも有する重合体が好ましく挙げられる。ここで、該構成単位が「線状の側鎖」に該当するものである。
より具体的には、アルキル(メタ)アクリレートや、窒素原子含有系、ハロゲン元素含有系、水酸基含有系、脂肪族炭化水素系、脂環式炭化水素系、芳香族炭化水素系等の各種ビニル単量体に由来する構成単位を含む主鎖に対して、前記重合性官能基を有するマクロモノマーに由来する構成単位を含む側鎖を有する共重合体が好ましく挙げられる。
【0057】
マクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上であり、また、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは10,000以下である。
また、当該櫛形ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、省燃費性を向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは50,000以上であり、そして、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、更に好ましくは700,000以下である。分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは6以下、より好ましくは5.6以下、更に好ましくは5以下であり、下限値としては特に制限されないが、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.05以上、更に好ましくは1.10以上、より更に好ましくは1.50以上である。
当該櫛形ポリマーを含有する場合の当該櫛形ポリマーの含有量は、省燃費性を向上させる観点から、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上、更に好ましくは1.00質量%以上であり、そして、好ましくは20.00質量%以下、より好ましくは10.00質量%以下、更に好ましくは8.00質量%以下である。ここで、櫛形ポリマーの含有量は、櫛形ポリマーからなる樹脂分のみの含有量を意味し、例えば、該櫛形ポリマーとともに含有する希釈油等の質量は含まれない、固形分基準の含有量である。
」
「【0094】
各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の評価方法は、以下の通りである。
[耐水性試験]
試料油130g、蒸留水3.3gと秤量した銅板をガラス瓶に入れ密閉した。このガラス瓶を62℃に保った恒温槽に入れ、一回転中に一度逆さまになる方向に5rpmで24時間回転させた。当該操作後の試料油の塩基価(塩酸法)を前記方法と同様の方法を用いて測定した。銅板の材質はC1100P、サイズは51mm(長さ)×13mm(幅)×1mm(厚さ)の物を新生面が出るまで研磨して用いた。
[耐久性評価:耐水NOx試験]
ガラス管に耐水性試験後の試料油100gを入れ、油温を140℃に調整した。空気流量:100mL/分と、一酸化窒素(NO)を窒素で希釈したもの(NO濃度:8,000体積ppm)流量100mL/分とを混合して、油温140℃の当該試料油中に導入し、20時間かけてNOx劣化油を作成した。
当該NOx劣化油の塩基価(塩酸法)を前記方法と同様の方法を用いて測定した。
得られた結果から、下記式に基づいて、塩基価維持率を算出した。
塩基価維持率(%)=(耐水NOx試験後のNOx劣化油の塩基価/耐水性試験前の試料油の塩基価)×100
【0095】
[実施例1~3、比較例1及び2]
下記の表2に示す組成となるように、基油に各成分を配合して、内燃機関用潤滑油組成物を調製後、前記評価方法に従って、各実施例及び各比較例の組成物を評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0096】
なお、下記表2に示す各成分は、それぞれ以下の化合物を表す。
<基油>
・潤滑油基油:水素化精製基油(鉱油)、40℃動粘度19.2mm2/s、100℃動粘度4.2mm2/s、粘度指数126、硫黄含有量2質量ppm未満、NOACK蒸発量13.9質量%、n-d-M環分析;%CP79.6、%CA=0
<過塩基性カルシウムスルホネート:成分(A)>
・過塩基性カルシウムスルホネート:塩基価(塩酸法)304mgKOH/g、カルシウム含有量11.7質量%、硫黄含有量1.6質量%、石けん基のアルキル基構造が分岐状アルキル基(アルキル基の主炭素数16)
【0097】
<マグネシウム清浄剤:成分(B)及びその他マグネシウム清浄剤>
(成分(B))
・マグネシウム清浄剤(1):過塩基性マグネシウムサリシレート
・マグネシウム清浄剤(2):過塩基性マグネシウムスルホネート
・マグネシウム清浄剤(3):過塩基性マグネシウムスルホネート
(その他マグネシウム清浄剤)
・マグネシウム清浄剤(4):過塩基性マグネシウムサリシレート
・マグネシウム清浄剤(5):過塩基性マグネシウムサリシレート
なお、前記各マグネシウム清浄剤の性状を、下記表1に示す。
【0098】
【表1】
[図:0001436180000001.jpg]
【0099】
<有機モリブデン化合物:成分(C)>
・有機モリブデン化合物:「Infineum C9455B」(商品名、Infineum社製)、一般式(c12-1)で示される三核モリブデンジチオカルバメート、モリブデン含有量5.5質量%、硫黄含有量9.9質量%
【0100】
<その他成分>
・粘度指数向上剤:ポリアルキル(メタ)アクリレート、重量平均分子量(Mw)38万、SSI=20(潤滑油組成物全量基準で樹脂分として1.16質量%配合)
・ジアルキルジチオリン酸亜鉛:一般式(III)中のR41~R44が、第2級プロピル基と第2級ヘキシル基の混合物〔亜鉛含有量7.85質量%、リン含有量7.2質量%、硫黄含有量14.4質量%〕(潤滑油組成物全量基準で1.10質量%配合)
・ポリブテニルコハク酸モノイミドホウ素化物:ポリブテニル基の数平均分子量(Mn)1,000、窒素原子含有量1.23質量%、ホウ素含有量1.30質量%、塩素原子含有量0.06質量%(潤滑油組成物全量基準で2.00質量%配合)
・ポリブテニルコハク酸ビスイミド:ポリブテニル基の数平均分子量(Mn)1,300、窒素原子含有量0.99質量%、塩素原子含有量0.01質量%以下(潤滑油組成物全量基準で2.50質量%配合)
・消泡剤:ジメチルシリコーン(潤滑油組成物全量基準で0.10質量%配合)
・流動点降下剤:ポリアルキル(メタ)アクリレート(潤滑油組成物全量基準で0.20質量%配合)
・フェノール系酸化防止剤(潤滑油組成物全量基準で0.50質量%配合)
・アミン系酸化防止剤(潤滑油組成物全量基準で0.80質量%配合)
・金属不活性化剤:ベンゾトリアゾール(潤滑油組成物全量基準で0.20質量%配合)
・希釈油(潤滑油組成物全量基準で0.37質量%配合)
【0101】
【表2】
[図:0001436180000002.jpg]
【0102】
表3に示すとおり、実施例1~3の潤滑油組成物は、塩素原子含有量が成分(B)全量基準で400質量ppm以下である成分(B)を含むため、比較例1又は2に記載の潤滑油組成物に対して、耐水性試験後の塩基価の値が高く、また、耐水NOx試験後の塩基価維持率が高いことが確認された。」
(2) 甲2
「【0028】
本発明の潤滑油組成物に用いられるアルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤は、該アルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤に含まれる有機酸金属塩が組成物中に0.2~7質量%(好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは1.0~3質量%)存在するように、前述のアルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤の種類と添加量が選択される。上記のアルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤は、油性媒体中に、有機酸金属塩(一般的に石鹸成分あるいはソープ分と呼ばれている)と、その有機酸金属塩の周囲に凝集している塩基性無機塩微粒子(例、炭酸カルシウム微粒子)を分散状態で含む油性分散物(油性媒体の含
有量は、通常30~50質量%前後である)である。潤滑油組成物へのアルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤の添加量を減らしても、その潤滑油組成物中の有機酸金属塩の存在量が一定レベル以上に維持されていれば、その潤滑油組成物の高温清浄性(高温環境下でエンジンの内部を清浄に維持する能力)の低下は大きくはない。」
「【0047】
[実施例1]
アルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤として、炭素原子数が14~18の範囲のアルキル基を有する非硫化アルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤(TBN:220mgKOH/g、約30体積%の石油系媒体を含有、有機酸金属塩含有量:49質量%)を用い、本発明に従う潤滑油組成物(TBN:9.6mgKOH/g、有機酸金属塩含有量:1.5質量%)を調製した。
【0048】
[実施例2]
アルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤として、炭素原子数が14~18の範囲のアルキル基を有する非硫化アルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤(TBN:225mgKOH/g、約30体積%以下の石油系媒体を含有、有機酸金属塩含有量:51質量%)を用い、本発明に従う潤滑油組成物(TBN:9.6mgKOH/g、有機酸金属塩含有量:1.5質量%)を調製した。
【0049】
[比較例1]
アルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤として、炭素原子数が20~28の範囲のアルキル基を有する非硫化アルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤(TBN:230mgKOH/g、約32体積%の石油系媒体を含有、有機酸金属塩含有量:42.5質量%)のみを用い、本発明に従う潤滑油組成物(TBN:9.6mgKOH/g、有機酸金属塩含有量:1.2質量%)を調製した。
【0050】
有機酸金属塩(石鹸分)含量、高温清浄性の評価、そして低温粘度の評価は下記の方法で行なった。
(1)有機酸金属塩含量(石鹸分)の測定
通常のゴム膜透析法により、金属系清浄剤中の鉱油分および低分子量成分を透析させ、ゴム膜中に残存する清浄剤有効成分である透析残渣(A)を得る。一方、金属系清浄剤中の炭酸塩に由来する二酸化炭素の測定を行い、これと金属分析をもとに、炭酸カルシウムあるいは炭酸マグネシウム等の過塩基性成分(B)を求める。この(A)と(B)の差から有機酸金属塩(石鹸分)を求めた。
【0051】
(2)潤滑油組成物の高温清浄性の評価
下記の方法に従うホットチューブ試験(KES-07-803)により、潤滑油組成物の300℃と305℃での清浄性能を評価した。
内径2mmのガラス管に垂直にヒーターブロックにセットし、試料油を0.31cc/時間、そして空気を10cc/分の割合で、それぞれガラス管の下部より送り込む。この操作を、ヒーター部の温度を所定の温度に保ちながら、16時間続ける。試験終了後のガラス管内部に付着したデポジット(堆積物)を10点満点で評価する(10点がデポジットの堆積が観察されない状態を意味する。)
【0052】
(3)低温粘度
-35℃にて、MRV粘度計(ASTM D4684に規定)を用いて低温粘度(単位:cP)を測定した。
【0053】
[表1]
[図:0001436180000003.jpg]
【0054】
上記の評価試験結果から明らかなように、炭素原子数が14~18の範囲のアルキル基を有する非硫化アルキルサリチル酸カルシウム塩清浄剤を用いた本発明の潤滑油組成物(実施例1及び2)は、300℃や305℃のような非常に厳しい温度条件においても優れた高温清浄性を示し、さらに低温粘度も充分に低い。一方、炭素原子数が大きいアルキル基のアルキルサリチル酸カルシウム塩を一種類のみ用いた潤滑油組成物(比較例1)は、高温清浄性が相対的に劣り、また低温粘度が非常に高くなる。」
(3) 甲3
「【0030】
本実施形態に係る櫛型ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量Mwの上限値が、2000000以下であることが好ましく、1300000以下であることがより好ましく、1200000以下であることが更に好ましく、1000000以下であることが更により好ましく、600000以下であることが特に好ましく、500000以下であることが最も好ましい。一方、重量平均分子量Mwの下限値は、20000以上であることが好ましく、50000以上であることがより好ましく、100000以上であることが更に好ましく、300000以上であることが特に好ましい。また、重量平均分子量Mwは、20000~2000000であることが好ましく、50000~1300000であることがより好ましく、100000~1200000であることが更に好ましく、300000~1200000であることが特に好ましい。櫛型ポリマーのMwが上記範囲内であると、潤滑油組成物の本来的な省燃費特性の水準をより効果的に維持しつつ、より長期間使用しても濁りが生じにくい潤滑油組成物を得ることができる。
【0031】
本実施形態に係る櫛型ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比として表される分子量分布(Mw/Mn)が1.0~8.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.5~3.0であることが更に好ましい。Mw/Mnが1.0以上であると、より長期間使用しても濁りが生じににくい潤滑油組成物を得ることができ、8.0以下であると、潤滑油組成物の本来的な省燃費特性の水準をより効果的に維持することができる。」
「【0097】
以上、説明した本実施形態に係る潤滑油組成物は、内燃機関用潤滑油、駆動系潤滑油(例えば、自動変速機油、手動変速機油、終減速機油等)などの広い分野において使用することができるが、特に、内燃機関用潤滑油の分野において有用である。この場合の内燃機関の燃料は、ガソリン又はディーゼル燃料のいずれであってもよい。」
(4) 甲4
「【0017】
なお、要件(I)で規定する、本発明の潤滑油組成物の動粘度V80は、基油(A)の動粘度、粘度指数向上剤(B)の分子量及び含有量等を設定することで、調整可能である。
また、要件(II)で規定する、本発明の潤滑油組成物の比〔V80/T80〕は、基油(A)の種類や動粘度、潤滑油用添加剤の種類や含有量によっても多少の変化はするものの、粘度指数向上剤(B)であるポリマーの特性(構造、分子量)に依存する度合いが大きい。比〔V80/T80〕を要件(II)で規定する範囲にするには、後述の粘度指数向上剤(B)に関する記載を考慮すれば、調整可能である。」
「【0042】
<櫛形ポリマー(B1)>
本発明の一態様で用いる「櫛形ポリマー」とは、高分子量の側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多くもつ構造を有するポリマーを指す。
本発明の一態様において、粘度指数向上剤(B)として櫛形ポリマー(B1)を用いることで、得られる潤滑油組成物の要件(II)で規定の比〔V80/T80〕を、比較的容易に、低く調整することできる。
つまり、櫛形ポリマー(B1)を用いることで、前記要件(II)を満たす潤滑油組成物に調製し易く、結果として、当該潤滑油組成物は、主にエンジンの実用領域を想定した80℃でのHTHS粘度を適切な範囲に調製し易くなると共に、80℃付近での油膜厚さを十分に保持し易いものとなり得る。
【0043】
櫛形ポリマー(B1)の重量平均分子量(Mw)としては、前記要件(I)及び(II)(特に前記要件(II))を満たす潤滑油組成物とする観点から、好ましくは200,000~800,000、より好ましくは250,000~750,000、更に好ましくは300,000~700,000、より更に好ましくは350,000~650,000である。
【0044】
櫛形ポリマー(B1)の分子量分布(Mw/Mn)(但し、Mwは櫛形ポリマー(B1)の重量平均分子量、Mnは櫛形ポリマー(B1)の数平均分子量を示す)としては、前記要件(I)及び(II)(特に前記要件(II))を満たす潤滑油組成物とする観点から、好ましくは7.00以下、より好ましくは6.00以下、更に好ましくは5.00以下、より更に好ましくは3.00以下である。
なお、櫛形ポリマー(B1)の分子量分布が小さくなる程、基油(A)と共に含有した潤滑油組成物の省燃費性能がより向上する傾向にある。
また、櫛形ポリマー(B1)の分子量分布(Mw/Mn)は、下限値としては特に制限はないが、通常1.01以上、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.10以上である。」
「【0100】
ここで、上記工程において、基油(A)及び粘度指数向上剤(B)に関する事項については、上述のとおりであり、好適な成分、各成分の含有量も上述のとおりである。
なお、粘度指数向上剤(B)は、粘度指数向上剤の樹脂分を希釈油に溶解した溶液の形態で配合してもよい。当該溶液の樹脂分濃度としては、通常10~50質量%である。
各成分を配合した後、公知の方法により、撹拌して均一に分散させることが好ましい。」
2 取消理由についての当審の判断
(1)取消理由1、2(いずれも甲1を主引例とする進歩性)
ア 甲1の【0054】~【0057】、【0095】~【0101】【表2】実施例1の記載から、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「100℃動粘度4.2mm2/sの鉱油100質量%からなる基油を含み、
過塩基性カルシウムスルホネート成分(A)を1.00質量%、
塩基価が340mgKOH/g、石鹸基のアルキル基が炭素数16で直鎖状の過塩基性マグネシウムサリシレートであるマグネシウム清浄剤(1)(成分(B))を0.63質量%、
有機モリブデン化合物(成分(C))を0.18質量%、
その他成分を8.93質量%含む内燃機関用潤滑油組成物において、
その他成分は粘度指数向上剤であるMw38万、SSI=20のポリアルキル(メタ)アクリレートを潤滑油組成物全量基準で樹脂分として1.16質量%、窒素原子を1.23質量%含むポリブテニルコハク酸モノイミドホウ素化物を2.00質量%、窒素原子を0.99質量%含むポリブテニルコハク酸ビスイミドを2.50質量%含み、組成物中にCaを1270質量ppm、Mgを471質量ppm含む、内燃機関用潤滑油組成物。」
イ 対比
本件訂正発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「100℃動粘度4.2mm2/sの鉱油100質量%からなる基油」は、本件訂正発明1の「(A)1種以上の鉱油系基油もしくは1種以上の合成系基油またはそれらの組み合わせからなり、100℃における動粘度が3.8~4.6mm2/sである潤滑油基油」に相当する。
甲1の【0006】には「特定のカルシウム系清浄剤・・・過塩基性カルシウムスルホネート(A)」と記載されているから、甲1発明の「過塩基性カルシウムスルホネート成分(A)」は本件訂正発明1の「金属系清浄剤」に相当する。
甲1発明の「過塩基性マグネシウムサリシレートであるマグネシウム清浄剤(1)(成分(B)」は本件訂正発明1の「金属サリシレート清浄剤」に相当する。
また、甲1発明は「組成物中にCaを1270質量ppm、Mgを471質量ppm含む」から、CaとMgを合計で1270+471=1741質量ppm含むので、本件訂正発明1の「組成物全量基準で金属量として1000~2000質量ppm」を充足する。
さらに、甲1発明の「粘度指数向上剤であるMw38万、SSI=20のポリアルキル(メタ)アクリレート」は本件訂正発明1の「(C)重量平均分子量が350,000~1,000,000」の「ポリ(メタ)アクリレート」に相当し、甲1発明は「ポリアルキル(メタ)アクリレート」を「潤滑油組成物全量基準で樹脂分として1.16質量%」含むから、本件訂正発明1の「組成物全量基準で樹脂分として1.0~4.0質量%」を充足する。
また、甲1発明の「ポリブテニルコハク酸モノイミドホウ素化物」および「ポリブテニルコハク酸ビスイミド」は本件訂正発明1の「(D)1種以上の無変性コハク酸イミド分散剤もしくは1種以上のホウ酸変性コハク酸イミド分散剤またはそれらの組み合わせを含む、コハク酸イミド分散剤」に相当し、他にコハク酸イミドは含まれていないから、本件訂正発明1の「該コハク酸イミド分散剤の全窒素分に占める前記無変性コハク酸イミド分散剤および前記ホウ酸変性コハク酸イミド分散剤の合計の窒素分の割合が70質量%以上である」を充足する。そして、甲1発明の「窒素原子を1.23質量%含むポリブテニルコハク酸モノイミドホウ素化物を2.00質量%、窒素原子を0.99質量%含むポリブテニルコハク酸ビスイミドを2.50質量%」は、組成物全量基準で窒素原子を494質量ppm(=(1.23×2.00+0.99×2.5)×102)含むから、本件訂正発明1の「コハク酸イミド分散剤を、組成物全量基準で窒素分として100~1000質量ppm」を充足する。
そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違するものである。
<一致点>
「(A)1種以上の鉱油系基油もしくは1種以上の合成系基油またはそれらの組み合わせからなり、100℃における動粘度が3.8~4.6mm2/sである潤滑油基油と、
(B)1種以上の金属サリシレート清浄剤を含む金属系清浄剤を、組成物全量基準で金属量として1000~2000質量ppmと、
(C)重量平均分子量が350,000~1,000,000のポリ(メタ)アクリレートを、組成物全量基準で樹脂分として1.0~4.0質量%と、
(D)1種以上の無変性コハク酸イミド分散剤もしくは1種以上のホウ酸変性コハク酸イミド分散剤またはそれらの組み合わせを含む、コハク酸イミド分散剤であって、該コハク酸イミド分散剤の全窒素分に占める前記無変性コハク酸イミド分散剤および前記ホウ酸変性コハク酸イミド分散剤の合計の窒素分の割合が70質量%以上である、コハク酸イミド分散剤を、組成物全量基準で窒素分として100~1000質量ppmと
を含む、内燃機関用潤滑油組成物。」
<相違点1>
本件訂正発明1は「組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として18.1mmol/kg以上」であるのに対して、甲1発明にはそのように特定されていない点。
<相違点2>
本件訂正発明1はポリ(メタ)アクリレートの「多分散度が4.0以下」で「櫛形」であるのに対して、甲1発明はそのように特定されていない点。
<相違点3>
本件訂正発明1は「150℃におけるHTHS粘度が2.25mPa・s以上2.55mPa・s未満」であるのに対して、甲1発明にはそのように特定されていない点。
<相違点4>
本件訂正発明1は、「全石けん基に占める前記全サリシレート石けん基の割合が95~100mol%」であるのに対して、甲1発明にはそのように特定されていない点。
ウ 検討
まず相違点4について判断する。
甲1発明は石けん基として、過塩基性カルシウムスルホネート成分(A)1.00質量%と、石鹸基のアルキル基が炭素数16で直鎖状の過塩基性マグネシウムサリシレート(B)0.63質量%を含有するものであるが、(A)の質量が不明のため、両者のモル比は換算できない。
甲1の【0016】には過塩基性カルシウムスルホネートは潤滑油組成物全量基準で、0.05質量%以上、3.0質量%以下であることが、【0025】には過塩基性マグネシウムサリシレートは潤滑油組成物全量基準で、0.05質量%以上、3.0質量%以下であることが記載されているが、甲1には全石けん基に占める全サリシレート石けん基の割合を95mol%以上とすることについて記載も示唆もない。
また、甲2~5にも、当該事項について記載も示唆もなく、当該事項は技術常識ともいえない。
そうすると、甲1発明において、全石けん基に占める全サリシレート石けん基の割合を95mol%以上とすることは当業者が容易になし得たとはいえない。
そして、本件明細書の【0059】には、全石けん基に占める全サリシレート石けん基の割合について、「水混入時の低温流動性の悪化をさらに低減する観点から」「好ましくは50~100mol%」とすることが記載されている。また、実施例1~15、比較例1~14のうち、サリシレート石けん基の割合が100%である実施例1~11、14及び15、96%である実施例12、並びに95%である実施例13については鉄球落下試験の結果が2.5~3.5秒であるのに対して、サリシレート石けん基の割合が59%である比較例10については鉄球落下試験の結果が14秒となっている。鉄球落下試験は「水混入時の低温流動性」の指標であり、その時間が短いほど水混入時の低温流動性が良好である(【0160】)ことからすると、サリシレート石けん基の割合が95~100%の範囲では顕著に水混入時の低温流動性が優れることが理解できる。甲1~5には、サリシレート石けん基が水混入時の低温流動性を改善する効果があることについて記載も示唆もなく、本件訂正発明1は、本件訂正発明1の構成から予測しえない顕著な効果を奏するものである。
オ 小括
よって、本件訂正発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
カ 本件訂正発明2、5~8
本件訂正発明2、5~8はいずれも本件訂正発明1を引用するものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲1に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由
前記第5の2(1)ウのとおり、本件訂正発明1、2及び5~8は、甲1に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、前記第4の1(1)の進歩性についての申立理由は採用できない。
前記第4の1(2)のサポート要件1、2について、以下検討する。
1 サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
2 本件発明の課題について
本件明細書の[0007]等の記載からみて、本件訂正発明1~8の課題は「水混入時の低温流動性の悪化を低減することが可能な、内燃機関用潤滑油組成物を提供すること」であると認められる。
3 本件明細書の記載について
本件明細書には、次の事項が記載されている。
「【0049】
サリシレート系清浄剤の好ましい例としては、金属サリシレートまたはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を挙げることができる。金属サリシレートの好ましい例としては、下記一般式(1)で表されるアルカリ又はアルカリ土類金属サリシレートを挙げることができる。
【0050】
【化1】
[図:0001436180000004.jpg]
【0051】
一般式(1)中、R1はそれぞれ独立に炭素数14~30のアルキルまたはアルケニル基を表し、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表し、aは1又は2を表し、nはMの価数に対応して1又は2を表す。Mがアルカリ金属であるときnは1であり、Mがアルカリ土類金属であるときnは2である。アルカリ金属としてはナトリウム又はカリウムが好ましく、アルカリ土類金属としてはカルシウム又はマグネシウムが好ましい。aとしては1が好ましい。なおa=2であるとき、R1は異なる基の組み合わせであってもよい。
【0052】
サリシレート系清浄剤の好ましい一形態としては、上記一般式(1)においてa=1であるアルカリ土類金属サリシレートまたはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を挙げることができる。
【0053】
アルカリ又はアルカリ土類金属サリシレートの製造方法は特に制限されるものではなく、公知のモノアルキルサリシレートの製造方法等を用いることができる。例えば、フェノールを出発原料として、オレフィンを用いてアルキレーションし、次いで炭酸ガス等でカルボキシレーションして得たモノアルキルサリチル酸、あるいは、サリチル酸を出発原料として、当量の上記オレフィンを用いてアルキレーションして得られたモノアルキルサリチル酸等に、アルカリ又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の金属塩基を反応させることにより、アルカリ又はアルカリ土類金属サリシレートを得ることができる。他の実施形態において、これらのモノアルキルサリチル酸等を一旦ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と金属交換させること等により、アルカリ土類金属サリシレートを得ることができる。
・・・
【0066】
また潤滑油組成物中の(B)成分の含有量は、塩基価持続性を高める観点および水混入時の低温流動性の悪化を低減する観点から、組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として10mmol/kg以上であり、好ましくは15mmol/kg以上、一の実施形態において18mmol/kg以上であり・・・
」
「【0101】
<(D)コハク酸イミド分散剤>
本発明の潤滑油組成物は、1種以上の無変性コハク酸イミド分散剤もしくは1種以上のホウ酸変性コハク酸イミド分散剤またはそれらの組み合わせを含むコハク酸イミド分散剤(以下において「(D)成分」ということがある。)を、組成物全量基準で窒素分として100~1000質量ppm含有する。(D)成分の全窒素分に占める前記無変性コハク酸イミド分散剤および前記ホウ酸変性コハク酸イミド分散剤の合計の窒素分の割合は70質量%以上である。コハク酸イミド分散剤としては、アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドまたはその変性物を用いることができる。アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドの例としては、下記一般式(9)または(10)で表される化合物を挙げることができる。
・・・
【0111】
(D)成分は1種以上の無変性コハク酸イミド分散剤のみを含んでいてもよく、1種以上のホウ酸変性コハク酸イミド分散剤のみを含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。また(D)成分は無変性コハク酸イミド分散剤および/またはホウ酸変性コハク酸イミドに加えて、上記説明した変性コハク酸イミドであってホウ酸変性物以外のものをさらに含んでいても良い。ただし、(D)成分の全窒素分に占める無変性コハク酸イミド分散剤およびホウ酸変性コハク酸イミド分散剤の合計の窒素分の割合は、水混入時の低温流動性の悪化を低減する観点から70~100質量%であり、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0112】
潤滑油組成物中の(D)成分の含有量は、水混入時の低温流動性の悪化を低減する観点、ならびに耐コーキング性および添加剤の溶解性を高める観点から、組成物全量基準で窒素分として好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、さらに好ましくは300質量ppm以上、特に好ましくは400質量ppm以上であり、また組成物の省燃費性および新油状態での低温流動性を高める観点から1000質量ppm以下、好ましくは900質量ppm以下、より好ましくは800質量ppm以下、特に好ましくは700質量ppm以下であり、一の実施形態において100~1000質量ppm、又は200~900質量ppm、又は300~800質量ppm、又は400~700質量ppmであり得る。」
4 前記第4 1(2)アのサポート要件1について
本件訂正発明1は、「該コハク酸イミド分散剤の全窒素分に占める前記無変性コハク酸イミド分散剤および前記ホウ酸変性コハク酸イミド分散剤の合計の窒素分の割合が70質量%以上」、「コハク酸イミド分散剤を、組成物全量基準で窒素分として100~ 1000質量ppm」を特定事項とするものであり、本願明細書の段落【0111】【0112】の記載から、前記特定範囲を満たす組成物は水混入時の低温流動性が好ましいことを理解できる。
また、実施例1~14には、前者においては「無変性とホウ酸変性の窒素分の割合が100質量%」のもの、後者においては「窒素分として580質量ppm」のものが開示されており、いずれも「水混入時の低温流動性」の指標である「鉄球落下試験の沈下時間」が短いものであったことが開示されている。さらに比較例12と比較例13とを対比すると、「無変性とホウ酸変性の窒素分の割合」が前者は40質量%、後者は58質量%であり、それ以外はほぼ同等であるところ、「鉄球落下試験の沈下時間」が前者は「測定不可」であるのに対し、後者は13秒であることから、「無変性とホウ酸変性の窒素分の割合」が高いほど水混入時の低温流動性が改善することが理解できる。
以上のことから、当業者であれば、前記特定事項を含む本件訂正発明1は、程度の差こそあれ、前記2で示した「水混入時の低温流動性の悪化を低減することが可能な、内燃機関用潤滑油組成物を提供すること」との課題を解決するものと理解できる。
これに対して、申立人は、本件訂正発明1がサポート要件を満たさないことを証拠等に基づき何ら具体的に主張するものではないから、申立人の主張は採用できない。
5 前記第4の1(2)イのサポート要件2について
本件明細書【0049】~【0066】には、種々のサリシレート系清浄剤が記載され、その含有量は、塩基価持続性を高める観点および水混入時の低温流動性の悪化を低減する観点から、組成物1kgあたりの全サリシレート石けん基の物質量として18mmol/kg以上であることが記載されているし、実施例には、前記B-1,B-2の金属サリシレート清浄剤を18.1mol/kg以上用いた組成物がいずれも水混入時の低温流動性に優れることが開示されていることからすると、金属サリシレートの構造を持つ清浄剤であれば、程度の差こそあれ、潤滑油組成物水混入時の低温流動性を改善できることが理解できる。
申立人は、本件明細書に実施例をもって開示されている「B-1:炭酸カルシウム過塩基化カルシウムサリシレート、Ca含有量8.0質量%、 塩基価 (過塩素酸法)225mgKOH、金属比3.3」 や 「B-2:炭酸マグネシウム過塩基化マグネシウムサリシレート、Mg含有量7.5質 量%、塩基価 (過塩素酸法)342mgKOH/g、金属比3.3」といった特定のカルシウムサリシレートや特定のマグネシウムサリシレートを用いた場合に限り発明の効果が奏され得ることが示されているに過ぎず、金属サリシレート清浄剤の石けん基の量が同一となるように金属系清浄剤を添加したとしても、その具体的な構造に応じて潤滑油組成物の性能が変化し得ることを主張し、その根拠として、甲3の[0047]~ [0054]には、金属系清浄剤のアルキル鎖の炭素数により低温における粘度特性が変化することが記載されていると主張する(異議申立書16頁)。
しかしながら、甲3の[0047]~[0054]には、金属系清浄剤のアルキル鎖の炭素数により低温における粘度特性が変化することは記載されていない。仮に甲3が甲2の誤記であったとして検討すると、前記第5の1(2)で摘記したように、甲2の[0047]~[0054]には、実施例に係る炭素数14~18のアルキル基を有する金属サリシレート清浄剤を用いた潤滑油組成物の-35℃粘度が26300cP(26.3Pa・S)又は32600cP(32.6Pa・s)であるのに対し、比較例に係る炭素数20~28のアルキル基を有する金属サリシレート清浄剤を用いた潤滑油組成物の-35℃粘度は測定できなかったことが記載されているが、甲2の実施例・比較例では、水混入時の粘度を測定しているわけでも、櫛形ポリ(メタ)アクリレートやコハク酸イミド分散剤を用いているわけでもないので、甲2の当該記載から、水が混入し、かつ櫛形ポリ(メタ)アクリレートやコハク酸イミド分散剤を用いた場合においても、金属サリシレート清浄剤のアルキル鎖長により、低温流動性に格別顕著な差異が生じるとは直ちにいえるものではない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
6 小括
上記4、5のとおりであるから、本件訂正発明1~8の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
したがって、本件訂正発明に係る特許を特許異議申立理由(サポート要件違反)によって取り消すべきものとはできない。
第7 むすび
前記第5、第6のとおり、本件特許の請求項1、2、5~8係る特許は、前記第4の1に記載した特許異議申立書に記載した申立ての理由、前記第4の2に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1、2、5~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項3、4は削除され、請求項3、4に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700441