2021-701032
ゲノム改変方法及びゲノム改変キット
- 審判番号
- 2021-701032
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-143089外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6867635
- 請求日
- 2021年10月28日
- 審決日
- 2023年03月02日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.113-YAA(C12N) / P1651.121-YAA(C12N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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特許第6867635号の請求項1~28に係る特許についての出願は、令和2年8月25日(優先権主張 令和2年4月6日)に出願した特願2020-141335号の一部を令和2年8月27日に新たに特許出願されたものであって、令和3年4月13日にその特許権の設定登録がされ、同年4月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~28に係る特許について、同年10月28日に特許異議申立人 山本 美映子により特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は、次のとおりである。
同年 6月 3日 : 訂正請求書、意見書(特許権者)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年6月3日付けの訂正請求書の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1の工程(a)に、「細胞」と記載されているのを「細胞(但し、受精卵を除く)」に訂正する。
(2)訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1の「2種以上の選択マーカー用ドナーDNA、」という記載の後に、「ここで、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、」を追加する。
特許請求の範囲の請求項1に、「を含む、」と記載されているのを、
「(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、を含み、」に訂正する。
(3)訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1の「方法。」という記載の前に、「標的領域が10kbp以上の長さを有する、」を追加する。
(4)訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項1に、「選択マーカー遺伝子の塩基配列」と記載されているのを「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列」に訂正し、「前記選択マーカー遺伝子」と記載されているのを、「前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に訂正し、「導入された当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「導入された当該区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に訂正する。
(5)訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2の工程(a)に、「細胞」と記載されているのを「細胞(但し、受精卵を除く)」に訂正する。
(6)訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項2の「2種以上の選択マーカー用ドナーDNA、」という記載の後に、「ここで、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、」を追加する。
特許請求の範囲の請求項2に、「を含む、」と記載されているのを、
「(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、を含み、」に訂正する。
(7)訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項2の「方法。」という記載の前に、「標的領域が10kbp以上の長さを有する、」を追加する。
(8)訂正事項2-4
特許請求の範囲の請求項2に、「選択マーカー遺伝子の塩基配列」と記載されているのを「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列」に訂正し、「相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に訂正し、「前記選択マーカー遺伝子」と記載されているのを、「前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に訂正し、「導入された当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「導入された当該区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に訂正する。
(9)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「5kbp以上」と記載されているのを「10kbp以上40kbp以下」に訂正する。
(10)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「8kbp以上」と記載されているのを「10kbp以上20kbp以下」に訂正する。
(11)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、をさらに含む、」と記載されているのを削除する。
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。」という記載の前に、「前記上流ホモロジーアームおよび前記下流ホモロジーアームがそれぞれ、500bp~3,000bpである、」を追加する。
(12)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、をさらに含む、」と記載されているのを削除する。
特許請求の範囲の請求項6の「請求項3に記載の方法。」という記載の前に、「前記上流ホモロジーアームおよび前記下流ホモロジーアームがそれぞれ、500bp~3,000bpである、」を追加する。
(13)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、をさらに含む、」と記載されているのを削除する。
特許請求の範囲の請求項7の「請求項4に記載の方法。」という記載の前に、「前記上流ホモロジーアームおよび前記下流ホモロジーアームがそれぞれ、500bp~3,000bpである、」を追加する。
(14)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に、「請求項5~7」と記載されているのを、「請求項1~7」に訂正する。
(15)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に、「請求項6または7」と記載されているのを、「請求項3または4」に訂正する。
(16)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に、「請求項7」と記載されているのを、「請求項4」に訂正する。
(17)訂正事項11-1
特許請求の範囲の請求項12に、「選択マーカー遺伝子の塩基配列」と記載されているのを「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列」に訂正し、「相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に訂正し、「前記選択マーカー遺伝子」と記載されているのを、「前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に訂正する。
(18)訂正事項11-2
特許請求の範囲の請求項12の「DNA。」という記載の「DNA」と「。」との間に、「、 ここで、選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有する」を追加する。
(19)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13に、「5kbp以上」と記載されているのを「10kbp以上40kbp以下」に訂正する。
(20)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14に、「8kbp以上」と記載されているのを「10kbp以上20kbp以下」に訂正する。
(21)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項20に、「請求項5」と記載されているのを、「請求項1~4のいずれか一項」に訂正する。
(22)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項21に、「請求項6または7」と記載されているのを、「請求項3または4」に訂正する。
(23)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項24に、「請求項5」と記載されているのを、「請求項1~4のいずれか一項」に訂正する。
(24)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項25に、「請求項6または7」と記載されているのを、「請求項3または4」に訂正する。
(25)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項27に、「請求項6または7」と記載されているのを、「請求項3または4」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項3~28は、訂正前の請求項1、2を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1-1~1-4、2-1~2-4によって記載が訂正される請求項1、2に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~28は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項について請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、新規事項追加の有無、独立特許要件
(1)訂正事項1-1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1-1は、「除くクレーム」に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1-1は、「除くクレーム」に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項1-1は、「除くクレーム」に該当するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項1-1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(2)訂正事項1-2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に、「ここで、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、」、「(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、」を追加するものであり、発明特定事項の直列的付加に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1-2は、発明特定事項の直列的付加に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した特許請求の範囲の請求項5には、「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有」すること、「(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、」を含むことが記載されており、また、願書に添付した明細書の段落【0048】には、「ポジティブ選択マーカー遺伝子としては、例えば、薬剤耐性遺伝子、・・・・・・等が挙げられる。」と記載されているから、訂正事項1-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項1-2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(3)訂正事項1-3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1-3は、訂正前の請求項1に、「標的領域が10kbp以上の長さを有する、」を追加するものであり、発明特定事項の直列的付加に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1-3は、発明特定事項の直列的付加に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書の段落【0035】には、「ゲノム改変の対象となる標的領域は、1以上のアレルを有するゲノム上の任意の領域とすることができる。標的領域のサイズは、特に限定されない。本実施形態のゲノム改変方法では、従来よりも大きなサイズの領域を改変することができる。標的領域は、例えば、10kbp以上であってもよい。標的領域は、例えば、100bp以上、200bp以上、400bp以上、800bp以上、1kbp以上、2kbp以上、3kbp以上、4kbp以上、5kbp以上、8kbp以上、10kbp以上、20kbp以上、40kbp以上、80kbp以上、100kbp以上、又は200kbp以上であってもよい。」と記載されているから、訂正事項1-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項1-3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(4)訂正事項1-4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1-4は、訂正前の請求項1に、「選択マーカー遺伝子の塩基配列」と記載されているのを「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列」に限定し、「前記選択マーカー遺伝子」と記載されているのを、「前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定し、「導入された当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「導入された当該区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1-4は、「選択マーカー遺伝子の塩基配列」と記載されているのを「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列」に限定し、「前記選択マーカー遺伝子」と記載されているのを、「前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定し、「導入された当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「導入された当該区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した特許請求の範囲の請求項5には、「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」と記載されているから、訂正事項1-4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項1-4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(5)訂正事項2-1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2-1は、「除くクレーム」に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項2-1は、「除くクレーム」に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項2-1は、「除くクレーム」に該当するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項2-1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(6)訂正事項2-2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2-2は、訂正前の請求項2に、「ここで、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、」、「(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、」を追加するものであり、発明特定事項の直列的付加に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項2-2は、発明特定事項の直列的付加に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した特許請求の範囲の請求項5には、「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有」すること、「(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、」を含むことが記載されており、また、願書に添付した明細書の段落【0048】には、「ポジティブ選択マーカー遺伝子としては、例えば、薬剤耐性遺伝子、・・・・・・等が挙げられる。」と記載されているから、訂正事項2-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項2-2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(7)訂正事項2-3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2-3は、訂正前の請求項2に、「標的領域が10kbp以上の長さを有する、」を追加するものであり、発明特定事項の直列的付加に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項2-3は、発明特定事項の直列的付加に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書の段落【0035】には、「ゲノム改変の対象となる標的領域は、1以上のアレルを有するゲノム上の任意の領域とすることができる。標的領域のサイズは、特に限定されない。本実施形態のゲノム改変方法では、従来よりも大きなサイズの領域を改変することができる。標的領域は、例えば、10kbp以上であってもよい。標的領域は、例えば、100bp以上、200bp以上、400bp以上、800bp以上、1kbp以上、2kbp以上、3kbp以上、4kbp以上、5kbp以上、8kbp以上、10kbp以上、20kbp以上、40kbp以上、80kbp以上、100kbp以上、又は200kbp以上であってもよい。」と記載されているから、訂正事項2-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項2-3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(8)訂正事項2-4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2-4は、訂正前の請求項2に、「選択マーカー遺伝子の塩基配列」と記載されているのを「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列」に限定し、「相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定し、「前記選択マーカー遺伝子」と記載されているのを、「前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定し、「導入された当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「導入された当該区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項2-4は、「選択マーカー遺伝子の塩基配列」と記載されているのを「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列」に限定し、「相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定し、「前記選択マーカー遺伝子」と記載されているのを、「前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定し、「導入された当該区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「導入された当該区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した特許請求の範囲の請求項5には、「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」と記載されているから、訂正事項2-4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項2-4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(9)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項3に、「標的領域が5kbp以上の長さを有する」と記載されているのを、「標的領域が10kbp以上40kbp以下の長さを有する」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項3は、「標的領域が5kbp以上の長さを有する」と記載されているのを、「標的領域が10kbp以上40kbp以下の長さを有する」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書の段落【0035】には、「ゲノム改変の対象となる標的領域は、1以上のアレルを有するゲノム上の任意の領域とすることができる。標的領域のサイズは、特に限定されない。本実施形態のゲノム改変方法では、従来よりも大きなサイズの領域を改変することができる。標的領域は、例えば、10kbp以上であってもよい。標的領域は、例えば、100bp以上、200bp以上、400bp以上、800bp以上、1kbp以上、2kbp以上、3kbp以上、4kbp以上、5kbp以上、8kbp以上、10kbp以上、20kbp以上、40kbp以上、80kbp以上、100kbp以上、又は200kbp以上であってもよい。」と記載されているから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(10)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項4に、「標的領域が8kbp以上の長さを有する」と記載されているのを、「標的領域が10kbp以上20kbp以下の長さを有する」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項4は、「標的領域が8kbp以上の長さを有する」と記載されているのを、「標的領域が10kbp以上20kbp以下の長さを有する」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書の段落【0035】には、「ゲノム改変の対象となる標的領域は、1以上のアレルを有するゲノム上の任意の領域とすることができる。標的領域のサイズは、特に限定されない。本実施形態のゲノム改変方法では、従来よりも大きなサイズの領域を改変することができる。標的領域は、例えば、10kbp以上であってもよい。標的領域は、例えば、100bp以上、200bp以上、400bp以上、800bp以上、1kbp以上、2kbp以上、3kbp以上、4kbp以上、5kbp以上、8kbp以上、10kbp以上、20kbp以上、40kbp以上、80kbp以上、100kbp以上、又は200kbp以上であってもよい。」と記載されているから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(11)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5の前段は、訂正前の請求項1、2に、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項を追加したことに伴い、訂正後の請求項1、2の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項5に、「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、 (c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、 をさらに含む、」と記載されているのを削除することにより明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5の後段は、訂正前の請求項5に、「前記上流ホモロジーアームおよび前記下流ホモロジーアームがそれぞれ、500bp~3,000bpである、」を追加するものであり、発明特定事項の直列的付加に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項5の前段は、訂正後の請求項1、2の記載との整合性を図るために、「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、 (c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、 をさらに含む、」を削除することにより明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
訂正事項5の後段は、発明特定事項の直列的付加に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項5の前段は、明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
願書に添付した明細書の段落【0017】には、「ドナーDNAは、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間に、所望の塩基配列を含むことができる。各ホモロジーアームの長さは、300bp以上が好ましく、通常500~3000bp程度である。」と記載されているから、訂正事項5の後段は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(12)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6の前段は、訂正前の請求項1、2に、訂正前の請求項6に記載されていた発明特定事項を追加したことに伴い、訂正後の請求項1、2の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項6に、「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、 (c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、 をさらに含む、」と記載されているのを削除することにより明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項6の後段は、訂正前の請求項6に、「前記上流ホモロジーアームおよび前記下流ホモロジーアームがそれぞれ、500bp~3,000bpである、」を追加するものであり、発明特定事項の直列的付加に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項6の前段は、訂正後の請求項1、2の記載との整合性を図るために、「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、 (c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、 をさらに含む、」を削除することにより明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
訂正事項6の後段は、発明特定事項の直列的付加に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項6の前段は、明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
願書に添付した明細書の段落【0017】には、「ドナーDNAは、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間に、所望の塩基配列を含むことができる。各ホモロジーアームの長さは、300bp以上が好ましく、通常500~3000bp程度である。」と記載されているから、訂正事項6の後段は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(13)訂正事項7について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7の前段は、訂正前の請求項1、2に、訂正前の請求項7に記載されていた発明特定事項を追加したことに伴い、訂正後の請求項1、2の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項7に、「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、 (c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、 をさらに含む、」と記載されているのを削除することにより明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項7の後段は、訂正前の請求項7に、「前記上流ホモロジーアームおよび前記下流ホモロジーアームがそれぞれ、500bp~3,000bpである、」を追加するものであり、発明特定事項の直列的付加に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項7の前段は、訂正後の請求項1、2の記載との整合性を図るために、「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、ここで、当該選択マーカー遺伝子がポジティブ選択用にもネガティブ選択用にも用いられる場合には、別のネガティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有していなくてよく、 (c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、 (iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、 (iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、 (d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、 をさらに含む、」を削除することにより明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
訂正事項7の後段は、発明特定事項の直列的付加に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項7の前段は、明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
願書に添付した明細書の段落【0017】には、「ドナーDNAは、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間に、所望の塩基配列を含むことができる。各ホモロジーアームの長さは、300bp以上が好ましく、通常500~3000bp程度である。」と記載されているから、訂正事項7の後段は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(14)訂正事項8について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項8は、訂正前の請求項8に「請求項5~7のいずれか一項に記載の方法」と記載されていたが、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い、訂正後の請求項1~7の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項8に「請求項5~7のいずれか一項に記載の方法」と記載されているのを、「請求項1~7のいずれか一項に記載の方法」に訂正することにより、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項8は、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項8は、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(15)訂正事項9について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項9は、訂正前の請求項9に「請求項6または7に記載の方法」と記載されていたが、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い、訂正後の請求項3または4の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項9に「請求項6または7に記載の方法」と記載されているのを、「請求項3または4に記載の方法」に訂正することにより、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項9は、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項9は、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項9に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(16)訂正事項10について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項10は、訂正前の請求項10に「請求項7に記載の方法」と記載されていたが、訂正前の請求項7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い、訂正後の請求項4の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項10に「請求項7に記載の方法」と記載されているのを、「請求項4に記載の方法」に訂正することにより、訂正前の請求項7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項10は、訂正前の請求項7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項10は、訂正前の請求項7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項10に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(17)訂正事項11-1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項11-1は、訂正前の請求項12に、「選択マーカー遺伝子の塩基配列」と記載されているのを「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列」に限定し、「相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定し、「前記選択マーカー遺伝子」と記載されているのを、「前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項11-1は、「選択マーカー遺伝子の塩基配列」と記載されているのを「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列」に限定し、「相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子」と記載されているのを「相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定し、「前記選択マーカー遺伝子」と記載されているのを、「前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した特許請求の範囲の請求項5には、「ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子」と記載されているから、訂正事項11-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項11-1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(18)訂正事項11-2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項11-2は、訂正前の請求項12に、「、 ここで、選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有する」を追加するものであり、発明特定事項の直列的付加に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項11-2は、発明特定事項の直列的付加に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した特許請求の範囲の請求項5には、「2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有」することが記載されており、また、願書に添付した明細書の段落【0048】には、「ポジティブ選択マーカー遺伝子としては、例えば、薬剤耐性遺伝子、・・・・・・等が挙げられる。」と記載されているから、訂正事項11-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項11-2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(19)訂正事項12について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項12は、訂正前の請求項13に、「標的領域が5kbp以上の長さを有する」と記載されているのを、「標的領域が10kbp以上40kbp以下の長さを有する」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項12は、「標的領域が5kbp以上の長さを有する」と記載されているのを、「標的領域が10kbp以上40kbp以下の長さを有する」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書の段落【0035】には、「ゲノム改変の対象となる標的領域は、1以上のアレルを有するゲノム上の任意の領域とすることができる。標的領域のサイズは、特に限定されない。本実施形態のゲノム改変方法では、従来よりも大きなサイズの領域を改変することができる。標的領域は、例えば、10kbp以上であってもよい。標的領域は、例えば、100bp以上、200bp以上、400bp以上、800bp以上、1kbp以上、2kbp以上、3kbp以上、4kbp以上、5kbp以上、8kbp以上、10kbp以上、20kbp以上、40kbp以上、80kbp以上、100kbp以上、又は200kbp以上であってもよい。」と記載されているから、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項12に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(20)訂正事項13について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項13は、訂正前の請求項14に、「標的領域が8kbp以上の長さを有する」と記載されているのを、「標的領域が10kbp以上20kbp以下の長さを有する」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項13は、「標的領域が8kbp以上の長さを有する」と記載されているのを、「標的領域が10kbp以上20kbp以下の長さを有する」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書の段落【0035】には、「ゲノム改変の対象となる標的領域は、1以上のアレルを有するゲノム上の任意の領域とすることができる。標的領域のサイズは、特に限定されない。本実施形態のゲノム改変方法では、従来よりも大きなサイズの領域を改変することができる。標的領域は、例えば、10kbp以上であってもよい。標的領域は、例えば、100bp以上、200bp以上、400bp以上、800bp以上、1kbp以上、2kbp以上、3kbp以上、4kbp以上、5kbp以上、8kbp以上、10kbp以上、20kbp以上、40kbp以上、80kbp以上、100kbp以上、又は200kbp以上であってもよい。」と記載されているから、訂正事項13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項13に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(21)訂正事項14について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項14は、訂正前の請求項20に「請求項5に記載の方法」と記載されていたが、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い、訂正後の請求項1~4の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項20に「請求項5に記載の方法」と記載されているのを、「請求項1~4のいずれか一項に記載の方法」に訂正することにより、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項14は、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項14は、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項14に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(22)訂正事項15について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項15は、訂正前の請求項21に「請求項6または7に記載の方法」と記載されていたが、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い、訂正後の請求項3または4の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項21に「請求項6または7に記載の方法」と記載されているのを、「請求項3または4に記載の方法」に訂正することにより、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項15は、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項15は、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項15に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(23)訂正事項16について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項16は、訂正前の請求項24に「請求項5に記載の方法」と記載されていたが、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い、訂正後の請求項1~4の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項24に「請求項5に記載の方法」と記載されているのを、「請求項1~4のいずれか一項に記載の方法」に訂正することにより、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項16は、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項16は、訂正前の請求項5に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項16に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(24)訂正事項17について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項17は、訂正前の請求項25に「請求項6または7に記載の方法」と記載されていたが、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い、訂正後の請求項3または4の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項25に「請求項6または7に記載の方法」と記載されているのを、「請求項3または4に記載の方法」に訂正することにより、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項17は、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項17は、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項17に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(25)訂正事項18について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項18は、訂正前の請求項27に「請求項6または7に記載の方法」と記載されていたが、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い、訂正後の請求項3または4の記載との整合性を図るために、訂正前の請求項27に「請求項6または7に記載の方法」と記載されているのを、「請求項3または4に記載の方法」に訂正することにより、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項18は、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項18は、訂正前の請求項6または7に記載されていた発明特定事項の削除に伴い生じる明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議申立てがされているので、訂正事項18に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~28〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認容されるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~28に係る発明(以下、「本件発明1~28」という。)は、令和4年6月3日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~28に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。下線は訂正箇所を示すものである。
「【請求項1】染色体ゲノムの2つ以上のアレルが改変された単離された細胞を作製する方法であって、(a)下記(i)及び(ii)を、2つ以上のアレルを含む単離された細胞(但し、受精卵を除く)に導入して、前記2つ以上のアレルそれぞれに選択マーカー遺伝子を導入する工程と、(i)前記染色体ゲノムの2つ以上のアレル中の標的領域を標的とし、当該標的領域を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、それぞれが前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとを有し、かつ、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子をそれぞれ有し、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA、ここで、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、続きを表示(全55行)(b)前記工程(a)の後、前記2以上のアレルに対して異なる種類の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2以上のアレルにそれぞれ区別可能に異なる固有の選択マーカー遺伝子が導入され、導入された当該区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子のすべてを発現する単離された細胞を選択する工程(ポジティブ選択のための工程)と、(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、を含み、標的領域が10kbp以上の長さを有する、方法。【請求項2】染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変する方法であって、(a)下記(i)及び(ii)を、2つ以上のアレルを含む単離された細胞(但し、受精卵を除く)に導入して、前記2つ以上のアレルそれぞれに選択マーカー遺伝子を導入する工程と、(i)前記染色体ゲノムの2つ以上のアレル中の標的領域を標的とし、当該標的領域を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、それぞれが前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとを有し、かつ、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子をそれぞれ有し、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA、ここで、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、(b)前記工程(a)の後、前記2以上のアレルに対して異なる種類の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2以上のアレルにそれぞれ区別可能に異なる固有の選択マーカー遺伝子が導入され、導入された当該区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子のすべてを発現する単離された細胞を選択する工程(ポジティブ選択のための工程)と、(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、を含み、標的領域が10kbp以上の長さを有する、方法。【請求項3】標的領域が10kbp以上40kbp以下の長さを有する、請求項1または2に記載の方法。【請求項4】標的領域が10kbp以上20kbp以下の長さを有する、請求項3に記載の方法。【請求項5】前記上流ホモロジーアームおよび前記下流ホモロジーアームがそれぞれ、500bp~3,000bpである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。【請求項6】前記上流ホモロジーアームおよび前記下流ホモロジーアームがそれぞれ、500bp~3,000bpである、請求項3に記載の方法。【請求項7】前記上流ホモロジーアームおよび前記下流ホモロジーアームがそれぞれ、500bp~3,000bpである、請求項4に記載の方法。【請求項8】組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。【請求項9】組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項3または4に記載の方法。【請求項10】組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項4に記載の方法。【請求項11】組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、8kbp以上の長さを有する、請求項8に記載の方法。【請求項12】下記(i)及び(ii)を含む、染色体ゲノムの2つ以上のアレルを改変するゲノム改変キットであって、請求項1または2に記載の方法に用いるためのキット。(i)前記染色体ゲノムの標的領域を標的とし、標的領域を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有し、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子を有し、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA、ここで、選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有する。【請求項13】標的領域が10kbp以上40kbp以下の長さを有する、請求項12に記載のキット。【請求項14】標的領域が10kbp以上20kbp以下の長さを有する、請求項13に記載のキット。【請求項15】組換え用ドナーDNAをさらに含む、請求項12~14のいずれか一項に記載のキットであって、組換え用ドナーDNAは、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有し、請求項7に記載の方法に用いるための、キット。【請求項16】組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項15に記載のキット。【請求項17】組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、8kbp以上の長さを有する、請求項15または16に記載のキット。【請求項18】標的領域が5kbp以上の長さを有し、かつ、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、5kbp以上の長さを有する、請求項15または16に記載のキット。【請求項19】標的領域が8kbp以上の長さを有し、かつ、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、8kbp以上の長さを有する、請求項18に記載のキット。【請求項20】組換え用ドナーDNAが、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域に塩基配列を有さず、改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、標的領域の上流および下流の配列が、塩基の挿入、置換および欠失なく、シームレスに連結している、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。【請求項21】組換え用ドナーDNAが、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域に塩基配列を有さず、改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、標的領域の上流および下流の配列が、塩基の挿入、置換および欠失なく、シームレスに連結している、請求項3または4に記載の方法。【請求項22】改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組換え酵素の標的配列が存在しない、請求項3に記載の方法。【請求項23】改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組換え酵素の標的配列が存在しない、請求項4に記載の方法。【請求項24】改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組換え酵素の標的配列が存在しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。【請求項25】改変後に得られる染色体ゲノムの前記2つ以上のアレルにおいて、部位特異的組換え酵素の標的配列が存在しない、請求項3または4に記載の方法。【請求項26】工程(b)において、2以上のアレルが改変された細胞を選択するまでの過程では単一細胞クローニングは行われない、請求項1~11、および20~25のいずれか一項に記載の方法。【請求項27】組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域が、8kbp以上の長さを有する、請求項3または4に記載の方法。【請求項28】組換え用ドナーDNAが、組換え用ドナーDNAの上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームとの間の領域に塩基配列を有さない、請求項15に記載のキット。」
第4 当審が通知した取消理由の概要及び特許異議申立の理由の概要
1 令和4年3月31日付け取消理由通知に記載した取消理由について
訂正前の請求項1~28に係る特許に対して、令和4年3月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1、2、26に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、26に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1~28に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1、6~7号証、引用文献A(国際公開第2017/053729号)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~28に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 特許異議申立の理由の概要及び証拠方法について
特許異議申立人が、訂正前の請求項1~28に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の概要及び証拠方法は、次のとおりである。
(1)特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項(甲第1号証を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如)
請求項1~28に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~28に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1~28に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~28に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項(甲第3号証を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如)
請求項1、2、12、26に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、12、26に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1~28に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1、4~7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~28に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)証拠方法
ア 甲第1号証:国際公開第2019/018534号
イ 甲第2号証:Nat.Methods(2018)Vol.15,No.12,p.1045-1047
and Supplementary information
ウ 甲第3号証:eLife(2017)Vol.6,e27873
エ 甲第4号証:FEBS Letters(2017)Vol.591,No.6,p.903-913
オ 甲第5号証:Mol.Ther.Methods Clin.Dev.(2019)Vol.15,p.285-293
カ 甲第6号証:Sci.Rep.(2018)Vol.8,No.1,15028
キ 甲第7号証:Nat.Commun.(2016)Vol.7,10431
第5 甲号証の記載
甲第1号証、甲第3号証には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているので、日本語訳で摘記する。下線は合議体による。)。
1 甲第1号証:国際公開第2019/018534号
(甲1-1)「1.以下の工程を含む、細胞のゲノムDNAのスカーレス編集のための方法:
(a)(i) 第1のドナーポリヌクレオチドの細胞中への導入であって、第1のドナーポリヌクレオチドが、細胞のゲノムDNAにおける改変されるべき標的配列に対する意図した編集を含む配列に隣接する第1の左ホモロジーアームおよび第1の右ホモロジーアームと、少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセットとを含む、導入;および
(ii) 第1のガイドRNAおよびCas9の細胞中への導入であって、第1のガイドRNAが、Cas9が第1のガイドRNAと第1の複合体を形成するように、細胞のゲノムDNAにおける改変されるべきゲノム標的配列に対して相補的な配列を含み、該ガイドRNAが、第1の複合体をゲノム標的配列に方向づけ、Cas9が、細胞のゲノムDNAにおいて二本鎖切断を作製し、第1のドナーポリヌクレオチドが、Cas9媒介相同組換え修復(HDR)によってゲノムDNA中に組み込まれて、遺伝子改変細胞を生成する、導入
を含む、第1のCas9媒介相同組換え修復(HDR)段階を行う工程;
(b) 少なくとも1つの選択マーカーの陽性選択に基づいて、遺伝子改変細胞を単離する工程;
(c)(i) 第2のドナーポリヌクレオチドの遺伝子改変細胞中への導入であって、第2のドナーポリヌクレオチドが、少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセットの欠失を含む以外はCas9媒介HDRによるゲノムDNA中への第1のドナーポリヌクレオチドの組み込みによって改変されるような標的ゲノム配列に対して相補的な配列に隣接する、第2の左ホモロジーアームおよび第2の右ホモロジーアームを含む、導入;
(ii) 第2のガイドRNAおよびCas9ヌクレアーゼの細胞中への導入であって、Cas9が、第2のガイドRNAと第2の複合体を形成し、該第2のガイドRNAが、第2の複合体を改変標的ゲノム配列に方向づけ、Cas9が、改変ゲノムDNAにおいて二本鎖切断を作製し、かつ第2のドナーポリヌクレオチドが、Cas9媒介HDRによってゲノムDNA中に組み込まれ、それにより、少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセットをCas9媒介HDRによって改変ゲノムDNAから除去する、導入
を含む、第2のCas9媒介相同組換え修復(HDR)段階を行う工程;ならびに
(d) 少なくとも1つの選択マーカーの陰性選択に基づいて、意図した編集を含む遺伝子改変細胞を単離する工程であって、該少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセットが欠失している、工程。
2.前記意図した編集を含む配列が、少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセット内またはその近くに位置づけられる、請求項1記載の方法。
3.前記意図した編集が、細胞のゲノムDNAにおける遺伝子中に変異を導入する、請求項1記載の方法。
4.前記変異が、挿入、欠失、および置換からなる群より選択される、請求項3記載の方法。
5.前記意図した編集が、細胞のゲノムDNAにおける遺伝子から変異を除去する、請求項1記載の方法。
6.前記意図した編集が、細胞のゲノムDNAにおける遺伝子の不活性化を結果としてもたらす、請求項1記載の方法。
7.一方のアレルが、ゲノムDNAにおいて改変される、請求項1記載の方法。
8.両方のアレルが、ゲノムDNAにおいて改変される、請求項1記載の方法。
9.前記少なくとも1つの選択マーカーが、蛍光マーカーである、請求項1記載の方法。
10.前記遺伝子改変細胞が、単一アレル編集を含むかまたは両アレル編集を含むかを決定するために、蛍光強度を測定する工程をさらに含む、請求項9記載の方法。
11.前記細胞が、真核生物、原核生物、または古細菌生物由来である、請求項1記載の方法。
12.前記細胞が哺乳動物である、請求項11記載の方法。
13.前記細胞がヒトである、請求項12記載の方法。
14.前記細胞が細胞株由来である、請求項1記載の方法。
15.前記細胞が不死化細胞である、請求項1記載の方法。
16.前記細胞ががん性である、請求項1記載の方法。
17.前記細胞がインビトロまたはインビボである、請求項1記載の方法。
18.前記細胞が、K562細胞、胚性幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
19.前記少なくとも1つの選択マーカーが、細胞表面マーカー、薬物耐性遺伝子、レポーター遺伝子、および自殺遺伝子からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
20.前記細胞表面マーカーが、切断型CD8、NGFR、切断型CD19(tCD19)、CCR5、およびABO抗原からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
21.前記細胞表面マーカーが、細胞機能にとって不可欠ではない、請求項19記載の方法。
22.第1のHDR段階から生成された遺伝子改変細胞が、選択マーカーに特異的に結合する結合物質を用いた陽性選択によって単離される、請求項19記載の方法。
23.前記結合物質が、選択マーカーに特異的に結合する抗体、抗体模倣物、またはアプタマーを含む、請求項22記載の方法。
24.前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ナノボディ、抗体の組換え断片、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、およびscFv断片からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
25.前記抗体が、抗tCD19抗体、抗CD8抗体、および抗NGFR抗体からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
26.前記結合物質が、固体支持体上に固定化される、請求項22記載の方法。
27.前記固体支持体が、磁性ビーズ、非磁性ビーズ、スライド、ゲル、膜、またはマイクロタイタープレートウェルである、請求項26記載の方法。
28.前記少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセットが、UbCプロモーター、mCherryをコードするポリヌクレオチド、T2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、切断型CD19(tCD19)をコードするポリヌクレオチド、およびポリアデニル化配列を含む、請求項1記載の方法。
29.第1のドナーポリヌクレオチド、第2のドナーポリヌクレオチド、第1のガイドRNA、第2のガイドRNA、またはCas9のうちの1つまたは複数が、ベクターによって提供される、請求項1記載の方法。
30.前記ベクターが、プラスミドまたはウイルスベクターである、請求項1記載の方法。
31.第1のドナーポリヌクレオチド、第1のガイドRNA、およびCas9が、単一のベクターまたは複数のベクターによって提供される、請求項29記載の方法。
32.第2のドナーポリヌクレオチド、第2のガイドRNA、およびCas9が、単一のベクターまたは複数のベクターによって提供される、請求項29記載の方法。
33.第1のドナーポリヌクレオチドが、ランダムに組み込まれるかまたはエピソーム性である選択マーカーの発現を阻害する短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)をコードする少なくとも1つの発現カセットをさらに含む、請求項1記載の方法。
34.第1のドナーポリヌクレオチドが、shRNAをコードする発現カセットのペアを含み、該ペアの第1の発現カセットが、第1の左ホモロジーアームの5’に位置し、かつ該ペアの第2の発現カセットが、第1の右ホモロジーアームの3’に位置する、請求項33記載の方法。
35.前記shRNAが、ゲノム中にランダムに組み込まれている選択マーカーを発現するクローンの選択を低減させる、請求項33記載の方法。
36.前記二本鎖切断が、非遺伝子破壊性二本鎖切断である、請求項1記載の方法。
37.前記二本鎖切断が、前記少なくとも1つの選択マーカーの発現に影響を及ぼさない、請求項1記載の方法。
38.以下を含む、スカーレスゲノム編集システム:
(a) 細胞のゲノムDNAにおける改変されるべき標的配列に対する意図した編集を含む配列に隣接する第1の左ホモロジーアームおよび第1の右ホモロジーアームと、少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセットとを含む、第1のドナーポリヌクレオチド;
(b) 少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセットの欠失を含む以外は第1のドナーポリヌクレオチドの配列に対して相補的な配列に隣接する、第2の左ホモロジーアームおよび第2の右ホモロジーアームを含む、第2のドナーポリヌクレオチド;
(c) Cas9ヌクレアーゼ;
(d) Cas9ヌクレアーゼと複合体を形成し、該複合体を標的配列に方向づけることができる、第1のガイドRNA;ならびに
(e) Cas9ヌクレアーゼと複合体を形成し、該複合体を、Cas9媒介相同組換え修復(HDR)によるゲノムDNA中への第1のドナーポリヌクレオチドの組み込みによって改変されるような標的ゲノム配列に方向づけることができる、第2のガイドRNA。
39.前記少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセットが、SEQ ID NO:1の配列またはSEQ ID NO:1の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含み、第1のドナーポリヌクレオチドを、少なくとも1つの選択マーカーの発現に適している条件下で、前記Cas9媒介HDRによって標的配列で細胞のゲノムDNA中に組み込むことができ、かつ、Cas9媒介HDRによって標的部位で細胞のゲノムDNA中に組み込まれた第1のドナーポリヌクレオチドを有する細胞を、発現カセットによってコードされる該少なくとも1つの選択マーカーの陽性選択により、特定することができる、請求項38記載のスカーレスゲノム編集システム。
40.第2のドナーポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:2の配列またはSEQ ID NO:2の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含むポリヌクレオチドを含み、第2のドナーポリヌクレオチドを、少なくとも1つの選択マーカーをコードする発現カセットを除去するために、Cas9媒介HDRによって標的部位で細胞の改変ゲノムDNA中に組み込むことができる、請求項38記載のスカーレスゲノム編集システム。
41.第1のドナーポリヌクレオチド、第2のドナーポリヌクレオチド、第1のガイドRNA、第2のガイドRNA、またはCas9のうちの1つまたは複数が、ベクターによって提供される、請求項38記載のスカーレスゲノム編集システム。
42.前記ベクターが、プラスミドまたはウイルスベクターである、請求項38記載のスカーレスゲノム編集システム。
43.第1のドナーポリヌクレオチド、第1のガイドRNA、およびCas9が、単一のベクターまたは複数のベクターによって提供される、請求項38記載のスカーレスゲノム編集システム。
44.第2のドナーポリヌクレオチド、第2のガイドRNA、およびCas9が、単一のベクターまたは複数のベクターによって提供される、請求項38記載のスカーレスゲノム編集システム。
45.第1のドナーポリヌクレオチドが、ランダムに組み込まれるかまたはエピソーム性である選択マーカーの発現を阻害する短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)をコードする少なくとも1つの発現カセットをさらに含む、請求項38記載のスカーレスゲノム編集システム。
46.第1のドナーポリヌクレオチドが、shRNAをコードする発現カセットのペアを含み、該ペアの第1の発現カセットが、第1の左ホモロジーアームの5’に位置し、かつ該ペアの第2の発現カセットが、第1の右ホモロジーアームの3’に位置する、請求項38記載のスカーレスゲノム編集システム。
47.請求項38記載のスカーレスゲノム編集システムを含む、宿主細胞。
48.請求項38記載のスカーレスゲノム編集システム、およびゲノムDNAのスカーレス編集を行うための説明書を含む、キット。
49.請求項47記載の宿主細胞を含む、キット。」(特許請求の範囲)
(甲1-2)「技術分野
本発明は、概して、ゲノム工学およびスカーレスゲノム編集の分野に属する。特に、本発明は、細胞を遺伝子改変して望まれない配列を除去するための、相同組換え修復(HDR)を利用したスカーレスゲノム編集の方法に関する。」(第1頁第5行~第9行)
(甲1-3)「概要
本発明は、スカーレスゲノム編集のための方法に関する。特に、本方法は、細胞を遺伝子改変し、望まれない配列を除去するための、HDR段階を用いることによるスカーレスゲノム改変を提供する。本方法は、ゲノム中にサイレンス変異、選択マーカー配列、または他の付加的な望ましくない配列を残さずに、ゲノムにおける任意の位置に変異、欠失、または挿入を導入することを含むゲノム編集のために使用され得る。」(第4頁第8行~第14行)
(甲1-4)「1つのアレルまたは2つのアレルのいずれかが、ゲノムDNAにおいて改変されてもよい。ある特定の態様において、少なくとも1つの選択マーカーは、蛍光マーカーであり、遺伝子改変細胞が単一アレル編集を含むかまたは両アレル編集を含むかを決定するために、蛍光強度を測定することができる。」(第5頁第20行~第23行)
(甲1-5)「ある特定の態様において、少なくとも1つの選択マーカーは、細胞表面マーカー、薬物耐性遺伝子、レポーター遺伝子、および自殺遺伝子からなる群より選択される。別の態様において、細胞表面マーカーは、切断型CD8、NGFR、切断型CD19(tCD19)、CCR5、およびABO抗原からなる群より選択される。」(第6頁第10行~第14行)
(甲1-6)「図13A~Dは、種々のパターンのスカーレス編集のためのドナーDNA設計を示す。本発明者らは、HRベースの編集を、適切なマーカー選択と組み合わせた場合は、hPSC中で、TBX1編集においては3 kbよりも長くを組み込み、および欠失させるため、ならびにB2M編集においては約3 kb~1 kbの配列を改変するために利用可能であることを実証した。それらを組み合わせることは、以下のようなスカーレス編集の追加的な適用を理論的に可能にする:(図13A)多能性幹細胞における分化の最適化または薬物スクリーニングに有用であるはずであるレポーター遺伝子の導入などのための大きな挿入。(図13B)疾患モデルまたはノックアウト動物を作製するための大きな欠失。(図13C)ヒト化モデルを含むノックイン動物を作製するための大きな置換。(図13D)意図した変異部位の近くに、Znフィンガーヌクレアーゼを含む部位特異的ヌクレアーゼ(SSN)の良好な標的部位がない場合における編集。この技法を用いて、編集部位に対するほぼすべての限定が排除されるはずである。」(第12頁第26行~第13頁第4行)
(甲1-7)「本発明は、細胞を遺伝子改変し、望まれない配列を除去するために2段階HDR修復を用いる、スカーレスゲノム編集の方法の開発に基づく。本方法は、ゲノム中にサイレント変異、選択マーカー配列、または他の付加的な望ましくない配列を残さずに、ゲノムにおける任意の位置に変異、欠失、または挿入を導入するために、ゲノム編集において使用され得る。さらに、編集部位の選択に対してほぼ制限がない。本方法は、小さな編集だけではなく、数千の塩基の大きな編集のためにも使用され得る。このゲノム編集法の大きな利点は、種々の種類の細胞におけるその極度に高い効率および柔軟性を含む。本発明者らは、ヒトES/iPS細胞のゲノム編集のための本方法の使用の実証に成功している(実施例1)。本方法の高い効率により、所望のクローンを、典型的には、10個よりも多くのコロニーをスクリーニングする必要なく特定することが可能である。加えて、本方法は、複数の遺伝子編集を可能にするように容易に適合可能である(実施例1を参照されたい)。」(第29頁第10行~第22行)
(甲1-8)「A.2段階HDR修復によるスカーレスゲノム編集
上記で説明されるように、本発明の方法は、Cas9ヌクレアーゼを用いたスカーレスゲノム編集を達成するために、2つのHDR修復段階を利用する。第1のHDR段階において、ゲノムに対する意図した編集を含む配列を含有するドナーポリヌクレオチドが、細胞において標的ゲノム配列を改変するために用いられ、該ドナーポリヌクレオチドは、部位特異的相同組換えによって標的遺伝子座でゲノム中に組み込まれる。ドナーポリヌクレオチドは、標的遺伝子を修復する、改変する、置き換える、欠失させる、減衰させる、または不活性化する目的で、例えば、ゲノム中に意図した編集を導入するために使用され得る。ドナーポリヌクレオチドに選択マーカー発現カセットが含まれることにより、第1のHDR段階によって生成される遺伝子改変細胞を、陽性選択によって単離することが可能である。第2のHDR段階において、第2のドナーポリヌクレオチドが、第1のHDR段階において生成された遺伝子改変細胞から選択マーカー発現カセットを欠失させるために用いられる。第2のドナーポリヌクレオチドは、選択マーカー発現カセットの欠失を含む以外は第1のHDR段階におけるゲノムDNA中への第1のドナーポリヌクレオチドの組み込みによって改変されるような標的ゲノム配列に対して相補的な配列を含む。それ故、標的ゲノム遺伝子座での第2のドナーポリヌクレオチドの組み込みは、発現カセットを除去する。選択マーカーカセットが除去されている遺伝子改変細胞は、陰性選択に基づいて単離することができる。」(第29頁第27行~第30頁第13行)
(甲1-9)「本明細書に記載されるようなゲノム編集は、細胞のゲノムDNAにおいて改変されている1つのアレルまたは2つのアレルのいずれかを結果としてもたらし得る。ある特定の態様において、陽性選択のために用いられる選択マーカーのうちの少なくとも1つは、蛍光マーカーであり、遺伝子改変細胞が単一アレル編集を含むかまたは両アレル編集を含むかを決定するために、蛍光強度を測定することができる。
蛍光mCherryマーカーおよび切断型CD19(tCD19)細胞表面マーカーをコードする例示的な発現カセットを、実施例1に示す。選択マーカー発現カセットは、mCherryをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたUbCプロモーター、T2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、切断型CD19(tCD19)をコードするポリヌクレオチド、およびポリアデニル化配列を含む。
ある特定の態様において、陰性選択マーカーが、選択マーカー発現カセットを有さない(すなわち、陽性選択マーカーをコードする配列が欠失している)細胞を特定するために用いられる。例えば、第2のHDR段階後の細胞の陰性選択を容易にするための選択マーカー発現カセットにおける陰性選択マーカーとして、自殺マーカーが含まれてもよい。自殺遺伝子は、遺伝子改変細胞においてアポトーシスを誘導すること、または非毒性薬物を毒性化合物に変換することによって、細胞を選択的に死滅させるために使用され得る。例には、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、細胞内抗体、テロメラーゼ、カスパーゼ、およびDNアーゼをコードする自殺遺伝子が含まれる。ある特定の態様において、自殺遺伝子は、1つまたは複数の他の選択マーカー、例えば、細胞の陽性選択における使用のための上記のものと組み合わせて用いられる。自殺遺伝子は、スカーレス編集を達成するために第2のHDR段階において除去されてよい。あるいは、自殺遺伝子は、その破壊を意のままに可能にすることによってその安全性を改善するため、第2のHDR段階後に遺伝子改変細胞において保持されてもよい。例えば、参照により本明細書に組み入れられるJones et al.(2014)Front.Pharmacol. 5:254、Mitsui et al.(2017)Mol.Ther.Methods Clin.Dev. 5:51-58、Greco et al.(2015)Front.Pharmacol. 6:95を参照されたい。
あるいはまたは加えて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、遺伝子アレイ、シークエンシング、またはハイブリダイゼーション技法(例えば、サザンブロット)などの従来の方法を用いて、第2のHDR段階後の遺伝子改変細胞における選択マーカー配列および他の望ましくない配列の非存在について、細胞を試験することができる。」(第32頁第23行~第33頁第21行)
(甲1-10)「いくつかの例において、細胞の集団は、遺伝子改変細胞を残りの集団から分離することによって、遺伝子改変を含むものが濃縮されてもよい。遺伝子改変細胞の分離は、典型的には、標的遺伝子座で意図した編集と同時に組み込まれた選択可能マーカーの発現に依拠する。第1のHDR段階後に、例えば、遺伝子改変を含む濃縮された細胞の集団を作製するように、細胞を集団から単離するために、陽性選択が行われる。第2のHDR段階後に、例えば選択マーカー発現カセット由来の望まれない配列を依然として含有する細胞を除去するために、陰性選択が行われる。」(第36頁第23行~第31行)
(甲1-11)「C.キット
第1および第2のHDR段階のためのドナーDNAおよびガイドRNA、ならびにCas9を含む上記の試薬は、本明細書に記載されるようなスカーレスゲノム改変のための適している説明書および他の必要な試薬と共に、キットにおいて提供することができる。キットはまた、ゲノム改変のための細胞、細胞の陽性選択および陰性選択のための結合物質、およびトランスフェクション剤も含有し得る。キットは標準的に、別々の容器に、ドナーDNA、ガイドRNA、Cas9、および必要とされる他の試薬を含有する。本明細書に記載されるようなゲノム編集を実施するための説明書(例えば、書面、CD-ROM、DVD、Blu-ray、フラッシュドライブ、デジタルダウンロードなど)が通常、キットに含まれる。キットはまた、用いられる特定のアッセイに応じて、他のパッケージングされた試薬および材料(すなわち、洗浄緩衝液など)も含有することができる。本明細書に記載されるような細胞のゲノム編集は、これらのキットを用いて実施することができる。」(第51頁第7行~第19行)
(甲1-12)「実施例1
ヒト多能性幹細胞における高効率スカーレスゲノム編集
本発明者らの方法において、本発明者らは、単一ヌクレオチド変化またはより大きなDNA断片(レポーター遺伝子など)の挿入のいずれかを作製しながらINDELを作製することなく、いずれか一方または両方のアレル上のスカーレス編集を可能にする2段階HRアプローチを、ヒト胚性幹細胞(ESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)の両方において4つの遺伝子に適用した。
以前のスカーレス編集法の限界を打破するために、本発明者らは、Cas9/gRNAシステムを用いた2段階HR戦略と、磁性ビーズを用いた陽性-陰性選択との組み合わせを使用した(図1A~1C)。概念実証として、本発明者らは、ディジョージ症候群としても公知の22q11.2欠失症候群を引き起こす、cDNAのヌクレオチド928位でのTBX1内の点変異(c.928 G>A)をヒトESCにおいて導入した(Yagi et al. Lancet 362,1366-1373(2003))。TBX1 c.928 Gの1kb以内にはTTAA部位がないため、この遺伝子座の編集は、piggyBacシステムを用いて可能ではない。本発明者らの方法のために、本発明者らは、hESCに、S.ピオゲネスCas9(Cas9)およびTBX1 c.928 G近くを標的とするガイドRNA(gRNA)を同時発現するプラスミドをトランスフェクトした(図6A)。Cas9/gRNAプラスミドに加えて、本発明者らはまた、Cas9-gRNA複合体によって導入されるDSBの後に、修復鋳型として用いられるドナーDNAを保有するプラスミドもトランスフェクトした。ドナー鋳型はまた、左ホモロジーアームと右ホモロジーアームとの間でマーカーとして働くようにヒトUbCプロモーターの制御下でmCherryおよび切断型CD19(tCD19)を発現する、2シストロン性カセットも含有する(図1B)。mCherryおよびtCD19はエピソーム性に発現されるため、トランスフェクション後6日以内に2.1%まで低減する、mCherryの一過性発現が観察される(図2A)。したがって、トランスフェクション後6日目に、本発明者らは、磁性ビーズとコンジュゲートされた抗CD19を用いた磁気補助細胞分離(MACS)選択によって、tCD19陽性細胞を精製した(図2B)。細胞を次いで、単一細胞クローニングのために低密度(100細胞/cm2)でプレーティングした。培養においてさらに8日後に、明るいかまたは薄暗いmCherry蛍光を有するコロニーが観察された(図2C)。これらの蛍光細胞におけるTBX1の遺伝子型判定により、明るいmCherry発現を有する11クローンのうち9個が、意図したTBX1部位中に両アレル編集を所有することが明らかになった(図2D)。本発明者らはまた、薄暗いmCherry発現を有する3クローンも採取し、そのうちのすべては、意図した遺伝子座での本発明者らのマーカーの単一アレル挿入を示した。さらなる確認のために、本発明者らは、UbCプロモーターのddPCR定量によって、ゲノムに挿入されたターゲティングベクターのコピー数を検証した。明るいコロニーはすべて、4コピーのUbCプロモーターを含有していた(ユビキチン遺伝子座での内在性の2コピーのUbCプロモーター+本発明者らの標的化遺伝子座での外来性の2コピーに由来する、図2E)。これは、11クローンのうち9個が、ランダムな組み込みを伴わずに正確に標的化されたことを示す。本発明者らの仮説に沿って、薄暗いコロニーはすべて、内在性の2コピー+TBX1内の単一アレル編集事象からの1つに由来する、3コピーのUbCプロモーターを含有していた。
第1ラウンドのMACS選択の後に、スカーレス両アレル編集および単一アレル編集を有する細胞を生じる本発明者らの方法の能力を実証するために、本発明者らは、両アレル性に編集されたクローン2番および単一アレル性に編集されたクローン13番において第2ラウンドのHRを行った。これは、挿入されたマーカーのみを標的とするカスタムgRNAと共にCas9を発現するプラスミドをトランスフェクトすることによって、以前のように行った(ガイド2、図6A)。ガイド2は、生物情報学解析に基づいて高い特異性を有するように設計され、マーカー遺伝子とホモロジーアームとの間の接合部のみを標的とし、したがって、ヒトゲノムにおける内在性標的部位を有さない。本発明者らは、スカーレスのマーカーを含まない編集事象を生じるであろう、ホモロジーアームと共にTBX1 c.G928 G>A変異を含有するドナー鋳型を保有するプラスミドを、同時にトランスフェクトした(図1B)。この第2の編集を所有する細胞を、トランスフェクション後7日目にMACS陰性選択によって精製した。陰性選択を用いて、本発明者らは、98%よりも多くがtCD19陰性細胞の集団を増大させる(図2F)。本発明者らは次いで、tCD19陰性集団からの単一細胞クローニングを用いて、両アレル編集事象を経験したマーカーを含まない細胞を特定した。クローンの解析により、クローン2番に由来する7個の別個のクローン由来の7個のTBX1 c.G928 G>A両アレル編集系統、およびクローン13番に由来する16クローン由来の12個の単一アレル編集系統が示された(図2G、2H)。クローン13番に由来する16クローンすべてで、単一アレル編集事象を伴う第2ラウンドのHRを始めたが、その後、16クローンのうちの4個は、WTアレルのみを所有した。本発明者らは、単一アレル編集事象のこの喪失は、第2のCas9媒介DSBの後の(姉妹染色分体ではない)WTホモログ染色体を用いたHR事象のせいであったと仮説を立てた。この考えを支持して、非編集細胞の混入には由来し得ない、第2ラウンドのHR後にホモ接合性1塩基挿入を有する単一のクローンが見出された(図7)。加えて、WTおよびTBX1 c.928 G>Aドナーの混合物を用いたクローン2番における第2ラウンドのHRは、WT、ヘテロ接合性、およびホモ接合性の変異体を生じた(図2G)。このため、同質遺伝子バックグラウンドにおけるWT、ヘテロ接合性、およびホモ接合性のスカーレスクローンを、ちょうど同腹比較などの疾患のモデリングが遺伝子改変動物で行われる場合の、適切な比較のために容易に取得することができる。第2ラウンドのHRおよびその後の陰性選択の後に、本発明者らは、編集された幹細胞が多能性マーカーを保持することを確認した(図8)。
本発明者らは次に、RUNX1遺伝子の終止コドンの直前での、2A自己切断性ペプチド配列の後に続くmOrange遺伝子の組み込みによってRUNX1レポーターiPS細胞株を作製するために、同じアプローチを適用した。この編集の目標は、RUNX1+造血幹および前駆細胞への方向づけられた分化の画像解析を可能にするため、ならびにPSCのRUNX1+細胞への分化を増強する培養条件/小分子をスクリーニングするためおよびCRISPRまたはshRNAベースの遺伝子スクリーニングのために、同質遺伝子スカーレスRUNX1レポーターを作製することである(図3A)。RUNX1遺伝子はPSCにおいて発現しないため、従来の編集法によって編集された系統を取得することは容易ではなく、マーカー選択が使用されない限り、通常何百ものコロニーを採取して解析しなければならない。第1ラウンドの編集を通して、本発明者らは、図6Bおよび7に図示されるCas9/gRNAおよびドナープラスミドを用いて、RUNX1終止コドンの5’側にmCherry-tCD19発現カセットを挿入した。tCD19陽性細胞のMACS濃縮および単一細胞培養の後、本発明者らは8個の明るいクローンを採取した。PCRベースの遺伝子型判定により、クローン2番および8番において、マーカーが標的化遺伝子座で両アレル性に挿入されたことが示され(図3B)、ddPCRベースのコピー数解析により、これらのクローンが4コピーのUbCプロモーターを有することが示される。次いで、本発明者らは、クローン2番を、図3Aに図示されるようなCas9/gRNAおよびドナーベクターを用いた第2ラウンドの編集に供した。その後、tCD19陰性細胞をMACS分離によって濃縮し、次いで、単一細胞クローニングにより、RUNX1の終止コドンの直前に2A-mOrangeを両アレル性に有する所望の系統がもたらされた(クローン1、3、5、6、および7番、図3C)。このように、本発明者らは、内在性RUNX1遺伝子を破壊することなくRUNX1のためのレポーターを導入した、PSC系統を作製した。組み込まれたmOrangeがRUNX1のためのレポーターとして働くかどうかを確認するために、本発明者らは、このiPS細胞株を造血幹前駆細胞(HSPC)への分化に供した(Nishimura et al. Cell Stem Cell 12,114-126(2013))。放射線照射C3H10T1/2細胞との共培養の13日後に、mOrange陽性HSPC様細胞が検出された(図3D)。FACS解析により、主としてHSPCを含有する、CD34が陽性、かつCD45が中間陽性である集団は、未分化のまたは他の細胞型を含有する他の集団よりも多くの明るいmOrangeを発現することが示される(図3E)。これらの結果は、mOrangeレポーター細胞が、その分化能力を保持し、系列分化を調節する非細胞表面転写因子であるRUNX1の発現について正確に報告することを実証する。本発明者らはまた、同じ編集戦略によってRUNX1-GFI1二重レポーター系統を作製するために、このRUNX1-mOrange系統を用いてGFI1遺伝子座でのさらなる編集も実施した(図9)。
RUNX1およびGFI1両方のレポーター組み込みにおいて、第1の編集段階でのランダムな組み込みを伴わない両アレルターゲティング頻度は、クローンの30%未満で起こった。ランダムな組み込みを伴うクローンの大部分はプラスミドバックボーン由来の配列を有していたため(図10)、本発明者らは、プラスミドバックボーンにおける陰性選択特性の導入は、第1ラウンドの編集におけるランダムな組み込みを伴う細胞の濃縮を効果的に低減させるという仮説を立てた。薬物選択を用いる必要によって限定される、広く用いられているチミジンキナーゼ選択法を用いる代わりに、本発明者らは、shRNAベースの対抗選択に基づく新規の陰性選択法を開発した。このシステムにおいて、shRNAカセットは、両方のホモロジーアームに隣接し、陽性マーカー選択遺伝子を抑制するように設計されている。shRNAが(エピソーム性発現またはランダムな組み込みのいずれかから)発現される限り、マーカー遺伝子は抑制され、細胞は陽性として記録されないことになる。ひとたびエピソーム性発現が失われると、マーカー遺伝子抑制は緩和され、カセットが標的化様式のみで組み込まれている陽性マーカークローンを、容易に特定することができる。本発明者らは、このシステムを、ES H9系統におけるB2M遺伝子座の、B2M-HLA-A*24融合タンパク質を作製するためにB2M終止コドンの5’側にリンカーを伴ってHLA-A*24 cDNAを組み込むように設計されたドナーベクターでの編集に適用した。図4Bに示されるように、shGFP発現カセット(各々0.3 kb)を、第1のドナーベクターにおける左ホモロジーアームおよび右ホモロジーアーム両方の外側に導入し、選択マーカーを、mCherryおよびtCD19からGFPおよびtCD8に変更した。結果として、5個の明るいクローンから、ランダムな組み込みを伴わない4個の両アレル性にマーカーが組み込まれたクローンが取得され(図4B)、他方、shRNA選択システムを伴わずにドナーベクターを用いた6個の明るいクローンからは、1個の両アレル性に標的化されたクローンのみが取得され(図4A)、これは、shRNAベースの対抗選択特性が、第1ラウンドの編集からの陽性選択におけるランダムな組み込みを伴う細胞の混入を効果的に低減したことを示した。本発明者らは、薬物選択を用いる必要なくそのようなクローンを特定することができ、したがってこれは、システムをより容易に、かつ残ったクローンに対する毒性をより少なくした。
加えて、本発明者らは、新規EcoRI部位を生成する、ATGから上流314番目および315番目の変異(GG>AA)の導入が、ヒトUbCプロモーター活性に影響を及ぼさないことを見出した。この特性により、ddPCRなどの定量的PCR戦略を用いる必要なく正規のPCRによって、選択マーカーを駆動する新たな外来性UbCプロモーターのコピー数解析を行うことが可能になる(図11)。次いで、本発明者らは、陰性選択と組み合わせた第2ラウンドの編集によって、8個の濃縮されたクローンから8個の正確に編集されたクローンを取得したことを確認し(図4C)、所望のHLA発現プロファイル(内在性HLAのノックアウトおよびHLA-A*24の発現)が、編集された細胞において観察された(図4D)。本発明者らはまた、高密度SNPアレイ解析によって、すべての編集実験における元の系統、第1ラウンドおよび/または第2ラウンドの編集産物の間でゲノムのコピー数変動(CNV)を比較した。2段階編集プロセスによって引き起こされた実質的な染色体変化(欠失または増倍)はなかったが、第2ラウンドの編集後のTBX1系統のうちの1つにおける「コピー中立性のヘテロ接合性喪失(LOH)」および1つの各標的化遺伝子座でRUNX1マーカーが組み込まれた系統が見出され、これは、これらの変化がgRNA/Cas9駆動二本鎖切断によって引き起こされたことを示唆した。しかし、2段階編集プロセス後の大部分の系統は、そのような変化を有さなかった。これらの変化がgRNA/Cas9切断によって誘導されたと仮定すると、そのような変化は、操作されたヌクレアーゼを用いた他の編集戦略を用いても起こる可能性が高い。多くの場合にゲノム完全性を調べるために行われるGバンド解析は、コピー中立性LOHを検出することができず、したがって、高密度SNPアレイ解析を用いなかった以前の研究においては見落とされていた可能性がある。オンターゲット部位の周りの高密度SNPアレイを用いたCNV解析が、ゲノム編集細胞を用いる機能解析または臨床細胞療法の場合に特に推奨される。
これらの結果は、方法が、精密なかつスカーレスの様式で単一ヌクレオチド変化または大きなDNA断片のいずれかを導入するために用いられ得ることを実証する。他の方法とは対照的に、本発明者らの方法は、スカーレスゲノム編集において3種類の重要な利点をもたらす。第1に、本発明者らの方法は、(TBX1編集において示されるように)同じクローンから十分に一致した同質遺伝子対照(WT)、ホモ接合性、およびヘテロ接合性の系統を生成する。編集プロセスは、hPSCの表現型を変化させる可能性がある長期培養を必要とするため、元の系統と編集された系統との間の表現型の比較は、その獲得された変化のために誤解を招く場合がある。本発明者らの戦略は、同じクローンから同じ段階において様々な遺伝子型(WT、ヘテロ接合性、ホモ接合性)を生じることが容易であるように、第2の編集段階において極度に高いターゲティング効率を利用し、したがって、長期の培養によって誘導される変動性を低減させる。第2に、本発明者らの方法は、hPSCにおいて発現されない遺伝子中へを含み、ssODN法を用いて組み込むことが可能ではない挿入物サイズである、より大きな導入遺伝子のスカーレス様式での導入を可能にする。他の方法が、例えば、レポーター遺伝子の組み込みを達成しているが、hPSCにおいて発現される遺伝子中へだけである。RUNX1およびGFI1での本発明者らの編集は、hPSCにおいて発現されない遺伝子でのスカーレスのマーカー組み込みの例である。第3に、本発明者らの方法は、切断から編集までの距離が長い遺伝子座で効率的に働き、これは、他の方法を用いて以前に達成されていなかった特性であった。例えば、B2M遺伝子座について、本発明者らは、63塩基対の切断から編集までの距離で、本発明者らのマーカーの80%の標的化された組み込みを達成した。切断から編集までの距離のこの延長は、hPSCにおいて達成され得るスカーレス編集の範囲を有意に増大させる(図12)。マーカー選択およびその後のマーカー除去を用いることは、第1および第2両方の編集段階の効率を増加させ、したがって、他の方法を用いて必要である数百の代わりに、5~10クローンのみを解析することが必要であるシステムを作製した(表2)(上記のPaquet et al.;Miyaoka et al. Nat.Methods 11,291-3(2014))。本発明者らは、加えて、蛍光マーカータンパク質に対するshRNAカセットを含めることによって、第1段階の編集プロセスの効率を改善し、それによって、ランダムな組み込みを伴うクローンが採取されることを低減させ、または排除すらした。第2ラウンドの編集について、濃縮されたマーカー細胞におけるターゲティング頻度は100%であることができ、かつ常に100%に近く、したがって、何百ものクローンの骨の折れるかつ面倒なスクリーニングおよび解析を排除する。この高い頻度は、以前にCre-loxPベースの2段階編集でも用いられた(Xi et al. Genome Biol. 16,1-17(2015))、蛍光マーカーを用いることによって達成されるが、本発明者らの新規2段階法が現在まで失敗例なく働くことを可能にしている。加えて、陰性選択は、標的化された組み込みおよびランダムな組み込みの両方を伴う細胞を特定する陽性選択とは異なり、第1の段階で標的化細胞のみを濃縮するため、第2の編集段階での100%ターゲティング頻度に寄与する。この合理化されたプロセスは、6~8週間でヘテロ接合性クローンおよびホモ接合性クローンの特定を結果としてもたらし、ヒトPSCにおいて発現されない遺伝子座で達成され、したがって、高速かつ効率的であるために発現される標的部位を必要としないことを実証した。この高い効率は、代替法で必要とされる大きな労働力を要するコロニー採取、遺伝子型判定、およびシーケンシングの必要を排除する。要約すると、本発明者らの方法は、スカーレスゲノム編集を有するヒト多能性細胞を生じ、したがって疾患モデルおよび発生モデル、薬物スクリーニングツール、ならびに治療薬として幹細胞技術を進歩させる際の複数の障害に対処する。」(第54頁第17行~第60頁第18行)
(甲1-13)「
[図:0001398220000001.jpg]
」(図2C)
(甲1-14)「
[図:0001398220000002.jpg]
」(図2D)
2 甲第3号証:eLife(2017)Vol.6,e27873
(甲3-1)「CRISPR/Cas9及びAAV6を使用したヒト造血幹細胞・前駆細胞の多重化遺伝子操作」(表題)
(甲3-2)「要約 遺伝子の正確かつ効率的な操作は、ヒト造血を管理する分子機構の理解ならびに血液及び免疫系の疾患の新規治療の開発に重要である。現在の方法は、細胞の混合集団中で容易にトラッキングすることができる複雑な遺伝子型の正確な操作を可能にするものではない。我々は、rAAV6ドナー送達とリボ核タンパク質(RNP)として送達されるCRISPR/Cas9系とを組み合わせることによる、ヒト造血幹細胞・前駆細胞並びに初代ヒトT細胞における多重相同組み換え(HR)の方法について説明する。さらに、レポーター遺伝子の使用により、HRにより改変された複数のアレルまたは部位を有する細胞のFACS精製及びトラッキングが可能になる。我々は、この方法がヒト造血遺伝子機能及びネットワークの研究だけでなく複雑な合成生物学の実施を含む広範な応用が可能であり、遺伝子工学的に作製された幹細胞ベースの画期的な治療の開発につながるであろうと考えている。」(要約)
(甲3-3)「ここに、我々は、ヒトHSPCとT細胞におけるHRを利用したゲノム編集法を報告する。本法では、前述の欠点が改善されており、複数の遺伝子座すべてが遺伝子ノックアウト又は遺伝子置換されたHSPC又はT細胞を作り出して濃縮することが可能である。この方法によって造血及び免疫系疾患病態形成時の機能的な遺伝子ネットワークを明らかにすることが可能になり、本法と合成生物学の概念を組み合わせることで幹細胞ベースの新規治療法を生み出すことができると考えられる。」(第2頁下から第17行~第12行)
(甲3-4)「HSPCにおける両アレル標的組み込み
この方法が、完全な機能的遺伝子ノックアウトに必要な両アレル遺伝子破壊を有するHSPCを濃縮するために使用し得るかどうかを決定するために、我々は、ASXL1遺伝子を標的化し、同時にGFP及びBFPをコードするrAAV6ドナーを提供した。エレクトロポレーション及び形質導入の4日後、AAVのみのサンプルの0.2%と比較して、細胞の10.4%がGFP高及びBFP高について二重陽性であった(図2a)。同様に、種々の色の組合せを有する2つのrAAV6ドナーを用いて3つの他の遺伝子(RUNX1、HBB及びCCR5)を標的化する場合、二重陽性集団が見られた(図2-捕捉図1及び捕捉ファイル1c)。エレクトロポレーションの4日後に選別された二重陽性細胞は、培養中で2週間超、94%が二重陽性のままであった(図2b)。単一細胞由来のメチルセルロースクローン由来のgDNA上の「インアウトPCR」により、一方の導入遺伝子の1つのアレルへのオンターゲット組込み及び他方の導入遺伝子の第2のアレルへのオンターゲット組込みが確認された(図2c)。我々は、次いで両アレル標的化アプローチを、他の血液細胞種へと拡張し、それによりCCR5標的化Cas9 RNPによるエレクトロポレーション及びそれに次ぐGFP及びmCherry CCR5 rAAV6ドナーの形質導入後、GFP高/mCherry高二重陽性細胞集団が観察され、これはCCR5遺伝子における両アレル組込みを示している(図2d)。T細胞において、毒性と両アレル標的化は有意に相関していなかった(図2-補足図2)。全体として、これらの結果は両アレル相同組み換えを行った初代ヒトHSPC及びT細胞を濃縮するための、rAAV6、Cas9 RNP及びFACSの使用の有用性を示しており、これらは血液学的及び免疫学的な疾患を研究するため、または両方のアレルにおける遺伝子改変若しくは遺伝子ノックアウトを必要とするHSPC若しくはT細胞治療を作製するために応用し得る。」(第3頁下から第8行~第5頁第2行)
(甲3-5)「
[図:0001398220000003.jpg]
図2.両アレルゲノム編集CD34+ヒト造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)の特定及び濃縮。(a)左、ASXL1の各アレルへの組込みのためのGFP及びBFPをコードするrAAV6ドナーを用いたASXL1についての両アレル標的化戦略を示す模式図。SFFVプロモーターはレポーター発現を誘導する。中央、エレクトロポレーションの4日後の「AAVのみ」サンプルからのFACSプロットを示し、これは、CRISPR系を用いない細胞における低いエピソームレポーター発現(GFP及びBFP)を示す。右、Cas9 RNP及び2つのrAAV6ドナーの両方で処理したCD34+HSPCのFACSプロットであり、ASXL1両アレル標的化を行ったBFP高/GFP高二重陽性細胞の作製を強調している。(b)HSPCは、HBBの両方のアレル(GFP及びtdTomato rAAV6ドナーを用いたCas9 RNP)において標的化されており、エレクトロポレーションの4日後に二重陽性細胞を選別し、16日間、レポーター発現を解析しながら培養した。S.E.Mを表すエラーバーは存在するが、可視化できないほど小さい(N=3の異なるHSPCドナー)。(c)(e)HBBアレルのそれぞれへの組込みを確認した後の、6つのメチルセルロース由来のクローンのPCR遺伝子決定を示すゲル画像。(d)ヒト初代T細胞を3日間CD3/CD28刺激した後、CCR5標的化Cas9 RNPを用いてエレクトロポレーションした後、それぞれGFP及びmCherryをコードする、2つのCCR5特異的なrAAV6ドナーを用いて形質導入した。FACSプロットは、エレクトロポレーションの4日後におけるGFP高/mCherry高両アレル標的化頻度を示す。」(図2)
(甲3-6)「HSPCにおける多重化相同組み換え
次いで、我々は、二遺伝子及び両アレル標的化アプローチを、ASXL1の両方のアレル(GFP及びmCherry)並びにRUNX1cの両方のアレル(BFP及びE2-Crimson)を同時に標的化する(四重アレル)ために組み合わせることができるかどうかを試験した(模式図については、図4-補足図1aを参照のこと)。両方の遺伝子を標的とするCas9 RNPの送達、及び、それに次ぐ4つのrAAV6ドナーの形質導入により、1.1%のGFP高/mCherry高/BFP高/E2Crimsony高四重陽性細胞が生じた(図4a及び図4-補足図1b~c)。HBB及びRUNX1cの4つのアレルの組合せすべてを標的化した場合、同様の四重陽性集団が明らかに見られた(図4-補足図1e~h及び補足ファイル1e)。骨髄及び赤血球コロニーの混合が、AAVのみの対照と同等の頻度及び比率で形成された(図4b)。コロニーの遺伝子型決定により、クローンの78%における両方の部位での両方のアレルにおけるオンターゲット組込みが明らかになった(73クローンを解析)(図4c)。個々のコロニーのフローサイトメトリー解析により、高いレベルの4つのレポーター(BFP/GFP/mCherry/E2Crimsony)すべての発現が確認された(図4-補足図1d)。合成生物学的な目的のために使用し得る、この濃縮した集団における遺伝子的な変化の総数は6であり:2つの内在性遺伝子の不活性化(各遺伝子の両方の)に加えて4つの異なる導入遺伝子の付加(我々の実験では異なる蛍光タンパク質をコードする4つの遺伝子で表される)である。したがって、この方法論は機能を喪失するためには両方のコピーが破壊されることが必要な遺伝子、例えば腫瘍抑制遺伝子の相互作用を研究するために使用し得る。
HSPCにおける多遺伝子HRにより、ヒト造血間の機能的な遺伝子ネットワークの特性決定が可能になるであろう(Bystrykhら、2005)。我々の方法論は、HSPCにおいて、2つの超える遺伝子において同時にHRを多重化し得ることを実証するために、我々は、HBB、CCR5及びIL2RGを標的化するRNPを用いてHSPCをエレクトロポレーションした後、遺伝子特異的rAAV6ドナーを用いてそれらを形質導入した(HBB-tdTomato、CCR5-tNGFR、IL2RG-GFP)(模式図については、図4-補足図2aを参照のこと)。エレクトロポレーションの4日後において、HSPCの4.1%が三重陽性であった(図4d及び図4-補足図2b)。この集団由来の骨髄及び赤血球コロニー由来のgDNA上の「インアウトPCR」により、78%(27クローンを解析)が、3部位すべてにおいて組込みイベントを有していることが示され、これは、各標的化部位における少なくとも単一アレルの組込みを示している(図4e)。さらなる解析により、三遺伝子組込みを有するこれらのクローンの85%が、両アレル組込み又はほとんどが破壊的である非組込みアレル上のINDELのいずれかにより、すべてのアレル上で改変されていることが示された(補足ファイル1d)。これらのデータにより、方法論が多重化HRを有するHSPCについて効率的に濃縮することができることが確認されている。3つの遺伝子(RUNX1/HBB/ASXL1)の他の組合せの標的化は、2.9%の三重陽性細胞を示し(図4-補足図2c~e)、合わせると、三遺伝子標的化実験により、平均4.5%の三重陽性細胞が、最大14%の頻度で得られた(N=5)(補足ファイル1e)。多重化HRが、HSPCにおいて、細胞老化又は一遺伝子又は二遺伝子標的化よりも多くの細胞死を引き起こすかどうかを試験するために、標的化の3日後における細胞死及びアポトーシス比率及び標的化の10日後(選別の7日後に相当)までの増殖を評価した。改変及び非改変細胞を比較して同等の増殖速度(データは示さない)、及び1つの遺伝子の場合と比較して3つの遺伝子を標的化した場合のごくわずかの統計学的に有意ではない細胞生存率の低下(p=0.333)を観察した(図4-補足図3)。最終的に、我々は、四遺伝子HR(HBB、CCR5、ASXL1、RUNX1)についてHSPCを標的化し、培養中で4日後に、細胞の1%が4つのレポーターすべてについてレポーター高陽性であることを見出した(図4f)。レポーター遺伝子の他の組合せを用いて同一の4つの遺伝子を標的化することにより、全細胞集団において0.41%及び0.78%の四遺伝子標的化頻度が生じた(補足ファイル1e)。衝撃的なことに、三遺伝子HRを有するHSPCの41~71%が四遺伝子HRを起こしており、このことは、多重化NHEJについての近年の知見とは対照的に、異なる遺伝子におけるHRイベントは互いに独立したものではない可能性を示している(Hultquistら、2016)。rAAVベクターは、NHEJを介してDSBにおいて捕捉することができるため(Millerら、2004)、標的化試験に非相同rAAVドナーを含めることによって、捕捉イベントの頻度を検出することを目的とする実験を行った。我々は、レポーター高細胞の89~98%がオンターゲット相同組み換えによるものであることを見出し、このことによりAAV捕捉の比率が比較的低いことが確認された(図4-補足図4)。」(第7頁下から第20行~第9頁第29行)
(甲3-7)「
[図:0001398220000004.jpg]
図4.CD34+ヒト造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)における多重化相同組み換え。(a)HSPCをASXL1及びRUNX1を標的化するCas9 RNPによりエレクトロポレーションした後、ASXL1についての2つのドナー(mCherry及びGFP)及びRUNX1についての2つのドナー(E2Crimsony及びBFP)によりrAAV6形質導入した。四重アレル標的化したHSPCを、mCherry高/GFP高/BFP高/E2Crimsony高として特定した(N=3、補足ファイル1eを参照のこと)。(b)((a)と同様に)RUNX1及びASXL1についての両方のアレルにおいて改変された細胞をメチルセルロースアッセイに供し(3つ組)、選別の14日後に、形態に基づいてBFU-E、CFU-M、CFU-GM又はCFU-GEMMとスコア付けした。(c)PCRをコロニー由来のgDNA上で行い、両方の遺伝子における標的化組込みを検出した。73の個々のコロニーを解析した。三重アレル組み込みしたコロニーについての色識別は次のとおりである。灰色:RUNX1両アレル/ASXL1単一アレル;白色:RUNX1単一アレル/ASXL1両アレル。(d)HSPCの三遺伝子標的化のために、細胞をIL2RG、HBB及びCCR5を標的化するRNPエレクトロポレーションした後、3つの遺伝子のそれぞれに相同の3つのrAAVドナーの形質導入を行った(IL2RG-GFP、HBB-tdTomato及びCCR5-tNGFR)。三遺伝子標的化細胞を、3つのレポーターすべてについてレポーター高として特定した(N=3、補足ファイル1eを参照のこと)。(e)(d)における三重陽性細胞からのメチルセルロースクローンを遺伝子型決定PCRに供し、ゲル画像は、9/11のコロニーにおける3つの遺伝子すべてにおいて標的化組み込みしたコロニーを示す(GFPはコロニー6においてかすかなバンドを示していることに留意されたい)。(f)左、4つの異なる遺伝子(HBB、RUNX1、ASXL1及びCCR5)を同時に標的化する(四遺伝子)戦略を示す模式図。4つの異なる遺伝子を、4つの異なるCas9 RNPによるエレクトロポレーション、それに次ぐ、異なるレポーターによりそれぞれ遺伝子を標的化する4つの異なるrAAV6ドナーによる形質導入により標的化する。右、上述の4つの遺伝子における四遺伝子標的化は、4つのレポーターすべてについてレポーター高として特定した(N=3、補足ファイル1eを参照のこと)。」(図4)
第6 当審の判断
1 令和4年3月31日付け取消理由通知に記載した取消理由について
(1)特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項(甲第3号証を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如)
ア 本件発明1について
上記記載事項(甲3-5)の図2a中の「LHA」、「RHA」は、それぞれ、「左ホモロジーアーム」、「右ホモロジーアーム」を表し、「GFP」、「BFP」は、それぞれ、「GFP遺伝子」、「BFP遺伝子」を表す。また、上記記載事項(甲3-5)の図2a中の「chr.20」は、「第20番染色体」を表す。
上記記載事項(甲3-1)~(甲3-5)から、甲第3号証には、
「染色体ゲノムの2つのアレルが改変された単離されたヒト造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)を作製する方法であって、Cas9 RNPと、左ホモロジーアーム、GFP遺伝子及び右ホモロジーアームを含むドナーDNA、左ホモロジーアーム、BFP遺伝子及び右ホモロジーアームを含むドナーDNAを、2つのアレルを含む単離された細胞に導入して、前記2つのアレルそれぞれにGFP遺伝子、BFP遺伝子を導入した後、前記2つのアレルに対して、左ホモロジーアーム、GFP遺伝子及び右ホモロジーアームを含むドナーDNA、左ホモロジーアーム、BFP遺伝子及び右ホモロジーアームを含むドナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2つのアレルにそれぞれGFP遺伝子、BFP遺伝子が導入され、導入されたGFP遺伝子、BFP遺伝子のすべてを発現する単離された細胞を選択する、方法。」の発明が記載されていると認められる。
甲第3号証に記載された発明の「Cas9 RNP」は、本件発明1の「前記染色体ゲノムの2つ以上のアレル中の標的領域を標的とし、当該標的領域を切断することができる配列特異的核酸切断分子を含むゲノム改変システム」に相当し、甲第3号証に記載された発明の「左ホモロジーアーム、GFP遺伝子及び右ホモロジーアームを含ドナーDNA」及び「左ホモロジーアーム、BFP遺伝子及び右ホモロジーアームを含むドナーDNA」は、本件発明1の「標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとを有し、かつ、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列を含む選択マーカー用ドナーDNA」に相当する。
また、甲第3号証に記載された発明のGFP遺伝子、BFP遺伝子は、相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子であり、甲第3号証に記載された発明のドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とするアレルの数と同数以上である。
そして、甲第3号証に記載された発明の「ヒト造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)」は、受精卵でない細胞であることは明らかである。
そうすると、本件発明1と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、
両者は、
「染色体ゲノムの2つ以上のアレルが改変された単離された細胞を作製する方法であって、(a)下記(i)及び(ii)を、2つ以上のアレルを含む単離された細胞(但し、受精卵を除く)に導入して、前記2つ以上のアレルそれぞれに選択マーカー遺伝子を導入する工程と、(i)前記染色体ゲノムの2つ以上のアレル中の標的領域を標的とし、当該標的領域を切断することができる配列特異的核酸切断分子を含むゲノム改変システム、(ii)2種以上の選択マーカー用ドナーDNAであって、それぞれが前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームとを有し、かつ、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子の塩基配列を含み、前記2種以上の選択マーカー用ドナーDNAは、相互に区別可能に異なる選択マーカー遺伝子をそれぞれ有し、前記ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、選択マーカー用ドナーDNAの種類毎に固有であり、前記選択マーカー用ドナーDNAの種類数は、ゲノム改変の対象とする前記アレルの数と同数以上である、2種以上の選択マーカー用ドナーDNA、(b)前記工程(a)の後、前記2以上のアレルに対して異なる種類の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ相同組み換えすることによって、当該2以上のアレルにそれぞれ区別可能に異なる固有の選択マーカー遺伝子が導入され、導入された当該区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子のすべてを発現する単離された細胞を選択する工程(ポジティブ選択のための工程)と、を含む、方法。」に係る発明である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)本件発明1は、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子であり、かつ、2種以上の選択マーカー用ドナーDNAがそれぞれ、前記上流ホモロジーアームと前記下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子と標的配列とを有し、(c)前記工程(b)の後、下記(iii)及び(iv)を選択された細胞に導入して前記2以上のアレルに組換え用ドナーDNAを導入する工程と、(iii)前記標的配列を標的とし、当該標的配列を切断することができる配列特異的核酸切断分子、又は前記配列特異的核酸切断分子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム改変システム、(iv)所望の塩基配列を含む組換え用ドナーDNAであって、前記標的領域の上流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する上流ホモロジーアームと、前記標的領域の下流側の塩基配列と相同組換え可能な塩基配列を有する下流ホモロジーアームを有する、組換え用ドナーDNA、(d)前記工程(c)の後、前記ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程(ネガティブ選択のための工程)と、を含むのに対し、甲第3号証に記載された発明は、そのような特定はされていない点。
(相違点2)本件発明1は、標的領域が10kbp以上の長さを有するのに対し、甲第3号証に記載された発明は、そのような特定はされていない点。
相違点1について検討する。
甲第1号証には、選択マーカー遺伝子として、薬剤耐性遺伝子を用いることが記載されている(上記記載事項(甲1-5))が、選択マーカー遺伝子として、相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子を用いることは、何ら記載されておらず、また、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子に加えて、ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を用い、選択マーカー用ドナーDNAとして、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子とを有するものを用い、ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択することは何ら記載されていないから、甲第1号証の記載が、甲第3号証に記載された発明において、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子として、薬剤耐性遺伝子を用い、選択マーカー用ドナーDNAとして、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子とを有するものを用い、前記工程(c)の後にネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程を採用することの動機付けになるとはいえない。また、甲第4~7号証及び引用文献Aが、甲第3号証に記載された発明において、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子として、薬剤耐性遺伝子を用い、選択マーカー用ドナーDNAとして、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子とを有するものを用い、前記工程(c)の後にネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程を採用することの動機付けになるとはいえない。
よって、甲第1、4~7号証及び引用文献Aの記載から、甲第3号証に記載された発明において、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子として、薬剤耐性遺伝子を用い、選択マーカー用ドナーDNAとして、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子とを有するものを用い、前記工程(c)の後にネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲第3号証に記載された発明とはいえないし、また、甲第3号証に記載された発明及び甲第1、4~7号証、引用文献Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項と同様の発明特定事項を含むものであり、上記相違点1、2で甲第3号証に記載された発明と相違するから、本件発明1と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明とはいえないし、また、甲第3号証に記載された発明及び甲第1、4~7号証、引用文献Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明3~28について
本件発明3~28は、本件発明1、2を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明1、2と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明とはいえないし、また、甲第3号証に記載された発明及び甲第1、4~7号証、引用文献Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和4年11月17日付け意見書において、本件訂正発明は、選択マーカー遺伝子として、薬剤耐性遺伝子を用いることが記載されている(上記記載事項(甲1-5))から、甲第1号証に記載された発明であり、依然として新規性を有しない旨主張している。
しかしながら、特許異議申立人も、特許異議申立書において、「甲第1号証には、2つ以上のアレルそれぞれに導入される選択マーカー遺伝子が、相互に区別可能に異なることが明記されていない」と述べているように、甲第1号証には、選択マーカー遺伝子として、相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子を用いることは、何ら記載されておらず、また、甲第1号証に具体的に記載されている蛍光マーカーを用いた方法は、蛍光強度の強さの差異で選択する方法であるから、甲第1号証に薬剤耐性遺伝子を用いることが例示されている(上記記載事項(甲1-5))としても、本件訂正発明が甲第1号証に記載されているとはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、同意見書において、ネガティブ選択工程は甲第1号証に記載されているから、甲第3号証に記載されたポジティブ選択工程を含む方法の発明において、甲第1号証に記載されたネガティブ選択工程を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得ることである旨主張している。
しかしながら、甲第1号証には、「ドナーポリヌクレオチドに選択マーカー発現カセットが含まれることにより、第1のHDR段階によって生成される遺伝子改変細胞を、陽性選択によって単離することが可能である。第2のHDR段階において、第2のドナーポリヌクレオチドが、第1のHDR段階において生成された遺伝子改変細胞から選択マーカー発現カセットを欠失させるために用いられる。第2のドナーポリヌクレオチドは、選択マーカー発現カセットの欠失を含む以外は第1のHDR段階におけるゲノムDNA中への第1のドナーポリヌクレオチドの組み込みによって改変されるような標的ゲノム配列に対して相補的な配列を含む。それ故、標的ゲノム遺伝子座での第2のドナーポリヌクレオチドの組み込みは、発現カセットを除去する。選択マーカーカセットが除去されている遺伝子改変細胞は、陰性選択に基づいて単離することができる。」と記載されている(上記記載事項(甲1-8))ものの、上記記載は、選択マーカーとして、1種類の選択マーカーを用いて、陽性選択及び陰性選択を行うことを教示しているだけで、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子に加えて、ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を用い、選択マーカー用ドナーDNAとして、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子とを有するものを用い、ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択することは、甲第1号証には何ら記載されていないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
2 取消理由通知書で採用しなかった申立理由について
(1)特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項(甲第1号証を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如)
甲第1号証には、選択マーカー遺伝子として、相互に区別可能に異なるポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子を用いることは記載も示唆もされていないから、本件発明1~28は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。
また、上記1(2)で述べたように、甲第1号証の記載事項(甲1-8)の記載は、選択マーカーとして、1種類の選択マーカーを用いて、陽性選択及び陰性選択を行うことを教示しているだけで、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子に加えて、ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を用い、選択マーカー用ドナーDNAとして、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子とを有するものを用い、ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択することは記載も示唆もされていない。また、甲第3~7号証にも、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子に加えて、ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を用い、選択マーカー用ドナーDNAとして、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子とを有するものを用い、ネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択することは記載も示唆もされていない。
よって、甲第3~7号証の記載から、甲第1号証に記載された発明において、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子として、薬剤耐性遺伝子を用い、選択マーカー用ドナーDNAとして、上流ホモロジーアームと下流ホモロジーアームの間に、ポジティブ選択用の選択マーカー遺伝子とネガティブ選択用のマーカー遺伝子とを有するものを用い、前記工程(c)の後にネガティブ選択用のマーカー遺伝子を発現しない細胞を選択する工程を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
したがって、本件発明1~28は、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1~28に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立の理由によっては、取り消すことはできない。また、他に本件請求項1~28に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-701032